粘接着層及び粘接着シート

申请号 JP2013120254 申请日 2013-06-06 公开(公告)号 JP5644896B2 公开(公告)日 2014-12-24
申请人 大日本印刷株式会社; 发明人 谷口 貴久; 貴久 谷口; 健太郎 星; 健太郎 星;
摘要
权利要求
  • 補修用又は補強用のシートをコンクリートに粘接着させるために使用する粘接着層であって、
    ガラス転移温度が15℃以下 であって、メタクリレート−アクリレート−メタクリレートからなるトリブロック共重合体であるアクリル系樹脂を含むとともに、
    液状エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、及び
    潜在性の硬化剤、又は紫外線や電子線を照射することにより塩基を発生する硬化触媒とメルカプト基を有する硬化剤もしくはフェノール性水酸基を有する硬化剤をさらに含み、
    粘着力が0.4N/25mm以上6.3N/25mm以下の範囲内であることを特徴とする粘接着層。
  • 前記アクリル系樹脂の含有量が、前記アクリル系樹脂、前記液状エポキシ樹脂及び前記固形エポキシ樹脂の合計量に対して、4質量%以上、50質量%以下である、請求項 に記載の粘接着層。
  • 前記液状エポキシ樹脂の含有量が、前記液状エポキシ樹脂及び前記固形エポキシ樹脂の合計量に対して、20質量%以上、80質量%以下である、請求項1又は2に記載に粘接着層。
  • 補修用又は補強用のシートと、
    前記補修用又は補強用のシートの片面に設けられた粘接着層であって、
    ガラス転移温度が15℃以下 であって、メタクリレート−アクリレート−メタクリレートからなるトリブロック共重合体であるアクリル系樹脂を含むとともに、
    液状エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、及び
    潜在性の硬化剤、又は紫外線や電子線を照射することにより塩基を発生する硬化触媒とメルカプト基を有する硬化剤もしくはフェノール性水酸基を有する硬化剤をさらに含み、
    粘着力が0.4N/25mm以上6.3N/25mm以下の範囲内である粘接着層と、を有することを特徴とする粘接着シート。
  • 前記粘接着層が、前記補修用又は補強用のシートの両面に設けられている、請求項4に記載の粘接着シート。
  • 前記粘接着層において、前記補修用又は補強用のシートが設けられていない側の面に剥離フィルムが設けられている、請求項4又は5に記載の粘接着シート。
  • 说明书全文

    本発明は、補修用又は補強用のシートをコンクリートに貼り合わせるのに用いる粘接着層、及びその粘接着層を有する粘接着シートに関する。

    近年、コンクリート(コンクリート構造物ともいう。)の耐久性や安全性の観点から、コンクリートの補修や補強が必要に応じて行われている。 コンクリートの補修又は補強は、通常、補修又は補強が必要な部分に接着剤や塗料等を数回にわたり塗り重ねたり、シートを補修用又は補強用として接着させたりすることにより行われている。 補修用又は補強用のシートは、、酸素、炭酸ガス、又は塩化物イオン等のコンクリート劣化因子がコンクリートに浸入するのを防ぐとともに、劣化して強度が低下しているコンクリートを補強するために好ましく使用される。 こうしたコンクリートの補修又は補強に関する技術は従来から種々提案されている。

    特許文献1には、樹脂フィルムを有する中間層とその両面に接着樹脂を介して積層された布帛材料からなる表面層とを備えたコンクリート補修用シートを、補修すべきコンクリート面に施工用接着剤で貼付し、その後、貼付したコンクリート補修用シートのコンクリート面とは反対側の表面層に塗料を塗布するコンクリートの補修方法に関する技術が提案されている。 この技術によれば、コンクリート面と接する表面層は表面積が大きい布帛材料からなるから、コンクリート面が垂直であったり天井面であったりしても、施工用接着剤が完全に硬化する前からコンクリート補修用シートが落下したり剥がれたりしにくく、また、施工品質も高いとのことである。 また、コンクリート補修用シートにより施工用接着剤と塗料が完全に遮断されているため、施工用接着剤の硬化を待って塗料を塗布することなく、施工時間が短縮可能であるとのことである。

    特許文献2には、保護層と接着剤塗布層とを接着するとともに接着剤塗布層のコンクリート構造物への接着面に粘着剤又はホットメルト型接着剤である接着剤層を形成したコンクリート構造物の補修、補強、劣化防止用シートに関する技術が提案されている。 この技術によれば、この補修、補強、劣化防止用シートを現場で補修が必要な部分に貼付することで、コンクリートの剥落を防止するための補修や補強の作業を軽減、短縮化、及び品質の安定化をなし得るとのことである。

    特開2010−144360号公報

    特開2004−27718号公報

    しかしながら、特許文献1で提案された技術では、コンクリートの補修作業時に、施工用接着剤をコンクリート又はコンクリート補修用シートに塗布して用いるので、作業性が悪いという問題があった。 また、施工用接着剤の塗布量を一定にできないので、補修作業の再現性が低くなるという問題があった。

    また、特許文献2で提案された技術では、接着剤層が粘着剤又はホットメルト型接着剤であるので、例えば、接着剤層が粘着剤である場合は、接着性が不十分であるという問題があった。 また、接着剤層がホットメルト型接着剤である場合は、接着時の加熱により接着剤が軟化するため、コンクリート面が垂直面であったり天井面であったりすると、シートをコンクリート面に接着させるのが難しいという問題があった。

    本発明は、上記した従来の問題等を鑑みてなされたものであって、その目的は、補修用又は補強用のシートをコンクリート等の被着体に貼り合わせる際に、そのシートを被着体に仮固定でき、被着体の補修又は補強を容易に行うことができる粘接着層、及びその粘接着層を有する粘接着シートを提供することにある。

    (1)上記課題を解決するための本発明に係る粘接着層は、ガラス転移温度が15℃以下のアクリル系樹脂を含むとともに、液状エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、及び硬化剤をさらに含むことを特徴とする。

    本発明に係る粘接着層は、補修用又は補強用のシートをコンクリートに粘接着させるために使用することが好ましい。

    本発明に係る粘接着層において、前記アクリル系樹脂の含有量が、前記アクリル系樹脂、前記液状エポキシ樹脂及び前記固形エポキシ樹脂の合計量に対して、4質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。

    本発明に係る粘接着層において、前記液状エポキシ樹脂の含有量が、前記液状エポキシ樹脂及び前記固形エポキシ樹脂の合計量に対して、20質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。

    本発明に係る粘接着層において、前記液状エポキシ樹脂及び前記固形エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることが好ましい。

    (2)上記課題を解決するための本発明に係る粘接着シートは、上記本発明に係る粘接着層と、前記粘接着層の片面に設けられた剥離フィルムとを有することを特徴とする。

    本発明に係る粘接着シートにおいて、前記剥離フィルムが設けられていない側の面に、他の剥離フィルムが設けられていてもよい。

    (3)上記課題を解決するための本発明に係る粘接着シートは、上記本発明に係る粘接着層と、前記粘接着層の片面に設けられた補修用又は補強用のシートとを有することを特徴とする。

    本発明に係る粘接着シートにおいて、前記補修用又は補強用のシートが設けられていない側の面に、剥離フィルムが設けられていてもよい。

    本発明に係る粘接着層及び粘接着シートによれば、粘接着層が有する粘着性能と接着性能により、補修用又は補強用のシートをコンクリート等の被着体に貼り合わせる際に、補修用又は補強用のシートを被着体に仮固定でき、被着体の補修又は補強を容易に行うことができる。

    本発明に係る粘接着層の例(A)、及び、粘接着層と剥離フィルムとを備えた粘接着シートの例(B)(C)を示す模式的な断面図である。

    本発明に係る粘接着層と補修用又は補強用のシートとを備えた粘接着シートの例を示す模式的な断面図である。

    本発明に係る粘接着層と補修用又は補強用のシートとを備えた粘接着シートの別の例を示す模式的な断面図である。

    以下、本発明に係る粘接着層及び粘接着シートの実施の形態について詳細に説明する。 本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。

    本発明に係る粘接着層2は、ガラス転移温度が15℃以下のアクリル系樹脂を含むとともに、液状エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、及び硬化剤をさらに含むことに特徴がある。 この粘接着層2は、図1(A)に示すように、それ自体で本発明を構成するとともに、図1(B)(C)、図2及び図3に示すように、その粘接着層2を備えた粘接着シート10(10A〜10G)も本発明を構成する。 こうした粘接着層2及びその粘接着層2を備えた粘接着シート10は、補修用又は補強用のシートを粘接着層2を介してコンクリート等の被着体に貼り合わせる際に、補修用又は補強用のシートを粘接着層2を介して被着体に仮固定でき、被着体の補修又は補強を容易に行うために使用することができる。

    粘接着層2と粘接着シート10の構成要素をさらに詳しく説明する。 補修用又は補強用のシートを貼り合わせる被着体としては、コンクリートが好ましく適用されるが、それ以外の補修又は補強するもの、例えばモルタルや繊維強化セメント等であってもよい。 なお、以下では、被着体としてコンクリートの場合で説明している。

