Carrier for transporting the cells for transplantation sheet

申请号 JP2012269747 申请日 2012-12-10 公开(公告)号 JP5320501B1 公开(公告)日 2013-10-23
申请人 ニッカン工業株式会社; 发明人 登代次 日比; 浩司 加藤; 宏幸 新倉; 潤 渡邉; 正紀 小島;
摘要 【課題】細胞シートを運搬するのに適した、密着性、剥離性に優れたキャリアを提供する。
【解決手段】
細胞非障害性の条件で応答可能な、細胞シート付着性の被覆層と、医療用材料として許容される基材からなる支持層とを備える、移植用細胞シートを運搬するためのキャリアを提供する。 キャリアの被覆層に付着している細胞シートを移植場所に適用し、そして細胞非障害性の条件にすることにより細胞シートを移植場所に維持しつつ、剥離除去することができる。
【選択図】なし
权利要求
  • 細胞非障害性の 温度溶解、軟化、融解、粘度の低下または分解可能な 多糖類を含む 、細胞シート付着性の被覆層と、
    被覆層をその表面に有し、医療用材料として許容される基材 の不織布からなる支持層とを備える、移植用細胞シートを運搬するためのキャリアであって:
    キャリアの被覆層に付着している細胞シートを移植場所に適用し、そして細胞非障害性の 温度にすることにより細胞シートを移植場所に維持しつつ、剥離除去することができる、キャリア。
  • 支持層が、ポリ乳酸不織布からなる、請求項1に記載のキャリア。
  • 細胞非障害性の 温度にすることが、細胞非障害性の温度の等張液を滴下することである、請求項 1または2に記載のキャリア。
  • 支持層が、厚さ5〜500μmであるか、および/または重量10〜250g/m 2であり;
    被覆層が、厚さ5〜500μmであるか、および/または被覆量が0.1〜200g/m 2である、
    請求項1〜 3のいずれか1項に記載の、キャリア。
  • 巻き上がり試験において、カール高さが1.0mm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキャリア。
  • 請求項1〜 5のいずれか1項に記載のキャリアと、キャリアの被覆層に付着している細胞シートからなる、移植用片。
  • (1)培養場所にある細胞シートの上に、請求項1〜 5のいずれか1項に記載のキャリアを被覆層が細胞シートに接するように積層し、
    (2)キャリアとともに細胞シートを培養場所から移動させる、
    工程を含む、細胞シートの製造方法。
  • (1)培養場所にある細胞シートの上に、請求項1〜 5のいずれか1項に記載のキャリアを被覆層が細胞シートに接するように積層し、
    (2)キャリアとともに細胞シートを培養場所から移植場所へ移動させ、
    (3)細胞シートを移植場所に適用し、そして(4)細胞非障害性の温度にすることにより細胞シートを移植場所に維持しつつ、キャリアを剥離除去する工程を含む、細胞シートの移植方法 (ヒト個体での実施を除く。)
  • 細胞非障害性の 温度溶解、軟化、融解、粘度の低下または分解可能な 多糖類を含む 、細胞シート付着性の被覆層と、
    被覆層をその表面に有し、医療用材料として許容される基材の不織布からなる支持層とを備える、細胞シートの運搬において使用する、キャリア。
  • 細胞非障害性の 温度溶解、軟化、融解、粘度の低下または分解可能な 多糖類を含む 、細胞シート付着性の被覆層と、
    被覆層をその表面に有し、医療用材料として許容される基材 の不織布からなる支持層とを備える、細胞シートの移植において使用する、キャリア。
  • 说明书全文

    本発明は、移植用細胞シートを運搬するためのキャリアに関する。 本発明は、再生医療等の分野で有用である。

    身体において、臓器や組織が欠損状態、機能障害または機能不全に陥った場合に、失われた機能を再生するために、細胞や組織を移植することが必要とされる。 臓器や組織機能を再建する医療技術は、「再生医療」と呼ばれる。

    再生医療技術の一つは、組織の中に僅かに存在する幹細胞を採取し、生体外において適切な条件で培養して移植するための培養組織を形成させ、その培養組織を損傷部位の治療に用いることである。 このような技術は、主に皮膚表皮、膜表皮、骨、軟骨、心筋等を対象として、実用化が進められている。 最近では、iPS細胞(induced Pluripotent Stem cell、人工多能性幹細胞)に由来する幹細胞の利用にも期待が集まっている。 このような再生医療技術を広く実用的なものとするためには、細胞採取、培養および移植等、各々の段階で、高品質の移植用組織を再現性よく容易に調製できる方法が望まれる。

    移植用のシート状の細胞培養物は、細胞シートとも称される。 細胞シートは、幹細胞を適切な培養器上で培養し、増殖させることにより調製されるが、細胞シートを培養器表面から剥がす際、不純物混入の可能性や細胞シートの変性・損傷を抑えるために、培養器表面に関する種々の検討がされてきた。 例えば、温度応答性ポリマーで基材表面を被覆することにより、細胞培養支持体上で細胞を培養してシートを形成させた後、培養液を適切な温度として温度応答性ポリマーを溶解させることにより、細胞シートを培養器表面から剥離させる技術が開発されている(特許文献1〜6)。

