積層フィルム及び積層成形品

申请号 JP2012543391 申请日 2012-09-12 公开(公告)号 JPWO2013039119A1 公开(公告)日 2015-03-26
申请人 三菱レイヨン株式会社; 发明人 康一郎 實藤; 康一郎 實藤; 祐平 此川; 祐平 此川; 善紀 安部; 善紀 安部;
摘要 優れた耐薬品性と表面硬度を備え、加熱後においても光沢を有し、ヘイズの値が小さい透明な積層フィルム、及びそのフィルムを用いた積層成形品を提供する。フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂とのポリマーブレンド(X)の層と、アクリル系樹脂組成物(Y)の層とからなる、下記の条件(1)〜(3)を満足する積層フィルム。(1)180℃まで昇温した後、自然放冷により25℃まで降温した後のヘイズ値が2以下である。(2)鉛筆硬度がHB以上である。(3)前記ポリマーブレンド(X)の示差走査熱量計により測定される結晶融解熱が20〜40J/gである。前記ポリマーブレンド(X)は、フッ化ビニリデン系樹脂(F)とガラス転移 温度 が95〜120℃であるアクリル系樹脂(A1)とからなることが好ましい。
权利要求
  • フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂とのポリマーブレンド(X)の層と、アクリル系樹脂組成物(Y)の層とからなり、下記の条件(1)〜(3)を満足する積層フィルム:
    [(1)180℃まで昇温した後、自然放冷により25℃まで降温した後のヘイズ値が2以下である。
    (2)前記ポリマーブレンド(X)の層の表面の鉛筆硬度がHB以上である。
    (3)前記ポリマーブレンド(X)の示差走査熱量計により測定される結晶融解熱が20〜40J/gである。 ]。
  • 前記ポリマーブレンド(X)が、フッ化ビニリデン系樹脂(F)とガラス転移温度が95〜120℃であるアクリル系樹脂(A1)とからなるポリマーブレンドであって、フッ化ビニリデン系樹脂(F)/アクリル系樹脂(A1)の含有比が62〜78/38〜22(質量%)である請求項1に記載の積層フィルム。
  • 前記アクリル系樹脂組成物(Y)が、ゴム含有重合体(G)と、メタクリル酸アルキルエステル単位を50質量%以上含有する熱可塑性重合体(A2)とを含む請求項2に記載の積層フィルム。
  • 前記ゴム含有重合体(G)が、下記単量体混合物(c)を重合して得られる重合体(C)の存在下に、下記単量体混合物(g)をグラフト重合して得られるゴム含有重合体である請求項3に記載の積層フィルム;
    [単量体混合物(c):
    (c1)アクリル酸アルキルエステル:50〜99.9質量%、
    (c2)メタクリル酸アルキルエステル:0〜49.9質量%、
    (c3)重合性の二重結合を1個有する他の単量体:0〜20質量%、及び、
    (c4)重合性の二重結合を2個以上有する多官能性単量体:0.1〜10質量%。
    但し、前記単量体混合物(c)から得られる重合体のガラス転移温度は、25℃未満である。
    単量体混合物(g):
    (g1)アクリル酸アルキルエステル:0〜20質量%、
    (g2)メタクリル酸アルキルエステル:51〜100質量%、
    (g3)重合性の二重結合を1個有する他の単量体:0〜49質量%。 ]。
  • 前記フッ化ビニリデン系樹脂(F)中の異種結合の比率が10%以下である請求項1に記載の積層フィルム。
  • 請求項1に記載の積層フィルムが基材に積層された積層成形品。
  • 請求項1に記載の積層フィルムを第1の金型内で真空成形または圧空成形して予備成形体を製造し、その後、第2の金型内で基材となる樹脂を射出成形して該予備成形体と該基材とを一体化する積層成形品の製造方法。