    [粘接着層]
    粘接着層2は、ガラス転移温度が15℃以下のアクリル系樹脂を含むとともに、液状エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、及び硬化剤をさらに含む。 こうした樹脂成分を含む粘接着層2は、補修用又は補強用のシートを仮固定可能な粘着を有している。 その結果、補修用又は補強用のシートを粘接着層2を介してコンクリートに仮固定することができる。 また、粘接着層2は一時的に接着させる粘着性能を有するので、補修用又は補強用のシートを粘接着層2を介してコンクリートに仮固定した後に、そのシートを剥がして再び固定することも可能である。 また、こうした樹脂成分を含む粘接着層2は、加熱や紫外線照射等の処理によって粘接着層2に接着性能を付与することができるので、仮固定した補修用又は補強用のシートを粘接着層2を介してそのままコンクリートに強固に接着させることもできる。 さらに、粘接着層2は、粘着性能と接着性能を有するので、コンクリート面が垂直面であったり天井面であったりしても、補修用又は補強用のシートを粘接着層2を介してコンクリートに仮固定又は固定することができる。

    粘接着層2は、一方の面がコンクリートに粘接着するように貼り付けられ、他方の面には補修用又は補強用のシートが貼り付けられる。 仮固定又は固定は、コンクリートに対する粘接着層2の仮固定又は固定であってもよいし、粘接着層2に対する補修用又は補強用のシートの仮固定又は固定であってもよい。 本願において、「粘接着」とは、粘着性能と接着性能を併せ持つことを意味し、粘着は一時的な接着現象を意味するものとして用いられるのに対し、接着は永久的な接着現象を意味するものとして用いられる点で区別されることがある(岩波書店 理化学辞典第5版)。 粘接着層2は、貼り合わされたままでは粘着状態であるので、貼り合わされた後の粘接着層2を加熱や紫外線照射等して硬化させ、粘接着層2を接着状態に変化させる。 このとき、粘接着層2を硬化させて接着状態にする手段としては、加熱、紫外線照射、電子線照射等を挙げることができる。 なお、これらの硬化手段を、以下では「加熱等」ということがある。

    粘接着層2は、粘接着層形成用組成物を層状又はシート状にしたものであり、通常、後述する粘接着シート10のように剥離フィルム1上に設けられ、粘接着層2をコンクリートに貼り付けた後、又は、粘接着層2に補修用又は補強用のシート3を貼り付けた後に剥離フィルム1を剥がして用いられる。 なお、粘接着層形成用組成物とは、粘接着層2を塗布等によって形成する樹脂組成物のことである。

    (アクリル系樹脂)
    アクリル系樹脂は、粘接着層2に実用可能な粘着力を付与するように作用し、粘接着層2を形成する際の塗布性及び成膜性を向上させるように作用する。 アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が15℃以下のものである。 こうしたアクリル系樹脂であれば特に限定されず、例えば、ガラス転移温度が15℃以下のアクリル酸エステル共重合体を用いることができる。 ガラス転移温度が15℃以下のアクリル酸エステル共重合体のモノマー成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸エステルモノマー;マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、n−ブトキシ−N−メチロールアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ソーダ、ジアセトンアクリルアミド、アクリル酸グリシジル等の官能基含有モノマー;スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチルビニルエーテル等のモノマー;等を挙げることができる。 アクリル酸エステル共重合体は、これらのモノマー成分の共重合体である。

    これらのモノマー成分の中でも、官能基としてエポキシ基、水酸基、カルボキシル基又はニトリル基等を持つ化合物をモノマー成分とするアクリル酸エステル共重合体が好ましい。 このアクリル酸エステル共重合体は、コンクリートへの粘着力をより向上させることができる。 具体的には、エチルアクリレート−ブチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体、エチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。 なお、本願において、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の「アクリル酸」には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の「メタクリル酸」を含む。

    アクリル酸エステル共重合体としては、ブロック共重合体を好ましく挙げることができ、中でも、メタクリレート−アクリレート−メタクリレートからなるトリブロック共重合体を好ましく挙げることができる。 ブロック共重合体は、コンクリートへの実用的な粘着力の付与と粘接着層2の耐熱性の向上の観点から好ましく用いられる。 トリブロック共重合体を構成するメタクリレートとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジジル等を挙げることができる。 また、トリブロック共重合体を構成するアクリレートとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジジル等を挙げることができる。 メタクリレート−アクリレート−メタクリレートからなるトリブロック共重合体の具体例としては、例えば、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートトリブロック共重合体を挙げることができる。

    ガラス転移温度が15℃以下のアクリル系樹脂は、粘接着層2に実用的な粘着性能を付与することができる。 アクリル系樹脂のガラス転移温度の下限値は特に限定されないが、実用的な粘着力を付与する観点からは、−45℃以上、15℃以下の範囲のガラス転移温度であることが好ましい。 ガラス転移温度が15℃を超えると、実用的な粘着性能を示さないことがある。 なお、実用的又は実用可能な粘着性能とは、後述の実施例で行う粘着力測定で測定した粘着力(N/25mm)が、0.4N/25mm以上、5N/25mm以下、好ましくは4N/25mm以下程度であることが好ましい。 ガラス転移温度は、例えば、固体粘弾性アナライザー(ティー・エイ・インスツルメンツ社製、型番:RSA−III)を用い、JIS K7244−1に準拠した動的粘弾性測定法で測定できる。 ガラス転移温度はTg(℃)で表される。

    アクリル系樹脂は、質量平均分子量(Mw)が15万以上、150万以下の範囲内であることが好ましく、40万以上、120万以下の範囲内であることがより好ましい。 この範囲内のアクリル系樹脂を用いることにより、粘接着層2の初期粘着力の調整を容易に行うことができるとともに、粘接着層2の凝集力を高くすることもできる。 質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。

    アクリル系樹脂の含有量は、アクリル系樹脂、液状エポキシ樹脂及び固形エポキシ樹脂の合計量に対して、4質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。 含有量をこの範囲内にすることにより、粘接着層2に、実用に適した粘着力と高い接着力を付与することができる。 アクリル系樹脂の含有量が4質量%未満の場合は、粘接着層2の粘着力が低くなり、コンクリートに貼り付けることができないことがあったり、その粘接着層2に補修用又は補強用のシートを貼り付けることができないことがあったりする。 さらに、粘接着層2を形成するための粘接着層形成用組成物の塗布性と成膜性が低下し、粘接着層2を形成できないことがある。 一方、アクリル系樹脂の含有量が50質量%を超えると、加熱や紫外線照射等して硬化させた後の粘接着層2の接着力が低下することがある。 アクリル系樹脂のより好ましい含有量は、5質量%以上、34質量%以下である。

    粘接着層2は、上記したように、ガラス転移温度が15℃以下のアクリル系樹脂を含むので、例えば0.4N/25mm以上、5N/25mm以下の実用に適した範囲の粘着力を示す。 そのため、例えば、コンクリート面が垂直面であったり天井面であったりしても、粘接着層2を貼り付け、さらにその粘接着層2を介して補修用又は補強用のシートを貼り付けることができる。 また、一度貼り合わせた粘接着層2を剥がして再度貼り付けることもでき、さらにその粘接着層2を介して貼り付けた補修用又は補強用のシートを剥がして再度貼り付けることもできる。

    また、粘接着層2に含まれるアクリル系樹脂は、粘接着層2中の液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂の濃度を希釈するように作用する。 その結果、アクリル系樹脂は、これらのエポキシ樹脂の硬化反応を遅くさせるように作用するので、粘接着層2のポットライフを向上させることができ、粘接着層2の保存安定性を向上させることができる。

    (液状エポキシ樹脂)
    液状エポキシ樹脂は、粘接着層2に実用可能な粘着力と高い接着力を付与するように作用する。 液状エポキシ樹脂は、常温で液状のエポキシ樹脂であれば特に限定されず、各種のエポキシ樹脂を用いることができる。 例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、変性フェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。

    これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂は、機械的強度、硬化性、耐熱性、接着性等を向上させることができ、好ましく用いることができる。 特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。 このビスフェノールA型エポキシ樹脂において、主鎖のビスフェノール骨格を1以上、3以下含むものは常温で液状であるので好ましく用いられる。 なお、本願において、常温とは23℃±2℃を意味する。

    液状エポキシ樹脂は、質量平均分子量(Mw)が300以上、2000以下であることが好ましい。 この範囲内の液状エポキシ樹脂は、アクリル系樹脂との相溶性が良く、好ましく用いることができる。 また、液状エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、100以上、800未満であることが好ましい。 この範囲内のエポキシ当量の液状エポキシ樹脂は、加熱や紫外線照射等して硬化させた後の粘接着層2に高い耐久性を付与することができ、高い接着力を付与することができる点で好ましく用いることができる。 なお、エポキシ当量は、JIS K7236に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。

    液状エポキシ樹脂の含有量は、液状エポキシ樹脂及び固形エポキシ樹脂の合計量に対して、20質量%以上、80質量%以下であることが好ましく、25質量%以上、75質量%以下であることがより好ましい。 含有量をこの範囲内にすることにより、粘接着層2に、実用に適した粘着力と高い接着力を付与することができる。 液状エポキシ樹脂の含有量が20質量%未満の場合は、粘接着層2の粘着力が低くなり、コンクリートに貼り付けることができないことがあったり、その粘接着層2に補修用又は補強用のシートを貼り付けることができないことがあったりする。 液状エポキシ樹脂の含有量が80質量%を超えると、粘接着層2の凝集力が低くなり易く、粘接着層2の剥離性が低下したり、加熱や紫外線照射等して硬化させた後の粘接着層2の接着力が低下したりすることがある。

