光学膜用組成物、光学膜を有する基材、成形体、および成形体の製造方法

申请号 JP2017505873 申请日 2016-07-08 公开(公告)号 JPWO2017022175A1 公开(公告)日 2018-05-31
申请人 パナソニックIPマネジメント株式会社; 发明人 堀 賢哉; 井上 博文; 柴田 信彦; 竹内 秀樹; 杉本 誠志;
摘要 光学膜用の組成物は、シリカ系中空微粒子と、マトリックス前駆体と、不揮発性液体と、揮発性溶媒と、を含む。不揮発性液体の25℃での蒸気圧は500Pa以下であり、不揮発性液体の沸点は250℃以上である。揮発性溶媒は、不揮発性液体よりも高い揮発性を有する。不揮発性液体の含有量は、シリカ系中空微粒子およびマトリックス前駆体成分を合わせた質量100質量部に対して、0.1質量部以上、30質量部以下である。
权利要求

シリカ系中空微粒子と、 マトリックス前駆体と、 25℃での蒸気圧が500Pa以下であり、かつ沸点が250℃以上である不揮発性液体と、 前記不揮発性液体よりも高い揮発性を有する揮発性溶媒と、を含み、 前記不揮発性液体の含有量が、前記シリカ系中空微粒子および前記マトリックス前駆体を合わせた質量100質量部に対して、0.1質量部以上、30質量部以下である、 光学膜用の組成物。前記不揮発性液体は、流動パラフィン、フッ素化合物、シリコーン化合物、およびエーテル化合物のうちの少なくとも1つである、 請求項1に記載の光学膜用の組成物。23℃での前記不揮発性液体の粘度が1Pa・s以下である、 請求項1、2のいずれか一項に記載の光学膜用の組成物。前記マトリックス前駆体が熱硬化性樹脂である、 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学膜用の組成物。基材層と、 前記基材層の一方の表面に設けられた光学膜と、を備え、 前記光学膜は、 シリカ系中空微粒子と、 マトリックスと、 25℃での蒸気圧が500Pa以下であり、かつ沸点が250℃以上である不揮発性液体と、を含み、 前記不揮発性液体の含有量が、前記シリカ系中空微粒子および前記マトリックスを合わせた質量100質量部に対して、0.1質量部以上、30質量部以下である、 基材。前記不揮発性液体は、流動パラフィン、フッ素化合物、シリコーン化合物、およびエーテル化合物のうちの少なくとも1つである、 請求項5に記載の基材。23℃での前記不揮発性液体の粘度が1Pa・s以下である、 請求項5、6のいずれか一項に記載の基材。前記マトリックスが、熱硬化性樹脂の硬化物である、 請求項5〜7のいずれか一項に記載の基材。前記シリカ系中空微粒子と前記マトリックスとを合わせた屈折率が1.3以上、1.49以下であり、 前記不揮発性液体の屈折率と前記シリカ系中空微粒子と、前記マトリックスとを合わせた屈折率との差が0.08以下である、 請求項5〜8のいずれか一項に記載の基材。成形本体部と、 前記成形本体部の表面の少なくとも一部を覆った請求項5に記載の基材と、を備え、 前記成形本体部は、前記基材と一体的に成形されている、 成形体。前記不揮発性液体は、流動パラフィン、フッ素化合物、シリコーン化合物、およびエーテル化合物のうちの少なくとも1つである、 請求項10に記載の成形体。23℃での前記不揮発性液体の粘度が1Pa・s以下である、 請求項10、11のいずれか一項に記載の成形体。前記マトリックスが、熱硬化性樹脂の硬化物である、 請求項10〜12のいずれか一項に記載の成形体。前記シリカ系中空微粒子と前記マトリックスとを合わせた屈折率が1.3以上、1.49以下であり、 前記不揮発性液体の屈折率と前記シリカ系中空微粒子と、前記マトリックスとを合わせた屈折率との差が0.08以下である、 請求項10〜13のいずれか一項に記載の成形体。基体の一方の表面に、シリカ系中空微粒子と、マトリックス前駆体と、25℃での蒸気圧が500Pa以下であり、かつ沸点が250℃以上である不揮発性液体と、前記不揮発性液体よりも高い揮発性を有する揮発性溶媒とを含み、前記不揮発性液体の含有量が前記シリカ系中空微粒子および前記マトリックス前駆体を合わせた質量100質量部に対して、0.1質量部以上、30質量部以下である光学膜用の組成物を塗布するステップと、 前記揮発性溶媒を乾燥させて、前記基体の表面に乾燥膜を形成するステップと、 前記乾燥膜が形成された前記基体を、樹脂成形用の型の中に、前記乾燥膜が前記型と接するように配置するステップと、 前記基体において前記乾燥膜が形成されていない表面に接して樹脂を成形して成形本体部を作製するステップと、を備え、 前記乾燥膜においては前記マトリックス前駆体が完全には硬化しておらず、前記樹脂を成形するときに前記マトリックス前駆体を完全に硬化させて、前記成形本体部の表面に光学膜を有する基材を形成する、 成形体の製造方法。前記マトリックス前駆体が熱硬化性樹脂である、 請求項15に記載の成形体の製造方法。

