衝撃吸収構造及びこれを備えた車両用外板部材

申请号 JP2016512557 申请日 2014-04-11 公开(公告)号 JPWO2015155889A1 公开(公告)日 2017-04-13
申请人 日産自動車株式会社; 发明人 吉田 武; 武 吉田;
摘要 第1の繊維強化複合材料からなる表側部材(11)と、第2の繊維強化複合材料からなる裏側部材(12)と、表側部材(11)と裏側部材(12)とに沿って延び、かつ、それらに挟持された中間部材(13)と、を備えた衝撃吸収構造(S1,S2)である。中間部材(13)は、表側部材(11)よりも低い伸び率を有し、かつ、表側部材(11)よりも低い強度を有している。
权利要求

第1の繊維強化複合材料からなる表側部材と、 第2の繊維強化複合材料からなる裏側部材と、 前記表側部材と前記裏側部材とに沿って延び、かつ、それらに挟持された中間部材と、を備え、 前記中間部材は、前記表側部材よりも低い伸び率を有し、かつ、前記表側部材よりも低い強度を有していることを特徴とする衝撃吸収構造。前記中間部材と前記裏側部材との間に介在する第2の中間部材を更に備え、 該第2の中間部材は、前記表側部材よりも低い強度を有していることを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収構造。前記表側部材と前記中間部材と前記第2の中間部材と前記裏側部材とが互いに面接合されていることを特徴とする請求項2に記載の衝撃吸収構造。請求項1乃至3のいずれか1項に記載の衝撃吸収構造を備えた車両用外板部材。

第1の繊維強化複合材料からなる表側部材と、 第2の繊維強化複合材料からなる裏側部材と、 前記表側部材と前記裏側部材とに沿って延び、かつ、それらに挟持された樹脂からなる中間部材と、を備え、 前記中間部材は、前記表側部材よりも低い伸び率を有し、かつ、前記表側部材よりも低い強度を有していることを特徴とする衝撃吸収構造。前記表側部材から前記裏側部材に向かって入された衝撃荷重によって、少なくとも前記表側部材及び前記中間部材が一体的に湾曲変形し、前記中間部材が前記表側部材よりも先に伸び変形に降伏して破断することを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収構造。前記中間部材と前記裏側部材との間に介在する第2の中間部材を更に備え、 該第2の中間部材は、前記表側部材よりも低い強度を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の衝撃吸収構造。前記表側部材と前記中間部材と前記第2の中間部材と前記裏側部材とが互いに面接合されていることを特徴とする請求項3に記載の衝撃吸収構造。請求項1乃至4のいずれか1項に記載の衝撃吸収構造を備えた車両用外板部材。

说明书全文

本発明は、衝撃吸収構造及びこれを備えた車両用外板部材に関する。

特許文献1は、繊維強化プラスチック製のアウターパネルとインナーパネルとの間に複数の柱状リブを配置したフードを開示している。該フードは、アウターパネルに衝撃が加わった際に、複数のリブを破壊することでエネルギーを吸収する。

特開2012−131335号公報

上記フードでは、複数のリブを破壊することでエネルギーを吸収するものの、当該リブが各々柱状の形状を有しているため、アウターパネルまたはインナーパネルとリブとの間の接着面積を大きくとることができず、フードの曲げ剛性が低下するおそれがあった。

本発明は、曲げ剛性を向上させ、エネルギー吸収量を増大させることができる衝撃吸収構造及びこれを備えた車両用外板部材を提供することを目的とする。

本発明の第1の態様は、第1の繊維強化複合材料からなる表側部材と、第2の繊維強化複合材料からなる裏側部材とに沿って延び、かつ、それらに挟持された中間部材を備え、該中間部材が、表側部材よりも低い伸び率を有し、かつ、表側部材よりも低い強度を有している衝撃吸収構造である。