    一方、培養器から剥離した細胞シートを移植部位まで運搬する際には、縮み、折れ、たるみ、破れ等を防いでシート形状を維持するために、細胞シートを一旦、膜状のキャリアに付着させた状態とする。 より詳細には、細胞シートを培養器表面から剥離させるための操作を行う前または後に、培養シートの上に、細胞シートが付着可能な素材からなるキャリア膜を置き、キャリアごと細胞シートを持ち上げる。 このキャリアとして使用可能な具体的な材料としては、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロースおよびその誘導体、紙類、キチン、キトサン、コラーゲン、ウレタン等が例示されている(前掲特許文献4等)。

    国際公開公報 WO 2006/093153

    国際公開公報 WO 2005/103233

    国際公開公報 WO 2005/084429

    国際公開公報 WO 2004/073761

    国際公開公報 WO 02/010349

    国際公開公報 WO 02/008387

    細胞シートの運搬のためのキャリアは、培養器表面から細胞シートを回収し、そして移植場所へ細胞シートを移動させる際は、細胞シートにしっかり付着することができ、培養器表面から細胞シートをキャリアと一緒に持ち上げられることが望ましい(密着性)。 その一方で、移植場所においては、細胞シートを患部表面に残したまま、キャリアのみを容易に剥離・除去することができることが好ましい(剥離性)。

    しかしながら、実際には既存の食品包装材料等を転用しているに過ぎず、これまで、キャリアを、細胞シートを運搬するという用途に特に適したものとするための検討は、十分には行われていなかった。

    本発明者らは、細胞シートを運搬するという用途に適した材質を種々検討してきた。 その結果、ポリ乳酸不織布の表面に、比較的低温でも溶解する物質を主成分としたポリマー素材を塗布したものが、密着性および剥離性に優れることを見出した。 また、キャリアは通常、医療用具としてのピンセットで取り扱われることが一般的であるが、そのような素材であれば、ピンセットによる取扱い性がよく、吸湿による性状の変化も少ない上、眼球等の球面であっても細胞シートをきれいに密着させることができることを見出し、本発明を完成した。

    本発明は、以下を提供する:
    [1] 細胞非障害性の条件で応答可能な、細胞シート付着性の被覆層と、
    医療用材料として許容される基材からなる支持層とを備える、移植用細胞シートを運搬するためのキャリアであって:
    キャリアの被覆層に付着している細胞シートを移植場所に適用し、そして細胞非障害性の条件にすることにより細胞シートを移植場所に維持しつつ、剥離除去することができる、キャリア。
    [2] 支持層が、ポリ乳酸不織布からなる、1に記載のキャリア。
    [3] 被覆層が、細胞非障害性の温度で応答可能な多糖類を含む、[1]または[2]に記載のキャリア。
    [4] 細胞非障害性の条件が、細胞非障害性の温度の等張液を滴下することである、[1]に記載のキャリア。
    [5] 支持層が、厚さ5〜500μm、重量(目付)10〜250g/m 2であり;
    被覆層が、厚さ5〜500μmであるか、および/または被覆量が0.1〜200g/m 2である、
    1〜4のいずれか一に記載の、キャリア。
    [6] 巻き上がり試験において、カール高さが1.0mm以下である、[1]〜[5]のいずれか一に記載のキャリア。
    [7] [1]〜[6]のいずれか一に記載のキャリアと、キャリアの被覆層に付着している細胞シートからなる、移植用片。
    [8] (1)培養場所にある細胞シートの上に、[1]〜[6]のいずれか一に記載のキャリアを被覆層が細胞シートに接するように積層し、
    (2)キャリアとともに細胞シートを培養場所から移動させる、
    工程を含む、細胞シートの製造方法。
    [9] (1)培養場所にある細胞シートの上に、[1]〜[6]のいずれか一に記載のキャリアを被覆層が細胞シートに接するように積層し、
    (2)キャリアとともに細胞シートを培養場所から移植場所へ移動させ、
    (3)細胞シートを移植場所に適用し、そして(4)細胞非障害性の条件にすることにより細胞シートを移植場所に維持しつつ、キャリアを剥離除去する工程を含む、細胞シートの移植方法。
    [10] 細胞非障害性の条件で応答可能な、細胞シート付着性の被覆層と、
    医療用材料として許容される基材からなる支持層とを備える、細胞シートの運搬において使用する、キャリア。
    [11] 細胞非障害性の条件で応答可能な、細胞シート付着性の被覆層と、
    医療用材料として許容される基材からなる支持層とを備える、細胞シートの移植において使用する、キャリア。

    本発明のキャリアを用いることより、細胞シートの培養場所から移植場所への運搬、および細胞シートの移植が容易に実施できる。
    本発明のキャリアを用いることにより、眼球等の球面であっても細胞シートをきれいに密着させることができる。
    本発明のキャリアは細胞シートの剥離性がよいので細胞シートに与える損傷を抑えることができる。 そのため、本発明のキャリアを用いることにより、細胞シートの生着性を高めることが期待できる。

    製品A、および本発明品A〜Cの細胞シートを用いた評価。 ニューメチレンブルー染色液で細胞を超生体染色した。 一段目:4種類のキャリアを細胞シートにのせた。 二段目:20℃で5〜10分間放置することで細胞シートがシャーレから剥がれ、キャリアに付着するようにした。 三段目:ピンセットでキャリアを持ち上げ、細胞シートが付着していることを確認した。 四段目:細胞シートを下側にしたまま、白い紙の上に置き、キャリアを静かに剥がした。

