転写材、記録物、それらの製造装置および製造方法

申请号 JP2015239756 申请日 2015-12-08 公开(公告)号 JP6366564B2 公开(公告)日 2018-08-01
申请人 キヤノンファインテックニスカ株式会社; 发明人 澄川 裕輔; 筒井 喬紘; 平林 弘光;
摘要
权利要求

基材シート、保護シート、および色材受容層が、この順に積層された転写材であって、 前記保護シートは、前記色材受容層内の分を外部に放出可能な通路を含み、 前記通路は、穿孔された細孔によって形成され、 前記細孔の平均径は、0.001〜0.8000μmであることを特徴とする転写材。前記保護シートの透湿度は5g/m2・h以上であることを特徴とする請求項1に記載の転写材。前記保護シートの厚みAと、前記色材受容層の厚みBと、の比率(A/B)が式(1)の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の転写材。 0.07≦(A/B)≦3.00 ・・・ (1)前記保護シートは、アクリル系および/またはウレタン系の樹脂を主成分として形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の転写材。前記色材受容層は水溶性樹脂を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の転写材。画像支持体、画像が記録された色材受容層、および保護シートが、順次積層された記録物であって、 前記保護シートは、前記色材受容層内の水分を外部に放出可能な通路を含み、 前記通路は、穿孔された細孔によって形成され、 前記細孔の平均径は、0.001〜0.8000μmであることを特徴とする記録物。画像支持体、画像が記録された色材受容層、および保護シートが、順次積層された記録物の製造方法であって、 請求項1から5のいずれか1項に記載の転写材の色材受容層にインクジェット記録により画像を記録する工程1と、 前記転写材の前記色材受容層を前記画像支持体に加熱圧着する工程2と、 前記転写材から前記基材シートを剥離する工程3と、を含むことを特徴とする記録物の製造方法。画像支持体、画像が記録された色材受容層、および保護シートが、順次積層された記録物の製造方法であって、 基材シート、前記色材受容層内の水分を外部に放出可能な通路を有さない保護シート、および色材受容層が、この順に積層された転写材の前記色材受容層にインクジェット記録により画像を記録する工程1と、 前記転写材の前記色材受容層を前記画像支持体に加熱圧着する工程2と、 前記転写材から前記基材シートを剥離する工程3と、 前記工程1から3のいずれかの工程の後に、前記保護シートに細孔を穿孔して、前記色材受容層内の水分を外部に放出可能な通路を形成する工程4と、 を含むことを特徴とする記録物の製造方法。画像支持体、画像が記録された色材受容層、および保護シートが積層された記録物の製造装置であって、 基材シート、前記色材受容層内の水分を外部に放出可能な通路を有さない保護シート、および色材受容層が、順次積層された転写材の色材受容層にインクジエットにより画像を記録する記録部と、 前記画像が記録された転写材を画像支持体に加熱圧着させる加熱圧着部と、 前記転写材から前記基材シートを剥離する剥離部と、 前記保護シートに細孔を穿孔して、前記色材受容層内の水分を外部に放出可能な通路を形成する穿孔部と、 を含むことを特徴とする記録物の製造装置。

说明书全文

本発明は、画像が記録される転写材、転写材に記録された画像が転写される記録物、それらの製造装置および製造方法に関するものである。

特許文献1,2には、インクジェット方式によって記録した画像を記録物(被転写材)に転写する技術が提案されている。例えば、転写材の色材受容層にインクジェット方式によって画像を記録し、この転写材と記録物とを重ね合わせて加熱することにより、画像が記録された色材受容層を記録物に転写する。また、本発明者らも、インクジェット方式によって画像が形成される転写材の色材受容層に対して、その色材受容層の無機微粒子および溶性樹脂の分子量を制御する技術を提案している(特許文献3)。

特表2006−517871号公報

特開平8−207450号公報

特開2015−110321号公報

インクジェット方式においては、十分な画像濃度を実現するために、多量のインクを転写材の色材受容層に吸収させる必要があり、そのため色材受容層および転写材自体が厚くなる。一方、クレジットカード等の記録物においては強固な耐久性が要求され、例えば、長時間の水による浸積試験によっても変化しない耐久性が求められる。しかしながら、表面が透明シート(保護シート)によって覆われる色材受容層が転写された記録物を長時間水に漬けた場合には、色材受容層の端部が表面に露出しているため、色材受容層は、その端部から水分を大量に吸収する。そのため、その後の乾燥の過程において、透明シートの表面全体にひび割れやクラックが発生するおそれがある。このような現象は、色材受容層にインクを付与して画像を記録するインクジェット方式等において特有のものであり、水を吸収する色材受容層を必要としない熱転写方式においては発生しない。すなわち、熱転写方式においては、サーマルヘッドなどによって転写層を加熱して画像を形成してから、その転写層を被転写材に転写するため、水を吸収する色材受容層を必要としない。

特許文献1,2,3には、このような水を吸収する色材受容層の耐水性に関しての記載がない。特許文献3においては、透明シート(保護シート)に耐候性を持たせるために、それを厚くして強度を高めている。そのため、色材受容層の耐水性に影響するひび割れやクラックの発生を抑える効果はあるものの、クレジットカード等の記録物において要求される高い耐水性を実現することは難しい。

本発明の目的は、記録物の耐水性の向上を達成することが可能な転写材、記録物、それらの製造装置および製造方法を提供することにある。

本発明の転写材は、基材シート、保護シート、および色材受容層が、この順に積層された転写材であって、前記保護シートは、前記色材受容層内の水分を外部に放出可能な通路を含み、前記通路は、穿孔された細孔によって形成され、前記細孔の平均径は、0.001〜0.8000μmであることを特徴とする。

本発明によれば、保護シートを通して色材受容層内の水分を外部に放出することにより、耐水性の優れた記録物を提供することができる。

転写材の断面図である。

転写材に記録される画像の説明図である。

膨潤吸収型の色材受容層とインクとの関係の説明図である。

転写工程における位置合わせの説明図である。

転写材の他の例を説明するための断面図である。

記録物の製造段階の説明図である。

基材シートの剥離工程を説明するための断面図である。

両面に転写体が貼付された画像支持体の説明図である。

記録物の第1の製造装置の説明図である。

記録物の製造装置における制御系の構成を説明するためのブロック図である。

図10における記録部の制御系の構成を説明するためのブロック図である。

製造装置の動作を説明するためのフローチャートである。

記録物の第2の製造装置の説明図である。

転写材に画像を記録するプリンタの説明図である。

図16のプリンタと転写材との関係の説明図である。

転写材を画像支持体に加熱圧着する転写部の説明図である。

記録物の第6の製造装置におけるプリンタ部と、転写材と、関係の説明図である。

記録物の第7の製造装置におけるプリンタ部の説明図である。

記録物の第7の製造装置における転写部の説明図である。

記録物の第8の製造装置の説明図である。

記録物の第9の製造装置におけるプリンタ部の説明図である。

異なる構成例の転写材の断面図である。

記録物の製造方法の説明図である。

記録物の製造方法の他の例の説明図である。

記録物の製造方法のさらに他の例の説明図である。

記録物の製造方法のさらに他の例の説明図である。

穿孔加工部を含む記録装置の説明図である。

記録物の第2の製造装置の説明図である。

記録物の第3の製造装置の説明図である。

記録物の第4の製造装置の説明図である。

記録物の第5の製造装置の説明図である。

透明シートの浸漬耐水試験におけるひび割れの発生メカニズムの説明図である。

異なる構成例の記録物の断面図である。

浸漬耐水試験後における記録物の断面図である。

透明シートの表面に汚染水が付着した状態を説明するための断面図である。

発泡による細孔の形成方法の異なる例の説明図である。

多孔質粒子による細孔の形成方法の異なる例の説明図である。

中空粒子による細孔の形成方法の異なる例の説明図である。

透明シートに対する穿孔加工の異なる例の説明図である。

透明シートに対する穿孔加工の他の異なる例の説明図である。

透明シートに対する穿孔加工のさらに他の異なる例の説明図である。

透明シートに対する穿孔加工のさらに他の異なる例の説明図である。

延伸加工装置の説明図である。

クレイズ加工装置の説明図である。

クレイズ加工による細孔の形成方法の異なる例の説明図である。

穿孔処理方法の異なる例の説明図である。

記録物の製造方法のさらに他の例の説明図である。

記録物の製造方法のさらに他の例の説明図である。

記録物の製造方法のさらに他の例の説明図である。

記録物の第6の製造装置における細孔の形成方法の異なる例の説明図である。

記録物の第6の製造装置における転写部の異なる例の説明図である。

記録物の第7の製造装置における細孔の形成方法の異なる例の説明図である。

記録物の第7の製造装置における転写部の異なる例の説明図である。

記録物の第8の製造装置における細孔の形成方法の異なる例の説明図である。

記録物の第9の製造装置における細孔の形成方法の異なる例の説明図である。

記録物の第6の製造装置における細孔の形成方法の異なる例の説明図である。

独立した穿孔加工部の構成例の説明図である。

独立した穿孔加工部の他の構成例の説明図である。

第2の発明における記録物を長時間水に浸漬させた後の断面図である。

第2の発明における記録物の断面である。

複数層の透明シートを含む記録物の異なる例の説明図である。

複数層の透明シートを含む転写材の異なる例の説明図である。

記録物に汚染水が付着した状態の説明図である。

記録物に汚染水が付着した状態の他の例の説明図である。

記録装置の構成例の説明図である。

プライマー層を備えた転写材の異なる例を説明するための断面図である。

基材シートを剥離する工程を説明するための斜視図である。

第2の発明における転写材の断面図である。

第2の発明における記録物の断面図である。

第2の発明における記録物の製造方法の異なる例の説明図である。

本発明の転写材を画像支持体に加熱圧着した状態を示す説明図である。

以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されず、その発明特定事項を有する全ての対象を含むものである。なお、同一構造の部材については図面において同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。

本発明者等は、上述の課題について鋭意検討を行った結果、インクジェット記録物を水に長時間浸漬したときに発生する透明シート(保護シート)のひび割れを防ぐことが可能なインクジェット記録物等を実現することができた。まず始めに、従来のインクジェット記録物において、浸漬耐水後に透明シートのひび割れが発生するメカニズムについて図を用いて説明する。

図32は、浸漬耐水試験前の従来の一般的なインクジェット記録物を示す断面図である。このインクジェット記録物は、透明シート52、色材受容層53、および画像支持体55が順次積層された構造である。色材受容層53の表面は、水不溶性樹脂からなる透明シート52によって覆われているため水分を吸収できない。しかし、色材受容層53の端部517は外部に露出しているため、インクジェット記録物を水に浸漬したときに、その端部517から水分を大量に吸収してしまう。

図32は、インクジェット記録物を長時間水に浸漬させた後、水から取り出したときの変化を示す。色材受容層53は、その端部517から水を大量に吸収すると大きく膨張する。部分519は、膨張した部分である。なお、色材受容層53単独では、48時間の浸漬により約1.5倍程度膨張する場合がある。次に、インクジェット記録物を水から出すと色材受容層53中の水分の蒸発が始まる。このとき、色材受容層53の表面は透明シート52で覆われているため、その表面からは水分が蒸発せず、外部に露出している端部517からのみ水分が蒸発する。そのため、水分が蒸発した色材受容層53は、吸水時に膨張した部分519が部分520のように収縮する。色材受容層53は、その端部517から収縮が始まるため、図中の矢印Eのように、収縮時の応が透明シート52の中央部518に集中する。そのため、透明シート52の部分518にひび割れが生じ、場合によっては、その部分518の一部が破断して、その表面にクラックが発生するおそれもある。

すなわち、一旦全面に亘って吸水膨張した色材受容層は、その端部から順次乾燥収縮して柔軟性を失い、画像支持体に固定されてゆく。これにより、未だ吸水膨潤している色材受容層の中心側に歪みが徐々に蓄積されつつ、乾燥収縮が徐々に色材受容層の中心部へ進行する。このように、遅れて乾燥収縮する色材受容層と透明シートの部分に、順次蓄積されてきた歪みが集中して、収縮時の応力に耐え切れなくなった透明シートの部分に、ひび割れやクラックが生ずるものと考えられる。

上述のように、透明シートのひび割れの原因は、色材受容層からの水分蒸発が端部からのみしか行われず、その収縮の応力が透明シートの特定の1箇所または特定の複数箇所に集中にことにある。本発明は、このような点に着目し、色材受容層への水分の吸収および蒸発に伴って生じる透明シートの応力を分散する構成を確立した。すなわち本発明では、記録物(被転写材)の表面となる透明シートに、その表面を通して水分を排出する通路を設けることにより、色材受容層が吸収した不要な水分を透明シートの表層面全体から暫時蒸発可能とする。このようにして、吸水伸張した色材受容層が暫時乾燥する過程において、透明シートへの応力集中を分散させることにより、浸漬耐水試験における透明シートのひび割れを解消させることができた。

(第1の発明) 以下、第1の発明について説明する。

透明シートは、記録物の表面を保護する保護シートとしての機能するものであり、第1の発明においては、記録物の表面となる透明シートに、色材受容層にまで貫通する細孔を設けている。図33(a)から(f)は、記録物の支持体55に、本発明の転写材の色材受容層53と透明シート52を転写して作成した記録物を示す。色材受容層53には、後述するように反転画像72が記録されている。本発明における透明シート52は細孔52Aを有するため、色材受容層53に吸収された水分が透明シート52の細孔52Aを通して、透明シート52の表面521,553,554,555から蒸発させることができる。記録物は、図33(a)のように少なくとも透明シート52に細孔52Aが形成されていればよく、図33(b),(c)のように色材受容層53にも細孔53Aを形成されてもよい。また図33(d)から(f)のように、透明シート52に多数の空隙を形成して、それらが透明シート52を貫通する細孔52Aを形成するように連なる連泡構造553,554,555としてもよい。これらの細孔について後述する。透明シート52の細孔52Aは、透明シート52が水分透過性もしくは透湿性を発現できるように構成されている。すなわち、その細孔52Aは、透明シート52に接触した水が液体の状態もしくは気体の状態で透明シート52を通過させる性質を持つ。

図34(a)は、図33の記録物を長時間水に浸漬させた後、水から取り出した状態を示す。本発明の記録物73は水から取り出すと、色材受容層53に吸収された水分は、色材受容層53の端部517からだけでなく、透明シート52の表面521からも蒸発する。このように、透明シートの表面からも色材受容層の水分を蒸発させることにより、色材受容層の収縮時の応力は、矢印Cのように透明シートの表面全体に広く分散され、この結果、透明シートのひび割れを防ぐことができる。

本実施形態における記録物は、図23から図26および図47,図48,図49に示すように、まず、転写材の色材受容層53に、インクジェット方式の記録ヘッド607によって反転画像72を記録する(工程1)。次に、ヒートローラ21を用いて、転写材と画像支持体55とを加熱圧着して、画像支持体55に転写材を転写させる(工程2)。最後に、剥離ロール88を用いて転写材の基材シート50を剥離することにより(工程3)、画像が記録された色材受容層、および保護シートが積層された記録物を得る。記録物の表面となる透明シート52は、細孔52Aを有する。

[1]転写材 本実施形態の転写材は、上述のように、基材シート、透明シート、および色材受容層がこの順で積層された積層構造を有するインクジェット記録用の転写材であって、透明シートが水分を系外に放出可能である。より好ましくは、転写材は、その色材受容層が少なくとも水溶性樹脂を含有し、その透明シートは、その細孔構造により少なくとも水分透過性または透湿性を有することを特徴とする。さらに好ましくは、透明シートは透湿性かつ水分透過性であることを特徴とする。図22(a)から(h)は、転写材の異なる構成例の断面図である。転写材1は、基材シート50、透明シート52、および色材受容層53がこの順で積層された積層構造を有する。図22(a)から(e)の色材受容層53は少なくとも水分を吸収できる水溶性樹脂を含有し、少なくとも透明シート52には細孔52Aが形成されており、その細孔52Aは、基材シート50と色材受容層53との間を連通する。

図22(a)の転写材1は、透明シート52のみに細孔52Aが形成され、図22(b)の転写材1は、透明シート52に細孔52Aが形成され、かつ色材受容層53にも細孔53Aが形成されている。図22(c)の転写材1は、透明シート52に細孔52Aが形成され、かつ基材シート50にも細孔50Aが形成されている。図22(d),(e)の転写材1は、透明シート52,色材受容層53,基材シート50のそれぞれに細孔52A,53A,50Aが形成されている。また、図22(f)から(h)の透明シート52は、透明シート52内に、その両面の間を貫通するように連なる多数の空隙が形成されている。これらの空隙は、透明シート52を貫通する細孔52Aを形成するように連なる連泡構造553,554,555を成す。

このような転写材1は、色材受容層53に画像が記録された後、図33のように記録物の画像支持体55に、色材受容層53が透明シート52と共に転写される。したがって転写材1は、記録物に転写される色材受容層53と透明シート52とを含む中間シートとして機能する。図33(a)は、図22(c)の転写材1を用いて作成されて記録物、図33(b)は、図22(c)または(d)の転写材1を用いて作成されて記録物の断面図である。図33(c)は、図22(b)または(e)の転写材1を用いて作成されて記録物の断面図である。図図33(d),(e),(f)は、それぞれ図22(f),(g),(h)の転写材1を用いて作成されて記録物の断面図である。転写材1は、図1(b)のように、その透明シート52に予め細孔52Aが形成されていないものを用いることもできる。この場合には、工程1〜3のいずれかの工程の前後に、透明シート52に細孔52Aを形成すればよい。

[1−1]色材受容層 色材受容層は、インクジェット記録方式によるインクを受容する層であり、少なくとも水溶性樹脂を含有する。色材受容層としては、水溶性樹脂を主体として、水溶性高分子の網目構造中にインクを受容する膨潤吸収型と、水溶性樹脂と少なくとも無機微粒子とを含有して、微細な空隙構造にインクを受容する空隙吸収型と、の色材受容層のどちらも使用できる。

色材受容層53を、水溶性樹脂を主体とした膨潤吸収型の色材受容層とした場合には、水の吸収速度が遅いため、記録物を水に浸漬させた場合でも、短期間であれば透明シート(52)のひび割れは生じにくい。このような色材受容層53が転写された記録物は、耐水性の観点ではやや有利であるものの、色材受容層53におけるインクの吸収速度も遅くなる。そのため、膨潤吸収型の色材受容層は、制限された条件下では十分に機能するものの、画像の記録速度が制限されて高速記録には適さない場合もある。また、膨潤吸収型の色材受容層の場合は、インク中の水分により色材受容層が膨潤して、色材受容層の表面に凹凸が発生するため、画像支持体に対する色材受容層の接着性を低下させるおそれがある。

一方、空隙型の色材受容層は、水溶性樹脂と、少なくとも無機微粒子と、を含有する組成物から構成されている。色材受容層53を空隙吸収型にした場合には、記録物を水に浸漬させると、上述したように記録物の端部の色材受容層から水がより浸入しやすくなり、耐水性に問題が生じて透明シートのひび割れやクラックが発生しやすくなる。しかし、本発明においては、透明シートに細孔を設けることにより、色材転写層が万一多量の水分を吸収した場合でも、応力集中による透明シートのひび割れやクラックは発生しにくい構成としている。また、空隙吸収型の色材受容層は、無機微粒子によって形成される空隙がインクを速やかに吸収することができるため、高速のインクジェット記録が可能となる。また、空隙吸収型の色材受容層は、膨潤型の色材受容層とは異なり、色材受容層が膨潤することなく平滑に保たれる。特に顔料インクを用いた場合は、顔料インク中の顔料成分は色材受容層の表面で定着し、一方、インク中の水分及び溶媒成分は、色材受容層の内部まで浸透して、顔料成分と分離(固液分離)する。そのため、転写時には色材受容層の表面が乾燥した状態になる。無機微粒子により形成される空隙によって、色材受容層の表面が乾燥した状態になるため、転写材を記録物の画像支持体に加熱圧着させる際に、インク中の水分または溶媒が急激に突沸することが抑制される。この結果、転写材と記録物の支持体とが十分に密着しない密着性不良、および転写材と記録物の画像支持体との間に気泡が残る気泡残りの発生を抑制することができる。

また、色材受容層が無機微粒子を含有することにより、転写後に転写材の基材シートを剥離する際に、色材受容層の無機微粒子の隙間にクラックが入りやすくなって、記録物の端部にバリが残らないようにすることができる。そこで、色材受容層53は空隙吸収型の色材受容層とすることが好ましい。すなわち、本発明によれば、耐水性を損なうことなく、空隙吸収型の色材転写層を利用した画像の高速記録が可能となる。

[1−1−1]無機微粒子 無機微粒子は、無機材料からなる微粒子である。無機微粒子は色材受容層に色材を受容する空隙を形成する機能を有する。

無機微粒子を構成する無機材料の種類としては特に制限はない。ただし、インク吸収能が高く、発色性に優れ、高品位の画像が形成可能な無機材料であることが好ましい。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ケイソウ土、アルミナ、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物、リトポン(硫酸バリウムと硫化亜鉛の混合物)、ゼオライト等を挙げることができる。

これらの無機材料からなる無機微粒子の中でも、アルミナ及びアルミナ水和物からなる群より選択される少なくとも1種の物質からなるアルミナ微粒子が好ましい。アルミナ水和物としては、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物等を挙げることができる。アルミナ、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物は、色材受容層の透明性及び画像の記録濃度を向上させることができる点において好ましい。

ベーマイト構造のアルミナ水和物は、長鎖のアルミニウムアルコキシドに対して酸を添加して加水分解・解膠を行うことによって得ることができる(特開昭56−120508号公報参照)。解膠には有機酸、無機酸のいずれを用いてもよい。ただし、硝酸を用いることが好ましい。硝酸を用いることにより、加水分解の反応効率を向上させることができ、形状が制御されたアルミナ水和物を得ることができ、分散性が良好な分散液を得ることができる。

無機微粒子は、平均粒子径を精密に制御することが好ましく、その平均粒子径が120〜200nmであることが好ましい。平均粒子径を、好ましくは120nm以上、さらに好ましくは140nm以上とすることにより、色材受容層のインク吸収性を向上させて、記録後の画像におけるインクの滲みやビーディングを抑制することができる。一方、平均粒子径を、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは170nm以下とすることにより、無機微粒子による光散乱を抑制して、色材受容層の透明性を向上させることができる。また、色材受容層の単位面積当たりの無機微粒子数を増加させることができるため、インク吸収性を向上させることができる。従って、画像の記録濃度を向上させることができ、記録後の画像のくすみを抑制することができる。これにより、色材受容層の透明性(透過性)、および透明シートの側からの画像の視認性を向上させることができる。色材として、色材受容層に浸透しにくい顔料インクを使用した場合においても、インクの付与密度が高まり、多量のインクを受容させるために、色材受容層の厚さを増大させる必要がない。このため、転写材延いては記録物の全体を薄厚化することができる。

無機微粒子は、公知の無機微粒子をそのまま用いてもよいし、粉砕分散機等を用いて公知の無機微粒子の平均粒子径、多分散指数を調整したものを用いてもよい。粉砕分散機の種類としては特に制限はない。例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(サンドミル、ボールミル)、連続式高速撹拌型分散機、超音波分散機等の従来公知の粉砕分散機を用いることができる。

粉砕分散機をより具体的に例示すると、以下全て商品名で、マントンゴーリンホモジナイザー、ソノレータ(以上、同栄商事製);マイクロフルイタイザー(みずほ工業製);ナノマイザー(月島機械製);アルティマイザー(伊藤忠産機製);パールミル、グレンミル、トルネード(以上、浅田鉄鋼製);ビスコミル(アイメックス製);マイティーミル、RSミル、SΓミル(以上、井上製作所製);荏原マイルダー(荏原製作所製);ファインフローミル、キャビトロン(以上、太平洋機工製);等を挙げることができる。

また、無機微粒子は、平均粒子径の範囲を満たし、かつ、多分散指数(μ/<Γ>2)が0.01〜0.20であることが好ましく、0.01〜0.18とすることがさらに好ましい。上述の範囲に設定することで粒子の大きさを一定に保つことが可能になるため、色材受容層の光沢性及び透明性を向上させることができる。従って、画像の記録濃度を向上させることができ、記録後の画像のくすみを抑制することができる。

なお、本明細書にいう平均粒子径及び多分散指数は動的光散乱法によって測定された値を、「高分子の構造(2)散乱実験と形態観察 第1章 光散乱」(共立出版 高分子学会編)、又はJ.Chem.Phys.,70(B),15 Apl.,3965(1979)に記載のキュムラント法によって解析することにより求めることができる。動的光散乱の理論によれば、異なる粒径を持つ微粒子が混在している場合、散乱光からの時間相関関数の減衰に分布を有する。この時間相関関数をキュムラント法により解析することにより、減衰速度の平均(<Γ>)と分散(μ)が求まる。減衰速度(Γ)は粒子の拡散係数と散乱ベクトルの関数で表わされるため、ストークス−アインシュタイン式を用いて、流体力学的平均粒径を求めることができる。従って、減衰速度の分散(μ)を平均の二乗(<Γ>2)で除した多分散指数(μ/<Γ>2)は、粒径の散らばりの度合いを表わしており、値が0に近づく程、粒径の分布は狭くなることを意味する。本実施の形態で定義される平均粒子径及び多分散指数は、例えば、レーザ粒径解析装置PARIII(大塚電子製)等を用いて容易に測定することができる。

無機微粒子は1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。「2種以上」とは、材質自体が異なるものの他、平均粒子径、多分散指数等の特性が異なるものも含まれる。

[1−1−2]水溶性樹脂 水溶性樹脂は、25℃において、水と十分に混和するか、水に対する溶解度が1(g/100g)以上の樹脂である。膨潤型色材受容層の場合、水溶性樹脂は、水溶性高分子の網目構造中にインクを受容する層として作用する。また、空隙吸収型の場合、水溶性樹脂は、無機微粒子を結着するバインダーとして機能する。

水溶性樹脂としては、下式(1)を満たすものであれば、特に制限はない。|ΔSP|が0.6以上になると水溶性樹脂と後述するエマルジョンE1の分子間力が弱くなり、色材受容層と透明シートの密着性が低下して、テープ剥離等の試験において透明シートと色材受容層との間で剥がれが生じるため好ましくない。|ΔSP|を下式(1)の範囲にすることにより、水溶性樹脂とエマルジョンE1の分子間力によって強力に接着して、透明シートと色材受容層の密着性を向上させることができる。 0≦ΔSP≦0.6 (1)

