Method for manufacturing laminated seamless belt, and laminated seamless belt

申请号 JP2003373688 申请日 2003-10-31 公开(公告)号 JP2005134842A 公开(公告)日 2005-05-26
申请人 Sumitomo Rubber Ind Ltd; 住友ゴム工業株式会社; 发明人 TANAKA MASAKAZU; HATTORI TAKAYUKI;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a laminated seamless belt having superior durability and good transferability in the continued use and repeated use. SOLUTION: The invention is a laminated seamless belt having at least two layers a base layer and an outer layer. The base layer contains a polyester thermoplastic elastomer as its main component, and has a volume resistivity set to not less than 1.0×10 6 nor more than 1.0×10 11 . A volume resistivity of the outer layer is set to not less than 1.0×10 11 and not less than 10 times as large as that of the base layer. The base layer and the outer layer are formed by laminated extrusion. COPYRIGHT: (C)2005,JPO&NCIPI
权利要求
  • 少なくとも基層と外層の2層を有する積層シームレスベルトであって、
    前記基層はポリエステル系熱可塑性エラストマーにイオン導電剤が配合され、体積抵抗率が1.0×10 6以上1.0×10 11未満とされ、
    前記外層は体積抵抗率が1.0×10 11以上で、かつ基層の体積抵抗率の10倍以上とされていることを特徴とする積層シームレスベルト。
  • 積層押出成形品からなる請求項1に記載の積層シームレスベルト。
  • 前記外層にはイオン導電剤が配合されていない請求項2または請求項3に記載の積層シームレスベルト。
  • 前記外層はポリエステル系熱可塑性エラストマーからなり、かつ、
    外層材料の融点は基層材料の融点の±50℃以内である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の積層シームレスベルト。
  • 全体厚みが100〜500μmで、前記外層の厚みが全体厚みの1/5以下である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の積層シームレスベルト。
  • 画像形成装置の中間転写ベルトとして用いられ、引張弾性率が500〜5000kg/cm 2である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の積層シームレスベルト。
  • 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の積層シームレスベルトを備えていることを特徴とする画像形成装置。
  • 少なくとも基層と外層の2層を有する積層シームレスベルトの製造方法であって、
    前記基層材料および外層材料とも熱可塑性エラストマーを用いると共に前記基層材料には導電剤が配合され、
    前記基層材料の溶融物と外層材料の溶融物とを同時にダイスを用いて円筒状に積層押し出し成形し、
    該成形時におけるダイス温度は上記基層材料および外層材料を可塑化するに足りる温度以上に設定し、該ダイス温度設定値における上記外層材料の溶融粘度を100(Pa・s)以上で且つ上記基層材料の溶融粘度に対し1/5倍以上5倍以下としていることを特徴とする積層シームレスベルトの製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、積層シームレスベルトの製造方法および積層シームレスベルトに関し、特に、カラープリンタ、カラーコピー機等の画像形成装置の中間転写ベルトとして好適に用いられるものである。

    画像形成装置において、感光体上のトナー像を中間転写体に転写し、さらにこれを被転写体(主に紙)へ転写しており、該中間転写体として導電性シームレスベルト(以下、ベルトと略称する)が用いられている。 該中間転写ベルトは駆動軸に張架された状態で長期間使用されるため、耐久性が要求されると共に、帯電と放電とを繰り返す中間転写ベルトは、電荷を十分に保持しながら、電位差を小さくし且つ抵抗値を小さくして、転写ムラの発生させないことが要求されている。

    この種の導電性ベルトとして、カーボンブラックや金属酸化物からなる導電性フィラーを樹脂中に配合した単層の導電性ベルトが従来汎用されている。
    該単層ベルトでは、樹脂中に導電剤を練り込む時に均一に分散させにくく、成形されたベルトはベルト面内での抵抗値にバラツキが大きくなり、感光体上に現像されたトナー像をベルトに写し取る際に転写ムラが生じやすく、良好な画像が得られにくい問題がある。
    上記カーボンブラック等の導電剤の配合に代えて、イオン導電剤を配合する場合がある。 この場合、ベルト面内での抵抗値のバラツキは低減されるが、ベルト内からの導電剤のしみ出しが懸念され、場合によっては感光体を汚染する問題がある。

    上記問題に対して、例えば、特開昭53−87738号公報(特許文献1)等に導電体の基体上に誘電体を積層した転写ベルトが提案されている。 この積層構造の転写ベルトは単層ベルトより転写性の点で優れている。
    この種の積層ベルトとして、特開平6−130830号公報(特許文献2)では、外側層は引張弾性率が8000Kg/cm 2以上の熱可塑性樹脂からなる誘電体層とし、内側層は外側層と同一熱可塑性樹脂系からなる導電体層で構成された積層ベルトが提案されている。

    しかしながら、前記特許文献2で提案された積層ベルトでは、その外側層の引張弾性率が8000Kg/cm 2以上であるため、駆動軸にベルトを張架して連続回転させると、ベルトの端部から亀裂が入り、ベルトが裂けやすく、耐久性に問題がある。 また、導電性を付与するためにカーボンブラック等の導電性フィラーを用いると、前記した通り、ベルト面内の抵抗値のバラツキが生じやすく、安定した画像が得られなず、かつ、導電性フィラーの添加量を多くすると成形されたベルトは脆くなる。 さらに、熱可塑性樹脂の好適な例として挙げられているポリカーボネートを用いた場合、駆動輪にベルトを懸架して連続して回転させると端部から裂けることがあり、耐久性に問題がある。 またポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素含有ポリマーを使用すると、押し出し成形時に腐食性のガスを発生することがあるため特殊な加工を施した成形機が必要となり、製造コスト的に不利である。 ポリエチレンまたはポリプロピレンのようなオレフィン系材料ではクリープ特性が悪く、永久伸びが生じ、連続使用に対する耐久性に乏しい等の問題がある。

    特開昭53−87738号公報

    特開平6−130830号公報

    本発明は、連続使用や繰り返し使用に対する優れた耐久性と良好な転写性を有する積層シームレスベルト及び該積層シームレスベルトの製造方法を提供することを課題としている。

