アルミニウム合金複合体とその接合方法 |
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申请号 | JP2009505159 | 申请日 | 2008-03-12 | 公开(公告)号 | JPWO2008114669A1 | 公开(公告)日 | 2010-07-01 |
申请人 | 大成プラス株式会社; | 发明人 | 成富 正徳; 正徳 成富; 安藤 直樹; 直樹 安藤; | ||||
摘要 | 本発明の目的は、アルミニウム 合金 部品とFRPプリプレグを強固に接合することである。アルミニウム合金に適切な液処理を施して、ミクロンオーダーの大きな凹凸があり且つ数十nm周期の微細凹凸がある表面とし、且つ表面にナトリウムイオンを不在とさせ、更に自然 酸化 層よりも厚い酸化アルミニウムの表面皮膜とした物は、エポキシ系接着剤との間で強烈な接着 力 を生むことを見出した。同じエポキシ系接着剤をマトリックスに使用するFRPプリプレグと同時硬化させることで従来にない強固な接合力で一体化したFRPとアルミニウム合金の一体化物した複合体、又は構造物を作れる。 | ||||||
权利要求 | 表面に化学エッチングによるミクロンオーダーの表面粗さが形成され、前記表面はナトリウムイオンを含まない厚さ2nm以上の酸化アルミニウム薄層を有し、且つ、前記表面粗さ内には、10〜100nm径で同等の深さ、又は高さの凹部若しくは突起である超微細凹凸面が形成されている第1アルミニウム合金製の第1金属部品と、 前記超微細凹凸面に侵入したエポキシ系接着剤を接着剤として接着された被着材と からなるアルミニウム合金複合体。 請求項1に記載のアルミニウム合金複合体において、 前記被着材は、前記超微細凹凸面が形成された第2アルミニウム合金製の第2金属部品である ことを特徴とするアルミニウム合金複合体。 請求項1に記載のアルミニウム合金複合体において、 前記被着材は、前記エポキシ系接着剤を含み、長繊維、短繊維、及び繊維布から選択される1種以上を充填、積層して強化した繊維強化プラスチックである ことを特徴とするアルミニウム合金複合体。 請求項1又は2に記載のアルミニウム合金複合体において、 前記ミクロンオーダーの表面粗さは、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ(Rz)が0.2〜5.0μmである ことを特徴とするアルミニウム合金複合体。 請求項1又は2に記載のアルミニウム合金複合体において、 前記超微細凹凸面を為す超微細エッチングは、水和ヒドラジン、アンモニア、及び水溶性アミン化合物から選ばれる1つ以上を含む水溶液への浸漬処理により形成されたものである ことを特徴とするアルミニウム合金複合体。 請求項1ないし4に記載のアルミニウム合金複合体において、 前記エポキシ系接着剤の硬化物(1)の樹脂は、樹脂分合計100質量部に対してエラストマー成分が0〜30質量部が含まれている ことを特徴とするアルミニウム合金複合体。 請求項6に記載のアルミニウム合金複合体において、 前記硬化物(1)は、樹脂分合計100質量部に対し充填剤の合計が0〜100質量部が配合されている ことを特徴とするアルミニウム合金複合体。 請求項7に記載のアルミニウム合金複合体において、 前記充填剤は、 ガラス繊維、炭素繊維、及びアラミド繊維から選択される1種以上の強化繊維、並びに 炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、及びガラスから選択される1種以上の粉末フィラー である ことを特徴とするアルミニウム合金複合体。 請求項6に記載のアルミニウム合金複合体において、 前記エラストマー成分は、1〜15μmの粒径であり、 加硫ゴム粉体、半架橋ゴム、未加硫ゴム、水酸基末端ポリエーテルスルホンの融点軟化点が300℃以上ある末端修飾型の熱可塑性樹脂、及びポリオレフィン系樹脂から選ばれた1種以上である ことを特徴とするアルミニウム合金複合体。 請求項3に記載のアルミニウム合金複合体であって、 前記アルミニウム合金製の板状部品と前記繊維強化プラスチック製の板状物が接合され、且つボルト又はリベットを貫通するための貫通孔が形成されたものである ことを特徴とするアルミニウム合金複合体。 アルミニウム合金部品を鋳造物、又は中間材から機械的加工で形状化する工程と、 前記形状化されたアルミニウム合金部品を強塩基性水溶液に浸漬する化学エッチング工程と、 前記化学エッチング工程後に、前記アルミニウム合金部品を酸水溶液に浸漬する中和工程と、 前記中和工程後に、前記アルミニウム合金部品を水和ヒドラジン、アンモニア、及び水溶性アミン化合物から選択される1種以上を含む水溶液に浸漬して表面に超微細凹凸面を形成する超微細エッチング工程と、 前記アルミニウム合金部品の前記超微細凹凸面に、エポキシ系接着剤を塗布する工程と、 エポキシ性樹脂分を含む繊維強化プラスチックのプレプリグ材を必要な形状に形成する形状化工程と、 前記形状化されたプレプリグ材を、前記アルミニウム合金部品の前記エポキシ系接着剤が塗布された面に付着させる工程と、 前記プレプリグ材と前記アルミニウム合金部品を位置決めし、且つ加圧しつつ加熱し、前記エポキシ系接着剤及び前記エポキシ性樹脂分を硬化させる工程と からなるアルミニウム合金複合体の製造方法。 アルミニウム合金部品を鋳造物、又は中間材から機械的加工で形状化する工程と、 前記形状化されたアルミニウム合金部品を強塩基性水溶液に浸漬する化学エッチング工程と、 前記化学エッチング工程後に、前記アルミニウム合金部品を酸水溶液に浸漬する中和工程と、 前記中和工程後に、前記アルミニウム合金部品を水和ヒドラジン、アンモニア、及び水溶性アミン化合物から選択される1種以上を含む水溶液に浸漬して表面に超微細凹凸面を形成する超微細エッチング工程と、 前記超微細エッチング工程後に、前記アルミニウム合金部品を過酸化水素水溶液に浸漬する酸化工程と、 前記酸化工程後、前記アルミニウム合金部品の前記超微細凹凸面にエポキシ系接着剤を塗布する工程と、 エポキシ性樹脂分を含む繊維強化プラスチックのプレプリグ材を必要な形状に形成する工程と、 前記形状化されたプレプリグ材を、前記アルミニウム合金部品の前記エポキシ系接着剤が塗布された面に付着させる工程と、 前記プレプリグ材と前記アルミニウム合金部品を位置決めし、且つ加圧しつつ加熱し、前記エポキシ系接着剤及び前記エポキシ性樹脂分を硬化させる工程と からなるアルミニウム合金複合体の製造方法。 アルミニウム合金部品を鋳造物、又は中間材から機械的加工で形状化する工程と、 前記形状化したアルミニウム合金部品を強塩基性水溶液に浸漬する化学エッチング工程と、 前記化学エッチング工程後に、前記アルミニウム合金部品を酸水溶液に浸漬する中和工程と、 前記中和工程後に、前記アルミニウム合金部品を水和ヒドラジン、アンモニア、及び水溶性アミン化合物から選択される1種以上を含む水溶液に浸漬して表面に超微細凹凸面を形成する超微細エッチング工程と、 前記アルミニウム合金部品の前記超微細凹凸面に、エポキシ系接着剤を塗布する工程と、 前記エポキシ系接着剤を塗布した前記アルミニウム合金部品を密閉容器内に収納して減圧し、続いて加圧することでアルミニウム合金の前記超微細凹凸面に前記エポキシ系接着剤を押し込む硬化前処理工程と、 エポキシ性樹脂分を含む繊維強化プラスチックのプレプリグ材を必要な形状に形成する工程と、 前記形状化されたプレプリグ材を、前記硬化前処理工程を経たアルミニウム合金部品の前記エポキシ系接着剤が塗布された面に付着させる工程と、 前記プレプリグ材と前記アルミニウム合金部品を位置決めし、且つ加圧しつつ加熱し、前記エポキシ系接着剤及び前記エポキシ性樹脂分を硬化させる工程と からなるアルミニウム合金複合体の製造方法。 アルミニウム合金部品を鋳造物、又は中間材からの機械的加工で形状化する工程と、 前記形状化したアルミニウム合金部品を強塩基性水溶液に浸漬する化学エッチング工程と、 前記化学エッチング工程後に、前記アルミニウム合金部品を酸水溶液に浸漬する中和工程と、 前記中和工程後に、前記アルミニウム合金部品を水和ヒドラジン、アンモニア、及び水溶性アミン化合物から選択される1種以上を含む水溶液に浸漬して表面に超微細凹凸面を形成する超微細エッチング工程と、 前記超微細エッチング工程後に、前記アルミニウム合金部品を過酸化水素水溶液に浸漬する酸化工程と、 前記酸化工程後、前記アルミニウム合金部品の前記超微細凹凸面にエポキシ系接着剤を塗布する工程と、 前記エポキシ系接着剤を塗布した前記アルミニウム合金部品を密閉容器内に収納して減圧し、続いて加圧することで前記アルミニウム合金表面の超微細凹凸面にエポキシ系接着剤を押し込む硬化前処理工程と、 エポキシ性樹脂分を含む繊維強化プラスチックのプレプリグ材を必要な形状に形成する工程と、 前記形状化されたプレプリグ材を、前記硬化前処理工程を経たアルミニウム合金部品の前記塗布面に付着させる工程と、 前記プレプリグ材と前記アルミニウム合金部品を位置決めし、且つ加圧しつつ加熱し、前記エポキシ系接着剤及び前記エポキシ性樹脂分を硬化させる工程と からなることを特徴とするアルミニウム合金複合体の製造方法。 