積層フィルム、積層成形品及びその製造方法

申请号 JP2015541734 申请日 2015-08-11 公开(公告)号 JPWO2016024592A1 公开(公告)日 2017-05-25
申请人 三菱ケミカル株式会社; 发明人 康一郎 實藤; 康一郎 實藤; 祐二 川口; 祐二 川口; 保徳 河瀬; 保徳 河瀬; 和哉 大姶良; 和哉 大姶良;
摘要 優れた外観と耐薬品性と耐候性を備え、長期加熱後においても黄変が抑制された積層フィルムを提供する。フッ化ビニリデン系樹脂(F)を含む表層と、アクリル系樹脂組成物(Y)の層とからなり、該アクリル系樹脂組成物(Y)が、分子量1400以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有する、積層フィルム。基材と、該基材に積層された、前記積層フィルムとを含む積層成形品。前記積層フィルムを第1の金型内で 真空 成形又は圧空成形して予備成形体を製造する工程と、第2の金型内で基材となる樹脂を射出成形して該予備成形体と該基材とを一体化する工程と、を含む積層成形品の製造方法。
权利要求
  • フッ化ビニリデン系樹脂(F)を含む表層と、アクリル系樹脂組成物(Y)の層とからなり、該アクリル系樹脂組成物(Y)が分子量1400以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有する、ことを特徴とする積層フィルム。
  • 前記表層が更にアクリル系樹脂(A )を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
  • 前記表層が更にアクリル系樹脂(A )を含み、該表層中の前記フッ化ビニリデン系樹脂(F)と該アクリル系樹脂(A )との合計100質量%中における、該フッ化ビニリデン系樹脂(F)の含有率が62質量%以上であり、該アクリル系樹脂(A )の含有率が38質量%以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
  • 前記表層が更にアクリル系樹脂(A )を含み、該表層中の前記フッ化ビニリデン系樹脂(F)と該アクリル系樹脂(A )との合計100質量%中における、該フッ化ビニリデン系樹脂(F)の含有率が62質量%以上78質量%以下であり、該アクリル系樹脂(A )の含有率が22質量%以上38質量%以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
  • 前記アクリル系樹脂組成物(Y)中の前記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、該アクリル系樹脂組成物(Y)中の樹脂成分100質量部に対して、0.1〜5質量部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  • 前記ヒンダードアミン系光安定剤の分子量が2000以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  • 前記ヒンダードアミン系光安定剤の分子量が2400以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  • 前記ヒンダードアミン系光安定剤の熱重量分析による10%質量減少温度が380℃以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  • 前記ヒンダードアミン系光安定剤が、分子構造中に、ピペリジン骨格と、ピペリジン骨格以外のアミノ基とを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  • 前記アミノ基が3級アミン由来のアミノ基である、請求項9に記載の積層フィルム。
  • 前記ヒンダードアミン系光安定剤が反応性ヒンダードアミン系光安定剤の共重合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  • 前記アクリル系樹脂組成物(Y)が更に分子量1400未満のヒンダードアミン系光安定剤を含有し、該アクリル樹脂組成物(Y)中の樹脂成分100質量部に対する、該ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が1質量部以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  • 前記表層が更にヒンダードアミン系光安定剤を含有し、該表層中の樹脂成分100質量部に対する、該ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が0.1質量部以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  • 基材と、該基材に積層された請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルムと、を含むことを特徴とする積層成形品。
  • 請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルムを第1の金型内で真空成形又は圧空成形して予備成形体を製造する工程と、
    第2の金型内で基材となる樹脂を射出成形して該予備成形体と該基材とを一体化する工程と、
    を含むことを特徴とする積層成形品の製造方法。
  • フッ化ビニリデン系樹脂(F)を含む表層と、アクリル系樹脂組成物(Y)の層とからなる積層フィルムであって、
    温度100℃の大気中での500時間加熱後と加熱前での黄色度の増加量(△YI)が3.0以下であり、
    超促進耐候性試験機(岩崎電気社製、商品名:SUV−F1)を用いて積算光量1080MJ/m となるまで曝露した後の波長323nmでの光線透過率T 1080が20%以下である、積層フィルム。
  • 说明书全文

    本発明は、積層フィルム、並びに、その積層フィルムを用いた積層成形品及びその製造方法に関する。

    低コストで成形品に意匠性を付与する方法として、インサート成形法又はインモールド成形法がある。 インサート成形法は、印刷等の加飾を施したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等のフィルム又はシートを、予め真空成形等によって三次元形状の成形体に成形し、該フィルム又はシートのうちの不要な部分を除去した後、該三次元成形体を射出成形金型内に移し、基材となる樹脂を射出成形することにより、三次元成形体と基材とを一体化させて成形品を得る方法である。

    一方、インモールド成形法は、印刷等の加飾を施したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等のフィルム又はシートを射出成形金型内に設置し、真空成形を施した後、同じ金型内で基材となる樹脂を射出成形することによりフィルム又はシートと基材とを一体化させて成形品を得る方法である。

    特許文献1は、アクリル樹脂フィルムの表層にフッ化ビニリデン系樹脂を配することで耐薬品性を高めた積層フィルムを開示している。 特許文献2は、フッ化ビニリデン系樹脂中に有機酸を含ませることで、耐湿熱性の耐久性評価において黄変が発生しにくいフッ化ビニリデン系樹脂フィルムを開示している。

    日本国特開平03−288640号公報

    日本国特開2013−104022号公報

    一般に、成形品に施された印刷等の加飾層を紫外線による劣化から保護するために、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等のフィルム又はシート中には、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤が添加されている。 しかし、耐薬品性や防汚性を付与するために表層中にフッ化ビニリデン系樹脂を配した積層フィルムにおいては、フッ化ビニリデン系樹脂が塩基性物質に比較的侵され易く、脱フッ酸反応により着色することが知られている。 このため、アクリル樹脂等の層中に存在するヒンダードアミン系光安定剤によって、隣接する表層中のフッ化ビニリデン系樹脂が黄変する場合があった。

    特許文献2は、フッ化ビニリデン系樹脂フィルム中に有機酸を含有させることで、ヒンダードアミン系光安定剤を含む樹脂層と隣接するフッ化ビニリデン系樹脂フィルムの黄変を抑制できると開示している。 しかしながら、有機酸を含むフッ化ビニリデン系樹脂は、押出機による混練時に熱劣化物が発生することがあり、フィルムの外観不良を引き起こすことがあった。

    本発明の目的は、優れた外観と耐薬品性と耐候性を備え、長期加熱後においても黄変が抑制された積層フィルム、並びに、その積層フィルムを用いた積層成形品及びその製造方法を提供することにある。

    前記課題は、以下の本発明〔1〕〜〔16〕のいずれかによって解決される。
    〔1〕 フッ化ビニリデン系樹脂(F)を含む表層と、アクリル系樹脂組成物(Y)の層とからなり、該アクリル系樹脂組成物(Y)が分子量1400以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有する、ことを特徴とする積層フィルム。
    〔2〕 前記表層が更にアクリル系樹脂(A )を含む、前記〔1〕に記載の積層フィルム。
    〔3〕 前記表層が更にアクリル系樹脂(A )を含み、該表層中の前記フッ化ビニリデン系樹脂(F)と該アクリル系樹脂(A )との合計100質量%中における、該フッ化ビニリデン系樹脂(F)の含有率が62質量%以上であり、該アクリル系樹脂(A )の含有率が38質量%以下である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の積層フィルム。
    〔4〕 前記表層が更にアクリル系樹脂(A )を含み、該表層中の前記フッ化ビニリデン系樹脂(F)と該アクリル系樹脂(A )との合計100質量%中における、該フッ化ビニリデン系樹脂(F)の含有率が62質量%以上78質量%以下であり、該アクリル系樹脂(A )の含有率が22質量%以上38質量%以下である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の積層フィルム。
    〔5〕 前記アクリル系樹脂組成物(Y)中の前記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、該アクリル系樹脂組成物(Y)中の樹脂成分100質量部に対して、0.1〜5質量部である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の積層フィルム。
    〔6〕 前記ヒンダードアミン系光安定剤の分子量が2000以上である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の積層フィルム。
    〔7〕 前記ヒンダードアミン系光安定剤の分子量が2400以上である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の積層フィルム。
    〔8〕 前記ヒンダードアミン系光安定剤の熱重量分析による10%質量減少温度が380℃以上である、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の積層フィルム。
    〔9〕 前記ヒンダードアミン系光安定剤が、分子構造中に、ピペリジン骨格と、ピペリジン骨格以外のアミノ基とを有する、前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の積層フィルム。
    〔10〕 前記アミノ基が3級アミン由来のアミノ基である、前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の積層フィルム。
    〔11〕 前記ヒンダードアミン系光安定剤が反応性ヒンダードアミン系光安定剤の共重合体である、前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の積層フィルム。
    〔12〕 前記アクリル系樹脂組成物(Y)が更に分子量1400未満のヒンダードアミン系光安定剤を含有し、該アクリル樹脂組成物(Y)中の樹脂成分100質量部に対する、該ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が1質量部以下である、前記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の積層フィルム。
    〔13〕 前記表層が更にヒンダードアミン系光安定剤を含有し、該表層中の樹脂成分100質量部に対する、該ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が0.1質量部以下である、前記〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の積層フィルム。
    〔14〕 基材と、該基材に積層された前記〔1〕〜〔13〕のいずれかに記載の積層フィルムと、を含むことを特徴とする積層成形品。
    〔15〕 前記〔1〕〜〔14〕のいずれかに記載の積層フィルムを第1の金型内で真空成形又は圧空成形して予備成形体を製造する工程と、第2の金型内で基材となる樹脂を射出成形して該予備成形体と該基材とを一体化する工程と、を含むことを特徴とする積層成形品の製造方法。
    〔16〕 フッ化ビニリデン系樹脂(F)を含む表層と、アクリル系樹脂組成物(Y)の層とからなる積層フィルムであって、温度100℃の大気中での500時間加熱後と加熱前での黄色度の増加量(△YI)が3.0以下であり、超促進耐候性試験機(岩崎電気社製、商品名:SUV−F1)を用いて積算光量1080MJ/m となるまで曝露した後の波長323nmでの光線透過率T 1080が20%以下である、積層フィルム。

