Thermosetting adhesive composition, and heat-resistant adhesive film and wiring film each using the same

申请号 JP2012037306 申请日 2012-02-23 公开(公告)号 JP2013170266A 公开(公告)日 2013-09-02
申请人 Hitachi Cable Ltd; 日立電線株式会社; Hitachi Cable Fine Tech Ltd; 日立電線ファインテック株式会社; 发明人 AMO SATORU; ABE TOMIYA; SHANAI DAISUKE; KOMATSU HIROAKI; MURAKAMI KENICHI;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide an adhesive composition high in storage stability, reliability and low-temperature adhesivity, and to provide a hard-to-curl heat-resistant adhesive film and wiring film each using the same.SOLUTION: A thermosetting adhesive composition is characterized by comprising: 100 pts.wt. of a phenoxy resin having in the structure a bisphenol S-type skeleton, ≥5 pts.wt. and ≤30 pts.wt. of a maleimide compound having in the structure a plurality of maleimide groups; and ≥3 vol.% and ≤20 vol.% of an inorganic needle-like filler. A heat-resistant adhesive film obtained by coating the composition on a polyimide film followed by drying, and a wiring film obtained by laying a conductor wiring layer on such a heat-resistant adhesive film, are also provided.
权利要求
  • 構造中にビスフェノールS型骨格を含有するフェノキシ樹脂100重量部に対して、複数のマレイミド基を構造中に含有するマレイミド化合物を5重量部以上、30重量部以下の範囲で含有し、更に無機針状フィラーを3容積%以上、20容量%以下の範囲で含有し、前記無機針状フィラーの径が0.1μm以上、10μm以下であり、長さが5μm以上、300μm以下であり、アスペクト比が10以上、60以下であることを特徴とする熱硬化性接着剤組成物。
  • 前記ビスフェノールS型骨格を含有するフェノキシ樹脂が下記式1の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性接着剤組成物。
    (式1中のmおよびnは整数を表す。)
  • 前記ビスフェノールS型骨格を含有するフェノキシ樹脂のn/mのモル比率が3/7以上、5/5以下であり、ポリスチレン換算重量平均分子量が20000以上、60000以下の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性接着剤組成物。
  • 前記マレイミド化合物が下記式2〜4で表されるマレイミド化合物の1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物。
    (式2において、n=0−3とは、nが0以上、3以下である化合物の何れか1種類以上を含有していることを表す。)
  • 前記無機針状フィラーが、親水化処理、及びカップリング処理の少なくとも一方の密着前処理が施されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物。
  • 前記熱硬化性接着剤組成物が更にアミン系、ビニル系、及びイソシアナート系シランカップリング剤の少なくとも一つの密着処理剤を0.01重量部以上、5重量部以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物。
  • 前記熱硬化性接着剤組成物が、更に可塑剤を1重量部以上、30重量部以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物。
  • 前記可塑剤が、重合性または架橋性を有することを特徴とする請求項7に記載の熱硬化性接着剤組成物。
  • 可塑剤の重合または架橋反応を開始する重合開始剤を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載の熱硬化性接着剤組成物。
  • 前記重合開始剤の重合開始温度が160℃以上であることを特徴とする請求項9記載の熱硬化性接着剤組成物。
  • ポリイミドフィルムの片面または両面に、請求項1〜10のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物の接着層を有することを特徴とする耐熱接着フィルム。
  • 前記接着層の厚さが10μm以上、100μm以下であり、ポリイミドフィルムの厚さが25μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項11に記載の耐熱接着フィルム。
  • 請求項11又12に記載の耐熱接着フィルムと導体箔とを熱融着してなる積層フィルム。
  • 前記導体箔の厚さが9μm以上、35μm以下であることを特徴とする請求項13に記載の積層フィルム。
  • 請求項13又は14に記載の積層フィルム上の導体箔に配線加工を施してなる配線フィルム。
  • 請求項15に記載の前記配線フィルムを複数枚積層した多層配線フィルム。
  • 請求項11または12に記載の耐熱接着フィルムを用いて、前記接着層が互いに対向するように配置し、その間に導体配線を設けて挟み、熱融着して接着したことを特徴とする配線フィルム。
  • 請求項11または12に記載の耐熱接着フィルムを用いて、前記接着層をポリイミドフィルム上の一方の面に有する片面耐熱接着フィルムを、前記接着層を両面に有する両面耐熱接着フィルムの両側に前記接着層が互いに対向するように配置し、前記片面耐熱接着フィルムと前記両面耐熱接着フィルムの間にそれぞれ導体配線を設けて挟み、熱融着してなる配線フィルム。
  • 前記導体配線の厚さが35μm以上であることを特徴とする請求項17または18に記載の配線フィルム。
  • 前記導体配線は同一面内に複数設置されていることを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載の配線フィルム。
  • 前記接着層は、融着温度以上の温度で、後加熱したことを特徴とする請求項17〜20のいずれかに記載の配線フィルム。
  • 前記導体配線が銅配線である請求項17〜21のいずれかに記載の配線フィルム。
  • 前記銅配線の外層の少なくとも一部分が錫、ニッケル、亜鉛及びコバルトの何れかを含有する金属層または/およびその酸化物層または/および水酸化物層で被覆されていることを特徴とする請求項22に記載の配線フィルム。
  • 前記導体配線の外層の少なくとも一部が、アミノ基、ビニル基、スチリル基、アクリレート基、又はメタクリレート基を含有するシランカップリング剤で被覆されていることを特徴とする請求項17〜23のいずれかに記載の配線フィルム。
  • 说明书全文

    本発明は、熱硬化性接着剤組成物、それを用いた耐熱接着フィルムおよび配線フィルムに関する。

    近年、電子機器は小型化,薄型化、軽量化が進行し、それに用いる配線部材には、多層化、微細配線化、薄型化による高密度微細配線が要求されている。 また、当分野では環境負荷の低減を目的に鉛フリーはんだの採用が進められている。 これにともないFFC(Flexible Flat Cable)、TAB(Tape Automated Bonding)テープ、FPC(Flexible Printed Circuit)、MFJ(Multi Frame Joiner)等の配線部材に対しては、その耐熱性の向上が求められている。 前記配線部材の絶縁層は基本的には基材フィルムと接着層から構成されている。 そのような例として特許文献1を挙げることができる。 基材フィルムとしてはポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の耐熱性フィルムや、エポキシ樹脂−ガラスクロス、エポキシ樹脂−ポリイミド−ガラスクロス等の複合耐熱フィルムからなる有機絶縁フィルムが例示されている。 接着層にはポリアミド樹脂とエポキシ樹脂を含有する熱硬化性接着剤組成物を用いることが開示されている。

    しかし、特許文献1の熱硬化性接着剤組成物はポリアミド樹脂構造中に存在するアミノ基とエポキシ樹脂との反応性が高いことに起因して耐熱接着フィルムの保存安定性に課題を有していた。 この問題を解決するため特許文献2では、両末端にエポキシ基を有するフェノキシ樹脂とアクリルゴム、硬化剤からなる熱硬化性接着剤組成物を接着層に用いることが提案されている。 フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、あるいは、ビスフェノールAとビスフェノールFの共重合型が例示されている。 特許文献2の耐熱接着フィルムは、その接着層に接着が比較的優れていると言われるフェノキシ樹脂を含有しているにもかかわらず、0.5kN/m程度の接着力しかないこと、はんだ耐熱性が260℃とやや低い点に課題があった。