例えば、澱粉、ゼラチン、カゼイン及びこれらの変性物; メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体; ポリビニルアルコール(完全けん化、部分ケン化、低けん化等)又はこれらの変性物(カチオン変性物、アニオン変性物、シラノール変性物等); 尿素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸又はその共重合体樹脂、アクリルアミド系樹脂、無水マレイン酸系共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂等の樹脂;等を挙げることができる。

水溶性樹脂の中でも、ポリビニルアルコール、特にポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)することにより得られる、けん化ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールのSP値は後述するPVCやPET−GのSP値と値が近い。したがって、転写時の熱で水溶性樹脂および画像支持体が溶融すると両者の相溶性が高まり、水溶性樹脂は画像支持体に強固に接着される。ポリビニルアルコールは、画像支持体としてPVCやPET−Gを使用した場合に、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を向上させることができ、特に好ましく用いられる。

色材受容層は、けん化度70〜100mol%のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。けん化度とは、ポリビニルアルコールの酢酸基と水酸基の合計モル数に対する水酸基のモル数の百分率を意味する。

けん化度を、好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは86mol%以上とすることにより、色材受容層に適度な硬さを付与することができる。したがって、剥離工程において色材受容層の箔切れ性が向上し、端部のバリの発生を抑制することができる。また、無機微粒子とポリビニルアルコールを含む塗工液の粘度を低下させることができる。従って、透明シートに対して塗工液を塗工し易くなり、転写材の生産性を向上させることができる。一方、けん化度を、好ましくは100mol%以下、さらに好ましくは90mol%以下とすることにより、色材受容層に適度な柔軟性を付与することができる。これにより、透明シートと色材受容層との接着強度を向上させて、接着強度の不足による透明シートからの色材受容層の剥離を抑制することができる。また、色材受容層に適度な親水性を付与することができ、インクの吸収性が良好となる。従って、色材受容層に高品位の画像を記録することが可能となる。

けん化度の範囲を満たす、けん化ポリビニルアルコールとしては、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98〜99mol%)、部分けん化ポリビニルアルコール(けん化度87〜89mol%)、低けん化ポリビニルアルコール(けん化度78〜82mol%)等を挙げることができる。中でも、部分けん化ポリビニルアルコールが好ましい。

色材受容層は、重量平均重合度が2,000〜5,000のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。

重量平均重合度を、好ましくは2,000以上、さらに好ましくは3,000以上とすることにより、に適度な柔軟性を付与することができる。したがって、剥離工程において色材受容層の箔切れ性が向上し、端部のバリの発生を抑制することができる。一方、重量平均重合度を、好ましくは5,000以下、さらに好ましくは4,500以下とすることにより、色材受容層に適度な硬さを付与することができる。これにより、透明シートと色材受容層との接着強度を向上させて、接着強度の不足による透明シートからの色材受容層の剥離を抑制することができる。また、無機微粒子とポリビニルアルコールを含む塗工液の粘度を低下させることができる。従って、透明シートに対して塗工液を塗工し易くなり、転写材の生産性を向上させることができる。また、色材受容層の細孔が埋まることを防止し、細孔の開口状態を良好に保つことができ、インクの吸収性が良好となる。従って、色材受容層に高品位の画像を記録することが可能となる。

重量平均重合度の値は、JIS−K−6726に記載の方法に準拠して算出された値である。

水溶性樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。「2種以上」とは、けん化度、重量平均重合度等の特性が異なるものも含まれる。

水溶性樹脂の量は、無機微粒子100質量部に対し、3.3〜20質量部とすることが好ましい。水溶性樹脂の量を、好ましくは3.3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とすることにより、色材受容層のひび割れや粉落ちが発生し難くなる。一方、水溶性樹脂の量を、好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下とすることにより、インクの吸収性が良好となる。

[1−1−3]カチオン性樹脂 カチオン性樹脂は、分子中にカチオン性の原子団(例えば、4級アンモニウム等)を有する樹脂である。また、カチオン性樹脂のSP値は、画像支持体を構成する樹脂のSP値と近い値を示すだけでなく、画像支持体に転写材を加熱圧着させる際の熱で容易に溶融し、また、静電気的な結合も促進するため、画像支持体と色材受容層との接着性を更に強固なものとし、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を向上させることができる。すなわち、カチオン性樹脂は一般的にマイナスに帯電しているインクと静電気的に結合するため、色材受容層中にインクを定着させることができるが、この機能に加え、カチオン性樹脂は、(1)画像支持体のSP値に近い値となるようなものを選択しているため、画像支持体と親和性が高く、転写時の画像支持体と色材受容層との接着性を向上させることができる。また、カチオン性樹脂は、(2)融点が低く、転写時の熱で容易に溶融するので、画像支持体と色材受容層との接着性をさらに強くする。さらに、本発明で使用するカチオン性樹脂は、(3)分子量が小さいため、色材受容層への添加量が少なくても、色材受容層中に多くの分子を添加できる。よって、一般的にマイナスに帯電している画像支持体と静電気的に結合できるカチオン基を、色材受容層の表面に介在させることができ、結果として、画像支持体と接着性を向上させることができる。さらに(4)後述する樹脂分散顔料との接着性を高めることができる。すなわち、樹脂分散顔料の分散樹脂のSP値は、カチオン性樹脂のSP値と近いため、転写時の熱でカチオン性樹脂および分散樹脂が溶融すると両者の相溶性が高まり、樹脂分散顔料は色材受容層に強固に接着される。これにより、色材受容層の画像支持体への転写性能が向上する。さらに(5)透明シートの主成分として用いられるエマルションはマイナスに帯電しており、カチオン性樹脂と強固に接着し、透明シートと色材受容層との接着性を高めることができる。したがって、本発明で使用するカチオン性樹脂は、上記5つの効果により、色材受容層の画像支持体への転写性能を高める役目を果たしている。

このようなカチオン性樹脂としては、例えばポリアリルアミン(例えば、アリルアミン系重合物、ジアリルアミン系重合物等)及びウレタン系重合物から選択される少なくとも1種の重合物を用いることが好ましい。これらの中でも、特に後述する低分子のポリアリルアミンは、(1)融点が80℃付近と低く、画像支持体に転写材を加熱圧着させる際に容易に溶融すること、(2)分子構造が小さいために、色材受容層表面において単位面積当たりのカチオン基を多く存在させることができ、画像支持体に対する静電気的な結合を促進することができること、等の理由から、特に好ましく用いることができる。

なお、ポリアリルアミンは、下記一般式(8)で示される少なくとも1種のポリアリルアミンであることが好ましい。

(式中、R3、R4、R5は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルカノール基、アリルアルキル基、アリルアルケニル基を示す。また、R3、R4、R5はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。X-は、無機系、有機系の陰イオンを示す。nは重合度を示す整数である。)

カチオン性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜15,000、さらに好ましくは1,000〜10,000、特に好ましくは1,000〜5,000である。重量平均分子量を範囲内とすることで塗工液の安定性を向上させることができることに加えて、色材受容層の空隙が減少し難く、色材の吸収性を維持することができる。さらに、カチオン性樹脂の分子量5,000以下とすると、画像支持体と接する色材受容層の表面にカチオン基(則ち、静電気的な結合を行う吸着サイト)をより多く分布させて、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)をさらに向上させることができる。なお、平均分子量が15000より大きくなると画像支持体と接する色材受容層の表面にカチオン基(則ち、静電気的な結合を行う吸着サイト)が少なくなるため、色材受容層との密着性(転写性能)が低下する。一方、重量平均分子量が1000より小さいと、印刷時のインク溶媒とともに色材受容層内部にカチオン性樹脂が移動してしまい色材受容層の表面に分布するカチオン基の量が少なくなるため、好ましくない

カチオン性樹脂の使用量は無機微粒子(アルミナ水和物等)に対して0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.01〜3質量%とすることがさらに好ましい。カチオン性樹脂の使用量が上述の範囲を超えると、無機微粒子の分散液や分散液にバインダーを添加した塗工液の粘度が高くなり、分散液又は塗工液の保存性や塗工性が低下する場合がある。

カチオン性樹脂の融点は、60〜160℃であることが好ましい。カチオン性樹脂の融点を上述の範囲内とすることにより、画像支持体に対して転写材を加熱圧着させる際にカチオン性樹脂を溶融させることができ、画像支持体と色材受容層との接着性(転写性能)を向上させることができる。

[1−1−4]厚さ 色材受容層の厚さとしては特に制限はないが、インク吸収性の観点からは厚いほうが良い。一方、本発明の記録物では、インクジェット記録面とは反対側の透明シート側から画像情報を見ることになるので、色材受容層自体の透明性も考慮する必要がある。インクジェット記録の液滴径にも拠るが、インクの吸収性と加熱圧着転写性との兼ね合いと、水分吸収時の膨張収縮性の観点から、色材受容層の厚さは40μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは30μ以下とすることにより、色材受容層の透明性を一段と向上させることができるとともに、画像支持体に加熱圧着転写させる際にも熱伝導をより良好にして、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)をより向上させることができる。さらに、吸水時の色材受容層の膨張収縮による応力も小さくすることが可能となる。

一方、インクジェット記録におけるインクの液滴径によっては、色材受容層の厚さが2μm以上であれば良好な画像記録ができる場合がある。さらに好ましくは、色材受容層の厚さを5μm以上とすることでインクの吸収性を安定的に確保することができ、インクの吸収速度及びインクの定着性が良好となる。すなわち、色材受容層の厚さは、5〜30μmであることがより好ましい。本発明では、透明シート及び色材受容層の厚さのバランスに加えて、細孔の構成も用途に応じて適宜選定する必要がある。また、画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合、記録物全体の厚さは、JIS6301に記載される総厚さ0.84mm以下に抑制することが必要となる。この場合、色材受容層を良好なインクジェット記録を可能とする最小限の厚みとすることは、実用上のバランス設計の観点から好ましい。

[1−2]透明シート 転写材1は、図22のように透明シート52を備えており、透明シート52が色材受容層内の水分を外部に放出可能な通路を含むことを特徴としている。具体的には、透明シート52は、前述したように基材シート50と色材受容層53との間を貫通する細孔52Aを有している。また、図1(b)のように透明シート52に予め細孔52Aが形成されていない転写材1を用いる場合には、工程1〜3のいずれかの工程の前後に、転写材1の少なくとも透明シート52に細孔52Aが形成される。

細孔は、透明シートが水分透過性もしくは透湿性を発現できるように構成される。すなわち透明シートには、それに接触した水を液体の状態もしくは気体の状態で通過させる性質を持たせる。そのため本発明の記録物においては、図34(b)のように、色材受容装置53に多量の水分を吸水させた後に乾燥させた耐水性試験においても、透明シート52の全表面から水分が蒸発放散されて、ひび割れの発生が抑えられる。

このように透明シートは水分透過性であり、色材受容層の水吸収および蒸発に起因するひび割れの発生を効果的に抑制する。記録物の作成後、色材受容層にまで貫通する細孔を有する水分透過性の透明シートは、図34(b)のように、水蒸気550を通すことができると共に、液体状の水551も通すことができ。したがって、色材受容層が吸水した水分の、透明シートの全表面からの蒸発が促進される。

[1−2−1]細孔の大きさ 記録物を水に浸漬させたときに、透明シートの細孔の内部に存在する空気によって、細孔の入り口に水のメニスカスを形成することにより、透明シートの表面からの水の吸収を抑えることができる。そのためには、細孔の大きさは100μm以下とすることが好ましい。さらに、色材受容層に多量の水分が吸収されている場合には、色材受容層と接する側の細孔の入り口では水のメニスカスが形成されにくい。したがって細孔の径が小さくすることにより、それを毛細管として作用させて、色材受容層中の水分を透明シートの細孔を介して透明シート表層に輸送して、その蒸発が促進することができる。

色材受容層の厚みに対して、透明シートの厚みが十分に大きい場合には、透明シートの細孔の大きさを100〜300μmの範囲に設定することにより、ある程度の水分を透過させることができて、ひび割れの発生が防止できる。すなわち透明シートは、色材受容層の厚みに対して十分に厚ければ十分な強度を持ち、吸水膨張および乾燥収縮の応力を吸収することができるため、透明シートの水透過性および透湿性が低くてもひび割れは起こりにくい。しかしながら、透明シートの厚みが色材受容層の厚みに対して著しく薄くい場合には、透明シートの強度が相対的に低くなり、色材受容層の収縮が相対的に大きくなって、透明シートのひび割れが起こりやすくなる。この場合には、透明シートの水透過性および透湿性を高くしなければならない。例えば、100μm以下の細孔を高密度に配置することにより、単位面積当たりの水透過性および透湿性を高めて、ひび割れを防ぐことができる。一方、細孔の大きさが300μmを超えた場合には、ひび割れの防止効果がさらに大きくなることが期待できるものの、記録物を水に浸漬させた場合に、細孔の入り口において水のメニスカスが形成され難くなる。この場合には、透明シートを介しての、色材転写層の吸水が促進される一方に、液体状の汚れなどが侵入しやすくなる。したがって細孔の大きさは、用途に応じて好ましい範囲に選択する必要がある。

[1−2−2]厚さ 透明シートの厚さは特に制限されない。透明シートの細孔の効果に加えて、色材受容層の厚みに関連して透明シートの厚みを設定することにより、耐水性をより向上させることができる。すなわち、上述したように透明シートは、その厚みが色材受容層の厚みに対して十分に大きければ十分な強度を持つため、水透過性および透湿性は少なくてもひび割れは起こりにくい。しかしながら、透明シートの厚みが色材受容層の厚みに対して小さい場合には、透明シートの強度が相対的に小さくなってひび割れが起こりやすくなるため、透明シートの透湿性および水透過性を高めなければならない。透明シートの水透過性および透湿性は、上述したように細孔の平均径、および細孔の密度によって制御できる。透明シートの厚み(A)と色材受容層の厚み(B)の比率(A/B)は、下式(1A)の範囲であることが好ましい。 0.07≦A/B≦3.00 (1)

比率(A/B)が大きければ、透明シートは、十分な強度を持って収縮の応力を吸収することができるため、透明シートの水透過性および透湿性が低くてもひび割れは起こりにくい。記録物の利用目的によっては、画像の長期保存性や耐候性、あるいはセキュリティー性の観点から、保護層である透明シートの厚みを数十μm以上にする必要がある場合も生じる。この場合には、記録物の画像支持体と転写材の色材受容層との間の接着力、および色材受容層と透明シートとの間の接着力を考慮し、水溶性樹脂を含む色材受容層の吸水膨張および乾燥収縮に程度に応じて、透明シートに細孔を設けて応力を緩和する。例えば、透明シートが厚い場合には、細孔の径を小さくしたり、細孔の分布密度を小さくする。一方、比率(A/B)が小さければ、透明シートの厚みが色材受容層の厚みに対して薄くなって透明シートのひび割れは起こりやすくなるため、透明シートの水透過性および透湿性を高める。

透明シートの厚さは、実用的には、1〜40μmであることが好ましい。透明シートの厚さを5μm以上とすることにより、透明シートの耐水性や耐擦過性をさらに向上させることができる。一方、透明シートの厚みが厚くなり過ぎると、画像支持体へ透明シートと色材受容層を加熱圧着する際の熱伝達に、大きなエネルギーが必要となる。また、浸漬耐水試験後の乾燥において、透明シートの細孔を介した色材受容層からの水分の蒸発が進み難くなるため、40μm以下の厚さとすることが望ましい。さらに好ましくは、透明シートの厚さを20μ以下とすることにより、透明シートとしての基本機能である透明性および保護機能に加えて、加熱圧着時のエネルギー、および水分透過性などの付随的な機能とのバランスも得られやすくなる。

[1−2−3]細孔の分布密度 透明シートの細孔の分布密度については特に制限されないが、1cm2当たり5個〜200万個が好ましい。それを1cm2当たり5個以上とすることにより、透明シートの表面から、応力分散にほぼ必要な量の水を蒸発させることができる。また、それを200万個以下にすることにより、透明シートの強度と透明性を保つことができる。

透明シートにおける細孔の平均径のみならず、その分布密度によっても透湿の度合いを制御して、ひび割れをより抑制することができる。本発明者の検討によれば、透明シートに細孔構造がなくて、その端部からの吸水成分が蒸発するだけではひび割れが発生した。一方、透明シートの全面に亘って5mm間隔で細孔を設けた場合には、乾燥後の透明シートの表面に筋状の微かなシワ跡が見られる程度であり、ひび割れは発生しなかった。透明シートの全面に亘って2mm間隔で細孔を設けた場合には、乾燥後の透明シートの表面には微かなシワ跡すらも発現せず、記録物の耐水性が確保できた。

すなわち、20μm厚程度の空隙吸収型の色材転写層に、保護層としてとして10μm厚程度の透明シートを設けた構成において、4平方mm当たり1つ以上の細孔を設けるように透明シートの細孔の分布密度を設定することにより、ひび割れが防止できた。また、通常の環境下であれば、転写材は、吸水した水分が30分程度で蒸発して乾燥されるため、透明シートの透湿度が5g/m2・h以上であれば、耐水性をより向上させることができる。すなわち、透明シートの透湿度を上記の値以上に設定することにより、吸水後の色材受容層が収縮するときの応力がより広く分散されて、ひび割れをより防止することができる。

[1−2−3−2]細孔の面積 透明シート表面の全細孔面積については、特に制限されない。端部の色材受容層の全面積(D)に対する透明シート表面の全細孔面積(C)の割合(C/D)は、すなわち色材受容層端部からの蒸発と透明シート表面からの蒸発の比率を表すものである。透明シート表面の全細孔面積はC/Dが好ましくは0.02〜50倍、より好ましくは0.1〜10倍、さらにより好ましくは0.2〜5倍であるように制御することが好ましい。C/Dが好ましくは0.02倍以上、より好ましくは0.1倍以上、さらにより好ましくは0.2倍以上とすることで、透明シート表面からの水分蒸発の割合を増やし、端部からの蒸発による応力集中を抑えて、ひび割れを防止することができる。また、C/Dが好ましくは、50倍以下、より好ましくは10倍以下、さらにより好ましくは5倍以下とすることで、透明シートの強度低下を抑えて、耐擦過性を向上することができる。一方、0.02倍以下になると端部からの蒸発の割合が多くなり、応力が十分に分散されず、ひび割れが発生する場合がある。さらに、50倍以上になると透明シートの強度が低下し、耐擦過性が低下する場合がある。

透明シートの表面に汚染水などの液体状の汚れが付着した場合は、図35(a)のように、透明シート52の細孔52Aを透過して、汚染水552が色材受容層53に接触して吸収されるおそれがある。この場合には、反転画像72によって記録された情報の一部が背景側から汚染水552によって着色されて、その情報の一部が消えてしまうおそれがある。透明シートは、記録物の保護を目的として記録物の表面に構成されており、その保護性能は、下記の(1)から(4)の4つに大きく分けることができる。(1)は、水、薬品、汚染水など液体状の汚れからの保護性能、(2)は、オゾンや汚染ガスなど気体状の汚れからの保護性能、(3)は、紫外光などの光学的劣化に対する保護性能、(4)は、擦れ、引っ掻き、打坤などの機械的な力からの保護性能である。保護性能(2),(3),(4)については、透明シートの細孔によって大きく変化することはない。しかし、透明シートの細孔が水分透過性であった場合には、(1)の液体汚れからの保護性能についてはやや低下するおそれがある。

好ましくは、図35(b)のように、透明シート52の細孔52Aに透湿性を持たせ、かつ、水分難透過性を持たせるように構成する。これにより透明シート52は、水蒸気550は通すものの、液体状の水、薬品、液体汚れ(汚染水552)などは通し難くなる。したがって、万一、汚染水552が透明シート52の表面に付着しても、それは色材受容層53までは到達せず、記録情報が液体汚れから保護され、また透明シートの本来の保護機能が損なわれるおそれもない。さらに、透明シート52は細孔52Aの透湿性によって水蒸気を通すため、万一、色材受容層53が多量の水分を吸収した後に乾燥される過程においても、透明シート52の全面に色材受容層53の収縮の応力を分散させて、ひび割れの発生を抑制することができる。このように、透明シートの細孔に水分難透過性を持たせることにより、透明シートの表面からの水、薬品、汚染水などの液体状の汚れの進入を防いで透明シートの本来の保護性能を維持し、かつ細孔に透湿性を持たせることによりひび割れを抑制することができる。

細孔を持つ透明シートの透湿性および水分透過性は、主として細孔の平均径によって制御される。透明シートの細孔の平均径を0.001〜0.8000μmにすることにより、色材受容層への液体汚れに対する保護性能を損なうことなく、透明シートのひび割れを防止することができる。水滴の大きさは約100μm程度であり、また数10μm径程度の細孔は、通常、その先端において水の表面張力によるメニスカスが形成されるため、水分は透過し難にくくなる。しかし、圧力の作用、細孔の内面の濡れ性、および毛管力などの条件により、1μm径程度の細孔でも水分が透過する場合がある。そのため、細孔の平均径を0.8000μm以下とすることにより、十分な水分難透過性を確保して、ほぼ液体状の水分の透過を抑制することが可能となる。また、温度湿度気圧などの環境条件、および水に含まれる不純物や溶解成分などによる粘度や表面張力に応じて、水分の透過し易さが変化するため、細孔の平均径を0.2000μm以下とすることにより、実用上十分な水分難透過性を得ることができる。一方、水蒸気の水分子の大きさからして、細孔の平均径を0.0004μm以上にすれば水蒸気を透過させることができ、その平均径を0.001μm以上とすることにより十分に実用性のある透湿性を得ることができる。より好ましくは、細孔構造の均一性を考慮して、細孔の平均径を0.002μm以上とすることにより安定的に水蒸気を透過させることができる。

したがって、透明シートの細孔の平均径を0.002〜0.2000μmとすることにより、透明シートのひび割れを十分に抑制しつつ、水分透過性を十分抑えて、表面汚れの保護性能を実使用上問題ないレベルにまで高めることができる。しかし、液体状の汚れは色材受容層の端部から侵入する可能性がある。しかし、汚染水の成分の各々の転写材中における浸透拡散度合いの違いから、汚れ成分自体が浸透する範囲は端部から数mmにも及ばない。しかも、記録物の搬送精度など機械的な制約の観点から、記録部の端部に対する情報の記録は稀有であるため、実使用上、液体状の汚れによる情報の消失には至らない。

[1−2−4]エマルジョン 本例の透明シート52は、異なるガラス転移温度を有する2種類のエマルジョン(エマルジョンE1、エマルジョンE2)を含有する。以下、エマルジョンE1とE2についてさらに詳細に説明する。

[1−2−4−1]エマルジョンの状態 エマルジョンE1が造膜し、少なくともエマルジョンE2が粒子として残存している状態であることが好ましい。エマルジョンの「造膜状態」とは、ガラス転移温度以上の温度で加熱処理されたことを意味する。一方、エマルジョンの「粒子状態」とは、ガラス転移温度以上の加熱処理がされていないことを意味する。エマルジョン塗工後の乾燥温度をエマルジョンE1のガラス転移温度Tg1以上、エマルジョンE2のガラス転移温度Tg2以下とすることで、エマルジョンE1が造膜し、少なくともエマルジョンE2が粒子として残存している透明シートを製造することができる。このような構成により、図71に示すように、加熱圧着時に、画像支持体55と色材受容層が接着している部分963の透明シート部分980と、画像支持体と色材受容層が接着していない部分964の透明シート部分981と、で膜状態が異なるように制御することができる。すなわち、加熱圧着時において、透明シート部分980はヒートロールの熱が伝わりやすいため、エマルジョンE2の一部が膜化して一部粒子が残存した状態(図71)、あるいは透明シートのエマルジョンE2が完全に皮膜化した状態(図71)になる。このとき、一部あるいは完全に膜化したエマルジョンE2は、予め膜化しているエマルジョンE1と結合力が強化されて透明シートの膜強度を強化することができる。一方、透明シート部分981はヒートロールの熱が伝わらないため、エマルジョンE2を粒子状態のままにすることができる。透明シート部分980と透明シート部分981では膜の状態が異なるため、剥離工程では、境界部982を基点としてクラックが入りやすくなる。以上から、2種類のエマルジョンを用いて、エマルジョンE2の膜状態を加熱圧着時の温度を利用して変化させることにより、箔切れが良好することができる。

[1−2−4−2]エマルジョンのガラス転移温度 ガラス転移温度(Tg)とは、非晶質の固体を加熱した場合に、低温では結晶なみに堅く(剛性率が大きく)流動性がなかった(粘度が測定不可能なほど大きかった)固体が、ある狭い温度範囲で急速に剛性と粘度が低下して流動性が増す温度である。ガラス転移温度Tgは、各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のガラス転移温度(Tg)及び該モノマーの質量分率(質量基準の共重合割合)に基づいて、フォックス(Fox)の式から算出される値である。

なお、本例においてガラス転移温度を表す数値の単位は、特に断りのない限り「℃」である。例えば、三種類のモノマーabcからなる共重合体のガラス転移温度は、下式(9)によって求められる。

1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb+Wc/Tgc (9) Tga,Tgb,Tgc:各abcモノマーのホモポリマーのガラス転移温度 W:各モノマーの重量 Tg:共重合体のガラス転移温度

上記ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。ここに開示される技術においては、上記ホモポリマーのTgとして、具体的に以下の値を用いるものとする。

2−エチルヘキシルアクリレート −70℃ n−ブチルアクリレート −55℃ エチルアクリレート −22℃ メチルアクリレート 8℃ メチルメタクリレート 105℃ イソボルニルアクリレート 94℃ イソボルニルメタクリレート 180℃ 酢酸ビニル 32℃ 2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃ スチレン 100℃ アクリル酸 106℃ メタクリル酸 130℃

上記のように例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)に記載の数値を用いるものとする。「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)にも記載されていない場合には、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする(特開2007−51271号公報参照)。