    本発明品B'、C'およびDの細胞シートを用いた評価。 ニューメチレンブルー染色液で細胞を超生体染色した。 一段目:3種類のキャリアを細胞シートにのせた。 二段目:20℃で5〜10分間放置することで細胞シートがシャーレから剥がれ、キャリアに付着するようにした。 三段目:ピンセットでキャリアを持ち上げ、細胞シートが付着していることを確認した。 四段目:細胞シートを下側にしたまま、白い紙の上に置き、キャリアを静かに剥がした。

    キャリアを用いての移植評価。 全身麻酔下で角膜表層切除を行った移植対象症例犬の角膜の上に、細胞シートを、キャリア(本発明品C)を用いて移植した。 一段目:手術前(左眼)。 二段目:角膜表層切除後(左眼)。 三〜四段目:細胞シートの適用。

    ポリ乳酸不織布および製品Aの赤外吸収スペクトル。

    本発明に関連して、成分の組成を、「%」で表すときは、特に記載した場合を除き、その値は、重量に基づく。
    本発明に関連して、範囲を「X〜Y」で表すときは、特に記載した場合を除き、その範囲は両端の値XおよびYを含む。

    [キャリアの構成]
    本発明は、細胞非障害性の条件で応答可能な、細胞シート付着性の被覆層と、医療用材料として許容される基材からなる支持層とを備える、移植用細胞シートを運搬するためのキャリアを提供する。
    本発明で「キャリア」というときは、特に記載した場合を除き、細胞シートを密着させて運搬するために使用するものであり、その形状は、膜状またはシート状である。

    本発明のキャリアの被覆層は、細胞非障害性の条件で応答可能であって、かつ細胞シートが付着できる一またはそれ以上の高分子物質を主成分とする。

    本発明において、ある条件が「細胞非障害性」であるというときは、その条件は、その条件に曝される細胞シートにおける細胞(群)の生存に影響を与えないか、または影響を与えるとしても回復可能であるか、または影響が極めて少ないことをいう。 細胞非障害性の条件に曝された細胞(群)は、移植された患部で生着し、意図した機能を発揮することが期待できる。 ある条件が対象となる細胞にとって「細胞非障害性」であるか否かは、当業者であれば、適宜決定することができる。

    「細胞非障害性」である具体的な条件は、用いる細胞の種類にもよるが、動物の体温程度の温度とすること、その細胞の通常の培養のための温度とすること、典型的には35℃〜42℃の温度とすることは、本発明でいう「細胞非障害性」の条件に含まれる。 このような条件は、例えば、移植場所または環境を、そのような温度に温めること、より具体的には、加温した等張液、例えば生理食塩、細胞培養用培地、PBS等の緩衝液を、滴下することによる。

    本発明において、被覆層の性質に関してある条件で「応答可能」というときは、特に記載した場合を除き、条件を変化させることにより、溶解、軟化、溶融、粘度の低下、分解等の反応がおこる性質をいう。
    本発明において、被覆層の性質に関して「細胞シート付着性」というときは、特に記載した場合を除き、培養器表面から剥離させるための処理がされた細胞シートを一緒に持ち上げるのに十分な程度に付着させることができる性質をいう。

    本発明のキャリアを構成する被覆層の主成分(固形分のうち50%を超える成分)は、医薬、食品または化粧品において、増粘剤、安定剤、ゲル化剤または糊料として用いられる成分の一以上からなる。 好ましい態様の一つにおいて、被覆層は、主成分として、デンプン、寒天、ペクチン、カラギナン、ファーセレラン、アルギン酸、アルギン酸塩(エステルを含む。)、ガラクトマンナン、グルコマンナン、タマリンドガム、キサンタンガム、グァーガム、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、イヌリン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC) 、およびアラビアガムからなる群より選択される一以上を含む。

    本発明の好ましい態様の一つにおいては、細胞非障害性の温度において全部または一部が溶解するように、被覆層は、複数の成分により組成されていてもよく、医薬、食品または化粧品において許容される添加剤が添加されていてもよく、また使用される成分が低分子化されていてもよい。

    本発明の好ましい態様においては、被覆層は、デンプン、寒天、ペクチン、カラギナン、ファーセレラン、アルギン酸、アルギン酸塩(エステルを含む。)、ガラクトマンナン、グルコマンナン、タマリンドガム、キサンタンガム、グァーガム、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、およびアラビアガムからなる群より選択される一以上と、医薬、食品または化粧品において許容される他のゲル化剤をさらに含む。 より具体的な態様においては、被覆層は、寒天、ペクチン、および/またはデンプンを主成分とし、医薬、食品または化粧品において許容される他のゲル化剤をさらに含む。 このような態様においては、被覆層は、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、マルチトールおよびキシリトールからなる群より選択される一以上を含んでいてもよく、さらに単糖(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース)、および/または二糖類(例えば、マルトース、スクロース、ラクトース)を含んでいてもよい。 なお、本発明者らは、本明細書の実施例に示した以外にアラビアガムについても、基材を被覆することができ、かつ細胞非障害性の温度下で剥離性が良好であることを確認している。

    本発明の好ましい態様の一つにおいては、被覆層は、主成分として、ペクチンまたは重量平均分子量/数平均分子量が20以下である寒天を含む。 このような態様においては、被覆層は、単糖、二糖、オリゴ糖、デキストリン、イヌリンおよびこれらの糖アルコールからなる群より選択される一以上からなる添加剤を含む。 添加剤としてデキストリンを使用する場合、そのDE(Dextrose Equivalent。ぶどう糖を100とした場合の糖液の持つ還元を固形分当で表した値。)は、18以下であることが好ましい。 添加剤の重量平均分子量/数平均分子量は、20以下であることが好ましい。

