被覆物品、及び、耐食性塗膜の形成方法

申请号 JP2015001454 申请日 2015-01-07 公开(公告)号 JP5967230B2 公开(公告)日 2016-08-10
申请人 ダイキン工業株式会社; 发明人 山口 誠太郎; 城丸 智洋;
摘要
权利要求

調理器具又は厨房用品に用いられる被覆物品であって、 基材、 含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とからなるプライマー層(A)、 粉体塗料(I)から形成された含フッ素層(B)、及び、 粉体塗料(II)から形成された含フッ素層(C)、 を有し、 粉体塗料(I)は、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子と充填材(i)の粒子とを含むものであって、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子は、平均粒子径が5〜30μmであり、充填材(i)の粒子は、平均粒子径が0.1〜40μmであり、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子100個に対して充填材(i)の粒子数が1〜15個であり、充填材(i)は、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド及びガラスフレークからなる群より選択される少なくとも1種であり、 粉体塗料(II)は、溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子と充填材(ii)の粒子とを含むものであって、溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子は、平均粒子径が5〜30μmであり、充填材(ii)の粒子は、平均粒子径が0.1〜40μmであり、溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子100個に対して充填材(ii)の粒子数が0.005〜15個であり、 充填材(i)と充填材(ii)とは種類が異なる ことを特徴とする被覆物品。充填材(ii)は、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、マイカ及びガラスフレークからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の被覆物品。溶融加工性含フッ素重合体(b)は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の被覆物品。溶融加工性含フッ素重合体(c)は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、2又は3記載の被覆物品。含フッ素重合体(a)は、テトラフルオロエチレンホモポリマー、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、2、3又は4記載の被覆物品。耐熱性樹脂は、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアリレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、2、3、4又は5記載の被覆物品。耐熱性樹脂は、ポリエーテルスルホン樹脂と、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂のいずれか一方又は両方とであり、前記ポリエーテルスルホン樹脂は、前記ポリエーテルスルホン樹脂、前記ポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂の合計量の65〜85質量%である請求項1、2、3、4、5又は6記載の被覆物品。耐熱性樹脂は、前記耐熱性樹脂及び含フッ素重合体(a)の固形分合計量の15〜50質量%である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の被覆物品。プライマー層(A)は、膜厚が5〜30μmであり、 含フッ素層(B)は、膜厚が1〜90μmであり、 含フッ素層(C)は、膜厚が1〜90μmである 請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の被覆物品。調理器具又は厨房用品に用いられる耐食性塗膜の形成方法であって、 溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子と充填材(i)の粒子とを、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子100個に対して充填材(i)の粒子数が1〜15個となるように混合して粉体塗料(I)を調製する工程、 前記粉体塗料(I)を基材上に設けられたプライマー層上に静電塗装により塗布して、耐食性塗膜(R1)を形成する工程、 溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子と充填材(ii)の粒子とを、溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子100個に対して充填材(ii)の粒子数が0.005〜15個となるように混合して粉体塗料(II)を調製する工程、及び、 前記粉体塗料(II)を耐食性塗膜(R1)上に静電塗装により塗布して、耐食性塗膜(R2)を形成する工程 を含み、 溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子は、平均粒子径が5〜30μmであり、充填材(i)の粒子は、平均粒子径が0.1〜40μmであり、 溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子は、平均粒子径が5〜30μmであり、充填材(ii)の粒子は、平均粒子径が0.1〜40μmであり、 充填材(i)は、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド及びガラスフレークからなる群より選択される少なくとも1種であり、 充填材(i)と充填材(ii)とは種類が異なる ことを特徴とする耐食性塗膜の形成方法。

说明书全文

本発明は、被覆物品、及び、耐食性塗膜の形成方法に関する。より詳しくは、フッ素含有重合体からなる層を有する被覆物品、及び、耐食性塗膜の形成方法に関する。

テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕等のフッ素含有重合体は、低摩擦係数を有し、非粘着性、耐薬品性、耐熱性等の特性に優れているので、食品工業用品、フライパンや鍋等の厨房器具、アイロン等の家庭用品、電気工業用品、機械工業用品等の表面加工に広く用いられている。

表面加工は、フッ素含有重合体からなる層を基材上に形成することにより行うが、用いるフッ素含有重合体がPFA等の溶融加工性のものであると、一般的な工業生産方法で厚い層を得ることが容易であり、得られる物品の表面は、フッ素含有重合体が有する各種の特性を容易に発揮することができる。

フッ素含有重合体からなる層の耐摩耗性や強度の向上等を目的として、層形成時に充填材を添加することがある。 例えば、基材内面にフッ素樹脂コートを形成し、フッ素樹脂コートのトップコート内部表層側に添加材粒子として少なくとも炭化珪素かダイヤモンドのいずれか一方を偏在させた鍋を備えた炊飯器が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。

また、基材上に、プライマー層、PFAを含む中間コート層、並びに、ダイヤモンド粉末やガラスフレーク等の充填材及びPFAを含むトップコート層を有するフッ素樹脂塗膜が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。

また、基材上に形成されたプライマー層、プライマー層上に形成された中間層、及び中間層上に形成されたトップコート層の少なくとも3層からなり、中間層とトップコート層が、各々少なくとも1種の新モース硬度10以上の硬質充填材を含み、且つ、トップコート層に含有されるいずれの硬質充填材も、中間層に含有されるいずれの硬質充填材の平均粒径より小さい平均粒径を有するフッ素樹脂積層体が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。

特開2006−15114号公報

特開2006−297685号公報

特開2011−116075号公報

耐摩耗性に優れる塗膜の形成方法として、充填材を含む含フッ素重合体の粉体塗料を静電塗装する方法が知られている。しかし、含フッ素重合体と充填材とは親和性が高いとはいえない。また、静電塗装時に粉体塗料に電圧を印加するのであるが、充填材と含フッ素重合体とでは、帯電の程度が相違することから、均質な塗膜を形成することが容易でない。これらの理由から、塗膜に傷がつくと、その傷から侵入する分等により、塗膜が基材やプライマー層から剥がれることがある。従って、耐摩耗性に優れると同時に、耐食性にも優れた被覆物品が求められている。

本発明の目的は、上記現状に鑑み、耐摩耗性に優れると同時に、耐食性にも優れた被覆物品を提供することにある。

また、上述したとおり、耐摩耗性に優れる塗膜の形成方法として、充填材を含む含フッ素重合体の粉体塗料を静電塗装する方法が知られているが、充填材を含む含フッ素重合体の粉体塗料は流動性が高いとはいえず、静電塗装が容易でないことから、静電塗装により容易に塗膜を形成する方法も求められていた。

本発明の目的は、また、耐摩耗性に優れると同時に、耐食性にも優れた塗膜を形成することができ、しかも、静電塗装により容易に塗膜を形成することができる耐食性塗膜の形成方法を提供することにもある。

本発明者らは、基材の表面を複数の層で被覆するに際し、充填材を含む含フッ素重合体の粉体塗料を使用し、かつ、含フッ素重合体の粒子の個数と充填材の粒子の個数を特定の比率とすることにより、意外にも耐摩耗性が優れると同時に、耐食性にも優れた被覆物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。

すなわち、本発明は、基材、 含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とからなるプライマー層(A)、 粉体塗料(I)から形成された含フッ素層(B)、及び、 粉体塗料(II)から形成された含フッ素層(C)、 を有する被覆物品であって、 粉体塗料(I)は、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子と充填材(i)の粒子とを含むものであって、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子100個に対して充填材(i)の粒子数が0.0001〜30.0個であり、 粉体塗料(II)は、溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子と充填材(ii)の粒子とを含むものであって、溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子100個に対して充填材(ii)の粒子数が0.0001〜30.0個である ことを特徴とする被覆物品である。

上記充填材(i)は、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、マイカ及びガラスフレークからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。

上記充填材(ii)は、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、マイカ及びガラスフレークからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。

上記充填材(i)と上記充填材(ii)とは種類が異なることが好ましい。

上記溶融加工性含フッ素重合体(b)は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。

上記溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子は、平均粒子径が1〜50μmであることが好ましい。

上記溶融加工性含フッ素重合体(c)は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。

上記溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子は、平均粒子径が1〜50μmであることが好ましい。

上記含フッ素重合体(a)は、テトラフルオロエチレンホモポリマー、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。

上記耐熱性樹脂は、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアリレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。

上記耐熱性樹脂は、ポリエーテルスルホン樹脂と、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂のいずれか一方又は両方とであり、上記ポリエーテルスルホン樹脂は、上記ポリエーテルスルホン樹脂、上記ポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂の合計量の65〜85質量%であることが好ましい。

上記耐熱性樹脂は、上記耐熱性樹脂及び含フッ素重合体(a)の固形分合計量の15〜50質量%であることが好ましい。

上記プライマー層(A)は、膜厚が5〜30μmであり、上記含フッ素層(B)は、膜厚が1〜90μmであり、上記含フッ素層(C)は、膜厚が1〜90μmであることが好ましい。