[1−2−4−3]エマルジョンE1 本例において、エマルジョンE1は透明シートの形成時に造膜状態にある。エマルジョンE1を造膜させることにより、色材受容層との接触面積を増大させることができる。この結果、透明シートと色材受容層との接着性が向上し、テープ剥離等の試験において透明シート(保護層)と色材受容層との間で剥がれないように制御することができる。

[1−2−4−4]エマルジョンE1のTg エマルジョンE1のガラス転移温度Tg1は、50℃より大きく90℃未満である。Tg1は、より好ましくは55℃より大きく80℃未満、さらにより好ましくは55℃より大きく70℃未満である。Tg1を50℃より大きく、さらに好ましくは55℃より大きくすることで、エマルジョンE1のガラス転移温度が高くなって、透明シートの膜部分は硬く伸びにくくなる。そのため、端部を切るときに膜が伸びるのを押さえ、端部を綺麗に保つことができて端部の切れ性が向上する。それに加えて、Tg1を上記範囲に制御することで、樹脂が手の油脂や汗になじみにくくなると共に、膜の伸び性が抑えられて、透明シートに手が触れた場合でも、透明シートが手に密着しにくく、透明シートのべたつきを抑える効果もある。さらに、Tg1を高くするとエマルジョン樹脂の分子鎖間に働く力が強くなり、アルコール等の薬品に溶解しにくくなって、記録物の耐薬品性を著しく向上させることができる。一方、好ましくは90℃未満、より好ましくは80℃未満、さらに好ましくは70℃未満とすることで、透明シートを形成時の造膜を容易に行うことができ、透明シートと色材受容層の接着性を向上させることができる。さらには膜の脆さを改善して、耐水試験での透明シートはがれ等を防止することもできる。また、実際の製造工程上、乾燥温度を完全に一定に保つのは難しく、ある程度の幅ができる。乾燥温度に幅がある場合、Tg1とTg2が近い値であると、E1を膜化させようとしたときに過剰な熱が掛り、乾燥温度がTg2を超えて、E2の粒子状態を維持しにくい場合がある。したがって、Tg1とTg2が下記式(13)の関係を満たして、Tg2とTg1に10℃程度の差があることにより、乾燥温度に幅があった場合でも、過剰な熱がかかることなく、E1が膜、E2が粒子の状態を維持しやすくなるため好ましい。Tg1が50℃以下になると、樹脂が手の油脂や汗になじんでしまい、べたつきが発生しやすい。また、ロール形状にした時のブロッキングも発生しやすい。Tg1が90℃以上になると、E1が造膜しにくいため透明シートと色材受容層の接着性が低下して、透明シートの剥がれが発生しやすい。さらには、膜が脆くなり、耐水試験での透明シートはがれが発生しやすくなる。 Tg2−Tg1≧10 (13)

[1−2−4−5]エマルジョンE1のSP値 また、エマルジョンE1のSP値と、色材受容層の水溶性樹脂のSP値と、の差ΔSPが下式(1)の範囲にあることが好ましい。このような範囲に差ΔSPを設定することにより、加熱圧着時において、エマルジョンE1は水溶性樹脂との相溶性が増し、膜化したエマルションE1と色材受容層の水溶性樹脂との分子間距離が短くなる。そのため、それらは水素結合やファンデルワールス力などから構成される分子間力により強力に接着することができ、透明シートと色材受容層との密着性を向上させることができる。差ΔSPが0.6より大きくなると、相溶性が低下して、膜化したエマルションE1と水溶性樹脂との分子間距離が長くなり、分子間力が低下して接着力が低下するため好ましくない。 0≦|ΔSP|≦0.6 (1)

[1−2−4−6]エマルジョンE1の材質 上述したエマルジョンE1の材質としては、アクリル系樹脂、酢ビ樹脂、塩ビ樹脂、エチレン/酢ビ共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂又はそれらの共重合体樹脂が好ましい。上記の中でもアクリル系樹脂は、比較的低温での造膜が可能で、塗膜の透明性が高くかつ水溶性樹脂として含有されるけん化ポリビニルアルコールへとのSP値が近く密着性を向上させることができるため、特に好ましく使用される。

アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル単独又はこれを用いた共重合体を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは単独、又は組み合わせて用いることができる。さらに、これらの(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体を追加重合して用いることができ、このような単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルプロピル、(メタ)アクリル酸(4) 特開2002−121515号公報に記載のヒドロキシルブチル等の水酸基を有する単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシ基を有する単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有する単量体;(メタ)アクリロニトリルニトリル基を有する単量体;スチレン、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香環を有する単量体;(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する単量体;N−アルコキシ基を有する単量体やN−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル基を有する単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブチロール(メタ)アクリルアミド等の、N−アルキロール基を有する単量体;ビニルクロライド、ビニルブロマイド、アリルクロライド、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロメチルスチレン、フッ化ビニル等のハロゲン原子が結合した基を有する単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン系単量体等を挙げることができる。以上示した材料の反応性の基を利用して部分架橋することも可能である。

本実施形態に用いられるエマルジョンは、一般的によく知られた公知の技術により合成できるものであり、市販の材料を使うことも可能である。エマルジョンに用いられる樹脂のTgは、モノマー成分とその比率をかえることにより調整することができる。エマルジョンE1は1種類のエマルジョンとしてもよいし、複数のエマルジョンをブレンドして用いてもよい。

[1−2−4−7]エマルジョンE2 本実施形態において、エマルジョンE2は、透明シートの形成時に粒子状態にある。エマルジョンE2を粒子状態にすることにより、転写時における端部の切れ性を良好にすることができる。

[1−2−4−8]エマルジョンE2のTg エマルジョンE2のガラス転移温度Tg2は、90℃以上120℃以下である。より好ましくは95〜115℃、さらにより好ましくは100〜110℃である。エマルジョンのガラス転移温度Tgを90℃以上、より好ましくは95℃以上、さらにより好ましくは100℃以上である。

この範囲にすることで、図71に示すように加熱圧着時に、画像支持体55と色材受容層が接着している部分963の透明シート部分980と、画像支持体と色材受容層が接着していない部分964の透明シート部分981と、で膜状態が異なるように制御することができる。すなわち、加熱圧着時において、透明シート部分980はヒートロールの熱が伝わりやすいため、エマルジョンE2の一部が膜化して一部粒子が残存した状態(図71)、あるいは透明シートのエマルジョンE2が完全に皮膜化した状態(図71)になる。一方、透明シート部分981はヒートロールの熱が伝わらないため、エマルジョンE2を粒子状態のままにすることができる。これにより剥離工程では、境界部982を基点としてクラックが入りやすくなる。

さらに上記範囲にすることで、エマルジョンE2の樹脂は伸びにくくなり、さらに手の油脂や汗になじみにくくなるため、透明シートのべたつきが防止できる。加えて、上記範囲にすることでアルコール等の薬品に対する溶解性が低下し、耐薬品性が向上する。また、エマルジョンのガラス転移温度Tgを120℃以下、より好ましくは115℃以下、さらにより好ましくは110℃以下にすることで、加熱圧着における熱エネルギーを低エネルギーで効率的に制御して、画像支持体への過剰な熱エネルギーの付加による熱変形を防止することができる。本発明においては、色材受容層の水溶性樹脂のポリビニルアルコール(PVA)をガラス転移温度の約90℃以上にすることで、色材受容層を画像支持体に転写できる。このため上記温度範囲であれば、色材受容層を画像支持体に加熱圧着するときに、色材受容層が約90℃まで加熱される過程で、ヒートロール側に近い透明シートはTg2以上に加熱されるため、転写時に過剰な熱エネルギーを与えることなく、エマルジョンE2を膜化させて転写することができる。Tg2が90℃より小さくなると、手の油脂や汗になじみやすくなるためべたつきやすくなり、ブロッキング性も発生しやすい。さらにクラックが入りにくくなり、箔切れ性も低下する。Tg2が120より大きくなると、加熱圧着における熱エネルギーを高エネルギーが必要となり、画像支持体への過剰な熱エネルギーの付加による熱変形が発生しやすくなる。

[1−2−4−9]エマルジョンE2の材質 エマルジョンE2を構成する高分子物質としては、エマルジョンE1と同等のものを使用できる。ただし、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂は、透明シートと基材シートのSPの差SP1を1.1以上に制御でき、基材シートからの剥離性が向上するため、好ましく用いられる。エマルジョンE2に、特に好ましいのはウレタン系樹脂である。ウレタン系樹脂とすることで適度なやわらかさを持ち、べたつきが抑えられる。さらには、膜の脆さや薬品への溶解性を改善して、アルコールなど薬品に浸漬しても割れやはがれ等が起きにくくなり、耐薬品性が向上できる。エマルジョンE2は、エマルジョンE1と異なる種類の樹脂を用いることが好ましく、種類の異なる樹脂を用いることで樹脂同士の相溶が起こりにくくなり、転写前の状態で膜と粒子の共存状態が維持しやすい。エマルジョンE1としてアクリル系樹脂を用いた場合、エマルジョンE2として特に好ましくはウレタン系樹脂である。

ウレタン系樹脂としては、例えば、以下に挙げるポリオール化合物とジイソシアネート化合物とを種々組み合わせて、重付加反応により合成されたウレタン系樹脂を挙げることができる。ウレタン系樹脂は特に限定されないが、好ましくポリエーテル系のポリオール化合物とジイソシアネート化合物から合成されるポリエーテルウレタン系樹脂が好ましい。ポリエーテルウレタン系樹脂は加水分解しにくいので、記録物の耐水性を含む耐久性が向上する。

ポリオール化合物としては、2つの水酸基を含有するジオール、若しくは3以上の水酸基を含有するポリオールであれば特に限定されずに用いることができる。例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、アクリル系、ポリブタジエン系若しくはポリオレフィン系等のポリオール、カプロラクトン変性ポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、エポキシ変性ポリオール、アルキド変性ポリオール、ひまし油、フッ素含有ポリオール等のポリオールを単独で用いてもよいし、これらを併用しても良い。

ポリエーテル系ポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール類、エチレンジアミン等の脂肪族アミン化合物類、トルエンジアミン、ジフェニルメタンー4,4−ジアミン等の芳香族アミン化合物、エタノールアミンおよびジエタノールアミン等のようなアルカノールアミン類のような少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料として、これにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド若しくはポリオキシテトラメチレンオキサイドに代表されるアルキレンオキサイドを付加させて得られるポリオール等が挙げられる。

ポリエステル系ポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンおよびその他の低分子ポリオールなどから選ばれる少なくとも1種と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、その他の低分子脂肪族カルボン酸およびオリゴマー酸などから選ばれる少なくとも1種との縮合重合体;プロピオンラクトンまたはバレロラクトン等の開環重合体;等が挙げられる。

その他のポリオールとしては、たとえば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の低分子ポリオールが挙げられる。

ジイソシアネート化合物は、特に限定されずに用いることができる。ジイソシアネート化合物としては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート,1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート,m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’—ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等を挙げることができる。

[1−2−4−10]エマルジョンE2の平均粒子径 エマルジョンE2の平均粒径としては特に制限はないが、好ましくは1〜200nm、より好ましくは5〜150nm、さらにより好ましくは10〜50nmである。平均粒子径を、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、さらにより好ましくは10nm以上とすることで、加熱圧着時において、画像支持体と色材受容層が接着していない部分964の透明シート部分980の、エマルジョンE2を粒子状態にすることが容易になる。したがって、画像支持体55と色材受容層が接着している部分963の透明シート部分980の境界部で、クラックが入りやすくなり、転写後の剥離工程において、端部にバリの発生がなく箔切れ性を良好にすることができる。本発明の転写材では、エマルジョンE2を粒子状態に維持させるため、そのエマルジョンE2の粒径は透明シートの透明性に大きく影響する。エマルジョンE2の平均粒子径を、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらにより好ましくは50nm以下とすることで、透明シートの透明性を良好にすることができる。さらには、粒子径が上記以下の場合は、細かいクラックがはいりやすくなり、端部の切れ性も良好となる。E2の平均粒径が1nmより小さいと粒子が小さ過ぎるため、透明シートが膜に近い状態となって、転写時にクラックが入りにくくなって箔切れ性が低下する。E2の平均粒径が200nmより大きいと透明性が低下するおそれがある。

[1−2−4−11]エマルジョンE1、E2の混合比率 本発明においては、エマルジョンE1とエマルジョンE2の比率(E1/E2)は下記式(3)を満たすことが好ましく、より好ましくは5.0≦E1/E2≦50.0、さらにより好ましくは10.0≦E1/E2≦35.0を満たすことが好ましい。E1/E2を65.0以下、さらに好ましくは50.0以下、より好ましくは35.0以下にすることで、E2が増加し、粒子成分が増えることで、エマルジョンE2を粒子状態で残存させることが容易になり、画像支持体55と色材受容層が接着している部分963の透明シート部分980との境界部で、クラックが入りやすくなり、端部にバリの発生がなく箔切れ性を良好にすることができる。

すなわち、この範囲にすることで、図71に示すように加熱圧着時に、画像支持体55と色材受容層が接着している部分963の透明シート部分980と、画像支持体と色材受容層が接着していない部分964の透明シート部分981と、で膜状態が異なるように制御することができる。加熱圧着時において、透明シート部分980はヒートロールの熱が伝わりやすいため、エマルジョンE2の一部が膜化して一部粒子が残存した状態(図40(b))、あるいは透明シートのエマルジョンE2が完全に皮膜化した状態(図40(c))になる。

一方、E1/E2が3.0以上、より好ましくは5.0以上、さらにより好ましくは10.0以上とすることで、E1が増加し、造膜成分が増えることで膜強度が向上し、さらに色材受容層との接触面積が大きくなり、色材受容層と透明シートの接着性を向上させることができる。特に、10.0≦E1/E2≦35.0の範囲にすることで、接着性と端部の切れ性の向上、およびひび割れ防止を高レベルで両立できる。E1/E2が65.0より大きくなると、粒子成分が少なくなって膜の状態に近づくため、クラックが入りにくくなり、箔切れ性を得ることが難しくなる。また、E1/E2が3.0より小さいと、E2のバインダーとなるE1が少なくなるため、色材受容層形成時に、透明シートのエマルジョンのはがれや粉落ちが発生する場合があり、色材受容層が均一に形成できなくなるおそれがある。さらには、膜成分が少なくなるため、色材受容層との接着性が低下して、透明シートのはがれが発生しやすくなる。 3.0≦E1/E2≦65.0 (3)

エマルジョンE1とE2の割合(E1/E2)が10より小さい(エマルジョンE2の割合が9.1%より多い)と、透明シートと色材受容層を含む転写材の透明シートにエマルジョンを使用して、一部は造膜、一部は粒子状態にすると、透明シート上に色材受容層を塗工する際の色材受容層が乾燥していくときの収縮に耐え切れず、透明シートのひび割れが発生しやすくなる場合がある。この現象は、色材受容層を含有するタイプの転写材特有の現象であって、水溶性化合物と無機微粒子を含む水性塗工液を透明シート上に塗工する場合にのみ発生する。基材と保護層のみで構成されている転写材では発生しない。特に、本発明のようにインクジェット方式に好ましく用いられる転写材の場合は、色材受容層に大量のインクを吸収させる必要があるため、色材受容層の厚みが大きくなり、塗工量と乾燥時の収縮量も合わせて大きくなるため、塗工時のひび割れが発生しやすい。さらに本発明のように接着性、白切れ性、耐薬品性、べたつき防止を考慮して、透明シート中で膜化しているエマルジョンとして、ガラス転移温度Tg1が50℃より大きいエマルジョン樹脂E1を用いる場合は、エマルジョン樹脂が硬く伸びにくくなり、収縮によってひび割れの現象が非常に発生しやすい傾向にある。以上のことから、本発明のように、基材、色材受容層、透明シートが順次積層され、透明シートがエマルジョンE1とE2を含み、膜化しているエマルジョンE1のガラス転移温度Tg1が50℃より大きく、エマルジョンE2を粒子として残存させている場合は、E1とE2の比率を精密に制御することが重要である。

本実施形態の透明シートが基材シートに当接する場合、基材シートのSP値と透明シートのSP値との差の絶対値|SP1|が下式(10)を満たすように、それらの材料を選択することが好ましい。差の絶対値|SP1|が下式(10)の関係を満たすことにより、透明シートと基材シートは比較的弱い接着状態で積層されることなる。これにより、転写時においては、基材シートが透明シートから剥離しやすくなり、一方、色材受容層と画像支持体との接着性をより強くすることできるため、転写時の転写性を高めることができる。 1.1≦|SP1|≦3 (10)

また、本実施形態の転写材を画像支持体に加熱圧着させて、基材シートを剥離することにより、透明シートを介して、色材受容層に記録された画像を本来の画像として視認することができる。また、転写材を画像支持体に加熱圧着させた場合に、透明シートは色材受容層に記録された画像の保護層として機能する。

透明シートは、JIS K7375に準拠して測定される全光線透過率が50%以上、好ましくは90%以上のシートである。したがって透明シートには、無色透明シートの他、半透明シートおよび着色透明シート等も含まれる。色材受容層に画像を記録するインクとして染料インクを用いる場合には、紫外線による染料の分解(光劣化)を防止するために、透明シートがUVカット剤を含有するものであることが好ましい。UVカット剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の紫外線吸収剤;酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線散乱剤;等を挙げることができる。

[1−2−5]細孔の形成方法 透明シートが樹脂を主成分とするものであって、基材シート上に製膜される場合、透明シートに細孔を形成する方法としては、種々の方式を適用可能である。例えば、透明シートの製膜工程中、もしくは、その後の工程において、透明シートの構成材料中に含まれる成分によって、図36、図37、および図38のように連泡構造の細孔を構成するようにしてもよい。後述するように、図36、図37、および図38においては、それぞれ発泡剤、多孔質粒子、および中空粒子を用いて連泡構造の細孔を構成する。また、図39および図40のように、予め細孔構造を有する透明シートを作成しておき、それを基材シート上にラミネートないしは積層接着させてもよい。その詳細については後述する。さらに、図41および図42のように、基材シート上に透明シートを製膜した後に、別の手段により、透明シートに所望の細孔を形成する細孔処理を施してもよい。その詳細については後述する。このように透明シートの細孔は、基材シートと色材受容層との間を貫通する細孔構造となっていればよく、もちろん公知の方法を用いて形成することも可能であり、目的および用途に応じて最適な形成方法を選択することができる。

[1−2−6]発泡剤 発泡剤を用いて透明シート内に連泡構造を構成する場合には、エマルジョンを含有する塗工液に機械的撹拌を施して、その塗工液に多数の微細な気泡を形成して分散させて、透明シートを形成する。

具体的には、図36のように、エマルジョンを含有する塗工液を攪拌して多数の微細の気泡553が分散させた塗工液を用意し、ダイコーター655Aを用いて、その塗工液から薄膜の透明シート52を形成する。図36(a)の場合は、その透明シート52に対して、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成してから、ダイコーター65Cを用いて基準シート50を形成する。図36(b)の場合は、透明シート52に対して、ダイコーター65Cを用いて基準シート50を形成してから、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。図36(c)の場合は、予め用意した基準シート50に対して、ダイコーター655Aを用いて透明シート52を形成してから、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。この結果、図20(f)のように、気泡553が連なる連泡構造の透明シート52を含む転写材1が製造される。

透明シート52を形成する塗工液の機械的撹拌方法は特に制限はされず、公知の撹拌翼を有する発泡機、乳化分散等に利用されているホモミキサー、カウレスディゾルバー等の撹拌機、および連続発泡機等を用いて行うことができる。エマルジョンを含有する塗工液には、発泡による皮膜形成性を安定化させるために、さらに樹脂を添加することが望ましい。その樹脂としては、色材受容層に添加する水溶性樹脂と同等のものが使用できるが、これらに限定されるものではない。これらの樹脂は必要に応じて、単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。

このようなエマルジョンおよび樹脂を含む塗工液には、気泡の安定性を向上させるために、整泡剤あるいは発泡剤と称されている、界面活性作用のある材料を適宜選定して配合してもよい。例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸変性物、高級脂肪族のアルカリ塩、高級脂肪酸のアミン塩等の陰イオン性の界面活性剤を配当することにより、特に、樹脂液の発泡性、および分散含有させた気泡の安定性を高めることができる。これら整泡剤あるいは発泡剤の材料は限定はされず、樹脂液の流動性や塗工作業性を考慮して選択することができる。

このような整泡剤あるいは発泡剤の樹脂液に対する配合比率は、樹脂液の固形分100重量部に対して、好ましくは固形分で0〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部である。その配合比率が30重量部を越えると、多くの気泡を小さく制御できるものの、その気泡により作製した透明シートの透明性が低下して、記録画像の視認性が低下するため好ましくない。

また、エマルジョンおよび樹脂を含む塗工液に関して、その発泡前の体積に対する発泡後の体積の体積比(以下、発泡倍率という)は、樹脂液の組成とのバランスを考慮して設定すればよい。その発泡倍率は、好ましくは0.5倍を越えかつ10倍以下、より好ましくは1.0倍以上かつ5倍以下である。発泡倍率は、気泡を含有する水分散型樹脂の塗布液中の気泡含有率を示す尺度である。発泡倍率が0.5倍以下では、透明シートが水分透過性もしくは透湿性を示すための十分な連泡構造を得ることが困難になるため、好ましくない。一方、発泡倍率が10倍以上になると、気泡を構成する樹脂液膜(壁)の厚さが薄くなって、耐水性以外の保護層としての機能が低下するため、好ましくない。また、その場合には、内包する空気の量が増加して透明シートの断熱性が高くなり、転写性能が低下するおそれがある。さらに、発泡前の水分散型樹脂液の固形分濃度が低いほど、気孔含有樹脂層の気孔を囲む樹脂膜(壁)が薄くなるため、保護層としての機能が低下する。

[1−2−7]多孔質粒子 多孔質粒子を用いて透明シート内に連泡構造を構成する場合には、多孔質粒子を含有する樹脂を主成分とする透明シートを基材シート上に製膜し、多孔質粒子の連結によって、基材シートと色材受容層との間を貫通する細孔を形成する。例えば、図37のように、ダイコーター655Aを用いて、多孔質粒子554を含有する樹脂材料から透明シート52を形成する。

図37(a)の場合は、その透明シート52に対して、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成してから、ダイコーター65Cを用いて基準シート50を形成する。図37(b)の場合は、透明シート52に対して、ダイコーター65Cを用いて基準シート50を形成してから、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。図37(c)の場合は、予め用意した基準シート50に対して、ダイコーター655Aを用いて透明シート52を形成してから、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。この結果、図22(g)のように、多孔質粒子554の多孔質部分が連なる連泡構造の透明シート52を含む転写材1が製造される。

多孔質粒子の材料は特に制限されず、有機物および無機物の両方を用いることがきる。ただし、耐熱性の観点から、多孔質の無機微粒子を用いることが好ましい。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ケイソウ土、アルミナ、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物、リトポン(硫酸バリウムと硫化亜鉛の混合物)、ゼオライト等を挙げることができる。多孔質粒子の含有量に応じて、細孔の密度を制御できる。多孔質粒子の含有量は、エマルジョンの合計量に対して1%〜30%程度が好ましい。その含有量が1%以下になると、水の透過性が低下して、ひび割れが起こりやすくなる。それが30%以上になると、水の透過性が増大し、過剰に液体を吸収して透明シートとしての保護性能が低下する。

[1−2−8]中空樹脂粒子 中空粒子を用いて透明シート内に連泡構造を構成する場合には、中空粒子を含有する樹脂を主成分とする透明シートを基材シート上に製膜し、中空粒子の連結によって、基材シートと色材受容層との間を貫通する細孔を形成する。例えば、図38のように、ダイコーター655Aを用いて、中空粒子555を含有する樹脂材料から透明シート52を形成する。

図38(a)の場合は、その透明シート52に対して、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成してから、ダイコーター65Cを用いて基準シート50を形成する。図38(b)の場合は、透明シート52に対して、ダイコーター65Cを用いて基準シート50を形成してから、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。図38(c)の場合は、予め用意した基準シート50に対して、ダイコーター655Aを用いて透明シート52を形成してから、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。この結果、図22(h)のように、中空粒子555の中空部分が連なる連泡構造の透明シート52を含む転写材1が製造される。

中空樹脂粒子の材料は特に制限されず、有機物および無機物の両方用いることがきる。ただし、耐熱性の観点から、中空無機微粒子を用いることが好ましい。例えば、ガラス、シラス、シリカ、アルミナ、セラミックなどが挙げられる。中空粒子の含有量に応じて、細孔の密度が制御できる。中空粒子の含有量は、エマルジョンの合計量に対して1%〜30%程度が好ましい。それが1%以下になると、水の透過性が低下して、ひび割れが起こりやすくなる。それが30%以上になると、水の透過性が増加し、過剰に液体を吸収して透明シートとしての保護性能が低下する。

中空粒子の材料は特に制限されず、無機物および有機物の両方を用いることができる。中空無機微粒子は耐熱性に優れており、例えば、ガラス、シラス、シリカ、アルミナ、セラミックなどを用いることができる。中空樹脂微粒子は、その製造方法によっていくつかの種類が存在し、例えば、下記(1)〜(5)の方法が挙げられる。 (1)ポリマー粒子中に発泡剤を含有させておき、後でこれを発泡させて、中空の粒子を得る方法。 (2)ポリマーにブタン等の揮発性物質を封入しておき、後にこれをガス化膨張させて中空の粒子を得る方法。 (3)ポリマーを溶融し、これに空気等のジェットを吹き付け、気泡を封入する方法。 (4)重合性モノマー成分を水中に分散して水中油滴型エマルジョンを作成し、重合して中空の粒子を得る方法。 (5)ポリマー粒子の内部にアルカリ膨潤性の物質を含有させておき、このポリマー粒子にアルカリ性液体を浸透させてアルカリ膨潤性物質を膨張させて中空の粒子を得る方法。

色材受容層を大気に連通させる細孔を基材シートと透明シートに形成するために、中空樹脂粒子を用いる場合には、その細孔を連泡構造とする必要がある。そのために使用する中空粒子としては、シェルに微細な穴があるものが好ましく、上記(1)〜(5)の中でも(4)または(5)の方法により製造された中空粒子が好ましい。上記(1)〜(3)により製造された中空粒子は、そのシェルに微細な穴がなく、透明シートに入れた場合に、水を系外に放出しにくい。中空粒子の含有量に応じて、細孔の密度が制御できる。中空粒子の含有量は、エマルジョンの合計量に対して1%〜30%程度が好ましい。それが1%以下になると、水の透過性が低下して、ひび割れが起こりやすくなる。それが30%以上になると、空隙に内容される空気の量が増加し、基材シートの断熱性が高くなり転写性能が低下するおそれがある。