    本発明における被覆層は、支持層の少なくとも一方の面に形成されていればよく、双方の面に形成されていてもよい。 支持層の厚さまたは被覆量は、被覆層に付着している細胞シートを移植場所まで運搬することができ、かつ細胞非障害性の条件にすることにより細胞シートを移植場所に維持しつつキャリアを剥離・除去することができる限り、適宜とすることができる。 典型的には、被覆層の厚さは5〜500μm、例えば10〜100μmとすることができる。 なお、本発明で被覆層に関し、厚さをいうときは、特に記載した場合を除き、キャリアの表裏両側に被覆層を有する場合であっても片側の厚さを指し、また被覆工程における設定の厚さではなく、被覆後に必要に応じ乾燥して形成された、最終製品における被覆層の厚さを指す。 厚さがいずれの場合であっても、キャリアまたは支持層の面積あたりの被覆量としては、0.1〜200g/m 2 、例えば2〜100g/m 2 、2〜25g/m 2とすることができる。 なお、後述するように、支持層は不織布である場合があり、その場合、支持層は複数の繊維により構成される立体物としての表面積も有することとなるが、本発明でキャリアまたは支持層等の面積に言及する場合は、特に記載した場合を除き、立体物としての表面積ではなく、平面としての面積(広さ)を指す。

    一方、本発明のキャリアの支持層は、医療用材料として許容される基材からなる。 支持層基材は、上述したような被覆層を、その表面に形成できるものでもある。 支持層はまた、細胞適合性でもあることが好ましい。

    本発明の好ましい態様においては、支持層は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルイソシアネート、ポリブチルイソシアネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリノルマルプロピルメタクリレート、ポリノルマルブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、メチルセルロース、プロピルセルロース、ベンジルセルロース、フィブロイン、天然ゴム、ポリビニルアセテート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルノルマルプロピルエーテル、ポリビニルイソプロピルエーテル、ポリビニルノルマルブチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルターシャリーブチルエーテル、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(N−ビニルカルバゾル)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリビニルメチルケトン、ポリメチルイソプロペニルケトン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリシクロペンテンオキシド、ポリスチレンサルホン、およびこれらの共重合体からなる群より選択されるいずれかにより形成することができる。

    本発明の特に好ましい一態様においては、より特定すると、支持層は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、およびこれらの共重合体からなる群より選択される脂肪族ポリエステルのいずれかにより形成することができる。 本発明の特に好ましい一態様においては、支持層は、ポリ乳酸からなる。

    本発明の支持層の形状は、特に限定されないが、細胞シートを付着させて運搬するとの観点からは、強度や伸びなどに方向性を持たない不織布であることが好ましい。 なお、以下では、支持層基材としてポリ乳酸不織布を使用した場合を例に、本発明のキャリアを説明することがあるが、その説明は、特に記載した場合を除き、ポリ乳酸不織布以外の基材を使用した場合にも当てはまる。

    本発明において支持層として、ポリ乳酸不織布を使用する場合、その繊維径、厚み、重量(目付)等は、キャリアとして使用している際に適度な柔軟性等を有する限り、適宜とすることができる。 支持層は、典型的には、厚さ5〜500μm、例えば10〜250μm、より特定すると20〜250μmとすることができる。 支持層の厚さがいずれの場合であっても、支持層の重量は、10〜100g/m 2 、例えば20〜50 g/m 2とすることができる。

    また、本発明において支持層としてポリ乳酸不織布を使用する場合、引張強度および伸び率を考慮して、設計してもよい。 細胞シートを付着させて運搬するとの観点からは、ある程度の強度を有するように設計することができる。 また、細胞シートが曲面に移植されること等を考慮して、ある範囲内の柔軟性および/またはある範囲内の伸び率を有するように設計することができる。 例えば、目付10〜120 g/m 2のポリ乳酸不織布を使用する場合、引張強度が20〜400 Nとなるように設計することができ、また伸び率が10〜20%となるように設計することができ、さらに引裂強度が1.0〜20 Nとなるように設計することができる。

    すでに述べたように、従来のキャリアの基材としては、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロースおよびその誘導体、紙類、キチン、キトサン、コラーゲン、ウレタンが提案されてきた。 また、キャリアとして製品化されているものの多くは、食品包装材料等の既存のものからの転用であった。 本発明のキャリアは、細胞シート運搬用に特別な設計がされており、新規なものである。 したがって、本発明によって提供される、キャリアと細胞シートの一体化物、すなわちキャリアの被覆層に付着している細胞シートからなる、移植用片も、新規なものであるといえる。

    [キャリアの製造方法]
    本発明のキャリアは、医療用具または細胞培養用器材の製造のための従来技術を利用して製造することができる。 支持層表面への被覆は、通常、溶解液を調製する工程、溶解液で支持層基材をコートする工程、ゲル化およびまたは乾燥等により、被覆層を形成させる工程を含む。

    被覆層が、主成分として、デンプン、寒天、ペクチン、カラギナン、ファーセレラン、アルギン酸、アルギン酸塩(エステルを含む。)、ガラクトマンナン、グルコマンナン、タマリンドガム、キサンタンガム、グァーガム、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、イヌリン、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アラビアガムからなる群より選択される一以上を含む場合、溶解液は、水系の溶媒に上記成分を、必要に応じ加温および/または撹拌しながら溶解することにより、調整できる。 溶解液の濃度は、適宜調整することができるが、主成分として寒天および/またはデンプンを用い、支持層の面積あたりの被覆量を5〜40g/m 2とするとの観点からは、濃度は、0.3〜15%とすることができる。