  • 说明书全文

    本発明は、透明な積層フィルム、及びそのフィルムを用いた積層成形品に関する。

    低コストで成形品に意匠性を付与する方法として、インサート成形法又はインモールド成形法がある。 インサート成形法は、印刷等の加飾を施したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等のフィルム又はシートを、予め真空成形等によって三次元の形状に成形し、不要なフィルム又はシート部分を除去した後、この三次元成形体を射出成形金型内に移し、基材となる樹脂を射出成形することにより、前記三次元成形体と基材とを一体化させて成形品を得る方法である。 一方、インモールド成形法は、印刷等の加飾を施したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等のフィルム又はシートを射出成形金型内に設置し、真空成形を施した後、同じ金型内で基材となる樹脂を射出成形することによりフィルム又はシートと基材とを一体化させて成形品を得る方法である。

    特許文献1は、インサート成形及びインモールド成形に用いることができる表面硬度、耐熱性に優れ、かつ、耐成形白化性に優れるアクリル樹脂フィルムとして、特定の組成からなるゴム含有重合体と、特定の組成からなる熱可塑性重合体とを特定の割合で混合してなるアクリル樹脂フィルムを開示している。 しかしながら、アクリル樹脂フィルムは一般的に耐薬品性が不十分である。

    特許文献2は、アクリル樹脂フィルムの表層にフッ化ビニリデン系樹脂を配置することで耐薬品性を高めた積層フィルムを開示している。

    特開2005−163003号公報

    特開平03−288640号公報

    しかしながら、特許文献2の積層フィルムは、表層のフッ化ビニリデン系樹脂のヘイズ値が大きいことから、光沢感を要求される用途に展開することが困難な場合があった。 また、金型内での成形時または基材とのラミネート時に加熱されたフッ化ビニリデン系樹脂が冷却される際に再結晶を起こすことから、フッ化ビニリデン系樹脂の結晶サイズが成長し、積層フィルムの光沢感が更に低下する場合もあった。

    本発明の目的は、優れた耐薬品性と表面硬度を備え、加熱後においても光沢を有し、ヘイズ値が小さい透明な積層フィルム、及びそのフィルムを用いた積層成形品を提供することにある。

    本発明は以下の〔1〕〜〔7〕である。
    〔1〕 フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂とのポリマーブレンド(X)の層と、アクリル系樹脂組成物(Y)の層とからなり、下記の条件(1)〜(3)を満足する積層フィルム:
    [(1)180℃まで昇温した後、自然放冷により25℃まで降温した後のヘイズ値が2以下である。
    (2)前記ポリマーブレンド(X)の層の表面の鉛筆硬度がHB以上である。
    (3)前記ポリマーブレンド(X)の示差走査熱量計により測定される結晶融解熱が20〜40J/gである。 ]。

    〔2〕 前記ポリマーブレンド(X)が、フッ化ビニリデン系樹脂(F)とガラス転移温度が95〜120℃であるアクリル系樹脂(A1)とからなるポリマーブレンドであって、フッ化ビニリデン系樹脂(F)/アクリル系樹脂(A1)の含有比が62〜78/38〜22(質量%)である前記〔1〕に記載の積層フィルム。

    〔3〕 前記アクリル系樹脂組成物(Y)が、ゴム含有重合体(G)と、メタクリル酸アルキルエステル単位を50質量%以上含有する熱可塑性重合体(A2)とを含む前記〔1〕または〔2〕に記載の積層フィルム。

    〔4〕 前記ゴム含有重合体(G)が、下記単量体混合物(c)を重合して得られる重合体(C)の存在下に、下記単量体混合物(g)をグラフト重合して得られるゴム含有重合体である前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の積層フィルム;
    [単量体混合物(c):
    (c1)アクリル酸アルキルエステル:50〜99.9質量%、
    (c2)メタクリル酸アルキルエステル:0〜49.9質量%、
    (c3)重合性の二重結合を1個有する他の単量体:0〜20質量%、及び、
    (c4)重合性の二重結合を2個以上有する多官能性単量体:0.1〜10質量%。
    但し、前記単量体混合物(c)から得られる重合体のガラス転移温度は、25℃未満である。
    単量体混合物(g):
    (g1)アクリル酸アルキルエステル:0〜20質量%、
    (g2)メタクリル酸アルキルエステル:51〜100質量%、及び、
    (g3)重合性の二重結合を1個有する他の単量体:0〜49質量%。 ]。