請求項11ないし14から選択される1項に記載のアルミニウム合金複合体の製造方法において、 前記ミクロンオーダーの表面粗さは、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ(Rz)が0.2〜5μmである ことを特徴とするアルミニウム合金複合体の製造方法。 請求項11ないし14から選択される1項に記載のアルミニウム合金複合体の製造方法において、 前記超微細エッチングは、水和ヒドラジン、アンモニア、及び水溶性アミン化合物から選ばれる1つ以上を含む水溶液への浸漬処理によるものである ことを特徴とする金属樹脂複合体の製造方法。 請求項11ないし14から選択される1項に記載のアルミニウム合金複合体の製造方法において、 前記エポキシ系接着剤の硬化物(1)の樹脂分中に、樹脂分合計100質量部に対してエラストマー成分が0〜30質量部が含まれている ことを特徴とするアルミニウム合金複合体の製造方法。 請求項11ないし14から選択される1項に記載のアルミニウム合金複合体の製造方法において、 前記硬化物(1)には、樹脂分合計100質量部に対し充填剤の合計が0〜100質量部を配合してなる ことを特徴とするアルミニウム合金複合体の製造方法。 請求項11ないし14から選択される1項に記載のアルミニウム合金複合体の製造方法において、 前記充填剤は、 ガラス繊維、炭素繊維、及びアラミド繊維から選択される1種以上の強化繊維、並びに 炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、及びガラスから選択される1種以上の粉末フィラー である ことを特徴とするアルミニウム合金複合体の製造方法。 請求項11ないし14から選択される1項に記載のアルミニウム合金複合体の製造方法において、 前記エラストマー成分は、1〜15μmの粒径であり、 加硫ゴム粉体、半架橋ゴム、未加硫ゴム、水酸基末端ポリエーテルスルホンの融点軟化点が300℃以上ある末端修飾型の熱可塑性樹脂、及びポリオレフィン系樹脂から選ばれた1種以上である ことを特徴とするアルミニウム合金複合体の製造方法。 |
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说明书全文 | 本発明は、運輸機械、電気機器、医療機器、一般機械、その他の産業機械、又は民生機器等に用いられている金属と金属、又は金属と樹脂の接合方法、その複合体、及びそれらの製造方法に関する。 更に詳しくは、自動車部品、航空機部品等の軽量化が要求される運輸機械を構成する部品に、最適なアルミニウム合金部品と樹脂製部品の双方を一体にして使用する、アルミニウム合金複合体とその接合方法に関する。 航空機は、昨今、エネルギー価格の高騰を受けて更なる技術革新が求められている。 即ち、ボーイング社(米国)、エアバス社(フランス国)から新たに発表される新型機や新型機構想において、機体の軽量化のために超々ジュラルミン(以下、日本工業規格(JIS)に従い「A7075」)、超ジュラルミン(同じく「A2024」)等のアルミニウム合金の使用率は急速に減少して来ており、その減少分だけ炭素繊維強化プラスチック(以下、Carbon-Fiber Reinforced Plasticを略して「CFRP」という。)の使用率が増加している。 A7075(超々ジュラルミン)は、アルミニウム合金の1種でありその比重は2.7程度であるが、CFRPは比重が1.6〜1.7であり、その軽量さは比較にならない。 従来、CFRPを航空機材料として使用率を高めて来たのは戦闘機や戦闘ヘリコプター等の軍事用であり、民需用航空機用材料としての使用は、大型部品を製造するためのノウハウの開発が必要なこと、及びコスト面の大きさに障害があり予期されていたほど進展していない。 CFRPには軽量さと高強度、高耐食性があるにも拘らず民需用では敬遠されていた。 しかしながら、昨今、前述した有力な民間機製造2社の研究開発に加え、原油価格高騰と高止まりで、使用材料面から機体の軽量化を検討せざるを得なくなった。 自動車業界も原油高騰と環境問題対策から、ハイブリッド車や電気自動車、欧州では高性能ジーゼルエンジン車等の開発が進み、将来は最もエネルギー変換効率の高い燃料電池車の普及が期待されている。 燃料電池の開発には飛躍的なものがあるが、自動車用としての最大の課題は、燃料水素の扱いを如何に安全円滑に行うかであり苦心が続いている。 民需用としては安全第一であり、数百気圧の水素ガスを搭載した車を一般人が扱うのを日常化するには障害が大き過ぎる。 それ故、現行の液体燃料システムは当面変わらないだろう。 その意味で、実際には動力システムの改良以上に、車体構造の軽量化が重要である。 実際、一部の車種ではアルミニウム合金材の多用途化が進行中であるし、その将来にはCFRP化が必ず課題になる、と予測される。 さて、航空機製造に関しCFRP材の使用率を高める上において、高価なCFRP材を使うことによる材料代アップ以外に技術的課題がある。 一つは、既に量産が決まっている最新のエアバス、ボーイング両社製航空機においても、アルミニウム合金の使用率は、重量比で50%以上見込まれており、CFRP材とA7075材の両材料が共用されている。 翼端に近い部分がCFRP材が使用され、機体の中心構造部分は、従来通りA7075材を使用するなどである。 一般に両者の結合にはリベットやボルト・ナットで為されるが特殊な物が必要である。 それは、CFRP材と金属とでその基本物性に大きな差異があるからである。 金属材は伸び(引っ張り破断伸び:Elongation)が大きく、A7075でも伸びは10〜16%であるが、一方のCFRPの伸びは数%しかない。 これらの材料に強い引っ張り力がかかったとき、金属材はある程度の力までは弾性伸縮(ヤング率に従い力に比例した伸び縮みをすること。)するが、この限度を超えた力がかかるとヤング率を超えて伸び、A7075では元の長さを100%として110〜116%になったとき破断する。 一方のCFRPでは、繊維と平行方向に引っ張った場合であるが、炭素繊維自体の伸びが1〜2%しかなく、ヤング率に従う伸び縮みの範囲を超えた大きな引張荷重がかかった場合、炭素繊維が切れ、CFRPは引き裂かれる。 要するに自身が伸びて力を吸収する範囲がCFRPは少ない。 これは引っ張りだけでなく、押し潰す力(圧縮力)に対しても同様になる。 即ち、ボルト・ナットで締め付けた場合、圧縮力が限度を超えた場合であっても金属の場合は自身が変形して破壊を免れることが出来るが、CFRPに圧縮荷重を負荷した場合、その力はまず硬化エポキシ樹脂が支えることとなり、過度の押し付け力がかかるとエポキシ樹脂が周辺に伸びて変形せんとするものの、伸びは炭素繊維によって制限されて動けず、変形できぬまま破壊に至る。 要するに、CFRPを貫通する貫通孔を開けて、これにボルトを挿入し、このボルトにねじ込まれたナットで過度のトルクで締め付けた場合、そのCFRPは圧縮破壊される。 これら2者の物性の大きな違いは、原子の金属結合によって成る金属部品と、炭素原子等の共有結合によって成るエポキシ樹脂や炭素繊維との本質的な差異のよるものであるから、その物性自体を改良する手段は基本的には存在しない。 従って、両者をボルト・ナット方式で締め付けて固定するには、過度の力がかからぬようにしてCFRP側の破壊を防ぐことしかなく、その為の特殊なボルト・ナットを開発し使用するしかない。 一説によると、このボルト構造の開発にある企業が成功したことが、昨今の民需用航空機の開発競争に拍車をかけたとも言われている。 今後の航空機に於いて、如何にCFRPの使用率が向上したとしても、軽金属材料の使用率がゼロになることはなく、CFRP材とアルミニウム合金材を容易に結合する技術は非常に重要な基本技術であり続ける。 もう一つは、CFRPプリプレグの加熱硬化後の離型での問題である。 金型によってプリプレグを圧縮力で加圧した状態で加熱硬化させるが、この過程でエポキシ樹脂は金型に対しても接着剤として働くので、金型とプリプレグの間に離型剤がの塗布が必要となる。 それ故、離型剤(一般的にはシリコーンオイル系の油性離型剤である。)が、製品であるCFRP内に染み込むことが避けられず、本来エポキシ樹脂が有している最高物性を確保出来ない。 