[1−2−9]延伸処理 透明フィルムとして、予め細孔構造を有するフィルムを用いてもよく、そのフィルムには、延伸処理を施すことによって細孔を形成することができる。例えば、図43のように、延伸加工装置656によって、透明シート52の素材となるフィルムを延伸させることによって、細孔521を形成することができる。

透明シート52用のフィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を延伸加工したePTFEフィルムと、ポリウレタンポリマーと、を複合化して作成された防水透湿フィルムを用いることができる。この場合には、1平方センチメートルに14億個の微細な孔を形成して、防水性と透湿性とを両立させることができる。そのフィルムの耐水圧は45000mm以上、透湿性は、JIS L1099B−2法の測定で13500g/m2/24hrsである。このようなフィルムは単層として用いることも可能であり、また透水性の他のフィルムと複層化して用いてもよく、透明シートとして基材シートに積層させることができる。すなわち、表裏を貫通する細孔構造が構成されている透明のフィルムであれば、転写材の透明シートとして用いることができる。そのフィルムとしては、ポリエチレンを主成分として、炭酸カルシウムを分散させたフィルムを延伸加工して得られる多孔質フィルム、およびポリオレフィンを主成分として無機フィラーレスで延伸加工した多孔質フィルムなどを用いることができる。これらのフィルムによっても安定した細孔構造が得られるため、それを、透水性もしくは防水透湿性の透明シートとして用いることができる。

[1−2−10]クレイズ処理 樹脂フィルムに細孔構造を構成する加工法は、上記の延伸処理に特定されず、クレイズ加工を用いてもよい。

例えば、図44のようなクレイズ加工装置651を用いて、樹脂フィルムに細孔構造を構成することができる。すなわちクレイズ処理部653によって、透明なポリフッ化ビニリデンのフィルム、つまり透明シート52の素材となるフィルム、その分子配向方向に対して略並行に所定の度652で折り曲げ、その上面および下面に圧力を掛けながら矢印a方向に引っ張る。これにより、透明シート52の素材となるフィルムには、図45(a)のように、分子配向方向と略平行に、細かな連続的なひび状の模様を成す縞状のクレイズが形成され、そのクレイズによって細孔52Aが形成される。図45(b)のように、透明シート52の素材となるフィルムに、基材シート50を接合してから、それらをクレイズ処理した場合には、細孔52A,40Aが形成される。また図45(c)のように、透明シート52の素材となるフィルムに、基材シート50と色材受容層53とを接合してから、それらをクレイズ処理した場合には、細孔52A,40A,53Aが形成される。

クレイズには、樹脂フィルムの表面に現れる表面クレイズと、その内部に発生する内部クレイズがある。透明シート52には、それらのクレイズが連結して、透明シート52を貫通する細孔52Aが形成されればよい。つまり、クレイズ加工により、透明シート52用のフィルムには分子束(フィブリル)と孔(ボイド)とが形成され、それらが部分的に連結して、全体としてスポンジ構造を成すように貫通する細孔52Aが形成されればよい。このような細孔52Aが形成されたフィルムは、透水性もしくは防湿透湿性の透明シート52として使用することができる。また、クレイズは、熱処理等により緩和されて消失する場合もある。しかし、再度引っ張ることにより再び現れるため、クレイズ加工した透明シート52に適切な張力を掛けながら、それを基材シート50に積層することにより、透明シート52の細孔構造を調整することができる。また、細孔52Aの大きさは、クレイズ加工の際にフィルムを引っ張る力、およびフィルムの上面および下面に掛ける圧力などによって、調整することができる。また、ポリフッ化ビニリデンのフィルムをクレイズ加工することによって、細孔構造を構成することが可能であり、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等のフィルムを用いることもできる。

《透明シート製膜後に細孔処理》 [1−2−11]穿孔加工 図1(b)のように透明シート52が細孔構造を持たない場合には、種々の穿孔処理によって、透明シート52に細孔52Aを形成することができる。穿孔処理としては、図46(a),(b)のような針657、拍車650、および刃型などの機械的穿孔加工、あるいは図46(c)のようなレーザ加工装置658によるレーザ加工を用いることができる。

図39のように透明シート52単体に穿孔処理を施した後、同図(a)または(b)のように、その透明シート52に基材シート50と色材転写層53を積層してもよい。また、図40(a)または(b)のように、透明シート52と色材転写層53とを積層してから、透明シート52側または色材転写層53側から穿孔処理を施した後に、基材シート50を積層してもよい。また、図41のように透明シート52と基材シート50とを積層した後、同図(a),(b),(c)のように穿孔処理を施してから、色材転写層53を積層してもよい。図41(a)の場合は、透明シート52が穿孔処理され、図41(b)の場合は、透明シート52と基材シート50が透明シート52側から穿孔処理され、図41(c)の場合は、透明シート52と基材シート50が基材シート50側から穿孔処理される。また、図42のように透明シート52と基材シート50と色材転写層53とを積層した後、同図(a),(b),(c),(d)のように穿孔処理を施してもよい。図42(a)の場合は、透明シート52と基材シート50が基材シート50側から穿孔処理され、図42(b)の場合は、透明シート52と基材シート50と色材転写層53が基材シート50側から穿孔処理される。図42(c)の場合は、透明シート52と色材転写層53が色材転写層53側から穿孔処理され、図42(d)の場合は、透明シート52と基材シート50と色材転写層53が色材転写層53側から穿孔処理される。

図42の例においては、反転画像72が形成される前の転写材1に対して、穿孔処理が施される。しかし、図24から図26のように、転写材1に反転画像72を記録(工程1)してから、穿孔処理を施してもよい。図24の場合は、同図(a),(b),(c),(d)のように、反転画像72が記録された転写材1に穿孔処理(穿孔工程)を施してから、色材転写層53を記録物の画像支持体55に転写(工程2)して、基材シート50を剥離(工程3)する。図25の場合は、色材転写層53を画像支持体55に転写(工程2)した後、穿孔処理(穿孔工程)を施してから、基材シート50を剥離(工程3)する。図26の場合は、色材転写層53を画像支持体55に転写(工程2)して、基材シート50を剥離(工程3)した後に、穿孔処理(穿孔工程)を施す。

このように、少なくとも記録物が実際に使用される前に、その表面を覆う透明シート52に貫通する細孔52Aが形成されていればよい。

[1−2−12]穿孔加工(針) 図46(a),(b)のように、透明シートに細孔構造を付与する簡単な加工方法としては、先端が鋭利に尖った針や刃型を押し付けて、透明シートを貫通する細孔を形成する方法がある。

透明シートが薄膜の樹脂フィルムの場合は、小さく圧力による押し付け加工によって穿孔することが可能である。やや厚手の樹脂フィルムの場合は、ガラス転移温度の前後にまで樹脂フィルムを加熱した状態で機械的な穿孔加工を施すことによって、より安定した細孔構造を与えることが可能である。金属やセラミックスなどの先端を鋭利に加工した針列、針ローラ、拍車列、刃型、刃型ロールを用いることにより、好適な細孔構造を連続的に付与し、効率よく穿孔することができる。さらに、鋭利な先端に、ダイヤモンド加工などを施すことにより、その耐久性を向上させることができる。透明シートの穿孔加工は、前述したように、透明シート単体の他、基材シート上に積層された状態、色材受容層と積層された状態、または基材シート、透明シート、および色材受容層が順次積層された状態の透明シートに対して、行うことができる。透明シートが表面に露出した状態であれば、透明シートの表面側から機械的な穿孔加工を行うことが好ましい。透明シートが基材シートや色材受容層など他の層に挟まれている場合には、他の層の厚みや材質など機械的強度を考慮して、他の層側を介して透明シートを貫通する機械的な穿孔加工を施せばよい。この場合には、基材シートや色材受容層などにも微細な細孔が形成される。しかし、転写材の搬送性やインクジェット記録特性に影響がないよう留意して、細孔の径や密度を調整すればよい。

前述したように、画像支持体に色材受容層と透明シートが転写された後に、透明シートに穿孔加工を施すことも可能である。上記のように、透明シートが加熱された状態で機械的な穿孔加工を行うことが好ましいため、転写材を画像支持体に加熱圧着してから基材シートを剥離した直後に、機械的な穿孔加工を行うことが好ましい。先端が鋭利な拍車列によって穿孔加工を行う場合には、画像支持体の搬送排出機能を拍車列に持たせることも可能である。同様に、透明シートや転写材の製膜・積層工程中、および画像記録装置の中において、拍車列や針ローラなどを用いて穿孔加工を行う場合には、それらの拍車列や針ローラなどにフィルムの搬送機能を合わせて持たせることが可能である。このように、記録物に対して、透明シートを貫通する細孔構造を機械的に設けてもよく、その方法、装置構成は特に制限されない。

[1−2−13]穿孔加工(レーザ) 図46(c)のように、透明シートに細孔構造を付与する簡単な加工方法としては、レーザ加工装置658を用いる方法がある。

透明シートが薄膜の樹脂フィルムの場合には、公知のレーザ加工装置を用いて、良好で安定した細孔構造を生産性良く付与することができる。例えば、特許公報第2706498号には、ワーク表面からの反射レーザ光のレベルを検知して、次の細孔の加工に移行するレーザ加工方法が記載されており、この加工方法を透明シートに細孔構造を付与する方法として適用可能である。透明シートに設けられる細孔の孔径は、レーザ光源の選定およびレーザ光の集光レンズなどの光学系の調整によって設定可能であり、また細孔の間隔は、反射ミラーなどによる光学走査系によって設定可能である。レーザ加工による穿孔加工は、機械的な穿孔加工と同様に、透明シート単体の他、基材シート上に積層された状態、色材受容層と積層された状態、または基材シート、透明シート、および色材受容層が順次積層された状態の透明シートに対して、行うことができる。透明シートが表面に露出した状態であれば、透明シートの表面側からレーザ光を照射して穿孔加工を行うことが好ましい。また、透明シートが基材シートや色材受容層など他の層に挟まれている場合には、透明シートの光吸収特性と、他の層の厚みや材質などの光学的特性と、を考慮して、他の層側からレーザ光を照射することにより透明シートの穿孔加工が可能である。この場合には、基材シートや色材受容層などにも微細な細孔が形成されることがある。しかし、転写材の搬送性やインクジェット記録特性に影響がないように留意して、細孔の径や密度を調整すればよい。また、必要に応じて、レーザ光の照射側とは反対側になる他の層の表面に、レーザ光の反射膜などを設けて、透明シートが効率的にレーザ光を吸収できるようにしてもよい。さらに、透明シートの樹脂に、予め、レーザ光を吸収しやすい微粒子を分散させておいて、レーザ光による穿孔加工性を向上させてもよい。

[1−3]基材シート 本実施形態の転写材は、図1(b)の転写材1と同様に基材シート50を備えている。基材シート(「剥離ライナー」、「セパレータ」とも称される。)は、後述する離型層または色材受容層の支持体となるシート体である。

基材シートの材質については、前述したように、基材シートのSP値と色材受容層のSP値との差SP1が式(10)を満たす材料であることが好ましく、また基材シートの材料としては樹脂フィルム等を挙げることができる。例えば、基材シートとして、従来の熱転写シートの基材フィルムとして利用されていた樹脂フィルム等をそのまま利用することができる。

基材シートの形成材料としては、例えば、ポリエステル(PET等)、ナイロン(脂肪族ポリアミド)、ポリイミド、酢酸セルロース、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ゴム、フッ素樹脂、アイオノマー等の樹脂からなる樹脂フィルム;等が好ましい。これらの中でも、耐熱性に優れるPETフィルムが好ましい。樹脂フィルムは、1種を単独で用いること、または2種以上を複合あるいは積層して用いることができる。

基材シートの厚さは、材料強度等を考慮して適宜決定すればよく、特に制限はない。ただし、基材シートの厚さは、5〜200μmであることが好ましい。基材シートの厚さを好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上とすることにより、色材受容層を積層した際に、その積層体のカールを防止することができる。転写材をロール状とする場合には、転写材の製造装置上での搬送性を向上させるために、転写材の厚さを15μm以上とすることが好ましい。転写材をカットシート状とする場合には、カットシートのカールを防止する観点から、転写材の厚さを30μm以上とすることが好ましい。

一方、基材シートの厚さを200μm以下、好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下とすることにより、転写材を画像支持体に加熱圧着させる場合の熱伝達性を良好とすることができる。

[1−4]離型層 転写材は、図1(c)の転写材1のように離型層51を備えていてもよい。離型層51は、離型剤を含有する組成物からなる層であり、基材シート50と透明シート52との間に設けられる。離型層51を備えることによって、透明シート52から基材シート50を容易に剥離することができる。

離型剤の種類としては特に制限はなく、離型性に優れ、ヒートローラやサーマル式のインクジェット記録ヘッドが発生する熱で容易に溶融しない材料であることが好ましい。例えば、シリコーンワックス等のワックス類に代表されるシリコーンワックス、シリコーン樹脂等のシリコーン系材料;フッ素樹脂等のフッ素系材料;は、離型性に優れる点において好ましい。

離型層の厚さは、剥離性等を考慮して適宜決定すればよく、特に制限はない。ただし、離型層の厚さは、乾燥状態で0.1〜10μmであることが好ましい。離型層の厚さを好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは1μm以上とすることにより、基材シートと透明シートとの融着を抑制することができる。一方、離型層の厚さを好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下とすることにより、転写材を画像支持体に加熱圧着させる場合の熱伝達性を良好とすることができる。

なお、透明シートの表面に艶消し(マット)加工を行う場合には、離型層に各種粒子を含有させること、または透明シートに当接する側の離型層の表面をマット処理しておくことが好ましい。マット加工は、透明シートの光沢感を適度に制御することができる点において有である。

[1−5]アンカー層 転写材は、図1(c)の転写材1のようにアンカー層59をさらに備えてもよい。

アンカー層59は、透明シート52と色材受容層53との間に配置される。アンカー層を備えることにより、透明シートと色材受容層との接着強度を向上させて、それらの接着強度の不足による透明シートからの色材受容層の剥離を抑制することができる。アンカー層は、色材受容層の水溶性樹脂のけん化度や分子量を上述した範囲にすることにより、色材受容層と透明シートの接着性を向上させ、その相乗効果により高い接着性を得ることができる。透明シートと色材受容層の間に設けられるアンカー層は、透明シートと同様に水分を系外に放出する必要がある。そのため、透明シートに細孔構造を付与するための処理をアンカー層に対しても行って、透明シートとアンカー層を貫通する細孔を形成することが好ましい。

また、表面改質処理として、色材受容層を塗工する透明シート52の表面に、予めコロナ放電処理やプラズマ放電処理を施したり、IPAやアセトン等の有機溶剤を塗工して透明シート52の表面をあらしたりしてもよい。このようなアンカー層の処理により、塗れ性を改良して密着性を向上させることができる。このように、アンカー層の形成や表面処理により、色材受容層53と透明シート52との結着性を高めて、膜強度を上げ、透明シート52の剥がれを防止することができる。

このような、アンカー層59としては、結着性を高めるものとして、例えば、熱可塑性の合成樹脂、天然樹脂、ゴム、ワックス等を用いて形成することができる。より具体的には、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、粘着性付与剤としてのロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリアミド樹脂、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体等を挙げることができる。

アンカー層59は、後述する付着工程時のヒートローラによる熱処理によって、溶融させることが好ましい。アンカー層59の溶融により、色材受容層53及び透明シート52の表面の凹凸の影響を受けることなく、色材受容層53と透明シート52の結着性をより強固なものとすることができる。そのためアンカー層59は、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは60〜160℃、さらに好ましくは70〜140℃、特に好ましくは70〜100℃の熱可塑性樹脂によって形成することが好ましい。一方、その温度範囲が160℃以上の場合には、過剰な熱エネルギーにより熱可塑性樹脂が熱変形するため、良好な接着が行われなくなる。

[1−6]ホログラム層 転写材は、図1(c)の転写材1のようにホログラム層58をさらに備えてもよい。ホログラム層58は、三次元像が記録された層であり、透明シート52と色材受容層53との間に配置される。透明シートと色材受容層との間に設けられるホログラム層は、透明シートと同様に水分を系外に放出する必要がある。そのため、透明シートに細孔構造を付与するための処理をホログラム層に対しても行って、透明シートとホログラム層を貫通する細孔を形成することが好ましい。ホログラム層を備えることにより、記録物(クレジットカード等)の偽造を防止する効果が得られる。ホログラム層の構成に特に制限はなく、従来公知の構成を採用することができる。例えば、レリーフホログラム等を挙げることができる。

アンカー層59を設けられる場合には、図1(c)のように、アンカー層59と透明シート52の間にホログラム層58を設けることができる。ホログラム層58は、一般に樹脂層によって構成され、その層自体は単一構造でもよく、また多層構造でもよい。また、ホログラム層は、平面型ホログラムおよび体積型ホログラムのいずれでもよく、平面型ホログラムの場合、なかでもレリーフホログラムの場合には量産性及びコストの面から好ましい。

その他、フレネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、イメージホログラム等のレーザ再生ホログラム、及び、レインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらにそれらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチプレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子等を用いることができる。

干渉縞を記録するためのホログラム形成用の感光材料としては、銀塩、重クロム酸ゼラチン、サーモプラスチックス、ジアゾ系感光材料フォトレジスト、強誘電体、フォトクロミックス材料、カルコゲンガラス等が使用できる。また、ホログラム形成層の材質として、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、そして、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂を硬化させたもの、又は、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物が使用可能である。

さらに、ホログラム層58の材質として、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質の使用が可能である。ホログラム層58は、従来既知の方法によって形成することができる。例えば、透明型ホログラムがレリーフホログラムである場合には、干渉縞が凹凸の形で記録されたホログラム原版をプレス型として用いる。そして、このホログラム原版上にホログラム形成用樹脂シートを置いて、加熱ロール等の手段によって両者を加熱圧着し、ホログラム形成用の樹脂シートの表面にホログラム原版の凹凸模様を複製する。このような方法によって、レリーフ形成面を有するホログラム形成層を得ることができる。

[1−7]積層構造 転写材は、基本的には、図1(b)および図22の転写材1のように、基材シート50、透明シート52、及び色材受容層53が順次積層された積層構造である。「基材シート、透明シート、及び色材受容層が順次積層」とは、基材シート、透明シート、および色材受容層の相互間に他の層が介在するか否かに拘わらず、基材シート、透明シート、および色材受容層がその順序に従って積層されていることを意味する。そのため、図1(c)の転写材1のように、透明シート52と色材受容層53との間にアンカー層59やホログラム層58が存在する構造も、「基材シート、透明シート、及び色材受容層が順次積層」された積層構造に含まれる。

転写材は、図1(c)および図22の転写材1のように、基材シート50、透明シート52、色材受容層53が相互に当接された積層構造であることが好ましい。すなわち、基材シート50と透明シート52、透明シート52と色材受容層53の間に、他の層(シートも含む。)が介在していない構造が好ましい。記録物の対象物となるクレジットカード等は厚さの制限が厳格であるため、積層される層やシートの数を減じて、記録物を薄厚化することが望ましいからである。

図1(c)のように、転写材1が離型層51、アンカー層59、ホログラム層58を備える場合には、色材受容層53、アンカー層59、ホログラム層58、透明シート52、離型層51、及び基材シート50が順次積層された積層構造とすることが好ましい。

[1−8]転写材の形状と厚さ 転写材は、後述する画像記録装置や記録物の製造装置の構造に合わせて、ロール状又はシート状(カットシート状)であってもよい。ロール状の転写材の場合、色材受容層は外側にしても内側にしてもよい。しかし、後述する画像記録装置の搬送機構に最適に対応するように、色材受容層を外側とし、基材シートを内側とするロール状が好ましい。

基材シートの厚さは、色材受容層の厚さの1.5〜5倍であることが好ましい。それを1.5倍以上とすることにより、シート状(カットシート状)の転写材のカールを防止して、画像記録装置や記録物の製造装置における転写材の搬送性を良好にすることができる。一方、それを5倍以下とすることにより、画像支持体に転写材を加熱圧着させる際の熱伝達性を良好にすることができる。

転写材は、熱時剥離型であってもよいし、冷時剥離型であってもよい。熱時剥離型の転写材は、画像支持体と転写材を加熱圧着させた後、それら両部材の積層体の温度が高い状態のまま、基材シートを剥離することが最適な転写材である。一方、冷時剥離型の転写材は、画像支持体と転写材を加熱圧着させた後、それら両部材の積層体の温度が低下した状態で基材シートを剥離することが最適な転写材である。

熱時剥離型の転写材は、画像支持体に転写材を加熱圧着させた後、直ぐに基材シートを剥離することができるため、生産性の面で優れている。例えば、ロール状の転写材を用いて、基材シートの剥離をロール・ツー・ロール(roll to roll)で行うことにより、生産性を向上させることができる。一方、冷時剥離型の転写材は、画像支持体と転写材を加熱圧着させた後、両部材の積層体の温度が低下してからの基材シートの剥離が可能である。そのため、シート状(カットシート状)の転写材を用いる場合等には、画像支持体と転写材を加熱圧着させた後、基材シートを剥離する際のハンドリングが容易になる。

[1−9]製造方法 転写材は、前述したように、透明シートの製膜工程中もしくはその後工程において、透明シートの構成材料中に成分として含まれる材料が連泡構造の細孔を構成(発泡(図36)、多孔質粒子(図37)、中空粒子(図38))することができる。また、穿孔(図39,図40)によって連泡構造の細孔を構成することもできる。このような透明シートを基材シート上にラミネート(図39,図40)または積層接着させ、その後、色材受容層を形成する塗工液を塗工することによって、転写材を製造することができる。また、基材シート上に透明シートの製膜した後、別の手段により透明シートに所望の細孔処理を施して、その後、色材受容層を形成する塗工液を塗工することによって、転写材を製造することができる。また、基材シート及び透明シートが順次積層された積層体に、色材受容層を形成する塗工液を塗工した後に、別の手段により透明シートに所望の細孔処理(図41,図42)を施すことによって、転写材を製造することができる。また、基材シート及び透明シートが順次積層された積層体に、色材受容層を形成する塗工液を塗工した後に、色材受容層に画像を記録してから、別の手段により透明シートに所望の細孔処理(図41,図42)を施すこともできる。なお、以下の記載においては、転写材の項等で既に説明した事項については割愛し、製造方法固有の事項のみ説明する。

[1−9−1]透明シート 透明シートとしては、予め表面改質が行われたものを用いてもよい。透明シートの表面を粗面化する表面改質を行うことにより、透明シートの濡れ性が向上し、色材受容層やアンカー層との密着性を向上させることができる場合がある。表面改質の方法は、特に制限されない。例えば、透明シートの表面に、予めコロナ放電処理やプラズマ放電処理を行う方法;透明シートの表面にIPAやアセトン等の有機溶剤を塗工する方法;等を挙げることができる。これらの表面処理により、色材受容層と透明シートとの結着性が高まり、強度が向上し、透明シートからの材受容層の剥離を抑制することができる。

透明シートは、他の層やシートとの積層体とした状態で用いてもよい。例えば、アンカー層、透明シート、離型剤を含有する組成物からなる離型層、および基材シートが順次積層された積層シートを用いることが好ましい。

透明シートの形成は、透明シートに2種類のエマルション溶液および、前記エマルション溶液に発泡材や中空粒子、多孔質粒子を含有させた塗工液を、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法、スロットダイコーティング法等により基材上に塗工し、乾燥させることで行なうことができる。このとき、塗工後の乾燥温度をエマルジョンE1のTg以上、エマルジョンE2のTg未満とすることが好ましい。この温度で透明シートを作成することにより、エマルジョンの一方を造膜し、他方が粒子として残存している透明シートを製造することができる。透明シート形成時に、Tg2以上の温度で加熱乾燥するとE1とE2が両方とも造膜した状態となり、剥離工程において、クラックが入りにくくなり、十分な端部の切れ性、基材シートからの剥離性、べたつき防止が得られない。一方、透明シート形成時にTg1より小さい温度で加熱してしまうと、エマルジョンE1,E2が両方とも粒子状態となり、膜が形成しにくくなると共に、膜形成ができたとしても平滑性が低下し、色材受容層への十分な接着性が得られなくなる。また、透明シートの強度が著しく低下し、薬品などに浸漬したときの剥がれなども発生しやすくなる。透明シート形成時の乾燥温度が高いと、塗工スピードをあげることができるので、生産性の面において、透明シート形成時の乾燥温度は、上記範囲内においてできるだけ高いほうが好ましい。また、前述した透明シートを形成する材料に延伸加工を施して、透明シートを形成してよい。なお、透明シートは、透明シートを形成する過程で、[1−1−2]細孔の形成方法に記載した方法により細孔を形成することが好ましい。

離型層は、基材シートを構成する樹脂フィルム等に、離型層を構成する樹脂やワックスを含有する塗工液を塗工し、乾燥することにより形成することができる。塗工方法としては、従来公知の塗工方法、例えばグラビア記録法、スクリーン記録法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の塗工方法を挙げることができる。

[1−9−2]塗工液 色材受容層は、少なくとも水溶性樹脂を、適当な媒体と混合して塗工液を調製し、これを透明シートの表面に塗布し、乾燥させて色材受容層を形成することで得られる。尚、色材受容層を空隙吸収型とする場合は、少なくとも水溶性樹脂、無機微粒子、水溶性樹脂及びカチオン性樹脂を、適当な媒体と混合して塗工液を調製する。

塗工液の媒体としては、水性媒体を用いることが好ましい。水性媒体としては、水;水と水溶性有機溶剤との混合溶媒;等を挙げることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、 メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類; エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類; アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類; テトラヒドロフラン等のエーテル類;等を挙げることができる。

塗工液には、本発明の効果を妨げない限り、各種添加剤を含有させることができる。反転画像を記録するインクとして染料インクを用いる場合には、染料固着剤を含有させることが好ましい。染料固着剤は染料分子のアニオン性基と結合して塩を形成して、染料を水に対して不溶化させることにより、マイグレーションを防止することができる。

