フッ素化剤

申请号 JP2015540558 申请日 2014-10-02 公开(公告)号 JP6246224B2 公开(公告)日 2017-12-13
申请人 ダイキン工業株式会社; 国立大学法人北海道大学; 发明人 原 正治; 岸川 洋介; 白井 淳; 並川 敬; 石原 寿美;
摘要
权利要求

一般式:MX(式中、Mはアルカリ金属である。Xはフッ素原子である)で表されるフッ化アルカリ金属、及び一般式:MHX2(式中、M及びXは前記に同じ)で表されるフッ化素アルカリ金属からなる群から選択される少なくとも一種である金属ハロゲン化物と、三フッ化臭素とからなる複合体(但し、BrF3・KFを除く)。窒素中における発熱分解開始温度が40℃以上である、請求項1に記載の複合体。非極性溶媒中において、前記金属ハロゲン化物と、三フッ化臭素とを混合して得られる反応生成物である、請求項1又は2に記載の複合体。三フッ化臭素1モルに対して、金属ハロゲン化物を0.5モル以上反応させて得られる反応生成物である、請求項3に記載の複合体。前記金属ハロゲン化物が、フッ化カリウム及びフッ化水素カリウムからなる群から選択される少なくとも一種のカリウムフッ化物である、請求項1〜4のいずれかに記載の複合体。非極性溶媒中において、前記金属ハロゲン化物と、三フッ化臭素とを混合し、生成した固形分を採取することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の複合体の製造方法。

说明书全文

本発明は、新規な複合体、その製造方法及びフッ素化剤に関する。

フッ素化合物は、機能性材料、医農薬化合物、電子材料等の各種化学製品、その中間体等として極めて重要な化合物である。

従来から、各種の有機化合物を原料として、これをフッ素化させて目的とするフッ素化合物を得る際に、フッ素化剤として、フッ素、フッ化素、四フッ化硫黄等が用いられている。しかしながら、これらのフッ素化剤は、毒性、腐食性、反応時における爆発危険性等のために取扱が難しく、そのために特殊な装置や技術が必要である。

近年、フッ化物イオンによる求核置換反応を利用して、有機化合物にフッ素原子を導入する反応およびそのためのフッ素化剤が種々開発されている。

例えば、五フッ化ヨウ素(IF5)は、高い酸化を持つ強力なフッ素化剤として知られているが、空気中では水分と反応して、HFを発生しながら分解する危険な液体状のフッ素化剤である。この様な性質を有するIF5については、近年、ピリジン−HFを混ぜると、空気中で安定な白色固体となり、種々のイオウ化合物のフッ素化に有効であることが報告されている(非特許文献1参照)。

一方、三フッ化臭素(BrF3)は、IF5より更に酸化力が強い液体であり、種々基質のフッ素化に利用可能であり、例えば、核燃料処理において、六フッ化ウランの製造などに用いられている。しかしながら、BrF3は、毒性と腐食性のある液体であり、皮膚や眼に対して強い刺激性があり、空気中では、短時間で分解してフッ化水素等を生じるという問題がある。さらにBrF3は室温で塩化メチレンなどの汎用溶媒と激しく反応するため、フッ素化剤として使用するにあたって使用溶媒に制限がある。このため、BrF3は、フッ素化剤として強い反応性を有するにも拘わらず、その使用には特別な知識と装置が必要であるために、広い範囲での実用化は進んでいないのが現状である。

S.Hara, M.Monoi, R.Umemura, C.Fuse, Tetrahedron, 2012, 68, 10145-10150.

