二層構造を有する複合成形品

申请号 JP2010514478 申请日 2009-05-26 公开(公告)号 JPWO2009145165A1 公开(公告)日 2011-10-13
申请人 三菱瓦斯化学株式会社; 国立大学法人京都工芸繊維大学; 发明人 岡村 顕; 顕 岡村; 聡 長井; 聡 長井; 濱田 泰以; 泰以 濱田; ユーウェイ リオン; ユーウェイ リオン;
摘要 極性を有する熱可塑性樹脂、特にポリアセタールを他の樹脂と簡便に複合接着させた成形品を提供することを課題とする。本発明によれば、極性を有する熱可塑性樹脂と、脂肪族エステル構造を主成分とする樹脂とを、少なくとも両方の材料が 接触 している面を溶融状態にして複合接着させた成形品を提供することができる。
权利要求
  • 極性を有する熱可塑性樹脂(A)を含有する成形品(a)を金型内部に配置し、脂肪族エステル構造を有する樹脂 (B)を、該熱可塑性樹脂(A)の融点より高い温度で可塑化して前記金型内部へ射出し、該成形品(a)に接触させて得られる二層構造を有する複合成形品であって、前記熱可塑性樹脂(A)がポリアセタール樹脂である、複合成形品。
  • 脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)を含有する成形品(b)を金型内部に配置し、極性を有する熱可塑性樹脂(A)を、該樹脂(B)の融点より高い温度で可塑化して前記金型内部へ射出し、該成形品(b)に接触させて得られる二層構造を有する複合成形品であって、前記熱可塑性樹脂(A)がポリアセタール樹脂である、複合成形品。
  • 前記成形品(a)が、フィルム、シート又は繊維複合体である、請求項1又は2に記載の複合成形品。
  • 前記極性を有する熱可塑性樹脂(A)が、前記脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)の一部を予め含有する、請求項1から3の何れか1項に記載の複合成形品。
  • 前記脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)が、前記極性を有する熱可塑性樹脂(A)の一部を予め含有する、請求項1から3の何れか1項に記載の複合成形品。
  • 前記極性を有する熱可塑性樹脂(A)が、オキシメチレン繰り返し単位100mol当たり、下記(1)式で表される炭素数2以上のオキシアルキレン繰り返し単位を0.2〜15mol (DOL=0.5〜43phr) 含有してなるポリアセタールである、請求項1から5の何れか1項に記載の複合成形品。


    (式中、R 0 ,R 0 'は各々、水素原子、アルキル基もしくはアルキル基を有する有機基、フェニル基またはフェニル基を有する有機基を示す。mは2〜6の整数を示す。)
  • 前記脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)が、ポリ乳酸(PLA)、ポリエステルカーボネート(PEC)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1から6の何れか1項に記載の複合成形品。
  • 極性を有する熱可塑性樹脂(A)を含有する成形品(a)を金型内部に配置する工程と、
    脂肪族エステル構造を有する樹脂 (B)を、該熱可塑性樹脂(A)の融点より高い温度で可塑化して前記金型内部へ射出し、該成形品(a)に接触させて二層構造を形成する工程とを有する複合成形品の製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂(A)がポリアセタール樹脂である、複合成形品の製造方法。
  • 脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)を含有する成形品(b)を金型内部に配置する工程と、
    極性を有する熱可塑性樹脂(A)を、該樹脂(B)の融点より高い温度で可塑化して前記金型内部へ射出し、該成形品(b)に接触させて二層構造を形成する工程とを有する複合成形品の製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂(A)がポリアセタール樹脂である、複合成形品の製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、極性を有する熱可塑性樹脂材料を含有する層および脂肪族エステル構造を主成分とする樹脂系材料を含有する層の二層構造を有する複合成形品に関し、更に、本発明の好ましい態様は、上記二層構造を有し、界面の接着強度が高く、優れた機械物性を有する複合成形品に関する。