シリカ系中空微粒子と、 マトリックス前駆体と、 25℃での蒸気圧が500Pa以下であり、かつ沸点が250℃以上である不揮発性液体と、 前記不揮発性液体よりも高い揮発性を有する揮発性溶媒と、を含み、 前記不揮発性液体の含有量が、前記シリカ系中空微粒子および前記マトリックス前駆体を合わせた質量100質量部に対して、5質量部以上、30質量部以下であり、 前記不揮発性液体の屈折率が1.4以上、1.5以下である、 光学膜用の組成物。前記不揮発性液体は、流動パラフィン、フッ素化合物、シリコーン化合物、およびエーテル化合物のうちの少なくとも1つである、 請求項1に記載の光学膜用の組成物。23℃での前記不揮発性液体の粘度が1Pa・s以下である、 請求項1、2のいずれか一項に記載の光学膜用の組成物。前記マトリックス前駆体が熱硬化性樹脂である、 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学膜用の組成物。基材層と、 前記基材層の一方の表面に設けられた光学膜と、を備え、 前記光学膜は、 シリカ系中空微粒子と、 マトリックスと、 25℃での蒸気圧が500Pa以下であり、かつ沸点が250℃以上である不揮発性液体と、を含み、 前記不揮発性液体の含有量が、前記シリカ系中空微粒子および前記マトリックスを合わせた質量100質量部に対して、5質量部以上、30質量部以下であり、 前記不揮発性液体の屈折率が1.4以上、1.5以下である、 基材。前記不揮発性液体は、流動パラフィン、フッ素化合物、シリコーン化合物、およびエーテル化合物のうちの少なくとも1つである、 請求項5に記載の基材。23℃での前記不揮発性液体の粘度が1Pa・s以下である、 請求項5、6のいずれか一項に記載の基材。前記マトリックスが、熱硬化性樹脂の硬化物である、 請求項5〜7のいずれか一項に記載の基材。前記シリカ系中空微粒子と前記マトリックスとを合わせた屈折率が1.3以上、1.49以下であり、 前記不揮発性液体の屈折率と前記シリカ系中空微粒子と、前記マトリックスとを合わせた屈折率との差が0.08以下である、 請求項5〜8のいずれか一項に記載の基材。成形本体部と、 前記成形本体部の表面の少なくとも一部を覆った請求項5に記載の基材と、を備え、 前記成形本体部は、前記基材と一体的に成形されている、 成形体。前記不揮発性液体は、流動パラフィン、フッ素化合物、シリコーン化合物、およびエーテル化合物のうちの少なくとも1つである、 請求項10に記載の成形体。23℃での前記不揮発性液体の粘度が1Pa・s以下である、 請求項10、11のいずれか一項に記載の成形体。前記マトリックスが、熱硬化性樹脂の硬化物である、 請求項10〜12のいずれか一項に記載の成形体。前記シリカ系中空微粒子と前記マトリックスとを合わせた屈折率が1.3以上、1.49以下であり、 前記不揮発性液体の屈折率と前記シリカ系中空微粒子と、前記マトリックスとを合わせた屈折率との差が0.08以下である、 請求項10〜13のいずれか一項に記載の成形体。基体の一方の表面に、シリカ系中空微粒子と、マトリックス前駆体と、25℃での蒸気圧が500Pa以下であり、かつ沸点が250℃以上であるとともに屈折率が1.4以上、1.5以下である不揮発性液体と、前記不揮発性液体よりも高い揮発性を有する揮発性溶媒とを含み、前記不揮発性液体の含有量が前記シリカ系中空微粒子および前記マトリックス前駆体を合わせた質量100質量部に対して、5質量部以上、30質量部以下である光学膜用の組成物を塗布するステップと、 前記揮発性溶媒を乾燥させて、前記基体の表面に乾燥膜を形成するステップと、 前記乾燥膜が形成された前記基体を、樹脂成形用の型の中に、前記乾燥膜が前記型と接するように配置するステップと、 前記基体において前記乾燥膜が形成されていない表面に接して樹脂を成形して成形本体部を作製するステップと、を備え、 前記乾燥膜においては前記マトリックス前駆体が完全には硬化しておらず、前記樹脂を成形するときに前記マトリックス前駆体を完全に硬化させて、前記成形本体部の表面に光学膜を有する基材を形成する、 成形体の製造方法。前記マトリックス前駆体が熱硬化性樹脂である、 請求項15に記載の成形体の製造方法。

说明书全文

本開示は、外光の反射を防止する反射防止膜等の光学膜を表示装置等の表面に形成するための組成物、表面に光学膜が設けられた基材および成形体、および成形体の製造方法に関する。

従来、携帯電話、タブレット端末およびカーナビゲーション等において用いられる表示装置の表面を保護するためのフィルム等が提案されている。例えば、特許文献1、2には、樹脂フィルムの一方の面に粘着剤層を設けて、ディスプレイパネルの表面に貼付する保護フィルムが提案されている。

また、表示装置においては、外光が表示画面で反射して、表示された画像等が見づらくならないように、表示画面の最表層を、防眩層または反射防止膜の設けられたプラスチックフィルム等の基材で構成することがある。あるいは、表示画面にそのような基材を貼付することがある。反射防止膜が設けられた基材には、光線透過率が高いこと、もしくは各種表示装置の形状に変形可能であること、あるいはその両方が求められる。

防眩層を有するフィルムは、例えば特許文献3に提案されている。防眩層では、通常、平均粒子径が数ミクロン程度の微粒子が樹脂中に分散されている。そして防眩層は、微粒子による光の散乱を利用して、外光の映り込みを防止する。特許文献3では、微粒子として、単孔構造の中空樹脂微粒子の空隙に、この中空樹脂微粒子のシェルとは異なる屈折率を有する透明な液体が内包された粒子が用いられている。

反射防止膜では、平均粒子径がナノオーダー(例えば200nm以下)の中空微粒子が樹脂中に分散されている。反射防止膜の厚さは100nm程度である。反射防止膜は、光の干渉効果を利用して、入射光と反射光を打ち消し合わせて反射率を低減する。反射防止膜は以下のようにして形成できる。まず、中空微粒子を紫外線硬化型樹脂または熱硬化性樹脂に分散させた混合物をイソプロピルアルコール等の揮発性溶剤で希釈して、組成物を準備する。次に、基体の表面にこの組成物を塗布した後、紫外線照射または加熱により樹脂を硬化させる。このようにして、基体と、その表面に設けられた反射防止膜とを有する基材を作製することができる。

反射防止膜および基体を構成する材料は、反射防止膜の屈折率(n1)、基体の屈折率(n2)、反射防止膜の厚さ(d)が以下の式1および式2を満たすように、選択される。

n1=(n2)1/2 (式1) n1×d=λ/4 (式2) 式2中、λは可視光の波長(約400nmから約1000nm程度)である。通常、λは人間の目に対する視感度が最も高い580nmを基準とするが、表示装置の用途等に応じて他の波長を基準とすることもある。

反射防止膜と基体とが式1及び式2を満たし、かつ反射防止膜および基体がともに無色透明であれば、反射防止膜の表面にて反射率をゼロにすることが可能である。しかしながら、式1を満たす材料を準備することは難しいため、流通している反射防止膜を有する基材の可視光反射率は1%程度である。

反射防止膜それ自体、もしくは反射防止膜を構成する要素、または反射防止膜を形成する基体については、種々提案されている。例えば、特許文献4は、反射防止膜を構成するのに適した中空微粒子を提案している。特に特許文献5、6は、反射防止膜用として用いられるシリカ系中空微粒子を開示している。

特許文献7は、反射防止膜を構成するのに適したメソポーラスシリカ膜を提案している。特許文献8は、反射防止膜を形成する基体に適した光学フィルムを提案している。

特開平4−030120号公報

特開2000−56694号公報

特開2009−229556号公報

特開2008−110905号公報

特開2001−233611号公報

特開2004−203683号公報

特開2012−25650号公報

特開2008−208231号公報

本開示は、指紋等の汚れが付着したときに、この汚れが目立ちにくい、またはこの汚れを拭き取りやすい光学膜を形成可能な組成物を提供する。また本開示は、このような光学膜を表面に有する基材およびその基材を表面に有する成形体を提供する。