    上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも基層と外層の2層を有する積層シームレスベルトであって、
    前記基層はポリエステル系熱可塑性エラストマーにイオン導電剤が配合され、体積抵抗率が1.0×10 6以上1.0×10 11未満とされ、
    前記外層は体積抵抗率が1.0×10 11以上で、かつ基層の体積抵抗率の10倍以上とされていることを特徴とする積層シームレスベルトを提供している。

    本発明の積層ベルトは、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とする基層を有していることから、連続使用や繰り返し使用に対する耐久性に優れている。 詳細には、基層中のポリエステル系熱可塑性エラストマーは、全ポリマー成分の約60重量部以上、さらには約65重量部以上とするのが好ましい。
    本発明で用いるポリエステル系熱可塑性エラストマーは、前記特許文献2において熱可塑性樹脂の好適な例として挙げられているポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素含有ポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレンのようなオレフィン系材料を用いた場合に生じる前記問題点がなく、適度な弾性および柔軟性を有し、連続使用や繰り返し使用に対する優れた耐久性を発揮する。
    言い換えれば、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを使用することにより、厚み方向には適度な柔軟性を有する一方、長さ方向には伸びにくく、しかも振動に対する耐久性に優れた積層ベルトを得ることができる。 さらに、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは耐衝撃性、耐熱性および成形性も良好である。 潤滑剤等を添加することによりさらに成形性を向上することもできる。 その上に耐油性も良好であるため、トナー等により変質しにくく感光体汚染も生じにくい。 さらには着色性も良好であるため白色のベルトや他の色に着色したベルトを得ることができる。
    なかでも、酸化チタンまたは難燃剤として使用し得るメラミンシアヌレートなどを体質顔料として使用すると、より着色性が向上する。

    さらに、本発明の積層ベルトは、少なくとも基層と外層の2層を有し、基層の体積抵抗率が約1.0×10 6以上約1.0×10 11未満で、外層の体積抵抗率が約1.0×10 11以上1.0×10 14以下で、且つ基層の体積抵抗率の約10倍以上10 8以下に設定しているため、良好な転写性を示す。
    本発明の積層ベルトを中間転写ベルトとして用いた場合、トナーを感光体からベルト上へ転写(1st転写)し、ベルト上に画像を保持し、このトナー像を被転写体に転写(2nd転写)するという転写プロセスにおいては、1st転写から2nd転写までの間、ベルトおよびトナーの帯電性が一定時間保持される必要がある。 このためにはトナーと接触するベルトの表面は誘電層であることが好ましい。 一方で1st転写を効率よく行うためには、できるだけ小さな電位差で感光体からトナーを写し取る方が有利であることから、ベルトの体積抵抗値は小さい方が望ましい。 本発明の積層ベルトの上記構造はこのような要件を満たすため転写性に優れている。
    すなわち、トナーの静電画像を保持できる程度に電荷を保持するためには基層の体積抵抗率は約1.0×10 6以上が必要である一方、帯電および転写などのプロセスに必要な電圧を実用レベルとし、また、ベルト上の余分な残留トナーを排除する際の除電を容易にしクリーニング性を維持するために基層の体積抵抗率を1.0×10 11未満としている。
    また、トナーと直接接触する外層の体積抵抗率を約1.0×10 11以上としているのは中間転写ベルトとして用いる場合にベルト上に画像形成されたトナーの電荷を保持するためであり、1.0×10 14以下としているのは、紙等の転写媒体が静電気により吸着されにくくし、搬送を妨げられないようにするためである。
    さらに、外層の体積抵抗率を基層の体積抵抗率の約10倍以上としているのは、トナーの電荷を保持しやすくするためであり、上記体積対抗率の範囲内で、これ以上の倍数であれば好適な画像を得ることができる。

    積層ベルトの基層を上記体積抵抗率とするために導電剤を配合し、該導電剤としてイオン導電剤を用いている。
    導電剤は前記したように、電子導電剤とイオン導電剤に大別され、導電性の付与の点からはいずれを用いても良いが、本発明ではイオン導電剤を用いている。 イオン導電剤を用いると、電子導電剤に比べ成形したベルトにおける電気抵抗値のばらつきが少なくなり、感光体上に現像されたトナー像をベルトに転写する際の転写ムラが生じにくく、より良好な画像が得られる。

    外層は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とすることが好ましく、導電剤を除き基層と同一の組成を有することがさらに好ましい。 外層材料の組成が基層材料の組成と近似すればすれほど外層と基層の接着性がよくなり、積層成形が容易になる。
    また、外層には導電剤が含まれていない方が好ましい。 外層の導電剤を配合しないことにより、基層に含有されている導電剤が接触によって感光体側に移行したり、トナーとの接触によりトナー側へ移行したりするなどの悪影響を低減することができる。

    本発明の積層ベルトは全体厚みが約100〜500μm、好ましくはベルト全体厚みが約150〜400μmであって、外層の厚みが全体厚みの約1/5以下で10μm以上の厚みを有することが好ましい。
    上記設定とすることで、比較的低い電位差で容易に1st転写でき、1st転写から2nd転写の間のトナーの帯電性も保持できる。
    即ち、ベルト全体厚みを100μm以上とするのは、100μm未満であるとベルトの腰がなくなり製造時および機械への組みつけ時の取り扱い性が非常に悪くなり、生産性が低下する。 一方、500μm以下とするのは、500μmを越えるとベルトの曲げ剛性が高くなり、駆動性が悪くなると共に、感光体からトナーをベルト上に転写する1st転写時に高電圧が必要となる。
    また、外層の厚みを全体厚みの1/5以下とするのは抵抗の高い外層が厚くなると、帯電、転写などのプロセスに高電圧が必要となり、実用に適さなくなるからである。 一方、10μm以上とするのは、この厚みより薄い層を安定して成形することができない理由による。