    特許文献3では、上記課題を解決する手法として重量平均分子量が80,000〜800,000である熱可塑性ポリウレタン樹脂と、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤とを含有する熱硬化性接着剤組成物を接着層に用いることが開示されている。 通常のポリウレタン樹脂はエポキシ樹脂との反応性が高いため、耐熱接着フィルムの保存安定性に課題を有するが、特許文献3では特定分子量範囲のポリウレタン樹脂を用いることによって保存安定性を改善するとしている。 接着力は1.1〜1.7kN/mを有する。 また、特許文献4ではポリウレタン樹脂と、エポキシ樹脂と、特定の構造のノボラック樹脂を含有する熱硬化性接着剤組成物を接着層に用いた場合、その耐熱接着フィルムのはんだ耐熱性が300℃であることが開示されている。 しかし、特許文献3、4で使用されるポリウレタン樹脂は、一般に200℃以上の温度において解重合することが知られている。 また、ポリウレタンの長期耐熱性信頼性は80〜100℃といわれている。 従ってポリウレタン樹脂を含有する熱硬化性接着剤組成物を接着層とする耐熱接着フィルムには、長期耐熱信頼性が要求される産業用、自動車用電子機器の分野への応用に不安を有する。 また、特許文献3に記載のポリウレタン樹脂の分子量調整によるエポキシ樹脂との反応抑制機構は、官能基の濃度低減に基づくものであり、その反応性自体は変わっておらず、耐熱接着フィルムの保存安定性に対する配慮が不十分である。 現在、熱硬化性接着剤組成物を用いた耐熱接着フィルムにおいては、5℃以下での低温保管を推奨している場合が多い。 低温保管庫から取り出した耐熱接着フィルムには結露が付着する場合があり、これより接着不良やはんだ耐熱性の低下を招く危険があるので、耐熱接着フィルムの保管は室温で行われるべきである。

    特許文献5は、スルホン基含有ポリヒドロキシポリエーテル樹脂とマレイミドとを含有する熱硬化性接着剤組成物を自己融着エナメル線上の接着層に用いることが開示されているが、ここに記載されたスルホン基含有ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は本発明において用いられるビスフェノールS型骨格を有するフェノキシ樹脂とは異なる。 特許文献5に記載の熱硬化性接着剤組成物の問題点は、ワニス化にシクロヘキサノン等の高沸点溶媒を用いる点にある。 そのため該熱硬化性接着剤組成物を用いて耐熱接着フィルムを製造した場合、高沸点溶媒の残留によるはんだ耐熱性の低下が生じる場合があり、更に高温で十分に乾燥した場合には接着層の硬化が進行して耐熱接着フィルムに強いカールが発生したり、配線埋込性が低下したりするといった問題が懸念される。 また、特許文献5に記載の熱硬化性接着剤組成物の融着、硬化温度は220℃以上、240℃未満と高いことから、220℃以上の高温プロセスに適合した製造設備が必要とされる。 配線フィルム製造時のプロセス温度は、ランニングコスト低減のために100℃以上、180℃以下の範囲に設計されるべきである。

    特開平5−29399号公報

    特開2004−136631号公報

    特開2010−150437号公報

    特開2010−143988号公報

    特開2009−67934号公報

    本発明の目的は、室温での保存安定性、低温接着性、配線埋込性に優れ、更にカールしにくい耐熱接着フィルム、それを用いたはんだ耐熱性、長期耐熱信頼性の優れたFFC等の配線フィルムとこれを実現する熱硬化性接着剤組成物を提供することである。

    本発明の基本構成は、構造中にビスフェノールS型骨格を含有するフェノキシ樹脂とビスマレイミドを含む熱硬化性接着剤組成物に3容積%以上、20容積%以下の無機針状フィラーが分散され、前記無機針状フィラーの径が0.1μm以上、10μm以下、長さが5μm以下、300μm以上、アスペクト比が10以上、60以下である、熱硬化性接着剤組成物と、それを接着層とする耐熱接着フィルム、および導体配線を有する配線フィルムである。

    本発明によれば、室温での保存安定性、低温接着性、配線埋込性に優れ、更にカールしにくい耐熱接着フィルム、それを用いたはんだ耐熱性、耐湿信頼性、長期耐熱信頼性の優れたFFC等の配線フィルムとこれを実現する熱硬化性接着剤組成物を得ることができる。

    本発明の接着剤組成物中における無機針状フィラーの第1の配置例を示す平面図。

    本発明の接着剤組成物中における無機針状フィラーの第1の配置例を示す断面図。

    本発明の接着剤組成物中における無機針状フィラーの他の配置例を示す平面図。

    本発明の接着剤組成物中における無機針状フィラーの他の配置例を示す断面図。

    本発明の第一の耐熱接着フィルムの断面模式図。

    本発明の第二の耐熱接着フィルムの断面模式図。

    図3に記載の耐熱接着フィルムから作製される本発明の第一の積層フィルムの断面模式図。

    図4に記載の耐熱接着フィルムから作製される本発明の第二の積層フィルムの断面模式図。

    本発明の第一の配線フィルムの断面模式図。

    本発明の第二の配線フィルムの断面模式図。

    図3に記載の耐熱接着フィルムと図7に記載の配線フィルムから本発明の第三の配線フィルムを製造する方法の説明図。

    図3に記載の耐熱接着フィルムと図8に記載の配線フィルムから本発明の第四の配線フィルムを製造する方法の説明図。

    図4に記載の耐熱接着フィルムと図7に記載の配線フィルムから本発明の第五の配線フィルムを製造する方法の説明図。

    図3に記載の耐熱接着フィルム、図4に記載の耐熱接着フィルム及び図8に記載の配線フィルムから本発明の第六の配線フィルムを製造する方法の説明図。

    図3に記載の耐熱接着フィルムと導体配線から本発明の第七の配線フィルムを製造する方法の説明図。

    図3に記載の耐熱接着フィルム、図4に記載の耐熱接着フィルム及び導体配線から本発明の第八の配線フィルムを製造する方法の断面模式図。

    本発明の配線フィルムの層間接続方法を示す断面模式図。

    配線フィルムの端部から導体配線を引き出す本発明の第九の配線フィルムを表す断面模式図。

    配線フィルムの端部から導体配線を引き出す本発明の第十の配線フィルムの断面模式図。

    耐熱接着フィルムのカールの評価方法を表す断面模式図。

    配線埋込性評価用サンプルの平面模式図。

    配線埋込性評価用サンプルの断面模式図。

    配線埋込性評価例を表す顕微鏡写真で、埋込み不良を示す。

    配線埋込性評価例を表す顕微鏡写真で、埋込み良を示す。

    耐熱接着フィルムと銅箔との接着力に基づく長期耐熱性試験結果を表すアレニウスプロット。

    前記無機針状フィラーは熱硬化性接着剤組成物中に分散されており、樹脂成分を介して互いに接合されている。 たとえばポリイミドフィルム上に本発明の熱硬化性接着剤組成物による接着層を形成した耐熱接着フィルムの場合、無機針状フィラーが樹脂成分を介して互いに接合されているため接着層の剛性が増し、耐熱接着フィルムに発生するカールが効果的に抑制される。 また、無機針状フィラーは、織布や不織布のように繊維同士が直接相互に拘束されず、又は過剰に絡み合っていない状態で分散していることが好ましい。 無機針状フィラーが直接相互に絡みにあったり、拘束したりしていると、熱硬化性接着剤組成物の溶融流動性が低下して接着性や配線埋込性を低下させるためである。 好ましい分散状態を維持するために無機針状フィラーの添加量は、熱硬化性接着剤組成物に対して3容量%以上、20容量%以下とすることが好ましい。

    上記「径」とは無機針状フィラーの長軸に垂直の方向における短軸方向の直径であり、その断面は、円形、楕円形、矩形、多形、その他不定形でよいが、なるべく円形、楕円形、矩形、多角形がよく、強い扁平形状はあまり好適でない。 その理由は、扁平面に直交する方向においては、その曲げ強度が低く、耐熱接着フィルムに発生するカールを効果的に抑制することができない可能性があるためである。

    本発明において、前記無機針状フィラーは織布や不織布のように直接相互に絡み合ったり、拘束されたりしておらず、樹脂成分13によって互いに接合されていることが好ましい。 無機針状フィラー12は、接着層13中において図1Aに示すように、一部が互いに接触して接着層13の剛性を高める。 また、図1Bの模式図のように基材フィルム1に対して無機針状フィラー12がほぼ平行に配置されていることが好ましく、更に好ましくは図2A,図2Bの模式図のように、複数の無機針状フィラーが接着層13中において重なり合って、立体的な配置を取っていることが好ましい。 接着層13中において、無機針状フィラー12が、立体的に配置されることによって接着層13の剛性がいっそう増し、効果的に耐熱接着フィルム9のカールが抑制される。 前記無機針状フィラーの重なり合い方には特に制限は無いが、接着層の底面に対し30度以下の角度で存在する無機針状フィラーは、梁のような構造となり、耐熱接着フィルム製造時の乾燥にて発生するカールを効果的に抑制するので好ましい。 また、このような樹脂成分13で接合された無機針状フィラーの配置は、熱硬化性接着剤組成物の溶融にともない互いの接合が解除されるため、接着層2の溶融流動を妨げることは少ない。 これにより耐熱接着フィルムの配線埋込性の劣化を抑制しつつ、カールを効果的に抑制することができる。