    〔5〕 前記フッ化ビニリデン系樹脂(F)中の異種結合の比率が10%以下である前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の積層フィルム。

    〔6〕 前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の積層フィルムが基材に積層された積層成形品。

    〔7〕 前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の積層フィルムを第1の金型内で真空成形または圧空成形して予備成形体を製造し、その後、第2の金型内で基材となる樹脂を射出成形して該予備成形体と該基材とを一体化する積層成形品の製造方法。

    本発明によれば、優れた耐薬品性と表面硬度を備え、加熱後においても光沢を有し、ヘイズ値が小さい透明な積層フィルム、及びその積層フィルムを用いた積層成形品を提供することができる。

    以下、本発明の積層フィルムおよびその製造方法の好ましい形態について説明する。 尚、本発明において、フィルムとは、厚みが0.01mm〜0.5mm程度の平板材料であって、シート状物と称されるものも含まれる。

    <積層フィルム>
    本発明の積層フィルムは、フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂とのポリマーブレンド(X)の層(以下、「(X)層」または「フィルム(X)」と称する場合がある。)と、アクリル系樹脂組成物(Y)の層(以下、「(Y)層」または「フィルム(Y)」と称する場合がある。)とからなる。 なお、この積層フィルムは、(X)層と(Y)層とからなる2層構成、及び(Y)層の両側に(X)層が存在する3層構成とすることができる。 尚、「ポリマーブレンド」とは、複数種の樹脂の混合物を意味する。

    <ポリマーブレンド(X)の層>
    ポリマーブレンド(X)は、フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂とで構成されている。 フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂はそれぞれ一種以上であってもよく2種以上であってもよい。

    ポリマーブレンド(X)は、フッ化ビニリデン系樹脂(F)(以下、「樹脂(F)」と称する場合がある。)と、ガラス転移温度が95〜120℃であるアクリル系樹脂(A1)(以下、「樹脂(A1)」と称する場合がある。)とのポリマーブレンドであることが好ましい。 また、樹脂(F)と樹脂(A1)との合計量を100質量%としたときに、樹脂(F)を62〜78質量%含有し、樹脂(A1)を38〜22質量%含有するポリマーブレンドであることが好ましい。 尚、このポリマーブレンド中には、後述の配合剤を添加することができる。

    本発明において樹脂のガラス転移温度は、DSC(示査走査熱量計)によって測定することができる。 「ガラス転移温度」は、JIS K7121、3. (2)に記載の方法に準拠して昇温スピード10℃/分の条件で昇温を行い、「補外ガラス転移開始温度」として測定される温度である。

    ポリマーブレンド(X)中における樹脂(F)と樹脂(A1)の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析によって測定することができる。

    〔フッ化ビニリデン系樹脂(F)〕
    本発明においてポリマーブレンド(X)の一部を構成することができるフッ化ビニリデン系樹脂(F)は、フッ化ビニリデン単位を含む樹脂であれば良く、例えば、フッ化ビニリデン単位のみからなる単独重合体や、フッ化ビニリデン単位を含む共重合体を用いることができる。 樹脂(F)の質量平均分子量は、耐薬品性の観点から10万以上であることが好ましく、製膜性の観点から30万以下であることが好ましい。

    前記共重合体中のフッ化ビニリデン単位の含有量は、樹脂(F)と樹脂(A1)との相溶性の観点から85質量%以上であることが好ましい。 樹脂(F)が共重合体の場合、フッ化ビニリデンと共重合させる共重合性成分は、樹脂フィルムの分野で公知の材料から適宜選択することができるが、例えば、ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレンを用いることができる。 共重合性成分は1種または2種以上を用いることができる。

