積層構造体

申请号 JP2013501957 申请日 2012-12-21 公开(公告)号 JP6052164B2 公开(公告)日 2016-12-27
申请人 三菱レイヨン株式会社; 发明人 中井 祐介; 牧野 伸治;
摘要
权利要求

微細凹凸構造を表面に有する物品と、 前記物品の微細凹凸構造側の表面に接する粘着フィルムと を有し、 前記微細凹凸構造における凸部間の平均間隔が、400nm以下であり、 JIS Z0237:2009に準じて下記の方法で測定される前記粘着フィルムの低速剥離Pが、0.01N/25mm以上2.5N/25mm未満であり、 JIS Z0237:2009に準じて下記の方法で測定される前記粘着フィルムの高速剥離力Qと低速剥離力Pとの比(高速剥離力Q/低速剥離力P)が、2未満である、積層構造体。 (剥離力の測定方法:その1) 前記物品の微細凹凸構造側の表面に接する側の表面がアクリル樹脂板に接するように、前記粘着フィルムを前記アクリル樹脂板の表面に載せ、前記粘着フィルムの上から2kgロールを1往復させて前記粘着フィルムを前記アクリル樹脂板に貼り付け、23℃恒温下で30分間放置した後、引き剥がし速度0.3m/分(低速剥離力Pの測定の場合)または10m/分(高速剥離力Qの測定の場合)で前記粘着フィルムを前記アクリル樹脂板の表面に対して180°に引き剥がし、その剥離に要する剥離力を測定する。前記粘着フィルムの低速剥離力Pが、1.0N/25mm以下である、請求項1に記載の積層構造体。下記の方法で測定される前記粘着フィルムの高速剥離力Sと低速剥離力Rとの比(高速剥離力S/低速剥離力R)が、2以下である、請求項1に記載の積層構造体。 (剥離力の測定方法:その2) 前記物品の微細凹凸構造側の表面に接する側の表面が前記物品に接するように、前記粘着フィルムを前記物品の微細凹凸構造側の表面に載せ、前記粘着フィルムの上から2kgロールを1往復させて前記粘着フィルムを前記微細凹凸構造に貼り付け、23℃ 恒温下で30分間放置した後、引き剥がし速度0.3m/分(低速剥離力Rの測定の場合)または10m/分(高速剥離力Sの測定の場合)で前記粘着フィルムを前記微細凹凸構造側の表面に対して180°に引き剥がし、その剥離に要する剥離力を測定する。

说明书全文

本発明は、微細凹凸構造を表面に有する物品の微細凹凸構造側の表面が粘着フィルムによって保護された積層構造体に関する。 本願は、2011年12月27日に、日本に出願された特願2011−284679号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

各種画像表示装置、レンズ、ショーウィンドー等においては、太陽光、照明の光等が表面で反射することによる視認性の低下が問題となるため、反射防止フィルムを表面に貼着することがある。

反射防止フィルムとしては、基材の表面に微細凹凸構造を有するものが注目されている。特に、略円錐形状、略錐形状等の複数の突起(凸部)が並んだ、いわゆるMoth−Eye構造と呼ばれる微細凹凸構造は、空気の屈折率から材料の屈折率に連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となる。

基材の表面に微細凹凸構造を形成する方法としては、陽極酸化により形成された複数の細孔(凹部)からなる微細凹凸構造を有する陽極酸化アルミナを用い、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造を基材の表面に転写する方法が注目されている(特許文献1)。

微細凹凸構造が表面に形成された反射防止フィルム等の物品には、表面に汚れ等が付着するのを防いだり、微細凹凸構造の形状を維持(保護)したりすることを目的として、加工工程の間や出荷後から使用までの間、微細凹凸構造が形成された表面に粘着フィルムが貼り付けられる。

しかし、細孔の平均間隔が可視光の波長以下である陽極酸化アルミナの微細凹凸構造を転写して、基材の表面に微細凹凸構造を形成した物品においては、凸部間の平均間隔が狭く、かつ粘着フィルムと接する凸部の頭頂部の面積が小さい。そのため、凸部の平均間隔が可視光の波長より大きいアンチグレア構造やプリズム構造に貼り付けられる従来の粘着フィルムを、凸部の平均間隔が可視光の波長以下の微細凹凸構造の表面に貼り付けるのは困難である。すなわち、従来の粘着フィルムでは、十分な密着が得られにくかったり、逆に密着力が過剰になったりしやすい。

そこで、粘着フィルムを貼り付けやすく、貼り付けた粘着フィルムが不用意に剥がれず、意図的に粘着フィルムを剥がそうとすれば容易に剥離できるようにするために、微細凹凸構造を有する凹凸部と、微細凹凸構造を有さない非凹凸部が表面に形成された物品の表面に、凹凸部に対する初期密着強度が0.03N/25mm以下の粘着フィルムを貼着する方法が提案されている(特許文献2)。

特開2005−156695号公報

特開2010−107858号公報

しかし、特許文献2に記載の粘着フィルム付き物品においては、打抜き加工、NC切削等によって所望の形状に加工することは考慮されていない。加工によって表面全体が微細凹凸構造を有する凹凸部となった場合、加工工程の間に粘着フィルムが剥がれてしまい、また、加工後に新たに粘着フィルムを貼付けすることができないといった問題が生じる。

微細凹凸構造の表面に貼り付けた粘着フィルムが剥がれないようにするには、密着力の高い粘着フィルムを用いればよい。しかし、この場合、粘着フィルムを剥離した後に、粘着フィルムの粘着材が物品の微細凹凸構造の凹部に残留する現象(糊残り)が起こることがある。微細凹凸構造の凹部に糊残りがあると、物品の光学性能が低下しやすくなる。特に、Moth−Eye構造の表面に粘着フィルムを貼着すると、粘着フィルムを剥離したときに凹部に粘着材が残留しやすく、反射防止性能が損なわれる。

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、物品の微細凹凸構造側の表面に貼り付けた粘着フィルムが不用意に剥がれることがなく、意図的に粘着フィルムを剥がそうとすれば作業性よく容易に剥離でき、かつ微細凹凸構造への糊残りが極めて少ない積層構造体を提供する。