    本発明の好ましい実施形態は、構造中にビスフェノールS型骨格を含有するフェノキシ樹脂100重量部に対して複数のマレイミド基を構造中に含有するマレイミド化合物を5重量部以上、30重量部以下の範囲で含有し、更に無機針状フィラーを3容積%以上、20容積%以下の範囲で含有することを特徴とする熱硬化性接着剤組成物、それを用いた耐熱接着フィルムおよび配線フィルムである。

    本発明者は室温での保存安定性が優れ、接着、硬化後の耐熱性、長期耐熱信頼性に優れた熱硬化性接着剤組成物の開発を進めるにあたって5%熱重量減少温度が350℃を超えるフェノキシ樹脂をベースレジンに選定した。 また、耐熱接着フィルムの基材フィルムには耐熱性の優れたポリイミドフィルムを採用することにした。 フェノキシ樹脂を用いて熱硬化性接着剤組成物を作製し、ポリイミドフィルム上に塗布し、乾燥して接着層を形成するためには、適切な溶媒の選定が必要であった。 フェノキシ樹脂の良溶媒にはテトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサノン等が存在するが、THFは製造時の爆発の危険性が高いことからシクロヘキサン等の採用が好ましいと考えた。

    種々検討した結果、本発明者はビスフェノールS型の骨格を有するフェノキシ樹脂と複数のマレイミド基を有するマレイミド化合物を含有する熱硬化性接着剤組成物が、ポリイミドフィルムや導体配線に対して高い接着性を示し、その接着界面の耐熱性、耐湿信頼性が十分に高いことを見出した。 しかし、従来よりも低温である180℃で乾燥した場合であっても、接着層の硬化反応が進行するため、耐熱接着フィルムには、強いカールが発生し、ハンドリング性が非常に悪いという問題があった。 本発明者は、熱硬化性接着剤組成物に所定の無機針状フィラーを配合することによって上記耐熱接着フィルムに発生するカールを効果的に抑制できること、無機針状フィラーを配合した場合においても高い接着性を維持できること、可塑剤を併用することによって配線の埋込性が改善できることを見出し、本発明に至った。

    本発明における無機針状フィラーの機能について更に説明する。 本発明の耐熱接着フィルムの接着層は、180℃の乾燥工程を経ても接着性を失わないことを先に述べた。 しかし、乾燥工程で与えられる熱によって、ポリイミドフィルムと接着層との熱膨張差が顕在化したり、耐熱接着フィルムに強いカールが発生したりすることが問題となっていた。 カールの発生は耐熱接着フィルムの搬送や所定の位置への設置を困難にするためこれを抑制する必要があった。 通常、樹脂材料の熱膨張、硬化収縮を抑制するためには低熱膨張性の無機フィラーを添加する手法が有効である。

    しかし、汎用の破砕フィラーや球形フィラーを単に充填しただけでは該耐熱接着フィルムのカールの抑制は不十分であった。 また、過剰の無機針状フィラーを添加した場合においては、カールは抑制できるものの接着力が著しく低下した。 本発明者は、無機針状フィラーの形状、配置を制御することによって無機針状フィラーの充填量を抑制し、接着性や配線埋込性を維持しつつ、カールを抑制する手法として、接着層中への無機針状フィラーを用いた擬似的な架構式構造の導入を考案した。

    図1、図2にその例を模式的に示した。 本発明の擬似的な加構式構造とは、接着層中に存在する複数の無機針状フィラーが互いに重なり合って、立体的な構造体を形成し、且つ無機針状フィラーが熱硬化性接着剤組成物中の樹脂成分によって相互に接合された構造を示す。

    接着層内に分散された無機針状フィラーは、常温においては接着層を形成する樹脂成分によって強固に結合される。 これによって無機針状フィラーの添加量を低く抑制しつつ、系の曲げ弾性率を増して耐熱接着フィルムに発生するカールを抑制するものである。 擬似的な架構式構造を導入する効果としては、無機針状フィラーの添加量を低く抑制できることに起因して接着時には樹脂成分が熔融して無機針状フィラーの架構式構造が外れ、高い熔融流動性と高接着性を発現できる点にある。

    接着層の形成過程で自立的に好ましい擬似架構式構造を導入することが可能な無機針状フィラーの形状、配合量について検討した結果、直径が0.1μm以上、10μm以下であり、長さが5μm以上、300μm以下であり、アスペクト比が10以上、60以下である無機針状フィラーを、熱硬化性接着剤組成物に3容量%以上、20容量%以下の範囲で配合した場合において、ポリイミドフィルム上に熱硬化性接着剤組成物を塗布・乾燥した際に無機針状フィラー同士が重なり合って固着した擬似架構式構造が形成され、耐熱接着フィルムのカールが効果的に抑制されることが確認された。 更に無機針状フィラーの分散性の向上、接着層の面内でのバラツキを抑制するためには、無機針状フィラーの直径が1μm以下であり、アスペクト比が10以上、60以下であることが好ましいことが見出された。

    本発明の実施態様を例示すれば、以下のとおりである。
    (1)熱硬化性接着剤組成物に、3容量%以上、20容量%以下の範囲の無機針状フィラーが分散され、前記無機針状フィラーの径が0.1μm以上、10μm以下であり、長さが5μm以上、300μm以下であり、アスペクト比が10以上、60以下の範囲にあることを特徴とする熱硬化性接着剤組成物。 本発明の熱硬化性接着剤組成物は、無機針状フィラーの形状及び配合量並びに配置構造から、カールの発生を抑制した耐熱接着フィルムに適する。
    (2)前記熱硬化性接着剤組成物が、構造中にビスフェノールS型骨格を有するフェノキシ樹脂100重量部に対して、複数のマレイミド基を構造中に有するマレイミド化合物を10重量部以上、30重量部以下の範囲で含有することを特徴とする熱硬化性接着剤組成物。
    (3)前記ビスフェノールS型骨格を含有するフェノキシ樹脂は下記式(1)の構造を有するものであることが好ましい。

    上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型の骨格とビスフェノールS型の骨格を有するものであることが好ましい。 上記構造式において、mおよびnは整数を表し、n/mのモル比率が3/7以上、5/5以下の範囲であることが好ましく、またポリスチレン換算重量平均分子量が20000以上、60000以下の範囲であるフェノキシ樹脂が好ましい。

    (4)前記無機針状フィラーとしては、熱硬化性接着剤組成物の樹脂成分との密着性を増す密着処理が施されていることが好ましく、種々のカップリング剤を用いたカップリング処理のほか、無機針状フィラー表面に水酸基やカルボキシル基を生成する親水化処理を施すことができる。 カップリング処理においては、あらかじめ無機針状フィラー表面にカップリング剤を担持して用いても良いし、熱硬化性接着剤組成物にカップリング剤を添加して用いても良い。 作業性の観点からはカップリング剤を熱硬化性接着剤組成物に添加して用いることが簡便で好ましい。 その添加量はフェノキシ樹脂100重量部に対して0.01重量部以上、5重量部以下の範囲で用いることが好ましい。 カップリング剤としては、マレイミド化合物やフェノキシ樹脂と共有結合を形成できるアミン系、ビニル系、イソシアナート系シランカップリング剤が好ましく用いられる。
    (5)マレイミド化合物としては、その溶融温度が168℃以下であり、200℃におけるゲル化時間が120秒以上、350秒以下であるマレイミド化合物または/および溶融温度が168℃以下であり、250℃におけるゲル化時間が160秒以上、150秒以下であるマレイミド化合物が特に好ましい。