    溶解液で支持層基材をコートする工程は、細胞シートを付着させるために必要な量を被覆することができる限り、被覆手段、被覆パターンに制限はなく、シート状物や平面を、被覆または塗装するための種々の既存の手段を利用することができる。 例えば、浸漬、カーテンコート、ドットコート、スプレーコート、スパイラルスプレーコート、サミットスプレーコート等のための種々の手段を適用することができる。

    [キャリアの使用方法]
    本発明のキャリアは、下記のステップにより、使用することができる:
    (1)培養場所にある細胞シートの上に、キャリアを被覆層が細胞シートに接するように積層してキャリアと細胞シートを密着させ、キャリアに細胞シートが密着した状態で、細胞シートを培養器表面から剥離・回収する。
    (2)キャリアとともに細胞シートを培養場所から移動させる。
    (3)キャリアの被覆層に付着している細胞シートを移植場所に適用し、そして細胞非障害性の条件にすることにより細胞シートを移植場所に維持しつつ、剥離除去する。

    細胞を培養して細胞シートを形成させる際、培養は、温度応答性ポリマーで培養基材表面が被覆されたものを用いるとよい(前掲非特許文献1〜6参照)。 このような培養器は市販もされている。 培養場所にある細胞シートを、本発明のキャリアを用いて回収するステップにおいては、細胞シートにキャリアに密着させる前または後において、細胞シートの形成された培養基材の温度を被覆ポリマーの上限臨界溶解温度以上若しくは下限臨界溶解温度以下にすることにより、細胞シートを、より損傷少なく回収することができる。 なお、シートを剥離することは細胞を培養していた培養液中において行うことも、その他の等張液中において行うことも可能であり、目的に合わせて選択することができる。 典型的には、培養器からは培養に使用していた培地を一旦除去し、乾燥を防ぐために比較的少量の新たな培地か、または等張液を添加した環境で、剥離・回収する。

    細胞シートの上にキャリアを積層する際には、気泡が入らないようにするとよい。 またこの積層操作は、通常、滅菌されたピンセットで行われる。 本発明のキャリアは、水分に接触した際の巻き上がり(反り)が比較的少ないので(実施例の項参照)、細胞シートの上に積層する際に、操作がしやすく、また細胞シートと密着させることが容易である。

    温度応答性ポリマーで被覆された培養器を用いる場合は、適切な温度で数分間培養器を加温するが、この操作は、キャリア積層の前または後、好ましくは後に、行うことができる。

    キャリアに密着した細胞シートは、端からキャリアごとゆっくりめくるようにして、培養器表面から剥離・回収することができる。 この操作もまた、通常、滅菌されたピンセットで行われる。 本発明の構成とすることにより、キャリアと細胞シート全体が密着可能であり、一緒に持ち上げることができる。 また移動途中にキャリアから細胞シートがはがれることも生じ難い。 さらに剥離・回収された細胞シートは、キャリアに密着しているので、縮み、折れ、たるみ、破れ等の発生が防止されうる。

    回収された細胞シートは、キャリアとともに培養場所から移植場所または別の細胞シートが形成された培養場所へ移動され、そしてキャリアに付着している細胞シートを移植場所に適用することができ、または別の細胞シート上に積層することができる。 別の細胞シートに積層した場合は、上記の剥離・回収操作を繰り返すことができる。

    細胞シートを移植場所の患部(実験室においては、練習用のゲルである場合がある。)に適用した後は、必要であればしばらく静置した後、細胞非障害性の条件を適用する。 細胞非障害性の条件が、動物の体温程度の温度とすること、その細胞の通常の培養のための温度とすること、典型的には35℃〜42℃の温度とすることである場合、このような条件にするためには、例えば、移植場所または環境を、そのような温度に温めること、より具体的には、加温した等張液、例えば生理食塩水、細胞培養用培地、PBS等の緩衝液を、滴下することによる。 滴下量は、適宜とすることができるが、通常、滴下した液がキャリア全体に行き渡る程度である。

    本発明においては、キャリアは、細胞非障害性の条件で応答可能な被覆層を備えているので、移植場所において細胞シートを患部に残しつつ、キャリアを剥離することが容易に達成できる。 なお、本発明者らの検討によると、本発明のキャリアは、細胞非障害性の条件下でなくても、既存のキャリアの9.9〜20.0%程度に該当する小さい力での剥離が期待できる(実施例の項参照)。 このような使用方法もまた、本発明の一部である。

    本発明はまた、細胞シートの調製方法も提供する。 細胞シートの調製方法は、上述のキャリアの使用のためのステップのほか、下記の他のステップを含みうる。

    シートを形成させるための幹細胞を含む細胞は、種々の動物の種々の組織から採取しうる。 供給源となる動物種は、そこから得られる細胞シートの被移植個体と異種でもよく同種でもよい。 また、幹細胞は、iPS細胞から調製したものであってもよい。 採取した細胞から、必要に応じ、目的の幹細胞のみを分離・純化することができる。 採取ステップ、分離・純化ステップにおいて、手段は、特に制限されるものではない。