本発明者らは鋭意検討した結果、特定の粘着特性を有する粘着フィルムを用いることによって、物品の微細凹凸構造側の表面に粘着フィルムを貼り付け可能であり、かつ粘着フィルムを剥離した後も微細凹凸構造への糊残りが極めて少なく、反射防止性能を損なうことなく、その結果、加工工程の間や出荷後から使用までの間、キズや汚れの付着から微細凹凸構造を保護することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。

(1)本発明の第1の態様に係る積層構造体は、微細凹凸構造を表面に有する物品と、前記物品の微細凹凸構造側の表面に接する粘着フィルムとを有し、前記微細凹凸構造における凸部間の平均間隔が、400nm以下であり、JIS Z0237:2009に準じて下記の方法で測定される前記粘着フィルムの低速剥離力Pが、0.01N/25mm以上2.5N/25mm未満であり、JIS Z0237:2009に準じて下記の方法で測定される前記粘着フィルムの高速剥離力Qと低速剥離力Pとの比(高速剥離力Q/低速剥離力P)が、2未満である。

(剥離力の測定方法:その1) 前記物品の微細凹凸構造側の表面に接する側の表面がアクリル樹脂板に接するように、前記粘着フィルムを前記アクリル樹脂板の表面に載せ、前記粘着フィルムの上から2kgロールを1往復させて前記粘着フィルムを前記アクリル樹脂板に貼り付け、23℃恒温下で30分間放置した後、引き剥がし速度0.3m/分(低速剥離力Pの測定の場合)または10m/分(高速剥離力Qの測定の場合)で前記粘着フィルムを前記アクリル樹脂板の表面に対して180°に引き剥がし、その剥離に要する剥離力を測定する。

(2)前記(1)の積層構造体において、前記粘着フィルムの低速剥離力Pは、1.0N/25mm以下であることが好ましい。 (3)前記(1)または(2)の積層構造体において、下記の方法で測定される前記粘着フィルムの高速剥離力Sと低速剥離力Rとの比(高速剥離力S/低速剥離力R)は、2以下であることが好ましい。

(剥離力の測定方法:その2) 前記物品の微細凹凸構造側の表面に接する側の表面が前記物品に接するように、前記粘着フィルムを前記物品の微細凹凸構造側の表面に載せ、前記粘着フィルムの上から2kgロールを1往復させて前記粘着フィルムを前記微細凹凸構造に貼り付け、23℃ 恒温下で30分間放置した後、引き剥がし速度0.3m/分(低速剥離力Rの測定の場合)または10m/分(高速剥離力Sの測定の場合)で前記粘着フィルムを前記微細凹凸構造側の表面に対して180°に引き剥がし、その剥離に要する剥離力を測定する。

(4)前記(1)〜(3)の積層構造体において、前記微細凹凸構造は、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造を転写したものであることが好ましい。

本発明の積層構造体は、物品の微細凹凸構造側の表面に貼り付けた粘着フィルムが不用意に剥がれることがなく、意図的に粘着フィルムを剥がそうとすれば作業性よく容易に剥離でき、かつ微細凹凸構造への糊残りが極めて少ない。

本発明の積層構造体の一例を示す断面図である。

本発明の積層構造体における、微細凹凸構造を表面に有する物品の一例を示す断面図である。

本発明の積層構造体の製造装置の一例を示す構成図である。

陽極酸化アルミナを表面に有するモールドの製造工程を示す断面図である。

本明細書における「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロニトリル」は、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。 また、本明細書における「活性エネルギー線」は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。 図1〜4においては、各層を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層ごとに縮尺を異ならせてある。 また、図2〜3において、図1と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する場合がある。

<積層構造体> 図1は、本発明の積層構造体の一例を示す断面図である。積層構造体1は、微細凹凸構造16を表面に有する物品10と、物品10の微細凹凸構造16側の表面に接する粘着フィルム20とを有する。

(物品) 物品10は、図2に示すように、基材12と、基材12の表面に形成された、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、複数の凸部14が並んだ微細凹凸構造16を表面に有する硬化樹脂層18とを有する。

基材: 基材12の材料としては、光を透過するものであればよく、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラス等が挙げられる。

基材12は、射出成形法、押出成形法、キャスト成形法等の公知の成形法によって作製される。 基材12の形状は、製造する物品10に応じて適宜選択でき、物品10が反射防止フィルム等である場合には、シート状またはフィルム状が好ましい。

基材12の硬化樹脂層18が形成されない側の表面(裏面)に、粘着材層(図示略)およびセパレートフィルム(図示略)を設けてもよい。粘着材層を設けることによって、他のフィルム状やシート状の物品(前面板、偏光素子等)に容易に貼り付けることができる。 基材12の表面には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物との密着性や、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等の改良のために、各種コーティング処理、コロナ放電処理、粗面化処理等が施されていてもよい。

硬化樹脂層: 硬化樹脂層18は、微細凹凸構造16を表面に有する。硬化樹脂層18は、物品10の表面全体に形成されていてもよく、物品10の表面の一部に形成されていてもよい。 微細凹凸構造16は、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる複数の凸部14を有するものであり、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造を転写して形成される。

微細凹凸構造16としては、略円錐形状、略角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるMoth−Eye構造が好ましい。微細凹凸構造16を表面に有することによって、防汚性に優れた物品10が得られる。特に、凸部14間の平均間隔が可視光の波長以下であるMoth−Eye構造は、空気の屈折率から材料の屈折率に連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となる。

凸部14間の平均間隔は、400nm以下であり、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましい。凸部14間の平均間隔が400nm以下であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物が、疎性材料の場合は、疎水性が強く発現しやすくなり、親水性材料の場合は、親水性が強く発現しやすくなり、物品10に優れた防汚性を付与できる。特に、凸部14間の平均間隔が可視光の波長以下、すなわち400nm以下であれば、反射率が低く、かつ反射率の波長依存性が少ない物品10が得られる。

凸部14間の平均間隔は、凸部14の形成のしやすさの点から、25nm以上が好ましく、80nm以上がより好ましい。 凸部14間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する凸部14間の間隔(図2中、凸部14の中心から隣接する凸部14の中心までの距離W1)を10点測定し、これらの値を平均したものである。

