透かし入り偽造防止用印刷媒体

申请号 JP2012158187 申请日 2012-07-14 公开(公告)号 JP5994171B2 公开(公告)日 2016-09-21
申请人 共同印刷株式会社; 发明人 小林 文人; 川▲崎▼ 正太; 島根 博昭; 吉住 渉;
摘要
权利要求

コアシートと、該コアシートの両面に設けられたカバーシートと、上記コアシートの少なくとも一方の面にアンチモンドープ酸化錫顔料を含有する印刷層と、を有し、 上記カバーシートの不透明度xと上記印刷層に含まれるアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比yとの関係が下記近似式1及び下記近似式2を満たす、透かし入り偽造防止用印刷媒体。コアシートと、該コアシートの両面に設けられたカバーシートと、上記コアシートの少なくとも一方の面にアンチモンドープ酸化錫顔料を含有する印刷層と、を有し、上記印刷層が、可視光の反射条件下では確認できないが、可視光を透過した条件下及び赤外線の照射下では確認可能である、透かし入り偽造防止用印刷媒体。前記カバーシートの不透明度が62.7%以上、100%未満である、請求項1又は2に記載の透かし入り偽造防止用印刷媒体。前記印刷層に含まれるアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比が2.2重量%以上、28.3重量%以下である、請求項1〜3の何れかに記載の透かし入り偽造防止用印刷媒体。前記コアシートの不透明度は、前記カバーシートの不透明度以下である、請求項1〜4の何れかに記載の透かし入り偽造防止用印刷媒体。

说明书全文

本発明は、透かし入り偽造防止用印刷媒体に関する。

印刷物の偽造を抑制・防止するため、透かし入りの印刷媒体が用いられることがある。透かしの形成には、抄紙工程でダンディロール又はプレスロールを用い、文字や模様を刻印する技術や、文字や模様の印刷を有するプラスチックシートの印刷面に透明又は半透明の薄紙、裏面に不透明紙を貼り合わせて透かしとする技術(特許文献1)が知られている。 また、合成樹脂フィルムに紙を貼り合わせ、その貼り合わせ面に赤外線吸収顔料としてカーボンを含む印刷インクで真偽判定用の符号を印刷した積層紙が知られている(特許文献2)。

特許文献1:実公昭49−14965号公報 特許文献2:特開平2−167771号公報

ダンディロールを用いて透かしを形成する場合、透かしの型をあらかじめ作成してダンディロールに取り付ける必要があるため、バリエーションに富んだ透かし模様、文字又は図形への対応が難しく、また、偽造された場合には、透かしの状態を調べるだけでは、その真贋を判別することが困難である。 特許文献1の積層体は、プラスチックシート上に薄紙を重ねて、プラスチックシート上に印刷された文字又は模様が透けて見えるようにしたものである。バリエーションに富んだ透かし模様、文字又は図形への対応は容易であるが、薄紙が透明又は半透明であるため、印刷された文字や模様は、光に透かすことなく見えてしまう。このため、偽造防止を目的とした用途に用いることができなかった。 特許文献2の積層紙に関しては、カーボンが濃色であるため、符号が紙を通して見えやすく、しかも、透かしが目視で確認しやすいため、偽造されやすいという問題があった。そのため、該符号の周りに赤外線吸収特性の異なる染料タイプの黒色インキでダミーパターンを印刷する必要があり、製造する手間やコストが高いものになっていた。

これらの問題に鑑み、本発明は、自然光に透かしたときに目視確認できる透かしであって、目視以外の手段でも効果的に確認できる透かしを備える印刷媒体を提供することを目的とする。 本発明者らは、透かしを備える印刷媒体について鋭意研究を進めたところ、コアシート上にアンチモンドープ酸化錫顔料を含有するインキの印刷層を有し、コアシートの両面をカバーシートで貼合した印刷媒体の透かし(印刷層)は、自然光(可視光)の反射条件下では確認できないが、自然光に透かすと確認でき、かつ、可視光以外に赤外線照射下でも透かし模様を確認できることを見出し、本発明を完成するに至った。