    しかしながら、樹脂(F)は、透明性及び耐熱性が優れたフィルム(X)を得る観点から、ポリフッ化ビニリデンであることが好ましい。

    また、樹脂(F)は、高い結晶融点を有することが好ましい。 具体的には、樹脂(F)の結晶融点は、耐熱性の観点から150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。 また、結晶融点の上限は、耐熱性の観点からポリフッ化ビニリデンの結晶融点に等しい175℃程度であることが好ましい。 なお、「結晶融点」とは、JIS K7121、3. (2)に記載の方法に準拠して測定される「融解ピーク温度」を意味する。

    樹脂(F)は、1種を単独で使用することができ、また2種以上を併用することもできる。 樹脂(F)としては、例えば以下の市販品が挙げられる。 アルケマ(株)製の商品名:Kynar720(フッ化ビニリデンの含有率:100質量%、結晶融点:169℃)、Kynar710(フッ化ビニリデンの含有率:100質量%、結晶融点:169℃)、(株)クレハ製の商品名:KFT#850(フッ化ビニリデンの含有率:100質量%、結晶融点:173℃)、ソルベイソレクシス(株)製の商品名:Solef1006(フッ化ビニリデンの含有率:100質量%、結晶融点:174℃)、Solef1008(フッ化ビニリデンの含有率:100質量%、結晶融点:174℃)など。

    フッ化ビニリデン系樹脂(F)は、モノマーの結合様式として、頭−頭結合(head to head)、尾−尾結合(tail to tail)、頭−尾結合(head to tail)の3種の結合様式があり、頭−頭結合及び尾−尾結合は「異種結合」と呼ばれる。 フィルム(X)の耐薬品性を向上させる観点から、樹脂(F)における「異種結合の比率」は10%以下であることが好ましい。 異種結合の比率を低くする観点から、樹脂(F)は懸濁重合により製造された樹脂であることが好ましい。

    「異種結合の比率」は、樹脂(F)の19 F−NMRスペクトルの回折ピークから求めることができる。 具体的には、樹脂(F)40mgを重素ジメチルホルムアミド(D −DMF)0.8mlに溶解し、室温下で19 F−NMRを測定する。 得られた19 F−NMRのスペクトルは、−91.5ppm、−92.0ppm、−94.7ppm、−113.5ppm、及び、−115.9ppmの位置に主要な5本のピークを有する。 これらのピークの内、−113.5ppm及び−115.9ppmのピークが、異種結合に由来するピークと同定される。 従って、5本の各ピークの面積の合計をS 、−113.5ppmの面積をS 、−115.9ppmの面積をS として、異種結合の比率は、次式により算出される。
    異種結合の比率=[{(S +S )/2}/S ]×100(%) 。

    樹脂(F)は、フィルム(X)の透明性を損なわない程度に、艶消し剤を含むことができる。 艶消し剤としては、有機及び無機の艶消し剤を使用可能である。

    〔アクリル系樹脂(A1)〕
    本発明においてポリマーブレンド(X)の一部を構成することができるアクリル系樹脂(A1)は、ガラス転移温度が95〜120℃である。 ガラス転移温度(以下、「Tg」と称する場合がある。)が95℃以上であることから、フィルム(X)の表面硬度が優れている。 また、樹脂(A1)のTgが120℃以下であることからフィルム(X)の成形性が良好である。
    樹脂(A1)の質量平均分子量は、フィルム(X)の機械的特性の観点から3万以上であることが好ましく、フィルム(X)の成形性の観点から20万以下であることが好ましい。

    なお、樹脂(A1)は、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方または両方の単量体から得られる重合体であることができ、メタクリル酸エステル単位を70質量%以上含む重合体であることが好ましい。 さらに、これらのエステルと共重合可能な単量体単位(例えばアクリル酸単位等)を含むこともできる。

    この中でも、表面硬度の高いフィルム(X)を得る観点から、樹脂(A1)の原料となる単量体としては、その単独重合体のガラス転移温度が95℃以上である、メタクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましい。 この要件を満たすメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル等が挙げられる。 なお、メタクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は分岐鎖状でも良く、直鎖状でも良い。 また、メタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、フィルム(X)の耐熱性の観点から4以下であることが好ましい。