    (固形エポキシ樹脂)
    固形エポキシ樹脂は、加熱や紫外線照射等して硬化させた後の粘接着層2に高い接着力を付与するように作用するとともに、粘接着層2に高い凝集力を付与するように作用する。 固形エポキシ樹脂は、常温で固形状のエポキシ樹脂であれば特に限定されず、各種のエポキシ樹脂を用いることができる。 例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂及びビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。

    これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂は、機械的強度、硬化性、耐熱性、接着性等の観点からより好ましく用いることができ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は特に好ましく用いることができる。 ビスフェノールA型エポキシ樹脂の場合、通常、主鎖のビスフェノール骨格が2以上、10以下のものは、常温で固体である。

    固形エポキシ樹脂は、質量平均分子量(Mw)が300以上、5000以下であることが好ましい。 この範囲内の固形エポキシ樹脂は、アクリル系樹脂との相溶性が良く、好ましく用いることができる。 質量平均分子量のより好ましい範囲は、800以上、3000以下であり、粘接着層2に高い接着力と高い耐久力等を付与することができる。 また、固形エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、100以上、2200以下であることが好ましい。 この範囲内のエポキシ当量の固形エポキシ樹脂は、加熱や紫外線照射等して硬化させた後の粘接着層2に高い耐久性を付与することができ、高い接着力を付与することができる点で好ましく用いることができる。

    固形エポキシ樹脂の含有量も、液状エポキシ樹脂の含有量と同様、液状エポキシ樹脂及び固形エポキシ樹脂の合計量に対して、20質量%以上、80質量%以下であることが好ましく、25質量%以上、75質量%以下であることがより好ましい。 含有量をこの範囲内にすることにより、粘接着層2に、実用に適した粘着力と高い接着力を付与することができる。 固形エポキシ樹脂の含有量が20質量%未満の場合は、粘接着層2の凝集力が低くなり易く、粘接着層2の剥離性が低下したり、加熱や紫外線照射等して硬化させた後の粘接着層2の接着力が低下したりすることがある。 固形エポキシ樹脂の含有量が80質量%を超えると、粘接着層2の粘着力が低くなり、コンクリートに貼り付けることができないことがあったり、その粘接着層2に補修用又は補強用のシートを貼り付けることができないことがあったりすることがある。

    本発明では、粘接着層2に液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とを含有させているが、これらのエポキシ樹脂は熱硬化性の樹脂成分である。 そのため、粘着性能を有する粘接着層2を加熱や紫外線照射等して硬化させた後は、粘接着層2が高い接着力を示すので、粘接着層2をコンクリートに強固に接着させることができるとともに、補修用又は補強用のシートを強固に接着させることができる。 また、耐熱性も高くなる。 こうして構成された粘接着層2は加熱や紫外線照射等により硬化させて高い接着力を付与することができるので、コンクリート面が垂直面であったり天井面であったりしても、仮固定した後、又は貼り直しした後に再度仮固定した後の粘接着層2に加熱や紫外線照射等することにより、その粘接着層2に高い接着性能を付与することができる。 その結果、粘接着層2の仮固定、本固定等の施工作業が容易で、補修用又は補強用のシートを高い強度で貼り合わせることができる。

    (硬化剤)
    硬化剤は、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とを硬化させることができるものであれば特に限定されない。 硬化剤としては、熱を加えて粘接着層2を硬化させる硬化剤であっても、紫外線や電子線を照射して粘接着層2を硬化させる硬化剤であってもよい。 また、紫外線や電子線を照射することにより塩基を発生する硬化触媒を併用してもよい。

    熱を加えて粘接着層2を硬化させる硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等を挙げることができる。 こうした硬化剤の中でも、潜在性の硬化剤を用いることが好ましい。 潜在性の硬化剤とは、ある一定の温度まではエポキシ基と反応しないが、加熱により活性化温度に達するとエポキシ基と反応する硬化剤のことである。 潜在性の硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂と反応してエポキシ樹脂を硬化させることができる酸性又は塩基性化合物の中性塩や錯体、ブロック化合物、高融点体、及びマイクロカプセル封入物等の硬化剤を挙げることができる。 より具体的には、例えば、ジシアンジアミド、ヒドラジド系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等を挙げることができる。 潜在性の硬化剤を用いることにより、粘接着層2のポットライフを向上できるので、加熱する前の未硬化の粘接着層2の保存安定性を向上させることができる。

    熱を加えて粘接着層2を硬化させる硬化剤の含有量は、その硬化剤の種類によっても異なる。 イミダゾール系硬化剤等の触媒反応系の硬化剤を用いた場合の含有量は、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂の合計量に対して、1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。 また、フェノール系硬化剤や酸無水物系硬化剤等のエポキシ樹脂と当量反応系の硬化剤を用いた場合の含有量は、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂のエポキシ当量に対して、0.8当量以上、1.2当量以下であることが好ましい。

    紫外線や電子線を照射して粘接着層2を硬化させる硬化剤は、例えば、光紫外線や電子線の照射により、さらに必要に応じて加熱を加えることにより、カチオン重合を開始させる物質を放出するものである。 カチオン重合を開始させる硬化剤としては、例えば、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等を挙げることができる。 これらの硬化剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。 そうした硬化剤の市販品としては、例えば、サンエイド SI−60L(三新化学株式会社製)、サンエイド SI−80L(三新化学株式会社製)、サンエイド SI−100L(三新化学株式会社製)、CI−2064(日本曹達株式会社製)、イルガキュア 261(チバスペシャリティーケミカルズ社製)、アデカオプトマー SP−150(ADEKA社製)、アデカオプトマー SP−170(ADEKA社製)等を好適に挙げることができる。

    硬化剤として、メルカプト基を有する硬化剤(ポリチオール系硬化剤)又はフェノール性水酸基を有する硬化剤と、紫外線や電子線を照射することにより塩基を発生する硬化触媒とを併用することもできる。 こうした硬化触媒としては、光塩基発生剤を用いることが好ましい。 こうした光塩基発生剤は、光照射前には塩基性がほとんどない硬化触媒であるので、層形成が可能になる。

    光塩基発生剤としては、例えば、下記化学式で表わされ、且つ紫外線や電子線の照射と、加熱とにより塩基を発生するものであることが好ましい。 下記化学式中、R 及びR は、それぞれ、独立に水素又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。 R 及びR は、それらが結合して環状構造を形成していてもよい。 ただし、R 及びR のうち、少なくとも一つは1価の有機基である。 R 、R 、R 及びR は、それぞれ、水素、ハロゲン又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。 R 、R 、R 及びR は、それらの二つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。

    こうした光塩基発生剤は、紫外線や電子線等の電磁波が照射されるだけでも塩基を発生するが、適宜加熱をすることにより、塩基の発生が促進される。 そのため、紫外線や電子線等の電磁波の照射と加熱とを組み合わせることにより、少ない電磁波照射量で、効率的に塩基を発生することができる。 なお、光塩基発生剤とは、常温常圧の通常の条件下では活性を示さないが、外部刺激として紫外線や電子線等が加えられると、塩基を発生する剤をいう。 光塩基発生剤は、上記特定構造を有するため、電磁波が照射されることにより、化学式中の(−CH=CH−C(=O)−)部分がシス体へと異性化し、さらに加熱によって環化し、塩基であるアミン、NHR を生成する。

    紫外線や電子線を照射して粘接着層2を硬化させる硬化剤が光照射によりカチオン重合を開始させる硬化剤である場合の含有量は、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂の合計量に対して、1質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。 また、フェノール系硬化剤や酸無水物系硬化剤等のエポキシ樹脂と当量反応系の硬化剤を用いた場合の含有量は、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂のエポキシ当量に対して、0.8当量以上、1.2当量以下であることが好ましい。 また、光塩基発生剤等のエポキシ樹脂の当量反応系での硬化触媒を併用した場合の含有量は、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂の合計量に対して、0.5質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。

    なお、粘接着層2に含まれる構成原料の種類と含有量は、例えば、粘接着層2をガスクロマトグラフィー質量分析法することにより特定することができる。

    (その他)
    粘接着層2は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、例えば、コンクリートと粘接着層2との密着性を向上させるためのカップリング剤や、粘接着層形成用組成物の塗膜性を向上させるためのレベリング剤等の各種添加剤等を含んでいてもよい。 また、粘着力を高めるために粘着付与剤を含んでいてもよく、せん断強度を向上させるためにフィラー等を含んでいてもよい。

    粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、変成ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、芳香族変成テルペン系樹脂、C5系又はC9系の石油系樹脂及びクマロン樹脂等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。

    フィラーとしては、例えば、シリカ、クレー、ガラスバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン等の無機フィラー、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコンビーズ等の有機フィラー、ガラス、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、セルロース、アセテート等で形成される単繊維等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。

