固体電解質材料および全固体リチウム電池

申请号 JP2015154927 申请日 2015-08-05 公开(公告)号 JP6337852B2 公开(公告)日 2018-06-06
申请人 トヨタ自動車株式会社; 发明人 沖 英里香; 長田 尚己;
摘要
权利要求

Li3PS4−xOx(1≦x≦3)の組成を有し、 CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=17.80°±0.50°、25.80°±0.50°の位置にピークを有する結晶相Aと、 CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=22.30°±0.50°、23.14°±0.50°、24.80°±0.50°、33.88°±0.50°、36.48°±0.50°の位置にピークを有する結晶相Bと、 を有し、 CuKα線を用いたX線回折測定において、前記2θ=17.80°±0.50°のピークの強度をIAとし、前記2θ=22.30°±0.50°のピークの強度をIBとして、IA/IBの値が1.2以上であることを特徴とする固体電解質材料。LiX(XはF、Cl、BrまたはIである)をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の固体電解質材料。正極活物質層と、負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体リチウム電池であって、 前記正極活物質層、前記負極活物質層および前記固体電解質層の少なくとも一つが、請求項1または請求項2に記載の固体電解質材料を含有することを特徴とする全固体リチウム電池。

说明书全文

本発明は、Liイオン伝導性および熱安定性が高い固体電解質材料に関する。

近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。

現在市販されているリチウム電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造が必要となる。これに対し、電解液を固体電解質層に変えて、電池を全固体化したリチウム電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。全固体リチウム電池には、通常、固体電解質材料が用いられる。

特許文献1には、Li、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)、およびSを有するイオン伝導体と、LiX(Xはハロゲンである)と、オルトオキソ酸リチウムとから構成されるガラスセラミックスであり、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2°、23.6°にピークを有し、オルトオキソ酸リチウムの割合が、20mol%未満である硫化物固体電解質材料が開示されている。なお、特許文献1では、イオン伝導体として、Li3PS4が開示されており、オルトオキソ酸リチウムとして、Li3PO4が開示されている。

特開2015−032462号公報

従来の硫化物固体電解質材料(例えばLi3PS4)は熱安定性が低い傾向にある。これに対して、オルトオキソ酸リチウム(例えばLi3PO4)等の酸化物を用いることで、熱安定性が向上することが予想される。特許文献1では、オルトオキソ酸リチウムの割合が最大でも20mol%であるが、オルトオキソ酸リチウムの割合が低く、十分な熱安定性の向上を図ることが困難である。一方、オルトオキソ酸リチウムの割合をさらに高くすると、Liイオン伝導性の低下が懸念される。

本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、Liイオン伝導性および熱安定性が高い固体電解質材料を提供することを主目的とする。

上記課題を解決するために、発明者が鋭意研究を重ねたところ、Li3PS4およびLi3PO4のタイライン組成に該当するLi3PS4−xOx組成において、Li3PO4の割合を従来よりも高くした場合に、新規の結晶相に由来すると推定されるピークが観察されるとの知見を得た。また、その固体電解質材料が、高いLiイオン伝導性と、高い熱安定性とを兼ね備えるとの知見も得た。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。

すなわち、本発明においては、Li3PS4−xOx(1≦x≦3)の組成を有し、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=17.80°±0.50°、25.80°±0.50°の位置にピークを有する結晶相Aと、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=22.30°±0.50°、23.14°±0.50°、24.80°±0.50°、33.88°±0.50°、36.48°±0.50°の位置にピークを有する結晶相Bと、を有することを特徴とする固体電解質材料を提供する。

本発明によれば、特定の組成において、結晶相Aおよび結晶相Bを有するため、Liイオン伝導性および熱安定性が高い固体電解質材料とすることができる。

上記発明においては、固体電解質材料が、LiX(XはF、Cl、BrまたはIである)をさらに含有することが好ましい。

また、本発明においては、正極活物質層と、負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体リチウム電池であって、上記正極活物質層、上記負極活物質層および上記固体電解質層の少なくとも一つが、上述した固体電解質材料を含有することを特徴とする全固体リチウム電池を提供する。