凸部14の高さは、100〜400nmが好ましく、150〜300nmがより好ましい。凸部14の高さが100nm以上であれば、反射率が十分に低くなり、かつ反射率の波長依存性が少なくなる。凸部14の高さが400nm以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。 凸部14の高さは、電子顕微鏡観察によって10個の凸部14の高さ(図2中、凸部14の頭頂部から、この凸部14に隣接する凹部の底部までの垂直距離d1)を測定し、これらの値を平均したものである。

凸部14のアスペクト比(凸部14の高さ/凸部14の底面の長さ)は、1〜5が好ましく、1.2〜4がより好ましく、1.5〜3が特に好ましい。凸部14のアスペクト比が1以上であれば、反射率が十分に低くなる。凸部14のアスペクト比が5以下であれば、凸部14の耐擦傷性が良好となる。 凸部14の底面の長さは、図2中、高さ方向に凸部14を切断したときの断面における底部の長さd2である。

凸部14の形状は、高さ方向と直交する方向の凸部14の断面積が頭頂部から深さ方向に連続的に増加する形状、すなわち、凸部14の高さ方向の断面形状が、三角形、台形、釣鐘型等の形状が好ましい。

物品の用途: 物品10は、微細凹凸構造を表面に有するため、光学物品、特に反射防止フィルム、立体形状の反射防止体等の反射防止物品として好適である。

物品10が反射防止フィルムである場合には、画像表示装置(液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、陰極管表示装置等)、レンズ、ショーウィンドー、計器窓、採光部材、眼鏡レンズ、1/2波長板、ローパスフィルター等の対象物の表面に貼着して用いる。 物品10が立体形状の反射防止体である場合には、あらかじめ用途に応じた形状の透明基材を用いて反射防止体を製造しておき、これを前記対象物の表面を構成する部材として用いてもよい。 対象物が画像表示装置である場合には、その表面に限らず、その前面板に対して反射防止フィルムを貼着してよく、前面板そのものを物品10から構成してもよい。

物品10の他の用途としては、光学部材(光導波路、レリーフホログラム、偏光分離素子、水晶デバイス等)、細胞培養シート、超撥水性フィルム、超親水性フィルム等が挙げられる。

物品の他の態様: 本発明における物品は、微細凹凸構造を表面に有するものであればよく、図示例のものに限定さない。 例えば、微細凹凸構造は、図示例においては、硬化樹脂層18の表面に形成されているが、硬化樹脂層18を設けることなく基材12の表面に直接形成されていてもよい。ただし、後述するロール状のモールドを用いて効率よく微細凹凸構造を形成できる点から、硬化樹脂層18の表面に微細凹凸構造が形成されていることが好ましい。

物品の表面が、微細凹凸構造の領域(I)と、領域(I)よりも粘着フィルムとの剥離強度が高い領域(II)と、領域(II)に隣接し、かつ領域(II)よりも粘着フィルムとの剥離強度が低い領域(III)とを有していてもよい。 物品が、基材と、基材の表面の少なくとも一部が露出するように基材の表面に形成された中間層と、中間層の表面の少なくとも一部が露出するように中間層の表面に形成された、微細凹凸構造を表面に有する硬化樹脂層とを有し、前記硬化樹脂層の表面が前記領域(I)であり、前記中間層の露出した表面が前記領域(II)であり、前記基材の露出した表面が前記領域(III)であってもよい。 前記領域(III)が、前記微細凹凸構造を表面に有する物品の表面の端部に位置することが好ましい。

(粘着フィルム) 粘着フィルム20は、物品10の表面を保護するものであり、図1に示すように、物品10の微細凹凸構造16側の表面に貼り付けられる。これにより、物品10の表面が他の物体と接触することなく、微細凹凸構造16にキズが付きにくくなる。さらに、物品10と粘着フィルム20との界面にゴミ、薬剤等の不純物が侵入しにくくなり、物品10の表面に汚れ等が付着しにくくなる。

粘着フィルム20は、図1に示すように、フィルム基材22と、フィルム基材22の表面に形成された、粘着材を含む粘着材層24とを有する。

アクリル樹脂板に対する粘着フィルムの剥離力: 粘着フィルム20においては、JIS Z0237:2009に準じて前記方法:その1で測定される低速剥離力Pが0.01N/25mm以上2.5N/25mm未満であり、かつJIS Z0237:2009に準じて前記方法で測定される高速剥離力Qと低速剥離力Pとの比(高速剥離力Q/低速剥離力P)が2未満である。

低速剥離力Pが0.01N/25mm以上であれば、物品の微細凹凸構造側の表面に貼り付けた粘着フィルムが不用意に剥がれることがない。低速剥離力Pは、0.03N/25mm以上が好ましく、0.1N/25mm以上がより好ましい。

低速剥離力Pが2.5N/25mm未満であれば、物品10の微細凹凸構造16への糊残りが発生しにくく、意図的に粘着フィルムを剥がそうとすれば容易に剥離でき、物品10から粘着フィルムを剥がす際の作業性が良好である。すなわち、低速剥離力Pが2.5N/25mm以上では、剥離力が強すぎるために粘着材層24の材料強度が剥離力に耐えられず、粘着材層24の凝集破壊が起こることによって、物品10の微細凹凸構造16に粘着材層24の一部が残存し、糊残りが発生する。低速剥離力Pは、2.0N/25mm以下が好ましく、1.50N/25mm以下がより好ましく、1.0N/25mm以下が特に好ましい。

高速剥離力Q/低速剥離力Pが2未満であれば、物品10の微細凹凸構造の凹部に糊残りが発生しにくい。低速剥離力Pに比べて高速剥離力Qが小さい場合、投錨効果が発現しにくい硬い粘着材層24である。このような場合、微細凹凸構造に粘着材層24が追従しにくくなるため、凹部の底部等に粘着材が残存しない。また、特許第4499995号公報に記載のように、物品10から粘着フィルム20を高速で剥がす際の粘着力が過剰とならず、作業性も良好となる。高速剥離力Q/低速剥離力Pは、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましい。

高速剥離力Q/低速剥離力Pは、取り扱いおよび作業性の点から、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。

本発明において高速剥離力Q/低速剥離力Pを2未満とする方法としては、粘着材層24の厚さを薄くする方法、粘着材を構成するアクリル系ポリマーの組成として高ガラス転位点(Tg)のモノマーを共重合させる方法、架橋密度を高くする方法等が挙げられる。