    このように、樹脂(A1)はメタクリル酸アルキルエステルから得られる単独重合体であっても良く、メタクリル酸アルキルエステルと、このエステルと共重合可能な単量体(例えば、メタクリル酸やスチレン等)とから得られる共重合体であっても良い。 樹脂(A1)中のメタクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、フィルム(X)の表面硬度及び耐熱性の観点から80質量%以上であることが好ましく、フィルム(X)の耐熱分解性の観点から99質量%以下であることが好ましい。

    また樹脂(A1)と樹脂(F)との相溶性の観点から、樹脂(A1)中のアクリル酸アルキルエステル単位及びメタクリル酸アルキルエステル単位の合計含有量は80質量%以上であることが好ましい。 樹脂(A1)は、フィルム(X)の透明性を損なわない程度に、後述するゴム含有重合体(G)を含んでもよい。

    〔配合剤〕
    本発明の積層フィルムに用いられるポリマーブレンド(X)には、必要に応じて、樹脂フィルムの分野で用いられる一般的な配合剤を添加することができる。 この配合剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤等を挙げることができる。

    酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系等の酸化防止剤を用いることができる。 熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、硫黄系、ヒドラジン系等の熱安定剤を用いることができる。 可塑剤としては、ポリマーブレンド(X)を構成する樹脂の種類にもよるが、例えば、フタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、オキシ安息香酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系等の可塑剤を用いることができる。 滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル系、脂肪酸系、金属石鹸系、脂肪酸アミド系、高級アルコール系、パラフィン系等の滑剤を用いることができる。 帯電防止剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性イオン系等の帯電防止剤を用いることができる。 難燃剤としては、例えば、臭素系、リン系、塩素系、窒素系、アルミニウム系、アンチモン系、マグネシウム系、ホウ素系、ジルコニウム系等の難燃剤を用いることができる。 充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、滑石、蝋石、カオリン等を用いることができる。 これらの配合剤はそれぞれ、1種を単独でまたは2種以上を用いることができる。

    樹脂(F)及び樹脂(A)を得る際の重合方法は、特に限定されず、乳化重合や懸濁重合等の公知の方法を採用することができる。

    ポリマーブレンド(X)中における樹脂(F)の含有量(樹脂(F)及び樹脂(A1)の合計を100質量%とする)は、樹脂(F)の異種結合の比率が10%より多いものを用いる場合は、72〜78質量%が好ましい。 この含有量は、フィルム(X)の耐薬品性の観点から73質量%以上であることがより好ましく、フィルム(X)の透明性の観点から77質量%以下であることがより好ましい。 また樹脂(F)として、異種結合の比率が10%以下のものを用いる場合は、ポリマーブレンド(X)中における樹脂(F)の含有量は62〜72質量%であることが好ましい。

    また、(X)層中における樹脂(F)及び樹脂(A1)の合計含有量は90〜100質量%であることが好ましい。 前記配合剤の含有量は0〜10質量%であることが好ましい。

    <積層フィルムの特性>
    本発明の積層フィルムは、下記の条件(1)〜(3)を満足するフィルムである。
    (1)180℃まで昇温した後、自然放冷により25℃まで降温した後の積層フィルムのヘイズ値が2以下である。
    (2)ポリマーブレンド(X)の層の表面の鉛筆硬度がHB以上である。
    (3)ポリマーブレンド(X)の示差走査熱量計により測定される結晶融解熱が20〜40J/gである。

    尚、ヘイズ値、鉛筆硬度及び結晶融解熱は、以下の方法にて測定される。

    (1)ヘイズ値:JIS K 7136に規定された方法により測定されるヘイズ値である。 温度25℃における積層フィルムを、その温度が180℃となるまで10〜15秒間加熱した後、25℃まで自然放冷する。 その積層フィルムについてヘイズ値が、積分球を用いた装置で測定される。 光源はD65である。 本発明において測定装置として、ヘーズ・透過・反射率計HR−100(商品名、(株)村上色彩研究所製)が用いられる。