    本発明によれば、優れた外観と耐薬品性と耐候性を備え、長期加熱後においても黄変が抑制された積層フィルム、並びに、その積層フィルムを用いた積層成形品及びその製造方法を提供することができる。

    以下、本発明の積層フィルム、並びに、積層成形品及びその製造方法の好ましい形態について説明する。 尚、本発明において、フィルムとは、厚みが0.01〜0.5mmの平板材料である。

    <積層フィルム>
    本発明の積層フィルムは、フッ化ビニリデン系樹脂(F)を含む表層(以下「(F)層」又は「フィルム(F)」と称することがある。)と、アクリル系樹脂組成物(Y)の層(以下「(Y)層」又は「フィルム(Y)」と称することがある。)とからなる。 尚、この積層フィルムは、(F)層と(Y)層とから構成され、(F)層が積層フィルムの表面に位置していればよく、例えば、(F)層と(Y)層とからなる2層構成、並びに、(Y)層の両側に(F)層が存在する3層構成とすることができる。

    <積層フィルムの構成>
    本発明の積層フィルムは、薄すぎると機械的強度が低くなり、厚すぎると透明性が低くなる。 そのため、積層フィルムの厚み(合計厚み)は25μm以上、175μm以下が好ましい。

    積層フィルムの(F)層と(Y)層の厚みの比「(F)層/(Y)層」は1/25以上1/4以下(0.04以上0.25以下)が好ましい。 この厚みの比が1/25以上である場合、(F)層側のフィルム表面の荒れにより外観が劣化することを容易に防ぐことができる。 また、この厚み比が1/4以下である場合、(F)層側のフィルム表面は優れた光沢を有する。 この厚みの比は、より好ましくは1/25以上1/9以下(0.04以上0.11以下)である。

    <表層>
    表層は、フッ化ビニリデン系樹脂(F)(以下「樹脂(F)」と称することがある。)を含んでいればよく、その他に、アクリル系樹脂(A )(以下「樹脂(A )」と称することがある。)及び後述する配合剤等の他の成分を含むことができる。 尚、表層は、フッ化ビニリデン系樹脂(F)、並びに、必要に応じて、アクリル系樹脂(A )及び配合剤を含む表層形成用樹脂組成物の固化物とすることができる。

    表層中のフッ化ビニリデン系樹脂(F)の含有率は、耐薬品性の観点から62質量%以上、透明性の観点から78質量%以下が好ましく、耐薬品性の観点から65質量%以上、透明性の観点から75質量%以下がより好ましい。

    尚、表層は、フッ化ビニリデン系樹脂(F)のみからなることができる。 また、表層は、フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂(A )とのポリマーブレンドからなることもでき、上述したように、このポリマーブレンドに、後述の配合剤を添加することもできる。 フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂(A )とは、それぞれ、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。 尚、「ポリマーブレンド」とは、複数種の樹脂の混合物を意味する。

    表層は、フッ化ビニリデン系樹脂(F)と、アクリル系樹脂(A )とを含むことが好ましく、これらの樹脂の含有率の好ましい態様は以下の通りである。 即ち、表層は、フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂(A )との合計100質量%中における、樹脂(F)の含有率は62質量%以上が好ましく、樹脂(A )の含有率は38質量%以下が好ましい。 表層中に、樹脂(F)と樹脂(A )とを含むことにより、表層の透明性を容易に向上することができ、これらの樹脂の配合割合を上記範囲内とすることにより、表層の耐薬品性を容易に保ちつつ、表層の透明性を容易に向上することができる。

    更に、表層は、樹脂(F)と樹脂(A )との合計100質量%中における、樹脂(F)の含有率は62質量%以上78質量%以下が好ましく、樹脂(A )の含有率は22質量%以上38質量%以下が好ましい。 これらの樹脂の配合割合を上記範囲内とすることにより、表層の耐薬品性と透明性をより高いレベルで両立することができる。

    尚、表層中における樹脂(F)及び樹脂(A )の合計含有率は90質量%以上100質量%以下が好ましい。 また、表層中に配合剤を添加する場合は、表層中の前記配合剤の含有率は10質量%以下が好ましい。

    表層における樹脂(F)と樹脂(A )の含有率及び配合剤の含有率は、ガスクロマトグラフ質量分析によって測定することができる。

    〔フッ化ビニリデン系樹脂(F)〕
    本発明においてフッ化ビニリデン系樹脂(F)は、フッ化ビニリデン単位を含む樹脂であればよく、例えば、フッ化ビニリデン単位のみからなる単独重合体や、フッ化ビニリデン単位を含む共重合体を用いることができる。 樹脂(F)の質量平均分子量(Mw)は、耐薬品性の観点から10万以上が好ましく、フィルム(F)の製膜性の観点から30万以下が好ましい。

    樹脂(F)が共重合体である場合、該共重合体100質量%中におけるフッ化ビニリデン単位の含有率は、樹脂(F)と樹脂(A )との相溶性の観点から85質量%以上が好ましい。 フッ化ビニリデンと共重合させる共重合性成分は、樹脂フィルムの分野で公知の材料から適宜選択することができるが、例えば、ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレンを用いることができる。 共重合性成分は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。

    しかしながら、樹脂(F)は、透明性及び耐熱性が優れたフィルム(F)を得る観点から、単独重合体であるポリフッ化ビニリデンが好ましい。

    また、樹脂(F)は、高い結晶融点を有することが好ましい。 具体的には、樹脂(F)の結晶融点は、フィルム(F)の耐熱性の観点から150℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。 また、結晶融点の上限は、耐熱性の観点からポリフッ化ビニリデンの結晶融点に等しい175℃以下が好ましい。 尚、「結晶融点」とは、JIS K7121、3. (2)に記載の方法に準拠して測定される融解ピーク温度を意味する。

    樹脂(F)は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。 樹脂(F)としては、例えば以下の市販品が挙げられる。 アルケマ(株)製の商品名:Kynar720(フッ化ビニリデンの含有率100質量%、結晶融点169℃)、Kynar710(フッ化ビニリデンの含有率100質量%、結晶融点169℃)、(株)クレハ製の商品名:KFT#850(フッ化ビニリデンの含有率100質量%、結晶融点173℃)、ソルベイソレクシス(株)製の商品名:Solef1006(フッ化ビニリデンの含有率100質量%、結晶融点174℃)、Solef1008(フッ化ビニリデンの含有率100質量%、結晶融点174℃)。

    フッ化ビニリデン系樹脂(F)は、モノマー単位の結合様式として、頭−頭結合(head to head)、尾−尾結合(tail to tail)、頭−尾結合(head to tail)の3種の結合様式があり、頭−頭結合及び尾−尾結合は「異種結合」と呼ばれる。 フィルム(F)の耐薬品性を向上させる観点から、樹脂(F)における「異種結合の比率」は10%以下が好ましい。 異種結合の比率を低くする観点から、樹脂(F)は懸濁重合により製造された樹脂が好ましい。 上記異種結合に関する説明は、フッ化ビニリデン単位のみからなる単独重合体だけでなく、フッ化ビニリデン単位を含む共重合体についても当てはまる。

    「異種結合の比率」は、樹脂(F)の19F−NMRスペクトルの回折ピークから求めることができる。 具体的には、樹脂(F)40mgを重素ジメチルホルムアミド(D7−DMF)0.8mlに溶解し、室温下で19F−NMRを測定する。 得られた19F−NMRのスペクトルは、−91.5ppm、−92.0ppm、−94.7ppm、−113.5ppm、−115.9ppmの位置に主要な5本のピークを有する。 これらのピークの内、−113.5ppmと−115.9ppmのピークが、異種結合に由来するピークと同定される。 従って、5本の各ピークの面積の合計をSTとし、−113.5ppmの面積をS1とし、−115.9ppmの面積をS2として、異種結合の比率は、次式により算出される。
    異種結合の比率={(S1+S2)/ST}×100(%)。