    上記した積層シームレスベルトの製造方法としては、少なくとも基層と外層の積層構造を形成できる方法であれば特に限定されず、例えば基層上に外層を構成する材料(以下、外層材料という)をスプレー方式またはディッピング方式によりコーティングするという方法、射出成形法、ブロー成形法、インフレーション成形法等も採用できる。
    しかしながら、製造工程の簡素化および製造コストの低廉化を鑑みれば、基層および外層を同時に連続的に溶融押出する積層押出成形法が特に好ましい。

    本発明は、第二に、少なくとも基層と外層の2層を有する積層シームレスベルトの製造方法として、
    基層材料および外層材料とも熱可塑性エラストマーを用いると共に基層材料には導電剤が配合され、
    上記基層材料の溶融物と外層材料の溶融物とを同時にダイスを用いて円筒状に積層押し出し成形し、
    該成形時におけるダイス温度は上記基層材料および外層材料を可塑化するに足りる温度以上に設定し、該ダイス温度設定値における上記外層材料の溶融粘度を100(Pa・s)以上で且つ上記基層材料の溶融粘度に対し1/5倍以上5倍以下としていることを特徴とする積層シームレスベルトの製造方法を提供している。

    具体的には、例えば、まず基層を構成する材料(基層材料)および外層材料を2軸押出機、密閉式混練機、オープンロールまたはニーダー等で予め別々に混練りし、ペレット化しておく。 これを単軸の積層押出機のホッパーにそれぞれ投入して可塑化を行い、適量をギヤポンプでクロスヘッドダイスに積層状態で供給して押し出し、ダイリップより積層円筒状に押し出している。 前記積層押出用のダイスは、多重円筒を組み合わせたスパイラル式など公知の物が用いられる。
    なお、2軸押出機で材料を混練りした溶融物を、そのままギヤポンプからダイスへ供給して積層状態で押出成形し、2軸押出機をそのまま成形用に用いることも可能である。

    積層ベルトの基層材料および外層材料は前記体積抵抗率を満たすものであれば特に限定されない。 しかし、前記のように、外層材料は成形時のダイ設定温度における溶融粘度が約100(Pa・s)以上であり、かつ基層材料の溶融粘度に対し約1/5倍以上約5倍以下である熱可塑性エラストマーを用いている。
    基層材料と外層材料との溶融粘度を上記設定とすることにより、クロスヘッド内で積層された後の材料流路に流れやすさの差が生じにくく、ダイリップから大気中に出てくる溶融状態の積層円筒体は安定して流れ、精度のよいベルト形状を得る事ができる。
    即ち、外層材料の溶融粘度が100(Pa・s)未満であると、ダイリップから出てきた溶融状態の材料のドローダウンが大きくなり、ダイリップの直下流に設けられたサイジング型に沿わせて成形固化することが困難となる。 なお、150(Pa・s)以上がより好ましい。
    また、外層材料の溶融粘度が基層材料の溶融粘度に対して5倍を越える差がある場合、積層用ダイ中でそれぞれ溶融された基層用、外層用の樹脂はダイリップに近い部分で溶融状態のまま積層される。 この時、上記5倍を越える粘度差があると、溶融状態の基層用材料と外層用材料が積層される部分において、それぞれ流れが乱れ、ダイリップから吐出される積層溶融物の流速が不安定になり、溶融樹脂の吐出状態が安定しない。 これが成形品の歪みとなりるため良好なベルトが得られない原因となる。
    なお、上記溶融粘度は、ダイ温度が前記のように外層材料、基層材料からなるベルト材料を可塑化するに足りる温度(例えば、230℃)において、積層押出成形時の剪断速度を10(1/cm)、100(1/cm)に設定した場合において、前記のように、「外層材料の粘度/基層材料の粘度」を1/5(0.2)以上5倍以下としている。

    さらに、上記外層材料の融点は基層材料の融点の±50℃以内であることが好ましい。 基層材料と外層材料とをダイの中で溶融状態で積層するが、その際に温度を低融点の材料にあわせると高融点の材料が固化してしまい成形ができない。 そのため高融点の材料に成形温度を合わせる必要がある。 成形温度を高融点の材料にあわせた場合に、低融点の材料の分解または劣化などを避け、容易に一体積層成形するためには、外層材料の融点が上記範囲内であることが好ましい。

    本発明において基層材料および外層材料で用いるポリエステル系熱可塑性エラストマーは要求されるベルトの特性に応じて硬度、弾性率、成形性など適当なグレードのものを使用することができる。
    しかし、ベルト駆動時の伸びによる画像の乱れを押さえるため、引張り弾性率が約500〜5000kg/cm 2程度であることが好ましい。
    また、溶融押し出し成形を容易とするためにメルトフローインデックス(MI)が約1〜30g/10分程度であることも好ましい。
    上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、具体的には、ポリエステルポリエーテル系またはポリエステルポリエステル系等が挙げられ、複数種を混合して用いてもよい。 これらの熱可塑性エラストマーはポリエーテルのエーテル結合付近やポリエステルのエステル結合付近に陽イオンが捕捉されたような形で取り込まれるため、例えば導電剤が塩を形成している場合、当該塩が系外に染み出しにくく良好な導電性を発現することができる。 また、ポリエーテルポリエステル系では、ソフトセグメントである分子鎖が低温低湿状態と高温高湿状態との間で弾性率の変化が小さく安定しているため、抵抗値の環境依存性がより小さくなる。

    ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、芳香環を有するポリエステルからなるハードセグメントとポリエーテル及び/又はポリエステルからなる低融点ソフトセグメントからなる共重合体であることが好ましい。 また高融点ポリエステル構成成分だけで高重合体を形成した場合の融点が150℃以上であり、低融点ソフトセグメント構成成分のみで測定した場合の融点ないし軟化点が80℃以下である構成成分からなるポリエステル系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。

    上記の芳香環を有する高融点ポリエステルセグメント構成成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと炭素数が1〜25程度のグリコールまたはそのエステル形成性誘導体を用いることができる。 なお高融点ポリエステルセグメント構成成分の酸成分としては、テレフタル酸が全酸成分の約70モル%以上を占めていることが好ましい。 その他の酸成分も必要に応じて用いることができるが、これらの量は全酸成分の約30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは約25モル%以下である。 また炭素数が1〜25程度のグリコールとしてはエチレングリコールもしくは1,4−ブタンジオールまたはこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。

