プリフォームの製造装置および製造方法

申请号 JP2012511078 申请日 2012-02-14 公开(公告)号 JP5733306B2 公开(公告)日 2015-06-10
申请人 東レ株式会社; 发明人 樋野 豊和; 山崎 真明; 木部 隆造;
摘要
权利要求

熱可塑性樹脂を主成分とする固着材を付着させた強化繊維基材を複数枚積層した積層体を、互いに対向する第1の型、第2の型から構成される賦形型で加熱を介して所定形状に賦形することにより、RTM成形に用いるプリフォームを製造する装置であって、第1の型のみに加熱機構を設けるとともに、第2の型の少なくとも前記強化繊維基材と接触する接触面が、熱伝導率が0.01W/m・K以上かつ10W/m・K以下で第1の型より熱伝導率の低い、少なくとも5mmの厚さを持つ非金属材料で形成されていることを特徴とするプリフォームの製造装置。第1の型が、金属材料で形成されている、請求項1に記載のプリフォームの製造装置。第2の型が、分割型からなる、請求項1または2に記載のプリフォームの製造装置。前記固着材のガラス転移温度が50〜80℃の範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載のプリフォームの製造装置。前記強化繊維基材が、炭素繊維基材からなる、請求項1〜4のいずれかに記載のプリフォームの製造装置。熱可塑性樹脂を主成分とする固着材を付着させた強化繊維基材を複数枚積層した積層体を、互いに対向する第1の型、第2の型から構成される賦形型によりプレスにより所定形状に賦形するとともに、加熱により強化繊維基材間に存在する前記固着材を溶融させ、溶融後に冷却することにより前記固着材を固化させ強化繊維基材同士を接着させて賦形形状を保持する、RTM成形に用いるプリフォームを製造する方法であって、前記加熱において、第1の型からのみ加熱するとともに、第2の型の少なくとも前記強化繊維基材と接触する接触面を、熱伝導率が0.01W/m・K以上かつ10W/m・K以下で第1の型より熱伝導率の低い、少なくとも5mmの厚さを持つ非金属材料で形成して第2の型側への熱伝導を抑えることを特徴とするプリフォームの製造方法。第1の型が、金属材料で形成されている、請求項6に記載のプリフォームの製造方法。第2の型が、分割型から構成されている、請求項6または7に記載のプリフォームの製造方法。前記固着材のガラス転移温度が50〜80℃の範囲にある、請求項6〜8のいずれかに記載のプリフォームの製造装置。前記冷却において、前記積層体をプレスした状態のまま冷却を行う、請求項6〜9のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。前記強化繊維基材が、炭素繊維基材からなる、請求項6〜10のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。

说明书全文

本発明は、RTM(Resin Transfer Molding)成形に用いるプリフォームの製造装置および製造方法ならびにその方法により製造されたプリフォームに関し、とくに、プリフォームの賦形のために加熱する場合の放熱を最小限に抑えるとともに、プリフォームの賦形精度を向上できるようにした技術に関する。

RTM成形に用いるプリフォームの作製においては、従来、例えば、(1)複数枚積層した強化繊維基材を賦形型内に配置し、賦形型を閉じ、賦形型で形状をつける、(2)賦形型を加熱し(または予め加熱しておき)、それによって基材を加熱し、基材に付着されている固着材を溶融させる、(3)賦形型で形状を保持させつつ、プリフォームを冷却し、固着材を固化させて基材の層間を固着する、(4)賦形されたプリフォームを賦形型から取り出す、といった一連の工程を経ている。このようなプリフォームの賦形において、賦形型としては一般に金属製のものが使用され、通常、下型、上型のどちらか一方の型に加熱手段(熱媒を流通させる、もしくは電気ヒーターを設置した手段)が設けられている。