    培養ステップは、分離後の細胞を、例えば培養器に播種して、適切な培地で培養することにより実施することができる。 培地としては、幹細胞の培養のために開発された種々の組成のものを用いることができ、必要であれば、血清、各種因子、および/または抗生物質等を添加することができる。 播種する細胞数は、細胞の供給源である動物の年齢、細胞の継代数、培養期間などに合わせて適宜調整可能であるが、一般に、1×10 3 〜1×10 5 cells/cm 2の細胞密度になるよう播種することができる。

    細胞の培養には、通常の培養条件、例えば37℃の温度で5%CO 2濃度のインキュベーター内での培養が適用される。 培養期間は、播種した細胞数(細胞密度)、細胞の供給源である動物の年齢、目的とするシートの大きさ等によって、適宜調整可能である。 通常、培養皿にコンフルエントな状態になるまで培養を継続する。 本発明の細胞シートの大きさおよび形状は、特に制限されず、移植部位の大きさおよび形状に応じて選択してよく、培養に用いる培養皿の大きさおよび形状により調整することができる。

    通常、培養皿にコンフルエントな状態になるまで培養を継続した後、シート状に形成された培養物を回収する。

    培養シートは、含まれる細胞の形態や各種マーカーを確認することにより、品質を管理することができる。

    本発明はまた、本発明のキャリアを用いた細胞シートの移植方法も提供する。 このような移植方法は、上述のキャリアの使用のためのステップおよび/または細胞シート調整のためのステップのほか、下記の他のステップを含みうる。

    細胞シートを治療の対象となる患部(損傷部位等)に接触させる方法は、特に制限されるものではないが、例えば、外科手術の手技で患部を露出させ、露出させた患部に移植用細胞シートを載置することで行うことができる。 細胞シートを患部に接触させた後、該接触を維持させる。 接触の維持は、通常、細胞シート表面に存在する細胞外基質により、細胞シートが患部に付着し、そして付着が維持されることで、容易に達成される。

    細胞シートと患部との接触を維持させることにより、移植場所の環境に応じた組織が再生される。 これは、主として、細胞シートに含まれる幹細胞が、移植部位の環境や移植個体由来のサイトカイン等の分化誘導因子に応じて、移植場所に本来存在する組織に分化することによる。

    移植の対象となる動物は、ヒトまたは非ヒト動物であり、非ヒト動物には、マウス、ラット、イヌ等の実験動物のほか、野生動物、家畜、コンパニオンアニマルが含まれる。

    移植部位は特に制限されないが、組織としては、移植用細胞シートの定着性、および移植用細胞シートに含まれる幹細胞の分化能の観点から、角膜上皮、皮膚表皮、骨組織、軟骨組織、脂肪組織、心筋、平滑筋などの組織に対して、特に好適に行うことができる。 また、臓器もしくは器官としては、皮膚、消化管、肝臓、心臓、血管、眼、鼻、など、いずれでもよい。 細胞シートやキャリアの取扱い性から、本発明は、角膜、特には角膜上皮を再生させるための移植技術としてとして好適である。 例えば、角膜上皮が失われて露出した角膜実質の上に、キャリアと付着した細胞シートを適用すると、キャリアの柔軟性から、皺がごく少なく、好適に細胞シートを適用することができる。

    本発明の治療方法を角膜の再生に適用する場合、該治療方法が適用される疾患としては、例えば、慢性角膜炎が挙げられる。 慢性角膜炎を惹起する原因としては、異所性睫毛症、眼瞼内反症、乾燥性角結膜炎、外傷などが挙げられる。 これらの中でも、正常な涙膜の形成が可能な症例、例えば、異所性睫毛症、眼瞼内反症において、適応症に応じた眼科外科手術(外科的整復)との組み合わせにより、角膜の再生率を向上させることができる。

    [キャリアの製造]
    下記の方法で、キャリアを調製した。

    材料:
    基材・・・ポリ乳酸不織布(目付30 g/m 2 ; 厚み0.17 mm; 引張強度 タテ49.0 N、ヨコ24.5 N; 伸び率 タテ15.0%、ヨコ15.0 %; 引裂強度 タテ3.9 N、ヨコ3.9 N)。
    被覆材・・・多糖類混合物(澱粉、寒天、ペクチン、グリセリン、乳化剤)

    方法:
    (1)バットに、多糖類混合物(8.3g)およびPBS(300ml)を入れて、室温で溶解し、多糖類溶解液を得る。
    (2)ポリ乳酸不織布を多糖類溶解液にディッピングする。
    (3)ディッピングしたポリ乳酸不織布を、PPフィルムの上に置き、60℃で乾燥する。

    上記の方法で、コート量が、1.5±0.5mg/cm 2であるキャリア材が得られた。 これを適切な大きさにカットし、後述する試験や評価では、本発明品B'として使用した。

    [評価1:模擬細胞シートによる評価]
    模擬培養細胞として湯葉を用い、細胞シートキャリア用材料のスクリーニングを行った。

    上の「キャリアの製造」の項に記載したのと同様にして調製した多糖類溶解液に、直径約30 mmの市販のポリ乳酸不織布(目付30 g/m 2 )を浸漬することにより、約20 μmの被覆層を有する細胞シートキャリアを作製した(下表では、「ポリ乳酸不織布+多糖類コート」と表す。)。 他方、原料として用いた多糖類混合物フィルム自体、不織布自体(多糖類を塗布しないもの)、特殊紙(商品名:すいはく、70μm、リンテック株式会社)、厚さ50μm、直径約30 mmの市販の細胞シート回収用支持体(製品名:CellShifter、株式会社セルシード。以下「製品A」という。)を準備した。