物品の微細凹凸構造に対する粘着フィルムの剥離力: 粘着フィルム20においては、前記方法:その2で測定される前記粘着フィルムの高速剥離力Sと低速剥離力Rとの比(高速剥離力S/低速剥離力R)が2以下であることが好ましい。

高速剥離力S/低速剥離力Rが2以下であれば、物品10の微細凹凸構造の凹部に糊残りが発生しにくい。低速剥離力Rに比べて高速剥離力Sが小さい場合、投錨効果が発現しにくい硬い粘着材層24である。このような場合、微細凹凸構造に粘着材層24が追従しにくくなるため、凹部の底部等に粘着材が残存しない。また、特許第4499995号公報に記載のように、物品10から粘着フィルム20を高速で剥がす際の粘着力が過剰とならず、作業性も良好となる。高速剥離力S/低速剥離力Rは、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましい。

高速剥離力S/低速剥離力Rは、取り扱いおよび作業性の点から、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。

本発明において高速剥離力S/低速剥離力Rを2以下とする方法としては、粘着材層24の厚さを薄くする方法、粘着材を構成するアクリル系ポリマーの組成として高ガラス転位点(Tg)のモノマーを共重合させる方法、架橋密度を高くする方法等が挙げられる。

フィルム基材: フィルム基材22の材料としては、結晶性エチレン系樹脂、結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン系樹脂(プロピレンとα−オレフィンおよびまたはエチレンとのランダム共重合体、プロピレンとα−オレフィンおよびまたはエチレンとのブロック共重合体等)、他のオレフィン系樹脂(ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等)、アクリル系樹脂(ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、エチレン−エチルアクリレート共重合体等)、スチレン系樹脂(ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体等)、塩化ビニル系樹脂、フッ化ビニル系樹脂(ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等)、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等)、飽和エステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネ−ト、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、各種熱可塑性エラストマー、これらの架橋物等が挙げられる。

フィルム基材22の厚さは、粘着性等を損なわない範囲で適宜選択することができ、通常、3〜500μmであり、5〜200μmが好ましい。フィルム基材22の厚さが3μm未満であると、粘着フィルム20の製造工程でシワ等が発生しやすくなり、物品10に貼着しにくくなる場合がある。フィルム基材22の厚さが500μmを超えると、粘着フィルム20のハンドリングが困難な場合がある。

フィルム基材22には、必要に応じて、防汚処理、酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、アンカーコート処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、静電防止処理等が施されていてもよい。

粘着材層: 粘着材層24の粘着材としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体、アクリル系ポリマー等を主ポリマーとしたものが挙げられる。

粘着材の主ポリマーとしては、粘着性と剥離性のバランスを得るという点から、アクリル系ポリマーが好ましい。アクリル系ポリマーは、炭素数が1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリレート等のモノマーの1種または2種以上と、必要に応じて共重合性改質モノマーの1種または2種以上とを、溶液重合法、乳化重合法等の公知の重合法によって単独重合または共重合したものである。また、リビングラジカル重合法等によって、主ポリマーの分子量分布を狭くすることは、粘着フィルム20を剥離したときの糊残りの低減に有効である。

炭素数が1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、エチル基、メチル基等を有する(メタ)アクリル酸のエステルが挙げられる。 共重合性改質モノマーとしては、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、ビニルピロリドン、グリシジル基、ジメチルアミノエチル基またはヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルアミン、アリルアミン、エチレンイミン等が挙げられる。

アクリル系ポリマーは、そのまま粘着材の主ポリマーとして用いることもできるが、通常は粘着材の凝集力を向上させる目的で架橋剤を配合して用いる。アクリル系ポリマーの架橋構造化は、アクリル系ポリマーを合成する際に内部架橋剤として多官能(メタ)アクリレート等を添加する、またはアクリル系ポリマーを合成した後に外部架橋剤として多官能性エポキシ系化合物、多官能性イソシアネート系化合物等を添加することにより実施できる。その他、放射線照射による架橋処理を施してもよい。これらの中でも、架橋構造を形成する好ましい方法は、外部架橋剤として多官能性エポキシ化合物や多官能性イソシアネート化合物を配合する方法である。ここで多官能性とは、2官能性以上を意味する。

多官能性エポキシ化合物としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有する種々の化合物(ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノール等)が挙げられる。 多官能イソシアネート化合物としては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する種々の化合物(ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)が挙げられる。

架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマーの組成、分子量等に応じて適宜選択できる。

粘着材には、架橋剤の反応を促進させるために、粘着材に通常用いられるジブチルスズラウレート等の架橋触媒を配合してもよい。 また、粘着材には、必要に応じて、粘着性付与剤、充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤等の慣用の添加剤を配合してもよい。なお、架橋剤等の添加剤に含まれる不純物を低減することは、粘着フィルム20を剥離したときの糊残りの低減に有効である。

粘着材層24の厚さは、粘着性等を損なわない範囲で適宜選択することができ、通常は1〜100μmであり、3〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。

剥離フィルム: 粘着フィルム20には、耐防汚を目的として、粘着材層24に接する剥離フィルム(図示略)が積層されていてもよい。 剥離フィルムの材料としては、フィルム基材22の説明において先に例示した各種樹脂等が挙げられる。これらの中でも、剥離性の観点から、ポリスチレン、飽和エステル系樹脂、ポリアミドが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドがより好ましい。 剥離フィルムの剥離性を上げるため、粘着材層24に接する側の剥離フィルムの表面に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、シリコーン等による処理を施してもよい。

粘着フィルムの製造方法: 粘着フィルム20の製造方法としては、共押出成形法、ラミネ−ト成形法、流延法、塗工法等の公知の方法が挙げられる。

共押出成形法としては、Tダイ成形法、インフレ−ション成形法等の公知の方法によってフィルム基材22の材料および粘着材を溶融状態で押出し、積層した後、冷却ロ−ル等の冷却手段によって冷却する方法が挙げられる。 ラミネ−ト成形法としては、フィルム基材22をあらかじめ押出成形法によって作製しておき、フィルム基材22の表面に粘着材を溶融状態で押出し、積層した後、冷却ロ−ル等の冷却手段によって冷却する方法が挙げられる。 流延法や塗工法としては、トルエン、酢酸エチル等の有機溶媒の単独物または混合物に、主ポリマー等を溶解または分散させて固形分濃度が10〜40質量%程度の粘着材液を調製し、これを流延方式、塗工方式等の適宜な展開方式によってフィルム基材22の表面に直接付設する方法、または前記に準じ剥離フィルムの表面に粘着材層24を形成し、これをフィルム基材22の表面に移着する方法が挙げられる。