また、本発明者らは、基材の表面に設けられたプライマー層上に塗膜を静電塗装するに際し、所定の個数比率で充填材が混合された粉体塗料を使用することにより、意外にも耐摩耗性に優れると同時に、耐食性にも優れた耐食性塗膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。

すなわち、本発明は、溶融加工性含フッ素重合体の粒子と充填材の粒子とを、溶融加工性含フッ素重合体の粒子100個に対して充填材の粒子数が0.0001〜30.0個となるように混合して粉体塗料を調製する工程、及び、 上記粉体塗料を基材上に設けられたプライマー層上に静電塗装により塗布して、耐食性塗膜(R1)を形成する工程 を含むことを特徴とする耐食性塗膜の形成方法でもある。

上記形成方法は、更に、上記粉体塗料を耐食性塗膜(R1)上に静電塗装により塗布して、耐食性塗膜(R2)を形成する工程を含むことが好ましい。

本発明の被覆物品は、上述した構成を有することによって、耐摩耗性に優れ、耐食性も兼ね備えたものである。このような被覆物品は、調理器具や厨房用品等に特に好適に用いることができる。また、本発明の耐食性塗膜の形成方法によれば、上述した構成を有することによって、耐摩耗性に優れると同時に、耐食性にも優れた塗膜を形成することができ、しかも、静電塗装により容易に塗膜を形成することができる。このような耐食性塗膜の形成方法は、調理器具や厨房用品等の製造に特に好適に用いることができる。

以下に、本発明を詳細に説明する。

<被覆物品> 本発明の被覆物品は、基材、プライマー層(A)、含フッ素層(B)及び含フッ素層(C)を有するものであり、このうち含フッ素層(B)が溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子と充填材(i)の粒子とを含む粉体塗料(I)から形成され、含フッ素層(C)が溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子と充填材(ii)の粒子とを含む粉体塗料(II)から形成されたものである。

また、上記粉体塗料(I)における充填材(i)の粒子数は、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子100個に対して0.0001〜30.0個であり、上記粉体塗料(II)における充填材(ii)の粒子数は、溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子100個に対して0.0001〜30.0個である。

このように、本発明の被覆物品は、基材、プライマー層(A)、含フッ素層(B)及び含フッ素層(C)を有し、かつ含フッ素層(B)及び含フッ素層(C)を形成するための粉体塗料に含まれる充填材の粒子数が調整されたものであることによって、耐摩耗性及び耐食性に優れる。

本発明の被覆物品は、基材、上記基材上に形成されたプライマー層(A)、上記プライマー層(A)上に形成された含フッ素層(B)及び上記含フッ素層(B)上に形成された含フッ素層(C)を有することが好ましい。

以下に、本発明の被覆物品について具体例を挙げて更に詳述する。

本発明の被覆物品を構成する基材としては特に限定されず、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属単体及びこれらの合金類等の金属;ホーロー、ガラス、セラミックス等の非金属無機材料等が挙げられる。上記合金類としては、ステンレス等が挙げられる。上記基材としては、金属が好ましく、アルミニウム又はステンレスがより好ましい。

上記基材は、必要に応じ、脱脂処理、粗面化処理等の表面処理を行ったものであってもよい。上記粗面化処理の方法としては特に限定されず、例えば、酸又はアルカリによるケミカルエッチング、陽極酸化(アルマイト処理)、サンドブラスト等が挙げられる。上記表面処理は、上記プライマー層(A)を形成するためのプライマー用被覆組成物をハジキを生じず均一に塗布することができる点、及び、基材とプライマー層との密着性が向上する点等から、基材やプライマー用被覆組成物等の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば、サンドブラストであることが好ましい。

本発明の被覆物品を構成するプライマー層(A)は、含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とからなるものである。

上記含フッ素重合体(a)は、主鎖又は側鎖を構成する炭素原子に直接結合しているフッ素原子を有する重合体である。上記含フッ素重合体(a)は、非溶融加工性であってもよいし、溶融加工性であってもよい。

上記含フッ素重合体(a)は、含フッ素モノエチレン系不飽和炭化水素(a1)を重合することにより得られるものであることが好ましい。

上記「含フッ素モノエチレン系不飽和炭化水素(a1)(以下、「不飽和炭化水素(a1)」ともいう。)」とは、フッ素原子により水素原子の一部又は全部が置換されているビニル基を分子中に1個有する不飽和炭化水素を意味する。

上記不飽和炭化水素(a1)は、フッ素原子により置換されていない水素原子の一部又は全部が、塩素原子等のフッ素原子以外のハロゲン原子、及び/又は、トリフルオロメチル基等のフルオロアルキル基により置換されているものであってもよい。但し、上記不飽和炭化水素(a1)は、後述のトリフルオロエチレンを除く。

上記不飽和炭化水素(a1)としては特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、ビニリデンフルオライド〔VdF〕、フッ化ビニル〔VF〕等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上を用いることができる。

上記含フッ素重合体(a)は、上記不飽和炭化水素(a1)の単独重合体であってもよい。上記不飽和炭化水素(a1)の単独重合体としては、例えば、テトラフルオロエチレンホモポリマー〔TFEホモポリマー〕、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、ポリビニリデンフルオライド〔PVdF〕、ポリフッ化ビニル〔PVF〕等が挙げられる。TFEホモポリマーは非溶融加工性である。

上記含フッ素重合体(a)は、また、少なくとも1種の上記不飽和炭化水素(a1)と、上記不飽和炭化水素(a1)と共重合し得る不飽和化合物(a2)との共重合体であってもよい。すなわち、上記不飽和化合物(a2)は、上記不飽和炭化水素(a1)と異なる。

上記不飽和化合物(a2)としては特に限定されず、例えば、トリフルオロエチレン〔3FH〕;エチレン〔Et〕、プロピレン〔Pr〕等のモノエチレン系不飽和炭化水素等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。

上記含フッ素重合体(a)は、また、2種以上の上記不飽和炭化水素(a1)の共重合体であってもよい。上記2種以上の上記不飽和炭化水素(a1)の共重合体と、上記少なくとも1種の上記不飽和炭化水素(a1)と不飽和化合物(a2)との共重合体としては特に限定されず、例えば、2元共重合体、3元共重合体等が挙げられる。

上記2元共重合体としては特に限定されず、例えば、VdF/HFP共重合体、Et/CTFE共重合体〔ECTFE〕、Et/HFP共重合体等が挙げられる。 上記2元共重合体は、また、TFE/HFP共重合体〔FEP〕、TFE/CTFE共重合体、TFE/VdF共重合体、TFE/3FH共重合体、Et/TFE共重合体〔ETFE〕、TFE/Pr共重合体等のTFE系共重合体であってもよい。本明細書において、上記「TFE系共重合体」とは、TFEと、TFE以外のその他の単量体の1種又は2種以上とを共重合して得られるものを意味する。上記TFE系共重合体は、通常、上記TFE系共重合体中に付加されているTFE以外のその他の単量体の割合が、上記TFEと上記その他の単量体との合計質量の1質量%を超えていることが好ましい。

上記3元共重合体としては、VdF/TFE/HFP共重合体等が挙げられる。

上記TFE系共重合体における上記TFE以外のその他の単量体としては、下記のTFEと共重合し得るその他の単量体(a3)であってもよい。上記その他の単量体(a3)は、下記一般式 X(CF2)mOnCF=CF2 (式中、Xは、−H、−Cl又は−Fを表し、mは、1〜6の整数を表し、nは、0又は1の整数を表す。)で表される化合物(但し、HFPを除く。)、下記一般式 C3F7O[CF(CF3)CF2O]p−CF=CF2 (式中、pは、1又は2の整数を表す。)で表される化合物、及び、下記一般式 X(CF2)qCY=CH2 (式中、Xは、上記と同じであり、Yは、−H又は−Fを表し、qは、1〜6の整数を表す。)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であることが好ましい。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。このようなTFE系共重合体としては、例えば、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕共重合体〔PFA〕等が挙げられる。PFAとしては、国際公開第2002/088227号パンフレットに記載の方法でフッ素化したPFAを使用することもできる。

上記含フッ素重合体(a)は、また、変性ポリテトラフルオロエチレン〔変性PTFE〕であってもよい。本明細書において、上記「変性PTFE」とは、得られる共重合体に溶融加工性を付与しない程度の少量の共単量体をTFEと共重合してなるものを意味する。上記少量の共単量体としては特に限定されず、例えば、上記不飽和炭化水素(a1)のうちHFP、CTFE等が挙げられ、上記不飽和化合物(a2)のうち3FH等が挙げられ、上記その他の単量体(a3)のうちPAVE、パーフルオロ(アルコキシビニルエーテル)、(パーフルオロアルキル)エチレン等が挙げられる。上記少量の共単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。

上記少量の共単量体が上記変性PTFEに付加されている割合は、その種類によって異なるが、例えば、PAVE、パーフルオロ(アルコキシビニルエーテル)等を用いる場合、通常、上記TFEと上記少量の共単量体との合計質量の0.001〜1質量%であることが好ましい。

