物品、それを鑑別する方法、及び減衰定数変調を用いる鑑別システム

申请号 JP2015523072 申请日 2013-03-14 公开(公告)号 JP6313760B2 公开(公告)日 2018-04-18
申请人 ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド; Honeywell International Inc.; 发明人 ラポポート,ウィリアム・ロス; ケーン,ジェームズ; ラウ,カーステン;
摘要
权利要求

物品であって: 基材;及び 基材上のセキュリティ機能; を含み; セキュリティ機能は、 第1のルミネセンス蛍光体を含む第1のインク組成物を有する第1の区域;及び 第2のインク組成物を有し、第1のルミネセンス蛍光体と異なる第2のルミネセンス蛍光体を含む第2の区域; を含み; 第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体は、識別できない励起エネルギー波長、識別できない発光波長、及び識別できる時間的減衰特性を有する、前記物品。第1のルミネセンス蛍光体が発光イオン及び母体結晶格子材料を含み、第2のルミネセンス蛍光体が第1のルミネセンス蛍光体と同じ発光イオン及び同じ母体結晶格子材料を含む、請求項1に記載の物品。第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体が同じ化学成分を有し、化学的に識別できず、第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体が、発光イオンと異なっていて、第1のインク組成物及び第2のインク組成物の時間的減衰特性を変化させる妨害イオンを更に含み、妨害イオンが第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体において同じである、請求項2に記載の物品。物品を鑑別する方法であって: セキュリティ機能をその上に有する基材を含む物品を与える工程であって、セキュリティ機能は、第1のルミネセンス蛍光体を含む第1のインク組成物を含む第1の区域、及び第2のルミネセンス蛍光体を含む第2のインク組成物を含む第2の区域を有し、第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体は、識別できない励起エネルギー波長、識別できない発光波長、及び識別できる時間的減衰特性を有する、前記工程; 物品を、第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体を励起させるのに十分な強度を有する光を生成する励起光源によって生成する光に曝露する工程; 最初に第1の区域の少なくとも一部又は第2の区域の少なくとも一部を含む物品の領域の第1の画像を検出する工程; 2番目に物品の実質的に同じ領域の第2の画像を検出する工程; 第1の画像及び第2の画像の領域内に存在する第1のルミネセンス蛍光体又は第2のルミネセンス蛍光体のタイプに関する予測される時間的減衰特性に基づいて物品に関する合否データを求める工程であって、ここで、第1の区域を含む領域に関して少なくとも1つの第1の画像及び第2の画像を検出し、第2の区域を含む領域に関して少なくとも1つの第1の画像及び第2の画像を検出する、前記工程; を含む、前記方法。鑑別システムであって、 物品であって、基材及び基材上のセキュリティ機能を含み、セキュリティ機能は、第1のルミネセンス蛍光体を含む第1のインク組成物を有する第1の区域、及び第2のインク組成物を有し、第1のルミネセンス蛍光体と異なる第2のルミネセンス蛍光体を含む第2の区域を含み、第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体は、識別できない励起エネルギー波長、識別できない発光波長、及び識別できる時間的減衰特性を有する、前記物品、及び 物品を鑑別するように構成されている鑑別装置を含み、鑑別装置は: 励起光源; 場合によっては光学フィルター; 第1の検出器素子及び第2の検出器素子であって、ここで、第1の検出器素子は、初めに物品の1つの領域の第1の画像を検出するように構成され、更に第1の画像に関する電子信号データを出するように構成されており、第2の検出器素子は、二番目に物品の実質的に同じ領域の第2の画像を検出するように構成され、更に第2の画像に関する電子信号データを出力するように構成されている、前記第1の検出器素子及び前記第2の検出器素子;及び 出力電子信号データを集めて評価する処理ユニットであって、ここで処理ユニットは、第1の画像及び第2の画像が、第1の画像及び第2の画像の領域内に存在する第1のルミネセンス蛍光体又は第2のルミネセンス蛍光体のタイプに関する予測される時間的減衰特性を示すかどうかを求めるように構成されている、前記処理ユニット; を含む鑑別システム。

说明书全文

[0001]本出願は、2012年7月20日出願の米国仮出願61/673,829の利益を主張する。 [0002]本技術分野は、概して、セキュリティ機能(security feature)を含む物品、セキュリティ機能を含む物品を鑑別する方法、及び物品を鑑別するための鑑別システムに関する。より詳しくは、本技術分野は、減衰定数変調を検出することによって鑑別されるセキュリティ機能を含む物品に関する。

[0003]有価書類のようなセキュリティ機能を含む物品は、多くの方法で鑑別することができる。幾つかの方法は、クレジットカード上のホログラム、紙幣上のエンボス加工された画像又は透かし模様、セキュリティ箔、セキュリティリボン、紙幣内の着色糸又は着色繊維、或いはパスポート上の浮動画像及び/又は沈下画像のような、物品上に配置されるか又は物品中に導入される目に見える(即ち顕在的な)セキュリティ機能を含む。これらの機能は目によって検出するのが容易であり、識別検証のための装置を必要としない可能性があるが、これらの顕在的な機能は偽造及び/又は模造を試みる者によって容易に識別される。したがって、有価書類には、顕在的な機能に加えて秘密の(即ち隠された)機能を含ませることができる。隠された機能の例としては、有価書類の基材中に導入される目に見えない蛍光繊維、化学薬品感受性の染料、及びルミネセンス顔料又は蛍光染料が挙げられる。隠された機能はまた、有価書類の基材上に印刷されるインク中、又は積層された有価書類において用いられる膜を形成するのに用いる樹脂内に含ませることもできる。

[0004]紙幣のような有価書類は、しばしば紙幣処理システムのような選別機内で高速で処理され、選別機内において有価書類の鑑別を行って、効率を最大にし、且つ偽の有価値文書が検出されないで通過する危険性を最小にすることが望ましい。高速で移動する有価書類を鑑別するために開発された1つの隠された機能は、有価書類を形成するために用いられる紙、インク、又は他のセキュリティ機能によって有価書類内又はその上にルミネセンス蛍光体を導入することを含む。所定の有価書類において用いられる特定のルミネセンス蛍光体の特性は、一般に高いレベルのセキュリティを維持するために厳重に保護されている。ルミネセンス蛍光体を存在させることによって、複数のパラメーターに関して応答指令する場合に有価書類の迅速な鑑別が可能である。