    ガラス板上に、PBS 0.1 mlを滴下し、その上に模擬細胞シートとして湯葉(大豆成分8 %以上、厚さ約50μm、直径約25 mm)を置いた。 その上にさらにキャリアを積層し、20℃で5〜10分間静置した。 ピンセット2本を使用して、キャリアの端2か所をつかみ、キャリアと一緒に湯葉を持ち上げることができるかを確認した(密着性)。

    次いで、持ち上げたキャリアを、40℃のヒーター上に置かれた、約28℃の市販の細胞シート練習用ゲル(株式会社セルシード)に置き、30秒静置した後、湯葉から剥離させて細胞シートのみを持ち上げることができるかを確認した(剥離性)。 なお、剥離の際には、温めた生理食塩水を滴下する等の多糖類コート部を溶解するための処置は、特には行わなかった。
    結果を下表に示した。

    評価基準 密着性:細胞シートキャリアを模擬細胞シートと一緒に持ち上げることができるか◎:キャリアに模擬シート全体が密着しており、一緒に持ち上げることができる。
    ○:キャリアに模擬シートのほぼ全体が密着しており、一緒に持ち上げることができる。
    △:キャリアと模擬シートとが密着していない部分が半分以上みられるが、一緒に持ち上げることはできる。
    ×:キャリアと模擬シートとがほとんど密着しておらず、一緒に持ち上げることができない。

    剥離性:細胞シートキャリアが模擬細胞シートに張り付かずに除去することができるか◎:簡単に除去することができる。
    ○:模擬シートへの張り付きがややみられるが、模擬シートはゲルに密着したままで、キャリアのみを除去することができる。
    △:キャリアが模擬シートへ張り付いており、キャリアをはがす際に、模擬シートの一部が一緒に持ち上がる×:キャリアが模擬シートへ張り付いており、キャリアのみを持ち上げることができない。

    [評価2:犬脂肪由来間葉系幹細胞シートを用いた検討1]
    1. 方法
    1.1. 細胞シートキャリアサンプル 下記のサンプルを準備した。 なお、ポリ乳酸不織布としては、評価1で用いたものと同じ素材のものを用い、多糖類混合物による被覆は、実施例1と同様に行った。
    本発明品A ;50g/m 2 (ポリ乳酸不織布目付)+20μm(多糖類混合物コート厚)
    本発明品B ;30g/m 2 (ポリ乳酸不織布目付)+20μm(多糖類混合物コート厚)
    本発明品C ;20g/m 2 (ポリ乳酸不織布目付)+20μm(多糖類混合物コート厚)
    また、比較のため、製品Aを用いた。

    1.2. 細胞培養条件細胞種:犬脂肪由来間葉系幹細胞Canine adipose derived mesenchymal stem cell; cADSCs
    培養容器:直径3.5 cmシャーレー(UpCell(登録商標)、株式会社セルシード)
    播種時細胞数:1.5×10 6 cells/dish
    培養日数:3日間(オーバーコンフルエントになるように)
    培地:α-MEM with lO % FBS,1 % PS

    1.3. 細胞シートの調製方法
    1. 健常犬(メス4才)の背部皮下から約1グラムの脂肪組織を採取した。
    2. 0.1%コラゲナーゼ液中で、37℃、60分間処理し組織を分解した。
    3. 血清入りの培地を入れて酵素反応を中止させた。
    4. 室温で1200 rpm、5分間遠心分離後、上清を取り除いた。
    5. 遠心された細胞塊を培地に懸濁し、75cm 2フラスコで培養した。
    6. 48時間後にPBSで洗浄し、浮遊細胞を取り除いた後に、新しい培養液を加えて培養を続けた。
    7. 実験に使える細胞畳になるまで3回継代培養した。
    8. 1.5×lO 6細胞を2 mlの培地に懸濁して、3.5 cmシャーレにて3日間培養した。
    9. インキュベータから出して、培養液を取り除いた。
    10. ニューメチレンブルー染色液で細胞を超生体染色した。 (細胞シートを見やすくするための処置)
    11. 4種類のキャリアを細胞シートにのせた。
    12. 20℃で5〜10分間放置することで細胞シートがシャーレから剥がれ、キャリアに付着するようにした。
    13. ピンセットでキャリアを持ち上げ、細胞シートが付着していることを確認した。
    14. 細胞シートを下側にしたまま、白い紙の上に置き、キャリアを静かに剥がした。

    2. 結果 結果を図1に示した。
    製品Aは、3.5cmシャーレに合うような大きさに作られているため、シャーレ一杯に培養された細胞を付着させることができた。 しかしながら、滑りやすい素材であるため、細胞シートのずれや巻上がりが生じた。 一方で、本発明品 A〜Cでは、大きさがシャーレに合っていないものの、細胞シートのずれや巻上がりはなく、細胞シートをきれいに付着させることができた。 また、使用感においてもCが最も優れており、ピンセットでの持ち運びが容易であった。