本発明の第2の態様は、上記衝撃吸収構造を備えた車両用外板部材である。

上記衝撃吸収構造では、中間部材が、表側部材と裏側部材とに沿って延び、かつ、それらに挟持されているため、表側部材と裏側部材のみの場合よりも断面積が増大するので、全体の曲げ剛性が向上する。また、中間部材は、表側部材よりも低い伸び率を有し、かつ、表側部材よりも低い強度を有している。従って、表側部材から裏側部材に向かって入力された衝撃荷重によってこれら部材全体が一体的に湾曲変形すると、表側部材、裏側部材及び中間部材に伸び変形が発生するが、その際、中間部材は表側部材よりも伸び率及び強度が低いため、中間部材が表側部材よりも先に伸び変形に降伏して破断する。すなわち、上記衝撃吸収構造によれば、衝撃荷重の入力開始から中間部材が破断するまで、全体の曲げ剛性が高く保持される。また、その後、中間部材が破断してエネルギーを吸収した後、表側部材または裏側部材が破断するまで、これら表側部材、裏側部材及び中間部材で形成される断面積の大きさによって全体の曲げ剛性が保持される。このため、より多くのエネルギーを効率的に吸収することができる。

図1は、本発明の実施形態にかかる衝撃吸収構造を備えたフードの斜視図である。

図2は、本発明の第1実施形態にかかる衝撃吸収構造を備えたフードの断面図である。

図3は、本発明の第1実施形態にかかる衝撃吸収構造を備えたフードに対してインパクタを衝突させた際にインパクタに印加される合成加速度の時間変化を示すグラフである。

図4は、本発明の第1実施形態による衝撃エネルギー吸収プロセスを説明する図である。

図5は、本発明の第2実施形態にかかる衝撃吸収構造を備えたフードの断面図である。

図6は、本発明の第2実施形態にかかる衝撃吸収構造を備えたフードに対してインパクタを衝突させた際にインパクタに印加される合成加速度の時間変化を示すグラフである。

図7は、本発明の第2実施形態による衝撃エネルギー吸収プロセスを説明する図である。

以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、図面は模式的なものであり、各寸法の関係や比率などは実際のものとは異なる場合がある。また、以下の説明における「上」「下」など方向を表す用語は、各部の位置関係を説明するために便宜上定めたものであり、実際の取り付け姿勢等を限定するものではない。

以下の実施形態は、本発明にかかる衝撃吸収構造を自動車のボンネットまたはエンジンフード(以下、単にフードという)に適用した例である。本発明にかかる衝撃吸収構造は、自動車のフードに限らず、ドアパネル、バンパー、トランクリッド、リアゲート、フェンダパネル、サイドボディパネル、ルーフパネルなど車両用外板部材に好適に採用することができる。

<第1実施形態> 図1は、本発明の第1実施形態にかかる衝撃吸収構造S1を備えたフード1の斜視図であり、図2は、フード1の断面図である。

フード1は、図1に示すように、自動車等車両2の前部に設けられたエンジンルーム等を覆う。

図2に示すように、フード1は、衝撃吸収構造S1として、表側部材11と、表側部材11に対向して配置された裏側部材12と、表側部材11と裏側部材12との間に配置された中間部材13及び第2の中間部材14とを備えている。

表側部材11は、フード1の表面層Eを構成する炭素繊維強化プラスチック製のシート状の部材である。表側部材11の厚さは、例えば、0.8〜1.0mmに設定することができ、破断伸び率(以下、単に「伸び」または「伸び率」ともいう)は、例えば、1.5〜2.0%に設定することができる。表側部材11の引張強度は、例えば、300〜1000MPaに設定することができ、圧縮強度は、例えば、240〜800MPaに設定することができる。なお、表側部材11の厚さ、伸び率、強度等は、上記の値に限定されず、後述するようにインパクタFが衝突した際、第2の中間部材14が十分につぶれ変形した時点で表側部材11が破断するような値に、実験等を通じて設定することができる。表側部材11の外側表面は、フード1の外観意匠面を構成している。