    前記マレイミド化合物としては、下記式(2)、(3)、(4)で表されるマレイミド化合物が好ましく、これらは1種以上用いられる。

    上記式(2)において、n=0−3とは、nが0以上、3以下の範囲である化合物の何れかを1種類以上含有していることを表す。

    (6)本発明では、熱硬化性接着剤組成物が更に可塑剤を含有することが好ましい。 可塑剤は、好ましくはフェノキシ樹脂成分100重量部に対して1重量部以上、30重量部以下の範囲で用いられる。 前記、可塑剤としては、単独での架橋性または重合性を有する反応性の可塑剤の使用が好ましい。 更にマレイミド化合物とは反応機構を異にし、独自の重合または架橋反応を生じる可塑剤およびその重合開始剤を併用して用いることが、乾燥後の接着層の熔融流動性向上の観点から好ましい。 本反応性可塑剤の重合開始剤の開始温度は、160℃以上、更に好ましくは180℃以上、220℃未満であることが、高温乾燥時の接着層の硬化抑制および後硬化における重合または架橋反応の促進の観点から好ましい。

    (7)本発明によれば、前記熱硬化性接着剤組成物をポリイミドフィルム上に設置した耐熱接着フィルムが提供される。 具体的にはポリイミドフィルム上に、構造中にビスフェノールS型骨格を含有するフェノキシ樹脂100重量部に対して、複数のマレイミド基を構造中に含有するマレイミド化合物を5重量部以上、30重量部以下の範囲で含有する熱硬化性接着剤組成物であって、更に無機針状フィラーを3容量%以上、20容量%以下の範囲で含有する熱硬化性接着剤組成物を接着層とする耐熱接着フィルムが提供される。

    本発明の耐熱接着フィルムにおいては、図3に記載のごとくポリイミドフィルム1上の片面に接着層2を有する片面耐熱接着フィルムと図4に記載のようにポリイミドフィルム上の両面に接着層2を有する両面耐熱接着フィルムを作製することができる。 接着層およびポリイミドフィルムの厚さは、目的に応じて自由に選択できるが、概ね接着層の厚さは10μm以上、100μm以下の範囲、ポリイミドフィルムの厚さは25μm以上、100μm以下の範囲で選択することが耐熱接着フィルム、配線フィルムの生産性、ハンドリング性の観点から好ましい。

    (8)前記マレイミド化合物を用いることによって、高温乾燥時の接着層の硬化反応を抑制できる。 これにより、接着時の接着層の熔融流動性が増し、配線の埋込性が改善される。

    (9)本発明の耐熱接着フィルムにおいて、接着層が更に可塑剤を含有することが好ましい。 前記、可塑剤としては、単独での架橋性または重合性を有する反応性可塑剤の使用が好ましい。 更にマレイミド化合物とは反応機構を異にし、独自の重合または架橋反応を生じる可塑剤とその重合開始剤とを併用して用いることが、乾燥後の接着層の流動性向上の観点から好ましい。 本反応性可塑剤の重合開始剤の開始温度は160℃以上、更に好ましくは180℃以上、220℃未満の範囲であることが、高温乾燥時の接着層の硬化抑制および後硬化における重合または架橋反応の促進の観点から好ましい。

    (10)本発明によれば、前記耐熱接着フィルムと導体箔とを融着することにより、導体層を有する積層フィルムを得ることができる。 具体的にはポリイミドフィルム上に、構造中にビスフェノールS型骨格を含有するフェノキシ樹脂100重量部に対して、複数のマレイミド基を構造中に含有するマレイミド化合物を5重量部以上、30重量部以下の範囲で含有する熱硬化性接着剤組成物であって、更に無機針状フィラーを3容量%以上、20容量%以下の範囲で含有する熱硬化性接着剤組成物を接着層とする耐熱接着フィルムと導体箔を融着した積層フィルムが得られる。

    本積層フィルムの接着層はBステージ状態とすることが好ましく、更に好ましくは硬化状態であることが好ましい。 これにより接着層と導体箔との接着力を増すことができる。 本発明の積層フィルムにおいては、図5および図6に記載のように耐熱接着フィルム上の片面または両面に導体層3を形成することができる。 積層フィルムにおける各層の厚さは任意に調整してよいが、導体層の厚さは9μm以上、35μm以下の範囲で調整することが、エッチング加工による配線加工精度を保つために好ましい。
    (11)前記特定のマレイミド化合物を用いることによって、高温乾燥時の接着層の硬化反応を抑制できる。 更にBステージ状態における導体層との接着力が改善される。
    (12)本発明によれば、前記積層フィルム上の導体層に配線加工を施すことによって配線フィルムが提供される。 具体的にはポリイミドフィルム上に、構造中にビスフェノールS型骨格を含有するフェノキシ樹脂100重量部に対して、複数のマレイミド基を構造中に含有するマレイミド化合物を5重量部以上、30重量部以下の範囲で含有する熱硬化性接着剤組成物であって、更に無機針状フィラーを3容量%以上、20容量%以下の範囲で含有する熱硬化性接着剤組成物を接着層とし、該接着層上に導体配線を有する配線フィルムが提供される。 本配線フィルムの接着層はBステージ状態とすることが好ましく、更に好ましくは後硬化等によって硬化状態にすることが好ましい。 これにより接着層と導体配線との接着力を増すことができる。

    本発明の配線フィルムにおいては、図5および図6に記載の積層フィルムに、エッチング加工を施すことによって図7および図8に記載のように片面または両面に導体配線を形成することができる。 更に図9〜図11に記載のように外層の導体配線を本発明の耐熱接着フィルムにより被覆することができる。 これにより導体配線を保護することができる。 更に本発明は、図12に記載のように複数の配線フィルムを多層化することができる。

    また、本発明によれば図13記載のように2枚の片面耐熱接着フィルムを接着層が互いに対向するように配置し、その間に導体配線を設けて挟み、片面耐熱接着フィルムと導体配線とを熱融着することによって配線フィルムを作製することができる。 更に図14に示すように、2枚の片面耐熱接着フィルムを両面耐熱接着フィルムの両面に接着層が互いに対向するように配置し、片面接着フィルムと両面接着フィルムの間にそれぞれ導体配線4を設けて挟み、両面耐熱接着フィルムと導体配線と片面耐熱接着フィルムとを熱融着することによって多層配線フィルムを作製することもできる。

    図13および図14に記載の配線フィルムの場合、導体配線4を耐熱接着フィルム上に設置する際の導体配線4のハンドリング性を確保するため、35μm以上の厚さを有する導体配線を用いることが望ましい。 導体配線の厚さには特に上限はないが、耐熱接着フィルムの接着層の厚さが50μm以下である場合には、導体配線の厚さは100μm以下であることが好ましい。 本配線フィルムは、導体配線のエッチング加工の必要がないため高い生産性を有する。
    (13)前記配線フィルムにおいて、同一面内に複数の導体配線を有することが好ましい。 これにより導体配線密度を増すことができる。
    (14)前記配線フィルムにおいて、導体配線および耐熱接着フィルム間の接着力を増すために、前記接着層をその融着温度以上の温度で後加熱する。 本発明における好ましい融着温度は160℃以下であることが好ましく、融着圧は3MPa以下、更に好ましくは1MPa以下であることが、生産性の観点から好ましい。 更に後硬化温度は180℃以上、220℃未満であることが好ましい。 後硬化は、配線フィルムを加圧しながら実施しても良いし、加圧せずに実施してもよい。

    (15)前記配線フィルムにおいて、該導体配線は銅配線であることが、高導電性の観点から好ましい。

    (16)前記配線フィルムにおいて、銅配線の外層の少なくとも一部分を錫、ニッケル、亜鉛、コバルトの何れかを含有する金属層または/およびその酸化物層または/および水酸化物層で被覆することにより、銅配線の酸化を抑制して接着性を向上する。

    (17)更に、前記配線フィルムにおいて、導体配線の外層の少なくとも一部を、アミノ基、ビニル基、スチリル基、アクリレート基およびメタクリレート基からなる群から選ばれた1種以上の基を含有するシランカップリング剤で被覆することができる。 これにより導体配線と接着層との接着信頼性を改善することができる。