また、比較的簡単な賦形形状の場合には、賦形型は下型のみとし、下型上に積層した基材を配置し、その上からフィルムでバギングして、フィルムと型で囲まれる空間を真空引きすることで、大気圧によってフィルムを介して基材を押圧し、所定の賦形形状を得ることが可能である (例えば、特許文献1)。しかし、このようなフィルムを使用する賦形方法では、人手による作業が多いため、生産性が低く、コストが高くなってしまう。そのため、賦形型としては上下型を用いる場合が多い。例えば、特許文献2では、アルミニウム製の上下型が用いられており、三次元形状を含む複雑形状への賦形では、特許文献3のように、複数の可動式の金型から構成される上型が用いられている。

特開2006−123404号公報

特開2006−123402号公報

特開2009−119701号公報

基礎化学工学、社団法人化学工学会編、1999年

しかし、上記のように上下型ともに金属製の型とする場合には、以下のような問題点がある。 まず、下型のみに加熱手段を設けた場合、反対側の上型への放熱が大きくなるので、賦形のための温度を一定の温度に保つためには、下型を必要以上に加熱しなければならないことが多い。そのため、加熱のために使用するエネルギーが大きくなり、省エネルギーが困難である。また、下型のみに加熱手段を設け、上型に対して発泡材などの断熱材を介在させた場合、賦形のための押圧時に発泡材などの断熱材が変形するため、できあがるプリフォームの寸法精度が低下する。一方、上下の型両方に加熱手段を設ける場合、少なくともいずれか一方の型を分割型として複雑な形状の賦形に対応することが困難となる。

そこで本発明の課題は、上記のような問題点に着目し、放熱を小さく抑え加熱効率を上げて省エネルギー化が可能であり、複雑な形状に賦形されるプリフォームであっても寸法精度よく作製することが可能な、RTM成形に用いるプリフォームを確実にかつ容易に製造できる装置および方法を提供することにある。

上記課題を解決するために、本発明に係るプリフォームの製造装置は、熱可塑性樹脂を主成分とする固着材を付着させた強化繊維基材を複数枚積層した積層体を、互いに対向する第1の型、第2の型から構成される賦形型で加熱を介して所定形状に賦形することにより、RTM成形に用いるプリフォームを製造する装置であって、第1の型のみに加熱機構を設けるとともに、第2の型の少なくとも前記強化繊維基材と接触する接触面が、熱伝導率が0.01W/m・K以上かつ10W/m・K以下で第1の型より熱伝導率の低い、少なくとも5mmの厚さを持つ非金属材料で形成されていることを特徴とするものからなる。

このような本発明に係るプリフォームの製造装置においては、賦形型の一方の型(第1の型)のみに加熱機構が設けられてこの第1の型側からのみ加熱が行われるが、他方の型(第2の型)がより熱伝導率の低い材料で形成されているので、この第2の型への熱伝導、さらにはこの第2の型からの放熱が低く抑えられる。その結果、賦形型内に配置されている、熱可塑性樹脂を主成分とする固着材を付着させた強化繊維基材の積層体が、少ない熱量でもって効率よく所望の温度に加熱されることになる。加熱効率を上昇させることで省エネルギー化が可能になる。また、変形しやすい断熱材を介在させる必要がないので、プリフォームの賦形寸法精度を高めることが可能になる。さらに、加熱機構が設けられない他方の型(第2の型)は、容易に分割型に構成することができ、それによって複雑な形状への賦形にも高い寸法精度をもって容易に対応できるようになる。

上記接触面は、例えば、熱伝導率が0.01W/m・K以上かつ10W/m・K以下の材料で形成されていることが好ましく、熱伝導率が5W/m・K以下の材料で形成されていることがより好ましい。第2の型の形成材料の熱伝導率は低いほど好ましく、それによって上記のような高い加熱効率、優れた省エネルギー化が実現可能となる。ただし、あまりにも接触面の熱伝導率が低い場合、固着剤の固化工程において賦形型を閉じた状態で冷却を行う場合に型内からの放熱が進行しないために、プリフォームの冷却に時間を要することが懸念される。従って、接触面の形成材料は、0.01W/m・K以上、さらには0.1W/m・K以上の熱伝導率を有することが好ましい。