僅かな品質低下であっても、航空機や自動車等高速の移動機械用構造体として使用する上で、解決すべき問題である。 本発明はこの点についても一つの解決策を与えんとしたものである。 本発明者等は、射出成形した樹脂製部品と、予め射出成形金型内にインサートしておいた金属部品、具体的にはアルミニウム合金部品、マグネシウム合金部品、銅合金部品、チタン合金部品、ステンレス鋼部品、等が射出成形と同時に強力に接合する技術(以下、「射出接合」技術という。)を発明した(後述する特許文献1、2、3、4、5参照)。 これは、インサートする金属に、前もって為す表面処理法の発見が大きな要因になっているのだが、本発明者等はその表面処理によって得られる金属の表面形状が、射出接合だけでなく、一般的な接着剤による接合(接着)に対しても、効果のあることを予想した。 即ち、前述した「射出接合」の発明において、使用される金属合金で求められる表面状態をまとめて示すと、次の(1)〜(3)の条件となる。 (1)ケミカルエッチングによって得られる粗面、即ち1〜10μm周期の凹凸で、その凹凸高低差がその周期の半分程度、即ち0.5〜5μmである粗面であることが第1に言えることである。 これは数百〜千気圧の高圧の溶融樹脂ではありながら、この融点より百数十℃低い金型内に流入し急冷されて、結晶化しなが固化しつつある樹脂にとって、何とか流入できるサイズの凹部の直径が1〜10μmであることによっている。 ただし、実際にはこの粗面で、完全にアルミニウム合金の表面を100%覆うことは、バラツキある化学反応では難しい。 実際的には、表面粗さ測定器で測定した場合に、0.2〜20μm範囲の不定期な周期の凹凸で、且つその最大高低差が0.2〜10μm範囲である粗度曲線が描けること、又は、走査型プローブ顕微鏡で解析して、JIS規格(JISB0601:2001)でいう山谷平均間隔(RSm)が、0.8〜10μm、最大高さ(Rz)が0.2〜10μmである粗面であれば、前述した表面粗さの条件を満たしたものと考えている。 本発明者等は、理想とする粗面の凹凸周期が前記したように1〜10μmであると認識し、判断したので、分かり易い技術用語として、本発明ではこの表面粗さを有する粗面を「ミクロンオーダーの粗度ある表面」と定義した。 又、更に(2)その粗面を電子顕微鏡レベルに拡大して見ると、10〜500nm周期の微細凹凸面、最も好ましくは40〜50nm周期の微細凹凸面、を有しており、且つ(3)その表面はその金属合金の通常の自然酸化層より厚いか、又はより丈夫な金属酸化物層の薄層で覆われていることが求められた。 この金属合金側に必要な前記3条件を、前述したようにマグネシウム合金、チタン合金、銅合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の全てについて各々得ることができ、射出接合して20〜30MPa以上と強い金属・硬質樹脂間のせん断破断力を得た。 要するに、射出接合に関して前述した3条件が必要であるとの仮説は正しいことが明らかにできた。 その時点で本発明者等は、当然ながら接着剤の接合(接着)に関しても、この仮説は効果があるはずと予期したのである。 それ故、本発明者が接着剤接合に関して立てた仮説は以下である。 前述した射出接合の実験で使用した物と同様に、表面の金属合金(前述した3条件を満たす金属合金)をまず作成し、液状の1液性エポキシ系接着剤をその金属片に塗布し、これを一旦真空下に置いた後に、常圧に戻す等の工程を経て、金属合金表面の微細凹凸面に接着剤を侵入させ馴染ませる。 そしてその後に加熱硬化させる。 こうした場合、金属合金表面の(1)の条件のミクロンオーダーの粗度による凹部内には、流入圧は僅か1気圧程度であっても、液体であるエポキシ系接着剤は侵入可能と考えたのである。 侵入が可能であれば、その後の加熱によって、エポキシ系接着剤はこの凹部の中で硬化する。 その場合、この凹部の内壁面は、(2)の条件のナノレベルの微細凹凸面となっている。 この(2)でいう微細凹凸面を形成する微細凹部の奥底まで、完全にエポキシ系接着剤が侵入することは困難であると推定される。 しかしながら、エポキシ接着剤の一部は、微細凹の開口部の内側に若干は頭を出して固化する。 その場合、大きな凹部内で固化したエポキシ系接着剤は、無数のスパイクにより凹部内で止められた状態(係合)となり、外力で金属基材から引き剥がすことが困難となるはずである。 硬化したエポキシ樹脂を強引に引き剥がした場合、スパイクに当たる表面の前述した条件(3)の金属酸化物層は、そのセラミック質の硬度を発揮できる厚さを持っているので金属合金側に変形は少なく、大きな凹部内のエポキシ樹脂は抜け出すことが出来ない。 結局は、大きな凹部の開口部付近で、エポキシ樹脂自体が破断することになる。 その場合、破断に要する力は、従来に知られた接着剤による接着力データを遥かに超えることになる。 この仮説の正当性は、実は、アルミニウム合金に次いで、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金、ステンレス鋼に於いて既に実証できた。 本発明に引き続いて実証試験中であり、各種金属合金に関する一連の発明群として提案する予定である。 それらから本発明者等は、接着剤接合に関する前記仮説が正しいと考えているが、学問的には多くの科学者、化学者の批判や承認が要る。 本発明者等はこの考え方を、本発明において、この仮説を「NAT(Nano Adhesion Technology)」と略称する。 「NAT」では、接着材による接着を前述したように、全くの物理的な効果、即ちアンカー効果説、で接合を理解する。 この様な理解をしないと、アルミニウム合金だけでなく他の金属合金も含めて共通して、エポキシ係の接着剤を使用したとき、せん断破断力、及び引っ張り破断力で500〜700Kgf/cm 2 (50〜70N/mm 2 =50〜70MPa)もの強烈な接合力を発揮することが説明できないからである。 加えて言えば、前述した(1)の条件の大きな凹凸、即ち1〜10μm周期の凹凸が好ましいと述べたが、これは本発明で示すアルミニウム合金でのNATだけでなく、銅合金、チタン合金、ステンレス鋼、一般鋼材等でも実証された。 前述した以上の大きな凹凸を有する場合、逆にこの凹凸以下の小さ過ぎる凹凸を有する場合でも接着剤による接合の接合力は低くなった。 おそらくこの理由は、大き過ぎる凹部であれば凹部が形成される単位面積当たりの密度が低くなり、アンカー効果が低減されるためであり、又、小さ過ぎる凹部であれば、その内部にエポキシ系接着剤の侵入が十分でないものとみられる。 前述した「NAT」による接合の強さを利用すれば、前章で述べた多くの要望を満たすことができる。 まずは金属合金同士の接着剤接合であるが、「NAT」仮説に従って表面処理した金属同士であれば、エポキシ系接着剤を使って非常に強い接着力が得られる。 要するにアルミニウム合金同士であってもアルミニウム合金とチタン合金であっても同様である。 接合力自体は金属間で生じているのではなく各金属とエポキシ樹脂の間で生じているからである。 そして、やはりエポキシ樹脂をマトリックスに使用するFRP材は、前記金属合金片と接着剤接合するのに最も障害のない相手である。 FRPプリプレグとエポキシ系接着剤を塗布した前記アルミニウム合金部品を押し付け、昇温して双方のエポキシ樹脂を同時硬化させれば、接合(固着)は対金属以上に容易であることが理解できよう。 この接着形態として、まずFRP材をアルミニウム合金薄板材でサンドイッチした構造、即ち積層構造にすることが考えられる。 重量増加はあるがプリプレグのための離型剤が不要になるので、離型剤によるエポキシ樹脂の劣化を防ぐことができる。 又、例えば、プリプレグの全面でなく部分的に、アルミニウム合金厚板で挟んだサンドイッチ構造にした上で貫通孔を開け、この貫通孔にボルトを通して別部品と結合することを考えた場合、限度を超えたボルト締めが為されてもCFRP部の破壊を免れ得る。 更には、端部をアルミニウム合金部材とし、中心部の主材料をCFRP部材として一体化した板状や管状の構造部材は、その端部を利用してボルト・ナットによる連結、嵌め合い、その他の公知の各種金属用結合方式を使用できるので、組み立て分解が容易になり大量生産に適合した部材となる。 航空機だけでなく、自動車等の移動機械、モバイル用電子電気機器、ロボット機器等の軽量強固化に役立つことであろう。 今日CFRP材は非常に身近な材料であり、移動機械用途に応用できることは将来の省エネルギー社会、環境重視社会に大きく貢献できる。 以上のような問題から本発明は、以下の目的を達成するものである。 本発明は、前記目的を達成するために次の手段を採る。 