上記含フッ素重合体(a)としては、1種又は2種以上であってよく、上記不飽和炭化水素(a1)の単独重合体の1種と上記不飽和炭化水素(a1)の共重合体の1種又は2種類以上との混合物、又は、上記不飽和炭化水素(a1)の共重合体の2種類以上の混合物であってもよい。

上記混合物としては、例えば、TFEホモポリマーと上記TFE系共重合体との混合物、上記TFE系共重合体に属する2種類以上の共重合体の混合物等が挙げられ、このような混合物としては、例えば、TFEホモポリマーとPFAとの混合物、TFEホモポリマーとFEPとの混合物、TFEホモポリマーとPFAとFEPとの混合物、PFAとFEPとの混合物等が挙げられる。

上記含フッ素重合体(a)は、また、パーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体(a4)(以下、「不飽和単量体(a4)」ともいう。)を重合することにより得られるものであってもよい。上記不飽和単量体(a4)は、下記一般式

(式中、Rfは、炭素数4〜20のパーフルオロアルキル基を表し、R1は、−H又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2は、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R3は、−H又はメチル基を表し、R4は、炭素数1〜17のアルキル基を表し、rは、1〜10の整数を表し、sは、0〜10の整数を表す。)で表されるものである。 上記含フッ素重合体(a)は、上記不飽和単量体(a4)の単独重合体であってもよいし、また、上記不飽和単量体(a4)と上記不飽和単量体(a4)と共重合し得る単量体(a5)との共重合体であってもよい。

上記単量体(a5)としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、N−メチロールプロパンアクリルアミド、(メタ)アクリル酸アミド、アルキル基の炭素数が1〜20である(メタ)アクリル酸のアルキルエステル等の(メタ)アクリル酸誘導体;エチレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の置換又は非置換エチレン;アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキルビニルエーテル、アルキル基の炭素数が1〜20であるハロゲン化アルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アルキル基の炭素数が1〜20であるビニルアルキルケトン等のビニルケトン類;無水マレイン酸等の脂肪族不飽和ポリカルボン酸及びその誘導体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のポリエン等が挙げられる。

上記含フッ素重合体(a)は、例えば、乳化重合等の従来公知の重合方法等を用いることにより得ることができる。

上記含フッ素重合体(a)としては、得られる被覆物品が耐食性及び耐水蒸気性に優れる点から、TFEホモポリマー、変性PTFE及び上記TFE系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。上記TFE系共重合体としては、FEP及びPFAからなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。

上述したことから、上記含フッ素重合体(a)としては、TFEホモポリマー、変性PTFE、FEP及びPFAからなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。

上記含フッ素重合体(a)としては、また、得られる被覆物品において、プライマー層(A)と含フッ素層(B)との密着性が優れる点から、TFE系共重合体を含むものが好ましい。プライマー層(A)と含フッ素層(B)との密着性が優れる被覆物品は、耐水蒸気性に優れるので、水蒸気の存在下にあってもブリスター等の塗膜欠陥の発生を抑制することができる。TFE系共重合体を含む含フッ素重合体(a)としては、例えば、TFEホモポリマー単独、PFA単独、TFEホモポリマーとFEPとの混合物、TFEホモポリマーとPFAとの混合物、変性PTFEとFEPとの混合物、又は、変性PTFEとPFAとの混合物が好ましい。また、プライマー層(A)における含フッ素重合体(a)は、得られる被覆物品が耐食性及び耐水蒸気性に優れ、プライマー層(A)と含フッ素層(B)との密着性が優れる点から、TFEホモポリマー単独、PFA単独、TFEホモポリマーとPFAとの混合物、又は、TFEホモポリマーとFEPとの混合物であることが好ましく、TFEホモポリマー単独、又は、TFEホモポリマーとFEPとの混合物であることがより好ましい。

上記プライマー層(A)を構成し得る耐熱性樹脂は、通常、耐熱性を有すると認識されている樹脂であればよく、連続使用可能温度が150℃以上の樹脂が好ましい。但し、上記耐熱性樹脂としては、上述の含フッ素重合体(a)を除く。

上記耐熱性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアリレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。

上記ポリアミドイミド樹脂〔PAI〕は、分子構造中にアミド結合及びイミド結合を有する重合体からなる樹脂である。上記PAIとしては特に限定されず、例えば、アミド結合を分子内に有する芳香族ジアミンとピロメリット酸等の芳香族四価カルボン酸との反応;無水トリメリット酸等の芳香族三価カルボン酸と4,4−ジアミノフェニルエーテル等のジアミンやジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネートとの反応;芳香族イミド環を分子内に有する二塩基酸とジアミンとの反応等の各反応により得られる高分子量重合体からなる樹脂等が挙げられる。上記PAIとしては、耐熱性に優れる点から、主鎖中に芳香環を有する重合体からなるものが好ましい。

上記ポリイミド樹脂〔PI〕は、分子構造中にイミド結合を有する重合体からなる樹脂である。上記PIとしては特に限定されず、例えば、無水ピロメリット酸等の芳香族四価カルボン酸無水物の反応等により得られる高分子量重合体からなる樹脂等が挙げられる。上記PIとしては、耐熱性に優れる点から、主鎖中に芳香環を有する重合体からなるものが好ましい。

上記ポリエーテルスルホン樹脂〔PES〕は、下記一般式

で表される繰り返し単位を有する重合体からなる樹脂である。上記PESとしては特に限定されず、例えば、ジクロロジフェニルスルホンとビスフェノールとの重縮合により得られる重合体からなる樹脂等が挙げられる。

上記耐熱性樹脂は、基材との密着性に優れ、被覆物品を形成する際に行う焼成時の温度下でも充分な耐熱性を有し、得られる被覆物品が耐食性及び耐水蒸気性に優れる点から、PAI、PI及びPESからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。PAI、PI及びPESは、それぞれが1種又は2種以上からなるものであってよい。

上記耐熱性樹脂としては、基材との密着性及び耐熱性に優れる点から、PAI及びPIからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であることがより好ましい。

上記耐熱性樹脂としては、耐食性と耐水蒸気性に優れる点から、PESと、PAI及びPIからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、からなることが好ましい。すなわち、耐熱性樹脂は、PESとPAIとの混合物、PESとPIとの混合物、又は、PESとPAIとPIとの混合物であってよい。上記耐熱性樹脂は、PES及びPAIの混合物であることが特に好ましい。

上記耐熱性樹脂が、PESと、PAI及びPIのいずれか一方又は両方とからなるものである場合、上記PESは、該PES、並びに、PAI及びPIの合計量の65〜85質量%であることが好ましい。より好ましくは、70〜80質量%である。

上記耐熱性樹脂の含有量としては、該耐熱性樹脂及び上記含フッ素重合体(a)の固形分合計量の10〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが特に好ましい。本明細書において、上記「固形分」とは、20℃において固体であるものを意味する。本明細書において、上記「上記耐熱性樹脂及び含フッ素重合体(a)の固形分合計量」とは、プライマー用被覆組成物を基材上に塗布したのち80〜100℃の温度で乾燥し、380〜400℃で45分間焼成した後の残渣における上記耐熱性樹脂と含フッ素重合体(a)との合計質量を意味する。

上記プライマー層(A)は、通常、基材上に形成する。上記プライマー層(A)は、例えば、含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とからなる後述のプライマー用被覆組成物を基材上に塗布し、必要に応じて乾燥し、次いで焼成することにより得られる。このようにして得られるプライマー層(A)は、上記含フッ素重合体(a)と上記耐熱性樹脂とが表面張に差を有することから、焼成時に上記含フッ素重合体(a)が浮上し、基材から遠い距離にある表面側に主として上記含フッ素重合体(a)が配置し、基材側に主として上記耐熱性樹脂が配置しているものである。

上記プライマー層(A)が上記含フッ素重合体(a)と上記耐熱性樹脂とからなることにより、上記耐熱性樹脂が基材との接着性を有するので、基材に対する密着性に優れている。上記プライマー層(A)は、また、上記含フッ素重合体(a)が溶融加工性含フッ素重合体(b)と親和性を有するので、含フッ素層(B)との密着性に優れている。このように、上記プライマー層(A)は、上記含フッ素重合体(a)と上記耐熱性樹脂とからなるため、基材及び含フッ素層(B)の双方に対し、優れた密着性を有するものである。

上記プライマー層(A)は、重合体成分と後述する添加剤とからなるものであることが好ましい。上記プライマー層(A)は、重合体成分が含フッ素重合体(a)及び耐熱性樹脂であるものが好ましい。本明細書において、上記「プライマー層(A)は、重合体成分が含フッ素重合体(a)及び耐熱性樹脂である」とは、プライマー層(A)における重合体が含フッ素重合体(a)及び耐熱性樹脂のみであることを意味する。上記プライマー層(A)は、その重合体成分が含フッ素重合体(a)及び耐熱性樹脂であることにより、基材及び後述の含フッ素層(B)の双方に対して優れた密着性を効率よく有するものである。