    本発明におけるフェノキシ樹脂、マレイミド化合物、無機針状フィラー、可塑剤の主な機能について説明する。 フェノキシ樹脂は熱硬化性接着剤組成物に成膜性を付与し、硬化後においては接着層に柔軟性と機械的強度の付与の機能を主に担う成分である。 このような機能を発現するための好ましい分子量範囲としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される重量平均分子量で20000以上、60000以下の範囲を挙げることができる。

    また、ビスフェノールS型骨格と例えばビスフェノールA型骨格のような他の骨格構成成分との総量に対するビスフェノールS型骨格の含有率は、30モル%以上、50モル%以下(すなわち、式(1)のn/mのモル比が3/7以上、5/5以下)であることが好ましい。 そのようなフェノキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製YX8100、東都化成(株)製YPS−007A30、新日鐵化学(株)製YP-50等が挙げられる。

    マレイミド化合物は、接着層に溶融流動性と熱硬化性を付与する成分である。 これによって接着層の融着性が改善されると共に硬化後の接着層のはんだ耐熱性、耐湿性、耐薬品性が改善される。 更にマレイミド化合物として溶融温度が160℃以下であり、200℃におけるゲル化時間が180秒以上、350秒以下の範囲であるマレイミド化合物または/および溶融温度が160℃以下であり、250℃におけるゲル化時間が110秒以上、150秒以下の範囲であるマレイミド化合物を選択することによって160℃以下の低温での融着性と接着性、はんだ耐熱性、耐湿性の両立が実現できるので好ましい。

    好ましいマレイミド化合物の具体例としては、BMI−1000、BMI−2000、BMI−5000、BMI−5100、BMI−TMH(以上、大和化成工業(株)製等を挙げることができる。

    本発明におけるフェノキシ樹脂とマレイミド化合物との好ましい配合比率は、フェノキシ樹脂を100重量部として、マレイミド化合物が5重量部以上、30重量部以下である範囲を挙げることができる。 マレイミド化合物が5重量部未満になると硬化不足となりはんだ耐熱性、耐湿性、耐薬品性、接着性を損なう場合があり、マレイミド化合物が30重量部を超えると接着性の低下、マレイミド化合物析出による接着層の不均一化の問題を生じる場合がある。

    前記の無機針状フィラーとしては、ホウ酸アルミニウムウイスカ、チタン酸カリウムウイスカ、酸化亜鉛ウイスカ、硫酸マグネシウムウイスカ、ウォラストナイトウィスカ、炭酸カルシウムウィスカ、ロックウール、各種ガラスチョップドストランド等がある。 具体例としては、市販品は、ホウ酸アルミニウムウイスカとして、四国化成製:アルボレックスY(径0.5μm以上、1μm以下、繊維長10μm以上、30μm以下)、チタン酸カリウムウィスカとして、大塚化学社製:ティスモN(径0.3μm以上、0.6μm以下、繊維長10μm以上、20μm以下)、酸化亜鉛ウィスカとして、パナソニック社製:酸化亜鉛ウィスカ(径0.2μm以上、3μm以下、繊維長2μm以上、50μm以下)、硫酸マグネシウムウィスカとして、宇部興産社製:モスハイジ(径0.5μm、繊維長10μm以上、30μm以下)、ウォラストナイトウィスカとしては、NYCO Minerals社製:NYAD 1250、NYAD−G(径3μm以上、40μm以下、繊維長9μm以上、600μm以下)、炭酸カルシウムウィスカとしては、丸尾カルシウム社製:ウィスカルA(径0.5μm以上、1.0μm以下、繊維長20μm以上、30μm以下)、ロックウールとしては、LAPINUS社製:ラピナスロックフィルRF4103(径5μm以上、10μm以下、繊維長20μm以上、170μm以下)、チョップドストランドとしては、セントラル硝子社製ECS03−615(径9μm、繊維長3000μm)等を挙げることができる。 長すぎる繊維は適宜粉砕して用いればよい。

    本発明における無機針状フィラーの好ましい配合比率は、接着剤組成物中の3容量%以上、20容量%以下である範囲を挙げることができる。 無機針状フィラーの配合比が3容量%未満になるとカールの抑制効果が低下し、20容量%を超えるとポリイミドフィルムおよび導体配線との接着力、配線埋込性が低下する。

    可塑剤は、乾燥後の接着層の熔融流動性を増し、図9〜図14に記載の配線フィルムの配線埋込性を改善する成分である。 可塑剤としては、導体配線または導体層と耐熱接着フィルムとの融着温度において、熔融性と不揮発性を有する各種化合物の適用が可能である。 そのような例としては各種燐酸エステル化合物が挙げられ、具体的にはレゾルシノールビス−ジフェニルフォスフェート、1,3−フェニレンビス−ジキシレニルフォスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルフォスフェート等を挙げることができる。

    更に好ましい可塑剤としては、はんだ耐熱性、耐湿性向上の観点から重合性または架橋性を有する化合物を採用することが好ましい。 そのような例としてはトリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ エトキシ〕フェニル〕プロパン、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,2−ビス(ビニルフェニル)エタン等の架橋性を有するラジカル重合性モノマーやビスフェノールA型、ビスフェノールF型等の各種エポキシ樹脂やビス((1−エチル(3−オキセタニル))メチル)エーテル(東亞合成製アロンオキセタンOXT−221)等のオキセタン樹脂を挙げることができる。特にマレイミド化合物とは反応機構が異なるエポキシ樹脂、オキセタン樹脂を可塑剤として用いることが接着層の乾燥時の硬化反応を抑制する観点から好ましい。そのようなエポキシ樹脂、オキセタン樹脂の中でも特に単官能モノマーを用いることが好ましい。

    単官能モノマーを可塑剤とした場合、高温乾燥時にある程度、重合が進行した場合においても熔融流動性を維持できるため、乾燥条件の自由度が増す。 そのような単官能モノマーである可塑剤として、エポキシモノマーとしては、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、商品名としてはナガセケムテックス社製EX−147,EX−146、EX−141等が挙げられる。 オキセタンモノマーとしては、3―エチル―3−((フェノキシ)メチル))オキセタン、3―エチル―3−((シクロヘキシロキシメチル))オキセタン、3―エチル―3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、商品名としては東亞合成社製アロンオキセタンOXT−211、OXT−213、OXT−212等が挙げられる。

    本発明におけるフェノキシ樹脂と可塑剤との好ましい配合比率は、可塑剤の種類により異なるが、フェノキシ樹脂を100重量部として、可塑剤が1重量部以上、30重量部以下の範囲から選定される。 可塑剤の配合量が1重量部未満では配線埋込性の改善効果が失われ、30重量部を超えると接着性、はんだ耐熱性の低下を招く。 単官能オキセタンモノマー、単官能エポキシモノマーを可塑剤とした場合には、1〜5重量部の範囲で用いることが好ましい。

    エポキシ系、オキセタン系可塑剤の重合または架橋反応を開始する開始剤としては、アミン系、イミダゾール系、ジシアンジアミド系、酸無水物系、芳香族スルホニウム塩系のカチオン重合開始剤を例として挙げることができる。 中でも熱潜在性が優れており、熱硬化性接着剤組成物および耐熱接着フィルムの保存安定性、乾燥時の不要な反応の抑制効果が高いスルホニウム塩系開始剤の使用が好ましい。

    エポキシ系、オキセタン系可塑剤の重合または架橋反応の開始温度を160℃以上とするために好ましい開始剤の具体例としては、市販品として三新科学工業製サンエイドSI−150、SI−160、SI−180を挙げることができる。 その添加量は、可塑剤成分の総量を100重量部として、開始剤を1重量部以上、5重量部以下の範囲で用いることが好ましい。 また、熱硬化性接着剤組成物のワニス化にはシクロヘキサノン等の溶媒を選択することが作業の安全性の観点から好ましい。