    上記ポリエーテルからなる低融点ソフトセグメントとしては、例えばポリ(エチレンオキサイド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール等が挙げられる。 高融点化や成形性の面からポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールが好ましく、なかでも分子量800〜1500程度のものが低温特性から特に好ましい。 前記低融点ソフトセグメントは、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの全重量の約15〜75重量部を占めていることが好ましい。

    上記ポリエステルからなる低融点ソフトセグメントとしてはラクトン類を用いることが好ましい。 前記ラクトン類としてはカプロラクトンが最も好ましいが、それ以外にもエナンラクトンまたはカプリロラクトン等も使用することができる。 これらのラクトン類は2種以上を併用することもできる。 芳香族ポリエステルとラクトン類との共重合割合は用途に応じて選定され得るが、標準的な比率としては重量比で芳香族ポリエステル/ラクトン類が97/3〜5/95程度、より一般的には95/5〜30/70程度の範囲であり、本発明においてもかかる範囲にあるものが好ましい。

    本発明で用いるイオン導電剤としては、具体的には帯電防止剤または電荷制御剤等が挙げられる。 このような導電剤は1種を単独で配合することもできるし、2種以上を混合して配合することもできる。

    前記帯電防止剤としては、従来静電潜像現像用トナーに用いられている任意のものを用いることができる。 負帯電性の帯電防止剤としては、2:1型含金属アゾ染料、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸の金属錯体、銅フタロシアニン染料のスルホニルアミン誘導体や銅フタロシアニンのスルホンアミド誘導体染料等を挙げることができる。 正帯電性の帯電防止剤としては、第4級アンモニウム化合物、アルキルピリジニウム化合物、アルキルピコリニウム化合物のほか、種々のニグロシン系染料等を挙げることができる。

    前記電荷制御剤としては有機金属錯体、金属塩、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体等が挙げられる。 その他には、第4級アンモニウム塩、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無物、エステル類等のカルボン酸誘導体や芳香族系化合物の縮合体等も挙げられる。 またビスフェノール類、カリックスアレーン等のフェノール誘導体等も用いられる。

    さらに、イオン導電剤として過塩素酸ナトリウム塩(NaClO4)または過塩素酸リチウム塩(LiClO4)を使用することもできる。 これらの塩は樹脂への混練り時に爆発的な反応を起こす危険性があるが、アジピン酸エステルに溶融させた溶液とすることで前記危険性が減少する。 そのため前記塩はアジピン酸エステルに溶融させた溶液として用いることが好ましい。

    本発明においては、イオン導電剤として下記化学式1で示される陰イオンを有する塩を用いることができる。 かかる塩はベルトの電気抵抗値の環境依存性が小さくなること、取扱いが容易であること、安全性が高いこと、良好な抵抗値を得ることができることなどの観点から、本発明においてイオン導電剤として用いることが好ましい。

    (式中、X

    1およびX

    2は同一であっても異なってもよく、炭素原子、フッ素原子およびスルホニル基(−SO

    2 −)を含む炭素数が1〜8の官能基を表す。)

    上記化学式1に記載の陰イオンを有する塩は化学式1のX 1およびX 2の官能基にあるフルオロ基およびスルホニル基の電子吸引性により陰イオンとして安定化され、イオンがより高い解離度を示す。 これにより少量の添加で非常に低い電気抵抗値を得ることができる。 またこの塩は電極等に対する化学的・電気化学的安定性が高く、安全性も高い。 また、使用可能温度領域が広い上に電気抵抗の調整が容易で、ベルト面内での抵抗値のバラツキが少なく、さらに環境依存性が小さく、感光体汚染を起こしにくいベルトとすることができる。 その上低価格で入手しやすく、常温で粉体であり、混練しやすく、押出成形しても表面肌を平滑にすることができる。

    上記化学式1に記載の陰イオンにおいて式中、X 1およびX 2は各々、炭素原子、フッ素原子およびスルホニル基(−SO 2 −)の全てを含む炭素数が1〜8の官能基であれば良い。 官能基X 1およびX 2としては、例えばR−SO 2 −(式中、Rはフッ素原子で置換されている炭素数1〜8の炭化水素基を表す。)で示される基が挙げられる。 ここで炭素数1〜8の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、1,1−ジメチルプロピル基もしくは3−メチル−3−ブテニル基等のアルキル基;例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基もしくは2−ペンテニル基等のアルケニル基;例えば、エチニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基もしくは2−ブチニル基等のアルキニル基が挙げられる。 置換基としてのフッ素原子の数および置換位置は化学的に許容される範囲であれば特に限定されない。
    上記化学式1に記載の陰イオンとしては安定性、コスト、取扱い性の点から化学式1中のX 1 −がC n1m1(2n1-m1+1) −SO 2 −であり、X 2 −がC n2m2(2n2-m2+1) −SO 2 −(n1およびn2は同一または異なってよく1以上の整数を表し、m1およびm2は同一または異なってよく0以上の整数を表す。)であることが好ましい。

    上記化学式1に記載の陰イオンと対になり塩を構成する陽イオンは、アルカリ金属、2A族、遷移金属、両性金属のいずれかの陽イオンであることが好ましい。 中でもアルカリ金属はイオン化エネルギーが小さく、安定な陽イオンを形成しやすいためより好ましい。 さらにアルカリ金属のなかでも導電度の高いリチウムが特に好ましい。 その他、金属の陽イオン以外にも下記の化学式2、化学式3で示されるような陽イオンを用いることもできる。

    (式中、R

    1 〜R

    4は同一または異なって置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。)

    (式中、R

    5およびR

    6は、同一または異なって置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。)