    近年、地球規模での環境問題に対して、産業廃棄物が環境を汚染することを防止するために、生分解性(生物分解性、または自然分解性)の素材を使用することが注目されている。 更に最近では、地球資源の枯渇、温暖化に伴うCO 排出量に対する自主規制が強く求められるなか、石油由来でなく天然物由来からなる素材や、焼却処理の際に必要な熱量やCO 発生量の少ない素材が注目されている。
    従来より、脂肪族エステル構造を有する重合体に生分解性があることが知られており、微生物によって生産されるポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(PHB)、合成高分子であるポリカプロラクトン(PCL)、コハク酸およびブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネート(PBS)またはポリブチレンサクシネート・アジペート(PBSA)、ポリエステルカーボネート(PEC)、および発酵により生産されるL−乳酸および/またはD−乳酸を主たる原料としたポリ乳酸(PLA)などが代表的なものである。 これらの中で、天然物由来からなる素材として、例えばPLAが挙げられる。
    これら脂肪族エステル構造を有する重合体はPLAを除くと、一般にポリエチレン類似の物性を有する成形性・生分解性の良好なポリマーである。 しかし、剛性が要求される分野や引張強度が要求される分野では充分な強度を持たない。 剛性を改善するためには、タルクなどの充填材やナノコンポジット化技術による改善が可能であるが、流動性の低下なども問題があり、この改良が望まれていた。 また、PLAについては耐熱性や靭性の向上、更には耐加分解性などが強く求められていた。

    極性を有する熱可塑性樹脂としては特に限定が無いが、例えばポリアセタールは脂肪族エーテル型、もしくは脂肪族エーテルを主成分としたポリマーであり、主として石油に依存しない原料であるメタノールから誘導され、環境負荷の低い材料と考えられる。 機械的性質、摺動特性、摩擦・磨耗特性、耐薬品性などに優れるエンジニアリングプラスチックスとして使用される材料であり、その用途は自動車、OA機器などの基幹部品として多く用いられており、その規則的な一次構造に由来して高い結晶性を示すために射出成形分野を中心に拡大してきた。
    ポリアセタールの高い結晶性は他の樹脂との複合化においては、界面の接着性において障害となりやすく、成功した例として知られる組合せとしては、ポリウレタンとのポリマーアロイ材料程度である。 また同様に、官能基が実質ポリマー末端のみであるため、成形片表面の反応活性も低く、他の材料との接着強度や加飾性に劣るという問題があった。 そのため、界面の接着性を改良するために、種々の相溶化剤を用いたり、コロナ放電処理、イオンエッチング処理などを行ったり、更にはポリマーの一次構造の改質を行ったり、といった試みがなされてきた。 しかし、これでは操作が多い割には界面における接着強度が必ずしも十分に改良されなかった。
    本出願人は、脂肪族エステル構造を有する重合体とオキシメチレン構造を有する重合体との相溶性が高く、得られる樹脂組成物中のオキシメチレン構造を有する重合体の結晶化度を低下させることにより、充分な生分解性を発現するとともに、機械的特性に優れた樹脂組成物を見出している(特許文献1)が、優れた特徴を有する各成分を含有する層により構成される複合成形品について、その開発が強く望まれていた。 また、生分解性樹脂との積層フィルムについて幾つかの開示がある(特許文献2、3)が、これは実質、同じポリエステル同士の共押出成形による積層フィルムに関するものである上に、界面接着性の向上に関しては示唆がなかった。

    特開2000−17153号公報

    特開2005−144726号公報

    特開2005−219487号公報

    本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、極性を有する熱可塑性樹脂、特にポリアセタールを他の樹脂と簡便に複合接着させた成形品を提供することである。

    本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、極性を有する熱可塑性樹脂(A)と、脂肪族エステル構造を主成分とする樹脂(B)とを用いて、少なくとも両方の材料が接触している面が溶融状態となることで高い接着強度を発現させることを見出し、本発明を完成させるに至った。