本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、フッ素化剤として強い反応性を有し、各種のフッ素化反応に有効に利用でき、しかも空気中でも安全に取り扱うことが可能な新規な物質を提供することである。

本発明者は、上記した目的を達成すべく、鋭意研究を重ねてきた。その結果、空気中で短時間で分解するために取り扱いの難しいフッ素化剤とされている三フッ素臭素(BrF3)を、ハロゲン化金属又はハロゲン化水素金属と反応させて得られる生成物からなる複合体は、空気中で安全に取り扱うことが可能であって、各種のフッ素化反応におけるフッ素化剤として優れた性能を発揮する物質となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。

即ち、本発明は、下記の新規な複合体、フッ素化剤、及びフッ素化剤の製造方法を提供するのである。 項1. ハロゲン化金属及びハロゲン化水素金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属ハロゲン化物と、三フッ化臭素とからなる複合体。 項2. 窒素中における発熱分解開始温度が40℃以上である、上記項1に記載の複合体。 項3. 非極性溶媒中において、ハロゲン化金属及びハロゲン化水素金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属ハロゲン化物と、三フッ化臭素とを混合して得られる反応生成物である、上記項1又は2に記載の複合体。 項4. 三フッ化臭素1モルに対して、金属ハロゲン化物を0.5モル以上反応させて得られる反応生成物である、上記項3に記載の複合体。 項5. 金属ハロゲン化物が、一般式:MX(式中、Mは、M1又は(M2)1/2であって、M1はアルカリ金属であり、M2はアルカリ土類金属である。Xはハロゲン原子である)で表されるハロゲン化金属、及び一般式:MHX2(式中、M及びXは前記に同じ)で表されるハロゲン化水素金属からなる群から選択される少なくとも一種である、上記項1〜4のいずれかに記載の複合体。 項6. 金属ハロゲン化物が、ハロゲン化カリウム及びハロゲン化水素カリウムからなる群から選択される少なくとも一種のカリウムハロゲン化物である、上記項1〜5のいずれかに記載の複合体。 項7. 金属ハロゲン化物が、フッ化カリウム及びフッ化水素カリウムからなる群から選択される少なくとも一種のカリウムフッ化物である、上記項1〜6のいずれかに記載の複合体。 項8. 上記項1〜7のいずれかに記載の複合体からなるフッ素化剤。 項9. 非極性溶媒中において、ハロゲン化金属及びハロゲン化水素金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属ハロゲン化物と、三フッ化臭素とを混合し、生成した固形分を採取することを特徴とする、上記項1〜7のいずれかに記載の複合体の製造方法。

本明細書中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。 本明細書中、「アルキル基」としては、例えば、C1−6アルキル基(例、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基)等の低級アルキル基が挙げられる。 本明細書中、「アルコキシ基」としては、例えば、R−O−基(Rは、アルキル基を表す。)等が挙げられる。 本明細書中、「エステル基」としては、例えば、R−CO−O−基(Rは、アルキル基を表す。)、及びR−O−CO−基(Rは、アルキル基を表す。)等が挙げられる。 本明細書中、「アミド基」としては、例えば、RaRbN−CO−基(Ra、及びRbは、それぞれ独立して水素原子、又はアルキル基を表す。)、Ra−CO−NRb−基(Ra、及びRbは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。) 本明細書中、「置換されていてもよいアミノ基」としては、例えば、RaRbN−基(Ra、及びRbは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、又は1個以上の置換基を有することのあるフェニル基を表す。)等が挙げられる。当該「1個以上の置換基を有することのあるフェニル基」は、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、及びアミノ基からなる群より選択される1個以上の置換基を有することのあるフェニル基である。

以下、本発明の新規複合体及び該複合体からなるフッ素化剤について説明する。

フッ素化剤 本発明のフッ素化剤は、ハロゲン化金属及びハロゲン化水素金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属ハロゲン化物と、三フッ化臭素(BrF3)とを反応させて得られる両者の複合体からなるものである。該複合体は、金属ハロゲン化物と三フッ化臭素との単なる混合物ではない新規な物質であり、例えば、窒素中における発熱分解開始温度が40℃以上という特徴を有するものである。