    1 〜R 6で表される「置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基」における炭素数1〜20のアルキル基としては例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ヘプチル、n−ヘキシル、n−デシル、ビニル、プロパニル又はヘキセニル等が挙げられる。 置換基としては、例えばハロゲン(好ましくは、フッ素、塩素、臭素)、オキソ基、アルカノイル基(好ましくはC 1〜8 )、アルカノイルオキシ基(好ましくはC 1〜8 )、アルカノイルアミノ基(好ましくはC 1〜8 )、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(好ましくはC 2〜8 )、ハロアルキルカルボニル基(好ましくはC 2〜8 )、アルコキシ基(好ましくはC 1〜8 )、ハロアルコキシ基(好ましくはC 1〜8 )、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくはC 1〜8 )、ジアルキルアミノ基(好ましくはC 2〜16 )、環状アミノ基、アルキルアミノカルボニル基(好ましくはC 2〜8 )、カルバモイル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくはC 1〜8 )、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくはC 1〜8 )、アルキルスルホニルアミノ基(好ましくはC 1〜8 )またはフェニル基等が挙げられる。

    上記の化学式2で示されるような陽イオンとしては、中でもR 1 〜R 4の内の3つがメチル基であり、その他の1つが置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアルキル基からなるトリメチルタイプの第4級アンモニウム陽イオンが特に好ましい。 かかるトリメチルタイプの第4級アンモニウム陽イオンは電子供与性の強い3つのメチル基により窒素原子上の正電荷を安定化でき、他の置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアルキル基によりポリマーとの相容性を向上できるためである。 また、化学式3で示される陽イオンにおいては、R 5あるいはR 6が電子供与性を有する方が窒素原子上の正電荷を安定化させることにより陽イオンとしての安定度を高め、より解離度が高くなり、その結果として導電性付与性能に優れた塩にすることができる。 従って、R 5あるいはR 6は電子供与性基が好ましく、メチル基あるいはエチル基であることがより好ましい。

    上記化学式1に記載の陰イオンを有する塩の中でも、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((CF 3 SO 22 NLi)が好ましい。 ポリエステル系熱可塑性エラストマーに練り込んだ際にしみ出しにくいため感光体を汚染する危険性が少なく、電気抵抗値の環境依存性も小さいからである。 その他、(C 25 SO 22 NLi、(C 49 SO 2 )(CF 3 SO 2 )NLi、(FSO 264 )(CF 3 SO 2 )NLi、(C 817 SO 2 )(CF 3 SO 2 )NLi、(CF 3 CH 2 OSO 22 NLi、(CF 3 CF 2 CH 2 OSO 22 NLi、(HCF 2 CF 2 CH 2 OSO 22 NLi、((CF 32 CHOSO 22 NLi等も好適な例として挙げられる。 これらは単独で用いても複数種を併用しても良い。

    以上述べたような導電剤の配合量は基層の体積抵抗率が所定の値となるように適宜選択することができる。 例えば、上記化学式1に記載の陰イオンを有する塩の添加量は全ポリマー成分100重量部に対して約0.01重量部〜3重量部、好ましくは約0.05重量部〜2.7重量部である。

    本発明においては上記化学式1で示される陰イオンを有する塩とともにポリエーテルブロックを有する共重合体を用いてもよい。 ポリエーテル構造が前記塩のイオンを安定化するからである。 すなわちポリエーテルブロックを有する共重合体がイオン導電性を発現する上記化学式1に記載の陰イオンを有する塩を選択的に取り込み、ポリエステル系熱可塑性エラストマー中に海島構造で分散される。 その結果、連続通電時の電気抵抗値の上昇が少なくなるという利点を有する。

    上記ポリエーテルブロックを有する共重合体のガラス転移温度Tgは約−40℃以下、さらには約−50℃以下であることが好ましい。 体積抵抗率の環境依存性を実用レベルに押さえるためにはガラス転移温度Tgが上記範囲であることが好ましい。 すなわち、ガラス転移温度Tgが上記範囲であるとベルト使用温度領域での弾性率変化の温度依存性が小さく、それによって体積抵抗率の環境依存性を小さくすることができる。 また一般的に本発明におけるポリエーテルブロックを有する共重合体のTgは−80℃以上である。 なお、ポリエステル系熱可塑性エラストマーのガラス転移温度Tgも−40℃以下であることが好ましい。

    本発明におけるポリエーテルブロックを有する共重合体の重量は、上記化学式1に記載の陰イオンを有する塩の重量の1.6倍〜3333倍、さらには10倍〜3000倍であることが好ましい。 これにより良好な押出肌を維持しながら良好な電気特性を得ることができる。 ポリエーテルブロックを有する共重合体中への塩の分散が不十分となり連続通電時の抵抗値上昇を抑制しにくくなるのを防ぐため、ポリエーテルブロックを有する共重合体の重量は上記化学式1に記載の陰イオンを有する塩の重量の1.6倍以上であることが好ましく、塩の濃度が低くなりベルトの電気抵抗値を十分に下げにくくなるのを防ぐため、ポリエーテルブロックを有する共重合体の重量は上記化学式1に記載の陰イオンを有する塩の重量の3333倍以下であることが好ましい。
    ポリエーテルブロックを有する共重合体は基層もしくは外層のいずれかまたは両方に含まれていてもよいが、外層のみに含まれていることが好ましい。

    ポリエーテルブロックを有する共重合体は、ポリエチレンオキサイドブロックポリアミド共重合体、ポリエーテルエステルアミド共重合体からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。 これらは上記化学式1に記載の陰イオンを有する塩との親和性が高く、良好な電気抵抗値に調整することができると共に基材となるポリエステル系熱可塑性エラストマーの良好な物性を保持することができる。 また組成物中に通電に有利な構造(パーコレーション構造)が形成され、電気抵抗値を従来以上に低減することができる。 その他、ポリエーテルブロックポリオレフィン樹脂等の樹脂型帯電防止剤を用いることもできる。 また、上記共重合体には過塩素酸ナトリウム等の塩が配合されていても良い。

    ポリエーテルブロックを有する共重合体としては特にポリエチレンオキサイドブロックポリアミド共重合体が好ましく、中でもポリエチレンオキサイドブロックナイロン共重合体が好ましい。 具体的にはポリエチレンオキサイドブロックナイロン11共重合体、ポリエチレンオキサイドブロックナイロン12共重合体、ポリエチレンオキサイドブロックナイロン6共重合体等を用いることができる。 なお、複数のポリマーを併用してもよい。