[0005]特定のルミネセンス蛍光体を識別することのセキュリティ及び困難性を向上させるために、有価書類にはしばしば、異なるルミネセンス蛍光体を有する異なるインク組成物を含む複数の区域を含ませており、鑑別技術は、有価書類の別個の区域における特定のルミネセンス蛍光体の存在を検出することを含む。しかしながら、ここ数年において偽造が深刻化する問題になっており、偽造者がセキュリティ機能を模造する能は相当に上昇している。有価書類が異なるインクを含む複数の区域を有していることを優れた偽造者が突き止めたら、具体的なルミネセンス蛍光体を識別するために、最新の分光学的ツール及びスペクトルを含む発光物質に関する公有文書がしばしば用いられる可能性がある。ルミネセンス蛍光体は、識別されたら、模造して高速選別試験を通過することができる有価書類を作成するために用いることができる。

[0006]より識別できないルミネセンス蛍光体に至るアプローチ及び複数の材料の使用によって、しばしば、より高い使用率、より複雑な製造方法、より高いコスト、及びより低い材料収量がもたらされる。実験室環境において製造することができる識別できないルミネセンス蛍光体は、商業的に必要な量に拡大するのが困難であることが分かるであろう。

[0007]静止状態で可視光又は紫外光によって励起されるルミネセンス蛍光体の減衰時間を検出することを含む鑑別システムが長年利用されており、最近においてはルミネセンス蛍光体の減衰時定数(τ)を選別機において高速で測定することができる技術が開発されている。ルミネセンス蛍光体の減衰時定数は、ルミネセンス蛍光体の減衰時間に影響を与える妨害イオンを用いることによるか、又は濃度クエンチのような他の効果によって制御することができる。しかしながら、偽造者は、ルミネセンス蛍光体の化学成分が識別されたら、減衰時間パラメーターを識別して具体的なルミネセンス蛍光体の減衰時間パラメーターを模造することがなお可能である。

[0008]したがって、基材が静止しているか又は高速選別装置などの中で動いている条件下において物品を鑑別するのに用いることができる、物品の基材上のセキュリティ機能を提供することが望ましい。また、複製するのが困難で、その差を検出するのが困難な異なるインクを含む別々の区域を含むセキュリティ機能を提供することも望ましい。更に、本発明の他の望ましい特徴及び特性は、添付の図面及びこの発明の背景と合わせて、下記の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。

[0009]本発明においては、物品、物品を鑑別する方法、及び鑑別システムが提供される。一態様においては、この物品は、基材、及び基材上のセキュリティ機能(security feature)を含む。セキュリティ機能は、第1のインク組成物を有する第1の区域(first region)、及び第2のインク組成物を有する第2の区域(second region)を含む。第1のインク組成物は第1のルミネセンス蛍光体(luminescent phosphor)を含み、第2のインク組成物は、第1のルミネセンス蛍光体と異なる第2のルミネセンス蛍光体を含む。第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体は、識別できない励起エネルギー波長及び発光波長を有するが、識別できる時間的減衰特性(temporal decay properties)を有する。

[0010]他の態様においては、物品を鑑別する方法は、基材及び基材上のセキュリティ機能を含む物品を提供することを含む。セキュリティ機能は、第1のインク組成物を有する第1の区域、及び第2のインク組成物を有する第2の区域を含む。第1のインク組成物は第1のルミネセンス蛍光体を含み、第2のインク組成物は、第1のルミネセンス蛍光体と異なる第2のルミネセンス蛍光体を含む。第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体は、識別できない励起エネルギー波長及び発光波長を有するが、識別できる時間的減衰特性を有する。物品を、第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体を励起させるのに十分な強度を有する光を生成する励起光源によって生成される光に曝露する。初めに、第1の区域の少なくとも一部又は第2の区域の少なくとも一部を含む物品の領域(area)の第1の画像を検出する。2番目に、物品の実質的に同じ領域の第2の画像を検出する。第1の区域を含む領域に関して少なくとも1つの第1の画像及び第2の画像を検出し、第2の区域を含む領域に関して少なくとも1つの第1の画像及び第2の画像を検出する。第1の画像及び第2の画像の領域内に存在する第1のルミネセンス蛍光体又は第2のルミネセンス蛍光体のタイプに関する予測される時間的減衰特性に基づいて、物品に関する合否データを求める。

[0011]他の態様においては、鑑別装置を含む鑑別システムが提供される。鑑別装置は、基材及び基材上のセキュリティ機能を含む物品を鑑別するように構成される。セキュリティ機能は、第1のインク組成物を含む第1の区域、及び第2のインク組成物を含む第2の区域を含む。第1のインク組成物は第1のルミネセンス蛍光体を含み、第2のインク組成 物は、第1のルミネセンス蛍光体と異なる第2のルミネセンス蛍光体を含む。第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体は、識別できない励起エネルギー波長及び発光波長を有するが、識別できる時間的減衰特性を有する。鑑別装置は、励起光源、場合によっては光学フィルター、第1の検出器素子及び第2の検出器素子、並びに処理ユニットを含む。第1の検出器素子は、初めに物品の1つの領域の第1の画像を検出するように構成され、更に第1の画像に関する電子信号データを出力するように構成されており、第2の検出器素子は、二番目に物品の実質的に同じ領域の第2の画像を検出するように構成され、更に第2の画像に関する電子信号データを出力するように構成されている。処理ユニットは、出力電子信号データを集めて評価し、第1の画像及び第2の画像が、第1の画像及び第2の画像の領域内に存在する第1のルミネセンス蛍光体又は第2のルミネセンス蛍光体のタイプに関する予測される時間的減衰特性を示すかどうかを求めるように構成されている。