本発明によれば、上述した固体電解質材料を用いることで、出力特性および熱安定性が高い全固体リチウム電池とすることができる。

本発明の固体電解質材料は、Liイオン伝導性および熱安定性が高いという効果を奏する。

本発明の全固体リチウム電池の一例を示す概略断面図である。

実施例1〜5および比較例1〜3で得られた固体電解質材料に対するXRD測定の結果である。

実施例1〜7および比較例1〜3で得られた固体電解質材料における、P−S結合量と、Liイオン伝導度および発熱開始温度との関係を示すグラフである。

以下、本発明の固体電解質材料および全固体リチウム電池について、詳細に説明する。

A.固体電解質材料 本発明の固体電解質材料は、Li3PS4−xOx(1≦x≦3)の組成を有し、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=17.80°±0.50°、25.80°±0.50°の位置にピークを有する結晶相Aと、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=22.30°±0.50°、23.14°±0.50°、24.80°±0.50°、33.88°±0.50°、36.48°±0.50°の位置にピークを有する結晶相Bと、を有することを特徴とする。

本発明によれば、特定の組成において、結晶相Aおよび結晶相Bを有するため、Liイオン伝導性および熱安定性が高い固体電解質材料とすることができる。また、固体電解質材料が、Li3PO4に該当するピークを有する結晶相を備えるため、熱安定性が向上する。

従来の硫化物固体電解質材料(例えばLi3PS4セラミックス)は熱安定性が低い傾向にあるが、その理由は、構造中に含まれるP−S結合の量が多いためであると推測される。P−S結合は、例えば、充電された状態の正極活物質(Liが脱離した状態の正極活物質)のO元素と反応すると、酸化還元反応により発熱する場合がある。これに対して、本発明の固体電解質材料は、Li3PS4セラミックスに比べて、P−S結合の量が少ないため、発熱開始温度を向上させることができる。

本発明の固体電解質材料は、Li3PS4−xOx(1≦x≦3)の組成を有する。「Li3PS4−xOx(1≦x≦3)の組成を有する」とは、Li3PS4−xOx(1≦x≦3)の組成を少なくとも有することをいい、Li3PS4−xOx(1≦x≦3)のみの組成であっても良く、さらなる成分を有する組成であっても良い。xは、1.2以上であっても良く、1.5以上であっても良く、2以上であっても良い。一方、xは、2.9以下であっても良く、2.5以下であっても良い。また、上述したように、Li3PS4−xOxは、Li3PS4(硫化物)およびLi3PO4(酸化物)のタイライン組成に該当する。Li3PS4およびLi3PO4は、いわゆるオルト組成に該当する。

本発明の固体電解質材料は、LiX(XはF、Cl、BrまたはIである)をさらに含有していても良い。LiXの添加により、Liイオン伝導性が向上する。Xは、Cl、BrまたはIであることが好ましい。この場合、本発明の固体電解質材料は、aLiX・(100−a)Li3PS4−xOx(0≦a、1≦x≦3)で表される。aは、0であっても良く、0より大きくても良い。中でも、aは、1以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。一方、aは、例えば、50以下であり、40以下であることが好ましい。なお、xの好ましい範囲については、上記と同様である。

本発明の固体電解質材料は、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=17.80°±0.50°、25.80°±0.50°の位置にピークを有する結晶相Aを備える。これらのピーク位置は、±0.30°の範囲内にあっても良く、±0.10°の範囲内にあっても良い。結晶相Aは、新規の結晶相であると推定される。