粘着フィルムの他の態様: 本発明における粘着フィルムは、少なくとも1層のフィルム基材、および少なくとも1層の粘着材層を含んでいれば、層構成または積層数は特に限定されないが、通常2〜7層程度である。 粘着フィルムの層構成の具体例としては、フィルム基材/粘着材層、フィルム基材/粘着材層/剥離フィルム、フィルム基材/粘着材層/フィルム基材/粘着材層、フィルム基材/粘着材層/フィルム基材/粘着材層/剥離フィルム等が挙げられる。

<積層構造体の製造装置> 図3は、本発明の積層構造体の製造装置の一例を示す構成図である。製造装置30は、微細凹凸構造を表面に有するロール状のモールド31と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’を収容するタンク32と、空気圧シリンダ33を備えたニップロール34と、活性エネルギー線照射装置35と、剥離ロール36と、空気圧シリンダ37を備えた一対のニップロール38とを具備する。 なお、図3に示す製造装置30は、物品10を製造した後に、連続して積層構造体1を製造する装置である。

(モールド) モールド31は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’に微細凹凸構造を転写させるモールドであり、陽極酸化アルミナを表面に有する。陽極酸化アルミナを表面に有するモールドは、大面積化が可能であり、ロール状のモールドの作製が簡便である。 陽極酸化アルミナは、アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト)であり、表面に複数の細孔(凹部)を有する。

陽極酸化アルミナを表面に有するモールドは、例えば、下記工程(a)〜(e)を経て製造できる。 (a)アルミニウム基材を電解液中、陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。 (b)酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。 (c)アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。 (d)細孔の径を拡大させる工程。 (e)前記工程(c)と工程(d)を繰り返し行う工程。

工程(a): 図4に示すように、アルミニウム基材39を陽極酸化すると、細孔40を有する酸化皮膜41が形成される。 アルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。 電解液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。

シュウ酸を電解液として用いる場合: シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。 化成電圧が30〜60Vの時、周期が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にある。 電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。

硫酸を電解液として用いる場合: 硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。 化成電圧が25〜30Vの時、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。 電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。

工程(b): 図4に示すように、酸化皮膜41を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点42にすることで細孔の規則性を向上できる。

酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。

工程(c): 図4に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム基材39を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔40を有する酸化皮膜41が形成される。 陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。

工程(d): 図4に示すように、細孔40の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。 細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。

工程(e): 図4に示すように、工程(c)の陽極酸化と、工程(d)の細孔径拡大処理とを繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔40を有する陽極酸化アルミナが形成され、陽極酸化アルミナを表面に有するモールド31が得られる。最後は工程(d)で終わることが好ましい。 繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を有する陽極酸化アルミナを用いて製造された硬化樹脂層18の反射率低減効果は不十分である。

陽極酸化アルミナの表面は、硬化樹脂層18との分離が容易になるように、離型剤で処理されていてもよい。処理方法としては、シリコーン樹脂またはフッ素含有ポリマーをコーティングする方法、フッ素含有化合物を蒸着する方法、フッ素含有シラン化合物をコーティングする方法等が挙げられる。

細孔40の形状としては、略円錐形状、角錐形状、円柱形状等が挙げられ、円錐形状、角錐形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましい。 細孔40間の平均間隔は、400nm以下であり、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましい。細孔40間の平均間隔が400nm以下であれば、反射率が低く、かつ反射率の波長依存性が少ない物品10が得られる。

細孔40間の平均間隔は、細孔40の形成のしやすさの点から、25nm以上が好ましく、80nm以上がより好ましい。 細孔40間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する細孔40間の間隔を10点測定し、これらの値を平均したものである。

細孔40の深さは、100〜400nmが好ましく、150〜300nmがより好ましい。 細孔40の深さは、電子顕微鏡観察によって10個の細孔40の深さを測定し、これらの値を平均したものである。

細孔40のアスペクト比(細孔の深さ/細孔の開口部の長さ)は、0.5〜5が好ましく、0.7〜4がより好ましく、1.0〜3が特に好ましい。 細孔40の開口部の長さは、細孔40の最深部から深さ方向に細孔を切断したときの切断面における開口の長さである。

(タンク) タンク32は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’を収容し、ロール状のモールド31と、モールド31の表面に沿って移動する帯状の基材12との間に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’を供給する。

(ニップロール) ニップロール34は、ロール状のモールド31に対向して配置される。ニップロール34は、モールド31とともに基材12および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’をニップする。 ニップ圧は、ニップロール34に備わる空気圧シリンダ33によって調整する。

(活性エネルギー線照射装置) 活性エネルギー線照射装置35は、ロール状のモールド31の下方に設置され、活性エネルギー線を照射して、基材12とモールド31との間に充填された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’を硬化させる。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’が硬化されることによって、基材12の表面にモールド31の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層18が形成される。 活性エネルギー線照射装置35としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cm2が好ましい。

(剥離ロール) 剥離ロール36は、活性エネルギー線照射装置35よりも下流側に配置され、硬化樹脂層18が表面に形成された基材12をロール状のモールド31から剥離する。

(一対のニップロール) 一対のニップロール38は、剥離ロール36の下流側に配置され、物品10に粘着フィルム20を貼り付ける。 一対のニップロール38は、外周面がゴム等の弾性部材で形成された弾性ロール38aと、外周面が金属等の剛性が高い部材で形成された剛性ロール38bとからなる。 ニップ圧は、弾性ロール38aに備わる空気圧シリンダ37によって調整する。

(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物) 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’は、分子中にラジカル重合性結合およびまたはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマーを適宜含有するものであり、非反応性のポリマーを含有するものでもよい。

ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、(メタ)アクリレート類(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、スチレン類(スチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリルアミド類((メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)等の単官能モノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等の二官能モノマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能モノマー;コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能のモノマー;二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。