このような低い熱伝導率の接触面の形成材料として、少なくとも5mmの厚さを持つ非金属材料が挙げられ、中でも製造のしやすさ等から、低熱伝導率でかつ耐熱性の高い樹脂等の材料が好ましい。例えば、エポキシ樹脂(熱伝導率:0.2〜0.4W/m・K)、フェノール樹脂(同:0.13〜0.25W/m・K)、ベークライト樹脂(同:0.33〜0.67W/m・K)、PTFE樹脂(約0.25W/m・K)といった汎用樹脂や、ケミカルウッド(熱伝導率:0.1〜1.8W/m・K)、耐熱ボード材(例えば、ロスナボード(日光化成株式会社製)、同:0.24W/m・K)といった材料も使用することができる。ただし、例示した材料に限定されるものではない。また、耐熱性は、プリフォームの賦形温度、上記固着材としての熱可塑性樹脂を溶融させるための温度に耐えられるだけの耐熱性があればよい。

ただし、非金属材料のうちフィルムのような薄物の素材は、上記接触面の形成材料として相応しくない。バギングフィルムによる賦形では、前述した通り、人手による作業が多くなり、生産性の低下やコストの増加という問題が生じ得る。また、第2の型側に形状を付与することができなくなる恐れもある。それに加えて、薄物の素材は外気温の影響を強く受けやすいので、加熱源を設けた第1の型から伝達された熱を放熱してしまう。そのため、第2の型側にも加熱源を設ける必要が生じ得る。この第2の型は、少なくとも5mm以上の厚みを持っていることが好ましい。

これに対し、第1の型は、基材側に向けての伝熱のための比較的高い熱伝導率を有する材料で形成されていることが好ましく、とくに金属製であることが好ましい。例えば、アルミニウム(熱伝導率:204〜230W/m・K)、炭素鋼(同:36〜53W/m・K)、クロム鋼(同:22〜60W/m・K)等を使用することができる。ただし、例示した材料に限定されるものではない。

また、前述したように、本発明における第2の型には加熱機構が設けられないので、容易に分割型に構成できる。分割型に構成することにより、複雑な形状のプリフォームの賦形にも対応できるようになる。

上記積層体を構成する強化繊維基材の種類は、特に限定されず、炭素繊維基材やガラス繊維基材、アラミド繊維基材、さらにはこれらを組み合わせたハイブリッド構成の強化繊維基材を使用可能であり、中でも、RTM成形に際して高い寸法精度をもってプリフォームの賦形が求められる炭素繊維基材からなる場合、本発明がとくに有効である。

また、本発明に係るプリフォームの製造装置において使用する強化繊維基材について、前記固着剤のガラス転移温度(Tg)が50〜80℃の範囲にあることが望ましい。固着剤のTgが50℃を下回る場合、基材の輸送時に基材同士が貼りついてしまう等、ハンドリング性が悪くなる恐れがある。逆に80℃を超える場合、賦形温度を上昇させる必要があり、耐熱温度の高い特殊な材料を、特に第2の型において用いる必要が生じる恐れがある。

強化繊維基材の表面に付着させた固着剤としては、熱可塑性樹脂を主成分とするものであることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルホルマールなどがあるが、特に限定するものではない。樹脂材料が熱可塑性樹脂を主成分とするものであると、強化繊維織物に散布し固着させる場合、さらには強化繊維織物を積層、立体形状へと変形させた後に層間を接着させる場合の取り扱い性が向上し、生産性が向上する。なお、主成分とは樹脂材料を構成する成分の中で、その割合が最も多い成分のことをいう。ただし、固着剤にエポキシ樹脂やフェノール樹脂といった熱硬化性樹脂を含むことを制限するものではなく、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を適宜選択して使用することができる。