    〔アクリル系樹脂(A )〕
    本発明においてアクリル系樹脂(A )のガラス転移温度(以下「Tg」と称することがある。)は、フィルム(F)の表面硬度の観点から95℃以上が好ましく、フィルム(F)の成形性の観点から120℃以下が好ましい。 本発明において樹脂のガラス転移温度は、DSC(示査走査熱量計)によって測定することができる。 「ガラス転移温度」は、JIS K7121、3. (2)に記載の方法に準拠して昇温スピード10℃/分の条件で昇温を行ない、「補外ガラス転移開始温度」として測定される温度である。

    アクリル系樹脂(A )の質量平均分子量は、フィルム(F)の機械的特性の観点から3万以上が好ましく、フィルム(F)の成形性の観点から20万以下が好ましい。

    尚、アクリル系樹脂(A )は、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方、又は両方のモノマー単位からなる重合体である。 更に、これらのエステルと共重合可能な単量体単位(例:アクリル酸単位、メタクリル酸単位及びスチレン単位)を含むこともできる。

    この中でも、表面硬度の高いフィルム(F)を得る観点から、樹脂(A )の原料となるモノマーとしては、その単独重合体のガラス転移温度が95℃以上である、メタクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましい。 この要件を満たすメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルが挙げられる。 尚、メタクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は分岐鎖状でもよく、直鎖状でもよい。 また、メタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、フィルム(F)の耐熱性の観点から4以下が好ましい。

    このように、樹脂(A )はメタクリル酸アルキルエステルの単独重合体であってもよく、メタクリル酸アルキルエステルと、これと共重合可能な単量体(例:メタクリル酸及びスチレン)との共重合体であってもよい。 樹脂(A )中のメタクリル酸アルキルエステル単位の含有率は、フィルム(F)の表面硬度、耐熱性の観点から80質量%以上が好ましく、フィルム(F)の耐熱分解性の観点から99質量%以下が好ましい。

    〔配合剤〕
    本発明の積層フィルムに用いられる表層は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、必要に応じて、樹脂フィルムの分野で用いられる一般的な配合剤を含有することができる。 この配合剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、難燃剤、艶消し剤が挙げられる。

    酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系の酸化防止剤が挙げられる。 熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、硫黄系、ヒドラジン系の熱安定剤が挙げられる。 可塑剤としては、フッ化ビニリデン系樹脂(F)を構成する樹脂の種類にもよるが、例えば、フタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、オキシ安息香酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系の可塑剤が挙げられる。 滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル系、脂肪酸系、金属石鹸系、脂肪酸アミド系、高級アルコール系、パラフィン系の滑剤が挙げられる。 帯電防止剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両イオン系の帯電防止剤が挙げられる。 難燃剤としては、例えば、臭素系、リン系、塩素系、窒素系、アルミニウム系、アンチモン系、マグネシウム系、ホウ素系、ジルコニウム系の難燃剤が挙げられる。 充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、滑石、蝋石、カオリンが挙げられる。

    尚、配合剤としての艶消し剤は、フィルム(F)の透明性を損なわない程度に含むことができる。 艶消し剤としては、有機及び無機の艶消し剤が使用可能である。 これらの配合剤はそれぞれ、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。

    本発明の積層フィルムにおいて、表層中には、ヒンダードアミン系光安定剤は実質的に含有されていないことが好ましい。 しかしながら、フッ化ビニリデン系樹脂(F)が長期加熱による黄変が生じない範囲において、表層中にヒンダードアミン系光安定剤が含有されていてもよい。 表層中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有割合は、フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂(A )との合計含有量100質量部に対して、長期加熱における積層フィルムの黄変抑制の観点から、0.1質量部以下が好ましく、0.01質量部以下がより好ましい。

    フッ化ビニリデン系樹脂(F)及びアクリル系樹脂(A )を得る際の重合方法は、特に限定されず、乳化重合や懸濁重合等の公知の方法を採用することができるが、上述したように、樹脂(F)については、異種結合の比率を低くする観点から、懸濁重合を用いることが好ましい。

    <アクリル系樹脂組成物(Y)の層>
    本発明の積層フィルムは、アクリル系樹脂組成物(Y)の層を有し、(Y)層は、アクリル系樹脂組成物(Y)の固化物である。 アクリル系樹脂組成物(Y)は、分子量1400以上のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)と、アクリル酸エステル単位及びメタクリル酸エステル単位の少なくとも一方を有する(共)重合体とを含む樹脂組成物である。 尚、フィルム(Y)の成形性の観点から、アクリル系樹脂組成物(Y)は、分子量1400以上のヒンダードアミン系光安定剤と、後述するゴム含有重合体(G )(以下単に「重合体(G )」と称することがある。)と、後述する熱可塑性重合体(B )(以下単に「重合体(B )」と称することがある。)とを含む組成物が好ましい。 尚、このゴム含有重合体(G )及び熱可塑性重合体(B )はいずれも、アクリル酸エステル単位及びメタクリル酸エステル単位の少なくとも一方を有する(共)重合体である。 また、アクリル系樹脂組成物(Y)は、上記特定のヒンダードアミン系光安定剤と、重合体(G )と、重合体(B )と共に、後述する配合剤を含有することもできる。

    アクリル系樹脂組成物(Y)中における分子量1400以上のヒンダードアミン系光安定剤の含有割合は、アクリル系樹脂組成物(Y)中の樹脂成分(例:重合体(G )及び重合体(B ))100質量部に対して、フィルム(Y)の耐候性の観点から0.1質量部以上、該光安定剤の耐ブリードアウト性の観点から5質量部以下が好ましく、フィルム(Y)の耐候性の観点から0.2質量部以上、該光安定剤の耐ブリードアウト性の観点から3質量部以下がより好ましい。

    アクリル系樹脂組成物(Y)中には、耐候性付与の観点から、低分子量のヒンダードアミン系光安定剤を併存させることができる。 アクリル系樹脂組成物(Y)中における分子量1400未満のヒンダードアミン系光安定剤の含有割合は、アクリル系樹脂組成物(Y)中の樹脂成分(例:重合体(G )及び重合体(B ))100質量部に対して、長期加熱における積層フィルムの黄変抑制の観点から、1質量部以下が好ましく、0.1質量部以下がより好ましく、0.01質量部以下が更に好ましい。

    アクリル系樹脂組成物(Y)が、重合体(G )と重合体(B )とを含む場合、フィルム(Y)の成形性の観点から、両重合体の合計100質量%中における、重合体(G )の含有率は1質量%以上99質量%以下であり、重合体(B )の含有率は1質量%以上99質量%以下が好ましい。 また、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、両重合体100質量%中における重合体(G )の含有率は、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。 同様の観点から、両重合体の合計100質量%中における重合体(B )の含有率は、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。

    アクリル系樹脂組成物(Y)のゲル含有率は、フィルム(Y)の耐成形白化性及び製膜性の観点から、10質量%以上、80質量%以下が好ましい。 ゲル含有率は、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。 またゲル含有率は、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。

    本発明において、「ゲル含有率」とは、以下の方法(1)〜(3)で測定される値である。
    (1)所定質量w1(g)の試料をアセトン中還流下で6時間抽出処理する。
    (2)得られた処理液を遠心分離(14000rpm、30分間)により分別し、溶液をデカンテーションで取り除き、アセトン不溶分を回収する。
    (3)回収したアセトン不溶分を乾燥し(50℃、24時間)、その乾燥物の質量w2(g)を測定し、下記式にて、ゲル含有率を算出する。
    ゲル含有率(質量%)=w2/w1×100。

    〔分子量1400以上のヒンダードアミン系光安定剤〕
    本発明において、アクリル系樹脂組成物(Y)は分子量1400以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有する。 ヒンダードアミン系光安定剤とは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの派生物から成るラジカル補足剤を意味し、この光安定剤は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を有する。 このヒンダードアミン系光安定剤の分子量が1400以上であれば、長期加熱における積層フィルムの黄変が抑制される。 また、このヒンダードアミン系光安定剤の分子量は、長期加熱における積層フィルムの黄変抑制の観点から、2000以上が好ましく、2400以上がより好ましい。

    尚、このヒンダードアミン系光安定剤の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。 ここで、分子量とは、ポリスチレン換算で算出された質量平均分子量を指す。

    更に、このヒンダードアミン系光安定剤の熱重量分析による10%質量減少温度は、長期加熱における積層フィルムの黄変抑制の観点から、380℃以上が好ましく、400℃以上がより好ましい。 このヒンダードアミン系光安定剤の熱重量分析による10%質量減少温度は、熱重量測定装置(TGA)を用いて窒素雰囲気下で常温(25℃)より昇温速度10℃/分で400℃まで昇温することで測定することができる。

    上記ヒンダードアミン系光安定剤は、分子構造中に、ピペリジン骨格と、ピペリジン骨格以外のアミノ基とを有することが好ましく、これにより長期加熱における積層フィルムの黄変を容易に抑制することができる。 更に、積層フィルムの品質向上の観点から、上記アミノ基は、3級アミン由来のアミノ基であることが好ましい。

    また、上記ヒンダードアミン系光安定剤は、分子構造中に反応性基を有するものでもよい。 反応性基の例としては、(メタ)アクリル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、を挙げることができる。 また、上記ヒンダードアミン系光安定剤は、反応性ヒンダードアミン系光安定剤の共重合体であることが好ましい。 該共重合体としては、例えば、メタクリル酸メチルとの共重合体を挙げることができる。

    ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、以下の市販品を挙げることができる。 BASFジャパン(株)製の商品名:CHIMASSORB 2020 FDL(分子量2600〜3400,10%質量減少温度400℃以上)、CHIMASSORB 944 FDL(分子量2000〜3100,10%質量減少温度400℃以上)、ユビナール 5050 H(分子量3000〜4000,10%質量減少温度394℃)、FLAMESTAB NOR 116 FF(分子量2261,10%質量減少温度289℃)、チヌビン NOR 371 FF(分子量2800〜4000,10%質量減少温度309℃);サンケミカル(株)製の商品名:サイアソーブ UV−3346(分子量1600±10%,10%質量減少温度400℃以上)、サイアソーブ UV−3529(分子量1700±10%,10%質量減少温度400� ��以上)。

    分子構造中に反応性基を有するヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、以下の市販品を挙げることができる。 (株)ADEKA製の商品名:アデカスタブ LA−82、BASFジャパン(株)のチヌビン 152。

    〔ゴム含有重合体(G )〕
    本発明においてアクリル系樹脂組成物(Y)の一部を構成することができるゴム含有重合体(G )とは、後述する単官能性単量体及び多官能性単量体を重合して得られる三次元網目構造を含む重合体を意味する。

    重合体(G )のゲル含有率は、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。 フィルム(Y)の耐成形白化性の観点からは、ゲル含有率は大きい程有利であるが、フィルム(Y)の成形性の観点からは、ある量以上のフリーポリマーの存在が望まれるため、重合体(G )のゲル含有率は80質量%以下が好ましい。

    重合体(G )の質量平均粒子径は、フィルム(Y)の機械的特性の観点から0.03μm以上が好ましい。 この質量平均粒子径は、フィルム(Y)の耐成形白化性、透明性、及び、インサート成形もしくはインモールド成形における加熱時の透明性保持の観点から0.3μm以下が好ましく、0.15μm以下がより好ましく、0.13μm以下が更に好ましい。 また、この質量平均粒子径は、フィルム(Y)の機械的特性の観点から、より好ましくは0.07μm以上であり、更に好ましくは0.09μm以上である。 「質量平均粒子径」は、大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700(商品名)を用いた動的光散乱法により測定することができる。

    フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、重合体(G )は、下記単量体混合物(c)を重合させて得られる重合体(P1)の存在下に、下記単量体混合物(g)をグラフト重合させて得られるゴム含有重合体が好ましい。 尚、下記単量体混合物(c)を重合させ、更に下記単量体混合物(i)を重合させて得られる重合体(P2)の存在下に、下記単量体混合物(g)をグラフト重合させて得られるゴム含有重合体も、同様に好ましい。

    単量体混合物(c)は、下記配合で、以下の単量体(c1)及び多官能性単量体(c4)、並びに、必要に応じて単量体(c2)及び単量体(c3)を含む混合物である。
    (c1)アクリル酸アルキルエステル:50質量%以上99.9質量%以下、
    (c2)メタクリル酸アルキルエステル:0質量%以上49.9質量%以下、
    (c3)重合性の二重結合を1個有する他の単量体:0質量%以上20質量%以下、及び、
    (c4)重合性の二重結合を2個以上有する多官能性単量体:0.1質量%以上10質量%以下。

    但し、前記単量体混合物(c)から得られる重合体(P1)のガラス転移温度は、25℃未満が好ましい。

    単量体混合物(i)は、下記配合で、以下の単量体(i1)、単量体(i2)及び多官能性単量体(i4)、並びに、必要に応じて単量体(i3)を含む混合物である。
    (i1)アクリル酸アルキルエステル:9.9質量%以上90質量%以下、
    (i2)メタクリル酸アルキルエステル:9.9質量%以上90質量%以下、
    (i3)重合性の二重結合を1個有する他の単量体:0質量%以上20質量%以下、
    (i4)重合性の二重結合を2個以上有する多官能性単量体:0.1質量%以上10質量%以下。

    但し、前記単量体混合物(i)から得られる重合体のガラス転移温度は、25℃以上100℃以下が好ましい。

    単量体混合物(g)は、下記配合で、以下の単量体(g2)、並びに、必要に応じて単量体(g1)及び単量体(g3)を含む混合物である。
    (g1)アクリル酸アルキルエステル:0質量%以上20質量%以下、
    (g2)メタクリル酸アルキルエステル:51質量%以上100質量%以下、
    (g3)重合性の二重結合を1個有する他の単量体:0質量%以上49質量%以下。

    [単量体混合物(c)]
    単量体(c1)中のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。 また、このアルキル基の炭素数は、重合体(G )の耐熱性の観点から1以上8以下が好ましく、4以下がより好ましい。 単量体(c1)の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチルが挙げられる。 これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。 これらのうち、重合体(G )の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点からアクリル酸n−ブチルが好ましい。

    任意成分として使用される単量体(c2)中のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。 また、このアルキル基の炭素数は、重合体(G )の耐熱性の観点から4以下が好ましい。 単量体(c2)の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチルが挙げられる。 これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。 これらのうち、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点からメタクリル酸メチルが好ましい。

    任意成分として使用される単量体(c3)は、単量体(c1)及び単量体(c2)以外の重合性の二重結合を1個のみ有する単量体である。 単量体(c3)の具体例として、以下が挙げられる。 低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド。 これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。

    多官能性単量体(c4)としては、「重合反応性が等しい二重結合」を2個以上有する多官能性単量体(c41)及び「重合反応性が異なる二重結合」を2個以上有する多官能性単量体(c42)が挙げられる。

    前者の多官能性単量体(c41)としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレートが好ましい。 又、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン等も使用可能である。 その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。 これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。 これらのうち、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から1,3−ブチレングリコールジメタクリレートが好ましい。

    後者の多官能性単量体(c42)は、いわゆるグラフト交叉剤と呼ばれる単量体である。 その具体例としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸又はジカルボン酸のアリルエステル、メタリルエステル又はクロチルエステルが挙げられる。 グラフト交叉剤としてこれらの化合物を用いた場合、通常、そのエステルの共役不飽和結合が、アリル基、メタリル基或いはクロチル基よりはるかに速く反応し化学結合を形成する。 特に、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はフマル酸のアリルエステルが好ましい。 これらのうち、メタクリル酸アリルエステルが優れた効果を奏し好ましい。 これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。

    単量体混合物(c)中には、上記の各単量体(c1)〜(c4)の他に連鎖移動剤を含有させることもできる。 尚、連鎖移動剤は、通常のラジカル重合に用いられるものの中から適宜選択することができる。 具体例としては、炭素数2以上20以下のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素が挙げられる。 連鎖移動剤の使用量は、特に限定されないが、単量体(c1)〜(c4)の合計100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下が好ましい。

    単量体混合物(c)中の単量体(c1)の含有率は、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から50質量%以上であり、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から99.9質量%以下である。 単量体混合物(c)中の単量体(c1)の含有率は、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、55質量%以上が好ましく、60%質量以上がより好ましい。 又、単量体(c1)の含有率の上限は、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、79.9質量%以下が好ましく、69.9質量%以下がより好ましい。

    単量体混合物(c)中の単量体(c2)の含有率は、0質量%以上49.9質量%以下である。 単量体(c2)を49.9質量%以下含有することによって、フィルム(Y)の耐成形白化性を容易に向上させることができる。 また、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、単量体混合物(c)中の単量体(c2)の含有率は20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。 更に、単量体(c2)の含有率は、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、44.9質量%以下が好ましく、39.9質量%以下がより好ましい。

    単量体混合物(c)中の単量体(c3)の含有率は、0質量%以上20%質量以下である。 単量体(c3)を20質量%以下含有することによって、ゴム含有重合体(G )と熱可塑性重合体(B )の屈折率差を低減し、フィルム(Y)の透明性を容易に向上させることができる。 また、フィルム(Y)の透明性の観点から単量体混合物(c)中の単量体(c3)の含有率は0.1質量%以上が好ましく、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から15質量%以下が好ましい。

    単量体混合物(c)中の多官能性単量体(c4)の含有率は、0.1質量%以上10質量%以下である。 多官能性単量体(c4)の含有率を10質量%以下とすることによって、フィルム(Y)の耐成形白化性を容易に向上させることができる。 また、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。 又、フィルム(Y)に充分な柔軟性及び強靭さを付与する観点から、多官能性単量体(c4)の含有率の上限は、6質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。

    尚、重合体(P1)の存在下に、単量体混合物(g)をグラフト重合させるためには、多官能性単量体(c4)として、少なくともグラフト交叉剤が単量体混合物(c)に含有されていることが好ましい。 単量体混合物(c)中のグラフト交叉剤の含有率は、0.1質量%以上が好ましい。 グラフト交叉剤の含有率を0.1質量%以上とすることにより、フィルム(Y)の耐成形白化性がより良好となり、フィルム(Y)は、その透明性等の光学特性を低下させずに容易に成形することができる。 この含有率は、より好ましくは0.5質量%以上である。 又、グラフト交叉剤の含有率を10質量%以下とすることにより、フィルム(Y)に充分な柔軟性及び強靭さを容易に付与することができる。 この含有率は、好ましくは6質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。