本開示による光学膜用の組成物は、シリカ系中空微粒子と、マトリックス前駆体と、不揮発性液体と、揮発性溶媒と、を含む。不揮発性液体の25℃での蒸気圧は500Pa以下であり、不揮発性液体の沸点は250℃以上である。揮発性溶媒は、不揮発性液体よりも高い揮発性を有する。不揮発性液体の含有量は、シリカ系中空微粒子およびマトリックス前駆体成分を合わせた質量に対して、0.1質量%以上、30質量%以下である。

本開示による基材は、基材層と、この基材層の一方の表面に設けられた光学膜とを有する。光学膜は、シリカ系中空微粒子と、マトリックスと、25℃での蒸気圧が500Pa以下であり、かつ沸点が250℃以上である不揮発性液体と、を含む。この不揮発性液体の含有量は、シリカ系中空微粒子およびマトリックスを合わせた質量に対して、0.1質量%以上、30質量%以下である。

本開示による成形体は、成形本体部と、この成形本体部の表面の少なくとも一部を覆った上述の基材とを有する。成形本体部は、基材と一体的に成形されている。

本開示による成形体の製造方法では、基体の一方の表面に、上述の組成物を塗布する。なお、マトリックス前駆体は熱硬化性樹脂である。そして揮発性溶媒を乾燥させて、基体の表面に乾燥膜を形成する。この乾燥膜が形成された基体を、樹脂成形用の型の中に、乾燥膜が型と接するように配置する。そして、基体において乾燥膜が形成されていない表面に接して樹脂を成形して成形本体部を作製する。乾燥膜においてはマトリックス前駆体が完全には硬化しておらず、樹脂を成形するときにマトリックス前駆体を完全に硬化させて、成形本体部の表面に光学膜を有する基材を形成する。

本開示の組成物により形成された光学膜においては、指紋等の汚れが付着したときでも、汚れが目立ちにくく、あるいはこの汚れを容易に拭き取ることができる。また、本開示の組成物において、マトリックス前駆体が熱硬化性樹脂であれば、基体の表面に組成物を塗布した後、熱硬化性樹脂が完全には硬化していない状態の乾燥膜を形成することができる。その場合、光学膜は熱硬化性樹脂が完全には硬化していない状態から、さらに加熱されて硬化することにより完成させられる。熱硬化性樹脂が完全には硬化していない状態の乾燥膜が設けられた基体の裏面側に、例えばインサート成形により成形本体部を一体的に形成すれば、光学膜でヒビ等が発生することなく、インサート成形と同時に光学膜を完成(完全硬化)させることができる。

図1は本開示の実施の形態による成形体の表面付近の拡大模式断面図である。

[実施の形態を得るに至った経緯] 本発明の実施の形態の説明に先立ち、本開示にいたる経緯を簡単に説明する。従来の反射防止膜において、付着した指紋等の汚れの拭き取りやすさを向上させるために、種々の改良方法が挙げられる。例えば、マトリックスとなる樹脂の撥撥油性を向上させることが考えられる。しかしながら、この方法では十分な改善は得られない。そこで、汚れが拭き取りにくい原因を突き止めるために、反射防止膜を詳細に観察したところ、反射防止膜の表面においてシリカ系中空微粒子間に空隙が生じており、この空隙に汚れが入り込んでいて、拭き取りにくくなっていることがわかった。この空隙は、組成物中のマトリックス前駆体の量が少なく、膜を形成したときにシリカ系中空微粒子間に十分にマトリックスが行き渡らないために発生すると考えられる。あるいは、マトリックス前駆体の硬化時に縮合反応等が生じて、マトリックスを構成しない化合物(例えば水)を生成し、生成した化合物分だけマトリックスが減少するために発生すると考えられる。

この知見に基づけば、ある程度の流動性を有する成分を含有する組成物を用いて反射防止膜を形成すれば、膜の形成時に空隙が発生しても、この流動性成分が空隙を埋めるため、汚れの拭き取り性が向上すると考えられる。そして、流動性成分として、膜の形成時に加わる熱や紫外線の作用によって揮発しない不揮発性液体を用いれば膜の拭き取り性が向上する。

また、汚れの拭き取り性に関する問題は、マトリックス前駆体として熱硬化性樹脂を用いたときに生じやすい。これは、反射防止膜のマトリックス前駆体として使用できる熱硬化性樹脂は、硬化時に縮合反応等によりマトリックスである樹脂を構成しない成分(例えば、水)を生じやすいためと考えられる。一方、紫外線硬化型樹脂を用いた場合には、比較的汚れの拭き取り性が良好である。これは、紫外線硬化型樹脂が硬化する時には付加反応を生じて、マトリックスを構成しない化合物を生成しないためと考えられる。したがって、汚れの拭き取り性のみを考慮すれば、付加反応型の紫外線硬化型樹脂をマトリックス前駆体として用いればよい。

しかしながら、紫外線硬化型樹脂をマトリックス前駆体として含む組成物で形成された反射防止膜は一般に硬い。そのため、反射防止膜が設けられた基材を表示装置の形状に応じて屈曲または湾曲させた状態で、基材における、反射防止膜の反対側に、射出成形等により樹脂層を形成すると、反射防止膜にヒビが発生しやすくなる。したがって、紫外線硬化型樹脂をマトリックスとする反射防止膜を有する基材は、平板としてしか用いられない。

熱硬化性樹脂をマトリックス前駆体として含む組成物を用いて基材に反射防止膜を形成する際に、熱硬化性樹脂を完全には硬化していない状態とすることができる。熱硬化性樹脂が完全には硬化していない状態であると、膜が比較的変形しやすい。したがって、熱硬化性樹脂を完全には硬化していない状態にして、反射防止膜が形成された基材を屈曲または湾曲させて、裏側の樹脂層を例えば射出成形により形成すれば、反射防止膜にヒビが発生しにくい。この場合、反射防止膜の熱硬化性樹脂は裏側の樹脂層の形成と同時またはその後に完全に硬化させればよい。上述のように、熱硬化性樹脂の多くは硬化時にマトリックスを構成しない化合物を生成するため、汚れの拭き取り性の点では不十分である。この点、上述のように組成物が不揮発性液体を含有することにより、汚れの拭き取り性が改善される。

以下、本開示の実施の形態として、反射防止膜用の組成物、反射防止膜を有する基材および成形体を詳細に説明する。以下の説明においては、反射防止膜用の組成物を「反射防止膜用組成物」、または単に「組成物」と呼ぶことがあり、反射防止膜を有する基材を「反射防止基材」と呼ぶことがあり、反射防止膜を有する成形体を「反射防止成形体」と呼ぶことがある。また、以下においては必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既に良く知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。