裏側部材12は、フード1の裏面層Iを構成する炭素繊維強化プラスチック製のシート状の部材である。裏側部材12の厚さは、表側部材11の厚さと略等しく、例えば、0.8〜1.0mmに設定することができる。また、裏側部材12の伸び率は、表側部材11の伸び率と略等しく、例えば、1.5〜2.0%に設定することができる。更に、裏側部材12の引張強度は、表側部材11の引張強度と略等しく、例えば、300〜1000MPaに設定することができ、圧縮強度は、表側部材11の圧縮強度と略等しく、例えば、240〜800MPaに設定することができる。なお、裏側部材12の厚さ、伸び率、強度等は、上記の値に限定されず、後述するようにインパクタFが衝突した際、第2の中間部材14が十分につぶれ変形した時点において表側部材11を破断させることができるような値に、実験等を通じて設定することができる。

中間部材13は、フード1の表面層Eと裏面層Iとに挟持された中間層M(エネルギー吸収層)の一部を構成する例えばエポキシ樹脂製のシート状の部材である。中間部材13は、表側部材11及び裏側部材12に沿って延びており、中間部材13の上側の面は、表側部材11の下側の面(裏面)に面接合されている。中間部材13の厚さは、表側部材11や裏側部材12の厚さよりも大きく、例えば、2.0〜3.0mmに設定することができる。また、中間部材13は、表側部材11よりも低い伸び率を有し、かつ、表側部材11よりも低い強度を有している。中間部材13を構成するエポキシ樹脂に、例えば、タルクなどのミネラルの粉末を40重量%程度添加することにより、中間部材13の伸び率は、例えば、1.5%未満となるように調整することができる。また、引張強度は、例えば、50〜200MPaに設定することができる。これにより中間部材13は、表側部材11と一体的に変形する際、表側部材11よりも先に破断するようになっている。なお、中間部材13の厚さ、伸び率、強度等は、上記の値に限定されず、後述するようにインパクタ衝突後初期、中間部材13が表側部材11との一体性を保持して全体の剛性に寄与し、その後、表側部材11よりも先に中間部材13が破断するような値に、実験等を通じて設定することができる。

第2の中間部材14は、中間部材13と裏側部材12との間に介在して、中間部材13とともにフード1の中間層M(エネルギー吸収層)の一部を構成するシート状の緩衝材である。第2の中間部材14は、表側部材11及び裏側部材12に沿って延びており、第2の中間部材14の上側の面は、中間部材13の下側の面に面接合されており、第2の中間部材14の下側の面は裏側部材12の上側の面(裏面)に面接合されている。第2の中間部材14は、ウレタンフォームなどの発泡材やゴムなどから構成され、表側部材11よりも低い強度を有している。例えば、第2の中間部材14の引張強度は、2〜70MPaに設定できる。このため、表側部材11及び中間部材13が変形する際は、少なくとも、表側部材11及び中間部材13が一体的に変形し始めてから、先に中間部材13が破断し、次に表側部材11が破断するまでの間、第2の中間部材14は、それらの変形を受容するように厚さ方向に圧縮される(つぶれ変形する)。第2の中間部材14の厚さは、中間部材13の厚さよりも大きく、例えば、5.0〜7.0mmに設定することができる。なお、第2の中間部材14の強度及び厚さ等は、上記の値に限定されず、後述するようにインパクタFが衝突した際に、第2の中間部材14が十分につぶれ変形した時点で表側部材11が破断するような値に、実験等を通じて設定することができる。すなわち、第2の中間部材14の強度及び厚さは、インパクタFの衝突による変形によって、表側部材11に生じる応力が炭素繊維強化プラスチックの引張強さまたは圧縮強さに相当する応力に達した場合でも、第2の中間部材14に生じる応力が強度限界に達しないような値に設定することができる。

フード1は、表側部材11、中間部材13、第2の中間部材14及び裏側部材12をこの順に、各々の間に接着剤を介在させて積層し、ホットプレス成形法やオートクレーブ成形法など公知の成形法を用いて、一体的に成形することができる。また、表側部材11及び裏側部材12の基材となる繊維プリフォームを中間部材13及び第2の中間部材14と一緒に金型に封入し、金型内に表側部材11及び裏側部材12のマトリックス樹脂を加圧注入する方法(レジントランスファー成形法)でこれらを一体成形してもよい。