    上述した単量体混合物(c)から得られる重合体(P1)のTgは、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、25℃未満が好ましい。 更に、10℃以下がより好ましく、0℃以下が更に好ましい。 Tgが10℃以下であれば、特定のヒンダードアミン系光安定剤、重合体(G )及び重合体(B )を用いて得られるフィルム(Y)は優れた耐衝撃性を容易に発現することができる。 また、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、この重合体(P1)のTgは−60℃以上が好ましく、−50℃以上がより好ましい。

    重合体(G )を作製する際の単量体混合物(c)の使用量は、以下の通りである。 単量体混合物(i)を用いない場合は、単量体混合物(c)と単量体混合物(g)の合計100質量%中における単量体混合物(c)の量は、15質量%以上50質量%以下が好ましい。 単量体混合物(i)を用いる場合は、単量体混合物(c)、単量体混合物(g)及び単量体混合物(i)の合計100質量%中における単量体混合物(c)の量は、15質量%以上50質量%以下が好ましい。 いずれの場合においても、単量体混合物(c)の前記量を15質量%以上とすることにより、フィルム(Y)に耐成形白化性を容易に付与することができ、製膜性と、用いる成形法(例:インサート成形及びインモールド成形)に必要な靭性とを、容易に両立させることができる。 又、単量体混合物(c)の前記量を50質量%以下とすることにより、車輌用部材の積層体として必要な表面硬度及び耐熱性を兼ね備えた積層フィルムが容易に得られる。 単量体混合物(c)の前記量は、より好ましくは25質量%以上35質量%以下である。

    単量体混合物(c)を重合する際、単量体混合物(c)を、重合容器内に一括で添加して重合してもよく、2段階以上に分けて添加してもよい。 フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、2段階以上に分けて添加し、重合することが好ましい。 2段階以上に分けて添加し、重合する場合、各重合段階での単量体混合物(c)中の各単量体の構成比は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。 しかし、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、各重合段階での各単量体の構成比は異なっていることが好ましい。

    単量体混合物(c)を2段階に分けて添加し、重合する場合、フィルム(Y)の耐成形白化性、耐衝撃性、耐熱性及び表面硬度の観点から、1段階目に使用する単量体混合物(c−1)のみから得られる重合体のガラス転移温度Tg1は、2段階目に使用する単量体混合物(c−2)のみから得られる重合体のガラス転移温度Tg2よりも低いことが好ましい。 具体的には、Tg1は、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、−30℃未満が好ましく、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、−60℃以上が好ましい。 また、Tg2は、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、−15℃以上、10℃以下が好ましい。

    単量体混合物(c)を2段階に分けて添加し、重合する場合、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、単量体混合物(c)100質量%中における、単量体混合物(c−1)の量は1質量%以上、20質量%以下が好ましく、単量体混合物(c−2)の量は80質量%以上、99質量%以下が好ましい。

    本発明においては、前記単量体混合物(c)を重合することによって重合体(P1)が得られ、この重合体(P1)に対して単量体混合物(g)をグラフト重合することによってゴム含有重合体(G )を得ることができる。 但し、必要に応じて、単量体混合物(c)を重合し、それに続いて単量体混合物(i)を重合することによって重合体(P2)が得られ、この重合体(P2)に対して単量体混合物(g)をグラフト重合することによってゴム含有重合体(G )を得ることもできる。

    [単量体混合物(i)]
    単量体混合物(i)を構成することができる単量体(i1)、単量体(i2)、単量体(i3)及び単量体(i4)としては、それぞれ、前述した単量体(c1)、単量体(c2)、単量体(c3)及び単量体(c4)と同様の単量体を使用することができる。 尚、単量体(i1)として使用される単量体と、単量体(c1)として使用される単量体は、同一の化合物であってもよく異なる化合物であってもよい。 このような関係は、単量体(i2)及び単量体(c2)として使用される化合物間、単量体(i3)及び単量体(c3)として使用される化合物間、並びに、単量体(i4)及び単量体(c4)として使用される化合物間、についても同様である。

    また、単量体混合物(i)中には上述した連鎖移動剤を含有することができる。 連鎖移動剤の使用量は、特に限定されないが、単量体(i1)〜(i4)の合計100質量部に対して、5質量部以下が好ましい。

    単量体混合物(i)中の単量体(i1)の含有率は、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から9.9質量%以上であり、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から90質量%以下である。 フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、この含有率は、19.9質量%以上が好ましく、29.9質量%以上がより好ましい。 また、この含有率の上限は、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。

    単量体混合物(i)中の単量体(i2)の含有率は、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、9.9質量%以上であり、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、90質量%以下である。 フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、この含有率は、39.9質量%以上が好ましく、49.9質量%以上がより好ましい。 また、この含有率の上限は、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。

    単量体混合物(i)中の単量体(i3)の含有率は、0質量%以上20質量%以下である。 この含有率が20質量%以下であれば、ゴム含有重合体(G )と熱可塑性重合体(B )の屈折率差を低減し、フィルム(Y)の透明性を容易に向上させることができる。 また、フィルム(Y)の透明性の観点から、この含有率は0.1質量%以上が好ましく、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、15質量%以下が好ましい。

    単量体混合物(i)中の多官能性単量体(i4)の含有率は、0.1質量%以上10質量%以下である。 この含有率が10質量%以下であれば、フィルム(Y)の耐成形白化性を容易に向上させることができる。 また、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、この含有率は0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。 フィルム(Y)に充分な柔軟性及び強靭さを付与する観点から、この含有率は6質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。

    尚、単量体混合物(c)、更に単量体混合物(i)を重合することによって得られる重合体(P2)の存在下に、単量体混合物(g)をグラフト重合させるためには、多官能性単量体(i4)として、少なくともグラフト交叉剤が単量体混合物(i)に含有されていることが好ましい。 単量体混合物(i)中のグラフト交叉剤の含有率は、0.1質量%以上が好ましい。 グラフト交叉剤の含有率を0.1質量%以上とすることにより、フィルム(Y)の耐成形白化性がより良好となり、フィルム(Y)は、透明性等の光学的物性を低下させずに容易に成形することができる。 この含有率は、より好ましくは0.5質量%以上である。 又、グラフト交叉剤の含有率を10質量%以下とすることにより、フィルム(Y)に充分な柔軟性及び強靭さを容易に付与することができる。 グラフト交叉剤の含有率は、好ましくは6質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。

    上述した単量体混合物(i)から得られる重合体のTgは、25℃以上100℃以下が好ましい。 Tgが25℃以上であれば、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性を、車輌用部材に必要なレベルに容易にすることができる。 この重合体のTgはより好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上である。 又、この重合体のTgが100℃以下であれば、耐成形白化性及び製膜性の良好なフィルム(Y)が容易に得られる。 この重合体のTgは、より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは70℃以下である。

    重合体(G )を作製する際の単量体混合物(i)の使用量は、単量体混合物(c)、単量体混合物(g)及び単量体混合物(i)の合計100質量%中において、5質量%以上、35質量%以下が好ましい。 単量体混合物(i)の使用量が上記範囲内であれば、フィルム(Y)の耐成形白化性と、表面硬度及び耐熱性との機能を容易に発現させることができるとともに、製膜性、並びにインサート成形及びインモールド成形に必要とされる靭性を、フィルム(Y)に容易に付与することができる。 単量体混合物(i)の使用量は、より好ましくは7質量%以上、20質量%以下である。

    単量体混合物(i)を重合する際、単量体混合物(i)は、反応器内に一括で添加して重合することもでき、2段階以上に分けて添加して重合することもできる。 2段階以上に分けて添加して重合する場合、各重合段階での各単量体の構成比は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。

    以上記載したように、ガラス転移温度が25℃未満の重合体が得られる前記単量体混合物(c)を重合させ、次いで、ガラス転移温度が25℃〜100℃の重合体が得られる前記単量体混合物(i)を重合させた場合、Tgが低い内層重合体とTgが高い外層重合体からなる2層構造の重合体粒子が生成される。 本発明においては、この2層構造の重合体粒子に対して、単量体混合物(g)をグラフト重合してゴム含有重合体(G )を得ることができる。

    [単量体混合物(g)]
    単量体混合物(g)は、メタクリル酸アルキルエステル(g2)、並びに、必要に応じて、アクリル酸アルキルエステル(g1)、及び重合性の二重結合を1個有する他の単量体(g3)で構成される混合物である。 単量体(g1)、単量体(g2)及び単量体(g3)としては、それぞれ、単量体(c1)、単量体(c2)及び単量体(c3)と同様の単量体を使用することができる。

    尚、単量体(g1)として使用される単量体と、単量体(c1)として使用される単量体は、同一の化合物であってもよく異なる化合物であってもよい。 このような関係は、単量体(g2)及び単量体(c2)として使用される化合物間、並びに、単量体(g3)及び単量体(c3)として使用される化合物間についても、同様である。

    また、単量体混合物(g)中には上述した連鎖移動剤を含有することができる。 フィルム(Y)の製膜性の観点から、連鎖移動剤の使用量は、単量体(g1)〜(g3)の合計100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましい。 その下限値は、より好ましくは0.2質量部以上であり、更に好ましくは0.4質量部以上である。