本発明は、コアシートと、そのコアシートの両面に設けられたカバーシートと、コアシートの少なくとも一方の面にアンチモンドープ酸化錫顔料を含有する印刷層とを有する積層体であり、カバーシートの不透明度x(%)とアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比y(重量%)との関係が、近似式1及び近似式2を満たす透かし入り偽造防止印刷媒体を提供する。

上記積層体において、カバーシートの不透明度xは、62.7%以上、100%未満が好ましい。 印刷層中に含まれるアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比yは、2.2重量%以上、28.3重量%以下が好ましい。

本発明は、また、コアシートと、そのコアシートの両面に設けられたカバーシートと、コアシートの少なくとも一方の面にアンチモンドープ酸化錫顔料を含有する印刷層とを有する積層体であり、可視光(自然光)の反射条件下では確認できないが、可視光を透過した条件下及び赤外線の照射下で、反射光及び透過光のいずれでも確認可能である透かし入り偽造防止印刷媒体を提供する。

本発明の透かし入り偽造防止印刷媒体は、透かしとして文字又は模様をコアシート上に印刷した印刷層を有する積層体であるため、多様な文字又は模様の透かしに対応可能である。また、本発明の透かしは、可視光の下、一見しただけでは確認できないが、可視光に透かすことにより確認できるので、偽造防止効果を有する。 また、透かしとなる模様や文字に赤外線吸収インキを用いて印刷しているため、透かし模様や文字の赤外線吸収性を測定することで、真贋を判別することが可能となる。

可視光下での透かしに関するアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比y(重量%)とカバーシートの不透明度x(%)との関係データと、それから求めた近似式の直線を示すグラフである。

赤外線照射下での透かしに関するアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比y(重量%)とカバーシートの不透明度x(%)との関係データと、それから求めた近似式の直線を示すグラフである。

図1の直線と図2の直線とを併せて示す図である。

可視光下での透かしに関するカーボンブラックの固形分重量比y(重量%)とカバーシートの不透明度x(%)との関係データと、それから求めた近似式を表す直線を示すグラフである。

赤外線照射下での透かしに関するカバーシートの不透明度x(%)とカーボンブラックの固形分重量比y(重量%)との関係データと、それから求めた近似式を表す直線を示すグラフである。

図4の直線と図5の直線とを併せて示す図である。

以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。 本実施形態の透かし入り偽造防止印刷媒体は、コアシートと、コアシートの両面に設けられたカバーシートと、コアシートの少なくとも一方の面にアンチモンドープ酸化錫顔料を含有する印刷層とを有する積層体であって、印刷層は、可視光の反射条件下では確認できないが、可視光を透過した条件下及び赤外線の照射下では確認可能である。なお、コアシートとカバーシートとは接着剤を介して固着されている。

コアシートは、特に限定されるものではなく、合成樹脂フィルムを用いることができる。合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂のほか、アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂などからなる透明又は着色透明のフィルムを使用することができ、単層のフィルムであってもよく、異種または同種の樹脂からなる複層のフィルムであってもよい。また、コアシートの厚みは、特に限定されるものではないが、通常、10〜200μmの範囲である。

コアシートの不透明度は、以下に記述するように、カバーシートの不透明度以下である方がより好ましい。カバーシートの不透明度が後述するように62.7%以上、100%未満であり、かつコアシートの不透明度がカバーシートの不透明度以下であれば、コアシートの片面にのみ印刷層が形成された場合でも、積層体の両面から同様に確認することができる。逆に、コアシートの不透明度がカバーシートの不透明度より高いと、コアシートの片面にのみ印刷層が形成された場合、印刷層が形成された面を眼に近い側にして、積層体を可視光に透かしたときは印刷層を問題なく確認できるが、反対側から透かしたときには、印刷層を確認できないか又は、確認できるものの像がぼやけてしまい、透かしが積層体の両面から同じように見えなくなる。 したがって、コアシートの不透明度は、カバーシートの不透明度より低いものを選択することが望ましい。ただし、コアシートの両面に印刷層を形成する場合は、このような問題は発生しないため、コアシートの不透明度をカバーシートの不透明度より低くする必要はない。