[0012]下記において、本発明を以下の図面と関連させて記載する。図面において同様の番号は同様の構成要素を示す。

[0013]図1は、基材及びその上のセキュリティ機能を含む物品の代表的な態様の斜視図である。

[0014]図2は、種々の代表的な態様によるルミネセンス蛍光体の可能な構成要素を示す。

[0015]図3は、代表的な態様による物品及び鑑別装置を含む鑑別システムの概要図である。




[0016]以下の詳細な説明は、事実上単なる例であり、本発明又は本発明の用途及び使用を限定することは意図しない。更に、上述の背景又は以下の詳細な説明において示すいかなる理論にも縛られる意図はない。


[0017]本発明においては、減衰定数変調を用いる物品、物品の鑑別方法、及び鑑別システムが提供される。特に、本物品は基材及び基材上のセキュリティ機能を含み、セキュリティ機能は、それぞれ第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体を含む第1のインク組成物及び第2のインク組成物の別々の区域を有する。第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体は異なる時間的減衰特性を示すことによって互いと異なっていて、これにより更なるセキュリティ層が有効になる。しかしながら、第1のインク組成物の第1のルミネセンス蛍光体及び第2のインク組成物の第2のルミネセンス蛍光体は互いと異なっているが、これらは識別できない励起エネルギー波長及び発光波長を有するが、識別できる時間的減衰特性を有する。「識別できない」又は「識別できる」とは、言及される特性における差が、商業的に入手できる診断ツール及び装置によって第1のルミネセンス蛍光体と第2のルミネセンス蛍光体との間で識別できないか又は識別できることを意味する。また、第1のルミネセンス蛍光体と第2のルミネセンス蛍光体との間の時間的減衰特性を識別できるかどうかは、物品を鑑別する特定の方法によっては影響を受けない。潜在的な偽造者にとって識別できない励起エネルギー波長及び発光波長であるが、識別できる時間的減衰特性のために、第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体は、励起エネルギー波長及び発光波長に基づくと同一であるように見えるが、第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体は、異なる時間的減衰特性、例えば異なる減衰速度定数(τ)を示して、第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセン ス蛍光体26がそれでも時間的減衰特性の比較によって識別することができるようになっている。


[0018]一態様においては図1に示されるように、基材12及び基材12上のセキュリティ機能14を含む物品10が与えられる。本発明における目的のために用いることができる物品の具体的なタイプは特に限定されず、種々の態様において、基材12は剛性又は可撓性であってよく、1以上の層又は構成要素から形成することができる。本発明において言及する「基材」とは、その上にセキュリティ機能14が形成される物体であり、下記において更に詳細に記載するように、セキュリティ機能14を励起光源104によって生成される光102(図3において示す)に曝露することができる限りにおいて、及びセキュリティ機能14からの発光を光検出器によって検出することができる限りにおいては、基材12上のセキュリティ機能14の上に更なる層又は物体を配置することができると認められる。本明細書において記載するセキュリティ機能は無数の異なるタイプの物品に関して用いることができるので、基材12の種々の構造は多数過ぎて言及できない。したがって、図1においては簡単な一体型基材12が示されているが、基材12は任意の種々の異なる構造を有していてよいと理解される。更に、ここでは無生物の固体物品を議論するが、「物品」にはまた、人間、動物、生体試料、及びその上に一態様のセキュリティ機能14を含ませることができる実質的に全ての他の物体又は材料を含ませることができると理解される。本発明において意図するように、セキュリティ機能14は、紙幣処理システムにおける紙幣鑑別中の場合のように物品10が動いている間に鑑別することができるので、物品10は紙幣として特に好適である可能性がある。この態様においては、基材12は、本明細書において記載するセキュリティ機能14に加えて、セキュリティ用又は他の用途のための数多くの他の機能を含んでいてよい紙材料である。セキュリティ機能14を含ませることができる他の好適な物品の具体例としては、IDカード、運転免許証、パスポート、身分証明書、小切手、文書、紙、株券、包装材、クレジットカード、バンクカード、ラベル、シール、郵便切手、液体、人間、動物、及び生体試料が挙げられるが、これらに限定されない。


[0019]図1を参照すると、セキュリティ機能14は基材12の上に配置されており、第1のインク組成物20を有する第1の区域16、及び第2のインク組成物22を有する第2の区域18を含む。本明細書で言及する「インク組成物」とは、基材上に印刷される組成物の個々の成分だけではなく、その中に含有され、下記において更に詳細に記載するルミネセンス蛍光体を含む、基材の上に印刷されている組成物全体を指す。一態様においては、第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22は視覚的に識別できず、これは第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22中に存在する全ての視認できる光反射性顔料が同じであるので、第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22が人間の目に同じで1つに見えることを意味する。更なる態様においては、第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22は化学的に識別できず、これは第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22が同じ化学成分を含み、第1のインク組成物20も第2のインク組成物22も他方の中に存在しない化学成分を含まないことを意味する。視覚的及び/又は化学的に識別できない第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22を用いるこれらの態様においては、セキュリティ機能14の知識を有しない者は、セキュリティ機能14が1種類より多いインク組成物を含むことを容易に見出すことができず、それによって第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22中の化学成分を同定する試みが妨げられるので、セキュリティ機能14内の異なるインク組成物20、22の識別に対する強固なバリヤが与えられる。


[0020]一態様においては図1を再び参照すると、セキュリティ機能14の第1の区域16は第1のインク組成物20の第1のパターン23を含み、第2の区域18は第2のインク組成物22の第2のパターン25を含む。本明細書において言及する「パターン」とは 、基材12上のそれぞれのインク組成物の構造を指し、特に限定されないが、線及び/又はドットの複雑なパターンによって物品10のセキュリティの維持を助けることができる。第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22が視覚的に識別できない場合には、第1のパターン23及び第2のパターン25は、場合によっては、図1において一体のバーを形成する第1のパターン23及び第2のパターン25によって示されるように、視覚的に相補的であって物品10において視覚的に一体のパターンとして見え、それによって異なるインク組成物20、22を含むセキュリティ機能14中の具体的な区域16、18を識別するいかなる可能性がある試みも更に妨げられる。示してはいないが、より複雑な相補的な第1のパターン23及び第2のパターン25を与えて、第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22の異なる区域を識別する試みを更に妨げることができることが認められる。更に、示してはいないが、セキュリティ機能にそれぞれのインク組成物20、22で印刷される1つより多い区域を含ませることができることが認められ、また、本明細書に記載する物品、物品の鑑別方法、及び鑑別システムにしたがって、2種類より多いインク組成物を用いることができることも認められる。