図1は本開示の実施の形態による反射防止成形体50の表面付近の拡大模式断面図である。以下の説明では反射防止成形体50を成形体50と称することがある。成形体50は、成形本体部40と、反射防止基材30とを有する。以下の説明では、成形本体部40を本体部40と称し、反射防止基材30を基材30と称することがある。基材30は、本体部40の表面の少なくとも一部を覆っており、本体部40は、基材30と一体的に成形されている。基材30は、基材層20と、基材層20の一方の表面に設けられた反射防止膜10とを含む。以下の説明では反射防止膜10を膜10と称することがある。膜10は、シリカ系中空微粒子と、マトリックスと、不揮発性液体とを含む。この不揮発性液体の、25℃での蒸気圧は500Pa以下であり、かつ沸点は250℃以上である。また不揮発性液体の含有量は、シリカ系中空微粒子およびマトリックスを合わせた質量に対して、0.1質量%以上、30質量%以下である。

まず、反射防止膜10を形成するための組成物から説明する。

[反射防止膜用組成物] 反射防止膜用組成物は、シリカ系中空微粒子、マトリックス前駆体、揮発性溶媒、および不揮発性液体を含む。これらの成分について説明する。

(シリカ系中空微粒子) シリカ系中空微粒子は特に限定されず、反射防止膜用として用いられているものを任意に用いることができる。シリカ系中空微粒子として、例えば、特許文献5あるいは特許文献6に開示された材料を好適に用いることができる。

シリカ系中空微粒子の平均粒子径は、例えば、5nm〜200nmであり、その屈折率が1.1〜1.4の範囲内にあればよい。平均粒子径が小さすぎると、十分な中空を形成できなく、粒子膜厚を薄くすることが困難となるために、屈折率が1.4以下である粒子を得ることが困難となり、反射防止効果を発揮できない。平均粒子径が大きすぎると、光の干渉効果を得るために規定される反射防止膜10の厚さを超えることがあり、へイズ値が大きくなったり、耐擦傷性およびスクラッチ強度が不十分になったりする。

シリカ系中空微粒子として、平均粒子径が異なる二種類以上の中空微粒子が組成物に含まれてよい。例えば、平均粒子径が60nm〜200nmの中空微粒子Aと、平均粒子径が5nm〜60nmの中空微粒子Bとが組成物に含まれてよい。但しこの場合、中空微粒子Aの平均粒子径は中空微粒子Bの平均粒子径よりも大きい。平均粒子径のより大きい中空微粒子Aと、平均粒子径のより小さい中空微粒子Bとを合わせて用いると、微粒子Bが微粒子Aの間の空隙に入り込む。そのため、微粒子A、Bを含む反射防止膜においては中空微粒子が密に充填される。

シリカ系中空微粒子は、例えば、シリカとシリカ以外の無機酸化物とで形成された複合酸化物微粒子を核とし、必要に応じてシリカ被覆層(1)を形成した後、シリカ以外の無機酸化物を除去し、さらに必要に応じてシリカ被覆層(2)を形成し、必要に応じて高温で水熱処理することによって得ることができる。このとき、核となる微粒子(核粒子)の平均粒子径を調整することにより、得られる中空微粒子の平均粒子径を調整することができる。例えば、平均粒子径が4nm〜55nmの範囲にある核粒子に、シリカ被覆層(1)とシリカ被覆層(2)の合計の厚さが約1〜5nm程度になるようにシリカ被覆層を形成すれば、平均粒子径が5nm〜60nmの中空微粒子を得ることができる。あるいは、平均粒子径が約59nm〜190nmの範囲にある核粒子に、シリカ被覆層(1)とシリカ被覆層(2)の合計の厚さが約1〜10nm程度になるようにシリカ被覆層を形成すれば、平均粒子径が60nm〜200nmである中空微粒子を得ることができる。

この製造方法は一例であって、シリカ系中空微粒子の製造方法はこれに限定されない。

シリカ系中空微粒子は下記式(A)で表される有機珪素化合物またはこれらの加水分解物で表面処理されていることが好ましい。

Rn−SiX4−n (A) Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲンまたは水素、nは0〜3の整数である。

このような式(A)で表される有機珪素化合物としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、へキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3−ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等が挙げられる。

このような有機珪素化合物で表面処理されたシリカ系中空微粒子は、組成物中に均一に分散するとともに、密に充填することができ、強度、耐擦傷性に優れ透明な被膜(膜10)を作製することができる。

シリカ系中空微粒子を表面処理するには、微粒子をアルコールに分散させた分散液に上述の有機珪素化合物を所定量加え、さらに水を加えてから、必要に応じて加水分解用触媒として酸またはアルカリを加えて有機珪素化合物を加水分解する方法を適用できる。

シリカ系中空微粒子に対する有機珪素化合物の質量比(有機珪素化合物の固形分としての質量/シリカ系中空微粒子の質量)は、シリカ系中空微粒子の平均粒子径によっても異なるが0.005〜1.0、特に0.01〜0.3の範囲にあることが好ましい。この質量比が小さいことは、有機珪素化合物の量が少ないことを意味し、後述するマトリックス前駆体等の他の成分との親和性が低く、組成物中での分散性、および安定性が不十分となることがある。その結果、組成物中で中空微粒子が凝集し、緻密な反射防止膜を得られないことがある。加えて、反射防止膜10が形成される基体(基材層20)との密着性、膜の強度、および耐擦傷性等が不十分となることがある。質量比が大きすぎても、組成物中での中空微粒子の分散性がさらに向上することはなく、むしろ有機珪素化合物の量だけ、シリカ系中空微粒子の屈折率が高くなる。その結果、所望のように低い屈折率を有する反射防止膜ができず、反射防止性能が不十分となることがある。

(マトリックス前駆体) マトリックス前駆体は、最終的に得られる反射防止膜10においてマトリックスとなる成分であり、マトリックスはシリカ系中空微粒子の間の「つなぎ」となる。マトリックス前駆体の状態は、マトリックスの状態とは異なっていて、膜10の形成中にその性状および/または特性が変化してもよい。あるいはマトリックス前駆体は、組成物中に存在するときの性状および/または物性が変化することなくそのまま、膜10においてマトリックスとして存在してもよい。マトリックス前駆体は、基材層20となる基体上に、組成物を塗布して膜10を形成するときに、組成物の塗膜(途切れのない膜)を形成することを可能にする成分であり、塗膜形成成分とも呼べる。

反射防止膜10においてマトリックスは、例えば、シリコーン系(ゾルゲル系)成分、または有機樹脂であってよい。したがって、マトリックス前駆体は、膜10においてこれらのマトリックスを形成できる材料であればよい。