カバーシートは、不透明度が62.7%以上、100%未満の紙が望ましい。不透明度が62.7%未満であると、可視光の反射条件下でも、一見して、下層のアンチモンドープ酸化錫顔料を含有する印刷層が見えやすくなるので好ましくない。また、可視光を透過するためには100%未満である必要がある。コアシートの両面に配置するカバーシートの不透明度は、同じものであることが望ましい。異なる不透明度のものを用いた場合には、印刷模様が異なって見えることになるので好ましくない。

不透明度とは、JIS8149(ISO2469)に規定される値であり、1枚の白紙を通して、下敷きにした印刷模様が透けて見えない状態を数値化したもので、数値が高いほど透けて見えないことを表す。一般的には、ハンター白色計で測定される。

コアシートの片面又は両面には、アンチモンドープ酸化錫顔料を含有するインキで形成された印刷層が設けられている。印刷層は、コアシート上に印刷された模様及び/又は文字である。そして、印刷層を有するコアシートの両面は、カバーシートで貼り合わせられており、印刷層はカバーシートで覆われることになる。

アンチモンドープ酸化錫顔料は、酸化アンチモン粉末と酸化錫粉末をと混合した後、乾燥し、焼成して得られる粉体をさらに粉砕して平均粒径を調整したものであって、市販されているアンチモンドープ酸化錫顔料を使用してもよい。例えば、TDL((株)JEMCO製)、T1(三菱マテリアル(株)製)等が挙げられる。

印刷層には、アンチモンドープ酸化錫顔料の他に、アンチモンドープ酸化錫顔料の濃度を調整する樹脂や添加剤(消泡剤、分散剤、充填剤、スリップ剤、沈降防止剤等)等が含まれる。樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、シクロヘキサノン樹脂などが挙げられる。

本実施形態の透かし入り偽造防止印刷媒体において、印刷層中のアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比y(重量%)(アンチモンドープ酸化錫顔料の重量/アンチモンドープ酸化錫顔料の重量+樹脂重量;以下、固形分重量比yという。)は、カバーシートの不透明度x(%)との関係において、以下の近似式1を満たす。

この条件は、印刷層を、可視光の反射条件下では確認できないが、可視光に透かした状態(透過光下)で確認可能となる、透かしが可能な範囲である。Y>0.6992x−41.6043の条件では、可視光に透かして見なくとも、印刷層が見えてしまう。Y<0.3320x−18.5943の条件では、可視光に透かしても印刷層が確認できない。

近似式1の左辺と右辺の交点は、x=62.6634、y=2.2099付近にあることから、カバーシートの不透明度は62.6634%以上であり、アンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比は2.2099重量%以上であることが理解できる。また、不透明度xの上限は100%であるが、紙としては100%未満のものしかない。仮にカバーシートの不透明度xが100%の場合、近似式1の左辺から、アンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比yの上限は28.3157重量%となる。なお、近似式1は、実験データに基づき、最小二乗法を適用して求めたものである。

したがって、カバーシートの不透明度xの範囲は、62.7%以上、100%未満となる。また、アンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比の範囲は2.2重量%以上、28.3重量%以下とすればよい。 すなわち、コアシートと、コアシートの両面に設けられたカバーシートと、コアシートの少なくとも一方にアンチモンドープ酸化錫顔料を含有する印刷層とを有する積層体において、カバーシートの不透明度xを、62.7%以上で100%未満;アンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比を2.2重量%以上、28.3重量%以下の範囲とすれば、印刷層が可視光の反射条件下では確認できないが、光に透かした状態(透過光下)で確認可能な透かし入り偽造防止印刷媒体とすることができる。 なお、可視光の反射条件下で確認できないとは、10名の観察者による可視光の反射条件下での観察に基づく結果であり、1名でも印刷層を見ることができなかった場合のことをいう。また、光に透かした状態で確認可能とは、10名による可視光の透過光下での観察に基づく結果であり、全員が印刷層を見ることができた場合のことをいう。可視光の反射条件下及び透過光下、それぞれの観察方法は後述(実施例1)の方法を適用する。この方法を適用した観察結果から、印刷層は、可視光の反射条件下で確認することができないという結論を導いた。

アンチモンドープ酸化錫顔料は、赤外線吸収効果を有する顔料であるが、カバーシートの不透明度を大きくするか又はアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比yを小さくすると、赤外線吸収効果が喪失することがある。