以下、図3及び図4を参照して、第1実施形態による衝撃エネルギー吸収プロセスについて説明する。

上記のように構成されたフード1に対して、国際規格(ISO/SC10/WG2)やEU規格(EEVC/WG10)に定められた歩行者保護試験で使用されるインパクタFを、所定の度及び速度で衝突させ、インパクタFに設けられた加速度センサによりインパクタFに印加される合成加速度を測定した。図3は、測定された合成加速度の時間変化を示すグラフ(G−T曲線とも称する)である。

[フェーズ1] インパクタFが、フード1の表面に衝突すると、まず、表側部材11及び中間部材13が、インパクタFとの接触点(以下、荷重点)Pにおける変位量が最も大きくなるように弾性変形する。この間、中間部材13は、表側部材11及び裏側部材12に沿って延び、かつ、それらに挟持されているため、表側部材11と一体的に変形する。一方、第2の中間部材14は、上述のように表側部材11よりも低い強度を有しているため、表側部材11及び中間部材13に対して弾発力を付与しつつそれらの変形を受容するように厚さ方向につぶれ変形する(厚さ方向に圧縮される)。荷重入力開始後初期は、荷重点Pにおける変位量は小さく、第2の中間部材14の弾発力は相対的に小さい。そのため、インパクタFには、主として表側部材11及び中間部材13の復元力(弾性力)が反力として付与される。また、この時点では、表側部材11、中間部材13、第2の中間部材14及び裏側部材12の一体性が保持されており、これら表側部材11、裏側部材12、中間部材13及び第2の中間部材14で形成される断面積の大きさによって、全体の曲げ剛性が保持されている。このため、G−T曲線上の加速度は、図3に示すように、時間の経過とともに(表側部材11及び中間部材13の変位の増加とともに)単調に増加する傾向を示す。

やがて、荷重点Pの変位量が所定の大きさに達すると、中間部材13が、表側部材11よりも低い伸び率を有し、かつ、表側部材11よりも低い強度を有しているため、表側部材11よりも先に中間部材13が伸び変形に降伏して破断し、図4(a)に示すように、中間部材13にクラックが生じる。この中間部材13の破断が衝撃エネルギーの一部を吸収する。

[フェーズ2] 中間部材13にクラックが生じると、インパクタFにかかる反力のうち中間部材13の弾性力に由来する分が減少する。このため、G−T曲線上の加速度は、図3に示すように、中間部材13にクラックが生じた時点において最初の極大値G1をとった後、時間の経過とともに減少するようになる。

また、中間部材13にクラックが生じると、荷重は表側部材11に集中する傾向となり、荷重点Pの変位量は更に増加する。そのため中間部材13の破断はその後も継続して起こり、中間部材13の破断箇所は、図4(b)に示すように更に増大し、更に多くのエネルギーが吸収される。この間、インパクタFにかかる反力は増加せず、図3に示すように、G−T曲線上の加速度も減少する。また、第2の中間部材14は、表側部材11及び中間部材13の変形を受容するように更に厚さ方向につぶれ変形する(圧縮される)。

[フェーズ3] やがて、第2の中間部材14の変形量がある程度まで大きくなり、その弾発力が相対的に大きくなると、インパクタFから入力された荷重のより多くの部分が、表側部材11及び中間部材13の荷重点P近傍部位と第2の中間部材14のつぶれ変形部とを介して、裏側部材12にも伝達されるようになる(図4(b)中の矢印参照)。このためインパクタFには、主として表側部材11、第2の中間部材14及び裏側部材12の復元力(弾性力)が反力として付与されるようになる。

第2の中間部材14のつぶれ変形量が更に増大すると、入力荷重がより広い範囲に分散して裏側部材12に伝達され、より広い範囲の裏側部材12の復元力(弾性力)、すなわち、より大きな反力がインパクタFに作用するようになる。そのため、G−T曲線上の加速度は、図3に示すように、極小値をとった後、再び増加するようになる。

その後、更に変形が進行すると、第2の中間部材14に生じる応力が強度限界に達するよりも前に、表側部材11に生じる応力(主に曲げ荷重による応力)が、炭素繊維強化プラスチックの引張強さまたは圧縮強さに相当する応力に達する。これにより表側部材11が破断し、図4(c)に示すように、表側部材11にクラックが生じる。この表側部材11の破断が更にエネルギーを吸収する。