その他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、インク定着剤、ドット調整剤、着色剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤等を挙げることができる。

塗工液中の無機微粒子の濃度は塗工液の塗工性等を考慮して適宜決定すればよく、特に制限はない。ただし、塗工液の全質量に対し、10〜30質量%とすることが好ましい。

[1−9−3]塗工 色材受容層の形成は、例えば、基材シート及び透明シートの積層体を構成する透明シートの表面に、塗工液を塗工することにより行う。塗工後は、必要に応じて塗工液の乾燥を行う。これにより、図1(b)または図18のように、基材シート50、透明シート52、及び色材受容層53が順次積層された積層構造の転写材1を得ることができる。

アンカー層、透明シート、離型層、及び基材シートが順次積層された積層シートを用いる場合には、積層シートを構成する透明シートの表面に、塗工液を塗工すればよい。これにより、図1(c)のように、色材受容層53、アンカー層59、透明シート52、離型層51、及び基材シート50が順次積層された積層構造を有する転写材1を得ることができる。

塗工方法としては、従来公知の塗工方法を用いることができる。例えば、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、スロットダイコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ロールコーティング法等を挙げることができる。

塗工液の塗工量は、固形分換算で10〜40g/m2とすることが好ましい。塗工量を好ましくは10g/m2以上、さらに好ましくは15g/m2以上とすることにより、インク中の水分吸収性に優れた色材受容層を形成することができる。これにより、記録された反転画像中のインクが流れ、および反転画像の滲みを抑制することができる。一方、塗工量を好ましくは40g/m2以下、さらに好ましくは20g/m2以下とすることにより、塗工層を乾燥させる際に、転写材にカールが発生し難くなる。また、色材受容層の厚さを薄くすることにより、最終的に形成される記録物の厚さを薄厚化することができる。画像支持体がクレジットカード等のプラスチックカードである場合には、日本工業規格(JIS−X−6305)により厚さが厳格に規定されているため、塗工量とすることが有効である。なお、色材受容層用塗工液の塗工時に乾燥工程を設ける場合は、乾燥温度をエマルジョンE2のTg2未満にする必要がある。透明シート形成時の乾燥工程によって、色材受容層用塗工液を塗工するときにはエマルジョンE1が造膜し、エマルジョンE2が粒子状態となっている。色材受容層塗工時の乾燥温度がTg2以上になるとエマルジョンE2が造膜し、透明シート全体でE1とE2の両方が膜化した状態になり、転写材を転写するときにクラックが入りにくくなって、端部の切れ性が低下する。

[1−10]画像 図2(a)は、転写材を模式的に示す斜視図である。転写材は、その色材受容層に画像が記録される。図2(a)のように、色材受容層53には、色材受容層53の側から見ると鏡像となり、透明シート52の側から見ると正像となる反転画像72が記録されることが好ましい。反転画像72は、透明シート52が積層されていない色材受容層53の面に記録される。インクジェット記録方式は、従来の熱転写方式と比較して、記録物の生産性及び情報セキュリティーが向上して、記録コストの低減を図ることが可能となる。

転写材に記録される画像は、染料インクにより形成された画像であってもよいし、顔料インクにより形成された画像であってもよい。ただし、画像は、顔料インクにより形成されることが好ましい。顔料インクにより反転画像を形成することにより、色材受容層の表面にインク中の水分や溶媒が残存し難くなり、乾燥が容易となる。この結果、水分や溶媒に起因する画像支持体と転写材(具体的には、色材受容層)との接着不良、およびマイグレーション(インクの移動)を効果的に抑制することができる。さらに、顔料インクにより反転画像を形成することにより、その反転画像の耐光性を向上させることができる。

顔料インクは、図2(b)のように、その顔料インク中の顔料成分63は粒子径が大きい。そのため顔料成分63は、空隙吸収型の色材受容層64においては、その色材受容層64を形成する無機微粒子65によって構成される細孔の内部までは浸透せずに、色材受容層64の記録表面で定着する。また、空隙吸収型の色材受容層64は、膨潤型の色材受容層とは異なり、色材受容層64が膨潤することなく平滑に保たれる。一方、膨潤吸収型の色材受容層の場合は、図3(a)のように、インク中の水分により色材受容層67が膨潤して、色材受容層67の表面に凹凸が発生するため、画像支持体に対する色材受容層67の接着性を低下させてしまう。また、インク中の残存水分や溶媒は、色材受容層66の表面に残って、付着工程における残存水分及び溶媒の蒸発により画像支持体と色材受容層66との密着性を低下させる可能性があるため、好ましくない。

また、空隙吸収型の色材受容層64においては、図2(b)のように、顔料インク中の顔料成分63は色材受容層64の表面で定着し、一方、インク中の水分及び溶媒成分62は、色材受容層64の内部まで浸透して、顔料成分63と分離(固液分離)する。そのため、転写時には色材受容層64の表面が乾燥した状態になるため、水分の蒸発に起因する接着不良を抑制して、接着性を向上することができる。また、残存水分及び溶媒成分62は色材受容層64の内部に留まるため、顔料成分63は、再度、残存水分及び溶媒成分62が接触することがなく、インクの移動(マイグレーション)を抑制することができる。一方、染料インクの場合には、図3(b)のように、残存水分の影響により、染料成分68が溶媒成分69のように移動(マイグレーション)してしまい、にじみが発生する。

顔料インク中の顔料成分としては、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、およびスルホン基のうちの少なくとも1種の官能基またはその塩を結合された自己分散顔料、あるいは顔料粒子の周りを樹脂で被覆した樹脂分散型の顔料を用いることができる。それらの中でも後者の樹脂分散型の顔料は、記録画像の擦過性が向上するため好ましい。また、樹脂分散型顔料を用いることによって、インク媒体と分離した後の顔料粒子同士の結着力を高めて、色材受容層の表面に顔料膜を形成することができる。この場合、顔料膜の表面上の水分は少量となる。これは、顔料膜が色材受容層中の下層の水分をほぼ遮断し、さらに下層からの水分補給もほぼ遮断するからである。そのため、樹脂分散型の顔料成分は、インクの高速定着および高速記録に適しており、好ましい。なお、色材受容層にカチオン性樹脂を含有させることにより、一般的にマイナス帯電している顔料粒子は、カチオン性樹脂と静電気的に結合して、色材受容層と顔料インクとの接着性を強固にする。また、顔料インクとして樹脂分散型顔料を使用する場合には、その分散樹脂と色材受容層中のカチオン性樹脂のSP値を近い値にすることが好ましい。これにより、樹脂分散型顔料の色材受容層への接着性が向上する。このような分散樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のアクリル樹脂を用いることが好ましい。

また、分散樹脂は、色材受容層の水溶性樹脂のポリビニルアルコールなどのSP値と値が近いため、転写時の熱で分散樹脂および水溶性樹脂が溶融すると、両者の相溶性が高まり、樹脂分散顔料は色材受容層にも強固に接着される。そのため、記録画像の表面が顔料膜で覆われても、色材受容層との結着性を高めることができる。さらに、分散樹脂のSP値は、画像支持体のPVC、PET−GなどのSP値と値が近いため、転写時の熱で分散樹脂および画像支持体表面の構成成分(PVC、PET−Gなど)が溶融すると、両者の相溶性が高まり、樹脂分散顔料は画像支持体に強固に接着される。これにより、記録画像の色材受容層表面が顔料膜で覆われても、画像支持体との結着性を高めることができる。よって、画像支持体に対する色材受容層の転写性能を向上させることができる。

顔料粒子の周りを被覆する樹脂としては、酸価100〜160mgKOH/gである(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましい。酸価を100mgKOH/g以上とすると、サーマル方式でインクを吐出するインクジェット記録方式において、インクの吐出安定性が向上する。一方、酸価を160mgKOH/g以下とすると、顔料粒子に対して相対的に疎水性を有するようになり、インクの定着性及び耐滲み性が良好となる。したがって、インクの高速定着および高速記録に適する。

ここで酸価とは、1gの樹脂を中和するのに必要となるKOHの量(mg)であり、その親水性を示す指標となり得るものである。また、この場合の酸価は、樹脂分散剤を構成する各モノマーの組成比から計算により求めることもできる。具体的な顔料分散体の酸価の測定方法としては、電位差滴定により酸価を求める、Titrino(Metrohm製)等を使用することができる。

顔料分散体で使用する樹脂は、疎水性の顔料を水系液媒体中に良好に分散させる分散機能を有するものであることが好ましく、ランダムコポリマーが使用される。ランダムコポリマー以外、例えばブロックコポリマー等は、顔料の親水性が高くなるものが多く、印字画像の耐水性が劣るものが多いため好ましくない。顔料分散体で使用する樹脂の製法は、常法によるものであり、例えば、特許4956917号に開示されている方法を用いることができる。なお、顔料インクの各成分と物性の好ましい範囲については、例えば、特開2015−110321号公報に記載されているものを使用することができる。

[1−11]画像の記録 転写材に対しては、前述したように、透明シートが積層されていない色材受容層の面に画像を記録する。その画像は、色材受容層の側から見ると鏡像となり、透明シートの側から見ると正像となる反転画像である。その結果、図2(a)のように、転写材1の色材受容層53に反転画像72が記録されて、記録媒体(画像が記録された転写材)が形成される。

インクジェット記録方式とは、記録ヘッドに形成された複数のノズルから、転写材に対してインク(インク滴)を吐出して画像を記録する方式である。インクジェット記録方式の種類は、特に制限されない。例えば、駆動パルスに応じてヒータが発する熱エネルギーによって、ノズル内のインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用してノズルからインク滴を吐出させる、サーマルインクジェット記録方式が好ましい。

インクジェット記録方式による画像の記録は、インクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)により実施することができる。インクジェットプリンタは、画像の記録時に、記録ヘッドと転写材とが接触しないため、画像を極めて安定して記録することができる点において好ましい。インクジェットプリンタの種類は、特に制限されない。例えば、インク吐出口及びインク流路等からなるノズルを複数集積したマルチノズルヘッドを、転写材の搬送方向と直交するように多数配列させたラインヘッドを備えた、フルライン型のインクジェットプリンタを用いることが好ましい。フルライン型のインクジェットプリンタは、転写材の搬送に合わせて、複数のノズルのインク吐出口から同時にインクを吐出させて画像の記録を行う。そのため、高品位で高解像度の画像を高速で記録することができる。

記録ヘッドのインクの吐出量としては、20pl以下であることが好ましい。インクの吐出量を好ましくは20pl以下、さらに好ましくは10pl以下、特に好ましくは5pl以下とすることにより、転写材と画像支持体との加熱圧着工程において、インクの水分量を適切なレベルにコントロールすることができる。また、吐出量を小さくするほど、色材受容層でのインクの広がりを抑えて、稠密で十分な濃度の反転画像を記録することができる。さらには、画像層(インク層)の厚さを抑えることが可能となる。

また、記録方式として、記録面に対する記録ヘッドの相対的な移動走査と、画像が記録された転写材の搬送と、を繰り返す、シリアルヘッド型のインクジェット記録方式を用いてもよい。このような記録方式は、熱転写方式の記録速度に比べて十分な優位性があり、また液滴を小さくして高品位な画像を容易に記録することができる。

また画像は、画像支持体よりも大きなサイズで転写材に記録することが好ましい。これにより、転写材の記録画像を記録物の画像支持体に転写して、結果的に、その画像支持体に対して、良好な画像をふち無し記録することができる。仮に、インクジェット方式によって、直接、画像支持体にふち無し記録を行った場合には、その画像支持体のエッジ部分にインクが吸収されて、そのエッジ部分に記録される画像の品位が低下するおそれがある。しかし、本実施形態のように、画像支持体よりも大きなサイズの画像を転写材に記録して、その画像を画像支持体に転写することにより、画像支持体のエッジ部に対しても良好な画像を記録することができる。

[1−11−1]マーキング処理 また、画像を記録する際に、後述する転写工程における自動ラミネート機(転写部)に転写材を位置合わせするために、図4(a)のように、マーキング162を印刷することが好ましい。転写材に対して、記録物の画像支持体のサイズに対応する記録領域161と、その外側の領域160と、を含む範囲に画像を記録して、それを転写することにより、上記のように画像支持体にふち無し記録を行うことができる。位置合わせようのマーキング162は、これらの領域160,161の外側に印刷される。このマーキング162を後述する透過または反射型のセンサで読み取ることにより、転写時における貼り合わせ位置を正確に規制することができる。また、図4(b)のように、転写材がカットシート形状である場合には、記録領域161の外側に、マーキング162に加えて、貼り合わせガイド163を印字することにより、転写時における貼り合わせの位置調整を容易に行うことができる。

[1−11−2]インクの乾燥 画像が記録された転写材は、画像を形成しているインクジェット記録用のインクの水分量が、インクの総打ち込み量に対して70質量%以下となるまで乾燥することが好ましい。インクの水分量を好ましくは70%質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下とすることにより、画像支持体と転写材とを加熱圧着させる際に、インク成分の急激な蒸発を抑制することができる。この結果、画像支持体と転写材との密着強度の低下、および色材受容層における気泡残り等の発生を抑制することができる。なお、ここにいう水分量とは、色材を除く水及び不揮発性溶媒等の総量を意味するものとする。

インクの総打ち込み量は、記録ヘッドのインク吐出量により調整することができる。水分量の制御を容易に行えるように、予め、画像記録時に形成するインクのドット数を間引く等して、打ち込み量を制限してもよい。

乾燥は、ハロゲンヒータ等のヒータ(熱源)、ファン等の排気装置等により行うことができる。ただし、ヒータ等の特別な乾燥手段を設けずに、十分な長さの搬送路を搬送させることによって、自然乾燥を促してもよい。

[1−12]細孔処理 前述したように、透明シートに予め細孔が形成されていない転写材を用いる場合には、画像記録後の転写材に所望の細孔処理手段を用いて、透明シートに細孔を形成することができる。この場合には、図24のように、細孔を色材受容層53の表面側から形成してもよく、基材シート50の表面側から形成してもよい。画像品位を良好に保つためには、基材シート50の表面から細孔を形成することが好ましい。

[1−13]プライマー層 本実施の形態においては、図5および図66のように、画像記録後の転写材1の色材受容層53の表面に、プライマー層56をさらに備えてもよい。プライマー層として、例えば、特開2015−110321号公報に記載されているものを好ましく使用することができる。

[2]記録物 記録物は、前述した図33のように構成することができ、画像支持体55に、画像が記録された転写材1の色材受容層53が転写される。その色材受容層53を覆う透明シート52には、前述したように、細孔52Aが形成、または連泡構造553,554,555が構成される。また、画像支持体55のSP値と、画像支持体55に当接する転写材の層(図1(a)の例では、色材受容層53のSP値と、の差SP2が下式(12)の関係を満たすことが好ましい。これにより、画像支持体と色材受容層との相溶性が高くなり、画像支持体と色材受容層は高い接着性を示す。 0≦SP2≦1.0 (12)

[3]記録物の製造方法 画像支持体、色材受容層、及び透明シート、を備えた記録物は、工程1,2,3を含む製造方法によって製造される。工程1においては、基材シートと、透明シートと、少なくとも水溶性樹脂を含有する色材受容層と、が積層された転写材の色材受容層に、インクジェット記録方式などにより画像を記録して、画像が記録された転写材(記録媒体)を得る。工程2においては、その記録媒体の色材受容層を画像支持体に加熱圧着する。工程3においては、記録媒体から基材シートを剥離して記録物を得る。透明シートには、図23および図47から図49のように予め細孔が形成されていてもよい。また、前述しように穿孔工程によって透明シートに細孔を形成してもよく、図24の場合には工程2の前、図25の場合は工程2の後、図26の場合には工程3の後に、穿孔工程によって細孔が形成される。

以下、具体的に、記録物の製造方法における工程2および工程3について説明する。

図6(a)は、転写材1を画像支持体55に貼付した積層体84を模式的に示す断面図である。図6(b)および図67は、図6(a)の積層体84から基材シート50を剥離した記録物73を模式的に示す斜視図である。

転写材1は、図6(a)のように、その色材受容層53が画像支持体55に貼り付けられる。これにより、画像支持体55、色材受容層53、及び透明シート52が順次積層された積層体84が形成されて、色材受容層53に記録された反転画像が画像支持体55に貼り付けられる。

図6(b)のように、透明シート52に予め細孔が形成されていない転写材1を用いる場合には、前述したように、積層体84が形成された後に、基材シート50の表面側から透明シート52に細孔を形成することができる。その場合には、図25のように、基材シート50と透明シート52に細孔50A,52Aを形成することができ、また基材シート50、透明シート52、色材受容層53に細孔50A,52A,53Aを形成することもできる。これらの細孔は、前述したように、図46(a),(b)の針657、拍車650、または刃型などの機械的穿孔加工、あるいは図46(c)のようなレーザ加工装置658などによって形成することができる。画像の記録品位を良好に保つにためには、基材シート50と透明シート52に対して細孔50A,52Aが形成することが好ましい。

図6(b)および図67のように、積層体84から基材シート50を剥離することにより記録物73が得られる。図6(b)のように、透明シート52に細孔が形成されていない場合には、後述するように、記録物73を形成後に、図46のような穿孔処理を施すことによって、透明シート52に細孔52Aを形成することができる。

[3−1]画像支持体 画像支持体の構成は、特に制限されない。画像支持体としては、例えば、樹脂を構成材料とする画像支持体(樹脂ベース支持体)、紙を構成材料とする画像支持体(紙ベース支持体)等を挙げることができる。樹脂べース支持体としては、例えば、クレジットカード、ICカード等の樹脂製カードを挙げることができる。紙ベース基材としては、例えば、パスポート等の紙製冊子、および紙製カード等を挙げることができる。

[3−1−1]樹脂ベース支持体 樹脂ベース支持体を構成する樹脂は、画像支持体の用途に応じて適宜選択すればよく、特に制限されない。例えば、 ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂; ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂; ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のポリフッ化エチレン系樹脂; ナイロン6、ナイロン6,6等の脂肪族ポリアミド樹脂; ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体樹脂; 三酢酸セルロース、セロハン等のセルロース系樹脂; ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂; ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の、その他の合成樹脂;を挙げることができる。

樹脂ベース支持体を構成する樹脂は、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート、ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂であってもよい。また、樹脂ベース支持体は、樹脂を主たる構成材料としているものであればよく、例えば、属箔等の樹脂以外の材料を含むものであってもよい。

[3−1−2]紙ベース支持体 紙ベース支持体を構成する紙の種類は、特に制限されない。例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、サイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙、セルロース繊維紙等を挙げることができる。

[3−1−3]その他 樹脂ベース支持体及び紙ベース支持体は、必要に応じて、エンボス、サイン、ICメモリ(ICチップ)、光メモリ、磁気記録層、偽変造防止用記録層(パール顔料層、透かし記録層、マイクロ文字等)、エンボス記録層、ICチップ隠蔽層等を備えてもよい。また、樹脂ベース支持体及び紙ベース支持体は、上述の材質からなる単層体として構成してもよいし、材質や厚さの異なるシートやフィルムを2層以上貼り合わせた複層体として構成してもよい。

さらに、画像支持体の全体の厚さは、30〜800μmであることが好ましい。画像支持体の厚さを好ましくは30μm以上、さらに好ましくは500μm以上、特に好ましくは650μm以上とする。一方、画像支持体の厚さを好ましくは800μm以下、さらに好ましくは770μm以下とする。画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合には、インクジェット記録物全体の厚さをJIS6301に記載される総厚さ0.68〜0.84mmに制御することができる。

[3−2]積層構造 記録物73は、図6(b)および図67のように、画像支持体55、色材受容層53、及び透明シート52が順次積層された積層構造を有している。また、図67の記録物73における透明シート52は、貫通する細孔52Aを有している。

[3−3]記録媒体と画像支持体との加熱圧着 図6(a)のように、画像支持体と、画像が記録された転写材(記録媒体)1と、が重ねた状態で加熱圧着されることにより、積層体84が得られる。

加熱圧着の温度は、60〜160℃に制御することが好ましい。加熱圧着の温度を好ましくは60℃以上とすることにより、色材受容層中のカチオン性樹脂、水溶性樹脂等の樹脂やプライマー層(又はアンカー層)に含まれる熱可塑性樹脂を接着に十分な程度に溶融させて、画像支持体と転写材とを圧着させることができる。一方、加熱圧着の温度を好ましくは160℃以下とすることにより、画像支持体と記録媒体とを加熱圧着させる際に、インク成分の急激な蒸発を抑制して、画像支持体と記録媒体との密着強度の低下、色材受容層における気泡残り等の発生を抑制することができる。

記録物におけるエマルジョンE2は、転写条件(例えば、転写温度や転写速度)を調整することにより、十分に皮膜化した状態で転写することもでき、または、一部粒子が残った状態で転写することもできる。図71に示すように加熱圧着時に、画像支持体55と色材受容層が接着している部分963の透明シート部分980と、画像支持体と色材受容層が接着していない部分964の透明シート部分981と、で膜状態が異なるように制御することができる。すなわち、加熱圧着時において、透明シート部分980はヒートロールの熱が伝わりやすいため、エマルジョンE2の一部が膜化して一部粒子が残存した状態(図71(b))、あるいは透明シートのエマルジョンE2が完全に皮膜化した状態(図71(c))になる。このとき、一部あるいは完全に膜化したエマルジョンE2は、予め膜化しているエマルジョンE1と結合力が強化されて透明シートの膜強度を強化することができる。一方、透明シート部分981はヒートロールの熱が伝わらないため、エマルジョンE2を粒子状態のままにすることができる。透明シート部分980と透明シート部分981では膜の状態が異なるため、剥離工程では、境界部982を基点としてクラックが入りやすくなる。以上から、2種類のエマルジョンを用いて、エマルジョンE2の膜状態を、加熱圧着時の温度を利用して変化させることにより、箔切れを良好することができる。使用者の要求する性能に応じて、エマルジョンE2の一部粒子が皮膜化した状態と、エマルジョンE2が完全に膜化した状態と、を使い分けることができる。

加熱圧着の方法は、特に制限されない。例えば、画像支持体に記録媒体を積層して積層体とし、その積層体を一対のヒートローラ間に挟み込んで加熱圧着する方法等を挙げることができる。その場合、ヒートローラの表面温度は、100〜180℃とすることが好ましい。これにより、積層体の搬送速度が速くて加熱時間が十分にとれない場合でも、積層体を60〜160℃に加熱することができる。

図9、図28から図31のような後述する製造装置25を用いる場合には、画像支持体55側に接するヒートローラ22として、シリコーンローラを使用することが好ましい。シリコーンローラはSP値が8.7付近になるため、ヒートロータ21,22の間に画像支持体55が存在しないとき、つまり色材受容層53がヒートローラ22に接するときに、ヒートローラ22に対して色材受容層53が付着し難くなる。したがって、ヒートローラ22への色材受容層53の転写を防止することができる。ヒートローラ21は、基材シート50側から記録媒体を加熱する。

[3−4]基材シート及び離型層の剥離 図6(a)の積層体84から基材シート50を剥離することにより、インクジェット記録物73が得られる。この記録物73において、最上層に位置する透明シート52は、その下層側の色材受容層53に記録された反転画像72を保護する。プライマー層を備える場合、画像支持体55は、プライマー層を介して色材受容層53に十分に密着固定される。

転写材が熱時剥離である場合には、加熱圧着後、温度が下がらないうちに、直ちに基材シートを剥離することが好ましい。熱時剥離タイプの場合は、図7(a)のような分離爪86を備えた剥離機構、または図7(b)のような剥離ロール88を用いて、基材シートを剥離することが好ましい。このような剥離方法は、転写材をロール・ツー・ロール(roll to roll)によって供給する場合、つまりロール状の転写材を繰り出して供給し、その転写材の基材シートをロール状に巻き取る場合に、生産性を高める上において有効である。

転写材が冷時剥離型の場合は、温度が下がっても基材シートを剥離することができる。そのため、ロールやピール機構による剥離だけでなく、手動による剥離も可能になるため、特に、基材シートがカットシート状に加工されている場合に好適である。転写材をロール・ツー・ロール(roll to roll)によって供給する場合の剥離角度θは0〜165°であり、さらに好ましくは90°〜165°である。この剥離角度θを設定することにより、後述する転写材のプレカット処理により分離されたパッチ部分が不用意に剥がれたり、めくれたりすることが防止できる。図7(b)における搬送角度θは、上記の角度のみに限定されない。

加熱圧着および剥離工程においては、公知の2本ロールタイプ、あるいは4本ロールタイプのラミネート機を使用してもよい。4本ロールタイプは、2本ロールタイプに比べて、加熱圧着時の熱が伝わりやすく、剥離工程を容易に行うことができるため、好ましく使用される。

[3−5]両面同時剥離 画像支持体の両面のそれぞれに、画像が記録された転写材を同時に転写する場合には、図8のように、上面転写材92と下面転写材94における画像の記録位置をずらすことが好ましい。これにより、熱ローラ転写において膨潤型色材受容層を用いた場合には、SP値が同じであるため色材受容層同士の接着する場合があるが、これを防止して、表裏同時の転写が可能となる。また、ピール部90によって、基材シートを容易に引き剥がすことができる。

[3−6]透明シートに対する細孔形成 前述したように、透明シート52に予め細孔が形成されていない転写材1を用いる場合には、積層体84が形成された後に、基材シート50の表面側から透明シート52に細孔を形成することができる。すなわち、図25のように、基材シート50と透明シート52に細孔50A,52Aを形成することができ、また基材シート50、透明シート52、色材受容層53に細孔50A,52A,53Aを形成することもできる。これらの細孔は、前述したように、図46(a),(b)の針657、拍車650、または刃型などの機械的穿孔加工、あるいは図46(c)のようなレーザ加工装置658などによって形成することができる。画像の記録品位を良好に保つにためには、基材シート50と透明シート52に対して細孔50A,52Aが形成することが好ましい。