本発明に係るプリフォームの製造方法は、熱可塑性樹脂を主成分とする固着材を付着させた強化繊維基材を複数枚積層した積層体を、互いに対向する第1の型、第2の型から構成される賦形型によりプレスにより所定形状に賦形するとともに、加熱により強化繊維基材間に存在する前記固着材を溶融させ、溶融後に冷却することにより前記固着材を固化させ強化繊維基材同士を接着させて賦形形状を保持する、RTM成形に用いるプリフォームを製造する方法であって、前記加熱において、第1の型からのみ加熱するとともに、第2の型の少なくとも前記強化繊維基材と接触する接触面を、熱伝導率が0.01W/m・K以上かつ10W/m・K以下で第1の型より熱伝導率の低い、少なくとも5mmの厚さを持つ非金属材料で形成して第2の型側への熱伝導を抑えることを特徴とする方法からなる。

このようなプリフォームの製造方法においても、上記接触面が、熱伝導率が0.01W/m・K以上かつ10W/m・K以下の材料で形成されていることが好ましく、5W/m・K以下の材料で形成されていることがより好ましい。

また、上記接触面が、先に例示したような少なくとも5mmの厚さを持つ非金属材料で形成されていることが好ましく、第1の型も、先に例示したような金属材料で形成されていることが好ましい。ただし、前述の理由から、この方法においても、接触面の形成材料は、0.01W/m・K以上、さらには0.1W/m・K以上の熱伝導率を有することが好ましい。

また、加熱機構が設けられない第2の型は、分割型から構成することができ、それによって複雑な形状への賦形にも高い寸法精度をもって容易に対応できるようになる。

また、本発明に係るプリフォームの製造方法においては、上記冷却の過程において、上記積層体をプレスした状態のまま冷却を行うようにすることが可能である。もし、プレスを解放した状態で冷却した場合、解放された系で固着材が固化することになり、プリフォームの寸法精度が低下する恐れがある。一方、このようにすれば、加熱による賦形動作に続き、連続的に冷却動作を行うことができるので、賦形時間を短縮して製造効率を向上することもできる。

また、前述したように、用いる強化繊維基材の種類は特に限定されないが、本発明は強化繊維基材が炭素繊維基材からなる場合にとくに有効なものである。

また、本発明に係るプリフォームの製造方法においても、前記固着剤のガラス転移温度(Tg)が50〜80℃の範囲にあることが望ましい。

発明では、寸法精度の高いプリフォームが、少ない熱エネルギーで効率よく製造される。

このように、本発明によれば、放熱を小さく抑え効率よく基材を加熱できるようになり、加熱効率を上昇させて省エネルギー化をはかることが可能になる。また、複雑な形状への賦形に際しても、高い寸法精度をもってかつ高い生産性をもって所望のRTM成形に用いるプリフォームを確実にかつ容易に製造できるようになる。

本発明の一実施態様に係るプリフォームの製造装置の概略断面図である。

本発明の実施例、比較例に用いた試験装置の概略構成図である。

本発明の実施例における温度分布の一例を示す概略特性図である。

以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。 図1は、本発明の一実施態様に係るプリフォームの製造装置1を示している。このプリフォームの製造装置1においては、互いに対向する第1の型としての下型2および第2の型としての上型3から構成される賦形型4内に、熱可塑性樹脂を主成分とする固着材を付着させた強化繊維基材を複数枚積層した積層体5が配置される。下型2にのみ、加熱機構6としての、温または加熱されたオイルを循環させる熱媒流通路が配設されており、本実施態様では、さらに下型2に、空冷または水冷方式の冷却手段7が設けられている。加熱機構としては、上記のような熱媒循環方式の他に、ヒータを備えた機構に構成することも可能である。冷却手段7としては、例えば、圧縮空気を下型2に設けた貫通孔からプリフォームに向けて供給することによりプリフォームを冷却する方式か、下型2内に設けた流通路中に冷却水を循環させる方式を採用することができる。また、本実施態様では、加熱機構6が設けられていない上型3は、複数に分割された分割型に構成されている。この上型3には、上型3を下型2に対して開閉するとともに、積層体5の賦形のための押圧(プレス圧)を発生するプレス機構8が連結されている。