[フェーズ4] 表側部材11にクラックが生じると、インパクタFにかかる反力のうち表側部材11の弾性力に由来する分が減少する。このため、G−T曲線上の加速度は、図3に示すように、表側部材11にクラックが生じた時点において2つ目の極大値G2をとった後、時間の経過とともに減少していく。

以下に、第1実施形態の作用効果を説明する。

本実施形態にかかる衝撃吸収構造S1では、中間部材13が、炭素繊維強化プラスチック(第1の繊維強化複合材料)からなる表側部材11と炭素繊維強化プラスチック(第2の繊維強化複合材料)からなる裏側部材12とに沿って延び、かつ、それらに挟持されているので、表側部材11と裏側部材12のみの場合よりも断面積が増大し、衝撃吸収構造S1全体の曲げ剛性を高くすることができる。また、中間部材13は、表側部材11よりも低い伸び率を有し、かつ、表側部材11よりも低い強度を有している。従って、表側部材11から裏側部材12に向かって入力された衝撃荷重によってこれら部材全体が一体的に湾曲変形すると、表側部材11、裏側部材12及び中間部材13に伸び変形が発生するが、その際、中間部材13は表側部材11よりも伸び率及び強度が低いため、中間部材13が表側部材11よりも先に伸び変形に降伏して破断する。すなわち、衝撃吸収構造S1によれば、衝撃荷重の入力開始から中間部材13が破断するまで(フェーズ1)、全体の曲げ剛性が高く保持される。また、その後、荷重点Pの変位量が所定の大きさに達した時点(フェーズ1からフェーズ2への遷移期)で中間部材13が破断してエネルギーを吸収した後、表側部材11または裏側部材12が破断するまで、これら表側部材11、裏側部材12及び中間部材13で形成される断面積の大きさによって全体の曲げ剛性が保持される。このため、衝撃吸収構造S1によれば、より多くのエネルギーを効率的に吸収することができる。

また、本実施形態にかかる衝撃吸収構造S1は、中間部材13と裏側部材12との間に介在する第2の中間部材14を更に備えている。第2の中間部材14は、表側部材11よりも低い強度を有している。そのため、第2の中間部材14は、表側部材11に入力された衝撃荷重によって表側部材11が破断するよりも先に厚さ方向に圧縮され、衝撃エネルギーの一部を吸収する。このため、衝撃吸収構造S1によれば、更に多くのエネルギーを効率的に吸収することができる。

また、本実施形態にかかる衝撃吸収構造S1によれば、表側部材11に入力された衝撃荷重によって厚さ方向に圧縮される第2の中間部材14を備えているため、変形時の荷重点Pの変位量(変形ストローク)を大きくとることができ、より多くのエネルギーを吸収することができるとともに、当該構造全体の十分な厚さ、つまり断面積を確保して、全体の曲げ剛性を高めることができる。

ところで、特許文献1に記載のフードのように、アウターパネルとインナーパネルとの間に柱状のリブを複数架設したフードにおいてアウターパネルとインナーパネルとリブとを一体成形しようとすると、ヒケによる外観不良が発生するおそれがあった。また、これを防止するために、アウターパネル及びインナーパネルを各々予め成形した場合には、成形後のアウターパネルとインナーパネルとの間に接着等によりリブを架設させる必要が生じ、生産性が低下するおそれがあった。本実施形態にかかる衝撃吸収構造S1では、表側部材11と中間部材13と第2の中間部材14と裏側部材12とが互いに面接合されているので、表側部材11に外観不良を発生させることなく、表側部材11と中間部材13と第2の中間部材14と裏側部材12とを一体成形できるので、生産性を向上させることができる。

また、本実施形態にかかる衝撃吸収構造S1によれば、表側部材11に入力された衝撃荷重によって厚さ方向に圧縮される第2の中間部材14を備えているため、入力された衝撃荷重を裏側部材12に分散させて伝達することができ、G−T曲線上の加速度の2つ目の極大値G2の大きさ、または、最初の極大値G1の大きさに対する2つ目の極大値G2の大きさの比(G2/G1)を大きくすることができる。また、第2の中間部材14の強度や厚さを調節することにより、上記2つ目の極大値G2の大きさをコントロールすることができる。