    単量体混合物(g)中の単量体(g1)の含有率は、0質量%以上20質量%以下である。 単量体(g1)を20質量%以下含有することにより、フィルム(Y)の耐熱分解性を容易に向上させることができる。 フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、単量体(g1)の含有率は10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。 また、その下限は、フィルム(Y)の耐熱分解性の観点から1質量%以上が好ましい。

    単量体混合物(g)中の単量体(g2)の含有率は、51質量%以上100質量%以下である。 単量体(g2)を51質量%以上含有することにより、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性を容易に向上させることができる。 フィルム(Y)の耐熱分解性の観点から、単量体(g2)の含有率は99質量%以下が好ましい。 また、その下限は、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、90質量%以上が好ましく、93質量%以上がより好ましい。

    単量体混合物(g)中の単量体(g3)の含有率は、0質量%以上49質量%以下である。 単量体(g3)を49質量%以下含有することにより、ゴム含有重合体(G )と熱可塑性重合体(B )の屈折率差を低減し、フィルム(Y)の透明性を容易に向上させることができる。 また単量体(g3)の含有率は、フィルム(Y)の透明性の観点から、0.1質量%以上が好ましく、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、20質量%以下が好ましい。

    重合体(G )を作製する際の単量体混合物(g)の使用量は、単量体の合計100質量%中の15質量%以上80質量%以下が好ましい。 単量体混合物(g)の使用量が15質量%以上であれば、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性が容易に良好となる。 この使用量は、より好ましくは45質量%以上である。 この使用量が80質量%以下の場合、耐成形白化性を有するフィルム(Y)が容易に得られ、又、インサート成形及びインモールド成形に必要な靭性をフィルム(Y)に容易に付与することができる。 この使用量は、より好ましくは70質量%以下である。 尚、前記「単量体の合計」とは、単量体混合物(c)と単量体混合物(g)の合計、又は、単量体混合物(c)と、単量体混合物(i)と単量体混合物(g)の合計を意味する。

    単量体混合物(g)を重合する際、単量体混合物(g)は、重合容器内に一括で添加して重合することもでき、2段階以上に分けて添加して重合することもできる。 2段階以上に分けて添加して重合する場合、各重合段階での単量体混合物(g)中の各単量体の構成比は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。

    [重合体(G )の重合方法]
    ゴム含有重合体(G )の重合法は、特に限定されないが、乳化重合による逐次多段重合法が最も適している。 例えば、単量体混合物(c)を水、界面活性剤及び重合開始剤の存在下で乳化重合し、次いで単量体混合物(g)を供給して単量体混合物(g)の重合を行なう方法が挙げられる。 また、単量体混合物(c)及び単量体混合物(i)の重合を乳化重合法で行なった後に、単量体混合物(g)の重合を懸濁重合法で行なう、乳化懸濁重合法を採用することもできる。

    ゴム含有重合体(G )を乳化重合により製造する場合は、単量体混合物(c)、水及び界面活性剤を予め混合して乳化液を調製し、次いでこの乳化液を反応器内に供給して重合した後、単量体混合物(i)及び単量体混合物(g)をそれぞれ順に反応器内に供給して重合する方法が好ましい。 尚、本発明において、単量体混合物(i)の供給は省略することができる。

    このような予め調製された乳化液を反応器内に供給し重合させることにより、重合体を分散媒(例:アセトン)中に分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数が重合体100gあたり0個以上50個以下である、ゴム含有重合体(G )を容易に得ることができる。 このようなゴム含有重合体(G )を原料に用いたフィルム(Y)は、フィルム中のフィッシュアイ数が少ないという特性を有する。 またこのフィルムは、印刷抜けが発生しやすい低い印圧で淡色の木目柄のグラビア印刷を施した場合でも、あるいはメタリック調や漆黒調等のベタ刷りのグラビア印刷を施した場合でも、印刷抜けが少なく、高いレベルの印刷性を有するため好ましい。 尚、分散液中に存在する粒子の直径および数は、レーザー回折式粒子径分布測定装置により測定することができる。

    乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系及びノニオン系の界面活性剤が使用でき、特にフィルム(Y)の耐温水白化性の観点からアニオン系界面活性剤が好ましい。

    アニオン系界面活性剤としては、例えば、ロジン石鹸、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩が挙げられる。

    これらのうち、フィルム(Y)の耐温水白化性の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩が好ましい。 界面活性剤の実例としては、以下の市販品が挙げられる。 三洋化成工業(株)製の商品名:NC−718;東邦化学工業(株)製の商品名:フォスファノールLS−529、フォスファノールRS−610NA、フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA、フォスファノールRS−660NA;花王(株)製の商品名:ラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406、ラテムルP−0407。

    乳化液を調製する方法としては、以下の方法(1)〜(3)が挙げられる。
    (1)水中に単量体混合物を添加した後、界面活性剤を添加する方法、
    (2)水中に界面活性剤を添加した後、単量体混合物を添加する方法、
    (3)単量体混合物中に界面活性剤を添加した後、水を添加する方法。
    このうち、フィルムのフィッシュアイ低減の観点から、前記方法(1)及び方法(2)が好ましい。

    乳化液を調製するための装置としては、ホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置、膜乳化装置等が挙げられる。

    乳化液は、単量体中に水滴が分散したW/O型、水中に単量体の液滴が分散したO/W型のいずれでもよい。 しかし、フィルムのフィッシュアイ低減の観点から、水中に単量体の液滴が分散したO/W型であって、分散相(油滴)の直径が100μm以下である乳化液が好ましい。 尚、乳化液中の分散相の直径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置により測定することができる。

    単量体混合物(c)、単量体混合物(g)及び必要に応じて単量体混合物(i)を重合する際に使用することができる重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、及び酸化剤と還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。 これらのうち、ラジカル発生効率の観点から、レドックス系開始剤が好ましく、特に、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ロンガリット及びヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。 重合開始剤の使用量は、重合条件等に応じて適宜決めることができる。 又、重合開始剤は、乳化液中の、水相、および単量体相(油相)のいずれか一方又は両方に添加することができる。

    ゴム含有重合体(G )の重合方法としては、重合安定性の観点から特に以下の方法が好ましい。 まず、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ロンガリット及び水を反応器内に仕込んで水溶液を調製し、この水溶液を重合温度にまで昇温する。 一方、単量体混合物(c)、過酸化物等の重合開始剤、水及び界面活性剤を混合して乳化液を調製する。 次いでこの乳化液を前記昇温後の反応器内に供給して、単量体を重合する。 次いで、単量体混合物(i)を過酸化物等の重合開始剤とともに反応器内に供給して重合する。 次に、単量体混合物(g)を過酸化物等の重合開始剤等とともに反応器内に供給して重合する。 尚、本発明において、単量体混合物(i)の供給及び重合は必須ではなく、省略可能である。

    重合温度は、重合開始剤の種類あるいはその量によって異なるが、重合安定性の観点から、通常、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、又、重合温度は、120℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。

    上記の方法で得られたゴム含有重合体(G )を含むラテックスは、濾過装置を用いて処理することが好ましい。 この濾過処理によって、重合の過程で発生するスケール、原料中の不純物、及び重合の過程で外部から混入する夾雑物等をラテックスから除去できる。

    ゴム含有重合体(G )は、上記の方法で製造したラテックスからゴム含有重合体(G )を回収することによって得ることができる。 ラテックスからゴム含有重合体(G )を回収する方法としては、塩析もしくは酸析による凝固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の方法が挙げられる。 これらの方法によれば、ゴム含有重合体(G )は、粉状で回収される。

    〔熱可塑性重合体(B )〕
    本発明においてアクリル系樹脂組成物(Y)の一部を構成することができる熱可塑性重合体(B )は、メタクリル酸アルキルエステル単位を50質量%以上含有する重合体である。 この熱可塑性重合体(B )にゴム含有重合体(G )は含まれない。 重合体(B )中の、メタクリル酸アルキルエステル単位の含有率は、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、50質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上、99.9質量%以下がより好ましい。

    重合体(B )を構成する「メタクリル酸アルキルエステル単位」の原料となる単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチルが挙げられる。 メタクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は、分岐鎖状でも直鎖状でもよく、そのアルキル基の炭素数はフィルム(Y)の耐熱性の観点から4以下が好ましい。 また、これらのうちフィルム(Y)の耐熱性の観点からメタクリル酸メチルがより好ましい。 これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。

    また、重合体(B )は、任意成分として「アクリル酸アルキルエステル単位」0質量%以上50質量%以下と、これらの2つの単量体単位以外の「他の単量体単位」0質量%以上50質量%以下とを含むことができる。

    重合体(B )中における「アクリル酸アルキルエステル単位」の含有率は、フィルム(Y)に製膜性と、インサート成形及び/又はインモールド成形可能な靭性とを付与する観点から、0質量%以上50質量%以下が好ましい。 この含有率は、より好ましくは0.1質量%以上、20質量%以下である。