前述した通り、三フッ化臭素は、空気中では短時間で分解するため、取り扱いの困難な物質である。これに対して、本発明のフッ素化剤では、三フッ化臭素は、ハロゲン化金属及びハロゲン化水素金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属ハロゲン物との単なる混合物ではなく、複合体を形成している。このため、本発明のフッ素化剤の有効成分である複合体は、単体の三フッ化臭素とは異なり、窒素中における発熱分解開始温度が40℃以上という特徴を有するものであり、常温では空気中において安定に存在できる物質である。更に、該複合体は、汎用溶媒である塩化メチレンとの反応性が低いという特徴も有するものであり、取り扱いの容易な物質である。該複合体の窒素中における発熱分解開始温度は、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。

一般に市販されているフッ素化剤の中には熱に不安定なものも多く、例えば、有機合成反応におけるフッ素化剤として汎用されているDAST (三フッ化N,N-ジエチルアミノ硫黄)の発熱分解開始温度はおよそ85℃である。また、DASTは147℃で爆発的に分解することが知られている (W. J. Middleton et al., J. Fluorine Chem., 1989, 42, 137-143.)。これに対して、本発明の複合体の窒素中での発熱分解開始温度は40℃以上であり、例えば、後述する実施例1で得られたBrF3-2KHF2複合体の発熱分解開始温度は197℃であり、実施例2で得られたBrF3-2KF複合体の発熱分解開始温度は252℃であることから、より安全に使用できる物質である。

しかも、本発明のフッ素化剤の有効成分である複合体は、前述したIF5とピリジン−HFとの反応生成物と比較すると、安価であることに加えて、各種のフッ素化反応に対して高い反応性を有し、高収率で目的とするフッ素化物を得ることができるために、工業的に有用性の高いフッ素化剤となる。

尚、本発明の複合体の発熱分解開始温度は、窒素雰囲気中において下記の方法で測定した値である。

測定方法:TG/DTA サンプル量:9.5 mg 昇温条件:20℃で10分保持した後、10℃/分の昇温速度で600℃まで加熱。

本発明のフッ素化剤の有効成分である複合体は、ハロゲン化金属及びハロゲン化水素金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属ハロゲン化物と、三フッ化臭素を原料として、これらの化合物を、例えば、非極性溶媒中で反応させることによって得ることができる。

原料として用いる金属ハロゲン化物の内で、ハロゲン化金属は、一般式:MXで表される化合物であり、ハロゲン化水素金属は、一般式:MHX2で表される化合物である。

式中Mは、M1又は(M2)1/2で表されるものであって、M1はアルカリ金属、M2はアルカリ土類金属である。M1で表されるアルカリ金属の具体例としては、K, Li, Cs, Na等を挙げることができ、M2で表されるアルカリ土類金属の具体例としては、Ca, Mg,等を挙げることができる。

Xはハロゲン原子であり、具体例としては、フッ素原子、塩素原子などを挙げることができる。ハロゲン化水素金属では、2個のXは同一であってもよく、互いに異なってもよい。これらのハロゲン化金属及びハロゲン化水素金属は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。

本発明では、特に、入手の容易さ等の点から、Mはアルカリ金属であることが好ましく、特に、カリウムであることが好ましい。従って、三フッ化臭素と反応させる金属ハロゲン化物としては、ハロゲン化アルカリ金属及びハロゲン化水素アルカリ金属からなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ金属ハロゲン化物が好ましく、ハロゲン化カリウム及びハロゲン化水素カリウムからなる群から選択される少なくとも一種のカリウムハロゲン化物がより好ましい。

また、フッ素化剤として使用する際に、目的とするフッ素化剤を選択性良く得るためには、Xはフッ素原子であることが好ましい。従って、本発明では、金属ハロゲン化物としては、特に、フッ化カリウム及びフッ化水素カリウムからなる群から選択される少なくとも一種のカリウムフッ化物が好ましい。