    粘接着層2の厚さは、150μm以上、500μm以下が好ましく、150μm以上、300μm以下がより好ましい。 この範囲内の厚さの粘接着層2は、コンクリートとの間の粘着力や、補修用又は補強用のシートとの間の粘着力を有し、さらに、加熱や紫外線照射等して硬化させた後の高い接着力を示すことができる。 粘接着層2の厚さが150μm未満である場合は、粘接着層2が薄くなり、粘着力と接着力が不十分になることがある。 一方、接着層2の厚さが500μmを超えると、粘接着層2を加熱や紫外線照射等した後の硬化が十分進行しなかったり、硬化時間が長くなったりすることがある。

    粘接着層2は、粘接着層形成用組成物を基材上に塗布し、塗布後の粘接着層形成用組成物を乾燥して形成することができる。 粘接着層形成用組成物は、上記したガラス転移温度が15℃以下のアクリル系樹脂を含み、さらに液状エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、及び硬化剤を含み、さらに必要に応じて上記した各種の添加剤や溶剤等を含む。 溶剤は、粘度の調整のために必要に応じて任意の配合量で含有させることができる。 そうした溶剤としては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;又はこれらの混合物を挙げることができる。

    基材は、粘接着層2を形成することができるものであれば特に限定されないが、易剥離処理された剥離フィルム1であることが好ましい。 剥離フィルム1については、後述の粘接着シート10の欄で詳しく説明する。

    粘接着層形成用組成物は、上記した各原料を配合して撹拌し、溶解させて調製される。 撹拌に用いる撹拌機は特に限定されず、通常の混練分散機、例えば、二本ロールミル、三本ロールミル、ペブルミル、トロンミル、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、高速ミキサー、リボンブレンダー、コニーダー、インテンシブミキサー、タンブラー、ブレンダー、デスパーザー、ホモジナイザー、及び超音波分散機等を適用できる。

    粘接着層形成用組成物の塗布方法も特に限定されない、印刷による形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。 コーティングによる方法としては、例えば、ロールコート、リバースコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、グラビアコート等を挙げることができる。

    塗布された後の粘接着層形成用組成物の乾燥は、粘接着層形成用組成物中に含まれている溶剤を十分揮発させることができるとともに、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂の硬化が過度に促進されて粘着性能が低下しない程度の条件で行うことが好ましい。 乾燥条件としては、通常、50℃以上、100℃以下の温度で、2分以上、20分以下の間保持することにより行う。

    以上説明したように、粘接着層2は、ガラス転移温度が15℃以下のアクリル系樹脂と、液状エポキシ樹脂とを含むので、粘着力を有している。 その結果、その粘接着層2をコンクリートに仮固定したり、その粘接着層2に補修用又は補強用のシートを仮固定したりすることができる。 また、そうした粘接着層2や補修用又は補強用のシートを仮固定した後に剥がして再び仮固定又は固定することもできる。 また、粘接着層2は、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とを含むので、加熱や紫外線照射等した後に高い接着力を付与することができる。 その結果、粘接着層2をコンクリートに強固に接着させ、また、粘接着層2に補修用又は補強用のシートを強固に接着させることができる。 また、粘接着層2はこうした粘着力や接着力を発揮するので、コンクリート面が垂直面であったり天井面であったりしても、粘接着層2をコンクリートに容易に仮固定又は固定することができる。 また、シート状の粘接着層2、又は粘接着層2を備えた粘接着シート10を用いるので、コンクリートへの補修や補強の施工現場に従来のような接着剤を用意する必要がなく、施工時の作業負荷を低減させることができる。 粘接着層2又はその粘接着層2を備えた粘接着シート10は、コンクリートの補修用又は補強用として好ましく用いることができ、コンクリートを補修又は補強することができる。

    [粘接着シート]
    粘接着シート10(10A,10B,10C)は、例えば図1(B)(C)及び図2(A)に示すように、上記した粘接着層2と、その粘接着層2の片面(S1又はS2)に設けられた剥離フィルム1とを有する。 この粘接着シート10は、剥離フィルム1が片面S2のみに設けられている粘接着シート10A,10Cであってもよいし、剥離フィルム1,1'が両面S1,S2に設けられている粘接着シート10Bであってもよい。

    また、粘接着シート10(10C,10D)は、例えば図2(A)(B)に示すように、上記した粘接着層2と、その粘接着層2の片面S2に設けられた補修用又は補強用のシート3とを有する。 この粘接着シート10は、粘接着層2の片面S2に補修用又は補強用のシート3が設けられ、他の面S1に剥離フィルム1が設けられている粘接着シート10Cであってもよいし、粘接着層2の片面S2に補修用又は補強用のシート3が設けられ、他の面S1には何も設けられていない粘接着シート10Dであってもよい。

    また、粘接着シート10(10E,10F,10G)は、例えば図3(A)(B)(C)に示すように、図2(A)(B)の粘接着シート10C,10Dを構成する補修用又は補強用のシート3の上にさらに粘接着層2'が設けられた態様である。 すなわち、図3に示す粘接着シート10は、上記した粘接着層2と、その粘接着層2の片面S2に設けられた補修用又は補強用のシート3と、その補修用又は補強用のシート3上に設けられた粘接着層2'とを有する。 粘接着層2'上には、図3(A)(C)に示すように剥離フィルム1'が設けられていてもよいし、図3(B)に示すように剥離フィルムが設けられていなくてもよい。 「補修用又は補強用のシート3の上」とは、補修用又は補強用のシート3の粘接着層2が設けられた側の反対面上のことである。 なお、図3中、符号S2'は、粘接着層2'の補修用又は補強用のシート側の面であり、符号S1'は、粘接着層2'の補修用又は補強用のシート側とは反対側の面である。

    粘接着層2'は、上記した粘接着層2と同じ成分で構成されてもよいし、異なる成分で構成されてもよい。

    <剥離フィルム>
    剥離フィルム1は、図1及び図2に示すように、粘接着層2の片面(S1又はS2)又は両面(S1及びS2)に設けられている。 この剥離フィルム1は、粘接着層2の片面(S1又はS2)又は両面(S1及びS2)を覆って、使用時まで粘接着層2を保護するように作用する。 剥離フィルム1は、図1(B)に示すように、粘接着層2の面S1,S2のうち、コンクリートに貼り付けられる側の面S1の反対面S2に設けられていてもよいし、図1(C)に示すように、その面S2とコンクリートに貼り付けられる側の面S1との両方に設けられていてもよい。

    また、図2(A)及び図3(A)に示すように、粘接着層2の面S1,S2のうち、コンクリートに貼り付けられる側の面S1に剥離フィルム1が設けられていてもよい。 また、図3(A)(C)に示すように、補修用又は補強用のシート3上に粘接着層2'が設けられた場合は、その粘接着層2'上に剥離フィルム1'が設けられていてもよい。

    図1(B)に示す態様では、例えば一般的な粘着テープのように、ロール状に巻かれた粘接着シート10Aにすることができる。 こうした粘接着シート10Aは、コンクリートに貼り付ける側の面S1をコンクリートに貼り付け、その後に反対側の面S2に設けられた剥離フィルム1を剥がし、露出した粘接着層2に補修用又は補強用のシートを貼り付けて施工することができる。 一方、図1(C)に示す態様では、例えば枚葉状の粘接着シート10Bにすることができる。 こうした粘接着シート10Bは、コンクリートに貼り付ける側の面S1の剥離フィルム1'を剥がし、露出した粘接着層2をコンクリートに貼り付け、その後に反対側の面S2に設けられた剥離フィルム1を剥がし、露出した粘接着層2に補修用又は補強用のシートを貼り付けて施工することができる。 また、この粘接着シート10Bでは、コンクリートに貼り付ける側の面S1の反対面S2の剥離フィルム1を剥がし、露出した粘接着層2に補修用又は補強用のシートを貼り付け、その状態で、コンクリートに貼り付ける側の面S1の剥離フィルム1'を剥がし、露出した粘接着層2をコンクリートに貼り付けて施工することもできる。 なお、以下では、剥離フィルム1と剥離フィルム1'をあわせて「剥離フィルム1」と表す。

    剥離フィルム1の粘接着層側の表面は、易剥離処理が施されていることが好ましい。 易剥離処理をした剥離フィルム1は、例えば粘接着シート10が備える粘接着層2をコンクリートに貼り付けた後に、粘接着層2から容易に剥がすことができる。

    剥離フィルム1は、粘接着層2の表面に剥離可能に設けられて、粘接着層2を保護することができる程度の強度や柔軟性を有するものであれば特に限定されず、各種のフィルムを用いることができる。 剥離フィルム1の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂及びポリウレタン系樹脂等の公知の樹脂を挙げることができる。 剥離フィルム1は、これらの樹脂を単独で用いた合成樹脂フィルムであってもよいし、2種以上の樹脂を組み合わせて用いた合成樹脂フィルムであってもよいし、単独又は組み合わせて用いた合成樹脂フィルムを積層した複合フィルムであってもよい。

    中でも、ポリエステル系樹脂やポリカーボネート系樹脂を用いた剥離フィルム1は、透明性、耐熱性、寸法安定性、剛性、柔軟性、積層適性、コスト等の観点から好ましく用いられる。 ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等を挙げることができる。 特に、ポリエチレンテレフタレートは、取り扱い易さ、コスト等の観点から好ましい。