    即ち本発明は、以下に示す多層フィルム、多層シート、複合繊維、更には、フィルム、シート、射出成形品などのインサート、アウトサート成形、更にはサンドイッチ成形、ウェルドを形成するような複合成形品に関するものである。
    本発明は、以下の態様を含むものである。
    (1)極性を有する熱可塑性樹脂(A)を含有する成形品(a)を金型内部に配置し、脂肪族エステル構造を有する樹脂 (B)を、該熱可塑性樹脂(A)の融点より高い温度で可塑化して前記金型内部へ射出し、該成形品(a)に接触させて得られる二層構造を有する複合成形品であって、前記熱可塑性樹脂(A)がポリアセタール樹脂である、複合成形品;
    (2)脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)を含有する成形品(b)を金型内部に配置し、極性を有する熱可塑性樹脂(A)を、該樹脂(B)の融点より高い温度で可塑化して前記金型内部へ射出し、該成形品(b)に接触させて得られる二層構造を有する複合成形品であって、前記熱可塑性樹脂(A)がポリアセタール樹脂である、複合成形品;
    (3)前記成形品(a)が、フィルム、シート又は繊維複合体である、上記(1)又は(2)に記載の複合成形品;
    (4)前記極性を有する熱可塑性樹脂(A)が、前記脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)の一部を予め含有する、上記(1)から(3)の何れかに記載の複合成形品;
    (5)前記脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)が、前記極性を有する熱可塑性樹脂(A)の一部を予め含有する、上記(1)から(3)の何れかに記載の複合成形品;
    (6)前記極性を有する熱可塑性樹脂(A)が、オキシメチレン繰り返し単位100mol当たり、下記(1)式で表される炭素数2以上のオキシアルキレン繰り返し単位を0.2〜15mol (DOL=0.5〜43phr) 含有してなるポリアセタールである、上記(1)から(5)の何れかに記載の複合成形品;



    (式中、R

    0 ,R

    0 'は各々、水素原子、アルキル基もしくはアルキル基を有する有機基、フェニル基またはフェニル基を有する有機基を示す。mは2〜6の整数を示す。)


    (7)前記脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)が、ポリ乳酸(PLA)、ポリエステルカーボネート(PEC)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種以上である、上記(1)から(6)の何れかに記載の複合成形品;


    (8)極性を有する熱可塑性樹脂(A)を含有する成形品(a)を金型内部に配置する工程と、脂肪族エステル構造を有する樹脂 (B)を、該熱可塑性樹脂(A)の融点より高い温度で可塑化して前記金型内部へ射出し、該成形品(a)に接触させて二層構造を形成する工程とを有する複合成形品の製造方法であって、前記熱可塑性樹脂(A)がポリアセタール樹脂である、複合成形品の製造方法;


    (9)脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)を含有する成形品(b)を金型内部に配置する工程と、 極性を有する熱可塑性樹脂(A)を、該樹脂(B)の融点より高い温度で可塑化して前記金型内部へ射出し、該成形品(b)に接触させて二層構造を形成する工程とを有する複合成形品の製造方法であって、前記熱可塑性樹脂(A)がポリアセタール樹脂である、複合成形品の製造方法。

    本発明によれば、極性を有する熱可塑性樹脂と脂肪族エステル構造を主成分とする樹脂との接触表面の改質に好適であり、尚且つ、界面接着強度が高く優れた複合成形材料を提供することができる。

    図1は、実施例1〜4および比較例1〜6において行った溶融状態における接着試験を示す概略図である。

    図2は、実施例5〜13および比較例7〜13において行ったフィルムと溶融樹脂との接着試験を示す概略図である。

    以下、本発明を詳細に説明する。
    本発明の一実施形態は、極性を有する熱可塑性樹脂(A)を含有する成形品(a)を金型内部に配置し、脂肪族エステル構造を有する樹脂 (B)を、該熱可塑性樹脂(A)の融点より高い温度で可塑化して前記金型内部へ射出し、該成形品(a)に接触させて得られる二層構造を有する複合成形品であって、前記熱可塑性樹脂(A)がポリアセタール樹脂である、複合成形品である。
    また、本発明の別の実施形態は、脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)を含有する成形品(b)を金型内部に配置し、極性を有する熱可塑性樹脂(A)を、該樹脂(B)の融点より高い温度で可塑化して前記金型内部へ射出し、該成形品(b)に接触させて得られる二層構造を有する複合成形品であって、前記熱可塑性樹脂(A)がポリアセタール樹脂である、複合成形品である。