マトリックスをシリコーン系成分で構成する場合、マトリックス前駆体として、例えば、式(A)で表される有機珪素化合物を用いることができる。その場合、有機珪素化合物の加水分解物または加水分解重縮合物をマトリックスとすることができる。

マトリックスを有機樹脂で構成する場合、マトリックス前駆体として、塗料用樹脂として公知の硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂および電子線硬化型樹脂を含む)、あるいは熱可塑性樹脂を用いることができる。

具体的には、マトリックス前駆体として利用可能な熱可塑性樹脂の例は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムを含む。硬化性樹脂の例は、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂等の硬化性樹脂を含む。あるいは、マトリックス前駆体は、これらの樹脂から選択される2種以上の樹脂の共重合体であってよく、またはこれらの樹脂の変性体であってもよい。これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、または親水性樹脂であってもよい。

硬化性樹脂は、熱硬化性であっても、紫外線硬化型であっても、あるいは電子線硬化型であってもよい。硬化性樹脂の場合、組成物中には硬化触媒(重合開始剤)が含まれていてもよい。マトリックス前駆体が硬化性樹脂である場合、マトリックス前駆体は、通常、硬化前のプライマー(モノマー)またはプレポリマーの形態で組成物中に存在する。

硬化性樹脂は、付加反応、縮合反応、および付加縮合反応のいずれかにより、高分子を形成する、および/または架橋による網目構造を形成する。前述のように、縮合反応が生じる硬化性樹脂をマトリックス前駆体として用いると、縮合反応によりマトリックスとなる樹脂を構成しない化合物が生じる。そのため、シリカ系中空微粒子の間で、汚れの拭き取り性を低下させる空隙が生じやすくなる。本実施の形態では、不揮発性液体がこの空隙を埋める。そのため、本実施の形態における効果は、このような場合に顕著である。

マトリックス前駆体は、反射防止膜10において、シリカ系中空微粒子と合わせて1.3以上、1.49以下の屈折率を有するマトリックスを形成する材料であることが好ましい。マトリックスとシリカ系中空微粒子とが合わせてこの範囲内の屈折率を有すると、シリカ系中空微粒子とともに、良好な反射防止特性を示す膜10を得ることができる。

(揮発性溶媒) 揮発性溶媒は組成物に流動性を与え、組成物を通常の塗工方法で基材層20となる基体上に塗布することを可能にする。揮発性溶媒は、反射防止膜10を生成する過程で蒸発することができ、かつ、マトリックス前駆体、不揮発性液体、ならびに必要に応じて用いる重合開始剤および他の添加剤を、溶解あるいは分散できるとともに、シリカ系中空微粒子を均一に分散させることができればよい。すなわち、揮発性溶媒は不揮発性液体よりも高い揮発性を有する。これらの性質を有していれば特に限定されず、従来公知の溶媒を揮発性溶媒として用いることができる。揮発性溶媒は、好ましくは極性溶媒である。

揮発性溶媒として、具体的には、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アルキルセロソルブ類、トルエン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。アルコール類の例は、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、メチレングリコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコール、テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロプロパノールを含む。エーテル類の例は、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルを含む。ケトン類の例は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルを含む。アルキルセロソルブ類の例は、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブを含む。

不揮発性液体を溶媒で希釈して組成物中に添加する場合、不揮発性液体を希釈する溶媒は、前述の溶媒であってよく、あるいはn−ヘキサン、n−ヘプタン、ハイドロフルオロエーテルなどの低極性溶媒であってもよい。

(不揮発性液体) 不揮発性液体は、反射防止膜10においてシリカ系中空微粒子の間の空隙を埋める役割をする。したがって、不揮発性液体は、膜10を形成する過程で気化も分解もせず、膜10を形成後も膜10にとどまる。不揮発性液体は、好ましくは分子量が280以上である化合物である。不揮発性液体は、以下の条件を満たす。1)25℃で蒸気圧が500Pa以下である。2)沸点が1013hPa(1気圧)の気圧下で250℃以上である。

このように低い蒸気圧を示し、高い沸点を有する液体は反射防止膜10を形成する際、または成形体50を成形する際に蒸発しにくい。蒸気圧が、公知のいずれか一つの方法で測定したときに、25℃で500Pa以下であれば、本実施の形態において、不揮発性液体として好ましく用いられる。

さらに、不揮発性液体が以下の1つ以上の条件を満たすことが好ましい。3)23℃での粘度が1Pa・s以下である。このような粘度の液体は、良好な流動性を示す。粘度は、例えば、株式会社東京計器製 B型粘度計 型式:BMによって測定される。4)撥水性を有する。汗汚れの主成分は水分であるため、不揮発性液体が撥水性であると、反射防止膜10に付着した汗を内部に浸透させにくく、汗の拭き取りをより容易にする。5)無色透明である。無色透明の液体は、膜10の反射防止機能に影響を与えにくい。6)屈折率が低く、好ましくは1.5以下である。屈折率の小さい液体は、膜10の反射防止機能に影響を与えにくい。7)シリカ系中空微粒子およびマトリックスの屈折率に近い屈折率を有し、例えば、その屈折率と、シリカ系中空微粒子とマトリックスとを合わせた屈折率との差が0.08以下である。

上述の条件を満たす不揮発性液体は、例えば、流動パラフィン類、ミネラルオイル類、白色スピンドル油類、エーテル等の炭化水素類である。流動パラフィン類等の飽和炭化水素の炭素数は、好ましくは20以上である。あるいは、不揮発性液体は、シリコーンオイルのようなシリコーン化合物、フッ素化合物であってもよい。あるいは、不揮発性液体は、これらの液体のうちの2つ以上の混合物であってよい。あるいはまた、不揮発性液体は、反射防止膜10が水蒸気等で曇ることを防止するために、親水性を有していてもよい。親水性の不揮発性液体として、例えば、親水性のコーティング材(例えば、丸昌産業(株)製の商品名WG−R1)を用いることができる。親水性の不揮発性液体は水分を含む汚れ(特に、汗)が付着しにくい用途、例えば、野外防犯カメラの表示装置で使用される反射防止膜に適している。

(その他の添加剤) 反射防止膜用組成物は、前述のように、マトリックス前駆体が硬化性樹脂である場合には、重合開始剤を含んでよい。組成物は、例えば、レベリング剤、チクソトロピー剤、および帯電防止剤等から選択される1または複数の添加剤を必要に応じて含んでもよい。