本発明では、金属ハロゲン化物は、高い反応性の点で、好ましくは、ハロゲン化水素金属である。従って、本発明では、金属ハロゲン化物としては、特に、フッ化水素カリウムが好ましい。

上記した金属ハロゲン化物と三フッ化臭素との反応は、例えば、非極性溶媒中において、金属ハロゲン化物と三フッ化臭素とを混合することによって行うことができる。但し、非極性溶媒中で反応させる方法は本発明の複合体の製造方法の一例であり、本発明の複合体の製造方法は非極性溶媒中で反応させる方法に限定されるものではない。

非極性溶媒としては、原料として用いる三フッ化臭素と反応しない溶媒を用いればよく、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン、へプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン等を用いることができる。これらの溶媒は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。

非極性溶媒中における三フッ化臭素の濃度については、特に、限定的ではなく、均一な懸濁液が形成される濃度とすればよい。例えば、0.05g/mL〜2.0g/mL程度の濃度とすることができる。 金属ハロゲン化物の使用量は、特に限定的ではなく、通常、三フッ化臭素1モルに対して0.5モル程度以上使用すればよいが、反応後に三フッ化臭素が残存しないように、三フッ化臭素に対して等モル以上の使用量とすることが好ましい。例えば、三フッ化臭素1モルに対して、一般式:MXで表されるハロゲン化金属及び一般式:MHX2で表されるハロゲン化水素金属の合計量を、0.5〜5モル程度、好ましくは、1〜3モル程度、より好ましくは1〜2モル程度とすればよい。

具体的な反応方法の一例としては、反応容器としてテフロン(登録商標)容器などの三フッ化臭素と反応性のない容器を用い、原料とする金属ハロゲン化物を非極性溶媒中で均一に懸濁させた後、必要量の三フッ化臭素を添加して充分に撹拌すればよい。

反応時の雰囲気は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。反応温度については、三フッ化臭素と溶媒とが反応しないように充分に低温とすることが好ましい。具体的な反応温度について、使用する溶媒の融点等に基づいて、溶媒の融点以上の温度であって、三フッ化臭素との反応が生じない範囲とすればよい。例えば、塩化メチレンを溶媒とする場合には、−85〜−50℃程度とすることができる。

反応時間については、反応温度、使用するフッ化金属の種類などによって異なるが、通常は、15分〜5時間程度とすればよい。

上記した方法で反応を行った後、反応液の温度を室温に戻し、反応生成物である固形分を回収することによって、目的とするハロゲン化金属及びハロゲン化水素金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属ハロゲン化物と、三フッ化臭素との複合体を得ることができる。回収された固形分については、使用した溶媒を用いて、洗浄液が無色となるまで洗浄を繰り返すことが好ましい。

フッ素化剤の用途 上記した方法で得られるハロゲン化金属及びハロゲン化水素金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属ハロゲン化物と、三フッ化臭素とからなる本発明の複合体は、各種の有機化合物のフッ素化反応に対して高い反応性を有するフッ素化剤として有用であって、常温の空気中で安定に存在する取り扱いが容易な物質である。

本発明の複合体は、従来から知られている各種の有機化合物のフッ素化反応において有効に使用できるフッ素化剤である。例えば、各種のフッ素化反応等において、高収率で目的とするフッ素化物を得ることができる。

以下、本発明の複合体をフッ素化剤として有効に使用できるフッ素化反応の一例を示すが、本発明の複合体をフッ素化剤として使用できるフッ素化反応は、これらの反応に限定されるものではない。 本明細書中、「アルキル基」は、例えば、低級アルキル基である。 本明細書中、「低級アルキル基」は、例えば、炭素数1〜6のアルキル基である。 本明細書中、「シクロアルカン」は、例えば、炭素数1〜10のシクロアルカンである。