[0021]第1のインク組成物20は、第1のルミネセンス蛍光体24を含み、場合によっては、顔料、充填剤、バインダー、及びこれらの組み合わせなど(しかしながらこれらに限定されない)のインク組成物中に通常含まれる他の成分を含ませることができる。本発明において言及するルミネセンス蛍光体とは、外部のエネルギー源によってルミネセンス蛍光体を励起させることによって赤外、可視、及び/又は紫外スペクトル内の検出可能な量の放射線を発光することができる化合物である。図2を参照すると、第1のルミネセンス蛍光体24の可能な成分が示されている。特に、第1のルミネセンス蛍光体24は、発光イオン28、母材結晶格子材料32、及び場合によっては「妨害」イオン30を含む。示してはいないが、第1のルミネセンス蛍光体24はまた場合によっては「増感」イオン(示していない)も含む。本発明において言及する「妨害」イオン30とは、第1のルミネセンス蛍光体24の時間的減衰特性、例えば減衰速度定数を、妨害イオン30の不存在下での時間的減衰特性と比べて変化させる材料である。これも本発明において言及する「増感」イオンとは、励起エネルギーを吸収して発光イオン28に伝達させることができるイオンである。増感イオンは本明細書においては具体的には議論しないが、増感イオンは当該技術において周知である。本発明における目的のためには、第1のルミネセンス蛍光体24には複数の発光イオン28及び/又は増感イオンを含ませることができることが認められる。


[0022]第1のルミネセンス蛍光体24は、(1)1種類又は複数の発光イオン28から、或いは母材結晶格子材料(host crystal lattice material)32及び1種類又は複数の増感イオンのいずれか又は両方による入射放射線を吸収し;(2)母材結晶格子材料32/1種類又は複数の増感イオンから1種類又は複数の発光イオン28へエネルギー伝達し;そして(3)伝達されたエネルギーを1種類又は複数の発光イオン28によって放射する;ことによって放射線を生成させる。いずれの方法で励起放射線を吸収するにしても、第1のルミネセンス蛍光体24の1種類又は複数の発光イオン28によって、独特のスペクトル特徴及び測定できる減衰時定数(τ)を有する放出放射線が生成する。


[0023]母材結晶格子材料32は、その中に発光イオン28及び妨害イオン30並びに場合によっては増感イオンが導入される(例えば置換される)材料を含む。本明細書において用いる「置換」という用語は、低、中、及び高置換割合などの任意の割合で置換されることを意味する。母材結晶格子材料32は、異なる化学成分をその中の結晶格子内の種々の位置に置換することができる結晶格子の形態であってよい。種々の態様においては、母材結晶格子材料32は、酸化物、フッ化物、オキシ硫化物、ハロゲン化物、ホウ酸塩、ケイ酸塩、没食子酸塩、リン酸塩、バナジウム酸塩、オキシハロゲン化物、アルミン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、ガーネット、ニオブ酸塩、及びこれらの組み合わせ から選択されるが、他の母材結晶格子材料32を同様に用いることができる。例えば、限定の意図ではないが、母材結晶格子材料32としては、イットリウム(Y)アルミニウムガーネット(YAG又はY3Al5O12)、イットリウムオキシ硫化物(YOS又はY2O2S)、ガドリニウム(Gd)ガリウムガーネット(GGG、Gd3Ga5O12)、又は他の材料を挙げることができる。


[0024]母材結晶格子材料32中に置換されるそれぞれのイオンの量は、一般に原子%で示され、発光イオン28、場合によっては増感イオン、及び/又は場合によっては妨害イオン30によって理論的に置き換えることができる母材結晶格子材料32のイオンの総数は100%に等しく、この値には置き換えることができない母材結晶格子材料32のイオンは含まれない。増感イオン、発光イオン、及び/又は妨害イオン30で置き換えることができる母材結晶格子材料32のイオンは、それと置き換えるイオンと同等の寸法、同等の電荷、及び同等の配位選択性を有していてよい。母材結晶格子材料32内の種々の位置が出現する可能性があるので、これらの位置のそれぞれの上のイオンは100原子%を構成する。


[0025]種々の態様によれば、図2に示されるように、発光イオン28は、クロム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びこれらの組み合わせから選択される。例えば、1以上の発光イオン28は一態様においては+3の価数を有していてよいが、1以上の発光イオン28は他の態様においては異なる価数(例えば+2及び/又は+4)を有していてよい。


[0026]種々の態様においては、母材結晶格子材料32中に置換される1種類又は複数の発光イオン28の全濃度は、励起放射線に適切に曝露した後に第1のルミネセンス蛍光体24によって検出できる発光が生成されるのに十分なものである。例えば、母材結晶格子材料32中に置換される1種類又は複数の発光イオン28の全濃度は、約0.095原子%〜約99.995原子%の範囲であってよい。しかしながら、ルミネセンス蛍光体の機能(例えば励起放射線に曝露することによって発光を生成させる機能)をなお生成させながら置換することができる1種類又は複数の発光イオン28の濃度は、置換されるイオンのタイプによって定まる。言い換えれば、幾つかのイオンは第1のルミネセンス蛍光体24の機能をなお維持しながら比較的高い割合で置換することができるが、他のイオンを同等の比較的高い割合で置換した場合には、この機能が無効になる可能性がある。


[0027]妨害イオン30は発光イオン28と異なり、存在すると第1のルミネセンス蛍光体24の時間的減衰特性を変化させる。種々の態様によれば、妨害イオン30は、クロム、マンガン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、鉄、コバルト、ニッケル、及びこれらの組み合わせから選択される。