    (2)鉛筆硬度:JIS K5600−5−4に規定の方法により、積層フィルムのポリマーブレンド(X)の層の表面に対し、度:45度、圧:750g重の条件で鉛筆を押し付けて測定される表面硬度である。

    (3)結晶融解熱:JIS K7121、3. (2)に記載の方法に準拠した方法により測定される値である。 ポリマーブレンド(X)を、昇温スピード10℃/分の条件で昇温して、融解ピーク温度を測定する。 また、融解ピークの面積から吸熱量を求め、これを結晶融解熱とする。 本発明においては、測定装置として、示差走査熱量計((株)パーキンエルマー製、商品名 Diamond DSC)が用いられる。 他の条件は、試験片の質量:10mg、窒素ガス圧力:0.14MPa、標準物質:インジウム、である。

    積層フィルムは、前記ヘイズ値が2以下であることから、高い光沢を有している。 ヘイズ値を2以下にするためには、ポリマーブレンド(X)の結晶性を下げればよい。 ポリマーブレンド(X)の結晶性を下げる方法として、フッ化ビニリデン系樹脂(F)の結晶性を下げる方法や、フッ化ビニリデン系樹脂(F)及びアクリル系樹脂(A1)の合計質量に対するフッ化ビニリデン系樹脂(F)の質量の比率を78質量%以下にする方法が挙げられる。 ヘイズ値は、積層フィルムの透明性の観点から、1.0以下であることがより好ましく、0.8以下であることが更に好ましく、0.6以下であることが特に好ましい。

    積層フィルムは、(X)層の表面の鉛筆硬度がHB以上であることから、優れた表面硬度を備えている。 鉛筆硬度をHB以上とするためには、フッ化ビニリデン系樹脂(F)及びアクリル系樹脂(A1)の合計質量に対するアクリル系樹脂(A1)の質量の比率を15質量%以上とする方法や、アクリル系樹脂(A1)のガラス転移温度を95〜120℃とする方法が挙げられる。

    積層フィルムは、ポリマーブレンド(X)の結晶融解熱が20〜40J/gであることから、優れた耐薬品性を備えている。 結晶融解熱が20J/g以上であることから、積層フィルムの製造時において冷却ロールに積層フィルムが貼り付くことがなく容易に製造でき、また積層フィルムの搬送時に、擦り傷やブロッキングが発生することを容易に防ぐことができる。 結晶融解熱を20〜40J/gにするためには、原料として用いられるフッ化ビニリデン系樹脂(F)の異種結合の比率が10%を超えている場合は、ポリマーブレンド(X)中におけるフッ化ビニリデン系樹脂(F)の比率を72質量%を超え78質量%以下とすることが好ましい。 また、この異種結合の比率が10%以下の場合は、ポリマーブレンド(X)中におけるフッ化ビニリデン系樹脂(F)の比率を62〜72質量%とすることが好ましい。 結晶融解熱は20J/g以上、30J/g以下であることがより好ましい。

    積層フィルムにおいては、厚みが薄いフィルムの方が透明性の高いものが得られやすく、厚いフィルムの方が機械的強度の高いものが得られやすい。 そのため、積層フィルムの厚みは25〜150μmであることが好ましい。

    積層フィルムの(X)層と(Y)層の厚みの比「(X)層/(Y)層」は1/25〜1/4であることが好ましい。 この厚みの比が1/25以上である場合、フィルム表面の荒れにより外観が劣化することを容易に防ぐことができる。 また、この厚み比が1/4以下である場合、フィルム表面は優れた光沢を有する。 この厚みの比は、さらに好ましくは1/25〜1/9である。

    <アクリル系樹脂組成物(Y)の層>
    本発明の積層フィルムは、アクリル系樹脂組成物(Y)の層を有する。 アクリル系樹脂組成物(Y)とは、アクリル酸エステル単位およびメタクリル酸エステル単位の少なくとも一方を有する(共)重合体を含む樹脂組成物を意味する。 なお、フィルム(Y)の成形性の観点から、アクリル系樹脂組成物(Y)は、後述するゴム含有重合体(G)(以下、「重合体(G)」と称する場合がある。)と、後述する熱可塑性重合体(A2)(以下、「重合体(A2)」と称する場合がある。)を含む組成物であることが好ましい。