(反射防止膜用組成物の調製) 以上において説明した成分を混合して、反射防止膜用組成物が調製される。組成物は少なくともシリカ系中空微粒子、マトリックス前駆体、揮発性溶媒、および不揮発性液体を含む。この中で、シリカ系中空微粒子とマトリックス前駆体は得られる反射防止膜10において固形分となり、これらを合わせた濃度を便宜的に固形分濃度と呼ぶ。組成物において、固形分濃度は組成物全体の質量の1質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。不揮発性液体は、固形分100質量部に対して、0.1質量部以上、30質量部以下の割合で含まれている。

固形分濃度の割合が小さいと、所望の厚さを有する反射防止膜10が形成できず、充分な反射防止性能が得られないことがある。固形分濃度が多いと、組成物の粘度が高くなるために、塗布性が低下する、あるいは塗料の安定性が不十分となることがある。その結果、得られる膜10の密着性および強度等が低下することがある。

不揮発性液体の割合が、固形分の質量に対して0.1質量部未満であると、汚れの拭き取り性を有効に向上させられない。また不揮発性液体の割合が、30質量部を超えると基材層20に対する密着性が低減し、また、膜10の屈折率が増大する。より具体的には、不揮発性液体の割合が大きすぎると、中空微粒子間の空隙の体積を超える体積の液体が存在して、液体の層が形成される。そのため、前述の式2を満たす厚さで膜10を形成することが困難となり、反射防止機能が低下することがある。不揮発性液体の、固形分の質量に対する割合は、より望ましくは0.5質量部以上、25質量部以下、さらに望ましくは1質量部以上、20質量%部以下である。不揮発性液体の割合の上限は10質量部であってもよい。

あるいは、不揮発性液体の割合は、固形分の体積を基準に決定してよい。不揮発性液体は、その体積が固形分の体積の0.2倍以上、0.3倍以下となるような量で組成物中に含まれることが好ましい。中空粒子の体積割合が適切であっても、不揮発性液体の添加量が多すぎると、基材層20と反射防止膜10との接着が低減する。

組成物中、固形分に占めるシリカ系中空微粒子の割合は、好ましくは1質量%〜50質量%である。シリカ系中空微粒子の割合が少なすぎると、反射防止膜10に占める樹脂割合が増えて屈折率が大きくなる。そのため、膜10の反射防止機能が低減することがある。シリカ系中空微粒子の割合が多すぎると、樹脂の割合が減り、樹脂と基材層20との接触面積が少なくなり、基材層20に対する反射防止膜10の接着力が低下することがある。

反射防止膜用組成物は、構成成分を混合することにより調製することができる。組成物は、好ましくは、シリカ中空微粒子を揮発性溶媒に分散させた分散液と、マトリックス前駆体を揮発性溶媒に分散(または溶解)した分散液(または溶液)と、不揮発性液体を揮発性溶媒で希釈した希釈液とを混合する方法で調製する。各成分を分散等させる揮発性溶媒は同じであってもよく、異なっていてもよい。複数の分散液(または溶液)を混合する場合、最終的に得られる組成物において固形分濃度が1質量%〜50質量%となるように、各分散液の濃度を調整する。

あるいは、本実施の形態の反射防止膜用組成物は、シリカ系中空微粒子、マトリックス前駆体(特に、硬化性樹脂)および揮発性溶媒を含む市販の組成物に、不揮発性液体または溶媒で希釈した不揮発性液体を添加して調製してもよい。市販のそのような組成物として、例えば、日揮触媒化成(株)製の商品名ELCOM MA−1021SICが挙げられる。

[反射防止基材] 反射防止基材30は、基体の表面に、前述の反射防止膜用組成物を塗布し、主に揮発性溶媒を蒸発させるとともに、マトリックス前駆体を固化または硬化させることにより形成された反射防止膜10を有する。

ここで、基材層20は、可視光の光線透過率が高く、可視光の透明性に優れる材料で形成された、シート、フィルム、または板等である。基材層20は、用途等によっては三次元的な形状を有していてよい。

基材層20の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、およびアクリル系ポリマー等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。基材層20は積層体であってもよい。また、反射防止基材30を、別の部材に取り付けるときに、この別の部材との密着性を向上する目的で、基材層20における、膜10が設けられた面と反対側に接着層(図示せず)を設けてもよい。接着層を構成する材料は、可視光の透明性に優れる材料であれば、特に限定されない。

基材層20において、反射防止膜10を形成する面で測定される屈折率が1.4以上であることが好ましい。また、基材層20の可視光透過率は90%以上であることが好ましく、ヘイズ値は1%以下であることが好ましい。

基材層20の厚さは、例えば500μm以下であってもよい。厚さが500μmを超えると、可視光透過率が低下する傾向にある。また、基材層20の厚さが大きいと、基材30をロール状に巻き取って取り扱うことが困難となる。

反射防止膜10では、基材層20の表面に塗布された組成物から揮発性溶媒が蒸発し、かつマトリックス前駆体が固化または硬化することによりマトリックスが形成されている。膜10においては、シリカ系中空微粒子がマトリックス中に分散し、かつ不揮発性液体がシリカ系中空微粒子間の空隙を満たしている。

反射防止膜10の屈折率n1と、基材層20の屈折率n2とが前述の式1を満たすことが好ましい。膜10のマトリックスの屈折率n1が高く、基材層20の屈折率n2が低い場合、n1がn2の平方根よりも相当に大きくなる。このような場合には、反射防止機能を確保するために、基材層20に屈折率の高い層を設けて、この層の表面に膜10を設ければよい。

また、反射防止膜10の厚さは、前述の式2を満たすように、その屈折率に応じて設定される。膜10の厚さは、例えば、50nm〜200nmとしてよい。

反射防止基材30において、シリカ系中空微粒子とマトリックスとが合わせて、1.3以上、1.49以下の屈折率を有し、不揮発性液体の屈折率は、シリカ系中空微粒子とマトリックスとが合わせて有する屈折率と同じであるか、あるいは両者の差が0.08以下であることが好ましい。シリカ系中空微粒子とマトリックスとを合わせた屈折率は、例えば、不揮発性液体を含まない反射防止膜用組成物を作製し、さらにマトリックス前駆体を固化または硬化させて得られる固体の屈折率を測定することにより、知ることができる。シリカ系中空微粒子とマトリックスとを合わせた屈折率と、不揮発性液体の屈折率との差が大きいと、反射防止機能が低下することがある。

反射防止基材30は、基材層20となる基体の表面に、反射防止膜用組成物を塗布し、組成物中の揮発性溶媒を蒸発させ、マトリックス前駆体を固化または硬化させることを含む方法により製造できる。組成物は、スピンコーティング、バーコーティング、スプレーコーティング法、およびグラビアコーティング法等の公知の塗工法を用いて、基体の表面に塗布してよい。組成物の塗布厚は、揮発性溶媒を蒸発させ、かつマトリックス前駆体を固化または硬化させた後で、所望の厚さが得られるように設定する。