本発明の固体電解質材料は、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=22.30°±0.50°、23.14°±0.50°、24.80°±0.50°、33.88°±0.50°、36.48°±0.50°の位置にピークを有する結晶相Bを備える。これらのピーク位置は、±0.30°の範囲内にあっても良く、±0.10°の範囲内にあっても良い。結晶相Bのピークは、Li3PO4に該当するピークである。ここで、Li3PO4に該当するピークには、厳密なLi3PO4結晶相のピークのみならず、Li3PO4結晶相の少なくとも一部の元素に、付加、欠損、置換が生じた結晶相も含まれる。例えば、Li3PO4結晶相のO元素の一部がS元素に置換された結晶相も含まれる。本発明においては、2θ=22.30°付近のピークの強度をI1とし、2θ=23.14°付近のピークの強度をI2とした場合に、I1

2であることが好ましい。

2θ=17.80°付近のピーク(結晶相Aのピーク)の強度をIAとし、2θ=22.30°付近のピーク(結晶相Bのピーク)の強度をIBとした場合、IA/IBの値は、0.2〜1.4の範囲内であることが好ましい。また、本発明の固体電解質材料は、γ−Li3PS4のピークを有しないことが好ましい。γ−Li3PS4の代表的なピークは、2θ=17.50°±0.50°、18.30°±0.50°、19.80°±0.50°、22.80°±0.50°、26.60°±0.50°、29.00°±0.50°、30.40°±0.50°に現れる。

硫化物固体電解質材料の構造中に含まれるP−S結合量(mol/g)を次のように定義する。 P−S結合量=(Li3PS4のモル比×4)/(Li3PS4−xOxの分子量) Li3PS4において、P−S結合が4個存在することから、上記式の分子では、Li3PS4のモル比を4倍する。これをLi3PS4−xOxの分子量(g/mol)で除することで、硫化物固体電解質材料の構造中に含まれるP−S結合の量を求めることができる。P−S結合量は、0.007mol/g以上であっても良く、0.008mol/g以上であっても良い。一方、P−S結合量は、0.020mol/g以下であっても良く、0.016mol/g以下であっても良い。

固体電解質材料は、Liイオン伝導性が高いことが好ましく、常温(25℃)におけるLiイオン伝導度は、例えば1×10−4S/cm以上であることが好ましく、1×10−3S/cm以上であることがより好ましい。また、固体電解質材料は、後述するDSC測定の発熱開始温度が、例えば、180℃以上であることが好ましく、185℃以上であることがより好ましい。また、固体電解質材料の形状は、特に限定されるものではないが、例えば粒状を挙げることができる。また、固体電解質材料の平均粒径(D50)は、例えば、0.1μm〜50μmの範囲内である。固体電解質材料の用途は特に限定されず、Liイオン伝導性を利用する任意の用途を挙げることができる。中でも、本発明の固体電解質材料は、全固体リチウム電池に用いられることが好ましい。

また、本発明の固体電解質材料は、Liイオン伝導性を利用する任意の用途に用いることができる。中でも、本発明の固体電解質材料は、全固体リチウム電池に用いられることが好ましい。

本発明の固体電解質材料を製造する方法としては、例えば、Li2S、P2S5およびLi3PO4を含有し、Li3PS4−xOx(1≦x≦3)の組成を有する原料組成物を準備する準備工程と、上記原料組成物を非晶質化し、非晶質体を形成する非晶質化工程と、上記非晶質体に熱処理を行い、結晶性を向上させる熱処理工程とを有する方法を挙げることができる。これにより、ガラスセラミックスが得られる。

準備工程において、原料組成物に用いられる出発原料の種類は特に限定されるものではない。例えば、P2S5の代わりに、単体Pおよび単体Sを用いても良い。また、上述したように、原料組成物は、LiX(XはF、Cl、BrまたはIである)をさらに含有していても良い。