    またポリエチレンオキサイドブロックポリアミド共重合体にポリアミドホモポリマーをブレンドしたもの、とりわけポリエチレンオキサイドブロックポリアミド共重合体中のアミドと同一構造のポリアミドホモポリマーをブレンドしたものを用いることもできる。 成形時に高温で融解しているブレンド物が冷却されて相構造を形成していく際に、ポリアミドホモポリマーが先に繊維状に凝固していき、続いてそこにポリエチレンオキサイドブロックポリアミド共重合体がポリアミドホモポリマーとの相容性によって効果的に配列され、うまくパーコレーション構造を形成することができる。 すなわちポリエチレンオキサイドブロックナイロン12共重合体とナイロン12のブレンド物、ポリエチレンオキサイドブロックナイロン6共重合体とナイロン6のブレンド物等が効果的にパーコレーション構造を形成できるので好ましい。

    なお、導電剤としてイオン導電剤を用いる事が好ましいが、電子導電剤を配合してもよい。 電子導電剤として具体的には、例えばケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;酸化亜鉛、チタン酸カリウム、アンチモンドープ酸化チタン、酸化スズ、グラファイト等の導電性金属酸化物;カーボン繊維等が挙げられる。

    本発明の積層ベルトには本発明の目的を損なわない範囲で付加的成分を配合することができる。
    前記付加的成分としては例えば難燃剤が挙げられる。 難燃剤としては当該技術分野で用いられている公知の難燃剤を用いることができるが、メラミンシアヌレートを用いることが好ましい。 メラミンシアヌレートは窒素系の難燃剤であり、燃焼熱で熱分解し、窒素系のガスで酸素を置換し燃焼を妨げる働きをするものであるため、ハロゲンに起因する有毒ガス等の発生の心配もなく環境への影響が少ない。 さらにメラミンシアヌレートは分解温度300℃以上であり、この温度領域までは粉末状で存在するため、画像形成装置等の使用環境程度の温度であればベルト表面からのブリードやブルーミングを生じることはなく、感光体を汚染することもない。 その上メラミンシアヌレートは扱いが容易であるという利点も有する。 さらにメラミンシアヌレートは体質顔料としても作用するため、ベルトを着色しやすくすることができる。 例えばメラミンシアヌレートを含有させることにより白色のベルトを得ることができる。 白色のベルトとすると、特に中間転写ベルトとして用いる場合にはトナーの付着が簡単に目視可能となるためクリーニング性能の評価に好ましい。 白色ベルトとする場合にはカーボンブラック等の配合すると黒色になる添加剤等は極力配合しないことが好ましい。 難燃剤は基層もしくは外層のいずれかまたは両方に含まれていてもよい。 含有量も難燃剤の種類に応じて適宜選択すればよく、例えばメラミンシアヌレートの場合、積層ベルト全重量に対して約15重量部〜40重量部、好ましくは約20重量部〜35重量部である。

    なお、融点が80℃以上のリン酸エステルを全重量に対するリンの重量割合が0.1重量部以上0.4重量部以下となるように含有することもできる。 メラミンシアヌレートと前記リン酸エステルを併用することによりメラミンシアヌレートを必要以上に増量することなく難燃性をより向上させることができ、良好な強度を有すると共に残炎時間が短いシームレスベルトを得ることができる。

    前記付加的成分としては充填剤も挙げられる。 充填剤は機械的強度を向上させるため、または増量剤として用いられる。 充填剤としては例えば炭酸カルシウム、シリカ、クレー、タルク、硫酸バリウム、ケイ藻土などが挙げられる。 さらにベルト表面からの添加剤等の遊離、ブリード、ブルーミングや感光体への汚染性などの接触物への移行などを起こさない範囲で、かつ導電性に悪影響を及ぼさない範囲で、ステアリン酸もしくはラウリン酸などの脂肪酸、綿実油、トール油、アスファルト物質またはパラフィンワックスなどの軟化剤を配合しても良い。 これによりベルトの硬度や柔軟性を適度に調整することができる。 さらにはイミダゾール類、アミン類またはフェノール類などの老化防止剤を配合しても良い。 そのほかに酸化防止材(フェノール系、硫黄系等)、滑剤、有機・無機系の各種顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、銅害防止剤、架橋剤、流れ性改良剤等を付加的成分として挙げることができる。 また積層する際の層間接着性を阻害しない範囲で潤滑剤などの成形助剤を配合することができる。

    上述したごとく、本発明の積層シームレスベルトは、基層にポリエステル系熱可塑性エラストマーを使用することで優れた駆動性と耐久性を発揮する。 さらに、基層の体積抵抗率と外層の体積抵抗率を所定の範囲にすることにより良好な転写性を示す。
    また、積層ベルトの基層に導電剤としてイオン導電剤を配合しているため、電気抵抗値のバラツキが少ないベルトを得ることができる。

    また、上記積層シームレスベルトの製造方法として、基層および外層を同時に溶融押し出し成形すれば、より簡便な工程で、かつ低コストで本発明の積層ベルトを製造することができる。 さらにかかる製造方法によれば基層と外層との接着性も向上する。 この場合、基層材料と外層材料とを溶融粘度や融点などが所定の関係となるように選択すれば一体積層成形がより容易になり、さらに精度の高い積層ベルトが得られる。 なかでも外層材料にポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分として使用し、外層材料の組成と基層材料の組成を近似させることで、積層成形した際の基層と外層間の接着性がより向上する。

    以下、本発明の積層シームレスベルトの実施形態を説明する。
    積層シームレスベルトは図1に示す積層押出成形機を用いて、基層と外層とを同時に溶融押し出し成形して連続的に製造している。