[4]インクジェット記録装置 図27の記録装置は、転写材を搬送経路に送り出す供給部と、その搬送経路に送り出された転写材の色材受容層に、色材を付与して画像を記録する記録部6と、を備える。尚、透明シートに細孔が形成されていない転写材を用いる場合には、前述したように、工程2の前工程(図24)、工程2の後工程(図25)、または工程3の後工程(図26)において、透明シートに細孔を形成するための穿孔加工部659を備える。図27における穿孔加工部659は、工程1の前工程において透明シートに細孔を形成するように、備えられている。

[4−1]インクジェット記録装置 具体的に、記録装置としては、記録ヘッドに形成された複数のノズルから、転写材にインク(インク滴)を吐出して画像を記録するインクジェット方式の記録装置(インクジェットプリンタ)を用いることができる。このような記録装置は、画像の記録時に記録ヘッドと転写材とが接触しないため、極めて安定的に画像を記録することができて好ましい。インクジェットの記録方式は特に限定されず、サーマル方式およびピエゾ方式は、いずれも好適に使用できる。駆動パルスに応じて発熱するヒータの熱エネルギーによってノズル内のインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して、ノズルからインク滴を吐出させるサーマルインクジェット記録方式は、他の記録方式に比して高解像度であるため好ましい。また、インク吐出口およびインク流路などからなるノズルを複数集積したマルチノズルヘッドを、転写材の搬送方向と直交するように多数配列させたラインヘッドを備えた、フルライン型のインクジェットプリンタを用いることが好ましい。このフルライン型のインクジェットプリンタは、転写材の搬送に合わせて、複数のノズルのインク吐出口から同時にインクを吐出させて画像を記録する。そのため、高品位で高解像度の画像を高速に記録することができる。

[4−2]透明シートへの細孔形成 前述したように、透明シートに予め細孔構造が構成されていない図1(b)の転写材1を用いる場合には、図27の記録装置において、機械的穿孔加工あるいはレーザ加工によって、透明シートに細孔を形成することができる。

[5]記録物の製造装置 記録物の製造装置は、図27のような記録装置と、画像支持体を搬送経路に送り出す画像支持体供給部と、搬送経路に送り出された画像支持体に転写材を付着させる付着部と、転写材から基材シートを剥離する剥離部と、を備える。透明シートに予め細孔構造が構成されていない転写材を用いる場合には、図24から図26のような穿孔工程に対応する穿孔加工部659を備える。

[5−1]第1の製造装置 図9は、透明シートに予め細孔が形成されている転写材を用いて、記録物を製造する製造装置25の第1の構成例(以下、「第1の製造装置」ともいう。)を模式的に示す側面図である。

[5−1−1]主要な構成 製造装置25は、供給部4と、記録部6と、を備える。供給部4は、透明シートに予め細孔が形成されていてロール状に巻かれた転写材1を、搬送経路へと送り出す。記録部6は、搬送経路へ送り出された転写材1に、色材、水、および不揮発性の有機溶媒等を含有する水系インクを直接吐出して、反転画像を記録する。

また、製造装置25は、インクが付与された転写材1の中の水分を蒸発させて、画像支持体55との密着性を向上させるための乾燥部7と、蒸発した水分によって、装置内の結露を防止するファン10と、を備える。さらに、製造装置25は、画像支持体55を加熱して転写材1との密着性を向上させるための予備加熱部19と、反転画像が記録された色材受容層および透明シートを画像支持体55に付着させる付着部29と、を備える。さらに、付着後の画像支持体55のカールを矯正するカール矯正部150、基材シートを剥離する剥離部151、両面記録を行う際に画像支持体55を反転させる画像反転部152、および画像が記録された画像支持体55を排出して集積する排出部26を備える。

[5−1−2]動作 供給部4は、色材受容層が外側に位置するように巻かれたロール状の転写材1を、図中の矢印に示す方向に回転させることにより、転写材1を記録部6へ送り出す。転写材1は、不図示のガイド板によって案内されると共に、グリップローラ3とニップローラ2により挟持されて、平坦な状態で記録部6へと搬送される。

供給部4から転写材1の搬送が開始されると、マーキングをセンサ部31が検出し、その転写材1の色材受容層に記録部6が反転画像を記録する。その後、転写材1は乾燥部7を通過する。乾燥部7は、反転画像を形成するインク中の水などを蒸発させ、ファン10は蒸発した水分を排気する。これにより、色材受容層に反転画像が記録された転写材1が得られる。このとき、前述したマーキング印刷も行う。

一方、供給部12は、付着部に画像支持体55を1枚ずつ供給する。レジストガイド14が画像支持体55と転写材1とを位置合わせし、その画像支持体55の上に転写材1が積層される。画像支持体55と転写材1との積層体は、付着部29に搬送される。付着部29は一対のヒートローラ21,22を備えており、それらのローラ間を積層体が通過する際に、画像支持体55と転写材1とが加熱圧着される。

その後、画像支持体55と転写材1との積層体は、カール矯正部150に搬送されてカールが矯正されてから、剥離部151において、転写材1の基材シート及び離型層が剥離されて巻取りロール24に巻き取られる。また、両面記録を行う場合には、画像反転部152によって画像支持体55を反転させて、それをレジストガイド14までバックフィードさせる。そして記録部6において、表面記録時と同様に、画像支持体55の裏面に転写すべき反転画像を転写材1の色材受容層に記録し、レジストガイド14までバックフィードさせた画像支持体55の裏面に、その反転画像を転写させる。このようにして、画像支持体55に転写材1が加熱圧着された記録物を得ることができる。

[5−1−3]第1の製造装置とコントローラとの接続 製造装置25は、図10のように、ネットワーク47を経由してコントローラ41に接続される。この製造装置25は、ネットワーク47を介さずに、シリアル・ポート、パラレル・ポート、またはUSBポート等を介して、コントローラ41に接続することも可能である。製造装置25の制御部44に備わるCPUは、記録部、乾燥部、付着部、カール矯正部、剥離部、画像反転部に接続されていて、それらの動作を制御する。

ネットワーク47は、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)等のネットワークであり、有線、無線を問わない。コントローラ41は、製造装置25を制御するためのコンピュータである。コントローラ41において、制御部44、表示部45、入出力部46、記憶部42、および通信部43は、システム・バス48を介して互いに接続されている。コントローラ41には、デジタルカメラ、画像データ等を読み込むためのドライブ装置、および製版装置等を接続してもよい。

制御部44は、CPU、RAM、およびROM等を有する。CPUは、ROM等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、演算処理および動作制御を行って、システム全体を制御する。ROMは不揮発性メモリであり、プログラムおよびデータ等を恒久的に保持する。RAMは揮発性メモリであり、プログラム、およびデータ等を一時的に保持する。

表示部45は、CRTモニタ、または液晶パネル等のディスプレイ装置であり、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を含む。入出力部46は、データの入出力を行う部分である。データの入力を行うものとしては、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等であり、これらの入力部を介して、コントローラ41に対して、操作指示、動作指示、データ入力、維持管理等を行うことができる。また、入出力部46に不図示のスキャナやドライブ装置等を接続することにより、これらの外部装置からの入力データを制御部44に転送したり、データを外部装置に出力したりすることができる。

記憶部42はデータを記憶する装置であり、磁気ディスク、メモリ、光ディスク装置等を用いることができる。記憶部42には、制御部44が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(Operating System)等が格納される。また、製造装置25の記録部6によって記録されるパターンを格納することもできる。通信部43は、コントローラ41とネットワーク47間の通信を媒介する通信インターフェースであり、通信制御装置および通信ポート等を有する。コントローラ41の代りに、パーソナルコンピュータ等を用いることも可能である。

[5−1−4]制御系 図11は、図9の記録部6に備わる制御系の構成を示すブロック図である。ホストPC120から送信された記録データやコマンドは、インターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、記録部6の記録データの受信、記録動作、転写材1のハンドリング等、全般的な制御を司る演算処理装置である。CPU100は、受信したコマンドを解析した後、記録データの各色成分の画像データをイメージメモリ106にビットマップ展開する。画像の記録前に、出力ポート114およびモータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、記録ヘッド22(22K、22C、22M、22Y)をキャッピング位置(待機位置)から記録位置(画像形成位置)に移動させる。記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、それぞれブラック(Bk)、シアン(C),マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する記録ヘッドである。その後、一定速度で搬送される転写材に対して、インクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するために、センサ部31(先端検出センサ)によって転写材の位置を検出する。その後、転写材の搬送に同期して、CPU100は、イメージメモリ106から各インク色に対応する記録データを順次に読み出し、その記録データを、記録ヘッド制御回路112を介して対応する記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに転送する。これにより、記録ヘッドの各ノズルに設けられた吐出エネルギー発生素子(ヒータやピエゾ素子など)が記録データに基づいて駆動され、駆動された吐出エネルギー発生素子に対応するノズルからインク滴が吐出される。吐出されたインク滴は、記録ヘッドの対向位置にある転写材の色材受容層(インク受容部)へ着弾して、ドットを形成する。このドットの集合によって、所望の画像が記録される。

このようなCPU100の動作は、プログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブル等が記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108が使用される。

[5−1−5]第1の製造装置の動作フロー 次に、図2のフローチャートにしたがって、図9の製造装置(第1の製造装置)25の動作フローについて説明する。この動作フローにしたがう処理は、図11の記録部のCPU100によって実行される。

記録部のCPUは、記録データがコントローラからネットワークまたは各種ポートを介して送信されたか否かを判定し(ステップS101)、記録データが送信されたときに、供給部からの画像が未記録の転写材の供給を開始させる(ステップS102)。そして、マーキングをセンサ部が検出していなければ、つまりセンサ部がOFFであれば、記録部が転写材に対する記録動作を開始する(ステップS103,S104)。記録動作の終了後(ステップS105)、乾燥部の乾燥処理によって、画像が記録された転写材から余分な水分を蒸発させる(ステップS106)。その後、レジストガイドにおいて、画像支持体と転写材とを位置合わせする(ステップS107)。その位置合わせの完了後、付着部において転写材と画像支持体とを接着させる(ステップS108,S109)。以上の動作は、いずれもセンサ部がマーキングを検出した時点を基準としている。

一方、CPUによって、記録データが送信されたと判定されたときに、画像支持体の供給部から付着部へ画像支持体が給送される(ステップS107,S108)。レジストガイドにおいて、画像支持体と転写材とを位置合わせする(ステップS111)。その位置合わせの完了後、付着部において転写材と画像支持体とを接着させる(ステップS112,S113)。その後、剥離部へと搬送されるに伴って、転写材の基材シートが剥離され、記録物(最終記録物)を排出部に排出して積載させる(ステップS114)。

[5−1−6]第1の製造装置により実行される処理 [5−1−6−1]転写材の位置検出 図9のセンサ部31は、付着部の動作の同期をとるために転写材1の位置を検出し、CPUは、その検出結果に基づいて各部の制御を行う。マーキングの検出には、反射型又は透過型の光センサを用いる。

[5−1−6−2]プレカット処理 必要に応じて、転写材に色材受容層を形成した後に、色材受容層の側から、色材受容層と透明シートの一部に切り込みを入れるプレカット処理を行ってもよい。プレカット処理は、反転画像が記録された転写材と画像支持体とを接着した後に、切り込みを起点にして透明シートを綺麗に切断することができる。これにより、均一な厚さの透明シートによって強固な保護層を形成して、色材受容層に形成された反転画像に十分な耐久性を付与することができる。好ましいプレカット処理としては、特開2015−110321号公報に処理方法が挙げられる。

[5−1−6−3]記録処理 前述したように、インクジェット方式の記録装置によれば、記録ヘッドと転写材とが非接触であるため画像を安定的に記録することができ、またフルライン型の場合には、高解像度の高品位の画像を高速に記録することができる。

図9の製造装置25において、転写材1は、グリップローラ3とニップローラ2とに挟持されつつ、不図示のガイド板上を通過して記録部6に入る。記録部6は、画像データに応じて記録ヘッド6からインクを吐出することにより、転写材1の色材受容層に画像を記録する。

[5−1−6−4]水分蒸発制御 画像の転写時に、インクを含む色材受容層の表面にインクが残存していると、その色材受容層と画像支持体との密着不良が生じるおそれがある。その転写時の加熱により、色材受容層の表面に残るインク成分やインクが急激に蒸発して、密着不良や色材受容層の部分的な気泡残り等が生じるおそれがある。そのため、画像が記録されてから転写されるまでの間の転写材の搬送路において、その転写材を乾燥させることが好ましい。その場合、ヒータ等の特別な乾燥手段を設けずに、転写前の転写材の搬送路を十分に長くして自然乾燥を促してもよい。また、蒸発したインク成分を考慮して、記録装置内部の気流制御および排気手段が必要となる場合もある。図9の製造装置25においては、インク画像が記録された転写材1が乾燥部7と不図示のガイド板との間を通る際に、ハロゲンなどの熱源、送風機、またはそれら組み合わせた乾燥部7によって、インクの主成分である水や若干の揮発性溶剤成分を蒸発させる。また、その蒸発した気体の記録装置内における結露等を防ぐために、ファン10によって気流および排気を制御する。気流の制御を併用することによって、色材受容層の表面の飽和蒸気圧を改善して乾燥を促進させることもできる。

このようなインクの水分制御によって、付着部29における付着工程時に、色材受容層中のインクの水分量(色材を除く水と不揮発性溶媒等の総量)をインクの総打ち込み量に対して、好ましくは70%以下、さらに好ましくは50%以下に制御する。インクの水分量が70%以上残る場合には、色材受容層の厚さにもよるが、色材受容層の表面に残るインク成分やインクの急激な蒸発により、密着不良や色材受容層の部分的な気泡残り等が生じるおそれがある。また、インクの総打ち込み量は、記録ヘッドの吐出量により異なるが、上記のような水分制御が適切に行われるように、予め、画像の記録時にドット数を間引く等して適正な量に設定することができる。

[5−1−6−5]付着工程 図9のように、画像が記録された転写材1は不図示のガイド板に案内されて、ヒートローラ21,22を含む付着部29に移動する。枚葉状のシート形態の画像支持体55は、供給部12に積載されており、レジストガイド14によって位置を補正されてから、転写材1の搬送に合わせて付着部29に供給される。供給部12は、画像支持体55における画像の転写面へのゴミ付着、およびピックアップ時によるゴムロールからの汚染を防止するため、下側に位置するものから供給される。

画像が記録された転写材1の色材受容層と、画像支持体55と、が当接するように、転写材1と画像支持体55とを重ねてヒートローラ21,22間に搬送して、加熱することにより、画像支持体55と転写材1とが接着される。その後、転写材1の基材シートを剥離する。これにより、画像支持体55は、画像が記録された色材受容層と共に透明シートが付着した状態となる。つまり、画像支持体55上には、透明シートが保護膜として最上層に位置し、その保護膜の下に画像が位置する。

加熱圧着時における転写材への加熱は、プラスチックカード等の厚めの画像支持体側からでなく、主として転写材の基材シート側からの熱伝達によって行う。付着部29による付着工程において、色材受容層の最大到達温度は、色材受容層の水溶性樹脂成分をガラス転移温度以上で、かつインクの主成分たる水の蒸発温度を超えないように制御すればよい。つまり、転写材1と画像支持体55とを接着させる際のヒートローラの表面温度は、色材受容層の水溶性樹脂が十分に溶融し、かつ水が蒸発して転写材1と画像支持体55との間に気泡を生じさせない温度であればよい。また、搬送速度等が速くて、熱源による加熱時間が十分に確保できない場合には、熱源と色材受容層とに温度差が生じるおそれがある。この場合には、ヒートローラの表面温度は、100〜180℃等、通常よりも高くなるように制御してもよい。また、閉空間内において加熱した場合には、圧力上昇によって沸点が上昇して、プライマー層と透明シート層とに挟まれた色材受容層では水の蒸発温度は上昇するため、密着性および端部の箔切れ性に考慮してさらに高い温度となるように制御してもよい。

[5−1−6−6]予備加熱 必要に応じて、画像支持体55を加熱して転写材1との密着性を向上させるために、予備加熱部を供給部12と付着部との間に設けてもよい。予備加熱により、転写材1が付着される前の画像支持体(カード等)55の表面を適度に加熱することができる。

[5−1−6−7]カール矯正 図9のように、画像支持体55と転写材1とを付着させた後に、カール矯正部150によって画像支持体55のカールを矯正して、それをフラットにする。画像支持体55が温かいうちに、それをカール矯正部150における加熱プレートと支持プレートとの間に挟み込むことにより、その画像支持体55のカールを矯正することができる。

[5−1−6−8]剥離処理 図9のように、付着部29を通過した転写材1における基材シート50は、画像の記録領域以外の部分が剥がされて、巻取りロール24に巻き取られる。また画像が転写された画像支持体55は、排出部26に搬送されて一枚ずつ集積される。

[5−1−6−9]画像反転装置 画像支持体55の両面に画像を転写する場合には、図9のように、製造装置25に画像反転部152を備えることが好ましい。画像支持体55の一方の面(表面)に画像が転写されて、その面から基材シート50が剥離された後の画像支持体55(記録物)は、反転装置152により上下が反転される。その記録物は、他方の面(裏面)に画像を転写するために、レジストガイド14までフィードバックされる。これと同時に転写材1もフィードバックされ、そのフィードバック後、記録部、付着部、カール矯正部、および剥離部において表面の画像記録時と同様の処理を行なって、記録物の裏面に画像が転写される。

製造装置25には、図13のように、転写材1の搬送経路上のインクジェト画像記録後に、転写材1にプライマーを転写するための転写部13を備えてもよい。プライマーは、レジストガイド14において位置合わせされた画像支持体55を転写材1に接着させるためのものである。

転写部13には、転写材1が1枚ずつ供給される。転写部13において、プライマーシートは、供給ロール15(プライマー供給ロール)から供給され、サーマルヘッド30と転写材1との間を通り、ガイドロール16を経由して巻上げロール17(プライマー巻上げロール)に巻き取られる。サーマルヘッド30によって、転写材1にプライマーが転写される。サーマルヘッド30は、プライマーの厚さや材質等により変化する熱容量に応じたエネルギーが印加されることにより、発熱して、プライマーを転写材1に移行させて接着層を形成する。サーマルヘッド30がプライマーシートを部分的に加熱(選択的加熱)することにより、IC部等、表面コートを施したくない特殊な部分に対しては、プライマーを転写させない選択的なプライマー転写が可能となる。転写材1の全面にプライマー層を付与する場合には、ヒートローラ等の安価な加熱手段を用いてプライマー転写を行うことが可能である。

[5−2]第2の製造装置 図28は、記録物の製造装置の第2の構成例(以下、「第2の製造装置」ともいう)の説明図である。第2の製造装置25は、透明シートに予め細孔構造が構成されていない転写材1を用いる。この第2の製造装置は、前述した第1の製造装置に対して、透明シートに細孔を付与するための穿孔加工部659を備えた構成となっている。この穿孔加工部659は、画像記録前の転写材1の透明シートに対して細孔を付与する。第1の製造装置と同様の部分についての説明は省略する。

穿孔加工部659は、転写材の色材受容層側もしく基材シート側のどちら側からでも透明シートに細孔を形成することができる。記録画像の品位を良好に保つためには、図28のように、基材シート側から穿孔することが好ましい。また、このような穿孔加工は、図24のように、少なくとも透明シートに細孔が形成できればよい。その穿孔加工は、図46(a),(b)のような針657、拍車650、刃型などの機械的の穿孔加工、あるいは図46(c)のようなレーザ加工装置658によるレーザ加工であってもよい。

[5−3]第3の製造装置 図29は、記録物の製造装置の第3の構成例(以下、「第3の製造装置」ともいう)の説明図である。第3の製造装置25は、透明シートに予め細孔構造が構成されていない転写材1を用いる。この第3の製造装置は、穿孔加工部659の配備位置が第2の製造装置と異なる。すなわち、第3の製造装置における穿孔加工部659は、画像記録後の転写材1の透明シートに対して細孔を付与するように配備されている。第2の製造装置と同様の部分についての説明は省略する。

[5−4]第4の製造装置 図30は、記録物の製造装置の第4の構成例(以下、「第4の製造装置」ともいう)の説明図である。第4の製造装置25は、透明シートに予め細孔構造が構成されていない転写材1を用いる。この第4の製造装置は、穿孔加工部659の配備位置が第2および第3の製造装置と異なる。すなわち、第4の製造装置における穿孔加工部659は、図25のように、画像が転写されたた後、かつ基材シートの剥離前における転写材1の透明シートに対して、細孔を付与するように配備されている。第2の製造装置と同様の部分についての説明は省略する。

[5−5]第5の製造装置 図31は、記録物の製造装置の第5の構成例(以下、「第5の製造装置」ともいう)の説明図である。第5の製造装置25は、透明シートに予め細孔構造が構成されていない転写材1を用いる。この第5の製造装置は、穿孔加工部659の配備位置が第2,第3,および第4の製造装置と異なる。すなわち、第5の製造装置における穿孔加工部659は、図26のように、画像が転写され、かつ基材シートの剥離された後における転写材1の透明シートに対して、細孔を付与するように配備されている。第2の製造装置と同様の部分についての説明は省略する。

[5−6]第6の製造装置 記録物の製造装置の第6の構成例(以下、「第6の製造装置」ともいう)においては、プリンタ部と転写部とが分離独立して構成されている。

図14(a)は、転写材1に画像を記録するプリンタ301の斜視図であり、図14(b)および図15(a)は、転写材1を搬送する搬送機構302の説明図である。まず、図15(a)の巻き出しロール313に、図15(b)のように色材受容層53が外側にして巻かれたロール状(外巻きロール)の転写材1をセットする。転写材1は、搬送ベルト310によって記録ヘッド311と対向する記録位置に搬送され、反転画像が記録されてから、巻き取りロール314によって記録媒体として巻き取られる。

次に、画像が記録済みのロール状の転写材(記録媒体)1を、図16のラミネート機の巻き出しロール201にセットする。画像支持体55が供給部206から供給され、転写材1は巻き出しロール201から転写部203へ搬送される。転写材は、センサ208によってマーキングが検知され、画像支持体55と位置合わせされてから、転写ロール204によって画像支持体55と加熱圧着される。その後、転写材1の基材シート50が剥離ロール207によって剥離されてから、巻き取りロール202によって巻き取られる。なお、図17(a)のように、基材シート50を外側にし、色材受容層53を内側にして巻かれたロール状(内巻きロール)の転写材1を用いる場合には、図17(b)のように構成された搬送パスを用いる。このような内巻きのロール形態においては、色材受容層の表面に対するゴミの付着を防止することができる。

透明シートに予め細孔構造が構成されていない転写材を用いる場合には、図50(a),(b)のように記録ヘッド311による画像の記録工程の前後において、穿孔加工部659により透明シートに細孔を形成することができる。または、図51(a),(b),(c)のようにラミネート機による転写工程の前、基材シートの剥離工程の後、基材シートの剥離工程の前において、穿孔加工部659により透明シートに細孔を形成してもよい。また、穿孔加工部659は、プリンタ部と転写部から独立させた穿孔加工装置を構成するものであってもよい。この場合、転写材の状態において細孔を形成するためには、プリンタ部と転写部の間に、図56(a)のような独立した穿孔加工部を設けることが好ましい。また、基材シートの剥離後に細孔を形成するためには、図56(b)のように、画像の転写工程の後に穿孔加工をする独立した穿孔加工部を設けることが好ましい。

[5−7]第7の製造装置 記録物の製造装置の第7の構成例(以下、「第7の製造装置」ともいう)においては、プリンタ部と転写部とが分離独立して構成されている。この製造装置は、図18のように、転写材1に画像が記録した後に、その転写材1をカット機構315によってシート状にカットしてから、排出部316に排出するように構成されている。カットされた転写材1は、その後、図19のように、手動によって画像支持体55と位置合わせされた後、転写部203を構成する転写ロール204によって加熱圧着されてから、排出部205に排出される。その後、基材シートを手動で引き剥がして記録物を得る。また、転写材に画像する記録するときに張り合わせガイドを同時に記録することにより、その張り合わせガイドに画像支持体55が沿うように目視により確認しつつ、それらを手動により位置合わせすることができる。

透明シートに予め細孔構造が構成されていない転写材を用いる場合には、図52(a),(b)のようにカット機構315による転写材1のカット工程の前後において、穿孔加工部659により透明シートに細孔を形成することができる。または、図53(a),(b)のようにラミネート機による転写工程の前後において、穿孔加工部659により透明シートに細孔を形成してもよい。また、穿孔加工部659は、プリンタ部と転写部から独立させた穿孔加工装置を構成するものであってもよい。この場合、転写材の状態において細孔を形成するためには、プリンタ部と転写部の間に、図57のような独立した穿孔加工部を設けることが好ましい。また、基材シートの剥離後に細孔を形成するためには、図58のように、画像の転写工程の後に穿孔加工をする独立した穿孔加工部を設けることが好ましい。

[5−8]第8の製造装置 記録物の製造装置の第8の構成例(以下、「第8の製造装置」ともいう)においては、プリンタ部と転写部とが分離独立して構成されている。

図20(a)は、カットシート状に加工された転写材1に画像を記録するプリンタ401の斜視図であり、図20(b)は、プリンタ401における搬送機構402の概略構成図である。プリンタ401の供給部にセットされた転写材1は、搬送ベルト310によって記録ヘッド311と対向する記録位置に搬送され、反転画像が記録されてから、記録媒体として排出部414に排出される。その後、画像が記録済みの転写材1と画像支持体55とを図19のラミネート機より加熱圧着してから、手動により基材シートを引き剥がすことにより、記録物を得る。また、転写材に画像する記録するときに張り合わせガイドを同時に記録することにより、その張り合わせガイドに画像支持体55が沿うように目視により確認しつつ、それらを手動により位置合わせすることができる。

透明シートに予め細孔構造が構成されていない転写材を用いる場合には、図54(a),(b)のように記録ヘッド311による画像の記録工程の前後において、穿孔加工部659により透明シートに細孔を形成することができる。または、図53(a),(b)のようにラミネート機による転写工程の前後において、穿孔加工部659により透明シートに細孔を形成してもよい。また、穿孔加工部659は、プリンタ部と転写部から独立させた穿孔加工装置を構成するものであってもよい。この場合、転写材の状態において細孔を形成するためには、プリンタ部と転写部の間に、図58のような独立した穿孔加工部を設けることが好ましい。また、基材シートの剥離後に細孔を形成するためには、図56(b)のように、画像の転写工程の後に穿孔加工をする独立した穿孔加工部を設けることが好ましい。