    前記「アクリル酸アルキルエステル単位」の原料となる単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチルが挙げられる。 アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は、分岐鎖状でも直鎖状でもよく、そのアルキル基の炭素数は、フィルム(Y)耐熱性の観点から4以下が好ましい。 また、これらのうちフィルム(Y)の耐熱性の観点から、アクリル酸メチルがより好ましい。 これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。

    重合体(B )中における前記「他の単量体単位」の含有率は、フィルム(Y)の成形性の観点から、0質量%以上50質量%以下が好ましい。 この含有率は、より好ましくは0質量%以上、20質量%以下である。

    前記「他の単量体単位」の原料となる「他の単量体」としては、積層フィルムの分野で公知の単量体を必要に応じて使用できる。 例えば、スチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが挙げられる。 これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。

    尚、重合体(B )中の各単量体単位の含有率は、ガスクロマトグラフ質量分析により特定することができる。

    更に、重合体(B )の還元粘度は、フィルム(Y)のインサート成形性、インモールド成形性、及び製膜性の観点から、0.15L/g以下が好ましく、0.10L/g以下がより好ましい。 また、重合体(B )の還元粘度は、フィルム(Y)の製膜性の観点から、0.01L/g以上が好ましく、0.03L/g以上がより好ましい。 尚、「還元粘度」は、0.1gの重合体をクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定される粘度である。

    以上より、重合体(B )は、アルキル基の炭素数が1以上4以下のメタクリル酸アルキルエステル50質量%以上100質量%以下と、アクリル酸アルキルエステル0質量%以上50質量%以下と、前記「他の単量体」0質量%以上50質量%以下とを、重合又は共重合して得られる、還元粘度が0.15L/g以下の重合体又は共重合体が好ましい。

    熱可塑性重合体(B )は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。 しかし、2種以上の重合体(B )を併用することで、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性を容易に高めることができる。 尚、フィルム(Y)の耐熱性の観点から、重合体(B )のガラス転移温度は80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。

    尚、重合体(B )の質量平均分子量は、フィルム(Y)の機械的特性の観点から3万以上が好ましく、フィルム(Y)の成形性の観点から20万以下が好ましい。

    重合体(B )の製造方法は特に限定されず、通常の懸濁重合、乳化重合及び塊状重合等の方法で重合することができる。

    〔配合剤〕
    上述したように、フィルム(Y)は、各種の配合剤を含むことができるが、この中でも、紫外線吸収剤、及び、酸化防止剤等のラジカル捕捉剤を含有することが好ましい。

    かかる紫外線吸収剤としては、フィルムの耐候性を向上させる目的で公知の紫外線吸収剤を使用することができ、特に限定されない。 しかし、耐ブリードアウト性の観点から、分子量が300以上の紫外線吸収剤が好ましく、分子量が400以上の紫外線吸収剤がより好ましい。 特に分子量400以上のベンゾトリアゾール系又は分子量400以上のトリアジン系のものが好ましく使用できる。 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、BASFジャパン(株)製の商品名:チヌビン234、(株)ADEKA製の商品名:アデカスタブLA−31が挙げられる。 トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、BASFジャパン(株)製の商品名:チヌビン1577が挙げられる。 アクリル系樹脂組成物(Y)100質量%中における紫外線吸収剤の含有率は、耐ブリードアウト性の観点から0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上5質量%以下がより好ましい。

    また、(Y)層の耐候性をより向上させるためには、アクリル系樹脂組成物(Y)は、分子量1400以上のヒンダードアミン系光安定剤及び紫外線吸収剤と共に、酸化防止剤を含有することが好ましい。 酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系の酸化防止剤を用いることができる。 アクリル系樹脂組成物(Y)100質量%における酸化防止剤の含有率は、耐ブリードアウト性の観点から、0.05質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。

    〔積層フィルムの耐候性〕
    本発明の積層フィルムは、温度100℃の大気中での500時間加熱後と加熱前での黄色度の増加量(△YI)が3.0以下であることが好ましい。 また本発明の積層フィルムは、超促進耐候性試験機(岩崎電気社製、商品名:SUV−F1)で積算光量1080MJ/m となるまで曝露した後の波長323nmでの光線透過率T 1080が20%以下であることが好ましい。

    <積層フィルムの製造方法>
    本発明の積層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、製造工程を少なくできるという観点から、共押出法が好ましい。 共押出法においては、フッ化ビニリデン系樹脂(F)を含む表層形成用の樹脂組成物とアクリル系樹脂組成物(Y)とが同時に溶融押出しされて、(Y)層と(F)層が積層された積層フィルムが製造される。 (Y)層の両側に(F)層が存在する3層構成の積層フィルムを製造する場合も、共押出法が好ましい。

    複数の溶融樹脂層を積層する具体的な方法としては、以下の方法(1)〜(3)等が挙げられる。
    (1)フィードブロック法等のダイ通過前に溶融樹脂層を積層する方法、
    (2)マルチマニホールド法等のダイ内で溶融樹脂層を積層する方法、
    (3)マルチスロット法等のダイ通過後に溶融樹脂層を積層する方法。

    尚、表層形成用樹脂組成物とアクリル系樹脂組成物(Y)とを同時に溶融押出しながら積層する場合、(F)層の表面に艶消し性を付与する観点から(Y)層を冷却ロールに接するように溶融押出することが好ましい。 具体的には、例えば、以下の工程を含む製造方法により、本発明の積層フィルムを製造することができる。

    2台の溶融押出機を用意し、各押出機のシリンダー温度及びダイ温度を200℃以上250℃以下に設定する。 一方の押出機1内にて表層形成用樹脂組成物を溶融可塑化する。 それと同時に、他方の押出機2内にてアクリル系樹脂組成物(Y)を溶融可塑化する。 両押出機の先端のダイから押し出された溶融樹脂を、50℃以上100℃以下に設定された冷却ロール上に共押出しする。

    表層や(Y)層に上述した配合剤を含有させる場合は、配合剤の添加方法は特に限定されない。 配合剤は、例えば、(F)層用のフッ化ビニリデン系樹脂(F)及びアクリル系樹脂(A )、又は、(Y)層用のアクリル系樹脂組成物(Y)と共に前記押出機中に直接供給することができる。 また、(F)層用のフッ化ビニリデン系樹脂(F)及びアクリル系樹脂(A )中に、又は(Y)層用のアクリル系樹脂組成物(Y)中に、予め配合剤を添加して混練機中において混合することができる。 混練機としては、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー、ロール混練機等が挙げられる。

    <積層成形品>
    本発明の積層フィルムは、各種樹脂成形品、木工製品及び金属成形品等の基材の表面に積層することによって、フッ化ビニリデン系樹脂(F)を含む層を表面に有する積層体(積層成形品)を製造することができる。 尚、本発明の積層成形品は、基材上に積層フィルムが積層されていればよく、基材と、積層フィルムとの間に他の層(例:後述する印刷層)を有することができる。 具体的には、以下の工程を含む製造方法によって、本発明の積層成形品を製造することができる。

    即ち、積層フィルムを第1の金型内で真空成形又は圧空成形して予備成形体を製造する工程と、第2の金型内で基材となる樹脂を射出成形してこの予備成形体とこの基材とを一体化する工程とを含む製造方法によって積層成形品を製造することができる。 尚、フッ化ビニリデン系樹脂(F)を含む層を表面に有する積層成形品を製造する場合は、成形品の表面に(F)層が配置されるように射出成形が行なわれる。

    基材は、目的とする積層成形品(上述した樹脂成形品、木工製品や金属成形品等)に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂成形品を形成する場合、基材として樹脂層(例:熱可塑性樹脂層)を用いることができる。 この熱可塑性樹脂としては、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体)、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。

    また、本発明の積層フィルムは、各種基材に意匠性を付与するために、必要に応じて適当な印刷法により印刷を施して使用することができる。 本発明の積層フィルムと各種基材との間に印刷層を設けることが、印刷層の保護や高級感の付与の点から好ましい。 また、基材の色調を生かす用途には、本発明の積層フィルムをそのまま使用することができる。 特に、このように基材の色調を生かす用途には、本発明の積層フィルムは、ポリ塩化ビニルフィルムやポリエステルフイルムに比べ、透明性、深み感や高級感の点で優れている。

    本発明の積層フィルムは、特に、車輌用部材用の積層成形品、及び建材用の積層成形品に適している。 これらの積層成形品具体例としては、以下のものが挙げられる。 インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用部材;ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用部材;AV機器、OA機器、家具製品等のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等;携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等;家具用外装材;壁面、天井、床等の建築用内� ��材;マーキングフィルム、高輝度反射材被覆用フィルム;サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材;窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材;各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材;電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用部材;瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器、包装材料;景品、小物等の雑貨等。

    以下実施例及び比較例により本発明を更に説明する。 これらの例に先立ち、ゴム含有重合体(G )、アクリル系樹脂組成物(Y)、フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂(A )とのポリマーブレンドの各製造例、並びに、各種評価方法を説明する。 尚、実施例及び比較例中、並びに表1中の「部」の記載は、特に断りのない限り「質量部」を表す。