    詳しくは、まず、基層用材料、外層用材料をそれぞれ用意する。 外層用材料はポリエステル熱可塑性エラストマーをそのまま用いることもできるし、必要に応じてそれぞれの原材料を2軸押出機で混練りしてペレットを作製することで用意してもよい。
    基層材料のペレットは、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とし、導電剤として上述した化学式1に記載の陰イオンを有する塩、具体的には、(CF 3 SO 22 NLiが配合されている。 導電剤の配合量は導電剤の種類により適宜選択すればよいが、(CF 3 SO 22 NLiの場合は0.5重量部程度としている。 この基層材料の混練温度は約200〜250℃、混練時間は約1〜20分としている。
    外層材料のペレットは、ポリエステル系熱可塑性エラストマーをそのまま用いる。

    上記ペレットを図1の積層押出機10の基層用単軸押出機12a、外層用単軸押出機12bのホッパー11a、11bに投入し、これら単軸押出機12a、12bの先端に付設したギヤポンプ14a、14bから環状ダイスを構成するクロスヘッドダイ13へ吐出している。 クロスヘッドダイ13を通して積層状態の環状物Bを鉛直下方に押し出し、該クロスヘッドダイ13の下端に連続させたサイジング用型であるインサイドサイジング15を通して、環状物Bを内周面側から整形する。 インサイドサイジング15を通した後に、整形された環状物Bを引取機16で鉛直方向に引き取り、自動カット機17で所定長さにカットしている。

    クロスヘッドダイ13における押出速度は外層材料および基層材料の組成またはベルトの厚みなどに応じて適宜選択すればよいが、133ml/分程度が最も好ましい。 また、クロスヘッドダイの温度は上記外層材料および基層材料を可塑化するに足りる温度以上に設定しており、230℃程度が最も好ましい。 ダイリップ13aから押し出された環状物Bはインサイドサイジング15に沿うことで接触冷却されベルト状に成形される。 冷却温度は適宜選択すればよいが約70〜100℃としている。

    上記方法により製造された積層シームレスベルトの用途は特に限定されるものではなく、カラー用の複写機、ファクシミリまたはプリンター等の画像形成装置の中間転写ベルト、定着ベルト、現像ベルトまたは搬送ベルト等として用いることができるが、画像形成装置の中間転写ベルトとして特に好適に用いられる。

    図2に上記積層シームレスベルトを中間転写ベルト33として用いたカラープリンターを示す。
    カラープリンターでは、転写ローラ30a、30b、帯電ローラ31、感光体32、中間転写ベルト33、定着ローラ34、4色のトナー35(35a、35b、35c、35d)、鏡36を備えている。
    上記カラープリンターによって画像が形成される場合、まず、感光体32が図中の矢印の方向に回転し、帯電ローラ31によって感光体32が帯電された後に鏡36を介してレーザー37が感光体32の非画像部を露光して除電され、画線部に相当する部分が帯電した状態になる。 次に、トナー35aが感光体32上に供給されて、帯電画線部にトナー35aが付着し1色目の画像が形成される。 このトナー画像は一次転写ローラ30aに電界がかけられることにより中間転写ベルト33上へ転写される。 同様にして感光体32上に形成されたトナー35b〜35dの各色の画像が中間転写ベルト33上に転写され、中間転写ベルト33上に4色のトナー35(35a〜35d)からなるフルカラー画像が一旦形成される。 このフルカラー画像は二次転写ローラ30bに電界がかけられることにより被転写体(通常は紙)38上へ転写され、所定の温度に加熱されている定着ローラ34を通過することで被転写体38の表面へ定着される。
    なお、両面印刷を行う場合には定着ローラ34を通過した被転写体38がプリンター内部で反転され、上記画像形成工程を繰り返し、再度裏面に画像が形成される。

    以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されないことはいうまでもない。
    なお、本実施例においてはポリエステル系熱可塑性エラストマーとしてペルプレンP90BD(東洋紡績(株)製:ポリエステルポリエーテル系(ガラス転移温度Tg−56℃))を用いた。

    導電性マスターバッチおよび難燃性マスターバッチの作製(a)導電性マスターバッチAの作製 イオン導電剤として上述した化学式1に記載の陰イオンを有する塩であるリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをポリエステル系熱可塑性エラストマーに10重量部の割合になるようにドライブレンドし、これを2軸押出機のホッパーに投入し、210℃設定にて混練りすることで導電性マスターバッチAを得た。 この時の樹脂温度実測値は230℃であった。

    (b)導電性マスターバッチBの作製 イオン導電剤として過塩素酸ナトリウムをアジピン酸エステル(アジピン酸ジブトキシエトキシエチル)に溶解し、過塩素酸ナトリウムの割合が14.7重量部である溶液を得た。 この溶液10重量部をポリエステル系熱可塑性エラストマー90重量部に混合し、これを2軸押出機に少しずつ供給し、210℃に設定して混練りすることで導電性マスターバッチBを得た。 この時の樹脂温度実測値は230℃であった。

    (c)導電性マスターバッチCの作製 イオン導電剤として上述した化学式1に記載の陰イオンを有する塩であるリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをポリエーテルブロックを有する共重合体(Irgastat P16、チバガイギー製:ポリエチレンオキサイドブロックナイロン12共重合体(ガラス転移温度Tg−57℃))に5重量部の割合になるようにドライブレンドし、これを2軸押出機のホッパーに投入し、210℃設定にて混練りすることで導電性マスターバッチCを得た。 この時の樹脂温度実測値は230℃であった。

    (d)難燃性マスターバッチの作製 メラミンシアヌレート(MC640:日産化学製)をポリエステル系熱可塑性エラストマーに50重量部の割合になるようにドライブレンドし、これを2軸押出機のホッパーに投入し、210℃設定にて混練りすることで難燃性マスターバッチを得た。 この時の樹脂温度実測値は230℃であった。