    4. 考察 本発明品 Cは細胞の付着性に優れ、柔軟性が高く、取り扱いが容易であることから、細胞シートのイヌ角膜への移植にも適切に対応できると考えられる。

    [評価3:犬脂肪由来間葉系幹細胞シートを用いた検討2]
    下表の本発明品 B'、C'およびDを準備した。 多糖類混合物による被覆は、本発明品B',C'は実施例1と同様に行った。 本発明品Dについては多糖類混合物中の増粘剤であるペクチン単体(100%)のみの溶液を用い、実施例1と同様の方法でサンプルを作製した。
    本発明品B' ;30g/m 2 (ポリ乳酸不織布目付)+20μm(多糖類混合物コート厚)
    本発明品C' ;20g/m 2 (ポリ乳酸不織布目付)+20μm(多糖類混合物コート厚)
    本発明品D ;20g/m 2 (ポリ乳酸不織布目付)+20μm(ペクチンコート厚)

    播種時、2×10 6細胞/dishとし、培養日数を1日としたほかは、評価2の項に記載したのと同じ条件で、細胞シートを調製し、各キャリアによる密着性、剥離性を確認した。

    結果を図2に示した。
    B'、 C'、およびDを検討した結果、3枚とも、評価2のBおよびCと同様、密着性、剥離性が良好であった。 細胞の密着性に優れ、柔軟性が高く、取り扱いが容易であった。 今回試験を実施した3枚の中では、B'が操作性や細胞シートの状態などの点で最も優れていた。

    [評価4:犬脂肪由来間葉系幹細胞シートを用いた移植評価]
    犬の角膜損傷部に細胞シートキャリアを用いて細胞移植を試みた。

    細胞シート移植対象患犬(12歳、パグ)は、乾燥性角結膜炎による慢性の角膜色素沈着を有しており、細胞シート移植前に、全身麻酔下で角膜表層切除を行った。

    キャリアとして、評価2の本発明品 Cを用いた。 播種時、1.5×10 6細胞/dishとし、培養日数を2日としたほかは、評価2と同様にして細胞シートを調製し、キャリアに付着させた。

    評価2の工程12に続き、下記の工程を実施した。
    13. 全身麻酔下で角膜表層切除を行った移植対象症例犬の角膜の上に、細胞シートを下側にしたまま、キャリアごと乗せた。
    14. 5〜10分の後、42℃の生理的食塩水をキャリアの上から滴下し、キャリアの細胞シートからの剥離を促した。
    15. 細胞シートからキャリアをゆっくり取り除いた。

    結果を図3に示した。
    市販の細胞シート回収用支持体は滑りやすく、比較的硬い素材であるため、細胞シートから剥離することが困難な場合がある。 しかしながら、今回使用したキャリアは、細胞の密着性に優れ、また柔軟性が高く、取り扱いが容易であることから、細胞シートのイヌ角膜への移植に際し、適切に対応できた。 特に 40℃程度の生理的食塩水を用いた加温により、移植先(角膜)において容易に細胞シートがリリースされ、従前より容易に移植が完了した。 また細胞シートを移植した際に、キャリアに柔軟性があることから細胞シートにシワが生じることなく曲面である角膜に付着させることができた。

    [巻き上がり試験]
    水分に接触した際の巻き上がり(反り)の有無および程度について試験した。

    材料および実験器具:
    ・本発明品B'(上記で製造したもの。直径30mmの円形にカットしたもの。)
    ・厚さ50μm、直径30mmの、市販の細胞シート回収用支持体(CellShifter、株式会社セルシード。以下「製品A」という。)の・PBS(リン酸緩衝生理食塩水)
    ・デジマチックハイトゲージ;HDS-20C(Mitutoyo製)

    方法:
    ガラス板の上にPBSを0.05ml滴下する。 その上にキャリア材をのせ、10秒間静置し、カールした高さhをハイトゲージで測定する(下図参照)。 測定は、室温で行う。

    測定結果を下表に示す。

    本発明品B'は、水分の吸収に起因する巻き上がりが少なかった。 本発明品B'は、細胞シートキャリアとして使用した際に、細胞シートへの密着性がよいと考えられる。

    [剥離強度試験]
    細胞シート移植後を想定し、細胞シートからのキャリア剥離のためにどの程度の力が必要であるかを確認した。

    材料および実験器具:
    ・本発明品B'(上記で製造したもの。直径30mmの円形にカットしたもの。)
    ・製品A
    ・デジタルフォースゲージメータ(FG-5000A,扶桑理化製品株式会社)
    ・両面テープ 日東電工製 両面粘着テープ N0.500 (幅15mm)

    ・実験方法
    (1)ガラス板に両面テープ(幅15mm)を張り付け、その上にキャリア材(直径30mm)を置き、キャリア材の中央15mm部分を張付けた状態にする。
    (2)キャリア材の端をデジタルフォースゲージメータに取り付け、10 mm/minの速度で鉛直方向に上昇させ、計測器の最大値を読み取る(下図参照)。

    ・測定結果

    本発明品B'は、製品Aを剥離するために必要な力の9.9〜20.0%程度に該当する小さい力で、剥離することができた。 なお、同様の実験を、評価1の模擬細胞シート、および評価2の細胞シートの上に、本発明品B'を重ね、さらに42℃の生理的食塩水を上から滴下し、キャリアの細胞シートからの剥離を促した後に、同様に剥離強度を測定しようとしたが、極弱い力で剥離するために、この方法では測定することができなかった。

    [参考評価]
    製品Aおよびポリ乳酸不織布について、赤外吸収スペクトルを得た(図4)。 製品Aの素材は、ポリ乳酸ではなく、セルロース系であると考えられた。
    使用機器:日本分光(株)製 FT/IR-420 赤外分光計

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