このような賦形型4内に積層体5が配置され、該賦形型4で、下型2からの加熱とプレス機構8による上型3からの加圧を介して積層体5が所定形状に賦形されることにより、RTM成形に用いるプリフォームが製造される。そして、賦形型4における上型3は、下型2より熱伝導率の低い材料から構成されている。より具体的には、例えば、下型2がアルミニウム(20℃の熱伝導率:228W/m・K)またはアルミニウム合金や、スチール(20℃の純鉄の熱伝導率:72.7W/m・K)などの金属製に構成され、上型3が耐熱性のある樹脂製(例えば、20℃のフェノール樹脂の熱伝導率:0.233W/m・K)に構成されている。

上記のようなRTM成形に用いるプリフォームの製造装置1においては、積層体5が、賦形型4の下型2、上型3間で、プレスにより所定形状に賦形されるとともに、下型2側からの加熱機構6による加熱により強化繊維基材間に存在する固着材が溶融され、溶融後に冷却手段7による冷却により固着材が固化され強化繊維基材同士が接着されて賦形形状が保持される。上記加熱においては、加熱機構6が設けられた下型2側からのみ加熱が行われることになるが、上型3が下型2より熱伝導率の低い材料から構成されているので、この上型3への熱伝導、さらにはこの上型3からの外部に向けての放熱が低く抑えられる。その結果、賦形型4内に配置されている、熱可塑性樹脂を主成分とする固着材を付着させた強化繊維基材の積層体5が、少ない熱量でもって効率よく固着材の溶融に必要な熱量が付与され、しかる後に固化された固化材により基材同士が接着されることになる。このように加熱機構6による加熱の効率を上昇させることにより、賦形時の使用エネルギー量が低減され、省エネルギー化が可能になる。また、前述したような変形しやすい断熱材を介在させる必要もないので、賦形されるプリフォームの寸法精度を高めることが可能になる。さらに、加熱機構6が設けられない上型3は、図示例の如く、分割型に構成することができるので、複雑な形状への賦形にも対応できるようになり、かつ、その複雑な形状への賦形を高い寸法精度をもって行うことができるようになる。

上記のような本発明に係る構成による効果を調べるために、図2に示すような試験を行った。加熱機構11(図示例では、ヒータ)を備え、100℃に加熱した下型12上に、炭素繊維織物13を4枚積層した積層体14を設置し、上型15を閉じてからの各炭素繊維織物13層間および積層体14の両側に配置しておいた熱電対16[(1)、(2)、(3)、(4)、(5)]により各箇所の温度を測定した。なお、上型15には加熱源となるものは設置していない。下型12をアルミニウム製とし、上型15を樹脂製(ケミカルウッド、熱伝導率:1.5W/m・K)としたものを実施例とし、下型12をアルミニウム製(熱伝導率:228W/m・K)とし、上型15もアルミニウム製としたものを比較例として試験を実施し、型を閉じてから各箇所の温度がどのように変化するかを測定した。試験の結果を表1に示す。

表1に示すように、上型が樹脂製の場合(実施例)、加熱源から最も離れた箇所(5)でも、30 秒後には 97.4℃ に到達している。これは、下型からの熱が熱伝導率の低い上型に伝わることなく、ほとんど炭素繊維織物の加熱に使用されていることを示している。これに対して、上型が熱伝導率の高いアルミニウム製の場合(比較例)、加熱源から最も離れた箇所(5)では、600 秒経過しても 53.0℃ にしか到達しない上、加熱源に最も近い箇所(1)ですら、78.1℃ までしか上昇しなかった。これは下型の熱が上型側に逃げていることを示している。得られたプリフォームも、実施例の場合は各層間がしっかりと固着されたプリフォームが得られたのに対して、比較例の場合では、固着材が溶融しなかったために、層間の固着が十分になされなかった。このため、プリフォームを搬送する際に形状が崩れてしまい、RTM成形に用いることができなかった。