ラジカル重合性結合を有するオリゴマーおよび反応性ポリマーとしては、不飽和ポリエステル類(不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等)、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独重合体または共重合体等が挙げられる。

カチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマーは、カチオン重合性の官能基を有する化合物(カチオン重合性化合物)であればよく、モノマー、オリゴマー、プレポリマーのいずれであってもよい。 カチオン重合性の官能基としては、実用性の高い官能基として、環状エーテル基(エポキシ基、オキセタニル基等)、ビニルエーテル基、カーボネート基(O−CO−O基)等が挙げられる。 カチオン重合性化合物としては、環状エーテル化合物(エポキシ化合物、オキセタン化合物等)、ビニルエーテル化合物、カーボネート系化合物(環状カーボネート化合物、ジチオカーボネート化合物等)等が挙げられる。

カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、これらの中でもエポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。 カチオン重合性結合を有するオリゴマーおよび反応性ポリマーとしては、カチオン重合型エポキシ化合物等が挙げられる。

非反応性のポリマーとしては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。

活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、通常、硬化のための重合開始剤を含む。重合開始剤としては、公知のものが挙げられる。

光反応を利用する場合、光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤が挙げられる。

ラジカル重合開始剤としては、公知の活性エネルギー線を照射して酸を発生するものであればよく、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤等が挙げられる。

アセトフェノン系光重合開始剤としては、アセトフェノン、p−(tert−ブチル)−1’,1’,1’−トリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2’,2’−ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2’−フェニルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン等が挙げられる。

ベンゾイン系光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。

ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。

チオキサントン系光重合開始剤としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等が挙げられる。

アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。

他のラジカル重合開始剤としては、α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート等が挙げられる。 ラジカル重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

カチオン重合開始剤としては、公知の活性エネルギー線を照射して酸を発生するものであればよく、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。

スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル)スルフィド−ビス(ヘキサフルオロホスフェート)、ビス(4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル)スルフィド−ビス(ヘキサフルオロアンチモネート)、4−ジ(p−トルイル)スルホニオ−4’−tert−ブチルフェニルカルボニル−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート、7−ジ(p−トルイル)スルホニオ−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロホスフェート、7−ジ(p−トルイル)スルホニオ−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。

ヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。

ホスホニウム塩としては、テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。

熱反応を利用する場合、熱重合開始剤としては、有機過酸化物(メチルエチルケトンペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert−ブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、tert−ブチルペルオキシオクトエート、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ラウロイルペルオキシド等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル等)、前記有機過酸化物にアミン(N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等)を組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。

重合開始剤の添加量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部である。重合開始剤の添加量が0.1質量部以上であれば、重合が進行しやすい。重合開始剤の添加量が10質量部以下であれば、得られる硬化物が着色したり、機械強度が低下したりすることがない。

活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、上述したもの以外に、添加剤(帯電防止剤、離型剤、防汚性を向上させるためのフッ素化合物等)、微粒子、少量の溶剤等が添加されていてもよい。

<積層構造体の製造方法> 以下、上述した製造装置30を用いて積層構造体1を製造する方法の一例を説明する。

(物品の作製) 図3に示すように、回転するロール状のモールド31の表面に沿うように帯状の基材12を搬送させ、基材12とモールド31との間に、タンク32から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’を供給する。

さらに、ロール状のモールド31と、空気圧シリンダ33によってニップ圧が調整されたニップロール34との間で、基材12および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’を、基材12とモールド31との間に均一に行き渡らせると同時に、モールド31の微細凹凸構造の細孔内に充填する。

ついで、ロール状のモールド31の下方に設置された活性エネルギー線照射装置35から、基材12を通して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’を硬化させることによって、モールド31の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層18を形成する。

ついで、剥離ロール36により、硬化樹脂層18が表面に形成された基材12をロール状のモールド31から剥離することによって、物品10を得る。 図4に示すような細孔40を転写して形成された硬化樹脂層18の表面は、いわゆるMoth−Eye構造となる。

(粘着フィルムの貼り付け) ついで、物品10を一対のニップロール38の間に通過させると同時に、粘着フィルム繰り出し機(図示略)から繰り出される粘着フィルム20を、微細凹凸構造が形成された側の表面に貼り付けるように、物品10と一対のニップロール38の間に供給する。 このとき、物品10は、物品10の裏面(微細凹凸構造が形成されていない側の面)が剛性ロール38bに接触するように、弾性ロール38aと剛性ロール38bとの間に送り込まれる。 一方、粘着フィルム20は、粘着材層24が物品10の表面(微細凹凸構造が形成された側の面)に接触し、フィルム基材22が弾性ロール38aと接触するようにして、弾性ロール38aと物品10の間に送り込まれる。

ついで、物品10の表面に粘着フィルム20の粘着材層24が接触した状態で、物品10と粘着フィルム20を弾性ロール38aと剛性ロール38bとの間で挟持し、空気圧シリンダ37によって一対のニップロール38のニップ圧を調整しながら、物品10に粘着フィルム20を貼り付ける。 こうして、図1に示すような、物品10の微細凹凸構造16側の表面に粘着フィルム20が積層した積層構造体1を得る。

物品10の表面は、粘着フィルム20を介して弾性ロール38aと接触することになるため、微細凹凸構造16が変形したり破損したりしにくい。 粘着フィルム20としては、特定の密着強度を有していれば、上述したような方法で別途作製したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。

積層構造体1は、上述したように物品10を作製した後に連続して粘着フィルム20を貼り付けて製造するのが、粘着フィルム20の貼着目的(汚れ付着の防止や微細凹凸構造の形状維持)や製造コストを考慮すると好ましいが、これに限定されず、物品10を作製した後、物品10を一旦回収し、別の製造ラインに移して粘着フィルム20を貼り付けてもよい。

<作用効果> 以上説明した本発明の積層構造体にあっては、特定の密着特性を有する粘着フィルムを用いるため、粘着フィルムが不用意に剥がれることなく容易に加工でき、意図的に粘着フィルムを剥がそうとすれば作業性よく容易に剥離でき、かつ微細凹凸構造への糊残りが極めて少ない。このような積層構造体によれば、微細凹凸構造を表面に有する物品の加工、検査、保管、展示等の際に、微細凹凸構造をキズや汚れから保護できる。