    本発明における耐熱接着フィルムの基材フィルムには耐熱性の観点からポリイミドフィルムを用いることが好ましい。 ポリイミドフィルムの膜厚には特に制限はないものの、ハンドリング性、フィルムコストの観点から25μm以上、100μm以下の範囲であることが好ましい。 そのようなポリイミドフィルムの例としては、カプトン100V、200V、100H、200H(東レ・デュポン(株)製)、アピカルAH、アピカル25NPI((株)カネカ製)等を挙げることができる。

    ポリイミドフィルム上に形成される接着層の厚さは、導体の厚さに合わせて任意に選定することができる。 導体の厚さが35μm以上、100μm以下であるならば、導体配線の埋め込み性を考慮して10μm以上、100μm以下の接着層を形成することが好ましい。

    本発明における配線フィルムは、融着温度以上の温度で後加熱することによって耐熱接着フィルムと導体配線および耐熱接着フィルム間の接着力を増すことができる。 好ましい後加熱条件としては180℃以上、220℃未満の範囲において30分から60分を挙げることができる。 また、本発明においては導体配線として錫、ニッケル、亜鉛、コバルトの何れかを含有する金属層または/およびその酸化物層や水酸化物層で被覆されている銅配線を用いることが好ましい。 これにより銅表面の酸化を抑制し、安定した接着性を確保するものである。 長期耐熱性信頼性の観点からはニッケルで被覆した銅配線の採用が好ましい。 銅表面への異種金属層の形成にはめっき法を用いることができる。

    更に本発明の導体配線の最表面には、アミノ基、ビニル基、スチリル基、アクリレート基、メタクリレート基を1つ以上含有するシランカップリング剤を設置することができる。 これらのシランカップリング剤は、マレイミド化合物と一次結合を形成するため配線フィルムの接着性、耐熱性、耐湿性の改善に寄与するものである。 シランカップリング剤の具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル等の市販のシランカップリング剤を挙げることができる。 これらシランカップリング剤は、無機針状フィラーの表面処理に用いることもできる。

    シランカップリング剤による表面処理は、0.5wt%以上、8wt%以下の範囲のシランカップリング剤の水溶液または有機溶媒溶液を導体配線に塗布し、その後100℃以上、150℃以下の範囲で10分間以上、30分間以下の範囲で乾燥することによってなされる。

    本発明の配線フィルムにおいては、多層プリント基板に用いられるスルーホール、ブランドビアホール技術を用いて図15に記載のように層間接続および導体配線の引き出しができる。 また、図16および図17に記載のように配線フィルム端部から導体配線4を引き出すこともできる。

    (実施例)
    以下に、実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明する。 表1における熱硬化性接着剤組成物の樹脂組成比および溶媒は重量比であり、無機針状フィラーの配合比は耐熱接着剤組成中の容量分率(容量%)である。

    試薬および評価方法を示す。
    (1)供試試料 BMI−1000:4,4'−ビフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業(株)製、溶融温度=147℃以上、168℃以下、200℃におけるゲル化時間=120秒以上、150秒以下 BMI−4000:ビスフェノールAビフェニルエーテルビスマレイミド、大和化成工業(株)製、溶融温度=134℃以上、163℃以下、250℃におけるゲル化時間=60秒以上、90秒以下 BMI−2000:ポリフェニルメタンマレイミド、大和化成工業(株)製、溶融温度=125℃以上、160℃以下、200℃におけるゲル化時間=180秒以上、240秒以下 BMI−5000:3,3'−ジメチル−5,5'−ジエチル−4,4'−ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業(株)製、溶融温度=130℃以上、154℃以下、250℃におけるゲル化時間=110秒 BMI−TMH:1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、大和化成工業(株)製、溶融温度=73℃以上、110℃以下、250℃におけるゲル化時間=126秒 ビスフェノールS型骨格を有するフェノキシ樹脂:YPS−007A30、東都化成(株)製(n/mのモル比率は3/7、ポリスチレン換算平均分子量は40000)
    無機針状フィラー1:四国化成製、アルボレックスY(繊維長は10μm以上、30μm以下、繊維径は0.5μm以上、1.0μm以下、比重2.93g/cm
    無機針状フィラー2:日東紡(株)製 SS10−420(繊維長は約300μm、繊維径は約10μm、比重2.54g/cm
    球形フィラー:(株)アドマテックス製球形SiO フィラー、SO−E2(平均粒径径0.5μm、比重2.2g/cm
    破砕フィラー:電気化学工業(株)製破砕SiO フィラー、FS−20(平均粒径径5.6μm、比重2.2g/cm
    カップリング剤:N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、KBM602、信越化学(株)製 非反応性可塑剤:1,3−フェニレンビス−ジキシレニルフォスフェート、PX−200、大八化学工業(株)製 ラジカル系可塑剤:トリアリルイソシアヌレート、TAIC、日本化成(株)製 二官能エポキシ系可塑剤:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、jER828、三菱化学(株)製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:アデカオプトマーKRM−2650、(株)アデカ製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂:Ep−1001、ジャパンエポキシレジン(株)製 ノボラック型フェノール樹脂:レジストップPSM−4261、群栄化学工業(株)
    単官能オキセタン系可塑剤:3―エチル―3−((フェノキシ)メチル))オキセタン、アロンオキセタンOXT211、東亞合成(株)製 カチオン重合開始剤1:サンエイドSI−160(開始温度約167℃)、三新化成工業(株)製 カチオン重合開始剤2:サンエイドSI−100(開始温度約100℃)、三新化成工業(株)製 カチオン重合開始剤3:CP−66(開始温度約160℃)、(株)アデカ製 熱硬化性低分子PPE:OPE2St、ポリスチレン換算数平均分子量約1000、三菱瓦斯化学(株)製 水素添加スチレンエラストマー:タフテックH1052、旭化成ケミカルズ(株)製 ラジカル重合開始剤:パーヘキサV、日油(株)製 ポリイミドフィルム:カプトン100V、厚さ25μm、東レ・デュポン(株)製 銅箔1:厚さ18μmの銅箔。 表面に厚さ100nmの錫めっき層を有し、錫めっき層表面には錫の水酸化物、酸化物が存在する。 本銅箔表面にアミノシラン処理を施した銅箔。 アミノシラン処理条件:N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランの5%水溶液に銅箔1を1分間浸漬して取り出した。 120℃で30分間乾燥して表面にアミノシラン層を設置した。

    銅箔2:厚さ100μmの銅箔。 表面に厚さ500nmのニッケルめっき層を有し、ニッケルめっき層表面にはニッケルの水酸化物、酸化物が存在する。 本銅箔表面にアミノシラン処理を施した。 アミノシラン処理条件:N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランの1%水溶液に銅箔2を1分間浸漬して取り出した。 120℃で30分間乾燥して表面にアミノシラン層を設置した。

    (2)熱硬化性接着剤組成物のワニスの調整 所定の配合比で各成分を配合し、固形分濃度が30wt%となるようにシクロヘキサノンを加え、樹脂成分が溶解するまで攪拌し、熱硬化性接着剤組成物のワニスを調整した。

    (3)耐熱接着フィルムの作製 ポリイミドフィルム上に所定のギャップを有するバーコーターを用いて接着剤ワニスを塗布し、160℃で30分間乾燥して耐熱接着フィルムを作製した。 接着層の膜厚は30μmに調整した。

    (4)樹脂板の作製と容量分率の測定 熱硬化性接着剤組成物のワニスをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製シート上に塗布し、160℃で30分間乾燥した。 乾燥した接着層をPTFEシートから隔離し、約5gの熱硬化性接着剤組成物を得た。 本熱硬化性接着剤組成物を30mm×80mm×1mmのPTFE製スペーサ内に充填し、厚さ0.1mmのPTFEシートおよび鏡板を介して真空下、3MPa、180℃/60分の条件でプレス成型して樹脂板を作製した。 樹脂板の比重をAlfa Mirage. co. ,Ltd. 製MD−300S比重計を用いて観測し、熱硬化性接着剤組成物中の無機針状フィラーと樹脂成分の容量分率を求めた。