[0028]第1のルミネセンス蛍光体24の母材結晶格子材料32中に置換される1種類又は複数の妨害イオン30の全濃度は特に限定されない。しかしながら一態様においては、1種類又は複数の妨害イオン30の全濃度は、種々の態様においては約0.0003原子%〜約0.5原子%、例えば約0.001〜約0.2原子%又はそれ以上の範囲であってよいが、1種類又は複数の妨害イオン30は更に、より低いか又はより高い割合で含ませることができる。母材結晶格子材料32中に置換される1種類又は複数の妨害イオン30の濃度は、所望の減衰時定数を達成するのに十分な濃度であって、原材料に関するバックグラウンド不純物レベルよりも大きくてよい。1種類又は複数の妨害イオン30の濃度は、第1のルミネセンス蛍光体24に関する減衰時定数の減少に直接関係する。この直接的な関係は、第1のルミネセンス蛍光体24の化学的性質に応じて線形又は非線形であって よい。より低い濃度の1種類又は複数の妨害イオン30を加えることの利益は、最新の装置及び技術(例えばグロー放電質量分析法(GDMS))を用いないで1種類又は複数の妨害イオン30を検出するのは非常に困難であることである。したがって、一態様によれば、第1のルミネセンス蛍光体24の元素組成はリバースエンジニアリングが非常に困難である。例えば、通常のエネルギー分散型X線微量分析、電子後方散乱回折、又はマイクロX線蛍光システムでは、第1のルミネセンス蛍光体24中の低い(例えば1%以下の)濃度を有する元素を定量することはできない可能性がある。


[0029]励起放射線に曝露した後は、第1のルミネセンス蛍光体24内の1種類又は複数の発光イオン28によって光子が放出され、時間経過に伴う発光の強度を観察することができる。励起放射線を取り除くことにより発光の強度は時間と共に減衰し、それぞれの発光イオン28に関する減衰速度を減衰時定数(τ)として特徴付けることができる。例えば、発光強度における単純な指数関数的減衰に関しては、減衰時定数は、式:






(式中、tは時間を示し、Iは時間tにおける発光強度を示し、I0はt=0(例えば、t=0は励起放射線の供給を停止した瞬間に対応させることができる)における発光強度を示す) における定数τによって表すことができる。幾つかのルミネセンス蛍光体に関する発光強度は上記の単純な指数式にしたがって減衰する可能性があるが、他のルミネセンス蛍光体に関する発光強度は(例えば減衰に影響する複数のメカニズムが存在する場合には)異なる指数関数的減衰によって変化する可能性がある。一態様によれば、それぞれの発光イオン28は、発光イオン28が第1のルミネセンス蛍光体24内において(例えば通常製造の蛍光体におけるように)「非妨害状態」で存在する場合には、第1の減衰時定数を有する。「非妨害状態」という用語は、発光イオン28に適用する場合には、発光イオン28の発光に対して相当な影響を与える可能性がある対応する妨害イオン30を有しないルミネセンス蛍光体内に含まれる発光イオン28を指し、ここで「相当な影響」とは、通常製造の蛍光体中に存在する希土類不純物(例えば少量、例えば数ppmで存在する不純物)のために生起する可能性がある影響よりも測定可能に大きい影響を意味する。この非妨害状態の発光イオン28に関する減衰時定数は、本発明においては「非妨害減衰時定数」と呼び、これは、原材料に関係する可能性がある希土類不純物のレベルを超える1種類又は複数の妨害イオン30を含まないルミネセンス蛍光体(例えば通常製造の蛍光体)を特徴付けるものである。「非妨害」ルミネセンス蛍光体中の希土類不純物のレベルは、蛍光体原材料の不純物レベルによって定まる。比較的低いレベルの不純物は第1のルミネセンス蛍光体24の放出放射線時間特性に僅かな変化しか与えることができないが、より高いレベルの不純物は第1のルミネセンス蛍光体24の時間特性におけるより顕著な変化を生起させることができる。


[0030]幾つかの態様においては、第1のルミネセンス蛍光体24は目標の減衰時定数を有し、目標の減衰時定数を有するように製造され、異なるロットの蛍光体原材料中の変化する量の不純物イオンの存在にかかわらず目標の減衰時定数を有する第1のルミネセンス蛍光体24を製造する方法は公知である。十分に高い純度及び妥当なコストを有する蛍光体原材料の選択は、所望の特性(例えば、望ましい所定の目標減衰時定数)を有する第1のルミネセンス蛍光体24を経済的に生成させるように能動的に調節することができるコスト/性能バランスである。一態様によれば、蛍光体原材料は、目標の妨害減衰時定数よりも高い減衰時定数を有するものに基づいて選択され、妨害イオン30は、合成された第1のルミネセンス蛍光体24の減衰時定数を目標の妨害減衰時定数に低下させるために蛍 光体原材料に加える。


[0031]上記に示すように、図1に戻ると、第2のインク組成物22はセキュリティ機能14の第2の区域18内に存在する。第2のインク組成物22は第1のルミネセンス蛍光体24と異なる第2のルミネセンス蛍光体26を含むが、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26は識別できない励起エネルギー及び発光波長を有する。その励起領域の最初の励起の後の印刷領域の単位あたりで比較的同等の信号強度を示すことができる、識別できない励起エネルギー及び発光波長を有する第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26を与えることにより、潜在的偽造者によるセキュリティ機能14の励起及び発光特性の測定によっては、特に第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22がそれら自体視覚的及び/又は化学的に識別できない場合には、セキュリティ機能14が異なるインク組成物20、22を含むことは示されない。セキュリティ機能14中のそれぞれ第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22による視覚的に相補的な第1のパターン23及び第2のパターン25を形成する可能性と相まって、セキュリティ機能14中の異なるインク組成物20、22を発見することが更により難しくなる。