    本発明で使用されるポリアセタール樹脂は、アセタール構造(−O-CRH−)(但し、Rは水素原子、又は有機基を示す。)を繰り返し有する高分子であり、通常はRが水素原子であるオキシメチレン基(−CH O−)を主たる構成単位とするものである。 本発明に用いるポリアセタール樹脂は、この繰り返し構造のみからなるアセタールホモポリマー以外に、前記オキシメチレン基以外の繰り返し構成単位を1種以上含むコポリマー(例えば、ブロックコポリマー)やターポリマー等も含み、更には線状構造のみならず分岐、架橋構造を有していてもよい。
    前記オキシメチレン基以外の構成単位としては例えば、オキシエチレン基(−CH CH O−)、オキシプロピレン基(−CH CH CH O−)、オキシブチレン基(−CH CH CH CH O−)等の炭素原子数2〜10のオキシアルキレン基が挙げられ、特にオキシエチレン基が好ましい。 また、これらオキシアルキレン基は、炭素原子数2〜6の分岐、もしくは架橋構造を有していてもよい。 この様な、オキシメチレン基以外のオキシアルキレン構造単位の含有量としては、ポリアセタール中において0.2〜15モル%であることが好ましい。 これより少ないとポリアセタールの熱安定性が低下し、逆にこれより多いと融点が低下して優れた機械物性、耐薬品性などが実質失われてしまうことがある。

    本発明において好ましいポリアセタール樹脂は、オキシメチレン繰り返し単位100mol当たり、下記(1)式で表される炭素数2以上のオキシアルキレン繰り返し単位を0.2〜15mol (DOL=0.5〜43phr) 含有してなるポリアセタールである。


    式中、R

    0 ,R

    0 'は各々、水素原子、アルキル基又はフェニル基示す。 mは2〜6の整数を示す。 前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。

    ポリアセタール樹脂の製造方法は任意であり、従来公知の任意の方法によって製造することができる。 例えば、オキシメチレン基と、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基を構成単位とするポリアセタール樹脂の製造方法としては、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のオキシメチレン基の環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキソカン、1,3−ジオキセパン等の炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基を含む環状オリゴマーとを共重合することによって製造することができる。
    本発明に用いるポリアセタール樹脂としては、トリオキサンやテトラオキサン等の環状オリゴマーと、エチレンオキサイドまたは1,3−ジオキソランとの共重合体であることが好ましく、これらの中でもトリオキサンと1,3−ジオキソランとの共重合体であることがより好ましい。 また、その溶融粘度は、ASTM−D1238(190℃、2.16kg荷重下)に基づく溶融指数(MI)で0.01〜150g/10分であることが好ましい。

    ポリアセタール樹脂に対する添加剤としては、熱安定剤や酸化防止剤が公知であり、本発明においても好適に使用される。
    添加・配合される熱安定剤としては、メラミン、メラミン樹脂、メチロ−ルメラミン、ベンゾグアナミン、シアノグアニジン、N,N−ジアリールメラミン、CTUグアナミン(3,9−ビス[2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−卜リアザフェニル)エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)、CMTUグアナミン(3,9−ビス[1−(3,5−ジアミノ−2,4,6−卜リアザフェニル)メチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)等のアミン置換トリアジン化合物や、ポリアミド類、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、ウレタン類等が例示され、メラミンが特に好ましい。 通常、この添加量は、ポリアセタール100重量部に対して0.01〜5.0重量部であるが、例えばフィラメント材料として用いる場合には、特にこのアミン置換トリアジン化合物のうち、ホルムアルデヒド、もしくはオキシメチレン共重合体の分子末端と結合し、架橋構造を生成する化合物を添加するときにはその添加量には注意を要する。 その添加量は、得られるオキシメチレン樹脂組成物の熱安定性が加工条件に耐えうるものとする必要があるが、好ましくは0.05重量部以下とすることが必要である。 これよりも多い添加量では、延伸性を低下させる原因となる。

    酸化防止剤としては、例えば立体障害性フェノールが例示され、一般市販のフェノール系抗酸化剤として具体的には、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル〕プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、N, N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸1,6−ヘキサンジイルエステル等が挙げられる。 その中で、特にトリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好適に用いられる。 添加量としては、オキシメチレン共重合体100重量部に対して、0.01〜5.0重量部であり、好ましくは0.01〜2.0重量部、特に好ましくは0.02〜1.0重量部である。 立体障害性フェノールの配合量が少ない場合は加工時の分解により樹脂の分子量低下や分解ガスの混入が無視できなくなり、加工性が低下する問題が生じ、逆にその配合量が多過ぎる場合はブリードが多く、加工品の外観が損なわれるという問題が生じる。