塗布した組成物を乾燥処理することによって、溶媒が蒸発する。この際に蒸発する溶媒のほとんどは、揮発性溶媒である。乾燥処理の温度は基材層20にダメージが発生しないような温度とすることが好ましく、例えば、0℃〜80℃、特に0℃〜70℃、より特には40℃としてよい。乾燥処理は、選択した温度にて揮発性溶媒が蒸発するのに必要な時間をかけて行う。例えば、乾燥温度を0℃〜60℃とする場合には、乾燥時間を10〜30時間程度、例えば24時間程度としてよい。乾燥処理後の反射防止膜10には必要に応じて保護フィルムを貼付してよい。

乾燥処理と同時に、又は乾燥処理の後に、マトリックス前駆体を固化ないし硬化させてマトリックスを形成する。マトリックス前駆体が、例えば熱可塑性樹脂であり、組成物において揮発性溶媒に溶解または分散している場合には、揮発性溶媒を蒸発させることにより、マトリックス前駆体が固化する。マトリックス前駆体が、例えば硬化性樹脂である場合には、揮発性溶媒を蒸発させた後で、熱、光(特に紫外線)または電子線によって硬化性樹脂を硬化させて、マトリックスを形成する。

マトリックス前駆体が熱硬化性樹脂である場合には、樹脂を完全に硬化させずに、例えば半硬化させた状態(Bステージと呼ばれることもある)としてもよい。その場合、熱硬化性樹脂は、後述するように、反射防止基材30の裏面(反射防止膜10が設けられていない面)に成形本体部40を射出成形等により形成するときに、完全に硬化させてよい。

熱硬化性樹脂は、例えば、溶媒を蒸発させるための乾燥処理によって、あるいは乾燥処理の後に別に、熱処理を実施して、完全には硬化していないが流動性が実質的に無く、基材層20に付着した状態とすることができる。熱硬化性樹脂がそのような状態にあるときの膜を便宜的に乾燥膜と呼ぶことがある。乾燥膜を作製ための熱処理に際しては、完全硬化のために乾燥膜が後で高温処理されることを考慮して、基材層20にダメージが発生しないように、反射防止膜用組成物を塗布した基材層20を、高温環境に長時間配置しないことが好ましい。例えば、乾燥膜は、乾燥処理を0℃〜60℃の温度にて、10〜30時間程度の時間をかけて実施することにより形成してよい。

ここでは、マトリックス前駆体が熱硬化性樹脂である場合の乾燥膜の形成について説明したが、乾燥膜は、他の硬化性樹脂をマトリックス前駆体として形成してよい。

上記においては、反射防止膜10を、不揮発性液体を含む反射防止膜用組成物を用いて形成する方法を説明した。別法として、シリカ系中空微粒子およびマトリックス前駆体等を含み、不揮発性液体を含まない組成物を用いて、基材層20の表面に、反射防止膜10の前駆体膜を形成した後、この前駆体膜に不揮発性液体を塗布する方法で、反射防止膜10を形成してもよい。その場合、不揮発性液体は、そのまま、又は溶媒で希釈した溶液または分散液を、前駆体膜に塗布してよい。この際、スピンコーティング、バーコーティング、スプレーコーティング法、およびグラビアコーティング等の方法を適用してよい。その後、不揮発性液体を希釈した溶媒を蒸発させる乾燥処理を実施する。

反射防止基材30において、反射防止膜10と基材層20との間には、必要に応じて、接着剤、高屈折率の材料からなる膜、ハードコート膜、または帯電防止膜等を配置してよい。

反射防止基材30は、各種表示装置または表示装置(もしくは表示部)を備えた装置の表示画面の表面に貼付して用いてよい。表示装置は、例えば、携帯電話、タブレット端末、カーナビゲーション、防犯カメラ(表示部)、鏡、時計(表示部)、デジタルカレンダー(表示部)、電光掲示板等である。

[反射防止成形体] 反射防止成形体50は、上述の反射防止基材30と、成形本体部40とを有する。本体部40の表面の少なくとも一部が、基材30により覆われており、かつ、本体部40は基材30と一体的に成形されている。本体部40は、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂で形成することができる。あるいは、本体部40は、熱硬化性樹脂で形成してもよい。熱硬化性樹脂は、例えば、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂である。

本体部40は、例えば、基材30を金型内に、膜10が金型に接するように配置して、膜10が設けられていない側(裏面)に向かって溶融した樹脂を射出し、型内で樹脂を硬化させる方法により製造することができる。この方法によれば、本体部40が基材30の裏打ち層として、基材30と一体に成形される。この成形方法はインサート成形とも呼ばれる。

インサート成形の場合、基材30を金型に合わせて屈曲または湾曲させることがある。その場合、屈曲部または湾曲部にて、膜10にヒビや割れが生じることがある。これはマトリックスが硬いために膜10が変形しにくいことによる。

このような不都合を避けるためには、以下のようにしてインサート成形する。まず、反射防止膜用組成物のマトリックス前駆体として熱硬化性樹脂を用いる。そして、基材層20の表面に組成物を塗布した後、熱硬化性樹脂が完全には硬化していない状態となるように熱処理を施す。このようにして作製した中間物を、インサート成形に用いる。

完全には硬化していない状態の熱硬化性樹脂は、加熱により流動性を示し、それから完全に硬化する性質を有する。したがって、インサート成形の際に、溶融した樹脂の熱により、または高温にした金型からの熱により、熱硬化性樹脂が完全に硬化するとともに、樹脂が成形される。このようにして、反射防止膜10におけるヒビまたは割れの発生が抑制された、反射防止成形体50を作製することができる。

成形体50は、例えば、カーナビゲーション、特にダッシュボードに埋め込んで用いるフレームレスのカーナビゲーションの表示画面を構成してよい。あるいは、携帯電話およびタブレット端末等の表示画面に用いる、防汚・防傷用途の硬質カバーとして用いてよい。成形体50は、屈曲部を有する場合でも屈曲部にて反射防止膜10にヒビ等が生じないので、例えば、フランジを有する形状とすることもできる。