[0032]一態様においては、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26は同じ化学成分を有し、化学的に識別できない。特にこの態様においては、第2のルミネセンス蛍光体26は、第1のルミネセンス蛍光体24と同じ発光イオン28及び同じ母材結晶格子材料32を含み、それにより第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26が識別できない励起エネルギー及び発光波長を有することが可能になる。更に一態様においては、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26は両方とも妨害イオン30を含み、妨害イオン30は第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26において同一である。同じ化学成分を有する第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26を与えることにより、第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22を同定することを、潜在的偽造者にとって最新の装置及び技術を用いずには非常に困難にすることができる。しかしながら、他の態様においては、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26は異なる化学成分を有していてよく、例えば、第1のルミネセンス蛍光体24と識別できない励起エネルギー及び発光波長をなお有しながら、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26に異なる発光イオン28及び/又は母材結晶格子材料を含ませることができると考えられる。


[0033]第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26の時間的減衰特性のために、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26が識別できない励起エネルギー及び発光波長を有する場合であっても、且つ第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26が同じ化学成分を有する場合であっても識別できるようにすることができる。一態様においては、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26は、異なる量の発光イオン28、妨害イオン30、又は両方を有する。発光イオン28及び/又は妨害イオン30の量を相違させることによって、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26の時間的減衰特性を、既存の鑑別装置によって第1のインク組成物20と第2のインク組成物22との間で識別することを可能にするのに十分にシフトさせることができる。一態様においては、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26は異なる量の妨害イオン30を有することのみによって異なり、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26は他の全ての点においては同一である。この態様においては、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26の減衰速度定数(τ)は、妨害イオン30の量における差が殆どの商業的に入手できる診断装置における検出限界より低い場合であっても、測定可能にシフトすることができる。例えば、幾つかの妨害イオン30 は、ルミネセンス蛍光体における識別できる減衰速度定数を達成するために、約1000ppmまで、例えば約50〜約800ppmの量で存在させることができ、妨害イオン30の量は、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26の減衰速度定数を識別し得るようにすることを可能にするために、少なくとも50、例えば約50から約200ppmまで変化させることができる。或いは、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26が異なる量の妨害イオン30を含み、それぞれの量がエネルギー分散型X線分光装置のような殆どの商業的に入手できる診断装置における検出限界より高い場合には、量における差は診断装置によって量の差が記録されないのに十分に小さい可能性があるが、これらの場合には全て、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26の減衰速度定数はなお測定可能に識別される。例えば、第1のルミネセンス蛍光体24と第2のルミネセンス蛍光体26との間の減衰速度定数は、妨害イオン30の量を第1のルミネセンス蛍光体24と第2のルミネセンス蛍光体26との間で少なくとも50ppm、例えば約50〜約200ppm変化させることによって、既存の鑑別装置を用いて識別可能になるようにシフトさせることができる。しかしながら、母材格子材料は減衰速度定数に影響を与える可能性があるので、第1のルミネセンス蛍光体24と第2のルミネセンス蛍光体26の中の妨害イオン30の量の間の具体的な差は、概してケースバイケースで定められると認められる。正確に検出することができる減衰速度定数における差の量は、インク印刷の量、セキュリティ機能14中の複数の異なる位置からの画像を比較することによって行うことができる平均化の量、及び、統計的分析によって減衰速度定数が特定の測定技術に基づく適切な数の標準偏差と異なることが示されるような減衰速度定数における差に基づいて左右される可能性がある。


[0034]第1のインク組成物20を含む第1の区域16、及び第2のインク組成物22を含む第2の区域18を有するセキュリティ機能14の1つの具体例においては、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26は、シリコン検出器に関する検出限界であり、ルミネセンス蛍光体24、26中の成分の同定を困難にする1100nmより低い波長で発光する。例えばこの態様においては、イッテルビウムは第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26の両方に関する発光イオン28である。イッテルビウムは、イッテルビウム濃度及び母材光子材料に応じて0.1〜1.3ミリ秒の範囲の減衰寿命を示すことができる。この態様における好適な母材結晶格子材料32の例としては、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、イットリウムガリウムガーネット(YGG)、及びガドリニウムガリウムガーネット(GGG)のような種々のガーネットが挙げられる。別の材料は、ホウ酸塩、リン酸塩、ニオブ酸塩、フッ化物、及びオキシ硫化物である。場合によっては、クロムのような増感イオンを母材結晶格子材料32中にドープ又は置換し、これは存在する場合には主吸収物質として作用し、エネルギーをイッテルビウムイオンに非放射的に伝達する。ネオジムも、増感イオン又は更なるエネルギー伝達剤として作用させることができる。いずれの場合においても、この例に関してはイッテルビウムは最終的な発光体であり、妨害イオン30は存在しない。第1のルミネセンス蛍光体24と第2のルミネセンス蛍光体26との間でイッテルビウム濃度をNd:Yb:YAG中で5%〜15%の範囲にすることによって、減衰寿命を0.87ミリ秒から0.58ミリ秒に変化させることができ、これは第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26をその時間的減衰特性に基づいて識別することを可能にするのに十分に大きな差である。


[0035]ここで図3を参照して、代表的な鑑別システム100及び物品10を鑑別する方法を記載する。代表的な鑑別システム100は、物品10を鑑別するように構成されている鑑別装置101を含む。鑑別装置101は、励起光源104、場合によっては光学フィルター106、少なくとも1つの光検出器108、及び処理ユニット109を含む。励起光源104は、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26を励起させるのに十分な強度を有する光102を生成し、励起光源104はそれを通って物品1 0を通過させることができる光102を生成する。本発明に関して用いるのに好適な光検出器の1つの代表的なタイプは図3に示すバイセル光検出器108であり、これは第1の検出器素子110A、112A、及び第2の検出器素子110B、112Bを含む。一態様においては、バイセル光検出器108は、第2の検出器素子110B、112Bに隣接する第1の検出器素子110A、112Aを収容している。第1の検出器素子110A、112A、並びに第2の検出器素子110B、112Bは、シリコン又はInGaAsのような同じ材料で構成される。図3に示すように、バイセル光検出器108は、第1の検出器素子110A及び第2の検出器素子110Bを有する円形であってよく、或いは第1の検出器素子112A及び第2の検出器素子112Bを有する長方形又は円形であってよい。第1の検出器素子110A、112A、並びに第2の検出器素子110B、112Bは、第1の検出器素子110A及び第2の検出器素子110B、並びに第1の検出器素子112A及び第2の検出器素子112Bによって示されるように分割線又は分離線を形成するように組み立てられる。商業的に入手できるバイセル光検出器108の1つの例は、Ann Arbor, MIのAdvanced Photonixによって製造されている検出器モデルSD113-24-21-021である。