また、本実施形態にかかる衝撃吸収構造S1によれば、表側部材11と中間部材13と第2の中間部材14と裏側部材12とが互いに面接合されているので、全体の曲げ剛性をより一層高めることができる。

<第2実施形態> 次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態にかかる衝撃吸収構造S2は、主として以下の2点において、第1実施形態にかかる衝撃吸収構造S1と異なる。すなわち、フード1の表面層Eと裏面層Iとに挟持された中間層M(エネルギー吸収層)が第1実施形態における中間部材13のみによって構成されていて、第2の中間部材14に相当する部分が中間層Mに存在しないという点、及び、フード1の裏面層Iを構成する裏側部材12が炭素繊維強化プラスチック製ではなくガラス繊維強化プラスチック製であり、そのため裏側部材12が表側部材11よりも伸びやすいという点である。他の構成要素は、第1実施形態の対応する構成要素と同等であるので、同一の符号を付けて詳細な説明を省略する。

図5は、本実施形態にかかる衝撃吸収構造S2を備えたフード1の断面図である。

フード1は、図5に示すように、衝撃吸収構造S2として、表側部材11と、表側部材11に対向して配置された裏側部材12と、表側部材11と裏側部材12との間に配置された中間部材13とを備えている。

表側部材11は、フード1の表面層Eを構成する炭素繊維強化プラスチック製のシート状の部材である。表側部材11の厚さ、伸び率、強度等は、第1実施形態のそれと同様の値に設定することができる。なお、それらの値は特に限定されず、後述するようにインパクタFが衝突した際、中間部材13が破断した後に表側部材11が破断するような値に、実験等を通じて設定することができる。

裏側部材12は、フード1の裏面層Iを構成するガラス繊維強化プラスチック製のシート状の部材である。裏側部材12の厚さは、表側部材11の厚さと略等しく、例えば、0.8〜1.0mmに設定することができる。一方、裏側部材12の伸び率は、表側部材11の伸び率が1.5〜2.0%に設定されているのに対し、それよりも大きく設定される。具体的には、例えば、4.8〜6.1%に設定することができる。裏側部材12の引張強度は、表側部材11の引張強度と略等しく、例えば、250〜900MPaに設定することができる。なお、裏側部材12の厚さ、伸び率、強度等は、上記の値に限定されず、後述するようにインパクタFの衝突により中間部材13が破断した後に表側部材11を破断させることができるような値に、実験等を通じて設定することができる。

中間部材13は、フード1の表面層Eと裏面層Iとに挟持された中間層M(エネルギー吸収層)を構成する例えばエポキシ樹脂製のシート状の部材である。中間部材13は、表側部材11及び裏側部材12に沿って延びており、中間部材13の上側の面は、表側部材11の下側の面(裏面)に面接合されており、中間部材13の下側の面は、裏側部材12の上側の面(裏面)に面接合されている。中間部材13の厚さは、表側部材11や裏側部材12の厚さよりも大きく、例えば、2.0〜3.0mmに設定することができる。また、中間部材13は、表側部材11よりも低い伸び率を有し、かつ、表側部材11よりも低い強度を有している。中間部材13を構成するエポキシ樹脂に、例えば、タルクなどのミネラルの粉末を40重量%程度添加することにより、中間部材13の伸び率は、例えば、1.5%未満となるように調整することができる。また、引張強度は、例えば、50〜200MPaに設定することができる。これにより中間部材13は、表側部材11と一体的に変形する際、表側部材11よりも先に破断するようになっている。なお、中間部材13の厚さ、伸び率、強度等は、上記の値に限定されず、後述するようにインパクタFの衝突後初期、中間部材13が表側部材11及び裏側部材12との一体性を保持して全体の剛性に寄与し、かつ、その後、中間部材13が表側部材11よりも先に破断するような値に、実験等を通じて設定することができる。