しかし、近似式1に加え、アンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比yとカバーシートの不透明度xとの関係が以下の近似式2を満たす場合には、赤外線吸収効果が失われないことが判明した。すなわち、印刷層は、可視光の反射条件下では確認できないが、光に透かした状態(透過光下)で確認でき、かつ、赤外線の照射下で確認可能となる。

近似式1に加え、近似式2を満たす印刷媒体の印刷層は、可視光の反射条件下では確認できないが、光に透かした状態(透過光下)及び赤外線照射下で確認することができる。この印刷媒体に赤外線を照射して、その透過光または反射光を赤外線カメラ等の赤外線を可視化できる装置で観察すると、印刷層が黒くなって明瞭に見え、印刷層が存在しない部分は白く見える。印刷層に含まれるアンチモンドープ酸化錫顔料が赤外線を吸収し、印刷層が存在しない部分は赤外線が吸収されないためである。すなわち、赤外線を照射して、印刷層の模様及び/又は文字を検査することにより印刷媒体の真贋を判別することができる。なお、フォトダイオード等で透過または反射された赤外線の変化を測定する等、赤外線の強度等を計測できる装置であれば、赤外線照射下で印刷層を確認する(印刷媒体の真贋を判別する)ことができる。 なお、赤外線の照射下で確認可能とは、10名の観察に基づく結果であり、全員が赤外線の照射下で印刷層の絵柄の形を黒く確認できた場合のことをいう。赤外線の照射下での観察方法は後述(実施例2)の方法を適用する。

近似式1及び近似式2を満たす印刷媒体は、可視光を透かした状態(透過光下)で、印刷層が赤外線吸収することまで気付かないため、より偽造防止効果が高くなる。

近似式1と同様に、近似式2も実験データに基づき、最小二乗法を適用して求めたものである。 近似式1の左辺(0.6992x−41.6043≧y)と近似式2の交点は、x=61.9631、y=1.7203付近、近似式1の右辺(y≧0.3320x−18.5943)と近似式2の交点は、x=63.3240、y=2.4293付近である。

本実施形態の透かし入り偽造防止印刷媒体は、アンチモンドープ酸化錫顔料を含むインキ組成物を用い、コアシートの片面又は両面に印刷層を形成した後、コアシートとカバーシートとを接着剤で貼り合わせて製造することができる。コアシート上への印刷層の形成は、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等、従来公知の印刷法を用いて形成できる。

インキ組成物は、アンチモンドープ酸化錫顔料、メジウム及び溶剤を含んでなる。メジウムは、前述した樹脂を含み、溶剤は、インキ組成物の粘性を調整するためのものであって、印刷対象であるコアシート又はカバーシートの特性、さらに、印刷方法に応じた有機溶媒を使用することができる。

インキ組成物中において、アンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比yを2.2重量%以上、28.3重量%以下で、近似式1及び近似式2の条件を満たすように調整すればよい。なお、カバーシートの不透明度xは62.7%以上、100%未満である。

接着剤は、特に限定されるものではないが、着色剤を含まないものが好ましく、コアシートとカバーシートとを接着できるものであればよい。

以下、実施例により本発明をさらに説明する。

アンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比とカバーシートの不透明度を変えて、印刷媒体の透かしが成立する条件を調べた。

インキ組成物は、アンチモンドープ酸化錫顔料(T1、三菱マテリアル(株)製)と、メジウム(ビニールインキH型ハーフトーン、十条ケミカル(株)製)と、溶剤(ビニール標準溶剤、十条ケミカル(株)製)(メジウム1重量部に対して0.2重量部))とをジェットミルで混合し、印刷媒体の印刷層中のアンチモンドープ酸化錫の固形分重量比が9.1〜28.6%となるように調製した。

カバーシートとして、表1に示すOK上質紙及びOKプリンス上質紙(共に王子製紙(株)製)を用いた。なお、カバーシートの不透明度は、JIS8149に従って測定した。

ポリエステルフィルム(NF−PET50、リンテック(株)製、厚み50μm、不透明度30%未満)の片面に、インキ組成物を用いてシルクスクリーン印刷(乾燥後膜厚10μm)を施した後、ポリエステルフィルムの両面にカバーシートを住友スリーエム社のスプレーのり55を用いて貼り合わせて積層体とした。各カバーシートについて、アンチモンドープ酸化錫の固形分重量比を9.1〜28.6%の範囲内で変えて、各種の積層体のサンプルを作成した。