    更に、本発明の本来の目的を損なわない範囲内で公知の添加剤および/または充填剤を添加することが可能である。 添加剤としては、例えば結晶核剤、上記以外の酸化防止剤、ポリアルキレングリコールなどの可塑剤、艶消し剤、発泡剤、潤滑剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、消臭剤、難燃剤、摺動剤、香料、抗菌剤等が挙げられる。 また、充填剤としてはガラス繊維、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ウィスカー等が挙げられる。 さらに、顔料、染料を加えて所望の色目に仕上げることも可能である。 また、各種モノマー、カップリング剤、末端処理剤、その他の樹脂、木粉、でんぷんなどを加えて変性することも可能である。

    本発明における脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)としては、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート・アジペート(PBSA)、ポリ乳酸(PLA)などの脂肪族ポリエステルや、ポリエステルカーボネート(PEC)、及びそれらの共重合体などが例示される。 更に必要に応じて、これら重合体への各種添加剤、例えば酸化防止剤や加水分解防止剤、光安定剤、熱安定剤、耐侯剤、顔料、滑剤を添加することができる。
    また極性を有する熱可塑性樹脂(A)と脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)とは、各々を単独で用いても良いし、各々を均一に溶融混合したものを用いても良い。 但し、二層構造を有する複合材料として層ごとの材料特性を生かすためには、一方の材料の添加量は50vol%以下、特に好ましくは30vol%以下にすべきである。

    本発明の複合成形品は、上記のごとく極性を有する熱可塑性樹脂(A)、特にポリアセテート樹脂と脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)という組み合わせを用いることを特長とするものであり、極性を有する熱可塑性樹脂(A)を含有する成形品(a)を金型内部に配置し、脂肪族エステル構造を有する樹脂 (B)を、該熱可塑性樹脂(A)の融点より高い温度で可塑化して前記金型内部へ射出し、該成形品(a)に接触させて二層構造を有する複合成形品を製造する。
    あるいは、脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)を含有する成形品(b)を金型内部に配置し、極性を有する熱可塑性樹脂(A)を、該樹脂(B)の融点より高い温度で可塑化して前記金型内部へ射出し、該成形品(b)に接触させて二層構造を有する複合成形品を製造する。
    本発明では、例えば、共押出による多層フィルム、多層シート、複合繊維や、一方のシートやフィルム上にもう1方の材料を溶融押出したラミネートフィルム、シートも含まれる。 本発明は、インサート射出成形法により複合成形品を製造することが好ましい。

    インサート成形法とは、既に賦形された異種材料を射出成形機の金型内部に固定し、もう一方の材料を射出成形することによって埋め込む成形法であり、特に金属や無機固体の素材を生かす方法として一般的な成形法である。 これと類似した成形法として、アウトサート成形法があり、これも異種材料を一体化させるために用いられる。
    サンドイッチ成形法の場合、通常、材料を可塑化させる加熱装置を備えた装置を2つ有し、これに対して共通のキャビティー、及びゲートを有する。 スキン層を形成させる材料を所定量射出し、続いてコア層を形成させる材料を同じゲートから射出する。 これにより、先に射出した材料がスキン側へ、後から射出した材料がコアを形成し、表面が他の材料で覆われた複合成形品が形成される。 共通のキャビティーを有し、ゲートが異なる場合には、キャビティー内で2つの材料が接触する面(ウェルド)が存在するのに対し、サンドイッチ成形法の場合には、基本的にはコア層が前面、スキン層で接触して覆われることになる。

    極性を有する熱可塑性樹脂(A)と脂肪族エステル構造を有する樹脂(B)とを複合化させる場合、両方の成分が少なくとも接触している一部を溶融状態とする必要がある。 溶融状態が不十分な場合には十分な接着強度が得られない。 例えば、ポリアセタールと脂肪族ポリエステルを有する樹脂との組合せの場合であれば、溶融状態が十分であれば、適当な射出条件(射出される樹脂の温度、射出速度、保時圧、保持時間、金型温度)を設定することで界面付近の両成分が混合され、共晶を形成することで高い界面強度を発現することができると考えられる。

    例えば、インサート成形の場合、射出される樹脂の温度が低すぎると、金型内にあらかじめ挿入された成形品の表面が十分に溶融せず、高い界面強度を得ることができない。 本発明においては、特に射出樹脂温度を金型内に予め挿入した成形品の融点より高い温度とすることが好ましい。 しかし、高すぎる場合には該成形品の形状が崩れたり、機械物性などが低下したりするため、上限の目安は融点に対して100℃程度である。 また、挿入された成形品の結晶化度が高い場合には、溶融に必要な熱量が多く要することになるため、射出樹脂温度はより高く設定する必要がある。 射出速度や保持圧力、保持時間は界面における相互侵入に関与すると考えられ、特に保持圧力や保持時間は成形効率や成形品概観に影響がない範囲で高く設定するほうが好ましい。