    易剥離処理は、粘接着層2から剥離フィルム1を容易に剥がすことができるように、剥離フィルム1の表面に施されていることが好ましい。 易剥離処理としては、例えば易剥離層(図示しない)が設けられていることが好ましい。 易剥離層は、剥離剤を塗布して設けられる。 剥離剤は特に限定されず、各種のものを適用できる。 例えば、水溶性樹脂、親水性樹脂、ワックス類、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。 剥離剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコート、グラビアコート、スプレーコート等の塗布方法を挙げることができる。

    易剥離層を形成する側の剥離フィルム1の表面は、その易剥離層の接着性を高めるための易接着処理が予め施されていることが好ましい。 そうした易接着処理としては、剥離剤の濡れ性が向上する処理であることが好ましい。 そうした処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理等を挙げることができる。

    剥離フィルム1の製造方法は特に限定されず、例えば、溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法等の方法で剥離フィルム1を製造できる。 製造された剥離フィルム1の片面(S1又はS2)又は両面(S1及びS2)には、上記した易剥離処理や易接着処理が必要に応じて施されて剥離性のよい剥離フィルム1を製造することができる。 こうした剥離フィルム1の厚さは特に限定されないが、例えば、5μm以上、200μm以下の厚さを例示できる。

    剥離フィルム1として市販品を用いることもでき、例えば、片面にシリコーン系剥離剤による易剥離処理が施されている厚さ38μmのポリエステルフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:SP−PET−01)等を例示できる。

    <補修用又は補強用のシート>
    補修用又は補強用のシート3は、後述の補修又は補強方法の欄で説明するように、粘接着層2や粘接着シート10とは別シートとして使用される場合もあるが、ここでは、粘接着シート10の構成要素として一体に設けられている態様について説明する。

    補修用又は補強用のシート3は、図2(A)(B)及び図3(A)(B)(C)に示すように、粘接着シート10を構成する粘接着層2の片面S2に必要に応じて設けることができる。 その面S2は、図2(A)等に示すように、粘接着層2の面S1,S2のうち、コンクリートに貼り付けられる側の面S1の反対側の面である。 コンクリートに貼り付けられる側の面S1には、図2(A)及び図3(A)に示すように剥離フィルム1が設けられていてもよいし、図2(B)及び図3(B)(C)に示すように剥離フィルムが設けられていなくてもよい。 なお、補修用又は補強用のシート3は、例えば、熱ラミネート法等の公知の貼り付け手段により粘接着層2に設けることができる。

    図2(A)及び図3(A)に示す態様では、例えば枚葉状の粘接着シート10C,10Eにすることができる。 こうした粘接着シート10C,10Eは、コンクリートに貼り付ける側の面S1の剥離フィルム1を剥がし、露出した粘接着層2をコンクリートに貼り付けて施工することができる。 この粘接着シート10C,10Eには、予め補修用又は補強用のシート3が粘接着層2に粘着しているので、簡易に施工することができる。 一方、図2(B)及び図3(B)(C)に示す態様では、例えばロール状に巻かれた粘接着シート10D,10Gにすることができる。 こうした粘接着シート10D,10Gは、コンクリートに貼り付ける側の面S1をコンクリートに貼り付けて施工することができる。 この粘接着シート10D,10Gにも、予め補修用又は補強用のシート3が粘接着層2に粘着しているので、簡易に施工することができる。

    粘接着シート10(10E,10F,10G)は、粘接着層2の片面S2に補修用又は補強用のシート3が設けられ、さらにその補修用又は補強用のシート3上に粘接着層2'が設けられている。 そのため、補修用又は補強用のシート3が例えば後述する繊維材料層を有する場合、粘接着層2'は、その繊維材料層が有する凹凸形状を吸収してその凹凸形状を小さくするように機能させることができる。 その結果、粘接着シート10(10E,10F,10G)は、その表面の平滑性が高まるので、補修又は補強したコンクリートの意匠性を高めることができる。

    また、粘接着層2'は、補修用又は補強用のシート3の劣化を防ぐ保護層として機能させることができる。 その結果、粘接着シート10(10E,10F,10G)は、コンクリートに貼り付けられる前では保存安定性を高めることができ、コンクリートに貼り付けられた後では耐久性を高めることができる。

    さらに、粘接着シート10(10E,10F,10G)は、補修用又は補強用のシート3の両側に粘接着層(2,2')が設けられているので、両面テープのように機能させることができる。 この粘接着シート10の粘接着層2の面S1は、コンクリートを貼り付けることができ、粘接着層2'の面S1'には、後述する機能性のシート又は層を貼り付けることができる。 なお、粘接着シート10E,10Gは、剥離フィルム1'に代えて機能性のシート又は層が設けられたものであってもよい。

    機能性のシート又は層としては、例えば、耐光性、耐水性、防汚性、耐候性、耐衝撃性、耐傷付性、耐酸性、耐アルカリ性及び意匠性等のいずれか1又は2以上の機能を有するシート又は層を挙げることができる。

    補修用又は補強用のシート3は、コンクリートを補修又は補強することができるシートであれば特に限定されない。 例えば、コンクリート劣化因子が浸入するのを防ぐことができるシートであってもよいし、強度が低下しているコンクリートを補強することができるシートであってもよいし、その他の機能を有してコンクリートを補修又は補強することができるシートであってもよい。 また、これらの全てを満たすシートであってもよい。

    補修用又は補強用のシート3の一例としては、例えば、合成樹脂フィルムを基材とし、その基材の一方の面に樹脂材料層を設け、他方の面に繊維材料層を設けたものを挙げることができる。 なお、樹脂材料層を保護層として機能させることができ、繊維材料層を補強層として機能させることができる。

    基材である合成樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂及びポリウレタン系樹脂等を挙げることができる。

    樹脂材料層は、コンクリートと、そのコンクリート及び粘接着層2の接着部分とを外部からの劣化因子による損傷から防ぐように作用する。 劣化因子とは、水、酸素、炭酸ガス、又は塩化物イオン等に代表されるものである。 樹脂材料層の構成樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、アクリルフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂及び塩素系樹脂等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。 これらの樹脂材料は、その種類に応じて、耐候性、防汚性、防水性、遮塩性等の機能を有するので、その特性に応じて選択することが好ましい。

    繊維材料層としては、例えば、織布、編布、不織布、積層布、合成樹脂発泡体及び紙等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。 こうした繊維材料層の構成材料としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、カーボン繊維、ガラス繊維及びポリオレフィン繊維等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。 これらの中でも、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、及びポリオレフィン繊維は、軽くて強度に優れることから好ましく用いられる。 これらの繊維は、混紡されていてもよいし、縦糸や横糸に使い分けられていてもよいし、多層に積層されていてもよい。 繊維材料層は、基材である合成樹脂フィルムに樹脂材料で接着させることができる。 このときの樹脂材料は特に限定されず、上記した樹脂材料層で用いたものと同種の樹脂材料を用いることができる。

    補修用又は補強用のシート3は、コンクリート構造物の一部が剥離等した場合や剥離等するおそれのある場合に、剥離したコンクリート片又は剥離するおそれのあるコンクリート片を支えることができる強度(補強強度)を有することが好ましい。 その強度としては、例えば、旧日本道路公団(東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社)の規定する押し抜き試験において、10mm以上の変位時に1500N以上になることが好ましい。

    補修用又は補強用のシート3は、例えば、基材の一方の面に樹脂材料層を設ける工程と、基材の他方の面に繊維材料層を設ける工程とを有する製造方法で製造することができる。 基材の一方の面への樹脂材料層の形成は、例えば、基材上に樹脂材料を塗布し、その後に硬化して行うことができる。 また、基材の他の面への繊維材料層の形成は、例えば、繊維材料と樹脂材料とを含む複合材料を基材上に塗布し、樹脂材料を硬化させて行うことができる。

    ここでは、補修用又は補強用のシート3として説明したが、詳しくは、補修用のシートであるか補強用のシートであるかによってシートの構成材料が異なり、その用途に応じて選択される。 補修用又は補強用のシートの厚さも、補修用として用いるか補強用として用いるかによって異なるが、通常、0.01mm以上、1.0mm以下の範囲である。

    以上説明したように、粘接着シート10は、コンクリートに粘接着させてコンクリートの補修又は補強のために使用することができる。 そして、粘接着シート10を構成する粘接着層2は、ガラス転移温度が15℃以下のアクリル系樹脂と、液状エポキシ樹脂とを含むので、粘着力を有している。 その結果、その粘接着層2の一方の面をコンクリートに仮固定し、剥離フィルム1を剥がした後の他方の面に補修用又は補強用のシートを仮固定することができる。 また、そうした粘接着層2や補修用又は補強用のシートを仮固定した後に剥がして再び仮固定又は固定することもできる。 また、粘接着層2を備えた粘接着シート10は、コンクリートへの補修や補強の施工現場に従来のような接着剤を用意する必要がなく、施工時の作業負荷を低減させることができるとともに、コンクリートの補修用又は補強用として好ましく用いることができ、コンクリートを補修又は補強することができる。