本発明のアルミニウム合金複合体の製造方法の要旨は、アルミニウム合金部品を鋳造物、又は中間材から機械的加工で形状化する工程と、前記形状化したアルミニウム合金部品を強塩基性水溶液に浸漬する化学エッチング工程と、前記アルミニウム合金部品を酸水溶液に浸漬する中和工程と、前記アルミニウム合金部品を水和ヒドラジン、アンモニア、及び水溶性アミン化合物から選択される1種以上を含む水溶液に浸漬して表面に超微細凹凸面を形成する超微細エッチング工程と、前記アルミニウム合金部品を過酸化水素水溶液に浸漬する酸化工程と、前記アルミニウム合金部品の前記超微細凹凸面にエポキシ系接着剤を塗布する工程と、前記エポキシ性樹脂分を含む繊維強化プラスチックのプレプリグ材を必要な形状に形成する工程と、� ��記繊維強化プラスチックのプレプリグ材を前記アルミニウム合金部品の前記塗布面に付着させる工程と、前記プレプリグ材と前記アルミニウム合金部品を位置決めし、且つ加圧しつつ加熱し、前記エポキシ性樹脂分を硬化させる工程とからなる。 以下、これらを構成する要素毎に詳細に説明する〔アルミニウム合金部品〕 〔アルミニウム合金部品の表面処理/前処理/その理論と考え方〕 これ以降の前処理工程は、アルミニウム合金に珪素が比較的多く含まれる合金と、これらの成分が少ない合金とでは処理方法が異なる。 珪素分が少ない合金、即ち、A1050、A1100、A2014、A2024、A3003、A5052、A7075等の展伸用アルミニウム合金では、以下のような処理方法が好ましい。 即ち、アルミニウム合金部品を、酸性水溶液に短時間浸漬して水洗し、アルミニウム合金部品の表層に酸成分を吸着させるのが、次のアルカリエッチングを再現性良く進める上で好ましい。 この処理は、予備酸洗工程といってよいが、使用液は、硝酸、塩酸、硫酸等、安価な鉱酸の1%〜数%濃度の希薄水溶液が使用できる。 次いで、強塩基性水溶液に浸漬して水洗し、エッチングを行う。 このエッチングにより、アルミニウム合金表面に残っていた油脂や汚れがアルミニウム合金表層と共に剥がされる。 この剥がれと同時に、この表面にはミクロンレベルの粗度、即ち、JIS規格(JIS B 0601:'01,ISO 4287:'97/ISO 1302:'02)で言えば、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ(Rz)が0.2〜5.0μmである。 これらの数値は、昨今の走査型プローブ顕微鏡にかければ自動的に計算をして出力されるようになっている。 ただ、細かい凹凸を自動出力で表記された数値は、算出RSm値が実情を表さない場合もある。 より正しくは、この凹凸具合を、走査型プローブ顕微鏡が出力できる粗度曲線グラフを、目視検査によりRSm値を再確認する必要がある。 前記粗度曲線グラフを目視検査により、0.2〜20μm範囲の不定期な周期で高低差が0.2〜5μm範囲の粗さ状況にあれば、実際は前記とほぼ同じである。 この目視検査法は、自動計算が信頼できないと判断した場合に、目視検査で判断が簡単にできるので好ましい。 要するに、本発明で定義した技術用語で言えば、「ミクロンオーダーの粗度ある表面」にする。 使用液は、1%〜数%濃度の苛性ソーダ水溶液を、30〜40℃にして数分浸漬するのが好ましい。 次に、再度酸性水溶液に浸漬し、水洗することでナトリウムイオンを除き前処理を終えるのが好ましい。 本発明者等はこれを中和工程と呼んでいる。 この酸性水溶液として数%濃度の硝酸水溶液が特に好ましい。 一方、ADC10、ADC12等の鋳造用アルミニウム合金では、以下の工程を経るのが好ましい。 即ち、アルミニウム合金の表面から油脂類を除去する脱脂工程の後、前述した工程と同様に予備酸洗し、エッチングするのが好ましい。 このエッチングにより、強塩基性下で溶解しない銅分や珪素分が微粒子の黒色スマット(以下、この汚れ状物を鍍金業界では「スマット」と呼ぶので、この表現に倣う。)となる。 よって、このスマットを溶かし剥がすべく、次いで数%濃度の硝酸水溶液に浸漬するのが好ましい。 硝酸水溶液への浸漬で、銅スマットは溶解され、且つ珪素スマットはアルミニウム合金表面から浮く。 特に、使用した合金がADC12のように珪素分が多量に含まれた合金であると、硝酸水溶液に浸漬しただけでは、珪素スマットがアルミニウム合金基材の表面に付着し続け、これは剥がし切れない。 それ故、次いで超音波をかけた水槽内に浸漬して、超音波洗浄し、珪素スマットを物理的に引き剥がすのが好ましい。 これで全てのスマットが剥がれ落ちるわけではないが、実用上は十分である。 これで前処理を終えても良いが、再度、希薄硝酸水溶液に短時間浸漬し水洗するのが好ましい。 これで前処理を終えるが、前処理は酸性水溶液浸漬と水洗で終わっているのでナトリウムイオンが残ることはない。 以下、ナトリウムイオンについて述べる。 実験事実から言えば、エポキシ系接着剤を使用して、2片のアルミニウム合金同士を接着したときの接合力は、ミクロンオーダーの粗度とその面のナノオーダーの超微細凹凸の形状特性で、その接合強度が殆ど決定される。 実験事実から言えば、苛性ソーダ水溶液によるエッチングで、その浸漬条件等を探し出せば、前述した「NAT」仮説でいう条件を偶然にしろ形状的に満たしていれば、意外に強い接着力が得られる。 しかしながら、苛性ソーダによるエッチングのみの処理で、表面処理を終了させれば、その後に水洗を十々分に行ってもアルミニウム合金表層にナトリウムイオンが残存する。 ナトリウムイオンは小粒径が故に移動し易く、塗装や接着が為された後であっても全体が濡れた状態になると、樹脂層を浸透する水分子に伴われて残存していたナトリウムイオンが、何故か金属/樹脂の境界面に集まって来て、アルミニウム表面の酸化を進める。 即ち、アルミニウム合金表面の腐食が生じ、その結果、基材と塗膜や接着剤間の剥離を促進する。 この様な事情から未だに接着前に行うアルミニウム合金前処理として、苛性ソーダ水溶液でのエッチングを行う理由はない。 それ故、現在でも、重クロム酸カリ、無水クロム酸の6価クロム化合物の水溶液に、アルミニウム合金を浸漬してクロメート処理するか、又は陽極酸化して未封孔のまま使用するのが強い接着剤接合の標準的前処理法とされている。 要するにエッチングによる接着力向上に注目する以前に、アルミニウム合金表面の腐食や変質を防止することに主眼があった。 しかしながら、アルミニウム合金を苛性ソーダエッチングする方法が全く使用されていないわけではなく、塗装の為の前処理でよく使用されている。 通常、塗装では極限的な接着力が求められるわけでもなく、風雨が当たる屋外使用用途でなければ水に浸ることもないとの判断による。 加えて塗膜保証を10年とする等というような製品でなければ、この塗装前処理法も不合理ではない。 本発明はこのような安易な考え方を前提とせず、長期的な接合安定性を重要課題とした。 それ故、ナトリウムイオンの排除は最重要事項なのである。 アルミニウム合金中のナトリウム この腐食対策は、一般にはその全表面を塗料、接着剤等で被覆する。 そのとき、その塗膜や接着層に割れヒビ等が生じないことで必要であり、この割れヒビ等から、塩分を含む水が、アルミニウム合金の表面に侵入しないようにすることが重要である。 そのような対策が為された場合、必ずしもアルミニウム合金の表面処理としては一般的なクロメート処理による必要はなく、塗膜耐候性が良くて塗膜/基材間の接着が良好であれば、塗装のみでも悪環境下にても十分に長持ちする。 特に、昨今は6価クロムの使用が世界中で拒絶されつつあり、クロメート処理は既に好ましいアルミニウム合金表面処理法と言えない。 その一方、現在では、耐候性に優れた塗料、耐湿性や耐熱性に優れた接着剤が多く市販されている。 このような中、本発明者等は、塗料や接着剤とアルミニウム合金基材間の強い接合が、長期に維持されるためにアルミニウム合金側に求められる条件の最適化とその理論化を図ろうとした。 アルミニウム合金の表面 そこでこのザラザラ度を、以下に述べる本処理で取り戻すようにしたものである。 参考の写真類を図5〜図7に示すが、図6が硝酸水溶液浸漬処理後の電子顕微鏡写真の例である。 前述した理由が理解されると思う。 要するに、本発明者等が本発明をするに至った経緯、思考、理論は、数nmの高解像度が得られる高性能電子顕微鏡が容易に使用できるようになったことにもよっている。 又、本発明において、アルミニウム合金の耐候性耐食性の獲得は、得られた最終的なアルミニウム合金表面を酸化アルミニウム表層とし、且つ、合金基材への接着剤の接合力を極限に高めることで確保しょうという考え方である。 〔アルミニウム合金部品の表面処理/本処理/超微細エッチング〕 又、水洗後の乾燥温度を例えば100℃以上の高温にすると、仮に乾燥機内が密閉的であると、沸騰水とアルミニウム間で水酸化反応が生じ、表面が変化してベーマイト層が形成される。 