    (5)耐熱接着フィルムのカールの評価 片面に接着層を有する耐熱接着フィルム9を2.5cm×5cmに切り出し、図18のA,Bのように短辺の一方をガラス基板10に両面テープ11で固定した。 固定部の幅は1mmとした。 Aに記載のごとく反りが発生したサンプルの両角のガラス基板からの高さ(mm)の平均をカールの指標として観測した。 Bに記載のごとく強いカールが発生したサンプルは×として表記した。 カールの先端の位置が、両面テープ11上の垂線を超えた場合を強いカールと定義した。

    (6)Bステージ状態での接着力評価 耐熱接着フィルムの接着層側の面に銅箔1を置き、160℃、1MPaの条件で10分間加熱加圧して接着した。 接着サンプルを幅1cm、長さ5cmに切り出し、銅箔と耐熱接着フィルムの間で180°ピール試験を実施し、Bステージ状態での接着力を求めた。

    (7)後硬化後の接着力評価 耐熱接着フィルムの接着層側の面に銅箔1を置き、160℃、1MPaの条件で10分間加熱加圧して接着した。 更に大気中、無加圧で180℃/60分間後加熱した。 接着サンプルを幅1cm、長さ5cmに切り出し、銅箔と耐熱接着フィルムの間で180°ピール試験を実施し、後硬化後の接着力を求めた。

    (8)耐湿試験後の接着力評価 耐熱接着フィルムの接着層側の面に錫めっきを施した銅箔1を置き、160℃、1MPaの条件で10分間加熱加圧して接着した。 更に大気中、無加圧で180℃/30分間後加熱した。 その後、121℃、2気圧、飽和水蒸気下に24時間暴露した。 接着サンプルを幅1cm、長さ5cmに切り出し、銅箔と耐熱接着フィルムの間で180°ピール試験を実施し、耐湿試験後の接着力を求めた。

    (9)はんだ耐熱試験 耐熱接着フィルムの接着層側の面に錫めっきを施した銅箔1を置き、160℃、1MPaの条件で10分間加熱加圧して接着した。 更に大気中、無加圧で180℃/30分間後加熱した。 本サンプルを280℃はんだ浴槽に浮かべて1分間保持した。 概観検査で膨れの発生がないサンプルを○、膨れが発生したサンプルを×と表記した。

    (10)配線埋込性 評価に用いたサンプルの平面模式図を図19Aに、断面模式図を図19Bに示した。 ニッケルめっきを施した厚さ100μmの銅箔7を幅1cm、長さ5cmに切り出した図19A、図19Bのように1mmの間隔で並べ、端部をポリイミドテープ8で固定した。 次いで銅箔7を片面に接着層を有する2枚の耐熱接着フィルム9
    で上下から挟み、160℃で6MPa以下の圧力を加えて接着した。 図19A,19Bにおいて、1は基材フィルム、2は接着層、7は銅箔であり、
    8はポリイミドテープ、9は耐熱接着フィルムである。

    接着後、2枚の銅箔間の配線埋込性を光学顕微鏡で観察した。 観測例を図20A,図20Bに示した。 銅箔間に未接着部分があるサンプルを×(図20A)、銅箔間が樹脂で埋め込まれているサンプルを○(図20B)と表記した。
    (11)耐熱接着フィルムの保存安定性 耐熱接着フィルムを約25℃に調整されたクリーンルームで30日間保管した。 その後、(7)から(9)の試験を実施し、銅箔と耐熱接着フィルム間の接着力が0.7kN/m以上であり、はんだ耐熱性が良好であった耐熱接着フィルムを保存安定性を良好と判断し、○とした。
    (12)長期耐熱信頼性 ニッケルめっきを施した厚さ100μmの銅箔2と耐熱接着フィルムの接着層側の面を重ね、160℃、1MPaの条件で10分間加熱加圧して接着した。 更に大気中、無加圧で180℃/30分間後加熱し、接着サンプルを作製した。 約6cm×6cmの接着サンプルを40枚用意した。 大気雰囲気で160℃、180℃、200℃、220℃に昇温した恒温槽に各10枚の接着サンプルを入れ、加熱劣化試験を実施した。 所定の時間ごとに接着サンプルを1枚抜き出し、180°ピール試験を実施し、接着力を観測した。 各劣化温度において接着力が0.7kN/mに低下した時間を寿命時間として求めた。 縦軸に寿命時間の対数を、横軸に加速劣化の温度の絶対温度(K)表記の逆数を取り、アレニウスプロットを作製した(図21)。 本プロットを直線近似により外挿し、寿命時間2万時間となる劣化温度を耐熱接着フィルムの長期耐熱性の指標(耐熱指数)として求めた。

    (比較例1〜5)
    比較例1〜5の熱硬化性接着剤組成物の組成を表1に記載した。 比較例1〜5は無機針状フィラーを含有しない熱硬化性接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物をポリイミドフィルム上に塗布、乾燥して作製した耐熱接着フィルム、本耐熱接着フィルムと銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表2に示した。 比較例1〜5の耐熱接着フィルム及びそれを用いた積層フィルムは、接着性、耐湿性、はんだ耐熱性、保存安定性、配線埋込性が優れていたものの、いずれの耐熱接着フィルムにも強いカールが観察された。 比較例1〜5の耐熱接着フィルムは強いカールが問題であった。

    (実施例1〜6)
    実施例1〜6の熱硬化性接着剤組成物の組成を表3に記載した。 実施例1〜6は無機針状フィラーを含有する熱硬化性接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物をポリイミドフィルム上に塗布、乾燥して作製した耐熱接着フィルム、本耐熱接着フィルムと銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表4に示した。 実施例1〜6の耐熱接着フィルムでは強いカールの発生が抑制され、4〜10mmの小さな反りが観察された。 無機針状フィラーの添加は強いカールの抑制に効果的であった。 接着力は耐湿試験後においても、1.0〜1.3kN/mを有し、280℃はんだ耐熱性、保存安定性も良好であった。 以上のことから、実施例1〜6の熱硬化性接着剤組成物とポリイミドフィルムからなる耐熱接着フィルムはカールしにくく、保存安定性が優れ、それを用いた積層フィルム、配線フィルムは接着性、耐湿性、はんだ耐熱性が優れているとの結果を得た。

    (比較例6)
    比較例6の熱硬化性接着剤組成物の組成を表5に記載した。 比較例6は無機針状フィラーを過剰に配合した熱硬化性接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表6に示した。 耐熱接着フィルムの強いカールの発生は抑制されているものの、その接着力は0.4kN/m程度と低いことが判明した。

    (比較例7,8)
    比較例7、8の熱硬化性接着剤組成物の組成を表5に記載した。 比較例7、8は球形フィラー、破砕状フィラーを配合した熱硬化性接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表6に示した。 比較例7,8の耐熱接着フィルムには強いカールが発生した。 これにより球形フィラー、破砕状フィラーのカール抑制効果が低いことがわかった。

    (実施例7、8)
    実施例7,8の熱硬化性接着剤組成物の組成を表5に記載した。 実施例7,8は無機針状フィラーの配合量が異なる熱硬化性接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表6に示した。 本実施例の耐熱接着フィルムでは強いカールが抑制され、4〜9mmの小さな反りのみが観察された。 接着力は耐湿試験後においても、0.9〜1.2kN/mを有し、280℃はんだ耐熱性、保存安定性も良好であった。 配線埋込性は実施例7において、無機針状フィラーを含有しない比較例1から5と同様に優れた値を示した。 以上のことから、実施例7、8の耐熱接着フィルムは、カールしにくく、保存安定性が優れ、それを用いた積層フィルム、配線フィルムは接着性、耐湿性、はんだ耐熱性が優れているとの結果を得た。

    (比較例9)
    比較例9の熱硬化性接着剤組成物の組成を表7に記載した。 比較例7は非反応性の可塑剤を過剰に含有する熱硬化性接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表8に示した。 耐熱接着フィルムの強いカールの発生は抑制され、且つ1MPaの低圧での配線埋込性が良いものの、その接着力は0.4〜0.6kN/mと低いこと、はんだ耐熱性が低いことが判明した。
    (実施例9、10)
    実施例9,10の熱硬化性接着剤組成物の組成を表7に記載した。 実施例9,10は非反応性の可塑剤の配合量が異なる熱硬化性接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表8に示した。 本実施例の耐熱接着フィルムでは強いカールの発生が抑制され、7mm以上、10mm以下の小さな反りのみが観察された。 接着力は耐湿試験後においても、0.8kN/m以上、1.0kN/m以下を有し、280℃はんだ耐熱性、保存安定性も良好であった。 また、配線埋込性も圧力3MPaにおいて良好な結果が得られた。 以上のことから、実施例9、10の熱硬化性接着剤組成物とポリイミドフィルムからなる耐熱接着フィルムはカールしにくく、保存安定性が優れ、それを用いた積層フィルム、配線フィルムは接着性、耐湿性、はんだ耐熱性が優れているとの結果を得た。