上記プライマー層(A)は、基材及び含フッ素層(B)の双方に対して優れた密着性を効率良く発揮する点から、重合体成分が含フッ素重合体(a)及び耐熱性樹脂であるものが好ましいが、被覆物品の耐食性及び耐水蒸気性をより向上させることができる点から、含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とともに、更に、その他の樹脂からなるものであってもよい。その他の樹脂としては、後述するものが挙げられる。

上記プライマー層(A)は、膜厚が5〜30μmであるものが好ましい。膜厚が薄過ぎると、ピンホールが発生し易く、被覆物品の耐食性が低下するおそれがある。膜厚が厚過ぎると、クラックが生じ易くなり、被覆物品の耐水蒸気性が低下するおそれがある。上記プライマー層(A)の膜厚のより好ましい下限は7μmであり、上限は25μmである。

上記含フッ素層(B)を構成する溶融加工性含フッ素重合体(b)としては、上述の含フッ素重合体(a)のうち、溶融加工性を有するものを用いることができる。上記溶融加工性含フッ素重合体(b)は、得られる含フッ素層(B)が上述のプライマー層(A)と含フッ素層(C)との密着性に優れ、得られる被覆物品が耐食性及び耐水蒸気性に優れる点から、150〜350℃の融点を有し、融点より50℃高い温度における溶融粘度が106(パスカル・秒)以下であるものが好ましく、上述のTFE系共重合体であることが好ましい。上記溶融加工性含フッ素重合体(b)は、1種又は2種以上であってよい。上記溶融加工性含フッ素重合体(b)は、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素重合体であることがより好ましい。上記溶融加工性含フッ素重合体(b)は、PFA又はFEPのそれぞれ単独であってもよいし、これらの混合物であってもよい。耐熱性に優れる点から、上記溶融加工性含フッ素重合体(b)は、PFAであることが更に好ましい。

上記含フッ素層(B)は、上記プライマー層(A)上に積層されていることが好ましい。また、上記含フッ素層(B)上には、後述の含フッ素層(C)が積層されていることが好ましい。

上記含フッ素層(B)は、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子及び充填材(i)の粒子を含む粉体塗料(I)から形成されたものである。粉体塗料であれば、水性塗料等の液状塗料と異なり、乾燥工程が不要で、少ない塗装回数で厚い塗布膜を得ることが容易であり、耐摩耗性にも優れる。

上記粉体塗料(I)における充填材(i)の粒子数は、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子100個に対して0.0001〜30.0個である。 好ましい下限は、0.0005個であり、より好ましい下限は、0.001個であり、更に好ましい下限は、0.005個であり、更により好ましい下限は、0.01個であり、特に好ましい下限は、0.1個であり、最も好ましい下限は1個である。また、好ましい上限は、28個であり、より好ましい上限は、25個であり、更に好ましい上限は、20個であり、特に好ましい上限は、15個である。

充填材(i)は、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、マイカ、ガラスフレーク、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、マイカ及びガラスフレークからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、炭化珪素、アルミナ及びダイヤモンドからなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。粉体塗料(I)がこのような充填材を含むことで、被覆物品の耐摩耗性及び耐食性がより向上する。

フッ素化ダイヤモンドはダイヤモンドをフッ素化することにより得ることができる。ダイヤモンドのフッ素化は、例えば、第26回フッ素化学討論会要旨集、平成14年11月14日発行、p24〜25において開示された公知の方法で行うことができる。すなわち、ニッケルもしくはニッケルを含む合金等の、フッ素に耐食性を有する材料からなる反応器中に、ダイヤモンドを封入し、フッ素ガスを導入してフッ素化すればよい。

上記溶融加工性含フッ素重合体(b)は、静電塗装性の観点から、1〜50μmの平均粒子径を有することが好ましく、3〜40μmがより好ましく、5〜30μmが更に好ましい。

上記充填材(i)は、静電塗装性の観点から、0.01〜100μmの平均粒子径を有することが好ましく、0.05〜50μmがより好ましく、0.1〜40μmが更に好ましい。

上記充填材(i)は、溶融加工性含フッ素重合体(b)及び充填材(i)の合計量に対して0.01〜40質量%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜30質量%であり、更に好ましくは0.1〜10質量%である。充填材(i)の量が多すぎると、耐食性が低下し、充填材(i)の量が少なすぎると、充分な耐摩耗性が得られない。

上記含フッ素層(B)を形成するための粉体塗料(I)は、更に、木粉、石英砂、カーボンブラック、クレー、タルク、コランダム、ケイ石、トルマリン、翡翠、ゲルマニウム、シリカ粉、クリソベリル、ベリル、ガーネット、ざくろ石、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、体質顔料、光輝性偏平顔料、鱗片状顔料、ガラス、各種強化材、各種増量材、導電性フィラー等を含んでもよい。

上記含フッ素層(B)は、膜厚が1〜90μmであるものが好ましい。膜厚が薄過ぎると、得られる被覆物品の耐摩耗性が充分ではない場合がある。膜厚が厚過ぎると、含フッ素層(B)から透過した水分が抜け難くなり、被覆物品の耐水蒸気性が低下するおそれがある。上記含フッ素層(B)の膜厚のより好ましい下限は、5μmであり、より好ましい上限は、80μmである。

上記含フッ素層(C)を構成する溶融加工性含フッ素重合体(c)としては、上述の含フッ素重合体(a)のうち、溶融加工性を有するものを用いることができる。

上記溶融加工性含フッ素重合体(c)としては、造膜性に優れる点、得られる含フッ素層(C)が上述の含フッ素層(B)への密着性に優れる点、並びに、得られる被覆物品が耐摩耗性に優れる点から、上記溶融加工性含フッ素重合体(b)と同じ種類であるものが好ましい。また、150〜350℃の融点を有し、融点より50℃高い温度における溶融粘度が106(パスカル・秒)以下であるものが好ましい。このような溶融加工性含フッ素重合体(c)としては、TFE系共重合体が挙げられる。上記溶融加工性含フッ素重合体(c)としては、耐熱性、非粘着性及び造膜性が優れる点から、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。上記溶融加工性含フッ素重合体(c)は、PFA単独、FEP単独、又は、PFAとFEPとの混合物であってよい。上記溶融加工性含フッ素重合体(c)としては、耐熱性により優れる点から、PFAがより好ましい。

本発明の被覆物品において、上記含フッ素層(C)は、上記含フッ素層(B)上に形成されていることが好ましく、溶融加工性含フッ素重合体(c)の融点以上の温度で焼成されたものであることが好ましい。

上記含フッ素層(C)は、溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子及び充填材(ii)の粒子を含む粉体塗料(II)から形成されたものである。粉体塗料であれば、水性塗料等の液状塗料と異なり、乾燥工程が不要で少ない塗装回数で厚い塗布膜を得ることが容易であり、耐摩耗性にも優れる。

上記粉体塗料(II)における充填材(ii)の粒子数は、溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子100個に対して0.0001〜30.0個である。 好ましい下限は、0.0005個であり、より好ましい下限は、0.001個であり、更に好ましい下限は、0.005個である。また、好ましい上限は、28個であり、より好ましい上限は、25個であり、更に好ましい上限は、20個であり、更により好ましい上限は、15個である。

充填材(ii)は、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、マイカ及びガラスフレーク、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭化珪素、アルミナ及びダイヤモンドからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。粉体塗料(II)がこのような充填材を含むことで、被覆物品の耐摩耗性及び耐食性がより向上する。

充填材(i)と充填材(ii)とは、種類が同じであっても異なっていてもよいが、塗膜の意匠性の観点からは、充填材(i)と充填材(ii)とは種類が異なることが好ましい。

上記粉体塗料(II)は、得られる被覆物品に対する特性付与、物性向上、増量等を目的として充填材(ii)とは別に充填材(iii)を含むものであってもよい。上記特性や物性としては、強度、耐久性、耐侯性、難燃性、意匠性等が挙げられる。充填材として光輝感を有するものを用いた場合、本発明の被覆物品は、良好な光輝感を有する。

上記充填材(iii)としては特に限定されず、例えば、木粉、石英砂、カーボンブラック、クレー、タルク、コランダム、ケイ石、窒化ホウ素、融解アルミナ、トルマリン、翡翠、ゲルマニウム、シリカ粉、クリソベリル、ベリル、ガーネット、ざくろ石、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、体質顔料、光輝性偏平顔料、鱗片状顔料、ガラス、金属粉、各種強化材、各種増量材、導電性フィラー等が挙げられる。上記充填材としては、本発明の被覆物品が光輝感を有することを要求される場合、光輝性充填材が好ましい。上記「光輝性充填材」は、得られる被覆物品に光輝感を付与することができる充填材である。

上記溶融加工性含フッ素重合体(c)は、静電塗装性の観点から、1〜50μmの平均粒子径を有することが好ましく、3〜40μmがより好ましく、5〜30μmが更に好ましい。

上記充填材(ii)は、静電塗装性の観点から、0.01〜100μmの平均粒子径を有することが好ましく、0.05〜50μmがより好ましく、0.1〜40μmが更に好ましい。