以下、図6及び図7を参照して、第2実施形態による衝撃エネルギー吸収プロセスについて説明する。

上記のように構成されたフード1に対して、上述のインパクタFを、所定の角度及び速度で衝突させ、インパクタFに印加される合成加速度を測定した。図6は、測定された合成加速度の時間変化を示すグラフ(G−T曲線とも称する)である。

[フェーズ1] インパクタFが、フード1の表面に衝突すると、まず、インパクタFとの接触点(以下、荷重点)Pにおける変位量が最も大きくなるように弾性変形する。この間、中間部材13は、表側部材11及び裏側部材12に沿って延び、かつ、それらに挟持されている状態を保持する。すなわち、中間部材13は、表側部材11及び裏側部材12と一体的に変形し、これら表側部材11、裏側部材12及び中間部材13で形成される断面積の大きさによって、全体の曲げ剛性は保持される。そのため、インパクタFには、表側部材11、中間部材13及び裏側部材12全体の復元力(弾性力)が反力として付与され、G−T曲線上の加速度は、図6に示すように、時間の経過とともに(上記変位の増加とともに)単調に増加する傾向を示す。

中間部材13は、表側部材11よりも低い伸び率を有し、かつ、表側部材11よりも低い強度を有しているため、荷重点Pの変位量が所定の大きさに達した時点で、表側部材11よりも先に中間部材13が伸び変形に降伏して破断し、図7(a)に示すように、中間部材13にクラックが生じる。この中間部材13の破断が衝撃エネルギーの一部を吸収する。

[フェーズ2] 中間部材13にクラックが生じると、インパクタFにかかる反力のうち中間部材13の弾性力に由来する分が減少する。このため、G−T曲線上の加速度は、図6に示すように、中間部材13にクラックが生じた時点において最初の極大値G3をとった後、時間の経過とともに減少するようになる。

また、中間部材13にクラックが生じると、全体の曲げ剛性が低下し、さらに、裏側部材12の伸び率が表側部材11の伸び率よりも大きく設定されているため、曲げ荷重が表側部材11に集中する傾向となり、荷重点Pの変位量は更に増加する。そのため中間部材13の破断はその後も継続して起こり、図7(b)に示すように、中間部材13の破断箇所は更に増大し、エネルギーが更に吸収される。この間、インパクタFにかかる反力は増加せず、図6に示すように、G−T曲線上の加速度も減少する。

[フェーズ3] 中間部材13の破断が進み、荷重点Pの変形量がある程度まで大きくなると、表側部材11及び裏側部材12の個々の復元力(弾性力)が大きくなってきて、インパクタFには、それらの合力が反力として付与されるようになる。そのため、G−T曲線上の加速度は、図6に示すように、極小値をとった後、再び時間の経過とともに増加するようになる。

その後、更に変形が進行すると、裏側部材12に生じる応力が強度限界に達するよりも前に、表側部材11に生じる応力(主に曲げ荷重による応力)が、炭素繊維強化プラスチックの引張強さまたは圧縮強さに相当する応力に達する。これにより表側部材11が破断し、図7(c)に示すように、表側部材11にクラックが生じる。この表側部材11の破断が更にエネルギーを吸収する。

[フェーズ4] 表側部材11にクラックが生じると、インパクタFにかかる反力のうち表側部材11の弾性力に由来する分が減少する。このため、G−T曲線上の加速度は、図6に示すように、表側部材11にクラックが生じた時点において2つ目の極大値G4をとった後、時間の経過とともに減少していく。