これは丈夫な表層と言えず好ましくない。 乾燥機内の湿度状況は乾燥機の大きさや換気の様子だけでなく、投入するアルミニウム合金の量にも関係する。 その意味で表面のベーマイト化を防ぐにはどの様な投入条件であれ、90℃以下、好ましくは70℃以下で温風乾燥するのが良好な結果を再現性良く得る上で好ましい。 70℃以下で乾燥した場合、XPSによる表面元素分析でアルミニウムのピークからアルミニウム(3価)しか検出できず、市販のA5052、A7075アルミニウム合金板材等のXPS分析では検出できるアルミニウム(0価)は消える。 XPS分析は、金属表面から1〜2nm深さまでに存在する元素が検出できるので、この結果から、水和ヒドラジンやアミン系化合物の水溶液に浸漬し、その後水洗して温風乾燥することで、アルミニウム合金が持っていた本来の自然酸化層(1nm厚さ程度の酸化アルミニウム薄層)が本処理でより厚くなったことが分かった。 少なくとも自然酸化層と異なって、2nm以上の厚さのあることが分かったので、それ以上解明しなかった。 即ち、アルゴンイオンビーム等でエッチングしてからXPS分析をすれば、10〜100nm程度のより深い位置での分析が可能であるが、ビーム自体の影響で深層のアルミニウム原子の価数が変化する可能性もあるとのことで、現時点でこの解析が困難と考えて本発明者等はこの考察を止めた。 他の表面処理方法によるアルミニウム合金表面の酸化アルミニウム層の形成について述べる。 アルミニウム合金の耐候性向上のために行う表面処理法の一つに陽極酸化法がある。 アルミニウム合金に陽極酸化を為した場合、数μm〜十数μm厚の酸化アルミニウム層が形成でき、耐候性は大きく向上する。 陽極酸化処理直後の酸化アルミニウム層には、無数の20〜40nm径程度の穴の開口部が残されている。 この状態、即ち未封孔アルマイト状態で接着剤の接合、又は塗料の塗布を行うと、接着剤、又は塗料が開口部から穴に若干入り込んで固化し、強いアンカー効果を発揮し、接着剤による接合では強い接合力を生むとされている。 実際、航空機の組み立てでは、陽極酸化アルミニウム合金として、これに接着剤を塗布して異材質材等を接合することが知られている。 しかしながら、本発明者等はこの説に疑問を持った。 即ち、陽極酸化アルミニウム合金同士をエポキシ接着剤で強固に接合した一体化物のせん断破断試験を行った場合、本発明者等の破断試験によると、40MPa(40N/mm 2 )以上の強い力で破断したサンプルはなく、且つ破断面を見ると、接着剤が破断するのではなく、陽極酸化層(酸化アルミニウム層)がアルミニウム合金基材から剥がれているものが殆どであった。 ここで本発明者等の考察を言えば、「強い接合に必要な金属側の表面は、金属酸化物等セラミック質の高硬度の層でなければならないがその厚さは厚すぎてはならない。」というものである。 陽極酸化物の表層は酸化アルミニウムであって、基材アルミニウム自身の酸化物ではあるが、表層はセラミック質で基材は金属だから互いに異物同士である。 セラミック質が厚ければ、必ず極限状態では物性の差異が現れて破断するはずである。 それ故、金属酸化物層は薄い方が好ましく、且つ常識から、その金属酸化物はアモルファスか微結晶状態のセラミック質であると基材との接合が万全で好ましいはずと考えた。 即ち、接着物のせん断破断力、引っ張り破断力を50〜100MPaレベルの強烈なものにするには、むやみに酸化金属層を厚くすべきでなく、陽極酸化を為した未封孔アルマイトの使用は好ましくないという結論である。 超微細エッチング 50nmは、実験結果から得た経験的感覚からの数値である。 ただ50nm周期を目指すとしても、化学反応でそのような規律正しいものが出来るはずがなく、バラついたものになる。 電子顕微鏡で撮影した写真を見て数値化するしかなく、その結果から言えば、直径10〜100nmで同等の深さ又は高さの凹部又は凸部でほぼ100%全面が覆われた超微細凹凸形状面ということになる。 実際、直径10〜20nmの凹凸が表面の大部分を占める場合、又、逆に直径100nm以上の凹凸が多きを占めるような場合も接合力は劣ったものとなった。 実例を、A7075材やA5052材を水和ヒドラジンの水溶液でエッチングした例で以下、実験例に記す。 超微細エッチングの実験例 ちなみに前述した条件で浸漬時間が1分間のときは、電子顕微鏡写真で10〜40nm径の凹部が観察され、これらの数平均直径は25〜30nmの凹部であった。 更に、0.5分間の浸漬であると、表面を覆う凹部の直径は10〜30nmであり、これらの数平均直径で言えば25nm程度で、浸漬時間1分の場合と大差がない。 そして浸漬時間0.5分の物と、浸漬時間1分の物の電子顕微鏡写真をよく見比べてみると、凹部の深さは0.5分間浸漬したものが1分間浸漬したものより明らかに浅い様子であった。 要するに、弱塩基性水溶液中のA5052、A7075では、何故か20〜25nm周期で侵食が始まり、まずこれが直径20nm程度の凹部を作り、この凹部の深さが直径と同レベルまで深くなったら、その後は凹部の縁が侵食されて凹部直径の拡大となり、凹部の内部の不定方向への侵食が始まることが分かった。 そのように侵食された場合、最も接着剤接合に適した単純で且つ丈夫な侵食具合は、A7075、A5052を3〜5%一水和ヒドラジン水溶液(60℃)に浸漬した場合で、ほぼ2分間であった。 例えば、温度23℃で粘度40Pa・秒の1液性高温硬化型エポキシ接着剤「EP106(セメダイン社製)」を使用した場合について説明する。 実施例で示す接着実験の結果から言えば、前記条件で水和ヒドラジン水溶液に1分浸漬したA7075等のアルミニウム合金材の場合では、数平均で微細凹部の直径が25nm程度と小さ過ぎてエポキシ樹脂がこの微細凹部に侵入し難いようであり、浸漬時間を2分にした場合の接着力が最大になるようであった。 前記条件でA7075等を2分間浸漬した場合、微細凹部の直径は数平均の直径で40nm程度になったので、このエポキシ樹脂はこの程度以上の微細凹部であれば、この微細凹部内に頭を突っ込み得るのだろうと推定された。 要するに、ミクロンオーダーの凹部の内面が数十nm周期の凹凸あるザラザラ面であると、接合力が高くなるのである。 又、前述した浸漬時間が2分間以上、例えば4分間、8分間と長くなると凹部径が大きくなるだけでなく、凹部の中にまた凹部が出来、簡単に言えばスポンジ状になってきて、アルミニウム合金表面層自体の強度が弱くなるだけでなく、深く複雑な穴の奥まで接着剤が侵入できないのである。 この結果、接合物の接合境界部に空隙部が増え、結果として接合力が最大値より低下する。 要するに、前記のエポキシ系接着剤をA7075等のアルミニウム合金に使用する場合、その接合力を最高にするには、ミクロンオーダーの適当な粗度とするに加え、その表面を数平均値で40〜50nm直径の超微細凹部で覆うことが好ましく、この超微細凹部を作るための最適な浸漬時間の範囲は非常に狭いことが理解できる。 前述した2分間前後の浸漬時間の場合に、最善の接合結果が得られたからである。 A5052のアルミニウム合金に対して同じエポキシ接着剤を使用した場合、苛性ソーダ水溶液によるエッチング時の浸漬条件はA7075に対する場合と若干異なる。 これは侵食具合や、その侵食された表面の物性が当然だが異なるからだろう。 詳しくは後述する実験例に示す。 アンモニア水はヒドラジン水溶液よりもPHが低いし、水溶液を常温より高温にするとアンモニアの揮発が激しくなる。 それ故に高濃度、低温での浸漬処理となり、25%濃度程度の最も濃いアンモニア水を常温で使用する場合も15〜20分の浸漬時間が必要となる。 逆に水溶性アミン類の多くは、ヒドラジン水溶液よりも強い塩基性水溶液となるのでより短時間での処理となる。 量産処理では浸漬時間が長過ぎても短きに過ぎても作業の安定性が失われる。 その意味で最適浸漬時間を数分にできる水和ヒドラジンが実際の使用には適しているように思われる。 何れの場合も、水和ヒドラジン、アンモニア、又は水溶性アミンの水溶液への浸漬の後で、数%濃度の過酸化水素水溶液に浸漬した場合に接合力が向上する合金種があった。 表面の酸化金属層の厚さが厚くなっているのかもしれないが、厚さ2nm以上について分析が難しく理論的には解明出来なかった。 〔エポキシ樹脂系接着剤及びその塗布〕 エラストマー成分 それ故、接合力を落とさず衝撃に耐える役目を持ってくれる。 加硫ゴムとしてあらゆる種類が使用できるが、実際にはゴム種に関らず数μm粒径近くまで粉砕するのが困難である。 微粒子加硫ゴムの製造法について、本発明者等が調査した範囲では、必要性がなかったのか研究開発が活発に為された形跡はない。 