上記充填材(ii)は、溶融加工性含フッ素重合体(c)及び充填材(ii)の合計量に対して0.01〜40質量%である。好ましくは0.05〜30質量%であり、より好ましくは0.1〜10質量%である。充填材(ii)の量が多すぎると、耐食性が低下し、充填材(ii)の量が少なすぎると、充分な耐摩耗性が得られない。

上記含フッ素層(C)は、膜厚が1〜90μmであるものが好ましい。膜厚が薄過ぎると、被覆物品の耐食性が低下するおそれがある。膜厚が厚過ぎると、被覆物品が水蒸気の存在下にある場合、水蒸気が被覆物品中に残存し易くなり、耐水蒸気性に劣る場合がある。上記含フッ素層(C)の膜厚のより好ましい下限は、5μmであり、より好ましい上限は、80μmである。

本発明の被覆物品は、含フッ素層(B)及び含フッ素層(C)の双方が充填材を含み、かつ、その粒子数が適切に調整されているので、耐摩耗性に優れると同時に、耐食性にも優れたものとなる。

上記プライマー層(A)の膜厚が5〜30μmであり、上記含フッ素層(B)の膜厚が1〜90μmであり、かつ、上記含フッ素層(C)の膜厚が1〜90μmであるものは、本発明の好適な実施形態の1つである。

本発明の被覆物品を構成する各層の積層順は特に限定されないが、上記基材、上記プライマー層(A)、上記含フッ素層(B)、及び、上記含フッ素層(C)がこの順に積層されていることが好ましい。これにより、耐摩耗性と耐食性とを、より効果的に両立することができる。 通常、本発明の被覆物品は、基材、プライマー層(A)、含フッ素層(B)及び含フッ素層(C)のそれぞれの層間には他の層を介在しないものであるが、例えば、必要に応じて、プライマー層(A)と含フッ素層(B)との層間、又は、含フッ素層(B)と含フッ素層(C)との層間に他の層が介在するものであってもよい。

本発明の被覆物品は、上記基材、上記プライマー層(A)、上記含フッ素層(B)及び上記含フッ素層(C)がこの順に積層されている場合、上記プライマー層(A)の上面、及び/又は、上記含フッ素層(B)の上面に文字、図面等の印刷が施されているものであってもよい。

本発明の被覆物品はまた、上述のように、上記プライマー層(A)、上記含フッ素層(B)及び上記含フッ素層(C)を有するものであればよく、上記含フッ素層(C)上に更に層が設けられているものであってもよいが、上記含フッ素層(C)が最外層であることが好ましい。耐摩耗性の向上に大きく寄与する含フッ素層(C)を、使用環境下で特に耐摩耗性が求められる最外層に配置することにより、本発明の耐摩耗性に係る効果を一層顕著に発揮することができる。

本発明の被覆物品は、例えば、基材上に、プライマー用被覆組成物(i)を塗布することによりプライマー塗布膜(Ap)を形成する工程(1)、プライマー塗布膜(Ap)上に、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子と充填材(i)の粒子とを含む粉体塗料(I)を塗布することにより塗布膜(Bp)を形成する工程(2)、塗布膜(Bp)上に溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子と充填材(ii)の粒子とを含む粉体塗料(II)を塗布することにより塗布膜(Cp)を形成する工程(3)、並びに、プライマー塗布膜(Ap)、塗布膜(Bp)及び塗布膜(Cp)からなる塗布膜積層体を焼成することにより、基材、プライマー層(A)、含フッ素層(B)及び含フッ素層(C)からなる被覆物品を形成する工程(4)を含む方法により、製造することができる。

上記粉体塗料(I)における充填材(i)の粒子数は、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子100個に対して0.0001〜30.0個であり、上記粉体塗料(II)における充填材(ii)の粒子数は、溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子100個に対して0.0001〜30.0個である。

上記工程(1)は、基材上に、プライマー用被覆組成物(i)を塗布することによりプライマー塗布膜(Ap)を形成する工程である。

上記工程(1)において、上記プライマー用被覆組成物(i)は、含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とからなるものであることが好ましい。含フッ素重合体(a)及び耐熱性樹脂については、上述したとおりである。上記プライマー用被覆組成物(i)は、液状であってもよいし、粉体であってもよい。上記プライマー用被覆組成物(i)は、液状である場合、含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とともに、液状媒体からなるものである。上記液状媒体は、通常、水及び/又は有機液体からなるものである。本明細書において、上記「有機液体」とは、有機化合物であって、20℃程度の常温において液体であるものを意味する。

上記プライマー用被覆組成物(i)の液状媒体が主に有機液体からなるものである場合、上記耐熱性樹脂並びに含フッ素重合体(a)は、上記液状媒体に粒子として分散したもの、及び/又は、上記液状媒体に溶解したものである。上記有機液体としては、従来公知の有機溶剤等を用いてよく、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。

上記プライマー用被覆組成物(i)の液状媒体が主に水からなるものである場合、上記耐熱性樹脂は、上記液状媒体に粒子として分散したものであり、含フッ素重合体(a)は、上記液状媒体に粒子として分散したものである。

上記プライマー用被覆組成物(i)は、上記液状媒体が主に水からなるものである場合、通常、含フッ素重合体(a)からなる粒子を分散安定化させることを目的として、界面活性剤を添加してなるものである。上記界面活性剤としては従来公知のものを用いてよい。上記プライマー用被覆組成物(i)においては、含フッ素重合体(a)からなる粒子を分散安定化させることを目的として、上記界面活性剤とともに、上記有機液体を併用することもできる。

上記プライマー用被覆組成物(i)は、また、特公昭49−17017号公報に記載されている方法等により得られるオルガノゾルであってもよい。

上記プライマー用被覆組成物(i)は、基材との密着性に優れる点から液状のものであることが好ましく、環境問題の点から上記液状媒体が主に水からなるものがより好ましい。

上記プライマー用被覆組成物(i)は、上記含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とともに、塗装作業性や得られる被覆物品の耐食性及び耐水蒸気性をより向上させることを目的として、更に、上述した添加剤からなるものであってもよい。

上記プライマー用被覆組成物(i)は、被覆物品の耐食性及び耐水蒸気性をより向上させることができる点から、含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とともに、更に、上述したその他の樹脂からなるものであってもよい。

基材上にプライマー用被覆組成物(i)を塗布する方法としては特に限定されず、上記プライマー用被覆組成物(i)が液状である場合、例えば、スプレー塗装、ロール塗装、ドクターブレードによる塗装、ディップ(浸漬)塗装、含浸塗装、スピンフロー塗装、カーテンフロー塗装等が挙げられ、なかでも、スプレー塗装が好ましい。上記プライマー用被覆組成物(i)が粉体である場合、静電塗装、流動浸漬法、ロトライニング法等が挙げられ、なかでも、静電塗装が好ましい。

上記工程(1)におけるプライマー用被覆組成物(i)の塗布の後、工程(2)を行う前に焼成を行ってもよいし、焼成を行わなくてもよい。また、上記プライマー用被覆組成物(i)が液状である場合、上記塗布の後、更に、乾燥を行ってもよいし、乾燥を行わなくてもよい。

上記工程(1)において、上記乾燥は、70〜300℃の温度で5〜60分間行うことが好ましい。上記焼成は、260〜410℃の温度で10〜30分間行うことが好ましい。

上記プライマー用被覆組成物(i)が液状である場合、上記工程(1)においては、基材上に塗布したのち、乾燥を行うことが好ましい。また、後述の工程(4)において塗布膜積層体の焼成を行うため、焼成を行わないことが好ましい。

上記プライマー用被覆組成物(i)が粉体である場合、上記工程(1)においては、基材上に塗布したのち、焼成を行うことが好ましい。

上記プライマー塗布膜は、基材上に上記プライマー用被覆組成物(i)を塗布した後、必要に応じて乾燥又は焼成することにより形成されるものである。上記プライマー塗布膜は、得られる被覆物品においてプライマー層となる。

上記工程(2)は、プライマー塗布膜(Ap)上に、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子と充填材(i)の粒子とを含む粉体塗料(I)を塗布することにより塗布膜(Bp)を形成する工程である。

上記粉体塗料(I)は、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子と充填材(i)の粒子とを含む。粉体塗料であれば、水性塗料等の液状塗料と異なり、乾燥工程が不要で、少ない塗装回数で厚い塗布膜を得ることが容易であり、耐摩耗性にも優れる。

充填材(i)の粒子数は、溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子100個に対して0.0001〜30.0個である。 好ましい下限は、0.0005個であり、より好ましい下限は、0.001個であり、更に好ましい下限は、0.005個であり、更により好ましい下限は、0.01個であり、特に好ましい下限は、0.1個であり、最も好ましい下限は1個である。また、好ましい上限は、28個であり、より好ましい上限は、25個であり、更に好ましい上限は、20個であり、特に好ましい上限は、15個である。

上記溶融加工性含フッ素重合体(b)の粒子の平均粒子径は、静電塗装性の観点から、1〜50μmであることが好ましく、3〜40μmであることがより好ましく、5〜30μmであることが更に好ましい。