    (比較例10)
    比較例10の熱硬化性接着剤組成物の組成を表9に記載した。 比較例10はラジカル重合性を有する可塑剤を過剰に含有する熱硬化性接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表10に示した。 はんだ耐熱性、接着性は優れているものの、耐熱接着フィルムの強いカールの抑制効果が失われることが判明した。

    (実施例11、12)
    実施例11,12の熱硬化性接着剤組成物の組成を表9に記載した。 実施例9,10はラジカル重合性を有する可塑剤の配合量が異なる熱硬化性接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表10に示した。 本実施例の耐熱接着フィルムでは強いカールの発生が抑制され、18〜23mmの小さな反りのみが観察された。 接着力は耐湿試験後においても、0.8〜0.9kN/mを有し、280℃はんだ耐熱性も良好であった。 また、配線埋込性も良好な結果が得られた。 以上のことから、実施例11、12の熱硬化性接着剤組成物とポリイミドフィルムからなる耐熱接着フィルムはカールしにくく、それを用いた積層フィルム、配線フィルムは接着性、耐湿性、はんだ耐熱性が優れているとの結果を得た。

    (実施例13,14)
    実施例13,14の熱硬化性接着剤組成物の組成を表11に記載した。 実施例13,14はエポキシ系の可塑剤を配合した接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表12に示した。 本実施例の耐熱接着フィルムでは強いカールの発生が抑制され、12〜14mmの小さな反りのみが観察された。 接着力は耐湿試験後においても、0.8〜0.9kN/mを有し、280℃はんだ耐熱性、保存安定性も良好であった。 また、配線埋込性も良好な結果が得られた。 以上のことから、実施例13、14の熱硬化性接着剤組成物とポリイミドフィルムからなる耐熱接着フィルムはカールしにくく、保存安定性が優れ、それを用いた積層フィルム、配線フィルムは接着性、はんだ耐熱性、耐湿性が優れているとの結果を得た。

    (比較例11)
    比較例11の熱硬化性接着剤組成物の組成を表11に記載した。 比較例11はエポキシ系可塑剤の重合開始剤として、反応開始温度が約100℃であるSI−100を用いた例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表12に示した。 その接着力、配線埋込性、はんだ耐熱性は不十分な性能であった。 接着層の乾燥の際に可塑剤の硬化が進行したものと思われた。

    (比較例12)
    比較例12の熱硬化性接着剤組成物の組成を表11に記載した。 比較例12はエポキシ系可塑剤を過剰に配合した例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表12に示した。 本耐熱接着フィルムの配線埋込性と強いカールの抑制効果は優れているものの、接着力、はんだ耐熱性は不十分な性能であった。

    (実施例15,16)
    実施例15,16の熱硬化性接着剤組成物の組成を表13に記載した。 実施例15,16は単官能オキセタン系可塑剤を配合した熱硬化性接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表14に示した。 本実施例の耐熱接着フィルムでは強いカールの発生が抑制され、12〜15mmの小さな反りのみが観察された。 接着力は耐湿試験後においても、1.1kN/mを有し、280℃はんだ耐熱性、保存安定性も良好であった。 また、配線埋込性も圧力1MPaにおいて良好な結果が得られた。 以上のことから、実施例15、16の熱硬化性接着剤組成物とポリイミドフィルムからなる耐熱接着フィルムはカールしにくく、保存安定性が優れ、それを用いた積層フィルム、配線フィルムは接着性、はんだ耐熱性、耐湿性が優れているとの結果を得た。

    (比較例13)
    比較例13の熱硬化性接着剤組成物の組成を表13に記載した。 比較例13はオキセタン系可塑剤を過剰に配合した例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドフィルムからなる耐熱接着フィルムと、銅箔とを熱融着した積層フィルムの特性を表14に示した。 本耐熱接着フィルムの配線埋込性とカールの抑制効果は優れているものの、接着力、はんだ耐熱性は不十分な性能であった。

    (実施例17〜24)
    実施例17〜24の熱硬化性接着剤組成物の組成を表15に記載した。 実施例17〜24はマレイミド樹脂の配合量が異なる熱硬化性接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドフィルムからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表16に示した。 本実施例の耐熱接着フィルムでは強いカールの発生が抑制され、4〜15mmの小さな反りのみが観察された。 接着力は耐湿試験後においても、0.9〜1.3kN/mを有し、280℃はんだ耐熱性、保存安定性も良好であった。 以上のことから、実施例17〜24の熱硬化性接着剤組成物とポリイミドフィルムからなる耐熱接着フィルムはカールしにくく、保存安定性に優れ、それを用いた積層フィルム、配線フィルムは接着性、はんだ耐熱性、耐湿性が優れているとの結果を得た。

    (比較例14〜17)
    比較例14〜17の熱硬化性接着剤組成物の組成を表15に記載した。 比較例14〜17はマレイミド樹脂の配合量が過剰である熱硬化性接着剤組成物の例である。 本熱硬化性接着剤組成物とポリイミドフィルムからなる耐熱接着フィルムと、銅箔を熱融着した積層フィルムの特性を表16に示した。 本比較例の耐熱接着フィルムではカールの発生が抑制されているものの、接着力、280℃はんだ耐熱性の性能が不十分であった。

    (実施例25)
    実施例16に記載の耐熱接着フィルムとニッケルめっきを施した銅箔2との接着界面の長期耐熱信頼性を確認するため接着力に基づく耐熱指数を調べた。 劣化温度(絶対温度)の逆数と接着力が0.7kN/mに低下する劣化時間の対数をプロットしたアレニウスプロットを図21に示した。 本アレニウスプロットから求めた耐熱指数は約130℃であった。 このことから本発明のビスマレイミドとビスフェノールS型骨格を含有するフェノキシ樹脂とを主剤とする熱硬化性接着剤組成物を接着層としてポリイミドフィルム上に設置した耐熱接着フィルム、それを用いた積層フィルム、配線フィルムは、長期の耐熱信頼性が優れていることが判明した。

    (実施例26)
    実施例16の耐熱接着フィルムを用いて模擬配線フィルムを作製した。 工程を以下に示した。

    (1)10cm×2cmに切り出した耐熱接着フィルムの接着層面上に10本の平角銅線(幅300μm、厚さ35μm)を1mm間隔で設置した。

    (2)9cm×2cmに切り出した耐熱接着フィルムを別に用意し、長軸方向を合わせ、先の銅配線上に接着層面が接するように設置した。

    (3)離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムにて上記積層体を挟み、160℃/10分、1MPaの条件でプレス加工して耐熱接着フィルムと耐熱接着フィルムの間に銅配線を接合した。

    ポリエチレンテレフタレートフィルムから積層体を取り出し、180℃/60分間後加熱して、配線フィルム端部に電極を有する模擬配線フィルムを作製した。 本サンプルは、配線の埋込性が良好で、高温高湿での試験、はんだ耐熱試験後においてもクラックや剥離が生じず、耐熱配線フィルムとして好ましいとの結果を得た。

    本発明の耐熱接着フィルムはTABテープ、FPC、FFC、MFJ等の絶縁接着シートとして好適である。 また、本発明の配線フィルムは耐熱性に優れており、自動車、電子・電気機器の配線部材に好適である。

    1…基材フィルム、2…接着層、3…導体層、4…導体配線、5…スルーホール接続、6…ブラインドビアホール接続、7…銅箔、8…ポリイミドテープ、9…耐熱接着フィルム、10…ガラス基板、11…両面テープ、12…無機針状フィラー、13…樹脂成分、

    QQ群二维码
    意见反馈