本発明者等は、液体窒素で天然ゴム加硫物(カーボンブラック除くタイヤのゴムの配合成分と実質的に同一成分。)を冷却して、これを機械的に粉砕し、分級する方法を取った。 この製造コストは残念ながら商業的ではない。 もう一つは、未加硫や半架橋性のゴム、及び修飾したスーパーエンプラやポリオレフィン系樹脂の使用である。 修飾したスーパーエンプラの例として水酸基末端ポリエーテルスルホン「PES100P(三井化学社製)」等がある。 即ち、水酸基末端ポリエーテルスルホンの融点軟化点が300℃以上ある末端修飾型の熱可塑性樹脂が使用できる。 又、ポリオレフィン系樹脂には、エポキシ系樹脂に混合しやすい物が既に開発されておりこれらも好ましく使用できる。 温度衝撃に対する耐久性は、理論的には粉末加硫ゴムより劣ると本発明者等はみているが、実際には未だよく分からない。 評価法自体が本発明者等の方法では極限まで行っていない。 何れにせよ、これら未加硫型のエラストマーであっても、混入させた方が温度衝撃に強いとの結果が得られている。 この様なポリオレフィン系樹脂としては、無水マレイン酸変性エチレン系共重合体、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体、グリシジルエーテル変性エチレン共重合体、エチレンアルキルアクリレート共重合体等がある。 充填材 エポキシ接着剤の調整 〔エポキシ樹脂接着剤塗布後の処理工程〕 〔FRPプリプレグ〕 市販のCFRPプレプリグ等は勿論使用できる。 市販品としては、前記エポキシ系接着剤を炭素繊維織物に含浸させた物、又、未硬化の前記エポキシ樹脂からフィルム状物を一旦作成して炭素繊維織物と重ねた形にした物が、プリプレグとして販売されている。 又、専門メーカーでなくてもこれらの技術は公知であり、当業者であれば炭素繊維織物と1液性エポキシ系接着剤を使って容易に作成することが出来る。 使用するエポキシ樹脂は、ジシアンジアミドやアミン硬化型の物が多く、常温ではBステージ(固体に近いが未硬化状態)を保っており、百数十℃に昇温する過程で一旦溶融し、その後に硬化するように仕組んである。 その意味で、アルミニウム合金部品に塗布するエポキシ系接着剤と、CFRPプリプレグに使用するエポキシ系未硬化樹脂(接着剤)の硬化温度特性が一致していることが好ましい。 ただ、本発明者等の実験ではこれらの硬化温度特性を特に調整することなく、加熱硬化させたものでも強い接合力を生じたので、詳細な検討を行えば更に優れた一体化物が得られると考えた。 未硬化のプリプレグを必要形状に切断し、必要な形に重ね合わせてプリプレグ部分の準備をする。 即ち、単方向プリプレグ(縦糸が多く横糸がごく僅かな織り方の織物からのプリプレグ)を、複数枚重ねて板材を構成する場合は、その繊維方向を一致させたり、角度を異ならせて重ねたりすることで、最終的な板材としての強度の方向性が制御できる。 そのため、その組み付けには多くのノウハウがあるとされる。 又、炭素繊維の正織り品では縦糸と横糸の数が同じであり、例えば45度づつ角度を変えてプリプレグを重ねると、最終的なCFRP板材では強度的には全方向に対し等しくなると言われている。 要するに、必要な枚数、その重ね方を前もって設計し、それに従って各プリプレグを切断し、設計通り重ねあわして板材を完成させる。 〔プリプレグの積層及び複合体の製造方法〕 勿論、双方を押し付けつつ硬化させればよいので、重力だけでなく種々の方法が利用できる。 航空機部材では上記のように組み付けた全体を耐熱性のフィルム袋に封じ、減圧しつつ過熱し、全エポキシ分が溶融したときに内部の空気が強制的に抜けるようにしている。 空気がある程度抜けるとプリプレグが締まるので、その後にフィルム袋内に空気を送って昇圧下で硬化させる仕掛けである。 ここでは、プリプレグ内の空気は、エポキシ分の溶融時に押え付けている圧力でかなり抜けると想定して実験を行った。 加熱は、上記仕組んだ全体を熱風乾燥機やオートクレーブの中に入れて行う。 通常は、110〜140℃にて数十分置いて、接着剤成分を一旦溶融してゲル化し、150〜170℃に上げて更に数十分加熱し、硬化するのが好ましい。 最適な温度条件は、エポキシ成分や硬化剤成分によって異なる。 硬化後に放冷し、金型を外し、成形物を取り出す。 離型ができるように、記述の様にアルミ箔やポリエチレンフィルムを使用した場合はこれを剥がし取る。 接着強度測定方法 金型貫通孔4には、金型底板5の底板突起部6が挿入されている。 底板突起部6は、金型本体2の金型底板7から突出するように突き出ている。 金型本体2の底面は、金型台座8上に搭載されている。 金型底板5を金型本体2の金型凹部3に挿入して載置した状態で、図2に示すようなアルミニウム合金板11とCFRP12を接合したアルミニウム合金複合体10を焼成して製造する。 このアルミニウム合金複合体10を製造するには、概略すると次のような手順で行う。 まず、金型底板5の全上面に離型用フィルム17を敷く。 離型用フィルム17の上にアルミニウム合金板11と板状のPTEFスペーサ16を載せる。 このPTEFスペーサ16の上とアルミニウム合金板11の端部の上に所要のプリプレグ12を積層する。 プリプレグ12は、強化繊維織物とここへ染み込ませた未硬化のエポキシ系接着剤から構成されるCFRPプリプレグである。 このプリプレグ12の積層の後に、離型用のポリエチレンフィルム片13を、アルミニウム合金板11及びプリプレグ12の上に更に積層する。 この上にウェイトとしてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)のPTEFブロック14、15を載せる。 更に、必要に応じて、この上に数百gの錘(図示せず)を載せる。 この状態で焼成炉に投入し、プリプレグを硬化させて放冷した後、錘、及び台座8等を外して、底板突起部6の下端を床面に押し付けると、離型用フィルム13、17と共にアルミニウム板とCFRPを接合したアルミニウム合金複合体10(図2参照)が取り出せる。 PTEFスペーサ16、離型用フィルム17、13は、接着性のない素材であるからCFRPから容易に剥がすことができる。 〔複合体の使用方法の一例〕 CFRP21、この表裏の補強板材22、及びアングル材23は、補強板材22の上のワッシャー24、アングル材23の下面に配置したワッシャー、ナット(図示せず)により、ボルト25で相互に移動しないように固定されている。 アルミニウム合金(A7075)で作られた矩形の板材22とCFRP21が接着されたアルミニウム合金複合体20において、両者間の接着力は極めて強く、せん断破断力で50〜70MPaを示す。 また、板材22上にボルト25、ワッシャー24によってかかる力はCFRP21上に上手く分散できる。 要するに十分な強度でボルト25とナットを締め付けてもA7075で作られた板材22のみが変形し、複合体20中のCFRP21に損傷を与えない。 以上のように、本発明のアルミニウム合金複合体の製造方法によって、アルミニウム合金とCFRPとを強力に接着することができる。 以上詳記したように、本発明のアルミニウム合金複合体とその製造方法は、アルミニウム合金部品とFRPが強く一体化したものであるから、軽量且つ丈夫な部品を提供することが出来る。 航空機用等の部材として、アルミニウム合金部材とFRP部材を一体化したものが製造できるので、両者を結合固定する必要があるとき、新規な構造を採用することが出来る。 又、本発明のアルミニウム合金複合体は軽いので、軽量化が切望されている自動車部品、自転車部品等の移動体を構成する部品に適用できる。 即ち、アルミニウム合金材は機械加工等により、比較的に自由な形状が作成できるので、アルミニウム合金同士の結合はボルト・ナット、ネジ止め法等の既存の締結方法を採用できる。 一方のFRP部分は、複雑形状よりも板状やパイプ状の形状物の作成に適しており、大型品や長尺品の硬化物も作成可能であるので、両者の特徴を活かした複合構造物を作ることができる。 それ故、一体化した部品で端部をアルミニウム合金化しておけば、ボルト・ナットやネジ止めで容易に組み立て可能な部材とすることが出来る。 要するに、アルミニウム合金の表面を精密に設計することでエポキシ樹脂との接合強度、精度を飛躍的に高めることが出来、その接合力を利用した新たな加工法、組立法を採用できるようになった。 以下、本発明の実施の形態を実施例によって説明する。 なお、図4は金属と金属であるアルミニウム合金片同士を接着剤接合した形状を図示したものである。 図中のアルミニウム合金片30とアルミニウム合金片31は、同一の素材で作られたアルミニウム合金板である。 アルミニウム合金片30とアルミニウム合金片31とは、接合面32で接合されている。 