以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

(剥離力の測定方法:その1) JIS Z0237:2009に準じて、以下の方法で粘着フィルムの剥離力を測定した。

(アクリル樹脂板に対する粘着フィルムの剥離力の測定) 粘着フィルムを25mm×150mmに裁断し、アクリル樹脂板(三菱レイヨン製、アクリライトS)に2kgロールを1往復して貼り付け、23℃恒温下で30分間放置した後、引き剥がし速度0.3m/分(低速剥離力Pの測定の場合)または10m/分(高速剥離力Qの測定の場合)で粘着フィルムをアクリル樹脂板の表面に対して180°に引き剥がし、その剥離に要する力(剥離力)を測定した。

(物品の微細凹凸構造に対する粘着フィルムの剥離力の測定) 粘着フィルムを25mm×150mmに裁断し、物品の微細凹凸構造側の表面に2kgロールを1往復して貼り付け、23℃恒温下で1日間放置した後、引き剥がし速度0.3m/分で粘着フィルムを物品の表面に対して90°に引き剥がし、その剥離に要する力(低速剥離力T)を測定した。

(糊残りの評価) 積層構造体1の物品10の微細凹凸構造側の面とは反対側を、光学粘着層を介して黒色アクリル樹脂板(三菱レイヨン社製、アクリライトEX#502、50mm×60mm)に貼り付けた。7日間経過した後、微細凹凸構造側の表面に貼り付けられた粘着フィルムを剥離し、分光光度計(島津製作所社製、UV−2450)を用い、入射角:5°(5°正反射付属装置使用)、波長380〜780nmの範囲で硬化樹脂層の表面(微細凹凸構造側の面)の相対反射率を測定し、JIS R3106に準拠して視感度反射率を算出した。視感度反射率の変化=(粘着フィルムを剥離した後の物品の視感度反射率)−(粘着フィルムを貼り付けなかった物品の視感度反射率)について、以下の評価基準にて評価した。 ○:視感度反射率の変化が0.1%以下、糊残りなしと判断した。 ×:視感度反射率の変化が0.1%超、糊残りありと判断した。

(剥離力の測定方法:その2) 以下の方法で粘着フィルムの剥離力を測定した。高速剥離力S/低速剥離力Rについて、以下の評価基準にて評価した。 ○:高速剥離力S/低速剥離力Rが2以下。 ×:高速剥離力S/低速剥離力Rが2超。

(物品の微細凹凸構造に対する粘着フィルムの剥離力の測定) 粘着フィルムを25mm×150mmに裁断し、物品の微細凹凸構造側の表面に2kgロールを1往復して貼り付け、23℃恒温下で30分間放置した後、引き剥がし速度0.3m/分(低速剥離力Rの測定の場合)または10m/分(高速剥離力Sの測定の場合)で粘着フィルムを物品の表面に対して180°に引き剥がし、その剥離に要する力(剥離力)を測定した。

(モールドの作製) 純度99.90%のアルミニウムインゴットに鍛造処理を施して、直径200mm、内径155mm、厚さ350mmに切断した圧延痕のない円筒状アルミニウム基材に羽布研磨処理を施した後、これを過塩素酸、エタノール混合溶液中(体積比1:4)で電解研磨し鏡面化した。

工程(a): 表面が鏡面化されたアルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、浴温16℃において直流40Vの条件下で30分間陽極酸化を行い、厚さ3μmの酸化皮膜を形成した。 工程(b): 形成された酸化皮膜を、6質量%のリン酸と1.8質量%のクロム酸の混合水溶液中で一旦溶解除去した。 工程(c): 再び工程(a)と同一条件下において、30秒間陽極酸化を行い、酸化皮膜を形成した。

工程(d): 5質量%リン酸水溶液(30℃)中に8分間浸漬して、酸化皮膜の細孔を拡径する孔径拡大処理を施した。 工程(e): 工程(c)と工程(d)を合計で5回繰り返し、最後に水洗して、細孔の開口部の長さ:100nm、深さ:230nmの略円錐形状のテーパー状細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状のモールドを得た。

離型剤(ダイキン工業社製、オプツールDSX)の0.1質量%溶液にモールドを10分間ディッピングし、24時間風乾することによって、酸化皮膜の表面の離型処理を行った。

(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A) 無水コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合エステル(モル比1:2:4):45質量部、 1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:45質量部、 X−22−1602(信越化学工業社製、ラジカル重合性シリコーンオイル):10質量部、 イルガキュア184(チバ・スペシャリティケミカルズ社製):3.0質量部、 イルガキュア819(チバ・スペシャリティケミカルズ社製):0.2質量部。

(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物B) 無水コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合エステル(モル比1:2:4):75質量部、 アロニックスM260(東亞合成社製):20質量部、 アクリル酸メチル:5質量部、 イルガキュア184(チバ・スペシャリティケミカルズ社製):1.0質量部、 イルガキュア819(チバ・スペシャリティケミカルズ社製):0.3質量部。

(実施例1) 粘着フィルムの作製: Tダイ成形法で製膜され、片面がコロナ処理された厚さ40μmのポリプロピレン(フィルム基材)のコロナ処理面に、アクリル系ポリマーおよび架橋剤を溶解させた粘着材溶液を、直接付設する塗工法によって乾燥後の粘着材層の厚さが5μmとなるように塗工し、乾燥した後、粘着材層を内側にロール状に巻き取り、エージング処理を行い、アクリル樹脂板に対する低速剥離力P:0.2N/25mm、高速剥離力Q:0.1N/25mmの粘着フィルムA(大王加工紙工業社製、FM−325)を作製した。

積層構造体の製造: ロール状のモールドを、図3に示す製造装置30に設置し、以下のようにして物品10を作製し、連続して積層構造体1を製造した。 まず、図3に示すように、ロール状のモールド31を、冷却水用の流路を内部に設けた機械構造用炭素鋼製の軸芯にはめ込んだ。ついで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’(前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物AまたはB)をタンク32から室温で供給ノズルを介して、ニップロール34とロール状モールド31の間にニップされている基材12(三菱レイヨン社製のアクリルフィルム、アクリプレン、フィルム幅340mm、長さ400m)の表面に供給した。この際、空気圧シリンダ33によりニップ圧が調整されたニップロール34によりニップされ、モールド31の細孔内にも活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’が充填された。