[5−9]第9の製造装置 記録物の製造装置の第9の構成例(以下、「第9の製造装置」ともいう)においては、プリンタ部と転写部とが分離独立して構成されている。

図13のようなプリンタ部と転写部とが一体の製造装置において、シリアル型のインクジェットプリンタを用いる場合には、プリント部と転写部との間において、転写材および画像支持体の搬送速度に差を生じる場合があるため、このような速度差を吸収及び調節するためには、転写材および画像支持体に弛みをもたせる必要がある。プリント部と転写部とを独立させた分離型の場合には、プリント部と転写部における処理を各々の最適な速度で実施することができるため好ましい。

図21(a)は、転写材1に画像を記録するシリアルプリンタ501の斜視図であり、供給部513に転写材1がセットされる。転写材1は、搬送ロール510によって記録ヘッド502と対向する記録位置に搬送され、反転画像が記録されてから排出される。記録ヘッド502を矢印a,b方向に移動させつつ、記録ヘッド502のノズル511(図21(b)からインクを吐出する動作と、矢印a,b方向と交差(本例の場合は、直交)する方向に転写材1を搬送する動作と、繰り返すことによって、画像を記録する。その後、画像が記録済みの転写材と画像支持体とを図19のラミネート機により加熱圧着させてから、手動で基材シートを引き剥がすことにより、記録物を得る。また、転写材に画像する記録するときに張り合わせガイドを同時に記録することにより、その張り合わせガイドに画像支持体55が沿うように目視により確認しつつ、それらを手動により位置合わせすることができる。

透明シートに予め細孔構造が構成されていない転写材を用いる場合には、図55(a),(b)のように記録ヘッド502による画像の記録工程の前後において、穿孔加工部659により透明シートに細孔を形成することができる。または、図53(a),(b)のようにラミネート機による転写工程の前後において、穿孔加工部659により透明シートに細孔を形成してもよい。また、穿孔加工部659は、プリンタ部と転写部から独立させた穿孔加工装置を構成するものであってもよい。この場合、転写材の状態において細孔を形成するためには、プリンタ部と転写部の間に、図58のような独立した穿孔加工部を設けることが好ましい。また、基材シートの剥離後に細孔を形成するためには、図56(b)のように、画像の転写工程の後に穿孔加工をする独立した穿孔加工部を設けることが好ましい。

以上の第1から第9の製造装置においては、転写材が基材上に少なくとも透明シートと色材受容層を有している場合に、転写材を画像支持体に付着させる工程において、色材受容層のインク水分量の制御と付着時の温度制御とが行われる。これにより、転写材の透明シートと画像支持体との密着性を向上させて、耐候性、耐水性、耐薬品性、および耐ガス性等の各種耐久性に優れた記録物を提供することができる。

(第2の発明) 次に、第2の発明について説明する

[6]第2の発明の転写材 図68は、第2の発明における転写材1の断面図である。その転写材1は、基材シート50、透明シート52及び色材受容層53がこの順で積層された積層構造であり、透明シート52は水分を系外に水を排する機構を有する。色材受容層53は水溶性樹脂を含有し、また透明シート52は膨潤性樹脂を含有している。

図60は、画像支持体55に、転写材1の色材受容層53と透明シート52を転写して作成した記録物73の断面図である。透明シート52は膨潤性樹脂を有するため、色材受容層53に含まれる不要な水分を吸収して、その表面から水蒸気550として蒸発させることができる。図59は、図69の記録物73を長時間、水に浸漬させた後、水から取り出した状態における記録物73の断面図である。記録物73を水から取り出すと、色材受容層53に吸収された水分は色材受容層53の端部からだけでなく、膨潤性樹脂を介して透明シート52の表面全体からも蒸発する。このように、透明シートの表面全体から色材受容層内の水分を蒸発させることにより、色材受容層の収縮の応力は、矢印Bのように透明シートの表面全体に広く分散され、この結果、透明シートのひび割れを抑制することができる。

第2の発明と前述した第1の発明との相違点について説明する。第1の発明において、透明シートは、基材シートと色材受容層との間を貫通する細孔を有し、その物理的な穴(細孔)を通して色材受容層の水分が系外に排出される。この第1の発明においては、水が通過する細孔を他の分子が通る可能性がある。例えば、オゾンの分子などである。気体の水分子の大きさは0.4nm、オゾン分子の大きさは0.44nmであり、水が通ることのできる大きさの細孔であればオゾンも通過する可能性がある。そのため、第1の発明における透明シートは、第2の発明における無孔質の透明シートと比較すると、耐ガス性に関しては少し低下するおそれがある。しかしながら、色材として耐候性に優れた顔料を使用することにより、実用的に耐ガス性の低下は問題にならない。

第2の発明における透明シートは膨潤性樹脂を含むものであって、透明シートの物理的な細孔ではなく、透明シートの膨潤性樹脂の分子内を通過して、水が系外に排出される。透明シートが貫通する細孔を持っていないため、水以外の気体は通過し難く、耐ガス性に優れている。一方、透明シートに含まれる膨潤性樹脂は液体の水も吸収するため、汚染水等が透明シートの表面に長時間付着した場合に、それが透明シートの表面からも吸収される。そのため、第1の発明における透明シートと比較すると、薬品、および汚染水など液体状の汚れからの保護性能は劣るおそれがある。しかし、膨潤性樹脂を含む透明シートにおける水の吸収速度は、細孔を含む空隙吸収型の色材受容層における水の吸収速度の数十分の1程度であるため、短時間で液体状の汚れをふき取れば色材受容層の汚染までには至らない。

第2の発明における記録物73を製造する際には、図70のように、まず、転写材1の色材受容層53に、記録ヘッド607によって反転画像72を記録する(工程1)。次に、ヒートローラ21を用いて転写材1と画像支持体55とを加熱圧着して、画像支持体55に色材受容層53を転写させる(工程2)。最後に、剥離ロール88を用いて基材シート50を剥離(工程3)することにより、インクジェット記録物73を得る。

上述したように、第2の発明における転写材は、基材シート、透明シート及び色材受容層がこの順で積層された積層構造を有し、色材受容層は水溶性樹脂を含有し、透明シートは膨潤性樹脂を含有する。

[6−1]色材受容層 色材受容層については、上述した第1の発明と同様に、膨潤吸収型および空隙吸収型のいずれの色材受容層も使用できる。

[6−1−1]無機微粒子 色材受容層を形成する無機微粒子としては、上述した[1−1−1]と同様のものが使用できる。

[6−1−2]水溶性樹脂 色材受容層を形成する水溶性樹脂としては、上述した[1−1−2]と同様のものが使用できる。

[6−1−3]カチオン性樹脂 色材受容層を形成するカチオン性樹脂としては、上述した[1−1−3]と同様のものが使用できる。

[6−1−4]その他の添加物 色材受容層を形成するその他添加物としては、上述した[1−1−4]と同様のものが使用できる。

[6−1−5]厚さ 色材受容層の厚さは、上述した[1−1−5]と同様に設定できる。

[6−2]透明シート 転写材1は、図68のように透明シート52を備えている。透明シート52は、膨潤性樹脂660を含有しており、色材受容層53から透明シート52の表面まで膨潤性樹脂が均一に分散して、それらの間を連通する構造を持っている。膨潤性樹脂は分子内に多数の親水基を有しており、図59のように、その多数の親水基が水分子663を捕らえることによって水を吸収する性質を持っている。そのため透明シートは、それが無孔質であっても膨潤性樹脂が存在することによって、色材受容層の過剰な水分を吸収して表面から蒸発させることができる。透明シートは、その表面から蒸発した分だけ、新たに色材受容層から水分を吸収して蒸発させる。すなわち、透明シートに膨潤性樹脂を含有させることによって、透明シートに、記録物の系内の水分を系外に排出するポンプとしての機能を持たせることができる。このように、透明シートに膨潤性樹脂を含有させることにより、その膨潤性樹脂は、細孔と同様に記録物内の水分を外部に放出可能な通路を形成する。したがって、記録物の耐水性試験をして、色材受容層に多量の水分を吸水させた後に乾燥させた場合に、吸収された水分を記録物の端部のみならず、透明シートの全表面からも蒸発放散させて、応力集中に起因するひび割れの発生を抑制することができる。

透明シートが系内の水分を系外に放出するためには、透明シートの表面から色材受容層までの間に存在する全ての層内に、膨潤性樹脂を含有させることが好ましい。例えば、透明シートの表面の平滑性の向上、あるいは色材受容層との接着性の向上などの目的のために、透明シートにおける基材シート側もしくは色材受容層側に層を追加して、複数の層からなる透明シートを用いることもできる。この場合、透明シートが水分を系外に放出するためには、図61(b)のように、複数の層661,662からなる透明シート52の全ての層に膨潤性樹脂を含有させることが必要となる。仮に、透明シートと色材受容層との間に水の排出機構を持たない場合には、図61(a)のように、系外への水の排出が著しく阻害される。この結果、透明シートの表面からの水分の蒸発量が減少し、透明シートに応力が集中してひび割れが発生しやすくなる。

透明コートと色材受容層との間に、それらの接着性などを高めるためのアンカー層、あるいはセキュリティー性および意匠性を高めるためのホログラム層などを設けることもできる。この場合には、図62(a),(b)のように、透明シートの表面から色材受容層までに存在する透明シートの全ての層161,162,58,59に、水溶性樹脂あるいは吸水性樹脂を含有させることが好ましい。

[6−2−1]厚さ 透明シートの厚さは、特に制限されない。透明シートの水の排水効果に加えて、色材受容層の厚みに対する透明シートの厚みを制御することにより、耐水性をより向上させることができる。すなわち、透明シートの厚みが色材受容層の厚みに対して十分に大きければ、透明シートは十分な強度を持って収縮の応力を吸収することができるため、透明シートのひび割れは発生しにくい。一方、透明シートの厚みが色材受容層の厚みに対して小さくなると、透明シートの強度が相対的に弱くなり、色材受容層の収縮が相対的に大きくなるため、透明シートのひび割れは発生しやすくなり、透明シートの透湿性および水透過性を大きくする必要がある。水透過性および透湿性の度合いは、後述するように、水溶性樹脂の種類、ポリビニルアルコールにおいてはけん化度と重合度によって、制御できる。透明シートの厚み(A)と前記色材受容層の厚み(B)の比率(A/B)は、0.07≦(A/B)≦3.00.0の範囲であることが好ましい。

比率(A/B)が大きくて、透明シートの厚みが色材受容層の厚みに対して十分大きければ、透明シートは、十分な強度を持って収縮の応力をある程度吸収するため、透明シートにひび割れは起こりにくい。記録物の利用目的によっては、画像の長期保存性や耐候性、あるいはセキュリティー性の観点から、保護層である透明シートの厚みを数十μm以上にする必要が生じる場合もある。この場合でも、画像支持体と色材受容層との間の接着力、および色材受容層と透明シートとの間の接着力に応じて、水溶性樹脂を含む色材受容層の吸水膨張および乾燥収縮に対応するように、透明シートの細孔構造を設定することにより応力を緩和することができる。すなわち、透明シートが厚い場合には、透明シート中の膨潤性樹脂の含有量を減らすことができる。一方、比率(A/B)が小さければ、透明シートの厚みが色材受容層の厚みに対して小さくなり、透明シートの強度は相対的に弱くなり、色材受容層の収縮は相対的に大きくなるため、透明シートのひび割れは起こりやすくなる。この場合には、透明シートの水透過性および透湿性を大きくしなければならない。

透明シートの厚さは、実用的には、2〜40μmであることが好ましい。透明シートの厚さをさらに好ましくは5μm以上とすることにより、透明シートの耐水性や耐擦過性をさらに向上させることができる。一方、透明シートの厚みが小さくなり過ぎると、記録支持体への加熱圧着時における熱伝達に大きなエネルギーが必要となり、また透明シートの膨潤性樹脂を介した色材受容層からの水分の蒸発が進みにくくなる。したがって、透明シートの厚さは40μm以下とすることが望ましい。さらに好ましくは、20μ以下とすることにより、透明シートとしての基本機能である透明性、および保護機能に加えて、転写接着時におけるエネルギーおよび水分透過性など付随的な機能とのバランスも得られやすくなる。

[6−2−2]透湿度 通常の環境下であれば、水分を吸収した記録物は30分程度で乾燥されるため、透明シートの透湿度が(5g/m2・h)以上であれば、耐水性をより向上させることができる。すなわち、透明シートの透湿度を上記の値以上に設定することにより、吸水後の色材受容層の収縮時の応力がより広く分散されて、ひび割れの発生をより抑制することができる。

[6−2−3]膨潤性樹脂 膨潤性樹脂としては、水により膨潤して、水に溶解するタイプの水溶性樹脂、および水に不溶なタイプの吸水性樹脂が含まれる。

水溶性樹脂とは、25℃において水と十分に混和する樹脂、あるいは水に対する溶解度が1(g/100g)以上の樹脂である。水溶性樹脂の種類は、特に限定されない。例えば、項目[1−1−2]に記載した色材受容層の水溶性樹脂と同じものを用いることができる。中でもポリビニルアルコールとして、完全けん化、部分ケン化、低けん化等、又はこれらの変性物(カチオン変性物、アニオン変性物、シラノール変性物等)は特に好ましく用いることができる。特に、ポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)することにより得られる、けん化ポリビニルアルコールが好ましい。後述する色材受容層にもけん化ポリビニルアルコールが好ましく用いられており、透明シートにもけん化ポリビニルアルコールを用いることにより、透明シートと色材受容層との接着性(転写性能)を向上させることもできる。その他に、分子内に親水性基を付与して水溶性樹脂としたアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ナイロン系等の単独、あるいは共重合体なども使用することができる。膨潤性樹脂とは、膨潤性でかつ水不溶性の樹脂であって、無加圧下吸水倍率(CRC)が0.1g/g以上であるものとする。膨潤性樹脂は、その全量(100%)が重合体でることに限定されず、上記の性能を維持する範囲において、後述する添加剤を含んでもよい。すなわち本発明においては、膨潤性樹脂および添加剤を含む膨潤性樹脂の組成物も、膨潤性樹脂と総称する。膨潤性樹脂は特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸塩系、(メタ)アクリルアミド系、ビニルアルコール系、無水マレイン酸(塩)系、ポリウレタン系等の単独、あるいは共重合体、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸塩共重合体、スルホン酸基含有(メタ)アクリル酸塩系単独あるいは共重合体、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体等、澱粉系あるいはセルロース系高分子、それらの部分架橋重合体やグラフト変性重合体等、を例示することができる。

膨潤性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いることもできる。「2種以上」とは、けん化度および重量平均重合度等の特性が異なるものも含まれる。

[6−2−4]膨潤性樹脂の量 膨潤性樹脂の量は、透明シート全体の0.05質量%以上、2.00質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.09質量%以上、1.00質量%以下であって、さらにより好ましくは0.15質量%以上、0.60質量%以下である。膨潤性樹脂の量を0.05質量%以上、好ましくは0.09質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上とすることにより、膨潤性樹脂が透明シート内に均一に分散された状態、かつ十分な量で透明シートの表面と色材受容層とが連通された状態となる。この結果、透明シートの表面からより多くの水分を蒸発させ、収縮の応力を広く分散させて、透明シートのひび割れの発生を抑制することができる。また、膨潤性樹脂の量を2.00質量%以下、好ましくは1.00質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以下とすることにより、溶解や過剰な膨潤によって透明シートの機械的強度を低下させることなく、透明シートのひび割れの発生を抑制することができる。一方で膨潤性樹脂が2.00質量%より大きいと透明シートの機械的強度が低下し、収縮の応力によってひびが入りやすくなり、また擦過性が低下するおそれもある。また、透明シートが粒子状のエマルジョンを含有する場合、膨潤性樹脂が多いと、膨潤性樹脂がエマルションの分散に寄与して、エマルションの粒径が大きく変化し、透明シートの透明性が低下するおそれがある。さらには、透明シートの吸水性が高すぎて、液体状の汚れが付いたときに汚染されやすくなる場合がある。反対に膨潤性樹脂が0.05質量%より小さいと透明シートからの水分蒸発が不十分となって、透明シートのひび割れが発生しやすくなる場合がある。

膨潤性樹脂は、膨潤性樹脂が吸水により膨潤する割合(以下吸水膨潤率という)が高すぎると、記録物を水に浸漬した場合に、透明シート内で膨潤した分のひずみによって透明シートにひびが入りやすくなるおそれがある。

本発明においては、膨潤性樹脂が吸水により膨潤する割合のバランスを考慮して、膨潤性樹脂として、けん化度と重合度を厳密に制御したポリビニルアルコール(PVA)を含有することが特に好ましい。PVAは、分子内に大量の水酸基を有しており、それらがPVA分子内、あるいは、PVA分子間で水素結合を生成している。重合度とけん化度が高い場合には、ポリビニルアルコール同士がより多くの水素結合により結合が強固であるため、吸水により膨潤する体積は低く抑えられる。 また、高重合度かつ高けん化度のポリビニルアルコールは、分子内の水素結合によって、水溶性樹脂の中では硬い樹脂となるため、透明シートの耐擦過性を向上させる上において効果的である。さらに、ポリビニルアルコールは色材受容層にも好ましく用いられており、透明シートにもポリビニルアルコールを含有することによって、色材受容層との接着性を向上させることもできる。

ここで、透明シートの膨潤性樹脂が大量に水を吸収するものであった場合には、液体汚れによる保護性能がやや低下するおそれがある。すなわち、図63のように、透明シート52の表面に汚染水552などの液体状の汚れが付着した場合には、透明シート52の膨潤性樹脂が汚染水552を吸収して、汚染水552が色材受容層53に接触して吸収されるおそれがある。汚染水552が着色されている場合には、反転画像72による記録情報が背景側から液体水552によって着色され、その記録情報の一部が消えてしまうおそれがある。

しかしながら、好ましい範囲の高けん化度および高重合度のポリビニルアルコールを含有することにより、保護性能の低下を抑えることができる。高けん化度かつ高重合度のポリビニルアルコールの場合、ポリビニルアルコール同士の水素結合の量が多く、水を水和するためには非常に長い時間を要する。したがって、図64のように透明シート52の表面に汚染水552が付着した場合には、その汚染水の吸収速度も抑えられるため、透明シート52および色材受容層53内に汚染が広がりにくい。

[6−2−5]ポリビニルアルコールけん化度と重合度 透明シートに用いるポリビニルアルコールは、けん化度75〜100mol%のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。

けん化度を好ましくは86mol%以上、より好ましくは98mol%以上とすることにより、ポリビニルアルコールが吸水により膨潤する量を最適にすることができ、透明シート表面から水分を蒸発させて、ひび割れの発生をより抑制することができる。さらに、水分の吸収速度を抑えて、液体汚れからの記録情報の汚染を防止することもできる。86mol%より小さいと、記録物を水に浸漬した時にポリビニルアルコールの吸水により膨潤する量が大きくなるため、ひび割れが発生しやすくなる。また、水分の吸収速度が速くなり、液体汚れによる汚染が起こりやすくなる。さらに、ポリビニルアルコールの強度が低下し、透明シートの擦過性が低下するおそれがある。

けん化度の範囲を満たす、けん化ポリビニルアルコールとしては、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98〜100mol%)、部分けん化ポリビニルアルコール(けん化度87〜89mol%)、低けん化ポリビニルアルコール(けん化度78〜82mol%)等を挙げることができる。中でも、完全けん化ポリビニルアルコールが好ましい。

透明シートは、重量平均重合度が1,500〜5,000のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。

重量平均重合度を好ましくは1,500以上、さらに好ましくは2,000以上とすることにより、ポリビニルアルコールが吸水により膨潤する量を最適にすることができ、透明シートの表面から水分を蒸発させて、ひび割れの発生をより抑制することができる。さらに、水分の吸収速度を抑えて、液体汚れからの記録情報の汚染を防止することもできる。一方、重量平均重合度を好ましくは5,000以下、さらに好ましくは4,500以下とすることにより、透明シートを過度に硬くすることなく、透明シートに応力が掛ったときにもひび割れを起こりにくくすることができる。重量平均重合度の値は、JIS−K−6726に記載の方法に準拠して算出された値である。重量平均重合度が1500より小さいと、記録物を水に浸漬した時にポリビニルアルコールの吸水により膨潤する量が大きくなるため、ひび割れが発生しやすくなる。また、水分の吸収速度が速くなり、液体汚れによる汚染が起こりやすくなる。さらにはポリビニルアルコールの強度が低下し、透明シートの擦過性が低下するおそれがある。重量平均重合度が5000より大きいと、ポリビニルアルコール分子内の水素結合量が多くなるため、吸水により膨潤しづらくなり、水分を排出するためのポンプのとしての作用が低下するため、透明シートに応力がかかったときにひび割れが起こりやすくなる恐れがある。

[6−2−6]エマルジョン 透明シートを構成するエマルションとしては、上述した[1−2−4]と同様のものが使用できる。

[6−2−7]厚さ 透明シートの厚さは特に制限されず、上述した[1−2−2]と同様のものが使用できる。ただし、この第2の発明においては、透明シートの厚み(A)と色材受容層の厚み(B)との比率(A/B)が下式(1)の範囲であることが好ましい。 0.07≦(A/B)≦3.00 (1) A/Bが0.07以上であれば、透明シートの厚みが色材受容層の厚みに対して十分に大きく十分な強度を持つため、水透過性および透湿性は少なくてもひび割れは起こりにくい。また、A/Bが3.00以下であれば、透明シートの厚みが色材受容層の厚みに対して小さくなり、加熱圧着させる際に熱伝導を良好にできるため、透明シートと色材受容層との接着性(転写性能)を向上させることができる。一方、A/Bが0.07より小さい場合、透明シートの厚みが色材受容層の厚みに対して小さく、色材受容層の収縮に耐えうる十分な強度を持たないため、水透過性および透湿性は少ないときにひび割れは起こりやすい。また、A/Bが3より大きい場合、透明シートの厚みが色材受容層の厚みに対して大きくなり、加熱圧着させる際に熱伝導が低下し、透明シートと色材受容層との転写性能が低下する。

前述したように、比率(A/B)が大きくて、透明シートの厚みが色材受容層の厚みに対して十分大きければ、透明シートは、十分な強度を持って収縮の応力をある程度吸収するため、透明シートにひび割れは起こりにくい。

[6−3]基材シート 基材シートについては[1−3]で前述したものと同様のものが使用できる

[6−4]離型シート 離型シートとしては、前述した[1−4]と同様のものが使用できる。

[6−4]アンカー層 アンカー層としては、前述した[1−5]と同様のものが使用できる。但し、第2の発明においては、透明シートが水分を系外に放出するために、図61(b)のように、アンカー層59が膨潤性樹脂を含有することが必要である。

[6−6]ホログラム層 ホログラム層としては、前述した[1−6]と同様のものが使用できる。但し、第2の発明においては、透明シートが水分を系外に放出するために、図61(b)のように、ホログラム層58が膨潤性樹脂を含有することが必要である。

[6−7]積層構造 転写材1は、図68のように、基材シート50、透明シート52及び色材受容層53が順次積層された積層構造を有している。「基材シート、透明シート及び色材受容層が順次積層」とは、基材シート、透明シート、色材受容層の間に他の層が介在するか否かに拘わらず、基材シート、透明シート、色材受容層がその順序に従って積層されていることを意味する。すなわち、図62(a),(b)の転写材1のように、透明シート52と色材受容層53との間に、アンカー層59やホログラム層58が存在する構造も、「基材シート、透明シート及び色材受容層が順次積層」された積層構造に含まれる。

転写材1は、図68のように、基材シート50、透明シート52、色材受容層53が相互に当接された積層構造を有することが好ましい。すなわち、基材シート50と透明シート52との間、および透明シート52と色材受容層53との間に、他の層(シートも含む)が介在していない構造が好ましい。記録物の対象物となるクレジットカード等は厚さが厳格に制限されるため、積層される層やシートの数を減らして、記録物を薄厚化することが望ましいからである。

転写材が離型層51、アンカー層59、ホログラム層58をさらに備える場合には、色材受容層53、アンカー層59、ホログラム層58、透明シート52、離型層51及び基材シート50が順次積層された積層構造とすることが好ましい。

[6−8]転写材の形状と厚さ 転写材の形状と厚さは、前述した[1−8]と同様に設定することができる

[6−9]製造方法 転写材は、前述した[1−9]と同様の方法で製造することができる。すなわち、基材シートに、透明シートを形成するための水溶性樹脂もしくは吸水性樹脂を含む塗工液を塗工して、基材シートに透明シートを積層する。その後、この積層体に、少なくとも水溶性樹脂を含有する塗工液を塗工することにより、転写材を製造することができる。尚、空隙吸収型の構成とする場合は、少なくとも無機微粒子、水溶性樹脂及びカチオン性樹脂を含有する塗工液を塗工することにより、転写材を製造することができる。

[6−10]画像 画像としては、前述した[1−10]と同様ものが記録できる。

[6−11]画像の記録 画像の記録は、前述した[1−11]と同様に記録することができる。

[6−12]プライマー層 プライマー層としては、前述した[1−12]と同様のものが使用できる。

[7]記録物 第2の発明における記録物は、図68のように、画像支持体、色材受容層、及び透明シートを備えた記録物である。基材シート、透明シートと、少なくとも膨潤性樹脂を含有する色材受容層と、が積層された転写材の色材受容層に、画像を記録してから、その転写材を画像支持体に積層して基材シートを剥離することによって、記録物が得られる。画像が記録された転写材(記録媒体)は、前述した[6]に記載の転写材により得られたものである。

[8]第2の発明における記録物の製造方法 第2の発明における記録物は、図70のように、工程5,6,7を経て製造される。工程5では、前述した[6]に記載の転写材の色材受容層に画像を記録して記録媒体とし、工程6では、記録媒体の色材受容層に画像支持体に加熱圧着し、工程7では基材シートを剥離する。