    「実施例1」
    導電性マスターバッチAとポリエステル系熱可塑性エラストマーをドライブレンドした。 このときイオン導電剤の含有量がポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対し0.5重量部となるようにした。 これを2軸押出機で210℃設定にて混練りすることで基層材料のペレットを得た。 これを図1の積層押出機のホッパー11aに投入した。
    一方、ホッパー11bにポリエステル系熱可塑性エラストマーからなるペレットをホッパー11bに投入した。 それぞれの単軸押出機を運転して、基層材料側のギヤポンプ14aの回転数を12.1rpm、外層材料側のギヤポンプ14bの回転数を1.4rpmに調整し、溶融樹脂をクロスヘッドダイ13に送り込んだ。
    ダイ温度230℃に設定されたクロスヘッド13内で各材料を積層し、内径185mm、間隙0.5mmの環状ダイズより溶融物を鉛直方向へ押し出した。 その後、80℃に設定された外径170mmのインサイドサイジング15に沿わせることで冷却して固化成形し、引き取り速度1m/分で鉛直下向きに引っ張り、自動カット機で400mm幅にカットすることで連続的に本発明にかかる積層シームレスベルトを得た。 ベルト内径は169.5mm、平均肉厚は250μm、外層厚みは25μm、外層/全体層厚み比は1/10、幅は400mmであった。 得られたベルトの成形性は良好であった。

    「実施例2」
    基層用材料は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー/導電性マスター・バッチA/難燃性マスター・バッチを、導電剤の割合がポリマー成分の0.5重量部、難燃剤の割合が全重量の25重量部となるように調整してドライブレンドし、2軸押出機にて実施例1と同じ条件で混練した。 同じにして得られた基層材料からなるペレットを用いて実施例1と全く同様にして本発明にかかる積層シームレスベルトを得た。 得られたベルトの成形性は良好であった。

    「実施例3」
    基層用材料として、実施例2の導電性マスター・バッチAの代わりに導電性マスター・バッチBを用い、イオン導電剤の含有量がポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対し0.7重量部、メラミンシアヌレートがベルト全重量に対して25重量部となるようにして実施例2と同様に混練りした。 得られた基層材料からなるペレットを用いて、実施例1と全く同様にして本発明にかかる積層シームレスベルトを得た。 得られたベルトの成形性は良好であった。

    「実施例4」
    基層材料として、ポリエステル系熱可塑性エラストマー/ポリエーテルブロックを有する共重合体(Iregastat P16 チバガイギー製、ポリエチレンオキサイドブロックナイロン12共重合体))/導電性マスター・バッチC/難燃性マスター・バッチをドライブレンドし、2軸押出機にて実施例2と同様の条件で混練りして基層用材料とした。
    其の際、イオン導電剤の含有量がポリエステル系熱可塑性エラストマーとポリエーテルブロックを有する共重合体を合わせたポリマー100重量部に対し1.2重量部となるようにし、ポリエーテルブロックを有する共重合体の含有量がポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対し28.5重量部となるようにし、さらに、メラミンシアヌレートがベルト全重量に対して25重量部となるようにして、実施例2と同様に混練りして基層用材料とした。 得られた基層材料からなるペレットを用いて、実施例1と全く同様にして本発明にかかる積層シームレスベルトを得た。 得られたベルトの成形性は良好であった。

    「比較例1」
    実施例1の基層材料のみを用いて肉厚250μmの単層ベルトを作成した。

    「比較例2」
    ポリエステル系熱可塑性エラストマーのみを用いて単層ベルトを作成した。

    「比較例3」
    基層は実施例1と同じとした。 外層は前記Irgastat P16(チバガイギー製、ポリエチレンオキサイドブロックナイロン12共重合体)を使用した。
    実施例と同じ条件で積層成形したが、環状ダイスより吐出される溶融樹脂の吐出状態が安定せず、インサイドサイジング型に沿わせることができないため、ベルト状に成形することができなかった。

    実施例1〜4の各層の材料を用いプレス成形によりシートを作製し、下記物性(a)〜(c)を測定した。 その結果を下記の表1に示す。
    (a)体積抵抗率 23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下で、ハイレスタURSプローブ(三菱化学(株)製)を用い、測定電圧250V、測定時間10秒で測定した。
    (b)溶融粘度 JIS K 7199に従ってCapillary Flow Testにより基層材料および外層材料の溶融粘度を測定した。
    (c)融点 示差走査熱量計DSC2910(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて基層材料および外層材料の融点を測定した。

    表1に示すように、成形時における溶融粘度は、実施例1では外層材料は基層材料に対して10(1/cm)では0.61倍、100(1/cm)では1.41倍、実施例2では同じく1.47倍、2.17倍、実施例3では同じく0.88倍、1.05倍、実施例4では同じく2.08倍、3.78倍であった。 よって、本発明の範囲である1/5(0.2)倍以上5倍以下であった。 よって、積層押出成形できベルトを成形することができた。 これに対して、比較例3では、成形時における溶融粘度は、外層材料は基層材料に対して10(1/cm)では0.1倍で1/5未満であったため、同時押し出し成形でベルトを成形することができなかった。

    実施例1〜4および比較例1,2で作製したベルトについて画像だしテストを行った。 画像だしテストとして、具体的には各ベルトをフルカラー電子写真装置(セイコーエプソン製、インターカラーLP−8300C)の中間転写ベルトとして装着し、画像出しテストを行い、転写性を目視により評価した。

    実施例1〜4で作製した本発明の積層ベルトについては画像出しテストの結果は良好であり、感光体の汚染も見られなかった。 比較例1のベルトを装着した装置では、5000枚の連続印刷で導電剤が感光体へ移行しているのが確認された。 そのため感光体の帯電性の悪化による画像の劣化がみられた。 また、比較例1のベルトは2nd転写性が実施例より劣り、感光体上に転写されなかったトナーが残留しているのが目視された。 比較例2のベルトを装着した装置では体積抵抗率が高すぎて1st転写性が悪い。

    上記した画像出しテスト結果より、本発明の積層シームレスベルトを中間転写ベルトとして用いた場合、転写にムラがなく良好な画像が得られると共に、感光体への導電剤の汚染が発生しないことが確認できた。

    本発明の積層ベルトの製造に用いるベルト成形機の概略図である。

    本発明の積層ベルトを備えたカラー用画像形成装置の模式的正面図である。

    符号の説明

    12 押出機13 クロスダイヘッド15 インサイドサイジング33 中間転写ベルト

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