上記充填材(i)の平均粒子径は、静電塗装性の観点から、0.01〜100μmであることが好ましく、0.05〜50μmがより好ましく、0.1〜40μmが更に好ましい。

充填材(i)は、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、マイカ、ガラスフレーク、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、マイカ及びガラスフレークからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、炭化珪素、アルミナ及びダイヤモンドからなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。粉体塗料(I)がこのような充填材を含むことで、被覆物品の耐摩耗性及び耐食性がより向上する。粉体塗料(I)は、更に、木粉、石英砂、カーボンブラック、クレー、タルク、コランダム、ケイ石、トルマリン、翡翠、ゲルマニウム、シリカ粉、クリソベリル、ベリル、ガーネット、ざくろ石、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、体質顔料、光輝性偏平顔料、鱗片状顔料、ガラス、各種強化材、各種増量材、導電性フィラー等を含んでもよい。

上記粉体塗料(I)はまた、球晶を微細化する目的で、溶融加工性含フッ素重合体(b)とともに少量のPTFE(TFEホモポリマー、変性PTFE)を含んでもよい。この場合、PTFEの含有量は、PFAに対して0.01〜10.0質量%とすることが好ましい。

上記プライマー塗布膜上に粉体塗料(I)を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、静電塗装、流動浸漬法、ロトライニング法等が挙げられ、なかでも、静電塗装が好ましい。

上記工程(2)においては、粉体塗料(I)を基材上に塗布したのち、焼成を行ってもよい。上記工程(2)における焼成は、上記工程(1)における焼成と同様の条件で行うことが好ましい。

通常は、上記粉体塗料(I)をプライマー塗布膜上に塗布したのち、焼成を行わないことが好ましい。後述の工程(4)において塗布膜積層体の焼成を行う際に、全ての塗布膜を同時に焼成することができるからである。

塗布膜(Bp)は、上記プライマー塗布膜上に粉体塗料(I)を塗布した後、必要に応じて焼成することにより形成されるものである。上記塗布膜(Bp)は、得られる被覆物品において含フッ素層(B)となる。

上記工程(3)は、塗布膜(Bp)上に溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子と充填材(ii)の粒子とを含む粉体塗料(II)を塗布することにより塗布膜(Cp)を形成する工程である。

上記工程(3)における粉体塗料(II)は、溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子と充填材(ii)の粒子とを含む。粉体塗料であれば、水性塗料等の液状塗料と異なり、乾燥工程が不要で、少ない塗装回数で厚い塗布膜を得ることが容易であり、耐摩耗性にも優れる。

充填材(ii)の粒子数は、溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子100個に対して0.0001〜30.0個である。 好ましい下限は、0.0005個であり、より好ましい下限は、0.001個であり、更に好ましい下限は、0.005個である。また、好ましい上限は、28個であり、より好ましい上限は、25個であり、更に好ましい上限は、20個であり、更により好ましい上限は、15個である。

上記溶融加工性含フッ素重合体(c)の粒子の平均粒子径は、静電塗装性の観点から、1〜50μmであることが好ましく、3〜40μmであることがより好ましく、5〜30μmであることが更に好ましい。

上記充填材(ii)は、0.01〜100μmの平均粒子径を有することが好ましく、0.05〜50μmがより好ましく、0.1〜40μmが更に好ましい。

上記充填材(ii)は、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、マイカ及びガラスフレークからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭化珪素、アルミナ及びダイヤモンドからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。粉体塗料(II)がこのような充填材を含むことで、被覆物品の耐摩耗性及び耐食性がより向上する。

充填材(i)と充填材(ii)とは、種類が同じであっても異なっていてもよいが、塗膜の意匠性の観点からは、充填材(i)と充填材(ii)とは種類が異なることが好ましい。

上記粉体塗料(II)は、得られる被覆物品に対する特性付与、物性向上、増量等を目的として他の充填材を含むものであってもよい。上記特性や物性としては、強度、耐久性、耐侯性、難燃性、意匠性等が挙げられる。上記充填材としては、上述したものを挙げることができる。

上記粉体塗料(II)はまた、球晶を微細化する目的で、溶融加工性含フッ素重合体(c)とともに少量のPTFE(TFEホモポリマー、変性PTFE)を含んでもよい。この場合、PTFEの含有量は、PFAに対して0.01〜10.0質量%とすることが好ましい。

また、上記粉体塗料(II)は、着色顔料を含有しないことが好ましい。着色顔料は、通常、耐食性を悪化させる原因と考えられているため、上記粉体塗料(II)が着色顔料を含有しないものであれば、得られる被覆物品は、より優れた耐食性及び耐水蒸気性を有するものとなる。

上記塗布膜(Bp)上に上記粉体塗料(II)を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、静電塗装が好ましい。

上記塗布膜(Cp)は、上記塗布ののち必要に応じて焼成することにより形成されるものであってもよい。上記工程(3)における焼成は、上記工程(1)における焼成と同様の条件で行うことが好ましい。上記塗布膜(Cp)は、得られる被覆物品における含フッ素層(C)となる。

上記工程(4)は、プライマー塗布膜(Ap)、塗布膜(Bp)及び塗布膜(Cp)からなる塗布膜積層体を焼成することにより、基材、プライマー層(A)、含フッ素層(B)及び含フッ素層(C)からなる被覆物品を形成する工程である。

上記工程(4)における焼成は、上記工程(1)〜(3)における焼成と同様の条件で行うことが好ましい。

上記製造方法は、上記プライマー塗布膜(Ap)を形成する工程(1)の後、又は、上記塗布膜(Bp)を形成する工程(2)の後に、文字、図面等を印刷する工程を有するものであってもよい。上記文字、図面等は、例えば、被覆物品が炊飯釜である場合、水の量を示す文字と線等である。

上記印刷の方法としては特に限定されず、例えば、パット転写印刷が挙げられる。上記印刷に用いる印刷インキとしては特に限定されず、例えば、PESとTFEホモポリマーと酸化チタンとからなる組成物が挙げられる。

<耐食性塗膜の形成方法> 本発明の耐食性塗膜の形成方法は、溶融加工性含フッ素重合体の粒子と充填材の粒子とを、溶融加工性含フッ素重合体の粒子100個に対して充填材の粒子数が0.0001〜30.0個となるように混合して粉体塗料を調製する工程、及び、 上記粉体塗料を基材上に設けられたプライマー層上に静電塗装により塗布して、耐食性塗膜(R1)を形成する工程を含む。 この方法により、耐摩耗性に優れると同時に、耐食性にも優れた塗膜を形成することができ、しかも、静電塗装により容易に耐食性塗膜を形成することができる。また、本発明の耐食性塗膜の形成方法は、上述の本発明の被覆物品の製造に好適に用いられる。

上記プライマー層は、例えば、基材上にプライマー用被覆組成物を塗布することにより得られる(成膜工程(1))。上記プライマー用被覆組成物は、含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とからなるものであることが好ましい。含フッ素重合体(a)及び耐熱性樹脂については、上述したとおりである。上記プライマー用被覆組成物は、液状であってもよいし、粉体であってもよい。上記プライマー用被覆組成物は、液状である場合、含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とともに、液状媒体からなるものである。上記液状媒体は、通常、水及び/又は有機液体からなるものである。本明細書において、上記「有機液体」とは、有機化合物であって、20℃程度の常温において液体であるものを意味する。

上記プライマー用被覆組成物の液状媒体が主に有機液体からなるものである場合、上記耐熱性樹脂並びに含フッ素重合体(a)は、上記液状媒体に粒子として分散したもの、及び/又は、上記液状媒体に溶解したものである。上記有機液体としては、従来公知の有機溶剤等を用いてよく、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。

上記プライマー用被覆組成物の液状媒体が主に水からなるものである場合、上記耐熱性樹脂は、上記液状媒体に粒子として分散したものであり、含フッ素重合体(a)は、上記液状媒体に粒子として分散したものである。

上記プライマー用被覆組成物は、上記液状媒体が主に水からなるものである場合、通常、含フッ素重合体(a)からなる粒子を分散安定化させることを目的として、界面活性剤を添加してなるものである。上記界面活性剤としては従来公知のものを用いてよい。上記プライマー用被覆組成物においては、含フッ素重合体(a)からなる粒子を分散安定化させることを目的として、上記界面活性剤とともに、上記有機液体を併用することもできる。

上記プライマー用被覆組成物は、また、特公昭49−17017号公報に記載されている方法等により得られるオルガノゾルであってもよい。

上記プライマー用被覆組成物は、基材との密着性に優れる点から液状のものであることが好ましく、環境問題の点から上記液状媒体が主に水からなるものがより好ましい。

上記プライマー用被覆組成物は、上記含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とともに、塗装作業性や得られる耐食性塗膜の耐食性及び耐水蒸気性をより向上させることを目的として、更に、上述した添加剤からなるものであってもよい。

上記プライマー用被覆組成物は、耐食性塗膜の耐食性及び耐水蒸気性をより向上させることができる点から、含フッ素重合体(a)と耐熱性樹脂とともに、更に、上述したその他の樹脂からなるものであってもよい。