得られた積層体について、透かしの成立する条件を以下の(1)及び(2)の方法により調べた。 (1)カバーシート下の印刷層が可視光の反射条件下で確認できなくなる条件の判定: スタンダードタイプ色見台(品番:123060、アヤセデジタルクリエイト製)の台上に積層体を置き、蛍光灯を点灯させた状態で、印刷層がカバーシート越しに見えるかどうかを表裏両面から判定した。判定は10名の観察者がそれぞれ行い、10名全員が表裏のうち少なくとも一方の面から印刷層を見ることができた場合を「確認できる」と判断し、それ以外の場合を「確認できない」と判断した。 カバーシートの不透明度毎に、印刷層を確認できないと判断されたアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比の最大値を「上限値」として表2に示す。この上限値以下のアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比である場合、可視光の反射条件下で印刷層は確認できないが、この上限値より高いアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比である場合、印刷層は確認できると判断される。カバーシートの不透明度が82.6%〜99.9%の場合のアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比の上限値は、16.7〜28.6重量%の範囲に分布していた。

(2)カバーシート下の印刷層が可視光の透過状態で確認できる条件の判定: 色温度5000Kの蛍光灯(Panasonic FHF32EX−N−H、パナソニック(株)製)を用い、観察者の肉眼、積層体、蛍光灯を直線状に並べて、積層体の表裏両面から判定した。このとき、眼と積層体の間を50cm、積層体と蛍光灯の間を150cmとした。判定は10名の観察者がそれぞれ行い、10名全員が表裏のうち少なくとも一方の面から印刷層を見ることができた場合を「確認できる」と判断し、それ以外の場合を「確認できない」と判断した。 カバーシートの不透明度毎に、積層体を可視光で透過して印刷層を確認できると判断されたアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比の最小値を「下限値」として表3に示す。この下限値以上のアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比である場合、可視光の透過状態で印刷層は確認できるが、この下限値より低いアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比である場合、印刷層は確認できないと判断される。カバーシートの不透明度が81.9%〜99.9%の場合のアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比の下限値は、9.1〜14.3重量%の範囲に分布していた。

図1に、表2及び3に示すカバーシートの不透明度とアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比の結果から、最小二乗法を用いて得られた近似式を表す直線を示す。 符号1は、表2のカバーシートの不透明度とアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比の上限値とから求めた近似式を表す直線であり、y=0.6992x−41.6043(前述の近似式1の左辺として表す。)で表わされる直線である。符号1の直線より上側の領域は、印刷層が可視光の反射条件下で容易に確認できる範囲である。

符号2は、表3のカバーシートの不透明度とアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比の下限値とから求めた近似式を表す直線であり、y=0.3320x−18.5943(前述の近似式1の右辺として表す。)で表される直線である。符号2の直線より下側の領域は、印刷層が可視光で透過しても確認できない範囲である。なお、符号1の直線と符号2の直線の交点座標は、(x=62.6634、y=2.2099)である。

すなわち、符号1の直線と符号2の直線との間の領域、すなわち、0.6992x−41.6043≧y≧0.3320x−18.5943(近似式1である)の範囲にある積層体は、可視光の反射条件下で印刷層を確認できないが、可視光に透過すると印刷層を確認できる。

なお、前述したように、符号1の直線と符号2の直線は、本実施例で得られた下限値又は上限値を用いて最小二乗法により求めた近似式を表す直線であり、表2及び表3に示す下限値又は上限値は、各直線上に必ず分布するわけではなく、ある程度の幅をもって分布している。