以上、基材層20(基体)の一方の表面に反射防止膜10を形成する場合について説明したが、反射を抑制した透過膜など、反射防止膜10を他の光学膜として用いてもよい。

以下に実施例を掲げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれら実施例のみに限定されない。

(実施例1) 基体として、無色透明のPET基材(東レ(株)製、商品名ルミラーU34)を用意した。

またシリカ系中空微粒子、熱硬化性樹脂および揮発性溶媒を含む、熱硬化性樹脂組成物として、日揮触媒化成(株)製、ELCOM MA−1021SICを用意した。この組成物に以下の不揮発性液体をそれぞれ添加して、複数種の反射防止膜用組成物を調製した。 1)ミネラルオイル(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製、ベビーオイル):25℃での蒸気圧は検出限界未満、沸点は250℃以上、屈折率は約1.46、23℃での粘度は0.6Pa・sである。 2)精製白色スピンドル油(株式会社AZ製、品番035):25℃での蒸気圧は検出限界未満、沸点は250℃以上、屈折率は約1.46である。 3)フッ素化合物((株)フロロテクノロジー製、商品名FS−2050):25℃での蒸気圧は検出限界未満、沸点は250℃以上、屈折率は約1.4である。 4)石油系炭化水素とフッ素化合物の混合物(ヘンケルジャパン(株)製、防水/防汚スプレー(商品名DBS−420)の不揮発残渣):25℃での蒸気圧は検出限界未満、沸点は250℃以上、屈折率は約1.46である。 5)シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、商品名KF−50):25℃での蒸気圧は検出限界未満、沸点は250℃以上、屈折率は約1.46である。

なお、上記において、25℃での蒸気圧が「検出限界未満」とは、蒸気圧を測定する装置では具体的な数値として測定できないほど、蒸気圧が低いことを意味する。蒸気圧が検出限界未満であるときは、データシートでは蒸気圧はゼロと示されることもある。また、粘度は株式会社東京計器製B型粘度計(型式:BM)を用いて測定した。

不揮発性液体は、熱硬化性樹脂組成物に含まれる固形分を100質量部としたときに、0.1質量部以上、30質量部以下の範囲の量で添加した。不揮発性液体はイソプロパノールで希釈して添加した。これは、厚さ100nm程度の反射防止膜を容易に形成するためである。不揮発性液体を添加した組成物は、乾燥後に、式2に基づいた適切な厚さが得られるように、組成物中の固形分の濃度を考慮してPET基材上に塗工した。塗膜を60℃で24時間乾燥処理に付し、揮発性溶媒を蒸発させた。このようにして形成された乾燥膜を、120℃で30秒加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させて反射防止膜を形成し、反射防止基材を作製した。

(実施例2) 基体として、無色透明の基材(帝人(株)製、商品名NJ−5100(アクリル/ポリカーボネート樹脂フィルム:以下、APCフィルム)を用いた。乾燥処理まで実施例1と同様にして、APCフィルムの表面に乾燥膜を形成した。乾燥膜において、熱硬化性樹脂は完全には硬化していない状態であった。乾燥膜を形成したAPCフィルムを型内に入れ、APCフィルムの裏面(膜が形成されていない面)に溶融したポリカーボネート樹脂を射出して、APCフィルムの裏面に成形本体部を一体的に成形し、反射防止膜を有する成形体を作製した。このとき、成形中、APCフィルムは型に沿って変形するとともに、乾燥膜において熱硬化性樹脂が完全に硬化して反射防止膜が形成された。

(比較例1) 不揮発性液体として以下の液体を用いたことを除いては、実施例1と同様にして反射防止基材を作製した。 1)オクタフルオロトルエン(cas:434−64−0):屈折率は1.368、沸点は104℃である。 2)3M社製、フッ素化合物(商品名NovecHFE−7000):は屈折率1.4以下、25℃での蒸気圧は65kPaである。

(比較例2) 不揮発性液体としてミネラルオイル(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製、ベビーオイル)を用い、その添加量を、市販の熱硬化性樹脂組成物に含まれる固形分を100質量部としたときに、0.05質量部とした。これ以外は実施例1と同様にして、反射防止基材を作製した。また、別に、不揮発性液体としてミネラルオイル(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製、ベビーオイル)を用い、その添加量を、市販の熱硬化性樹脂組成物に含まれる固形分を100質量部としたときに、40質量部とした。これ以外は実施例1と同様にして、反射防止基材を作製した。

各実施例および各比較例の反射防止基材について以下の評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例1、2については代表して不揮発性液体の添加量(含有量)が5質量部の場合の結果を示している。

(反射率) 分光器(Steag社製、ETA)により、400nm〜1000nmの波長の光について、反射率を測定した。表1に示した反射率は波長580nmの光の反射率の測定結果である。

(防汚性) 指紋の付着性及び拭き取り性を確認した。汗を指に付けて反射防止膜へ指を押し付け、反射防止膜に指紋が付着したことを目視で確認した。付着した指紋を、ハンカチで拭き取り、拭き取り後の汚れの付着状況を目視で確認した。拭き取り性を以下の基準で評価した。 OK:容易に拭き取り可能である。NG:拭き取りが困難である。

(耐傷性(鉛筆硬度)) JIS K 5600−5−4(ISO/DIS 15184 1996に対応)に従って、引っかき硬度(鉛筆法)を確認した。

(膜密着性) 基材層に対する反射防止膜の密着性を、クロスカット試験(セロファンテープ)により確認した。膜密着性を以下の基準で評価した。 OK:剥離無し、NG:剥離有り

(外観) 実施例2において、成形後の反射防止基材の変形部分の外観を観察し、ヒビの有無を目視で確認した。目視でヒビが確認できない場合、OKとしている。

表1に示すとおり、実施例1の反射防止基材および実施例2の反射防止成形体では、いずれも、反射率が1%以下であり、防汚性に優れ、鉛筆硬度も大きく、膜密着性も良好であった。比較例1において、市販の熱硬化性樹脂組成物に揮発性液体を添加して作製した反射防止膜は、反射率等は良好であったが、防汚性において劣っていた。比較例2において、不揮発性液体の含有量が固形分100質量部に対して0.1質量部未満である反射防止基材は、良好な反射率を示したが、防汚性は劣っていた。一方、不揮発性液体の含有量が固形分100質量部に対して30質量部を超えている反射防止基材は、良好な反射率を示したが、反射防止膜の基材への密着力が弱かった。また、実施例2より、熱硬化性樹脂を用いると、裏打ち層の成形のために、型に合わせて変形させる場合でも、ヒビが発生しない反射防止基材が得られることが分かる。

本開示の組成物を用いて形成された反射防止膜は、汚れの拭き取り性に優れる。また、マトリックス前駆体が熱硬化性樹脂である場合には、インサート成形中に変形しても反射防止膜中にヒビが生じにくい。そのため、各種電気機器の種々の形状の表示装置に用いることができる。

10 反射防止膜(膜) 20 基材層 30 反射防止基材(基材) 40 成形本体部(本体部) 50 反射防止成形体(成形体)

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