    [補修又は補強方法]
    コンクリートの補修又は補強方法は、上記した粘接着層2や粘接着シート10を用いて行うことができる。

    図1(B)に示す粘接着シート10Aでは、先ず、コンクリートに貼り付ける側の面S1をコンクリートに貼り付け、その後に反対側の面S2に設けられた剥離フィルム1を剥がし、露出した粘接着層2に補修用又は補強用のシートを貼り付けて施工することができる。 一方、図1(C)に示す粘接着シート10Bでは、先ず、コンクリートに貼り付ける側の面S1の剥離フィルム1'を剥がし、露出した粘接着層2をコンクリートに貼り付け、その後に反対側の面S2に設けられた剥離フィルム1を剥がし、露出した粘接着層2に補修用又は補強用のシートを貼り付けて施工することができる。 また、この粘接着シート10Bでは、コンクリートに貼り付ける側の面S1の反対面S2の剥離フィルム1を剥がし、露出した粘接着層2に補修用又は補強用のシートを貼り付け、その状態で、コンクリートに貼り付ける側の面S1の剥離フィルム1'を剥がし、露出した粘接着層2をコンクリートに貼り付けて施工することもできる。

    図2(A)に示す粘接着シート10Cでは、コンクリートに貼り付ける側の面S1の剥離フィルム1を剥がし、露出した粘接着層2をコンクリートに貼り付けて施工することができる。 この粘接着シート10Cには、予め補修用又は補強用のシート3が粘接着層2に粘着しているので、簡易に施工することができる。 一方、図2(B)に示す粘接着シート10Dでは、コンクリートに貼り付ける側の面S1をコンクリートに貼り付けて施工することができる。 この粘接着シート10Dにも、予め補修用又は補強用のシート3が粘接着層2に粘着しているので、簡易に施工することができる。

    図3(A)に示す粘接着シート10Eでは、上記した粘接着シート10Cと同様、コンクリートに貼り付けられる側の面S1に設けた剥離フィルム1を剥がし、露出した粘接着層2をコンクリートに貼り付けて施工することができる。 この粘接着シート10Eは、その後に必要に応じて剥離フィルム1'を剥がし、露出した粘接着層2'に機能性のシート又は層を設けることができる。 一方、図3(B)(C)に示す粘接着シート10F,10Gでは、上記した粘接着シート10Dと同様、コンクリートに貼り付けられる側の面S1をコンクリートに貼り付けて施工することができる。 また、図3(A)に示す粘接着シート10Eと同様、粘接着層2'が設けられているので、その粘接着層2'に機能性のフィルム又は層を設けることができる。

    こうして粘接着シート10A〜10Gを用いて補修用又は補強用のシートをコンクリートに粘接着させる。 その際、補修用又は補強用のシートの上からローラー等で粘接着層2をコンクリートに圧着させることが好ましい。 粘接着層2の硬化は、そのローラー圧着時に加熱ローラーを用いて圧着と加熱硬化を同時に行ってもよいし、ローラー圧着した後に加熱して硬化させてもよい。 加熱硬化するときの温度は、使用する硬化剤の種類等にもよるが、通常、100℃以上、150℃以下である。 また、紫外線や電子線を照射して硬化させる場合も、例えば圧着するのと同時に又は圧着した後に、紫外線や電子線を照射して硬化させることができる。 紫外線を照射する場合の条件は、硬化剤の種類によっても異なるが、例えば後述の実施例のように、波長300nm〜370nmの領域で積算光量が1000mJ/cm 程度の照射条件を挙げることができる。 また、電子線を照射する場合の条件も、硬化剤の種類によっても異なるが、50kGy以上、100kGy以下の程度の照射条件を挙げることができる。

    こうした硬化手段によって、粘接着層2に含まれる液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂が硬化し、コンクリートと粘接着層2が強固に接着し、補修用又は補強用のシートと粘接着層2が強固に接着する。 その結果、コンクリートと補修用又は補強用のシートとを強固に接着できる。 なお、加熱や紫外線照射等して粘接着層2を硬化させた後は、1日以上、14日以下の程度保持することが好ましい。 これにより、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂の硬化がより完全なものになり、粘接着層2がより高い接着力を発揮できる。 その結果、より高い強度でコンクリートを補修又は補強することができる。

    本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。

    [実施例1]
    剥離フィルム1として、片面にシリコーン系剥離剤による易剥離処理が施されている厚さ38μmのポリエステルフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:SP−PET−03)を用いた。 この剥離フィルムの易剥離処理面上に、下記の組成の粘接着層形成用組成物Aをアプリケータにより全面塗工した後、乾燥オーブンにより100℃で2分間乾燥させ、厚さ150μmの粘接着層2を形成した。 次いで、その粘接着層2の他の面に、もう一つの剥離フィルムとして、片面にシリコーン系剥離剤による易剥離処理が施されている厚さ38μmのポリエステルフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:SP−PET−01)をラミネートし、一つの粘接着層を有する実施例1の粘接着シート10B(図1(C)参照)を得た。 なお、粘接着層形成用組成物Aは、液状エポキシ樹脂と硬化剤2種とを配合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間撹拌した後、固形エポキシ樹脂とアクリル系樹脂と希釈溶剤とを配合してディスパーにて回転数1200rpmで30分間撹拌させて調製した。

    (粘接着層形成用組成物A)
    ・アクリル系樹脂(水酸基が導入された変性メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートトリブロック共重合体、Tg:−42℃、アルケマ社製、商品名:M22N)30質量部 ・液状エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:190g/eq.、三菱化学株式会社製、商品名:jER828)80質量部 ・固形エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:480g/eq.、三菱化学株式会社製、商品名:jER1001)120質量部 ・硬化剤(アミン系硬化剤、味の素ファインテクノ株式会社製、商品名:アミキュアMY−H)7質量部 ・硬化剤(ジシアンジミド、三菱化学株式会社製、商品名:DICY)11質量部 ・希釈溶剤(酢酸エチル、DICグラフィックス社製)122質量部

    [実施例2]
    実施例1の粘接着層形成用組成物Aにおいて、アクリル系樹脂を、他のアクリル系樹脂(メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートトリブロック共重合体、Tg:−42℃、アルケマ社製、商品名:M22)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の粘接着シートを得た。

    [実施例3]
    実施例1の粘接着層形成用組成物Aにおいて、アクリル系樹脂を、他のアクリル系樹脂(エチルアクリレート−ブチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体、Tg:12℃、ナガセケムテックス株式会社製、商品名:SG−P3)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の粘接着シートを得た。

    [実施例4〜9]
    実施例1の粘接着層形成用組成物Aにおいて、アクリル系樹脂、液状エポキシ樹脂、及び固形エポキシ樹脂の配合量を、表1に示したように変更した。 それ以外は、実施例1と同様にして実施例4〜9の粘接着シートを得た。

    [実施例10]
    実施例1において、粘接着層2の厚さを300μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例10の粘接着シートを得た。

    [比較例1]
    実施例1において、アクリル系樹脂を、他のアクリル系樹脂(エチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、Tg:18℃、根上工業株式会社製、商品名:W−197C)に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1の粘接着シートを得た。

    [比較例2]
    実施例1において、アクリル系樹脂を、他のアクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート、Tg:105℃、東栄化成株式会社製、商品名:LC#6500)に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例2の粘接着シートを得た。

    [比較例3〜7]
    実施例1において、アクリル系樹脂、液状エポキシ樹脂、及び固形エポキシ樹脂の配合量を、表1に示したように変更した。 それ以外は、実施例1と同様にして比較例3〜7の粘接着シートを得た。

    [実施例11]
    実施例1において、粘接着層形成用組成物Aの代わりに、下記の粘接着層形成用組成物Bを用いた他は、実施例1と同様にして実施例11の粘接着シートを得た。 なお、粘接着層形成用組成物Bは、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とアクリル系樹脂と希釈溶剤とを配合し、ディスパーにて回転数1200rpmで30分間撹拌して溶解し、その後、メルカプト基を有する硬化剤と光塩基発生剤Aをさらに加え、ディスパーにて回転数1200rpmで30分間撹拌して溶解し、さらに脱泡させた後、粘接着層形成用組成物Bを調製した。

    (粘接着層形成用組成物B)
    ・アクリル系樹脂(水酸基が導入された変性メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートトリブロック共重合体、Tg:−42℃、アルケマ社製、商品名:M22N)30質量部 ・液状エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:190g/eq.、三菱化学株式会社製、商品名:jER828)80質量部 ・固形エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:480g/eq.、三菱化学株式会社製、商品名:jER1001)120質量部 ・メルカプト基を有する硬化剤としてPEMP(ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、粘度:400〜550mPa.s/25℃、メルカプタン当量:125〜137g/eq、三菱化学株式会社製、商品名:QX40)90質量部 ・光塩基発生剤A(下記の合成方法を参照)10質量部 ・希釈溶剤(酢酸エチル、DICグラフィックス社製)122質量部