(1)脱硫ジフッ素化反応 本発明の複合体は、脱硫ジフッ素化反応のフッ素化剤として用いることができる。例えば、下記反応式に従って、該フッ素化剤をベンジルスルフィド化合物と反応させることによって、gem-ジフッ素化物を得ることができる。

上記反応で用いるベンジルスルフィド化合物において、Arとしては、置換基を有することのあるフェニル基を例示できる。Wとしては、エステル残基(-CO2R)、アミド残基(-CON(R)2)、アシル基(-COR)等を例示できる。Rとしては、低級アルキル基、置換基を有することのあるフェニル基などを例示できる。尚、BrF3-2(KHF2)は、BrF31モルに対して、KHF22モルを反応させて得られる複合体を意味する。 Arで示される「置換基を有することのあるフェニル基」は、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、及びアミノ基からなる群より選択される1個以上の置換基を有することのあるフェニル基である。 Rで示される「置換基を有することのあるフェニル基」は、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、及びアミノ基からなる群より選択される1個以上の置換基を有することのあるフェニル基である。

上記反応は、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン、へプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒中において行うことができる。反応温度は、例えば、室温程度とすることができる。

具体的な反応条件は、使用する原料の種類などに応じて、公知の脱硫フッ素化反応の条件と同様の条件とすればよい。

また、下記反応式に従って、該フッ素化剤をチオノエステル化合物と反応させることによっても、gem-ジフッ素化物を得ることができる。

上記反応式において、R1及びR2は、同一又は異なって、それぞれ置換基を有することのあるフェニル基、低級アルキル基、シクロアルキル基などを示し、R1とR2は、互いに結合して、環状構造を形成してもよい。BrF3-2(KHF2)は、BrF31モルに対して、KHF22モルを反応させて得られる複合体を意味する。 R1及びR2でそれぞれ示される「置換基を有することのあるフェニル基」は、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、及びアミノ基からなる群より選択される1個以上の置換基を有することのあるフェニル基である。 R1とR2は、互いに連結して、例えば、アルキレン鎖(例、−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−)等の2価の基を形成してもよい。

上記反応についても、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン、へプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒中において行うことができる。具体的な反応条件は、使用する原料の種類などに応じて、公知の脱硫ジフッ素化反応の条件に基づいて決めればよい。

(2)脱硫フッ素化反応 本発明の複合体は、各種のスルフィド化合物の脱硫フッ素化反応におけるフッ素化剤としても有効に利用できる。例えば、下記各反応式に従って、オルトチオエステル化合物、チオアセタール化合物等のスルフィド化合物と本発明のフッ素化剤とを反応させることによって、gem-ジフッ素体やトリフルオロメチル化合物を得ることができる。

上記反応式において、3個のAは、それぞれ、同一又は異なって、例えば、低級アルキル基、置換基を有することのあるフェニル基等を示す。これらの低級アルキル基の内で、2個のアルキル基は相互に結合して環状構造を形成してもよい。Rとしては、例えば、置換基を有することのあるフェニル基、基:-C(R1)2CO2R2等を例示できる。R1及びR2はそれぞれ低級アルキル基である。 Aで示される「置換基を有することのあるフェニル基」は、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、及びアミノ基からなる群より選択される1個以上の置換基を有することのあるフェニル基である。 Rで示される「置換基を有することのあるフェニル基」は、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、及びアミノ基からなる群より選択される1個以上の置換基を有することのあるフェニル基である。

上記反応式において、2個のAは、それぞれ、同一又は異なって、例えば、低級アルキル基、置換基を有することのあるフェニル基等を示す。Arとしては、置換基を有することのあるフェニル基、置換基を有することのあるナフチル基、アダマンチル基などを例示できる。Rとしては、水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基などを例示できる。RとArは、互いに結合して、環状構造を形成してもよい。 Aで示される「置換基を有することのあるフェニル基」は、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、及びアミノ基からなる群より選択される1個以上の置換基を有することのあるフェニル基である。 Arで示される「置換基を有することのあるフェニル基」は、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、及びアミノ基からなる群より選択される1個以上の置換基を有することのあるフェニル基である。 Arで示される「置換基を有することのあるナフチル基」は、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、及びアミノ基からなる群より選択される1個以上の置換基を有することのあるナフチル基である。