    <製造例1〜4>
    [製造例1] ゴム含有重合体(G −1)の製造 攪拌機を備えた容器内に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA(メタクリル酸メチル)0.3部、n−BA(アクリル酸n−ブチル)4.5部、BDMA(1,3−ブチレングリコールジメタクリレート)0.2部、及びAMA(アリルメタクリレート)0.05部からなる単量体混合物(c−1)と、CHP(クメンヒドロパーオキサイド)0.025部とを投入し、室温下にて攪拌混合した。 次いで、攪拌しながら、乳化剤(東邦化学工業(株)製、商品名「フォスファノールRS610NA」)1.3部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して乳化液を調製した。 尚、上記単量体混合物(c−1)を単独で重合した場合に得られる重合体のTgは−48℃であった。

    次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2部を投入し、液温を75℃に昇温した。 更に、脱イオン水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部及びEDTA(エチレンジアミン四酢酸)0.0003部を加えて調製した混合物を、前記重合容器内に一度に投入した。 次いで、窒素雰囲気下で重合容器内の液体を攪拌しながら、前記乳化液を8分間にわたって重合容器内に滴下した後、15分間反応を継続させ、単量体混合物(c)の第1段目の重合を完結した。

    続いて、MMA 9.6部、n−BA 14.4部、BDMA 1.0部及びAMA 0.25部からなる単量体混合物(c−2)を、CHP 0.016部と共に、90分間にわたって重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、単量体混合物(c)の二段目の重合を完結させ、重合体(P1−1)を得た。 尚、上記単量体混合物(c−2)を単独で重合した場合に得られる重合体のTgは−10℃であった。

    続いて、MMA 6部、MA(アクリル酸メチル)4部及びAMA 0.075部からなる単量体混合物(i―1)を、CHP 0.0125部と共に、45分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合体(P2−1)を得た。 尚、上記単量体混合物(i−1)を単独で重合した場合に得られる重合体のTgは60℃であった。

    続いて、MMA 57部、MA 3部、及びn−OM(n−オクチルメルカプタン)0.264部からなる単量体混合物(g−1)を、t−BH(ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド)0.075部と共に、140分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させて単量体混合物(g−1)を前記重合体に対してグラフト重合させて、ゴム含有重合体(G −1)のラテックスを得た。 尚、上記単量体混合物(g−1)を単独で重合した場合に得られる重合体のTgは99℃であった。

    得られたゴム含有重合体(G −1)のラテックスを、濾材としてSUS(ステンレス鋼)製のメッシュ(平均目開き:62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した。 次いで、濾過物を、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収した。 回収された含水物を乾燥して、粉体状のゴム含有重合体(G −1)を得た。 ゴム含有重合体(G −1)のゲル含有率は70質量%、質量平均粒子径は0.11μmであった。

    [製造例2] アクリル系樹脂組成物(Y−1)の製造 上記ゴム含有重合体(G −1)75部、熱可塑性重合体(B )としてMMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、質量平均分子量Mw10万、Tgガラス転移温度105℃、還元粘度0.059L/g)25部、紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製、商品名「チヌビン234」)1.4部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン(株)製、商品名「CHIMASSORB 2020 FDL」、分子量2600〜3400)0.3部、フェノール系酸化防止剤(BASFジャパン(株)製、商品名「イルガノックス1076」)0.1部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。 得られた混合物を200〜240℃に加熱したベント式2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名:TEM−35B)に供給し、混練してアクリル系樹脂組成物(Y−1)のペレットを得た。 アクリル系樹脂組成物(Y−1)のゲル含有率は55質量%であった。

    [製造例3] 表層原料の製造 フッ化ビニリデン系樹脂(F)として(株)クレハ製、商品名「KFポリマーT♯850」(異種結合の比率8.3%、結晶融点173℃)68部、アクリル系樹脂(A )としてMMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、質量平均分子量Mw10万、Tgガラス転移温度105℃)32部、酸化防止剤として(株)ADEKA製、商品名「アデカスタブAO−60」0.1部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。 得られた混合物を180〜220℃に加熱したベント式2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名:TEM−35B)に供給し、混練して表層原料(表層形成用樹脂組成物)のペレットを得た。

    [製造例4] 反応性HALS共重合体の製造 冷却器付き重合容器内に、MMA 92部、MA 3部、アデカスタブLA−82 5部、n−OM 0.4部、AMBN(2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)) 0.12部、MMA/メタクリル酸塩/メタクリル酸エチルスルホン酸塩の共重合体(質量組成比=30/10/69) 0.02部、硫酸ナトリウム 0.1部、脱イオン水 217部、の混合物を仕込んだ。 重合容器内の雰囲気を窒素ガスで充分に置換し、その後、重合容器内の液体を攪拌しながら75℃まで加熱し、窒素ガス雰囲気下で重合反応を進行させた。 2時間後に重合容器内の液体を95℃に昇温して更に60分間維持して重合を完結させた。 得られた重合体ビーズを、脱水、乾燥して、質量平均分子量が16100の反応性HALS共重合体を得た。

    <評価方法>
    積層フィルムの黄色度、耐候性、外観及び耐薬品性の評価方法は、以下の通りである。

    (1)積層フィルムの黄色度 積層フィルムについて、分光式色差計(日本電気工業社製、商品名:SE2000)によりJIS K7105、6.3に記載の方法に準拠して黄色度YI を測定した。 また、温度100℃の大気中で500時間放置した後の積層フィルムについて、同様にして黄色度YI 500を測定した。

    (2)積層フィルムの耐候性 積層フィルムについて、UVカット特性として紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製 V−630型)を用いて、波長323nmでの光線透過率T (%)を測定した。 また積層フィルムを超促進耐候性試験機(岩崎電気社製、商品名:SUV−F1)で積算光量1080MJ/m となるまで曝露し、その積層フィルムについて、同様にして光線透過率T 1080 (%)を測定した。

    (3)積層フィルムの外観 積層フィルムの外観を目視観察し、以下の基準に基づき4段階で評価した。
    ++:熱劣化物及びブリードアウトが認められなかった。
    +:ブリードアウトのみ認められた。
    −:熱劣化物のみ認められた。
    −−:熱劣化物及びブリードアウトの両方が認められた。

    (4)積層フィルムの耐薬品性 積層フィルム上に、濃度10質量%乳酸水溶液を滴下し、温度80℃で24時間放置した後に、該積層フィルムの外観を目視観察し、以下の基準に基づき、積層フィルムの耐薬品性を評価した。
    +:溶解及び膨潤が認められなかった。
    −:溶解及び膨潤のいずれか一方又は両方が認められた。

    (5)積層フィルムの製造時におけるロールへのスティッキング 比較例2の(Y)の層がヒンダードアミン系光安定剤を含有しない積層フィルムの製造の場合と比較して、ロールへのスティッキングの状態を評価した。
    +:ロールへのスティッキングが、比較例2の場合と同等であった。
    −:ロールへのスティッキングが、比較例2の場合より顕著であった。

    [実施例1]
    単軸押出機1と単軸押出機2の先端部にマルチマニホールドダイを設置した。 製造例2で得られたアクリル系樹脂組成物(Y−1)のペレットをシリンダー温度230〜240℃のシリンダー直径40mmの単軸押出機1に供給して、溶融可塑化した。 また製造例3で得られた表層用のペレットをシリンダー温度200〜230℃のシリンダー直径30mmの単軸押出機2に供給し、溶融可塑化した。 そして、これらの両溶融可塑物を250℃に加熱したマルチマニホールドダイに供給して、積層フィルムを得た。 尚、その際、冷却ロールの温度を90℃とし、アクリル系樹脂組成物(Y−1)が冷却ロールに接するようにして積層フィルムを得た。 積層フィルムの黄色度、耐候性、外観及び耐薬品性の評価結果を表1に示した。 積層フィルムは、表層の厚さが12.5μmであり、アクリル系樹脂組成物(Y−1)の層の厚さが112.5μmであった。

    [実施例2〜17、比較例1〜2]
    フッ化ビニリデン系樹脂(F)を含む層の組成と、アクリル系樹脂組成物(Y)の層の組成を、表1又は表2に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。 評価結果を表1又は表2に示した。 尚、比較例1の積層フィルムの製造条件は、(Y)の層が分子量1400以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有せず、分子量1400未満のヒンダードアミン系光安定剤を含有する点が異なる。 比較例2の積層フィルムの製造条件は、(Y)の層がヒンダードアミン系光安定剤を含有しない点が異なる。

    [比較例3]
    表層用のペレット、単軸押出機2及びマルチマニホールドダイを使用せず、単軸押出機1の先端にTダイを設置した。 それ以外は比較例1と同様にして、アクリル系樹脂組成物(Y)の層のみから構成される単層フィルムを得た。 評価結果を表2に示した。

    [考察]
    比較例1の積層フィルムは加熱後の黄色度が不充分であった。 比較例2の積層フィルムは、耐候性試験後の波長323nmでの光線透過率が高く、UVカット特性が不充分であった。 比較例3の単層フィルムは、フッ化ビニリデン系樹脂(F)を含む層を有しないため、アクリル系樹脂組成物(Y)が分子量1400未満のヒンダードアミン系光安定剤を含む場合でも、フッ化ビニリデン系樹脂の脱フッ酸反応に由来する着色は起こらないが、耐薬品性が不充分であった。


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