非晶質化工程において、原料組成物を非晶質化する方法としては、例えば、ボールミル、振動ミル等のメカニカルミリング法を挙げることができる。メカニカルミリング法は、乾式であっても良く、湿式であっても良いが、均一処理の観点で後者が好ましい。湿式メカニカルミリング法に用いられる分散媒の種類は特に限定されるものではない。なお、メカニカルミリング条件により、破砕メディア(例えばボール)およびポット側面に付着する原料(例えばLi2S、P2S5、Li3PO4)の量が異なり、結果として、組成ずれが生じる可能性がある。また、メカニカルミリング条件により、Li2Sの粉砕の状況が異なり、Li2S単体の存在割合が異なる場合がある。本発明においては、得られた非晶質体に、Li2S結晶が残存しないように(Li2S結晶のピークがXRDで観察されないように)、メカニカルミリング条件を選択することが好ましい。なお、例えば、メノウ乳鉢等で原料を予備混合する場合にも、なるべく、Li2S結晶を砕くことが好ましい。

熱処理工程における加熱温度は、例えば、350℃以上であり、400℃以上であることが好ましく、500℃以上であることがより好ましい。一方、加熱温度は、例えば、1000℃以下である。加熱時間は、所望の結晶相が得られるように適宜調整する。加熱雰囲気は、例えば、不活性ガス雰囲気、真空等を挙げることができる。

B.全固体リチウム電池 図1は、本発明の全固体リチウム電池の一例を示す概略断面図である。図1における全固体リチウム電池10は、正極活物質層1と、負極活物質層2と、正極活物質層1および負極活物質層2の間に形成された固体電解質層3と、正極活物質層1の集電を行う正極集電体4と、負極活物質層2の集電を行う負極集電体5と、これらの部材を収納する電池ケース6とを有する。本発明においては、正極活物質層1、負極活物質層2および固体電解質層3の少なくとも一つが、上述した固体電解質材料を含有する。

本発明によれば、上述した固体電解質材料を用いることで、出力特性および熱安定性が高い全固体リチウム電池とすることができる。 以下、本発明の全固体リチウム電池について、構成ごとに説明する。

1.正極活物質層 本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層である。また、正極活物質層は、正極活物質の他に、導電化材、結着材および固体電解質材料の少なくとも一つを含有していても良い。

正極活物質としては、例えば、酸化物活物質、硫化物活物質を挙げることができる。酸化物活物質としては、具体的には、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等の岩塩層状型活物質、LiMn2O4、Li(Ni0.5Mn1.5)O4等のスピネル型活物質、LiFePO4、LiMnPO4、LiNiPO4、LiCuPO4等のオリビン型活物質等を挙げることができる。また、PO43−、SiO44−、BO33−等のポリアニオンを含む任意のポリアニオン系活物質を正極活物質として用いても良い。正極活物質は、作動電位が3.0V(Li/Li+)以上であることが好ましい。

正極活物質の表面は、コート層で被覆されていても良い。正極活物質と固体電解質材料との反応を抑制できるからである。コート層の材料としては、例えば、LiNbO3、Li3PO4、LiPON等のLiイオン伝導性酸化物を挙げることができる。コート層の平均厚さは、例えば1nm〜20nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜10nmの範囲内であることがより好ましい。

導電化材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、VGCF、グラファイト等の炭素材料を挙げることができる。結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素含有結着材等を挙げることができる。固体電解質材料としては、例えば、硫化物固体電解質材料および酸化物固体電解質材料を挙げることができる。中でも、上記「A.固体電解質材料」に記載した固体電解質材料を用いることが好ましい。また、正極活物質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。

2.負極活物質層 本発明における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層である。また、負極活物質層は、負極活物質の他に、導電化材、結着材および固体電解質材料の少なくとも一つを含有していても良い。

負極活物質としては、例えば金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。

導電化材、結着材および固体電解質材料については、上述した内容と同様である。また、負極活物質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。

3.固体電解質層 本発明における固体電解質層は、少なくとも固体電解質材料を含有する層である。また、固体電解質層は、固体電解質材料の他に、結着材を含有していても良い。固体電解質材料および結着材については、上述した内容と同様である。また、固体電解質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。

4.その他の構成 本発明の全固体リチウム電池は、通常、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および、負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができる。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができる。また、電池ケースには、一般的な電池の電池ケースを用いることができ、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。