この接合面32は、前述したように表面に化学エッチングによるミクロンオーダーの表面粗さが形成され、この表面はナトリウムイオンを含まない厚さ2nm以上の酸化アルミニウム薄層を有し、且つ表面粗さ内に10〜100nm径で同等の深さ又は高さの凹部又は突起である超微細凹凸面で覆われている。 この超微細凹凸面には、エポキシ系接着剤が介在して接着されている。 又、図2は前述したように、アルミニウム合金板とFRPとをエポキシ系接着剤で接合して得た接合強度測定用の試験片を現している。 又、図3は前記したが、アルミニウム合金板とFRPとをエポキシ樹脂で接合して得た複合体と、別の金属部品とをボルト・ナットで結合した場合の模式図である。 後述の実施例で具体例を示すが、測定等に使用した機器類は以下に示したものである。 (a)X線表面観察(XPS観察) [実験例1](A5052アルミニウム合金と接着) 次いで別の槽に60℃とした一水和ヒドラジンを3.5%含む水溶液を用意し、これに前記アルミニウム合金片を1分間浸漬し、水洗して67℃にした温風乾燥機に15分入れて乾燥した。 乾燥後、アルミ箔でアルミニウム合金片をまとめて包み、更にこれをポリ袋に入れて封じ保管した。 4日後、その1個を電子顕微鏡観察したところ10〜80nm径の凹部、数平均で25〜30nm径の凹部で覆われていることが分かった。 これを図9の写真に示す。 又、別の1個を走査型プローブ顕微鏡にかけて40μm/秒で20μm分を走査し、JIS規格(JISB0601:2001)で言う山谷平均間隔(RSm)と最大高さ(Rz)を求めたところ、RSmは1.1μ、Rzは.0.3μmであった。 この粗度曲線図を図15に示した。 更に別の1個をXPS観察してアルミニウム原子の観察をしたところ、購入したA5052ではAl(0価)とAl(3価)が約1:3で観察されたのに対し、Al(0価)は見当たらず酸化アルミニウムの膜厚が厚くなったことが分かった。 XPSでは表面から1〜2nmまでの深さの原子構成が検出されるので、酸化アルミニウム表層の厚さは2nm以上になったことが明らかであった。 同日、前述の表面処理がなされた10個のアルミニウム合金片を取り出して、市販されている液状一液型ジシアンジアミド硬化型エポキシ接着剤「EP−106(セメダイン社製)」を端部に薄く塗った。 塗った面を上にしてデシケータに入れ、真空ポンプで1mmHgまで減圧し、1分置いてから空気を入れて常圧に戻した。 この減圧にして常圧に戻す操作を3回繰り返し、デシケータから取り出した。 熱風乾燥機内に移し、接着剤を塗りつけた面同士を重ね合わせ、接合面の面積が0.5cm 2程度になるように5組を組み付け500gの重りを接合面の上に置き、扉を閉めて急速昇温し135℃とした。 40分後に熱風乾燥機の設定を165℃に変えて昇温を待ち、165℃になってから20分置いて熱風乾燥機のスイッチを切り、乾燥機の扉を開けて放冷した。 この操作で図4に示すように、アルミニウム合金片30とアルミニウム合金片31を接合面32で接合した一体化試験片が得られた。 2日後に引っ張り破断試験をしたところ5組の平均でせん断破断力は48MPaあり非常に強かった。 [実験例2](A5052アルミニウム合金と接着) 2日後に引っ張り破断試験をしたところ、4組の平均でせん断破断力は48MPaであった。 実験例1と同じ強い接合力を示した。 但し、表面処理後のアルミニウム合金片をXPS分析したところ、酸素、アルミニウムの大きなピークが認められ、マグネシウム、亜鉛、ナトリウムの小さなピークが認められた。 本実験例では苛性ソーダ水溶液処理が最終処理であり、水洗だけではナトリウムイオンが除去さていないことが分かった。 [実験例3](A5052アルミニウム合金と接着) このアルミニウム合金片をXPS分析したところ、積算してもナトリウムのピークは認められなかったので、ナトリウムが、硝酸水溶液への浸漬と水洗で除かれたものと判断した。 同日、前記アルミニウム合金片を取り出してエポキシ接着剤「EP−106」を端部に薄く塗り、その後の脱気処理、貼り付け、熱風乾燥機による接着剤の硬化などは実験例1と全く同様に行った。 2日後に引っ張り破断試験をしたところ、4組の平均でせん断破断力は44MPaであった。 接合力は実験例1、2よりかなり低くかった。 [実験例4〜12](A5052アルミニウム合金と接着) 実験例10、11、12では、実験例3と同様に硝酸水溶液の浸漬処理まで行った。 但し、実験例3との比較で苛性ソーダ水溶液への浸漬時間だけを異ならせた。 浸漬時間は、実験例10では1分、実験例3では2分、実験例11では4分、実験例12では8分とした。 表1に実験例1〜12の結果を示した。 同じ結果を図13に図示した。 縦軸はA5052アルミニウム合金片同士の接着力、横軸は1.5%苛性ソーダ水溶液への浸漬時間である。 図13及び表1から見て、1.5%苛性ソーダ水溶液での処理によるA5052とエポキシ樹脂組成物「EP−106」との組み合わせでは、苛性ソーダ水溶液への浸漬時間が2分前後のときに最も接合強度が高いことが判明した。 特徴的なのは、苛性ソーダ水溶液への浸漬時間が2分間のもの同士では、苛性ソーダエッチング品(実験例2)と、それを中和し更にヒドラジン処理までした物(実験例1)が、殆ど同レベルの接合力を示すことであり、ナトリウムイオンが残存しない処理品としては、ヒドラジン処理まで行ったもので最高の接着力が示されることである。 又、苛性ソーダ水溶液への浸漬時間が8分間の場合など、エッチングを長くし過ぎたA5052アルミニウム合金では、中和まで行った物(実験12)が最も接着力が強く、苛性ソーダ処理まで行った物、ヒドラジン処理まで行った物との比較で逆転していることである。 苛性ソーダ水溶液への長い浸漬は、粗度周期数μmと周期自体は大差を与えないが、深さや高低差を激しく変化させており(走査型プローブ顕微鏡観察)、横穴も生じるなど複雑過ぎる表面にしたことで接合力を弱めたものとみられた。 中和処理は、実際には酸性水溶液に浸漬する工程であるので、両性金属であるアルミニウム合金は酸性水でも僅かに溶け、特に酸性水溶液では突出した部分が溶け易いと言われるので、実験12では複雑すぎる粗度が均され、やや適当な粗度に戻ったから実験9よりも良い接着力を示したものと考えられる。 [実験例13〜15](A5052アルミニウム合金と接着) 表2、図14で示されるように、水和ヒドラジン水溶液への浸漬時間が2分のものが最も強い接合力を示したが、その表面を電子顕微鏡で観察した結果では20〜100nm径、数平均で40〜50nm径の凹部で全面が覆われていることが分かった。 60MPa(約600Kgf/cm 2 )は、接合面積が0.5cm 2の物では破断力が300Kgfに相当する。 なお、実験例1、13、14、及び15で得られたA5052アルミニウム合金の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真を図9、10、11、及び12に示す。 微細凹凸面、この場合は微細凹部の直径が、浸漬時間を長くすると大きくなり、且つ凹部の中に更に凹部が出来る等して複雑化し、アルミニウム合金の表面層自体の強度が急速に低下する様子が見て取れる。 図12に示す電子顕微鏡写真のような表面になれば、複雑な微細凹部の深部まで粘度あるエポキシ系接着剤が侵入できないことは理解できる。 又、最高の接合力を示した実験例13で使用したものと同じアルミニウム合金片を、走査型プローブ顕微鏡で見た結果、平均粗さ周期(これはJISでの山谷平均間隔「RSm」と同じ)が1.2μm、その最大高さ(Rz)は0.5μmであった。 [実験例16](A5052アルミニウム合金と接着) その後は再び実験例1と全く同様にして、エポキシ接着剤「EP−106」を使用してアルミニウム合金片2枚づつを接着剤接合した。 接合後、2日目に引っ張り破断試験をしたところ、4組の平均でせん断破断力は43MPaであり、接合力は実験例13より低下した。 従来技術から推定するに、濡れたまま若干のアミン系化合物を含めて100℃以上の高温下に置くと、表面がベーマイト化するとみられる。 本発明者等は水酸基を有するベーマイトは必ずしも強固硬質な物質とみておらず、その意味で当然の結果ではないかと考えた。 [実験例17](A5052アルミニウム合金と接着) [実験例18](A7075アルミニウム合金) 4日後、その1個を電子顕微鏡観察し得た写真を図5に示す。 100〜150nm径の乾燥フノリ状の不思議な表面をしていることが分かる。 これをXPS分析したところ、酸素、アルミニウムの大きなピーク、マグネシウム、銅、亜鉛、ナトリウムの小さなピークが認められた。 苛性ソーダ水溶液処理が最終処理であり、水洗だけではナトリウムイオンが取り切れていないことが分かった。 [実験例19](A7075アルミニウム合金) 次いで、前記アルミニウム合金片を67℃にした温風乾燥機に15分入れて乾燥した。 乾燥後、アルミ箔で前記アルミニウム合金片をまとめて包み、更にこれをポリ袋に入れて封じ保管した。 4日後、その1個を電子顕微鏡観察した結果を図6に示す。 図5と比較すれば劇的だが、凹凸周期は変わらないものの乾燥フノリにある突起状の物は全て消えて、低い凸部だけが残った形状になっていた。 明らかに表面はミクロ的に見ても円滑化していた。 これでは接着剤との高い接合力は望めない。 [実験例20](A7075アルミニウム合金と接着) 次いで別の槽に1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに前記アルミニウム合金片を4分浸漬して、その後よく水洗した。 続いて別の槽に40℃とした3%濃度の硝酸水溶液を用意し、これに前記アルミニウム合金片を1分浸漬し、水洗した。 次いで別の槽に60℃とした一水和ヒドラジンを3.5%含む水溶液を用意し、これに前記アルミニウム合金片を2分浸漬し、十分水洗して67℃にした温風乾燥機に15分入れて乾燥した。 要するにこの実験例は実験例19と比較して、実験例19の工程に水和ヒドラジン水溶液浸漬工程を追加した実験である。 乾燥後、アルミ箔で前記アルミニウム合金片をまとめて包み、更にこれをポリ袋に入れて封じ保管した。 4日後、その1個を電子顕微鏡観察した結果を図7に示す。 図6と比較するとよく理解できるが、20〜110nm径の石や岩石が乱雑に積み重なったような不思議な形状をしており、図7(1万倍)から言えば、40〜100nm径の凹部、数平均で60nm径の凹部で覆われているように見えることが分かる。 又、別の1個のXPS観察で実験例1と同じようにAl(0価)のピークは観察されなかった。 同日、前記アルミニウム合金片を取り出して市販のエポキシ接着剤「EP−106」を端部に薄く塗った。 塗った面を上にしてデシケータに入れ、真空ポンプで1mmHgまで減圧し、1分置いてから空気を入れて常圧に戻した。 減圧にして常圧に戻す操作を3回繰り返し、デシケータから取り出した。 そのアルミニウム合金片を熱風乾燥機内に移し、接着剤を塗りつけた面同士を重ね合わせ、接合面の面積が0.5cm 2程度になるように組み付けて500gの重りを接合面の上に置き、扉を閉めて急速昇温し135℃とした。 40分後に熱風乾燥機の温度設定を165℃に変えて昇温を待ち、165℃になってから20分置いて熱風乾燥機のスイッチを切り、乾燥機の扉を開けて放冷した。 その2日後に引っ張り破断試験をしたところ、4組の平均でせん断破断力は65MPaあり非常に強かった。 [実験例21](A7075アルミニウム合金と接着) 4日後、その1個を電子顕微鏡観察した。 その結果を図8に示す。 図7から8に移ったのは過酸化水素水のせいであるが、写真の変化をどう表現すれば良いのが難しい。 微細凹凸周期は大差ないのだが、図8の方がアンダー部のない強い形になっているように見える。 酸化アルミニウムの結晶化が進んだ感じである。 一応、XRDにかけてみたが酸化アルミニウムの結晶ピークは観察されなかった。 XRDは一定量の結晶量がないと観察不能であり、微細結晶に過ぎないのか、未だアモルファスなのかは判断し得ない。 又、別の1個を走査型プローブ顕微鏡にかけて粗度データを得た。 これによると山谷平均間隔(RSm)は3.5μm、最大高さ(Rz)は1.8μmであった。 [実験例22](A7075アルミニウム合金と接着) 要するに、本実験はA7075材をエポキシ系接着剤で接合した時の引っ張り破断力を求めるために行ったものである。 得られた接合物を引っ張り試験機で引っ張り破断した結果、平均値で85Kgfであったので、接着面積0.12cm 2から引っ張り破断力69MPaが得られた。 又、このときの接着剤層の平均の厚さは0.25mmであった。 特別な意味はないのかもしれないが、せん断破断力と引っ張り破断力が殆ど同じ数字、即ち70MPa近くであるのが印象的であった。 [実験例23](接着剤) 得られた接着剤組成物を「EP−106」に代えて使用した他は実験例21と全く同様に実験を行った。 接着剤を硬化した2日後に引っ張り破断試験をしたところ、4組の平均でせん断破断力は69MPaあった。 実験例1〜21の結果から見て基本的な接合力の強さは金属表面の形状や物性で決まることが明らかであり、本実験例の結果が実験例20とほぼ同じであるということは、接着剤自体の基本性能は本実験例と「EP−106」で変化していないことを示すものと考えた。 実際には、本実験例の接着剤にはエラストマーが含まれており、且つ線膨張率もフィラーの混入で金属に近づいているはずであるから、振動を経験した後や高温を経験した後では従来常識から言って良い効果が得られるはずと予期した。 [実験例24](接着剤) [実験例25](市販型プリプレグの作成) 得られた樹脂フィルムをプリプレグマシンにセットし、強化繊維として一方向に引き揃えた炭素繊維「T−300(東レ社製)」の両面から常法により加圧下で圧着し、樹脂含有率38%に調整したプリプレグを得た。 繊維目付は190g/m 2であった。 国内各社から市販されているプリプレグはこの様な方法で製作されているものと思われる。 [実験例26](複合体の作成とその評価) 乾燥後、アルミ箔で前記アルミニウム合金片をまとめて包み保管した。 同日、前記アルミニウム合金片を取り出して、これに液状一液型ジシアンジアミド硬化型エポキシ系接着剤「EP−106(セメダイン社製)」を端部に薄く塗った。 塗った面を上にしてデシケータに入れ、真空ポンプで3mmHgまで減圧し、1分置いてから空気を入れて常圧に戻した。 減圧にしては常圧に戻す操作を3回繰り返し、デシケータから取り出した。 一方、図1に示す焼成治具1を用意し、0.05mmポリエチフィルムを短冊状に切った離型用フィルム17を金型本体2内に敷き、先ほどのアルミニウム合金板11置く。 別途切断しておいた炭素繊維「T−300(東レ社製)」からの正織り布を図1のプリプレグ12として敷く。 これに注射器から出すエポキシ系接着剤「EP−106」を積層面に塗りながら3枚重ね、次いでアルミニウム合金板11側の上部にポリエチフィルムである離型用のポリエチレンフィルム片13を置いた後、再び布の大きさを変えて接着剤を塗布しつつ5枚重ねた。 使用した「EP−106」は約1ccであった。 ポリエチレンフィルム片13の上に、PTFE製の押さえのためのPTEFブロック14,15を載せ、熱風乾燥機に入れた。 そこで更にPTEFブロック14,15の上に各々0.5Kgの鉄の錘をのせて乾燥機に通電し温度135℃まで昇温させた。 温度135℃で40分加熱し、更に5分間かけて温度165℃に昇温させ、温度165℃で20分保持し、通電を止めて扉を閉めたまま放冷した。 翌日に乾燥機から出し金型から成形物を離型しポリエチフィルム片13,17を剥ぎ取って、図2に示すアルミニウム合金複合体10を得た。 同じ操作を繰り返し8個のアルミニウム合金とCFRPの一体化物であるアルミニウム合金複合体10を得た。 接合後2日目に4個を引っ張り破断試験した。 CFRP部分は紙やすりをかけた1mm厚のSUS304ステンレス鋼片2枚で挟み、これをチャック板で挟んで固定する方法を取った。 4組の平均でせん断破断力は62MPaあり、非常に強かった。 但し、接合面積は図2に於けるl×mとして計算した。 [実験例27](複合体の作成とその評価) 即ち、切断しておいた実験例25のプリプレグを3枚重ね、次いでアルミニウム合金側の上部にポリエチフィルム8を置いた後、再び大きさを変えたプリプレグを5枚重ねた。 PTFE製の押さえ9を乗せ、熱風乾燥機に入れた。 そこで更に押さえ9の上には各々0.5Kgの鉄の錘をのせて乾燥機に通電し、135℃まで昇温した。 135℃で60分加熱し、更に10分かけて165℃に昇温し、165℃で60分保持し、通電を止めて扉を閉めたまま放冷した。 翌日に乾燥機から出し金型から成形物を離型しポリエチフィルムを剥ぎ取って図2に示す形状物を得た。 接合後2日目に引っ張り破断試験をした。 CFRP部分は紙やすりをかけた1mm厚のSUS304ステンレス鋼片2枚で挟み、これをチャック板で挟んで固定する方法を取った。 4組の平均で、せん断破断力は55MPaあり非常に強かった。 但し、接合面積は図2に於けるl×mとして計算した。 1…焼成治具2…金型本体3…金型凹部4…金型貫通孔5…金型底板6…底板突起部7…金型底面8…台座10…アルミニウム合金・FRP複合体11…アルミニウム合金板12…FRP片13…離型用フィルム14…PTFEブロック15…PTFEブロック16…PTFEスペーサ17…離型用フィルム20…アルミニウム合金複合体21…CFRP |