以下に、第2実施形態の作用効果を説明する。

本実施形態にかかる衝撃吸収構造S2では、中間部材13が、炭素繊維強化プラスチック(第1の繊維強化複合材料)からなる表側部材11とガラス繊維強化プラスチック(第2の繊維強化複合材料)からなる裏側部材12とに沿って延び、かつ、それらに挟持されているので、表側部材11と裏側部材12のみの場合よりも断面積が増大し、衝撃吸収構造S2全体の曲げ剛性を高くすることができる。また、中間部材13は、表側部材11よりも低い伸び率を有し、かつ、表側部材11よりも低い強度を有している。従って、表側部材11から裏側部材12に向かって入力された衝撃荷重によってこれら部材全体が一体的に湾曲変形すると、表側部材11、裏側部材12及び中間部材13に伸び変形が発生するが、その際、中間部材13は表側部材11よりも伸び率及び強度が低いため、中間部材13が表側部材11よりも先に伸び変形に降伏して破断する。すなわち、衝撃吸収構造S2によれば、衝撃荷重の入力開始から中間部材13が破断するまで(フェーズ1)、全体の曲げ剛性が高く保持される。また、その後、荷重点Pの変位量が所定の大きさに達した時点(フェーズ1からフェーズ2への遷移期)で中間部材13が破断してエネルギーを吸収した後、表側部材11または裏側部材12が破断するまで、これら表側部材11、裏側部材12及び中間部材13で形成される断面積の大きさによって全体の曲げ剛性が保持される。このため、衝撃吸収構造S2によれば、より多くのエネルギーを効率的に吸収することができる。

また、本実施形態にかかる衝撃吸収構造S2では、表側部材11と中間部材13と裏側部材12とが互いに面接合されているので、上述の通り、表側部材11に外観不良を発生させることなく、表側部材11と中間部材13と裏側部材12とを一体成形できるので、生産性を向上させることができる。

さらに、本実施形態にかかる衝撃吸収構造S2では、裏側部材12の伸び率が表側部材11の伸び率より大きいので、最初の中間部材13の破断が起きた後、曲げ荷重を表側部材11に集中させることができる。これにより、中間部材13の破断を継続して起こすことができるとともに、表側部材11を裏側部材12が破断する前に破断させることが可能になり、衝撃エネルギー吸収の効率を向上させることができる。

また、本実施形態にかかる衝撃吸収構造S2によれば、表側部材11と中間部材13と裏側部材12とが互いに面接合されているので、全体の曲げ剛性をより一層高めることができる。

以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は、それらの実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。

例えば、上記実施形態では、本発明にかかる衝撃吸収構造を自動車の外板部材に適用した例を示したが、本発明にかかる衝撃吸収構造は、道路、軌道または工場構内を走行する車両の他、船舶、航空機などにも適用できる。

上記実施形態では、表側部材11及び裏側部材12の材料として、炭素繊維強化プラスチックまたはガラス繊維強化プラスチックを用いた例を示したが、表側部材11及び裏側部材12の材料は、これらに限定されない。強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維の他、例えば、ポリアラミド繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維などを用いることができる。また、炭素繊維は、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN系)、ピッチ系、セルロース系、炭化素による気相成長系炭素繊維、黒鉛繊維などを用いることができる。これらの繊維を2種類以上組み合わせて用いてもよい。また、強化繊維の形態は、連続した強化繊維、不連続の強化繊維、またはそれらの組み合わせであってもよく、連続した強化繊維は、一方向に引き揃えられた強化繊維や織物の強化繊維であってもよいが、表側部材11及び裏側部材12に等方的な特性を付与できるものが、安定した衝撃吸収性能を得る上でより好ましい。マトリックス樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルファイド(PPS)樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、変性ポリスチレン樹脂、AS樹脂(アクリロニトリルとスチレンとのコポリマー)、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレンのコポリマー)、変性ABS樹脂、MBS樹脂(メチルメタクリレート、ブタジエン及びスチレンのコポリマー)、変性MBS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、変性ポリメチルメタクリレート樹脂等がある。

上記実施形態では、中間部材13の材料として、ミネラルの粉末を添加したエポキシ樹脂を挙げたが、中間部材13の樹脂の種類は特に限定されず、例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)や不飽和ポリエステルなど、炭素繊維強化プラスチックのマトリックスとして使用される一般的な熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂に対してミネラルを添加したものであってもよい。

本発明によれば、曲げ剛性を向上させ、エネルギー吸収量を増大させることができる衝撃吸収構造及びこれを備えた車両用外板部材を提供することができる。

S1,S2 衝撃吸収構造 11 表側部材 12 裏側部材 13 中間部材 14 第2の中間部材

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