5.全固体リチウム電池 本発明の全固体リチウム電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。なお、一次電池には、一次電池的使用(充電後、一度の放電だけを目的とした使用)も含まれる。また、全固体リチウム電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および型等を挙げることができる。

なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。

[実施例1] 出発原料として、硫化リチウム(Li2S、日本化学工業社製)と、五硫化二リン(P2S5、アルドリッチ社製)と、リン酸リチウム(Li3PO4)とを用いた。次に、Ar雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、Li2S、P2S5およびLi3PO4を、Li2S:P2S5:Li3PO4=56.25:18.75:25のモル比で混合した。この組成比は、Li3PS4:Li3PO4=3:1に該当し、Li3PS4−xOxにおけるx=1に該当する。

この混合物2gを、メノウ乳鉢を用いて10分間混合した。得られた混合物を、遊星型ボールミルの容器(45cc、ZrO2製)に投入し、ZrO2ボール(φ=10mm、10個)を投入し、容器を完全に密閉した(Ar雰囲気)。この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数400rpmで、1時間処理および15分休止のメカニカルミリングを40回行った。これにより、固体電解質ガラス(非晶質体)を得た。得られた固体電解質ガラスは、XRD測定において、Li2Sのピークを有していなかった。この固体電解質ガラスを解粉し、ペレット化した。そのペレットを試験管に入れ、真空封入した。昇温速度5℃/分で500℃まで昇温し、10時間保持し、自然冷却した。これにより、ガラスセラミックス(固体電解質材料)を得た。

[実施例2〜5、比較例1〜3] Li2S、P2S5およびLi3PO4の割合を、表1に示す組成を満たすように変更したこと以外は、実施例1と同様にして固体電解質材料を得た。

[実施例6] 出発原料として、Li2S、P2S5およびLi3PO4に加えて、LiIを用いた。Li2S、P2S5、Li3PO4およびLiIの割合を、aLiI・(100−a)Li3PS4−xOx(a=20、x=2)の組成を満たすように変更し、原料組成物の量を2.35g(0.35gのLiIを追加)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして固体電解質材料を得た。

[実施例7] Li2S、P2S5、Li3PO4およびLiIの割合を、aLiI・(100−a)Li3PS4−xOx(a=20、x=3)の組成を満たすように変更したこと以外は、実施例6と同様にして固体電解質材料を得た。なお、実施例1〜7および比較例1〜3の組成と、原料組成から算出されるP−S結合量を表1に示す。

[評価] (X線回折測定) 実施例1〜5および比較例1〜3で得られた固体電解質材料に対して、CuKα線を用いたX線回折(XRD)測定を行った。測定には、粉末X線回折装置RINT-Ultima III(リガク社製)を用い、2θ=10°〜60°の範囲で測定を行った。その結果を図2に示す。図2に示すように、実施例2では、2θ=17.80°、25.80°の位置にピークが確認された。これらのピークは、結晶相Aのピークであると推測され、他の実施例でも確認された。一方、比較例3(Li3PO4)では、2θ=22.30°、23.14°、24.80°、33.88°、36.48°の位置にピークが確認された。これらのピークは、結晶相Bのピークであり、実施例1〜5でも確認された。このように、実施例1〜5で得られた固体電解質材料は、結晶相Aおよび結晶相Bを有することが確認された。

なお、実施例1の結晶相Aのピークは、比較例1と同様のピーク(γ−Li3PS4のピーク)の影響により明確には確認できなかったが、ピーク分離を行ったところ、結晶相Aのピークが確認された。また、実施例1〜5において、2θ=17.80°付近のピーク(結晶相Aのピーク)の強度をIAとし、2θ=22.30°付近のピーク(結晶相Bのピーク)の強度をIBとして、IA/IBの値を求めた。結果を表2に示す。