実施例1で得られた積層体について、赤外線照射下で、カバーシートで覆われた印刷層が確認できる条件を調べた。

スタンダードタイプ色見台(品番:123060、アヤセデジタルクリエイト製)の台上に積層体を置き、蛍光灯を点灯させない状態で、積層体に波長域800〜1000nmの赤外線を照射し、赤外線カメラ(YASHICA EZ Digital F537IR、エグゼモード(株)製)の赤外線ナイトモードで観察し、印刷層が確認可能かどうかを判定した。赤外線光源は赤外線カメラに装備されており、サンプルと赤外線カメラの距離は5cmとした。なお、判定は10名の観察者がそれぞれ行い、赤外線が印刷層で吸収され、印刷層の絵柄が黒く、印刷層が形成されなかった部分が白く撮像されることで、10名全員が印刷層の形を見ることができた場合を「確認できる」と判断し、1名でも印刷層の形を見ることができなかった場合を「確認できない」と判断した。

カバーシートの不透明度毎に、積層体を赤外線で照射して印刷層を確認できる最小のアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比(下限値)を表4に示す。カバーシートの不透明度が76.8%〜96.8%の場合のアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比下限値は、9.1〜21.1重量%の範囲であった。

図2に、表4の結果から求めた近似式を表す直線を示す。図中の符号3は、アンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比yとカバーシートの不透明度xとの関係データから得られた近似式を表す直線y=0.5210x−30.5597(前述の近似式2で表す。)である。符号3より上にある領域が、赤外線吸収判定可能な範囲である。 図1の説明でも述べたが、符号3の直線は、本実施例で得られた下限値を用いて最小二乗法により求めた近似式を表すものであり、下限値は、各直線上に必ず分布するわけではなく、ある程度の距離を持って分布している。

図3に、近似式1及び近似式2の直線を併せて示す。符号1の直線より下の領域で、符号2及び符号3の各直線より上の領域(図3中の斜線の領域)が、印刷層を可視光の反射条件下では確認できないが、可視光を透過した条件下及び赤外線の照射下では確認可能な範囲である。符号1の直線と符号2の直線の交点座標は(x=62.6634、y=2.2099)であり、符号1の直線と符号3の直線の交点座標は、x=61.9631、y=1.7203(図中のX軸及びY軸への垂線で示す)であり、符号2の直線と符号3の直線の交点座標は(x=63.3240、y=2.4293)である。この結果から、近似式1および近似式2の条件を満たすのは、x=62.6634%以上、y=2.2099重量%以上ということが分かる。一方、カバーシートの不透明度xは、可視光を透過するためには100%未満である必要がある。また、アンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比yの上限値については、近似式1の左辺から、カバーシートの不透明度xが100%の時に28.3157重量%となる(図1参照、不透明度100%に対応する符号1の固形分比の値に該当。)。したがって、本発明において印刷層が可視光の反射条件下では確認できないが、可視光を透過した条件下及び赤外線の照射下で確認可能となる範囲は、カバーシートの不透明度xが62.7%以上、100%未満であり、アンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比yが2.2重量%以上、28.3重量%以下となる。

[比較例] アンチモンドープ酸化錫顔料に代えて、赤外線吸収材料として代表的なカーボンブラックを使用して、以下に示す条件で積層体を作製し、透かし判定可能な条件及び赤外線照射下で印刷層を確認可能な条件を調べた。

カーボンブラック(三菱(登録商標)カーボンブラック 汎用カラー(RCF)#44、三菱化学(株)製)と、メジウム(ビニールインキH型ハーフトーン、十条ケミカル(株)製)と、溶剤(ビニール標準溶剤、十条ケミカル(株)製)(メジウムに対して0.2重量%))をジェットミルで混合してインキ組成物を作製した。

インキ組成物は、積層体の印刷層に含まれるカーボンブラックの固形分重量比を0.15〜3.0%になるように調製した。 また、カバーシートには、実施例1と同じOK上質紙及びOKプリンス上質紙を用いた。

実施例1と同じ条件で、各不透明度のカバーシートを用いた場合のカーボンブラックの固形分重量比を変化させて、印刷層を確認できるかを判定した。カバーシートの不透明度が91%以下では、カーボンブラックの色相が濃いために、濃度を薄くしても印刷層が見えてしまい、透かしとならなかった。表5に不透明度91%以上のカバーシートを使用した積層体におけるカーボンブラックの固形分重量比の上限と下限を示す。また、図4に表5の結果から求めた近似式を表す直線を示す。