基材上にプライマー用被覆組成物を塗布する方法としては特に限定されず、上記プライマー用被覆組成物が液状である場合、例えば、スプレー塗装、ロール塗装、ドクターブレードによる塗装、ディップ(浸漬)塗装、含浸塗装、スピンフロー塗装、カーテンフロー塗装等が挙げられ、なかでも、スプレー塗装が好ましい。上記プライマー用被覆組成物が粉体である場合、静電塗装、流動浸漬法、ロトライニング法等が挙げられ、なかでも、静電塗装が好ましい。

上記成膜工程(1)におけるプライマー用被覆組成物の塗布の後、後述の成膜工程(2)を行う前に焼成を行ってもよいし、焼成を行わなくてもよい。また、上記プライマー用被覆組成物が液状である場合、上記塗布の後、更に、乾燥を行ってもよいし、乾燥を行わなくてもよい。

上記成膜工程(1)において、上記乾燥は、70〜300℃の温度で5〜60分間行うことが好ましい。上記焼成は、260〜410℃の温度で10〜30分間行うことが好ましい。

上記プライマー用被覆組成物が液状である場合、上記成膜工程(1)においては、基材上に塗布したのち、乾燥を行うことが好ましい。

上記プライマー用被覆組成物が粉体である場合、上記成膜工程(1)においては、基材上に塗布したのち、焼成を行うことが好ましい。ただし、後述のように、最後に塗膜全体の焼成を行う場合は、この時点で焼成を行わなくてもよい。

上記プライマー層は、基材上に上記プライマー用被覆組成物を塗布した後、必要に応じて乾燥又は焼成することにより形成されるものである。上記プライマー塗布膜は、得られる耐食性塗膜においてプライマー層となる。

本発明の耐食性塗膜の形成方法は、このような基材上に設けられたプライマー層上に静電塗装により塗膜を形成するために好適な粉体塗料を調製するための工程として、溶融加工性含フッ素重合体の粒子と充填材の粒子とを、溶融加工性含フッ素重合体の粒子100個に対して充填材の粒子数が0.0001〜30.0個となるように混合する工程を含む。そして、上記粉体塗料を、上述のように基材上に設けられたプライマー層上に静電塗装により塗布して、耐食性塗膜(R1)を形成する(成膜工程(2))。また、必要に応じて更に、上記粉体塗料を、上記耐食性塗膜(R1)上に静電塗装により塗布して、耐食性塗膜(R2)を形成する(成膜工程(3))。

粉体塗料を使用することで、水性塗料等の液状塗料と異なり、乾燥工程が不要で、少ない塗装回数で厚い塗膜を得ることが容易であり、耐摩耗性にも優れる。ただし、粉体塗料を静電塗装する場合、充填材を含む含フッ素重合体の粉体塗料は流動性が高いとはいえず、静電塗装が容易でない。しかしながら、本発明者らの検討により、上記のように溶融加工性含フッ素重合体の粒子数に対する充填材の粒子数がある特定の範囲を満たす場合には、均質な塗膜の形成が可能になり、耐摩耗性に優れると同時に、耐食性にも優れた耐食性被膜を得ることができることがわかった。

上記粉体塗料を調製する工程では、溶融加工性含フッ素重合体の粒子と、充填材の粒子とを、溶融加工性含フッ素重合体の粒子100個に対して充填材の粒子数が0.0001〜30.0個となるように混合する。 好ましい下限は、0.0005個であり、より好ましい下限は、0.001個であり、更に好ましい下限は、0.005個である。好ましい上限は、28個であり、より好ましい上限は、25個であり、更に好ましい上限は、20個である。

上記耐食性塗膜(R1)を形成するための粉体塗料としては、上記充填材(i)を含む粉体塗料(I)が好適に用いられる。また、上記耐食性塗膜(R2)を形成するための粉体塗料としては、上記充填材(ii)を含む粉体塗料(II)が好適に用いられる。

耐食性塗膜(R1)を形成するための工程(成膜工程(2))、及び、耐食性塗膜(R2)を形成するための工程(成膜工程(3))について、以下に詳述する。

上記成膜工程(2)では、上記粉体塗料をプライマー層上に静電塗装により塗布して、耐食性塗膜(R1)を形成する。

上記成膜工程(2)で使用する粉体塗料に含まれる溶融加工性含フッ素重合体の粒子の平均粒子径は、静電塗装性の観点から、1〜50μmであることが好ましく、3〜40μmがより好ましく、5〜30μmが更に好ましい。

上記成膜工程(2)で使用する粉体塗料に含まれる充填材は、静電塗装性の観点から、0.01〜100μmの平均粒子径を有することが好ましく、0.05〜50μmがより好ましく、0.1〜40μmが更に好ましい。

上記成膜工程(2)で使用する粉体塗料に含まれる充填材は、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、マイカ及びガラスフレーク、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、マイカ及びガラスフレークからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、炭化珪素、アルミナ及びダイヤモンドからなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。上記粉体塗料が上記充填材を含むことにより、耐食性塗膜の耐摩耗性及び耐摩耗性がより向上する。

上記成膜工程(2)で使用する粉体塗料は、更に、木粉、石英砂、カーボンブラック、クレー、タルク、コランダム、ケイ石、トルマリン、翡翠、ゲルマニウム、シリカ粉、クリソベリル、ベリル、ガーネット、ざくろ石、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、体質顔料、光輝性偏平顔料、鱗片状顔料、ガラス、各種強化材、各種増量材、導電性フィラー等を含んでもよい。

上記成膜工程(2)で使用する粉体塗料はまた、球晶を微細化する目的で、溶融加工性含フッ素重合体とともに少量のPTFE(TFEホモポリマー、変性PTFE)を含んでもよい。この場合、PTFEの含有量は、PFAに対して0.01〜10.0質量%とすることが好ましい。

上記成膜工程(2)においては、上記粉体塗料をプライマー層上に塗布したのち、焼成を行ってもよい。上記成膜工程(2)における焼成は、上記成膜工程(1)における焼成と同様の条件で行うことが好ましい。

ただし、後述のように、最後に塗膜全体の焼成を行う場合は、全ての塗膜を同時に焼成することができるため、上記粉体塗料をプライマー層上に塗布した時点では、焼成を行わなくてもよい。得られた塗膜は、耐食性塗膜(R1)となる。

本発明の耐食性塗膜の形成方法では、成膜工程(2)の後、更に、成膜工程(3)を含むことが好ましい。上記成膜工程(3)は、上記粉体塗料を耐食性塗膜(R1)上に静電塗装により塗布して、耐食性塗膜(R2)を形成する工程である。

上記成膜工程(3)で使用する粉体塗料に含まれる溶融加工性含フッ素重合体の粒子の平均粒子径は、静電塗装性の観点から、1〜50μmであることが好ましく、3〜40μmがより好ましく、5〜30μmが更に好ましい。

上記成膜工程(3)で使用する粉体塗料に含まれる充填材は、静電塗装性の観点から、0.01〜100μmの平均粒子径を有することが好ましく、0.05〜50μmがより好ましく、0.1〜40μmが更に好ましい。

上記成膜工程(3)で使用する粉体塗料に含まれる充填材は、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、マイカ及びガラスフレーク、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭化珪素、アルミナ及びダイヤモンドからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。上記粉体塗料が上記充填材を含むことにより、耐食性塗膜の耐摩耗性及び耐摩耗性がより向上する。

上記成膜工程(3)で使用する粉体塗料は、得られる耐食性塗膜に対する特性付与、物性向上、増量等を目的として他の充填材を含むものであってもよい。上記特性や物性としては、強度、耐久性、耐侯性、難燃性、意匠性等が挙げられる。

そのような充填材としては、木粉、石英砂、カーボンブラック、クレー、タルク、コランダム、ケイ石、窒化ホウ素、融解アルミナ、トルマリン、翡翠、ゲルマニウム、シリカ粉、クリソベリル、ベリル、ガーネット、ざくろ石、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、体質顔料、光輝性偏平顔料、鱗片状顔料、ガラス、金属粉、各種強化材、各種増量材、導電性フィラー等が挙げられる。形成される耐食性塗膜が光輝感を有することを要求される場合、光輝性充填材が好ましい。上記「光輝性充填材」は、得られる耐食性塗膜に光輝感を付与することができる充填材である。

上記成膜工程(3)で使用する粉体塗料はまた、球晶を微細化する目的で、溶融加工性含フッ素重合体とともに少量のPTFE(TFEホモポリマー、変性PTFE)を含んでもよい。この場合、PTFEの含有量は、PFAに対して0.01〜10.0質量%とすることが好ましい。

また、上記成膜工程(3)で使用する粉体塗料は、着色顔料を含有しないことが好ましい。着色顔料は、耐食性を悪化させる原因となりうるため、上記粉体塗料が着色顔料を含有しないことで、得られる耐食性塗膜は、より優れた耐食性及び耐水蒸気性を有するものとなる。

上記成膜工程(3)においては、上記粉体塗料を耐食性塗膜(R1)上に塗布したのち、焼成を行ってもよい。上記成膜工程(3)における焼成は、上記成膜工程(1)又は(2)における焼成と同様の条件で行うことが好ましい。得られた塗膜は、耐食性塗膜(R2)となる。