(Liイオン伝導度測定) 実施例1〜7および比較例1〜3で得られた固体電解質材料を、セルの中に100mg入れ、10kNで1分間仮プレスすることで固体電解質層を得た。次に、得られた固体電解質層の両面に、厚さ19μmのカーボンコート箔を設置し、SUSピンで固体電解質層の両端を挟み、8kNの圧力をセルに付与し、その後、6Nトルクのボルトで拘束した。これにより、Liイオン伝導度の評価用セルを得た。得られた評価用セルに対してインピーダンス測定を行い、Liイオン伝導度を求めた。その結果を表2に示す。

(DSC測定) まず、実施例および比較例で得られた固体電解質材料を用いて、それぞれ正極合材を作製した。正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、岩塩層状型活物質)と、カーボンブラック(電気化学工業社製)と、上記固体電解質材料とを、正極活物質:カーボンブラック:固体電解質材料=62.5:37.5:5の体積比で、分散媒である脱ヘプタンに投入した。その後、超音波ホモジナイザーを用いて10分間撹拌した。その後、分散液の脱水ヘプタンを80℃のホットスターラーを用いて除去し、分散液を乾固させ、正極合材を得た。

次に、得られた正極合材を用いて、熱安定性の評価用セルを作製した。上記固体電解質材料を、マコール製のシリンダの中に200mg入れ、98MPaでプレスすることで固体電解質層のペレットを得た。同様に、上記正極合材を、マコール製のシリンダの中に200mg入れ、98MPaでプレスすることで正極活物質層のペレットを得た。得られた固体電解質層および正極活物質層を積層し、その両面をSUS製ピストン(集電体)で挟み、ボルト3本で締め付けた(トルク=2Nm、面圧=15MPa)。これにより、熱安定性の評価用セルを得た。その後、評価用セルをガラス製容器に入れて密閉した。

密閉した評価用セルを充電した。その後、評価用セルを解体し、正極合材を取り出した。5gの正極合材を耐熱密閉容器に入れ、示差走査熱量測定を室温から500℃の範囲で行い、発熱開始温度を測定した。昇温速度は10℃/分とし、標準試料としてAl2O3を用いた。その結果を表2に示す。

また、P−S結合量と、Liイオン伝導度および発熱開始温度との関係を図3に示す。図3に示すように、実施例1〜7は、比較例1(Li3PS4)に対して、Liイオン伝導度が同等以上であった。また、実施例1〜7は、比較例1(Li3PS4)よりも発熱開始温度が高かった。すなわち、Li3PS4−xOx(1≦x≦3)の組成を有し、結晶相Aおよび結晶相Bを有する固体電解質材料は、Liイオン伝導性および熱安定性が高いことが確認できた。また、実施例6、7では、LiIを添加することで、実施例1〜5よりもLiイオン伝導度が高くなった。なお、比較例2(x=3.12)は、図2において結晶相Aが僅かに析出している可能性があるが、Liイオン伝導度は、比較例1(x=0、Li3PS4)よりも低かった。その理由は、結晶相B(Li3PO4)の量が過剰になることで、結晶相AにおけるLiイオン伝導パスが切断されているからであると推測される。

また、図3における実施例1〜5および比較例1、2では、Liイオン伝導度が曲線的に変化し、実施例2において最も高いLiイオン伝導度が得られた。その理由は、結晶相Aおよび結晶相Bの存在割合が関係していると推測される。具体的には、P−S結合量が多い場合、結晶相Bの量が少ないため、結晶相Aが生成される量が少なく、結果として、γ−Li3PS4が多く生成されていると推測される。一方、P−S結合量が少ない場合、Li元素、P元素およびS元素の多くは、結晶相Aを形成しているものの、結晶相B(Li3PO4)の量が過剰になることで、結晶相AにおけるLiイオン伝導パスが切断されていると推測される。実施例2では、結晶相Aが十分に生成され、かつ、結晶相B(Li3PO4)の量が適切であるため、Liイオン伝導度が最も高かったと推測される。

1 … 正極活物質層 2 … 負極活物質層 3 … 固体電解質層 4 … 正極集電体 5 … 負極集電体 6 … 電池ケース 10 … 全固体リチウム電池

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