[8−1]画像支持体 画像支持体としては、前述した[3−1]と同様のものが使用できる。

[8−2]積層構造 記録物は、図6(b)の記録物73と同様に、画像支持体55、色材受容層53及び透明シート52が順次積層された積層構造を有する。

[8−3]転写材と画像支持体との加熱圧着 転写材と画像支持体との加熱圧着は、図9の製造装置25を用いて、[3−3]と同様に行うことができる

[8−4]基材シート及び離型層の剥離 記録物は、図6(b)の記録物73と同様に、基材シート50を剥離することにより、画像支持体55、色材受容層53及び透明シート52が順次積層された構造を有する。基材シート50は、前述した[3−4]と同様に剥離することができる。

[8−5]両面同時剥離 両面同時剥離は、前述した[3−5]と同様に実施することができる。

[9]第2の発明における記録装置 第2の発明における記録装置は、図65のように、前述した[6]に記載の転写材1を搬送経路に送り出す供給部4と、その転写1材の色材受容層に色材を付与して画像を記録する記録部6と、を備える。記録装置としては、前述した[4−1]と同様のものが使用できる。

[10]第2の発明における記録物の製造装置 前述した[7]の記録物の製造装置は、前述した[9]に記載の記録装置と、画像支持体を搬送経路に送り出す供給部と、画像支持体に記録媒体を付着させる付着部と、記録媒体から基材シートを剥離する剥離部と、を備える。

[10−1]第10の製造装置 第10の製造装置は、前述した図9または図13の第1の製造装置25と同様に構成することができる。水分を系外に放出できる膨潤性樹脂を含有した転写材を用いる点においてのみ、第1の製造装置と相違する。

[10−2]第11の製造装置 第11の製造装置は、前述した第6の製造装置と同様に、プリンタ部と転写部が分離独立して構成されている。水分を系外に放出できる膨潤性樹脂を含有したロール状の転写材を用いる点においてのみ、第6の製造装置と相違する。

[10−3]第12の製造装置 第12の製造装置は、前述した第7の製造装置と同様に、プリンタ部と転写部が分離独立して構成されている。水分を系外に放出できる膨潤性樹脂を含有したロール状の転写材を用いる点においてのみ、第7の製造装置と相違する。

[10−4]第13の製造装置 第13の製造装置は、前述した第8の製造装置と同様に、プリンタ部と転写部が分離独立して構成されている。水分を系外に放出できる膨潤性樹脂を含有したロール状の転写材を用いる点においてのみ、第8の製造装置と相違する。

[10−5]第14の製造装置 第14の製造装置は、前述した第9の製造装置と同様に、プリンタ部と転写部が分離独立して構成されている。水分を系外に放出できる膨潤性樹脂を含有したロール状の転写材を用いる点においてのみ、第9の製造装置と相違する。

以上の第10から第15の製造装置においては、転写材が基材上に少なくとも、膨潤性樹脂を含有する透明シートと色材受容層を有している場合に、転写材を画像支持体に付着させる工程にて、色材受容層のインク水分量の制御と付着時の温度制御とが行われる。これにより、転写材の透明シートと画像支持体との密着性を向上させて、耐候性、耐水性、耐薬品性、および耐ガス性等の各種耐久性に優れた記録物を提供することができる。

以下、本発明の具体的な実施例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例によっていかなる制限を受けるものではない。なお、以下の記載における「部」、「%」は特に断らない限り質量基準である。

(実施例1) [透明シート形成用塗工液の合成] アクリルエマルジョン水溶液(BASF社製ジョンクリル352D、Tg56℃、固形分濃度45%)を9部と、ウレタンエマルジョン水溶液(第一工業製薬社製スーパーフレックス130、Tg101℃、固形分濃度35%)1部と、を加えて5分攪拌混合し、積層シート用塗工液を得た。

[積層シート(転写材の構成素材)の製造] 透明シート形成用の塗工液をPET基材シートの表面(厚さ25μm)に塗工した後、乾燥することにより、細孔が形成されていない透明シートと、基材シートと、を含む転写材の構成素材としての積層シートを製造した。塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は5g/m2とした。乾燥温度は90℃とした。透明シートの厚さ(B)は5μmであった。

[細孔の形成] 積層シートに、図60中の(a)の細孔形成方法によって機械的な穿孔処理を行い、細孔が形成された透明シートを含む転写材を製造した。穿孔処理には、図46(a)のような針657を用いた。細孔の分布密度は、1平方mm当たり1つの孔が存在する密度とし、細孔径は0.02μmとした。細孔が形成された層(実施例1では保護シート(透明シート))については、表内の通路場所に○をつけている。表内に○が付いていない場合はその層には細孔は形成されていないことを示す。

[アルミナ水和物分散液の調製] ベーマイト構造(擬ベーマイト構造)を有するアルミナ水和物A(商品名「Disperal HP14」、サソール製)20部を純水中に添加し、さらに酢酸0.4部を添加して解膠処理を行うことにより、アルミナ水和物分散液を得た。アルミナ水和物分散液におけるアルミナ水和物微粒子の平均粒子径は、140nmであった。次いで、分散液に対して、ホウ酸0.3部を添加して、ホウ酸添加アルミナ水和物分散液を得た。

[ポリビニルアルコール水溶液の調製] ポリビニルアルコール(商品名「PVA235」、クラレ製)をイオン交換水に溶解して、固形分含量が8%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が3,500、けん化度が87〜89mol%、SP値は9.4であった。

[色材受容層形成用の塗工液の調製] ホウ酸添加アルミナ水和物分散液100部に、ポリビニルアルコール水溶液27.8部を加え、さらにカチオン性樹脂としてポリアリルアミン3.0部を加えてスタティックミキサーにより混合し、色材受容層形成用の塗工液を得た。ポリアリルアミンとしては、融点が83.3℃、重量平均重合度が1,600のポリアリルアミン(商品名「PAA−01」、日東紡製)を用いた。

[転写材の製造] 細孔が形成された積層シートの透明シートの表面に、混合直後の色材受容層形成用の塗工液を塗工して、乾燥することにより、空隙吸収型の色材受容層を備えた転写材を製造した。塗工液の塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は15g/m2とした。乾燥温度は60℃とした。転写材は、色材受容層を外側、基材シートを内側にしてロール状に巻くことにより、ロール状転写材とした。色材受容層の厚さAは10μmであった。色材受容層の厚みAと透明シートの厚みBの比率(A/B)は0.5であった。

[透湿度の測定] 転写材の透明シートの透湿度をJIS L1099B−2に規定される方法で測定した。透明シートの透湿度は10g/m2・hであった。

このようにして得られた実施例1の転写材に、上述した第1の製造装置を用いて、顔料インクにより記録デューティー60%の60%ベタ画像を記録した。その後、その転写材を画像支持体に加熱圧着させた後、基材シートを剥離することにより、実施例1の記録物を得た。顔料インクの調製法については、後述する。製造装置の記録部としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を用い、画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。加熱圧着の条件は、温度160℃、圧力3.9Kg/cm、搬送速度50mm/secとした。基材シートを剥離する際の引き剥がし角度は90°とした。色材受容層のSP値と、画像支持体のSP値と、の差SP2は0.1であった。

[顔料インクの調製] <(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の合成> 撹拌装置と、滴下装置と、温度センサと、上部に窒素導入装置を有する還流装置と、を取り付けた反応容器に、メチルエチルケトン1,000部を仕込み、そのメチルエチルケトンを撹拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸2−ヒドロキシエチル63部、メタクリル酸141部、スチレン417部、メタクリル酸ベンジル188部、メタクリル酸グリシジル25部、重合度調整剤(商品名「ブレンマーTGL」、日本油脂社製)33部、及びペルオキシ−2−エチルヘキサン酸−t−ブチル 67部を混合して得た混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で10時間反応を継続させて、酸価110mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)89℃、重量平均分子量8,000の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液(樹脂分:45.4%)を得た。

<水性顔料分散体の調製1> 冷却機能を備えた混合槽に、フタロシアニン系ブルー顔料1,000部、上記の合成により得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液、25%水酸化カリウム水溶液、及び水を仕込み、撹拌及び混合して混合液を得た。なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)は、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で40%の比率となる量を用いた。また、25%水酸化カリウム水溶液としては、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)が100%中和される量を用いた。さらに、水は、得られる混合液の不揮発分を27%とする量を用いた。得られた混合液は、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置に通し、循環方式により4時間分散させた。分散液の温度は40℃以下に保持した。

混合槽から分散液を抜き取った後、水10,000部で混合槽と分散装置との流路を洗浄し、洗浄液と分散液とを混合して希釈分散液を得た。得られた希釈分散液を蒸留装置に入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して、濃縮分散液を得た。室温まで放冷した濃縮分散液を撹拌しながら2%塩酸を滴下して、pH4.5に調整した後、ヌッチェ式濾過装置にて固形分を濾過して水洗した。得られた固形分(ケーキ)を容器に入れ、水を加えた後、分散撹拌機を使用して再分散させ、25%水酸化カリウム水溶液によってpH9.5に調整した。その後、遠心分離器を使用し、6000Gで30分間かけて粗大粒子を除去した後、不揮発分を調整して水性シアン顔料分散体(顔料分:14% 酸価110)を得た。

フタロシアニン系ブルー顔料を、カーボンブラック系ブラック顔料、キナクリドン系マゼンタ顔料又はジアゾ系イエロー顔料に変更したことを除いては、水性シアン顔料分散体と同様にして、水性ブラック顔料分散体、水性マゼンタ顔料分散体、又は水性イエロー顔料分散体を得た。

<インクの調製> 下表3に示す組成(合計:100部)となるように、水性顔料分散体及び表3に示す各成分を容器に投入し、プロペラ撹拌機を使用して30分以上撹拌した。その後、孔径0.2μmのフィルター(日本ポール社製)で濾過して、顔料インクを調製した。なお、表3中の「AE−100」は、アセチレングリコール10モルエチレンオキサイド付加物(商品名「アセチレノールE100」、川研ファインケミカル製)を示す。

(実施例2) 色材受容層形成用の塗工液を高松油脂製NS625XCに変更して、膨潤型の色材受容層を形成した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例2における細孔径、透湿度、厚み比率A/Bは、後述する表4に記載した。

(実施例3) 透明シートの細孔径を0.02μmから0.002μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例3における透湿度、厚み比率A/Bは、後述する表4に記載した。

(実施例4) 透明シートの細孔径を0.02μmから0.7μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例4における透湿度、厚み比率A/Bは、後述する表4に記載した。

(実施例5) 透明シートの細孔径を0.02μmから0.001μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例5における透湿度、厚み比率A/Bは、後述する表4に記載した。

(実施例6) 透明シートの細孔径を0.02μmから1μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例6における透湿度、厚み比率A/Bは、後述する表4に記載した。

(実施例7) 透明シートの細孔径を0.02μmから10μmに変更した以外は実施例1と同様にして、転写材さらには記録物を得た。実施例7における透湿度、厚み比率A/Bは、後述する表4に記載した。

(実施例8) 透明シートの細孔径を0.02μmから100μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例8における透湿度、厚み比率A/Bは、後述する表4に記載した。

(実施例9) 透明シートの細孔分布密度を1平方mm当たり1孔から5平方mm当たり1孔に変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例3における細孔径、透湿度、厚み比率A/Bは、後述する表4に記載した。

(実施例10) 透明シートの細孔分布密度を1平方mm当たり1孔から10平方mm当たり1孔に変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。透湿度は2g/m2・hであった。実施例3における細孔径、厚み比率A/Bは、後述する表4に記載した。

(実施例11) 透明シートの厚みAを5μmから15μmに変更し、色材受容層の厚みを10μmから5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。色材受容層の厚みAと透明シートの厚みBの比率(A/B)は、3であった。

(実施例12) 透明シートの厚みAを5μmから1μmに変更し、色材受容層の厚みBを10μmから15μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。色材受容層の厚みAと透明シートの厚みBの比率(A/B)は、0.07であった。

(実施例13) 透明シートの厚みAを5μmから20μmに変更し、色材受容層の厚みを10μmから5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。色材受容層の厚みAと透明シートの厚みBの比率(A/B)は、4であった。

(実施例14) 透明シートの厚みAを5μmから0.5μmに変更し、色材受容層の厚みを0.5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。色材受容層の厚みAと透明シートの厚みBの比率(A/B)は、0.03であった。

(実施例15) [積層シート(転写材の構成素材)の製造] 細孔構造を有するフィルムとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を延伸加工したePTFEフィルムと、ポリウレタンポリマーと、を複合化して作成された厚さ5μmの防水透湿フィルムを、PET基材シート(厚さ25μm)にラミネートして、積層シートを製造した。積層シートの透明シートは、1平方センチメートルに14億個の微細な孔を含み、防水性と透湿性とが両立できる。耐水圧は45000mm以上、透湿性は、JIS L1099B−2法による測定で13500g/m2/24hrsである。

[転写材の製造] 積層シートを変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。

(実施例16) [積層シート(転写材の構成素材)の製造] 細孔構造を有する透明フィルムとして、ポリフッ化ビニリデンをクレイズ加工して作成された厚さ5μmの防水透湿フィルムを、PET基材シート(厚さ25μm)にラミネートして、積層シートを製造した。積層シートの透明シートは、1平方センチメートルに4億個の微細な孔を含み、防水性と透湿性とが両立できる。透湿性は、JIS L1099B−2法による測定で3800g/m2/24hrsである。

[転写材の製造] 積層シートを変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。

(実施例17) [透明シート形成用の塗工液の合成] アクリルエマルジョン水溶液(BASF社製ジョンクリル352D、Tg56℃)を9部と、ウレタンエマルジョン水溶液(第一工業製薬社製スーパーフレックス130、Tg)を1部と、発泡剤1部と、を加えて5分攪拌混合し、積層シート用の塗工液を得た。

[積層シートの製造] 図55(C)に記載の方法によって、透明シート形成用の塗工液をPET基材シートの表面(厚さ25μm)に塗工した後、乾燥させることにより積層シートを製造した。その塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は5g/m2とした。乾燥温度は90℃とした。透明シートの厚さBは5μmであった。細孔の分布密度は、1平方mm当たり1万個の孔が存在する密度となり、細孔径は0.02μmであった。透湿度は10g/m2・hであった。

[転写材の製造] 積層シートを変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。

(実施例18) [透明シート形成用の塗工液の合成] アクリルエマルジョン水溶液(BASF社製ジョンクリル352D、Tg56℃)を9部と、ウレタンエマルジョン水溶液(第一工業製薬社製スーパーフレックス130、Tg)を1部と、多孔質樹脂粒子を1部と、を加えて5分攪拌混合し、透明シート形成用の塗工液を得た。

[積層シートの製造] 図37の(c)に記載の方法により、透明シート形成用の塗工液をPET基材シートの表面(厚さ25μm)に塗工した後、乾燥することにより、積層シートを製造した。その塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は5g/m2とした。乾燥温度は90℃とした。透明シートの厚さBは5μmであった。細孔の分布密度は、1平方mm当たりに1万個の孔が存在する密度となり、細孔径は0.02μmであった。透湿度は10g/m2・hであった。

[転写材の製造] 積層シートを変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。

(実施例19) [透明シート形成用の塗工液の合成] アクリルエマルジョン水溶液(BASF社製ジョンクリル352D、Tg56℃)を9部と、ウレタンエマルジョン水溶液(第一工業製薬社製スーパーフレックス130、Tg)を1部と、中空樹脂粒子とを1部と、加えて5分攪拌混合し、透明シート形成用の塗工液を得た。

[積層シートの製造] 図38の(c)に記載の方法により、透明シート形成用の塗工液をPET基材シートの表面(厚さ25μm)に塗工した後、乾燥させることにより、積層シートを製造した。その塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は5g/m2とした。乾燥温度は90℃とした。透明シートの厚さBは5μmであった。細孔の分布密度は、4平方mm当たりに1つの孔が存在する密度であった、細孔径は0.02μmであった。透湿度は10g/m2・hであった。

[転写材の製造] 積層シートを変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。

(実施例20) 穿孔処理方法を図46(a)のような針657を用いる方法から、図46(b)のような拍車650を用いる方法に変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。

(実施例21) 穿孔処理方法を図46(a)のような針657を用いる方法から、図46(c)のようなレーザ加工装置658を用いる方法に変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。

(実施例22) 細孔の形成方法を図41の(a)に記載の方法から図42の(a)に記載に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、透明シートおよび基材シートに細孔が形成された積層シートを製造した。その積載シートを用いて、実施例1と同様の方法により転写材および記録物を得た。

(実施例23) 細孔の形成方法を図41の(a)に記載の方法から図40の(a)に記載に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、透明シートおよび色材受容層に細孔が形成された積層シートを製造した。その積載シートを用いて、実施例1と同様の方法により転写材および記録物を得た。

(実施例24) 細孔の形成方法を図41の(a)に記載の方法から図42の(b)に記載に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、透明シート、色材受容層および基材シートに細孔が形成された積層シートを製造した。その積載シートを用いて、実施例1と同様の方法により転写材および記録物を得た。

(実施例25) [転写材25の製造] 積層シートに細孔形成を行わないことを除いては、実施例1と同様にして転写材を得た。

[記録物の製造] 上述した第2の製造装置(図28の製造装置)を用いて、画像記録前の段階で上記の転写材25に機械的な穿孔処理を施し、基材シートおよび透明シートに細孔を形成してから、顔料インクにより記録デューティー60%の60%ベタ画像を記録した。その後、その転写材を画像支持体に加熱圧着させてから、基材シートを剥離することにより記録物を得た。製造装置の記録部としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を用い、画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。

(実施例26) [記録物の製造] 上述した第3の製造装置(図29の製造装置)を用いて、転写材25に顔料インクにより記録デューティー60%の60%ベタ画像を記録し、その後の段階で機械的な穿孔処理を施し、基材シートおよび透明シートに細孔を形成した。その後、その転写材を画像支持体に加熱圧着させてから、基材シートを剥離することにより記録物を得た。製造装置の記録部としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を用い、画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。

(実施例27) [記録物の製造] 上述した第4の製造装置(図30の製造装置)を用いて、転写材25に顔料インクにより記録デューティー60%の60%ベタ画像を記録し、その転写材を画像支持体に加熱圧着させた。その後の段階で機械的な穿孔処理を施し、基材シートおよび透明シートに細孔を形成し、その後、基材シートを剥離することにより記録物を得た。製造装置の記録部としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を用い、画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。

(実施例28) [記録物の製造] 上述した第5の製造装置(図31の製造装置)を用いて、転写材25に顔料インクにより記録デューティー60%の60%ベタ画像を記録し、その転写材を画像支持体に加熱圧着させてから、基材シートを剥離した。基材シートを剥離した段階で機械的な穿孔処理を施し、透明シートに細孔を形成することにより記録物を得た。製造装置の記録部としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を用い、画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。

(実施例29) [PVA水溶液1の合成] ポリビニルアルコール(商品名「PVA123」、クラレ製)をイオン交換水に溶解し、固形分含量が8%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が2300、けん化度が98〜99mol%であった。

[PVA水溶液2の合成] ポリビニルアルコール(商品名「PVA235」、クラレ製)をイオン交換水に溶解し、固形分含量が8%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が3500、けん化度が87〜89mol%であった。

[PVA水溶液3の合成] ポリビニルアルコール(商品名「PVA117」、クラレ製)をイオン交換水に溶解し、固形分含量が8%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が2300、けん化度が98〜99mol%であった。

[PVA水溶液4の合成] ポリビニルアルコール(商品名「PVA110」、クラレ製)をイオン交換水に溶解し、固形分含量が8%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が2300、けん化度が98〜99mol%であった。

[PVA水溶液5の合成] ポリビニルアルコール(商品名「PVA424H」、クラレ製)をイオン交換水に溶解し、固形分含量が8%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が2400、けん化度が78.5〜80.5mol%であった。

[透明シート形成用の塗工液の合成] アクリルエマルジョン水溶液(BASF社製ジョンクリル352D、Tg56℃、固形分濃度45%)を9部と、ウレタンエマルジョン水溶液(第一工業製薬社製スーパーフレックス130、Tg103℃、固形分濃度35%)を1部と、PVA水溶液1を0.5部と、加えて5分攪拌混合し、透明シート形成用の塗工液を得た。膨潤性樹脂の含有量は表6に記載した。

[積層シート(転写材の構成素材)の製造] 透明シート形成用の塗工液をPET基材シートの表面(厚さ25μm)に塗工した後、乾燥させることにより、積層シートを製造した。その塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は5g/m2とした。乾燥温度は90℃とした。

[転写材の製造] 積層シートにおける透明シートの表面に、混合直後の色材受容層形成用の塗工液を塗工して、乾燥させることにより、空隙吸収型の色材受容層を備えた実施例1の転写材を製造した。塗工液の塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は15g/m2とした。乾燥温度は60℃とした。転写材は、色材受容層を外側、基材シートを内側としてロール状に巻くことにより、ロール状転写材とした。色材受容層の厚さAは10μmであった。色材受容層の厚みAと透明シートの厚みBの比率A/Bは0.5であった。

上記のようにして得られた転写材に、上述した第1の製造装置を用いて、顔料インクにより記録デューティー60%の60%ベタ画像を記録し、その転写材を画像支持体に加熱圧着させてから、基材シートを剥離することにより記録物を得た。製造装置の記録部としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を用い、画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。加熱圧着の条件は、温度160℃、圧力3.9Kg/cm、搬送速度50mm/secである。基材シートを剥離する際の引き剥がし角度は90°とした。色材受容層のSP値と、画像支持体のSP値と、の差SP2は0.1であった。

(実施例30) 色材受容層形成用の塗工液を高松油脂製NS625XCに変更して、膨潤型の色材受容層を形成した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た.

(実施例31) 透明シートの厚みAを5μmから15μmに変更し、色材受容層の厚みを10μmから5μmに変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。色材受容層の厚みAと、透明シートの厚みBと、の比率(A/B)は3であった。

(実施例32) 透明シートの厚みAを5μmから1μmに変更し、色材受容層の厚みを10μmから15μmに変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。色材受容層の厚みAと、透明シートの厚みBと、の比率(A/B)は0.07であった。

(実施例33) 透明シートの厚みAを5μmから20μmに変更し、色材受容層の厚みBを10μmから5μmに変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。色材受容層の厚みAと、透明シートの厚みBと、の比率(A/B)は4.0であった。

(実施例34) 透明シートの厚みAを5μmから0.5μmに変更し、色材受容層を10μmから15μmに変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。色材受容層の厚みAと、透明シートの厚みBと、の比率(A/B)は0.03であった。

(実施例35) [ポリエチレングリコール水溶液の調整] ポリエチレングリコール(PEG,重合度1000)をイオン交換水に溶解して、固形分含量が8%のポリエチレングリコール水溶液を調製した。

[転写材の製造] 透明シート形成用の塗工液の調製においてPVA水溶液1、0.5部をポリエチレングリコール(PEG)水溶液0.5部に変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。

(実施例36) 透明シート形成用の塗工液の調製においてPVA水溶液1、0.5部をポリエチレングリコール水溶液0.1部に変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。膨潤性樹脂の含有率は表6に記載した。

(実施例37) 透明シート形成用の塗工液の調製においてPVA水溶液1、0.5部を1部に変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。透明シートの膨潤性樹脂の含有率は表6に記載した。

(実施例38) 透明シート形成用の塗工液の調製においてPVA水溶液1、0.5部を0.1部に変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。透明シートの膨潤性樹脂の含有率は表6に記載した。

(実施例39) 透明シート形成用の塗工液の調製においてPVA水溶液1、0.5部を0.3部に変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。透明シートの膨潤性樹脂の含有率は表6に記載した。

(実施例40) 透明シート形成用の塗工液の調製においてPVA水溶液1、0.5部を3部に変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。透明シートの膨潤性樹脂の含有率は表6に記載した。

(実施例41) 透明シート形成用の塗工液の調製においてPVA水溶液1、0.5部を0.01部に変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。透明シートの膨潤性樹脂の含有率は表6に記載した。

(実施例42) 透明シート形成用の塗工液の調製においてPVA水溶液1を0.5部からPVA水溶液2を0.5部に変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。

(実施例43) 透明シート形成用の塗工液の調製においてPVA水溶液1を0.5部からPVA水溶液3を0.5部に変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。

(実施例44) 透明シート形成用の塗工液の調製においてPVA水溶液1を0.5部からPVA水溶液4を0.5部に変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。

(実施例45) 透明シート形成用の塗工液の調製においてPVA水溶液1を0.5部からPVA水溶液5を0.5部に変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。

(実施例46) [転写材の製造] 透明シート形成用の塗工液の調製において、PVA水溶液1を0.5部から高松油脂製NS625XC水溶液(固形分濃度8%)を1部に変更した以外は、実施例29と同様にして転写材および記録物を得た。

以上の実施例に対して、下記のような評価を行った。

[評価<透明シートのひび割れ>] 記録物を水道水に48時間浸漬し、水中から取り出した後、表面を軽くふき取ってから、透明シートのひび割れを目視および顕微鏡で観察した。 ◎:ひび割れがない。 ○:ひび割れはないが、小さなシワ跡が確認できる。 △:ひび割れはないが、大きなシワ跡が確認できる。 ×:シワ跡が残り、目視で大量のひび割れが確認できる。

[評価<転写・剥離性>] 実施例または比較例の転写材を用いて、画像支持体に色材受容層を転写して記録物を作製し、その際における色材受容層の転写および基材シートの剥離の度合いを評価した。評価は目視により行った。その結果を下表3,4,5に示す。 ○:画像支持体に対して、色材受容層が良好に転写されていて、基材シートも良好に剥離する。透明シートの剥離も見られない。 △:画像支持体に対して、色材受容層が転写されない部分があるか、透明シートの部分的な剥がれが見られる。または基材シートが剥離しない部分がある。 ×:画像支持体に対して、色材受容層および透明シートが転写されない。

[評価<汚染水>] 色材濃度5%の染料インクを透明シート上に一滴滴下し、滴下30秒後に染料インクをふき取り、透明シートの染色具合を目視で観察した。 ○:透明シートに染色は見られない。 △:透明シートの一部が染色しているが、色材受容層の記録情報が認識可能である。 ×:透明シートおよび色材受容層が染色され、色材受容層の記録情報が認識不可である。

1 転写材 50 基材シート 52 透明シート(保護シート) 52A 細孔 53 色材受容層 55 画像支持体 72 画像 73 記録物 650 拍車 657 針 658 レーザ加工装置

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