    以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

    〈実施例1〜4,比較例1〜6〉
    溶融状態における接着試験
    Table 1に記載の樹脂材料を図1に示す要領で、190℃に加熱したホットプレート上でそれぞれ溶融状態とし、その溶融状態を保ったままクルっと重ね合わせて熱プレス(5kgの荷重で10秒間)した後、放冷した。 2成分間の接着状態を観察し、接着強度をランク付けした。
    熱可塑性樹脂(A)であるポリアセタール樹脂と脂肪族ポリエステル構造を有する樹脂(B)との組合せは、溶融状態で接触することにより強い接着強度を有することが確認された。

    Table 1 溶融状態における接着試験



    POM(ポリアセタール、融点155℃): 三菱エンジニアリングプラスチックス製 ユピタール V20−HE


    PLA(ポリ乳酸、融点170℃): ユニチカ製 テラマック TE−2000


    PBS(ポリブチレンサクシネート、融点114℃): 昭和高分子製 ビオノーレ#1001


    PBSA(ポリブチレンサクシネート・アジペート、融点95℃): 昭和高分子製 ビオノーレ#3001


    PEC(ポリエステルカーボネート、融点106℃): 三菱ガス化学製 ユーペック PEC350


    P40B(熱可塑性ポリエステルエラストマー、融点180℃): 東洋紡製 ペルプレン


    PET(ポリエチレンテレフラレート、融点270℃):鐘紡合繊製 ベルペット IP123A


    PBT(ポリブチレンテレフタレート、融点225℃):三菱エンジニアリングプラスチックス製 ノバデュラン5010R5


    PE(ポリエチレン、融点100℃): プライムポリマー製 ハイゼックス1700J


    PP(ポリプロピレン、融点160℃): プライムポリマー製 プライムポリプロ F113G

    〈実施例5〜13、比較例7〜13〉
    フィルムと溶融樹脂との接着試験
    次にTable 2に示すフィルムと溶融樹脂との組合せにおいて簡易接着試験を行った。 フィルムは口径φ25mmの単軸押出機と200mm幅のTダイ(ハンガータイプ)にて未延伸フィルム、もしくはペレットを熱プレスしてフィルムを調製して用いた。 同じく図2中の要領でフィルムと溶融樹脂を接触させてプレスした。 即ち、片方をフィルムとし、片方の樹脂を溶融状態として、クルっと重ねて熱プレス(約5kgの荷重で10秒間)した。 フィルムへの接着状態を観察し、接着強度をランク付けした。
    溶融樹脂の温度をフィルムの融点より高い温度とすることで接触時にフィルム表面が一部溶融し、強い接着強度を示した。 また、結晶化度の高いポリアセタールフィルムを用いる場合には、溶融樹脂温度をより高く設定する必要があった。 また、実施例7が示すように、フィルム成分にポリアセタールの特長を損なわない程度のPLAを添加して結晶化度を下げることで、接着性が向上した。

    Table 2 フィルムと溶融樹脂との接着試験

    〈実施例14〜28〉
    フィルムインサート成形
    Table 3に示す組合せ及び射出条件でフィルムインサート成形を行った。 フィルムの接着状況はフィルムの90°剥離試験を行って測定した。

    Table 3 フィルムインサート成形

    〈実施例29、比較例14〜17〉
    ウェルド成形
    Table 4に示す組合せでウェルド成形を行い、ダンベル片を成形した。 引張試験を行うとともに破断箇所の観察を行った。

    Table 4 ウェルド成形片の引張試験


    実施例29では、ウェルド強度及び伸びが低下することなく、特に伸びはネッキングを生じて高い伸びを維持しており、ウェルド界面での破断が生じなかった。

    〈実施例30〜32〉
    サンドイッチ成形
    Table 5に示す組合せでサンドイッチ成形を行い、ダンベル片を成形した。 曲げ試験を行ったところ、曲げ弾性率、強度は、各成分の試験片断面の占有率に依存し、曲げ応力に対して界面における剥離は認められなかった。

    Table 5 サンドイッチ成形片の曲げ試験結果

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