    (光塩基発生剤Aの合成)
    100mLフラスコにメタノール15mLを入れ、そこに炭酸カリウム2.00gを加えた。 次いで、50mLフラスコにメタノール10mLを入れ、そこにエトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)2.67g(6.2mmol)及び2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルベンズアルデヒド1.7g(6.2mmol)を添加し、溶解させた後、よく撹拌した上記炭酸カリウムのメタノール溶液をゆっくりと滴下した。 そして、3時間撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認した。 次いで、ろ過により炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。 濃縮した後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50mL加えて1時間撹拌した。 反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除き、濃塩酸を滴下して反応液を酸性にした。 沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムで洗浄することにより2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルケイ皮酸を1.7g得た。 続いて、窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中で、2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルケイ皮酸1.0g(3.19mmol)を脱水テトラヒドロフラン10mLに溶解し、氷浴下で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業株式会社製)0.73g(3.83mmol,1.2eq)を加えた。 30分後に、アミンとしてピペリジン(東京化成株式会社製)129mg(1.52mmol、0.95eq)を加えた後、終夜で撹拌した。 反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。 クロロホルムで抽出した後、炭酸水素水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮することにより、下記式(I)に示す光塩基発生剤Aを1.0g得た。

    [実施例12]
    実施例11の粘接着層形成用組成物Bにおいて、光塩基発生剤Aの代わりに、下記光塩基発生剤Bを10質量部用いたこと以外は、実施例11と同様にして実施例12の粘接着シートを得た。

    (光塩基発生剤Bの合成)
    光塩基発生剤Aの2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルベンズアルデヒドの代わりに、2−ヒドロキシ−5−(5−エチルヘキシルオキシ)ベンズアルデヒド1.5g(6.2mmol)を添加した他は、光塩基発生剤Aの合成方法と同じ方法で、下記式(II)に示す光塩基発生剤Bを0.8g得た。

    [実施例13]
    粘接着層2の厚さを200μmとした以外は、実施例1と同様にして粘接着シートを得た。 この粘接着シートの粘接着層2に設けられた二つの剥離フィルムのうち、一方の剥離フィルム(SP−PET−01)を剥がした。 露出した粘接着層2を60℃に加熱しながら、補強用のシートとしてアラミド繊維(目付量:90g/m 、厚さ:約0.024mm、ファイベックス株式会社製、商品名:AKM−5/5)をラミネートした。

    次いで、ラミネートされたアラミド繊維上に、もう一つの粘接着シートをラミネートした。 この粘接着シートも実施例1と同様にして得た粘接着シートである。 この粘接着シートも上記と同様に二つの剥離フィルムのうち、一方の剥離フィルム(SP−PET−01)を剥がし、露出した粘接着層2を60℃に加熱しながら、アラミド繊維上にラミネートした。 このようにして、二つの粘接着層を有する粘接着シート10E(図3(A)参照)を得た。 なお、上記した[粘接着シート]の欄で述べたように、図3(A)(B)(C)に示すような二つの粘接着層を有する粘接着シートの粘接着層のうち、補修用又は補強用のシート(アラミド繊維)の上に設けられた粘接着層を「粘接着層2'」ともいう。 得られた粘接着シート10Eは、剥離フィルム(SP−PET−03)/粘接着層2/アラミド繊維/粘接着層2'/剥離フィルム(SP−PET−03)の順で構成されている。

    [実施例14,15]
    実施例13において、粘接着層2及び粘接着層2'を形成するために使用する粘接着層形成用組成物Aのアクリル系樹脂、液状エポキシ樹脂、及び固形エポキシ樹脂の配合量を、表2に示したように変更した。 それ以外は、実施例13と同様にして実施例14,15の粘接着シートを得た。

    [実施例16]
    実施例13において、アラミド繊維(目付量:90g/m 、厚さ:約0.024mm、ファイベックス株式会社製、商品名:AKM−5/5)の代わりに、アラミド繊維(目付量:180g/m 、厚さ:約0.048mm、ファイベックス株式会社製、商品名:AKM−10/10)を用いた他は、実施例13と同様にして実施例16の粘接着シートを得た。

    [比較例8,9]
    実施例13において、粘接着層2及び粘接着層2'を形成するために使用する粘接着層形成用組成物Aのアクリル系樹脂、液状エポキシ樹脂、及び固形エポキシ樹脂の配合量を、表2に示したように変更した。 それ以外は、実施例13と同様にして比較例8,9の粘接着シートを得た。

    [実施例17]
    実施例13において、粘接着層形成用組成物Aの代わりに、実施例11の粘接着層形成用組成物Bを用いた他は、実施例13と同様にして実施例17の粘接着シートを得た。

    [実施例18]
    実施例13において、粘接着層形成用組成物Aの代わりに、実施例11の粘接着層形成用組成物Bを用いた。 さらに、アラミド繊維(目付量:90g/m 、厚さ:約0.024mm、ファイベックス株式会社製、商品名:AKM−5/5)の代わりに、アラミド繊維(目付量:180g/m 、厚さ:約0.048mm、ファイベックス株式会社製、商品名:AKM−10/10)を用いた。 それ以外は実施例13と同様にして実施例18の粘接着シートを得た。

    [評価と結果]
    図1又は図2に示すような一つの粘接着層を有する粘接着シートである、実施例1〜12及び比較例1〜7の粘接着シート10を構成する粘接着層2の組成を表1に示す。 また、図3に示すような二つの粘接着層を有する粘接着シートである、実施例13〜18及び比較例8,9の粘接着シート10を構成する粘接着層2及び粘接着層2'の組成を表2に示す。 アクリル系樹脂の含有量は、例えば実施例1では[30質量部/(30質量部+80質量部+120質量部)×100]=13.0質量%、のようにして表した。 また、液状エポキシ樹脂の含有量は、例えば実施例1では[80質量部/(80質量部+120質量部)×100]=40.0質量%、のようにして表し、また、固形エポキシ樹脂の含有量は、例えば実施例1では[120質量部/(80質量部+120質量部)×100]=60.0質量%、のようにして表した。

    実施例1〜18及び比較例6の粘接着シート10について、粘着力の測定を行った。 また、実施例1〜18及び比較例1〜9の粘接着シートについて、せん断強度の測定、押し抜き試験、付着強度の測定を行った。

    (粘着力の測定)
    実施例1〜12及び比較例6で得た粘接着シートの粘着力の測定は、先ず、得られた粘接着シートの剥離フィルム(SP−PET−01)を剥がし、露出した粘接着層2を基材(片面にコロナ処理が施されているPETフィルム、厚さ:38μm、東洋紡績株式会社製、商品名:E5100)のコロナ処理面に貼り付けた。 その後、25mm×150mmのサイズに切断し、粘着力の測定用の試験片を作製した。 次いで、この試験片の剥離フィルム(SP−PET−03)を剥がし、露出した粘接着層2をステンレス板(SUS304)にローラーを用いてラミネートした。 その後、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、型番:RTF−1150H)を用いて、JIS Z0237に準拠した条件(引張速度:300mm/分、剥離距離:150mm、剥離:180°)で、ステンレス板面に対する粘着力(N/25mm)を測定した。 結果を表3に示した。 なお、比較例1〜5,7の粘接着シートは、粘接着層2を上記したステンレス板面に貼り付けることができなかったため、測定できなかった。

    実施例13〜18で得た粘接着シートの粘着力の測定は、先ず、得られた粘接着シートに設けた二つの粘接着層のうち、一方の粘接着層2に設けた剥離フィルム(SP−PET−03)を剥がし、露出した粘接着層2を上記と同様の基材のコロナ処理面に貼り付けた。 その後、25mm×150mmのサイズに切断し、粘着力の測定用の試験片を作製した。 次いで、他方の剥離フィルム(SP−PET−03)を試験片から剥がし、露出した粘接着層2'をステンレス板(SUS304)にローラーを用いてラミネートした。 その後、上記と同様の引張試験機と測定条件で、ステンレス板面に対する粘着力(N/25mm)を測定した。 結果を表4に示した。 なお、比較例8,9の粘接着シートは、粘接着層2'を上記したステンレス板面に貼り付けることができなかったため、測定できなかった。

    (せん断強度の測定)
    実施例1〜12及び比較例1〜7で得た粘接着シートのせん断強度の測定は、先ず、得られた粘接着シートを25mm×12.5mmのサイズに切断し、粘接着シートの粘接着層に設けられた二つの剥離フィルムのうち、一方の剥離フィルム(SP−PET−01)を剥がした後、露出した粘接着層2をアルコール洗浄された溶融亜鉛鍍金鋼板に圧着した。 次いで、他方の剥離フィルム(SP−PET−03)を剥がし、露出した粘接着層をもう一つの試験片である溶融亜鉛鍍金鋼板に圧着した。

    実施例1〜10及び比較例1〜7の粘接着シートを用いた場合には、その後、1kgの荷重を加えたまま送風式オーブンにて120℃で2時間保持して加熱硬化させ、常温(約23℃)で放冷し、せん断強度の測定用試料を作製した。 一方、実施例11,12の粘接着シートを用いた場合には、紫外線照射装置(Hバルブ使用、フュージョンUVシステムズジャパン社製、商品名:DRE−10/12QN)を用いて、波長300〜370nmの領域で積算光量が1000mJ/cm となるように紫外線を照射した。 こうして紫外線照射により硬化させ、せん断強度の測定用試料を作製した。 次いで、これらの測定用試料を、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、型番:RTA−1T)を用い、JIS K6850に準拠した条件(引張速度:0.5mm/分)で、室温でのせん断強度(N/mm )応力を測定した。 実施例1〜12及び比較例1〜7で得た粘接着シートの結果を表3に示した。