上記各反応式において、BrF3-2(KHF2)は、BrF31モルに対して、KHF22モルを反応させて得られる複合体を意味する。

上記各反応は、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン、へプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒中において行うことができる。具体的な反応条件は、使用する原料の種類などに応じて、公知の脱硫フッ素化反応の条件に基づいて決めればよい。

また、下記の各反応式に従って、チオグリコシドのフッ素化によるフルオログルコシドの合成反応を行う際にも本発明の複合体をフッ素化剤として使用できる。

上記各反応式において、Acはアセチル基を示し、Phはフェニル基を示し、Bzはベンゾイル基を示し、Bnはベンジル基を示す。

上記各反応も、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン、へプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒中において行うことができる。具体的な反応条件についても、使用する原料の種類などに応じて、公知の脱硫フッ素化反応の条件に基づいて決めればよい。

(3)脱窒素ジフッ素化反応 本発明の複合体は、脱窒素ジフッ素化反応のフッ素化剤としても用いることができる。例えば、下記反応式に従って、該フッ素化剤をケトンヒドラゾン化合物と反応させることによって、gem-ジフッ素化合物を得ることができる。

上記反応式において、R1及びR2は、同一又は異なって、それぞれ置換基を有することのあるフェニル基、水素原子又は低級アルキル基を示し、R1とR2は、互いに結合して、環状構造を形成してもよい。BrF3-2(KHF2)は、BrF31モルに対して、KHF22モルを反応させて得られる複合体を意味する。 R1及びR2でそれぞれ示される「置換基を有することのあるフェニル基」は、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、及びアミノ基からなる群より選択される1個以上の置換基を有することのあるフェニル基である。 R1とR2は、互いに結合して、例えば、アルキレン鎖(例、−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−)等の2価の基を形成してもよい。

上記反応についても、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン、へプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒中において行うことができる。具体的な反応条件は、使用する原料の種類などに応じて、公知の脱窒素ジフッ素化反応の条件に基づいて決めればよい。

(4)オレフィン化合物への付加反応 本発明の複合体は、オレフィン化合物へのBr-F付加反応におけるフッ素化剤としても用いることができる。例えば、下記反応式に従って、該フッ素化剤をオレフィン化合物と反応させることによって、Br-F付加物を得ることができる。

上記反応式において、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、アルキル基、エステル残基(-CO2R)等を例示できる。また、R1とR2は互いに結合して、環状構造を形成してもよい。BrF3-2(KHF3)は、BrF31モルに対して、KHF32モルを反応させて得られる複合体を意味する。 R1とR2が、互いに結合して、例えば、アルキレン鎖(例、−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−)等の2価の基を形成してもよい。 電子欠損オレフィン(例、R1及び/又はR2がエステル等の電子吸引基であるR1−C=C−R2)では、通常は付加反応が起こり難い。しかし、本発明のフッ素化試薬を用いると、付加反応が進行し、十分な収率で、目的物が得られる。このような反応の例としては、下記反応式の反応が例示される。 CH2=CHCO2R→CH2BrCHFCO2R+CH2FCHBrCO2R [式中、Rはアルキル基である。]

上記反応についても、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン、へプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒中において行うことができる。具体的な反応条件は、使用する原料の種類などに応じて、公知のオレフィンへの付加反応の条件に基づいて決めればよい。

本発明の複合体は、各種の有機化合物のフッ素化反応に対して高い反応性を示すフッ素化剤として有用であり、例えば、汎用溶媒である塩化メチレンとの反応性が低く、更に、空気中において安定に存在するために、取り扱いが容易な物質である。