[0036]図3の鑑別装置を用いて物品10を鑑別するためには、物品10を、励起光源104によって生成される光102に曝露する。例えば図3の鑑別装置を用いると、光102は励起光源104によって与えられ、励起光源ウィンドウ113を通して合焦される。物品10を、複数の物品の逐次鑑別を可能にする均一な速度で励起光源ウィンドウ113の下で移動させて、物品10を光102に曝露する。


[0037]第1の検出器素子110A、112Aは、初めに第1の区域16の少なくとも一部又は第2の区域18の少なくとも一部を含む物品10の領域の第1の画像を検出するように構成されており、第2の検出器素子110B、112Bは、2番目に物品10の実質的に同じ領域の第2の画像を検出するように構成されている。「実質的に同じ領域」とは、第2の画像における領域が第1の画像における領域と同一であってよいが、同一でない場合には第2の画像における領域が、第1の画像及び第2の画像が同じ領域で形成されている状況と比べた第1の画像と第2の画像との間の比較に大きな影響を与えないことを意味する。第1の画像及び第2の画像は、第1の区域16内の第1のパターン23又は第2の区域18内の第2のパターン25のいずれかの少なくとも一部を含むように形成される。図3の鑑別装置101を用いる場合、物品10を、例えばローラー又はベルト(図示せず)によって、第1の画像及び第2の画像の検出を促進させるために励起光源104及び励起光源104によって生成される光102から離隔されている検出ウィンドウ103の下で移動させる。図3のバイセル光検出器108を用いる場合には、第1のルミネセンス蛍光体24又は第2のルミネセンス蛍光体26からの光学放射線は、第1の画像及び第2の画像における物品10の特定の領域に応じて、レンズ105によって大まかに視準され、場合によっては第1のルミネセンス蛍光体24又は第2のルミネセンス蛍光体26の予め選択された発光波長を濾波する光学フィルター106を通過する。次に、予め選択された発光波長を、レンズ107によってバイセル光検出器108上に合焦する。この領域の第1の画像及びこの領域の第2の画像は、第1の検出器素子110A、112A、並びに第2の検出器素子110B、112Bの間の間隔によって異なる時間において検出される。物品10の一定の速度により、第1の画像が検出される時点と第2の画像が検出される時点との間に過ぎる一定量の時間が存在する。その結果、第1のルミネセンス蛍光体24又は第2のルミネセンス蛍光体26中の発光イオン28からの発光波長は、その時間的減衰特性のために予測通りに減衰する。


[0038]図3の鑑別装置101においては示していないが、別のセンサー(図示せず)を用いて時間的減衰特性を静的に測定することが可能である。図示していないが、別のセンサーを用いて時間的減衰特性を測定するためには、第1のルミネセンス蛍光体24を含む 第1の区域の少なくとも一部、又は第2のルミネセンス蛍光体26を含む第2の区域の少なくとも一部を、適当な励起光源(図示せず)によって生成される光に曝露し、更なるセンサーによって、第1の区域又は第2の区域からの発光を、励起光源を消灯することによって光への曝露を停止した後の時間の関数として測定する。第1の区域又は第2の区域内に存在するルミネセンス蛍光体は、第1のルミネセンス蛍光体24又は第2のルミネセンス蛍光体26の特性であるその減衰時定数(τ)にしたがって減衰する。次に、応答指令する領域に関するτの値を知見する。次に、更なるセンサーを、第1の区域又は第2の区域の、他のインク組成物が用いられている他方に隣接して配置することができる。第1の区域又は第2の区域の他方の同じ測定を行うことができ、τの第2の値を上記に示す式(1)にしたがって導く。しかしながら、別のセンサーを用い、静止状態の基材を用いて、励起光源を点灯して適切なルミネセンス蛍光体24、26を励起させ、次に消灯してτの値を観察する。式(1)(ここで、tは時間であり、I0は光源を消灯した時間であり、信号の最大値にも対応し、I(t)は時間の関数として観察された信号値である)にしたがってτの値を導く。幾つかの方法を用いてτの値に関する良好なフィッティングを導くことができる。次に、この値を比較して差が予測される通りであるかどうかを判別することができる。


[0039]代表的な方法によれば、第1のインク組成物20を有する第1の区域16を含む領域に関して少なくとも1つの第1の画像及び第2の画像を検出し、第2のインク組成物22を有する第2の区域を含む領域に関して少なくとも1つの第1の画像及び第2の画像を検出する。それぞれ第1の区域16又は第2の区域18を含むそれぞれの異なる領域に関して第1の画像及び第2の画像を検出することにより、代表的な方法によって、どのインク組成物が第1の画像及び第2の画像の領域内に存在しているかの知識と組み合わせて、予測される時間的減衰特性と実際の時間的減衰特性とを比較することができ、第1の画像及び第2の画像が検出される別の領域において予測される別の時間的減衰特性に基づいて物品10の鑑別を行うことができる。


[0040]代表的な方法によれば、領域の第1の画像の検出は、少なくとも1つの光検出器108によって第1のパターン23及び第2のパターン25の複数の第1の画像を検出することを含み、第2の画像の検出は、少なくとも1つの光検出器108によって第1の画像の実質的に同じ領域の複数の第2の画像を検出することを含む。第1のパターン23及び第2のパターン25の複数の第1の画像を検出することにより、且つ実質的に同じ領域の第2の画像を検出することにより、第1のルミネセンス蛍光体24と第2のルミネセンス蛍光体26の減衰速度定数の間の変動を静的に同定することができる。