    実施例13〜18及び比較例8,9で得た粘接着シートのせん断強度の測定は、先ず、粘接着シートを25mm×12.5mmのサイズに切断し、二つの粘接着層のうち、一方の粘接着層2に設けられた剥離フィルム(SP−PET−03)を剥がした後、露出した粘接着層2をアルコール洗浄された溶融亜鉛鍍金鋼板に圧着した。 次いで、他方の粘接着層2'に設けられた剥離フィルム(SP−PET−03)を剥がし、露出した粘接着層2'をもう一つの試験片である溶融亜鉛鍍金鋼板に圧着した。

    実施例13〜16及び比較例8,9の粘接着シートを用いた場合には、上記した実施例1〜10及び比較例1〜7の粘接着シートを用いた場合と同様にして、せん断強度の測定用試料を作製した。 一方、実施例17、18の粘接着シートを用いた場合には、上記した実施例11,12の粘接着シートを用いた場合と同様の紫外線照射装置と硬化条件で硬化させ、せん断強度の測定用試料を作製した。 次いで、これらの測定用試料を、上記と同様の引張試験機と測定条件で、せん断強度(N/mm )応力を測定した。 実施例13〜18及び比較例8,9で得た粘接着シートの結果を表4に示した。 なお、比較例8,9の粘接着シートは、せん断強度の測定途中に、粘接着層2とアラミド繊維との界面又は粘接着層2'とアラミド繊維との界面で剥離したため、剥離した時の値をせん断強度の測定値とした。

    (押し抜き試験と剥離観察)
    押し抜き試験は、先ず、補修用又は補強用のシートを備えた粘接着シートを作製した。 この粘接着シートの作製は、先ず、樹脂フィルム(厚さ:15μm、三菱樹脂株式会社製、商品名:スーパーニールE15)の一方の面に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学株式会社製、主剤の商品名:タケラックA−310、硬化剤の商品名:タケネートA−3)を固形分の塗布量5g/m で塗布し、湿式法によるサーマルボンド不織布(坪量:23g/m 、大王製紙株式会社製、商品名:ポリエステルペーパー)をドライラミネートにより積層させた。 次いで、樹脂フィルムのもう一方の面に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学株式会社製、主剤の商品名:タケラックA−310、硬化剤の商品名:タケネートA−3)を、固形分の塗布量12g/m で塗布し、ポリエチレンテレフタレートクロス(平織り、繊度:250d、打ち込み本数:43本×43本/インチ、坪量:105g/m )をドライラミネートにより積層させた。 こうして補修用又は補強用のシートを製造した。

    実施例1〜12及び比較例1〜7で得られた粘接着シートの粘接着層2に設けられた二つの剥離フィルムのうち、一方の剥離フィルム(SP−PET−01)を剥がした。 露出した粘接着層2を60℃に加熱しながら補修用又は補強用のシートのポリエチレンテレフタレートクロス側にラミネートし、補修用又は補強用のシートを備えた粘接着シートを作製した。 同様に、実施例13〜18及び比較例8,9で得られた粘接着シートに設けられた二つの粘接着層のうち、アラミド繊維上に設けられた粘接着層2'に設けた剥離フィルム(SP−PET−03)を剥がした。 露出した粘接着層2'を同様の条件で補修用又は補強用のシートのポリエチレンテレフタレートクロス側にラミネートし、補修用又は補強用のシートを備えた粘接着シートを作製した。

    被着体として、JIS A5372(プレキャスト鉄筋コンクリート製品)付属書5に規定された呼び名1種300(400mm×600mm×60mm)のU形ふたの中央部を直径100mmの円形状でコンクリート用コアカッタにより貫通させ、削孔したものを使用した。

    実施例1〜10及び比較例1〜7の粘接着シートを用いた場合には、製造された上記補修用又は補強用のシートを備えた粘接着シートの他方の剥離フィルム(SP−PET−03)を剥がした。 露出した粘接着層2を120℃で加熱しながら被着体のU型ふたの400mm×600mmの範囲にハンドローラーで貼り付けた。 その後、室温で4日間放置した。 同様に、実施例13〜16及び比較例8,9の粘接着シートを用いた場合には、製造された上記補修用又は補強用のシートを備えた粘接着シートの他方の粘接着層2に設けた剥離フィルム(SP−PET−03)を剥がした。 露出した粘接着層2を同様の条件で被着体に貼り付け、放置した。

    一方、実施例11,12の粘接着シートを用いた場合には、製造された上記補修用又は補強用のシートを備えた粘接着シートの他方の剥離フィルム(SP−PET−03)を剥がした。 露出した粘接着層2を被着体のU型ふたの400mm×600mmの範囲にハンドローラーで貼り付けた。 その後、上記せん断強度測定で使用した紫外線照射装置を用いて、波長300〜370nmの領域で積算光量が1000mJ/cm となるように紫外線を照射して硬化させた。 同様に、実施例17,18の粘接着シートを用いた場合には、製造された上記補修用又は補強用のシートを備えた粘接着シートの他方の粘接着層2に設けた剥離フィルム(SP−PET−03)を剥がした。 露出した粘接着層2を同様の条件で被着体に貼り付け、硬化させた。

    これらを、JIS K6848−1の4の標準状態(温度23℃±2℃、相対湿度50%±5%)で、0.2mm/分の速度で荷重を加え、さらに、変位2.0mmから1.0mm/分の速度で荷重を加えて、押し抜き最大荷重(kN)を測定した。 その結果を表3及び表4に示した。 測定の間、変位2.0mm毎に荷重を2分間停止し、補修用又は補強用のシートの剥離を目視で観察した。

    (付着強度の測定)
    上記した押し抜き試験で作製したのと同様の、補修用又は補強用のシートを備えた粘接着シートを作製した。 その粘接着シートが有する剥離フィルム(SP−PET−03)を剥がして、露出した粘接着層を粘接着層側から、上記せん断強度の測定で使用した紫外線照射装置を用いて、波長300〜370nmの領域で積算光量が1000mJ/cm となるように紫外線を照射して硬化させた。 その後、その粘接着層側をハンドローラーにて厚さ60mmのコンクリートに貼り付けた後、室温で7日間放置した。 そのサンプルより、コンクリート用コアカッタを用いて、40mm×40mmの大きさに切断し、はく落防止性能照査試験(JHS 424 2004)により評価した。 その結果、実施例1〜3と実施例11〜18の粘接着シートはいずれも1.5N/mm 以上の付着強度を示し、押抜き強度も1800N以上であり、それぞれ実用上問題ないレベルであった。 はく落防止性能照査試験での付着強度の測定時に起こる破壊は、補修又は補強用のシート自体で起こるか、粘接着シートの凝集破壊で起こっていた。

    なお、はく落防止性能照査試験(JHS 424 2004)は、先ず、上記したサンプルの両面を接着剤を介して二つの鋼製アタッチメント(40mm×40mm)で挟み、サンプルの両面にアタッチメントを接着し固定した。 周囲からはみ出した接着剤を拭き取った後、常温で24時間そのまま静置した。 その後、鋼製アタッチメントを引張試験機に装着して引張試験を行い、試験開始から破壊までの荷重−変位曲線を記録した。 その荷重−変位曲線から最大荷重を測定して、付着強度を算出した。 付着強度の算出式は、S(付着強度:N/mm )=P(最大荷重:N)/サンプル面積(面積:mm )である。

    (結果)
    結果を表3及び表4に示す。 なお、表3及び表4の「※」は、粘接着層がステンレス板面に貼り付けることができなかったため、測定できなかったものである。 また、表4の「注)」は、せん断強度の測定途中に粘接着層2とアラミド繊維との界面又は粘接着層2'とアラミド繊維との界面で剥離したため、剥離した時のせん断強度を粘接着シートのせん断強度としたものである。

    表3及び表4の結果から、実施例1〜18の粘接着シートは、粘着力が0.3N/25mm以上であり、且つ、せん断強度が18MPa以上であり、その粘接着層は、粘着力を有し、且つ、高い接着力を有した。 また、実施例1〜18の粘接着シートは、押し抜き最大荷重が1800N以上であり、高い強度でコンクリートを補修又は補強できた。 補修用又は補強用のシートの剥離観察結果は、実施例1〜18の粘接着シートを用いた場合は、剥離が生じなかったが、比較例1〜7の粘接着シートを用いた場合は、剥離が生じていた。 また、比較例8、9は、アラミド繊維との密着性が悪く、十分な付着強度が得られなかった。

    また、実施例1〜18の例では、粘接着層中のアクリル系樹脂の含有量は4.76質量%以上50.0質量%以下であり、この範囲で良好な結果を確認した。 また、アクリル系樹脂の含有量が4.76質量%以上33.4質量%以下の範囲で特に良好な結果を確認した。

    さらに、実施例13〜18の粘接着シートは、二つある粘接着層のうち、一方の粘接着層2にコンクリートが貼り付けられた直後であっても、他方の粘接着層2'の表面は、アラミド繊維やコンクリート表面の凹凸の影響がほとんどなく、平滑であった。

    1,1' 剥離フィルム 2,2' 粘接着層 3 補修用又は補強用のシート 10,10A〜10G 粘接着シート S1,S2,S1',S2' 粘接着層の表面

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