従って、本発明の複合体は、例えば、脱硫ジフッ素化反応、脱硫フッ素化反応、脱窒素フッ素化反応、オレフィンへの付加反応等の各種のフッ素化反応において有用性の高いフッ素化剤である。

以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。実施例中の、記号、及び略号は、特に記載の無い限り、化学分野における通常の意味で使用されている。 実施例1(複合体の製造) テフロン(登録商標)容器に KHF2 (5.17 g, 66 mmol) と CH2Cl2 (30 mL) を加え、-78℃ に冷却して、BrF3 (4.54 g, 33 mmol) を滴下した。そのままの温度で 30 分攪拌し、室温まで昇温し、液体部分を取り除き、固体部分に CH2Cl2 を20mL加えて洗浄し、これを3回繰り返した。さらに窒素を吹き込みながら攪拌して、BrF3 1モルに対して、KHF2 を2モル反応させた複合体(BrF3-2KHF2複合体) (8.84 g, 91%) を固体として得た。19F-NMR (30KHz) δ -10〜-65 (m), -150 (s).

得られた複合体について、室温下で塩化メチレンと混合しても発熱現象は観測されず、反応は起こらなかった。また、上記した方法で測定した複合体の窒素中における発熱分解開始温度は197℃であった。

実施例2(複合体の製造) テフロン(登録商標)容器に KF (2.5 g, 44 mmol) と CH2Cl2 (10 mL) を加え、-78℃ に冷却して、BrF3 (3.0 g, 22 mmol) を滴下した。そのままの温度で30分攪拌し、室温まで昇温した。液体部分を取り除き、固体部分に CH2Cl2 を5mL加えて洗浄し、これを3回繰り返した。さらに窒素を吹き込みながら攪拌して、BrF3 1モルに対して、KFを2モル反応させた複合体(BrF3-2KF複合体)を固体として得た。19F-NMR (30KHz) δ -133 (s), -150 (s).

得られた複合体について、室温下で塩化メチレンと混合しても発熱現象は観測されず、反応は起こらなかった。また、上記した方法で測定した複合体の窒素中における発熱分解開始温度は252℃であった。

実施例3(脱硫ジフッ素化反応) テフロン(登録商標)製の容器に 実施例1で得たBrF3-2KHF2 複合体 (193 mg, 0.66 mmol) とCH2Cl2 (2.4 mL) を入れた。これに、室温で下記表1に示す化合物 1a (100 mg, 0.3 mmol) を加え、そのままの温度で 1 時間撹拌した。反応終了後、水を加えてクエンチし分液後、飽和 NaHCO3 水溶液と飽和 Na2S2O3 水溶液で洗浄した。有機層を MgSO4 で脱水、濃縮した後、シリカカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記表1に示す化合物2a (57 mg, 84%) を得た。

実施例4〜6(脱硫ジフッ素化反応) 原料として、実施例3で用いた化合物1aに代えて、下記表1に示す化合物1b1dを用い、原料に対するフッ素化剤のモル比と反応時間を表1に示す値に変更する以外は、実施例3と同様にして、脱硫ジフッ素化反応を行った。生成物及びその収率を表1に示す。尚、下記各表において、収率の欄に記載した数値は、単離収率であり、括弧内の数値はF-NMRによって算出した収率である。

実施例7(脱硫ジフッ素化反応) 原料として、実施例3で用いた化合物1aに代えて、下記表2に示す化合物1eを用い、原料に対するフッ素化剤のモル比及び反応時間を表2に示す値に変更する以外は、実施例3と同様にして、脱硫ジフッ素化反応を行った。生成物及びその収率を表2に示す。

実施例8及び9(脱硫フッ素化反応) 原料として、実施例3で用いた化合物1aに代えて、下記表3に示す化合物1f又は1gを用い、原料に対するフッ素化剤のモル比、反応温度、及び反応時間を表3に示す値に変更する以外は、実施例3と同様にして、脱硫フッ素化反応を行った。生成物及びその収率を表3に示す。