上記成膜工程(1)〜(3)を経た後に、塗膜全体に対して焼成を行ってもよい。すなわち、本発明の耐食性塗膜の形成方法は、上記耐食性塗膜(R1)を形成する成膜工程(1)の後、又は、上記耐食性塗膜(R2)を成膜形成する工程(2)の後に、更に、焼成工程を含むものであってもよい。上記焼成工程は、上記成膜工程(1)〜(3)における焼成と同様の条件で行うことが好ましい。

上記形成方法は、上記耐食性塗膜(R1)を形成する成膜工程(1)の後、上記耐食性塗膜(R2)を形成する成膜工程(2)、又は、上記焼成工程の後に、文字、図面等を印刷する工程を有するものであってもよい。上記文字、図面等は、例えば、上記耐食性塗膜が炊飯釜に適用される場合、水の量を示す文字と線等である。

上記印刷の方法としては特に限定されず、例えば、パット転写印刷が挙げられる。上記印刷に用いる印刷インキとしては特に限定されず、例えば、PESとTFEホモポリマーと酸化チタンとからなる組成物が挙げられる。

本発明の被覆物品、又は、本発明の耐食性塗膜の形成方法によって形成される耐食性塗膜は、含フッ素重合体が有する非粘着性、耐熱性、滑り性等を利用した用途に使用することができ、例えば、非粘着性を利用したものとして、フライパン、圧力鍋、鍋、グリル鍋、炊飯釜、オーブン、ホットプレート、パン焼き型、包丁、ガステーブル等の調理器具;電気ポット、製氷トレー、金型、レンジフード等の厨房用品;練りロール、圧延ロール、コンベア、ホッパー等の食品工業用部品;オフィースオートメーション(OA)用ロール、OA用ベルト、OA用分離爪、製紙ロール、フィルム製造用カレンダーロール等の工業用品;発泡スチロール成形用等の金型、鋳型、合板・化粧板製造用離型板等の成形金型離型、工業用コンテナ(特に半導体工業用)等が挙げられ、滑り性を利用したものとして、のこぎり、やすり等の工具;アイロン、鋏、包丁等の家庭用品;金属箔、電線、食品加工機、包装機、紡織機械等のすべり軸受、カメラ・時計の摺動部品、パイプ、バルブ、ベアリング等の自動車部品、かきシャベル、すき、シュート等が挙げられる。 中でも、調理器具や厨房用品に好適に用いることができ、特に炊飯釜に好適に用いることができる。

以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。「%」及び「部」は、それぞれ質量%、質量部を表す。

製造例1 ポリエーテルスルホン樹脂水性分散液の調製 数平均分子量約24000のポリエーテルスルホン樹脂〔PES〕60部及び脱イオン水60部を、セラミックボールミル中でPESからなる粒子が完全に粉砕されるまで攪拌した。次いで、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという)180部を添加し、PES濃度が約20%のPES水性分散液を得た。PES水性分散液中のPESからなる粒子の平均粒子径は、2μmであった。

製造例2 ポリアミドイミド樹脂水性分散液の調製 固形分29%のポリアミドイミド樹脂〔PAI〕ワニス(NMPを71%含む)を水中に投入してボールミル中で粉砕してPAI水性分散液を得た。得られたPAI水性分散液の固形分は、20%であり、PAI水性分散液中のPAIの平均粒子径は、2μmであった。

製造例3 プライマー用被覆組成物(i)の調製 製造例1で得られたPES水性分散液、及び、製造例2で得られたPAI水性分散液を、PESが、PESとPAIとの固形分合計量の75%となるように混合し、これにテトラフルオロエチレンホモポリマー〔TFEホモポリマー〕水性分散液(平均粒子径0.28μm、固形分60%、分散剤としてポリエーテル系非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレントリデシルエーテル)をTFEホモポリマーに対して6%含有している)を、PES及びPAIが、PES、PAI及びTFEホモポリマーの固形分合計量の25%となるように加え、増粘剤としてメチルセルロースをTFEホモポリマーの固形分に対して0.7%添加し、分散安定剤として非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)をTFEホモポリマーの固形分に対して6%添加して、TFEホモポリマーの固形分34%の水性分散液を得た。

実施例1 アルミニウム板(A−1050P)の表面をアセトンで脱脂した後、JIS B 1982に準拠して測定した表面粗度Ra値が2.0〜3.0μmとなるようにサンドブラストを行い、表面を粗面化した。エアーブローにより表面のダストを除去した後、製造例3で得られたプライマー用被覆組成物(i)を、乾燥膜厚が10μmとなるように、重力式スプレーガンを用い、吹き付け圧力0.2MPaでスプレー塗装した。得られたアルミニウム板上の塗布膜を80〜100℃で15分間乾燥し、室温まで冷却した。得られたプライマー塗布膜上に、PFA(商品名:ACX−21、ダイキン工業社製、平均粒径23μm)と充填材としての炭化珪素(平均粒径15μm、PFAと炭化珪素との合計量の2%)とを含む粉体塗料を、焼成後の膜厚が40μmとなるように、印加電圧50KV、圧力0.08MPaの条件で静電塗装した。その上に、PFAと充填材としてのダイヤモンド(平均粒径18μm、PFAとダイヤモンドとの合計量の1%)を、焼成後の膜厚が5μmとなるように、印加電圧50KV、圧力0.08MPaの条件で静電塗装し、塗り重ねた。得られた塗装板を380℃で20分間焼成し、試験用塗装板を得た。得られた試験用塗装板は、アルミニウム板上にプライマー層、中塗り層、及び上塗り層が形成されたものであった。

(評価方法) 得られた試験用塗装板の塗膜について、下記の評価を行った。

(粒子数の比率(個数比率)の計算) 粒子数は下記の計算式により計算した。 w=d×4/3×(円周率)×((平均粒子径)/2)3 w:粒子1個の重量 d:含フッ素樹脂又は充填材の比重

上記の計算式により求めた含フッ素樹脂の粒子1個の重量をw1、充填材の粒子1個の重量をw2、充填材の配合量をF重量%とし、粒子数の比率(個数比率)Xを次の式で算出した。 X=(F/w2)/((100−F)/w1)×100

(安息の測定、塗装性の評価) 粉体塗料の流動性を調べるため、次の方法で安息角を測定した。ロート(上部が直径8cm、下部の出口の直径が1cm)から粉体塗料100gを落下させ、下部で堆積した粉体塗料の安息角を分度器で測定した。粉体塗料の流動性が良い程、堆積した粉体塗料の安息角は小さくなり、塗装性は良好であった。 安息角43°以下のとき、塗装性良好(○)とした。 安息角44°以上のとき、塗装性不良(×)とした。これは粉体塗料の流量が不安定であることを表す。

(摩耗量) 得られた試験用塗装板の耐摩耗性は、株式会社東洋精機製作所製ロータリーアブレージョンテスタを使用し、荷重1kg、摩耗輪CS−10で500回転の条件で摩耗量を測定した。

(耐食性) 得られた試験用塗装板(50mm×100mm、厚さ2.5mm)の塗膜表面に、カッターナイフで長さ50mmの基材に達する傷を交差するように2本つけた(クロスカット)。この試験用塗装板を、おでんの素(ヱスビー食品社製)20gを水1リットルに溶解した溶液中に浸漬し、70℃に保温して500時間経過後ブリスター(塗膜の膨れ)の発生等の異常がないかを確認した。 ○:ブリスターが全くない △:クロスカット部に3mm未満のブリスターが発生(クロスカット部以外は異常なし) ×:全面にブリスターが発生

実施例2〜7 中塗り工程での粉体塗料として、炭化珪素の代わりに、表1に示す充填材を表1に示す量で含む粉体塗料を使用したほかは実施例1と同様にして実施例2〜7の試験用塗装板を得た。得られた試験用塗装板について、実施例1と同様に塗膜物性の評価を行った。

比較例1〜3 中塗り工程での粉体塗料として表2に示す充填材を表2に示す量で含む粉体塗料を使用したこと、及び、上塗り工程での粉体塗料として表2に示す充填材を表2に示す量で含む粉体塗料を使用したほかは実施例1と同様にして比較例1〜3の試験用塗装板を得た。得られた試験用塗装板について、実施例1と同様に塗膜物性の評価を行った。

比較例4 中塗り工程での粉体塗料として充填材を添加しなかったこと、上塗り工程での粉体塗料として表2に示す充填材を表2に示す量で含む粉体塗料を使用した以外は実施例1と同様にして試験用塗装板を得た。得られた試験用塗装板について、実施例1と同様に塗膜物性の評価を行った。

実施例1〜7で得られた試験用塗装板の評価結果を表1に示し、比較例1〜4で得られた試験用塗装板の評価結果を表2に示す。

本発明の被覆物品は、上述の構成を有するので、耐摩耗性及び耐食性の両方に優れるものであり、調理器具や厨房用品等の被覆物品に特に好適に用いることができる。

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