ついで、毎分7.0mの速度でロール状のモールド31を回転させながら、モールド31と基材12の間に挟まれた状態で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’に、240W/cmの紫外線照射装置45から紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物18’を硬化して硬化樹脂層18とした後、剥離ロール36によってモールド31から剥離して、図2に示すような、微細凹凸構造16を表面に有する物品10を得た。 物品10の表面をSEMで観察したところ、硬化樹脂層18には底面の長さ:100nm、高さ:210nmの凸部14が形成され、ロール状のモールド31の微細凹凸構造が良好に転写された微細凹凸構造16が形成されていた。

ついで、物品10の裏面(微細凹凸構造16が形成されていない側の面)が剛性ロール38bに接触するように、物品10を弾性ロール38aと剛性ロール38bの間に送り込んだ。 一方、アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.2N/25mmかつ高速剥離力Qが0.1N/25mmである粘着フィルムA(大王加工紙工業社製、FM−325)の粘着面(粘着材層)が、物品10の表面(微細凹凸構造16が形成された側の面)に接触するようにして、粘着フィルム20を弾性ロール38aと物品10の間に送り込んだ。 そして、空気圧シリンダ37によって一対のニップロール38のニップ圧を0.1MPa〜0.5MPaに調整しながら、物品10の表面に粘着フィルム20を貼り付け、図1に示すような積層構造体1を得た。評価結果を表1に示す。

(実施例2) アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.8N/25mmかつ高速剥離力Qが0.25N/25mmである粘着フィルムB(大王加工紙工業社製、S−7)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表1に示す。

(実施例3) アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが1.0N/25mmかつ高速剥離力Qが0.3N/25mmである粘着フィルムC(大王加工紙工業社製、FM−355)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表1に示す。

(実施例4) フィルム基材の材料が低密度ポリエチレンであり、アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.8N/25mmかつ高速剥離力Qが0.3N/25mmである粘着フィルムD(大王加工紙工業社製、FM−125)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表1に示す。

(実施例5) フィルム基材の材料がポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)であり、アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.3N/25mmかつ高速剥離力Qが0.25N/25mmである粘着フィルムP(サンエー化研社製、SAT HC1138T(5)−J)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表1に示す。

(実施例6) フィルム基材の材料がPETであり、アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.4N/25mmかつ高速剥離力Qが0.4N/25mmである粘着フィルムQ(サンエー化研社製、SAT HC1138T(10)−J)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表2に示す。

(比較例1) アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが2.5N/25mmかつ高速剥離力Qが1.0N/25mmである粘着フィルムE(大王加工紙工業社製、FM−358)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表2に示す。

(比較例2) アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.1N/25mmかつ高速剥離力Qが0.2N/25mmである粘着フィルムF(大王加工紙工業社製、FM−315)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表2に示す。

(比較例3) アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.18N/25mmかつ高速剥離力Qが0.8N/25mmである粘着フィルムG(大王加工紙工業社製、FM−330)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表2に示す。

(比較例4) アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.9N/25mmかつ高速剥離力Qが3.8N/25mmである粘着フィルムH(大王加工紙工業社製、FM−340)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表2に示す。

(比較例5) アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.25N/25mmかつ高速剥離力Qが0.55N/25mmである粘着フィルムI(大王加工紙工業社製、FM−115)を用いた以外は、実施例4と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表3に示す。

(比較例6) アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.35N/25mmかつ高速剥離力Qが1.85N/25mmである粘着フィルムJ(大王加工紙工業社製、FM−830)を用いた以外は、実施例4と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表3に示す。

(比較例7) アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが1.05N/25mmかつ高速剥離力Qが4.0N/25mmである粘着フィルムK(大王加工紙工業社製、FM−840)を用いた以外は、実施例4と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表3に示す。

(比較例8) アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが2.5N/25mmかつ高速剥離力Qが0.9N/25mmである粘着フィルムL(大王加工紙工業社製、FM−875)を用いた以外は、実施例4と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表3に示す。

(比較例9) フィルム基材の材料がPETであり、アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.15N/25mmかつ高速剥離力Qが1.5N/25mmである粘着フィルムR(サンエー化研社製、SAT HC2025P)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表3に示す。

(比較例10) フィルム基材の材料がPETであり、かつ粘着材の材料がオレフィン系であり、アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.11N/25mmかつ高速剥離力Qが0.41N/25mmである粘着フィルムS(パナック社製、GP50T−A75)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表4に示す。

(比較例11) フィルム基材の材料がPETであり、かつ粘着材の材料がブチルアクリレートを主成分とするアクリル系であり、アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが0.34N/25mmかつ高速剥離力Qが0.89N/25mmである粘着フィルムTを用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を製造し、評価した。結果を表4に示す。

表1〜2から明らかなように、アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが2.5N/25mm未満であり、かつ高速剥離力Q/低速剥離力Pが2未満である粘着フィルムを用いた実施例1〜6の場合、微細凹凸構造に対する粘着フィルムの高速剥離力S/低速剥離力Rが2以下であり、剥離作業性が良好であるとともに、粘着フィルムの剥離後の視感度反射率の変化が十分小さく、低反射特性を維持していた。

一方、表2〜4から明らかなように、アクリル樹脂板に対する低速剥離力Pが2.5N/25mm以上である、およびまたは高速剥離力Q/低速剥離力Pが2以上である粘着フィルムを用いた比較例1〜11の場合、粘着フィルムの剥離後の視感度反射率の変化が大きく、低反射特性を維持できなかった。あるいは、微細凹凸構造に対する粘着フィルムの高速剥離力S/低速剥離力Rが2を超えてしまい、剥離作業性が劣っていた。

本発明の積層構造体は、加工工程の間や出荷後から使用までの間、キズや汚れの付着から微細凹凸構造を保護された、光学物品、特に反射防止フィルム等の反射防止物品として有用である。

1 積層構造体 10 物品 14 凸部 16 微細凹凸構造 20 粘着フィルム 40 細孔 41 酸化皮膜

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