図3は本発明の実施例における温度分布の一例を示す概略特性図である。図3は、第1の型としての下型2と第2の型としての上型3の間に強化繊維基材の積層体5(5層構造)が挟まれ、下型2から上型3に向かって熱の移動Qが生じている状態における各地点の温度を模式的に示したものである。T(T1〜T8)は各地点の接触面の温度(℃)、l(l1〜l7)は各層の厚み(m)、λ(λ1〜λ7)はそれぞれの材料の熱伝導率(W/m・K)である。

図3において、下型2、上型3および積層体5の各層を互いに密着する平行平面板とみなし、層間の接触面における接触熱抵抗を無視し、熱の移動Qが定常熱伝導(T1一定かつT8一定)であると仮定した場合に、単位面積当たり移動する熱量q(W/m2)は、下記の数式によって表される。

このとき、T2からT7は下記の数式で表すことができる(ただし、2 ≦ i ≦ 7)。

ここで、T1を100℃、T8を25℃と仮定し、ピッチ系炭素繊維(Cytec社製、Theonel K−1000、λ2〜λ6=1000W/m・K)とPAN系炭素繊維(東レ株式会社製、トレカ T300、λ2〜λ6=6.5W/m・K)、およびガラス繊維(日東紡製、Eガラス系、λ2〜λ6=1.03W/m・K)のそれぞれにおいて、T2からT7を求めた結果を表2〜5に示す。ただし、l1=0.02m、l2〜l6=0.0015m、l7=0.1mとする。

表2は、下型2がアルミニウム製(λ1=228W/m・K)、上型3がアルミニウム製(λ7=228W/m・K)の場合の計算結果である。

表3は、下型2がアルミニウム製(λ1=228W/m・K)、上型3が樹脂製(λ7=1.5W/m・K)の場合の計算結果である。

表4は、下型2が炭素鋼製(λ1=45W/m・K)、上型3が炭素鋼製(λ7=45W/m・K)の場合の計算結果である。

表5は、下型2が炭素鋼製(λ1=45W/m・K)、上型3が樹脂製(λ7=1.5W/m・K)の場合の計算結果である。

表2、4から明らかなように、加熱源から離れた上型3が熱伝導率の高いアルミニウムや炭素鋼からなる場合には上型3内での温度差が小さくなるため、上型3表面の温度が低下する。特に、強化繊維基材が熱伝導率の低いPAN系の炭素繊維やガラス繊維からなる場合には下型2からの熱伝導が小さくなるため、上型3表面の温度の低下が顕著となることが分かる。

しかし、上型3を熱伝導率の小さい樹脂製のものに変えた場合には上型3内の熱伝導が律速となり、温度差が大きくなるため、強化繊維基材として熱伝導率の小さいPAN系の炭素繊維やガラス繊維を用いたとしても、強化繊維基材の各層内での温度低下を小さくすることができる。

上記の計算結果を実際のプリフォーム作製装置に当てはめると、上型3が熱伝導率の高い材料からなる場合には、上型3内での熱伝達が進行するため、上型3近傍の強化繊維基材の各層の加熱には時間を要することが考えられる。一方、上型3が熱伝導率の低い材料からなる場合には、上型3内での熱伝達が律速になることから、上型3近傍の温度低下を防ぐことができ、強化繊維基材が熱伝導率の低いPAN系の炭素繊維であっても、強化繊維基材の各層を迅速に加熱することができる。

本発明に係るプリフォームの製造装置および製造方法は、RTM成形に用いるプリフォームを、省エネルギー化をはかりつつ精度よく賦形することが求められるあらゆる用途に適用可能である。

1 プリフォームの製造装置 2 第1の型としての下型 3 第2の型としての上型 4 賦形型 5 強化繊維基材の積層体 6 加熱機構 7 冷却手段 8 プレス機構 Q 熱の移動 l、l1〜l7 厚み T、T1〜T8 接触面の温度 λ、λ1〜λ7 熱伝導率

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