図4中の符号11は、表5のカバーシートの不透明度とカーボンブラックの固形分重量比の上限の結果から求めた近似式を表す直線である。符号11の直線より上の領域では、カーボンブラックの固形分重量比が多すぎるため、印刷層が濃色となり、可視光の透過条件下でなくとも、反射条件下で印刷層が確認できてしまう。符号12は、表5のカバーシートの不透明度とカーボンブラックの固形重量比の下限から求めた近似式を表す直線である。符号12の直線より下の領域では、カーボンブラックの固形分重量比が少なすぎるため、印刷層の色が薄くなり、可視光の透過条件下でも印刷層を確認できない。

実施例2と同じ条件で、赤外線照射下で印刷層を確認可能な範囲を調べた。結果を表6に示す。また、表6の結果から求めたカバーシートの不透明度とカーボンブラックの固形分重量比から求めた近似式を表す直線を、図5に示す。

図5中の符号13は、表6の赤外線照射下で印刷層を確認可能な不透明度とカーボンブラックの固形分重量比の下限から求めた近似式を表す直線である。符号13より上の領域が赤外線照射下で印刷層を確認可能な範囲である。符号13の直線より下の領域では、カーボンブラックの量(固形分重量比)が少なすぎるため、印刷層の色が薄く、赤外線照射下で印刷層を確認できない。

図6に図4の直線と図5の直線を併せて示す。図3と異なり、図6中には、透かしが成立する範囲と赤外線照射下で印刷層を確認可能な範囲とが重なる領域が共存しない。すなわち、赤外線吸収材料として、カーボンブラックを用いた場合には、可視光の反射条件下で印刷層を確認できないが、可視光の透過した条件下及び赤外線照射下で印刷層を確認可能な偽造防止用の印刷媒体は得られないことがわかる。

コアシートの透明度の違いが積層体の透かし及び赤外吸収判定に及ぼす影響をカバーシートの不透明度との関係で調べた。 表7に示すインキ組成物を用い、表8に示す各コアシートの片面にシルクスクリーン印刷(膜厚10μm)を行った後、コアシートにカバーシート(35インデW、日本製紙パピリア(株)製、不透明度80%)を積層して3種類のサンプルを作製した。なお、アンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比は14.3%とした。

すなわち、3種類のサンプルの特徴は、以下のとおりである サンプル番号1:コアシートの不透明度が、カバーシートの不透明度(80%)及び可視光下での透かしと赤外線照射下での印刷層の確認ができる下限(約62%)よりも低い。 サンプル番号2:コアシートの不透明度が、カバーシートの不透明度(80%)および可視光下での透かしと赤外線照射下での印刷層の確認ができる下限(約62%)よりも高い。 サンプル番号3:コアシートの不透明度が、カバーシートの不透明度(80%)より低く、可視光下での透かしと赤外線照射下での印刷層の確認ができる下限(約62%)よりも高い。

実施例1の「カバーシート下の印刷層が可視光の透過状態で確認できる条件の判定」と同じ条件での透かしの判断及び実施例2の「赤外線照射下で印刷層を確認」と同じ条件での赤外線吸収判断を行った結果を、表9に示す。表中の○印は、「可視光の透過状態で両面から透かしが確認できた」又は「赤外線照射下で両面から赤外線吸収層を確認できた」ことを示し、△印は、「片側からは透かしが確認できた」ことを示している。

サンプル番号3のみが、可視光の透過状態では、コアシートの眼よりも近い側の面に形成された印刷層は確認できたが、眼よりも遠い側の面に形成された印刷層は確認できなかった。これは、光の透過がコアシートに阻害され、陰影がぼやけたためと思われる。 すなわち、印刷層がコアシートの片面だけに形成された積層体においては、コアシートの不透明度がカバーシートの不透明度より高い場合、透かしを両面から見た際に、同じように見えないことがわかる。

1:近似式1の左辺を表す直線 2:近似式1の右辺を表す直線 3:近似式2を表す直線 11:透かしに関するカバーシートの不透明度とカーボンブラックの固形分重量比の上限の結果から求めた近似式を表す直線 12:透かしに関するカバーシートの不透明度とカーボンブラックの固形分重量比の下限の結果から求めた近似式を表す直線 13:赤外線吸収に関するカバーシートの不透明度とカーボンブラックの固形分重量比の下限の結果から求めた近似式を表す直線

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