実施例10及び11(脱硫フッ素化反応) 原料として、実施例3で用いた化合物1aに代えて、下記表4に示す化合物1h又は1iを用い、原料に対するフッ素化剤のモル比及び反応時間を表4に示す値に変更する以外は、実施例3と同様にして、脱硫フッ素化反応を行った。生成物及びその収率を表4に示す。

実施例12(脱硫フッ素化反応) 原料として、実施例3で用いた化合物1aに代えて、下記表5に示す化合物1jを用い、原料に対するフッ素化剤のモル比及び反応時間を表5に示す値に変更する以外は、実施例3と同様にして、脱硫フッ素化反応を行った。生成物及びその収率を表5に示す。α体の収率が52%、及びβ体の収率が31%であり、これらの合計で、収率83%であった。 実施例12−2(脱硫フッ素化反応) 原料として、実施例3で用いた化合物1aに代えて、下記表5に示す化合物1j-2を用い、原料に対するフッ素化剤のモル比及び反応時間を表5に示す値に変更する以外は、実施例3と同様にして、脱硫フッ素化反応を行った。生成物及びその収率を表5に示す。α体の収率が52%、及びβ体の収率が31%であり、これらの合計で、収率83%であった。

実施例13(脱窒素フッ素化反応) 原料として、実施例3で用いた化合物1aに代えて、下記表5に示す化合物1kを用い、原料に対するフッ素化剤のモル比及び反応時間を表6に示す値に変更する以外は、実施例3と同様にして、脱硫フッ素化反応を行った。生成物及びその収率を表6に示す。

実施例14(オレフィンへの Br-F 付加) テフロン(登録商標)製の容器に 、実施例1で得たBrF3-2(KHF2) 複合体 (293 mg, 1 mmol) とCH2Cl2 (5 mL) を入れた。-40℃で 下記表7に示す化合物1l (68 mg, 0.5 mmol) を加え、そのままの温度で 24 時間撹拌した。反応終了後、水を加えてクエンチし分液後、飽和 NaHCO3 水溶液と飽和 Na2S2O3 水溶液で洗浄した。有機層を MgSO4 で脱水、濃縮した後、シリカカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物2l (58 mg, 50% (2 : 1)) を得た。

実施例15(脱硫ジフッ素化反応) 原料として、実施例3で用いた化合物1aに代えて、下記表8に示す化合物1mを用い、原料に対するフッ素化剤のモル比と反応時間を表8に示す値に変更する以外は、実施例3と同様にして、脱硫ジフッ素化反応を行った。生成物及びその収率を表8に示す。 化合物1mの構造式において、Arは、p-クロロフェニルである。

実施例16〜18(脱硫フッ素化反応) 原料として、実施例3で用いた化合物1aに代えて、下記表9に示す化合物1o1qを用い、原料に対するフッ素化剤のモル比、反応温度、及び反応時間を表9に示す値に変更する以外は、実施例3と同様にして、脱硫フッ素化反応を行った。生成物及びその収率を表9に示す。

実施例19〜21(脱硫フッ素化反応) 原料として、実施例3で用いた化合物1aに代えて、下記表10に示す化合物1r1tを用い、原料に対するフッ素化剤のモル比、反応温度、及び反応時間を表10に示す値に変更する以外は、実施例3と同様にして、脱硫フッ素化反応を行った。生成物及びその収率を表10に示す。

実施例22(脱硫フッ素化反応) 原料として、実施例3で用いた化合物1aに代えて、下記表11に示す化合物1uを用い、原料に対するフッ素化剤のモル比、反応温度、及び反応時間を表11に示す値に変更する以外は、実施例3と同様にして、脱硫フッ素化反応を行った。生成物及びその収率を表11に示す。

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