[0041]代表的な方法によれば、第1及び第2の画像に関する電子信号データを、少なくとも1つの光検出器108から出力する。一態様においては、第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26の減衰特性(例えば減衰速度定数)に関係する出力電子信号比を求めることができる。一態様においては、処理ユニット109によって、第1及び第2の検出器素子110A及び110B又は112A及び112Bからの出力電子信号データを、有価書類上の励起光源104によって生成される光102からの予め選択される距離に関係する予め決定される間隔で集めて評価し、第1の画像及び第2の画像の領域内に存在する第1のルミネセンス蛍光体24又は第2のルミネセンス蛍光体26のタイプに関して予測される時間的減衰特性に基づいて、物品10に関する合否データを求める。処理ユニット109は次に合否データを出力して、物品10が真正であるかどうかを操作者に示すことができる。処理ユニット109によって物品10に関する合否データを求めることができる1つの方法は、測定された出力電子信号比を、既知の第1のルミネセンス蛍光体24及び第2のルミネセンス蛍光体26、及び/又は既知の第1のインク組成物20及び第2のインク組成物22に対応する格納データと比較することである。処理ユニット109はまた、上記に記載したように複数の第1の画像及び複数の第2の画像か ら測定される出力電子信号比を平均化して、鑑別システム100の測定の正確性を向上させることもできる。


[0042]上記の発明の詳細な説明において少なくとも1つの代表的な態様を示したが、数多くのバリエーションが存在することを認識すべきである。また、代表的な態様又は複数の代表的な態様は単なる例であり、いかなるようにも発明の範囲、適用性、又は構成を限定することは意図しないことも認識すべきである。むしろ、上記の詳細な記載は発明の代表的な態様を実施するための簡便な指針を当業者に与えるものである。特許請求の範囲に示す発明の範囲から逸脱することなく、代表的な態様において記載されている機能及び要素の配置において種々の変更を行うことができることが理解される。 本発明の具体的態様は以下のとおりである。 [1]物品であって: 基材;及び 基材上のセキュリティ機能; を含み; セキュリティ機能は、 第1のルミネセンス蛍光体を含む第1のインク組成物を有する第1の区域;及び 第2のインク組成物を有し、第1のルミネセンス蛍光体と異なる第2のルミネセンス蛍光体を含む第2の区域; を含み; 第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体は、識別できない励起エネルギー波長、識別できない発光波長、及び識別できる時間的減衰特性を有する、前記物品。 [2]第1のルミネセンス蛍光体が発光イオン及び母体結晶格子材料を含み、第2のルミネセンス蛍光体が第1のルミネセンス蛍光体と同じ発光イオン及び同じ母体結晶格子材料を含む、[1]に記載の物品。 [3]発光イオンが、クロム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びこれらの組み合わせから選択される、[2]に記載の物品。 [4]母体結晶格子材料が、酸化物、フッ化物、オキシ硫化物、ハロゲン化物、ホウ酸塩、ケイ酸塩、没食子酸塩、リン酸塩、バナジウム酸塩、オキシハロゲン化物、アルミン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、ガーネット、ニオブ酸塩、及びこれらの組み合わせから選択される、[2]に記載の物品。 [5]第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体が同じ化学成分を有し、化学的に識別できない、[2]に記載の物品。 [6]第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体が、発光イオンと異なっていて、第1のインク組成物及び第2のインク組成物の時間的減衰特性を変化させる妨害イオンを更に含み、妨害イオンが第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体において同じである、[5]に記載の物品。 [7]第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体が、異なる量の発光イオン、妨害イオン、又は両方を有する、[6]に記載の物品。 [8]第1のインク組成物及び第2のインク組成物が視覚的に識別できない、[1]に記載の物品。 [9]物品を鑑別する方法であって: セキュリティ機能をその上に有する基材を含む物品を与える工程であって、セキュリティ機能は、第1のルミネセンス蛍光体を含む第1のインク組成物を含む第1の区域、及び第2のルミネセンス蛍光体を含む第2のインク組成物を含む第2の区域を有し、第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体は、識別できない励起エネルギー波長、識別できない発光波長、及び識別できる時間的減衰特性を有する、前記工程; 物品を、第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体を励起させるのに十分な強度を有する光を生成する励起光源によって生成する光に曝露する工程; 最初に第1の区域の少なくとも一部又は第2の区域の少なくとも一部を含む物品の領域の第1の画像を検出する工程; 2番目に物品の実質的に同じ領域の第2の画像を検出する工程; 第1の画像及び第2の画像の領域内に存在する第1のルミネセンス蛍光体又は第2のルミネセンス蛍光体のタイプに関する予測される時間的減衰特性に基づいて物品に関する合否データを求める工程であって、ここで、第1の区域を含む領域に関して少なくとも1つの第1の画像及び第2の画像を検出し、第2の区域を含む領域に関して少なくとも1つの第1の画像及び第2の画像を検出する、前記工程; を含む、前記方法。 [10]鑑別システムであって、基材及び基材上のセキュリティ機能を含む物品を鑑別するように構成されている鑑別装置を含み、セキュリティ機能は、第1のルミネセンス蛍光体を含む第1のインク組成物を有する第1の区域、及び第2のインク組成物を有し、第1のルミネセンス蛍光体と異なる第2のルミネセンス蛍光体を含む第2の区域を含み、第1のルミネセンス蛍光体及び第2のルミネセンス蛍光体は、識別できない励起エネルギー波長、識別できない発光波長、及び識別できる時間的減衰特性を有し、鑑別装置は: 励起光源; 場合によっては光学フィルター; 第1の検出器素子及び第2の検出器素子であって、ここで、第1の検出器素子は、初めに物品の1つの領域の第1の画像を検出するように構成され、更に第1の画像に関する電子信号データを出力するように構成されており、第2の検出器素子は、二番目に物品の実質的に同じ領域の第2の画像を検出するように構成され、更に第2の画像に関する電子信号データを出力するように構成されている、前記第1の検出器素子及び前記第2の検出器素子;及び 出力電子信号データを集めて評価する処理ユニットであって、ここで処理ユニットは、第1の画像及び第2の画像が、第1の画像及び第2の画像の領域内に存在する第1のルミネセンス蛍光体又は第2のルミネセンス蛍光体のタイプに関する予測される時間的減衰特性を示すかどうかを求めるように構成されている、前記処理ユニット; を含む鑑別システム。



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