    アクリル系樹脂組成物(Y)が、重合体(G)と重合体(A2)とからなる場合、フィルム(Y)の成形性の観点から、両重合体の合計100質量%中において、重合体(G)が1〜99質量%であり、重合体(A2)が99〜1質量%であることが好ましい。 また、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、両重合体の合計100質量%中の重合体(G)の含有量は、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。 同様の観点から、両重合体の合計100質量%中の重合体(A2)の含有量は、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。

    また、ポリマーブレンド(X)と同様に、アクリル系樹脂組成物(Y)は、重合体(G)及び重合体(A2)と共に前記配合剤を含有することができる。

    アクリル系樹脂組成物(Y)のゲル含有率は、フィルム(Y)の耐成形白化性および製膜性の観点から、10質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。 ゲル含有率は、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。 またゲル含有率は、より好ましくは75質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。

    本発明において、「ゲル含有率」とは、所定質量w (g)の試料(例えば、樹脂組成物(Y))をアセトン中還流下で6時間抽出処理し、この処理液を遠心分離(14000rpm、30分間)により分別し、溶液をデカンテーションで取り除き、アセトン不溶分を回収して乾燥後(50℃、24時間)、そのアセトン不溶分の質量w (g)を測定し、下記式にて算出される値である。
    ゲル含有率(質量%)=w /w ×100 。

    〔ゴム含有重合体(G)〕
    本発明においてアクリル系樹脂組成物(Y)の一部を構成することができるゴム含有重合体(G)とは、後述する単官能性単量体及び多官能性単量体を重合して得られる三次元網目構造を含む重合体を意味する。

    重合体(G)のゲル含有率は、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。 フィルム(Y)の耐成形白化性の観点からは、ゲル含有率は大きい程有利であるが、フィルム(Y)の成形性の観点からは、ある量以上のフリーポリマーの存在が望まれるため、ゲル含有率は80質量%以下であることが好ましい。

    重合体(G)の質量平均分子量は、フィルム(Y)の機械的特性の観点から3万以上であることが好ましく、フィルム(Y)の成形性の観点から20万以下であることが好ましい。

    重合体(G)の質量平均粒子径は、フィルム(Y)の機械的特性の観点から0.03μm以上であることが好ましい。 この平均粒子径は、フィルム(Y)の耐成形白化性、透明性、及び、インサート成形もしくはインモールド成形における加熱時の透明性保持の観点から0.3μm以下であることが好ましく、0.15μm以下であることがより好ましく、0.13μm以下であることが特に好ましい。 また、この平均粒子径は、フィルム(Y)の機械的特性の観点から、より好ましくは0.07μm以上であり、特に好ましくは0.09μm以上である。 「質量平均粒子径」は、大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700(商品名)を用いた動的光散乱法により測定することができる。

    フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、重合体(G)は、下記単量体混合物(c)を重合させて得られる重合体(C)の存在下に、下記単量体混合物(g)をグラフト重合させて得られるゴム含有重合体であることが好ましい。 尚、下記単量体混合物(c)を重合させ、更に下記単量体混合物(i)を重合させて得られる重合体(C)の存在下に、下記単量体混合物(g)をグラフト重合させて得られるゴム含有重合体であることも、同様に好ましい。

    単量体混合物(c)は、以下の単量体(c1)、単量体(c2)、単量体(c3)及び多官能性単量体(c4)の混合物である。
    (c1)アクリル酸アルキルエステル:50〜99.9質量%、
    (c2)メタクリル酸アルキルエステル:0〜49.9質量%、
    (c3)重合性の二重結合を1個有する他の単量体:0〜20質量%、及び、
    (c4)重合性の二重結合を2個以上有する多官能性単量体:0.1〜10質量%。
    但し、前記単量体混合物(c)から得られる重合体のガラス転移温度は、25℃未満である。

    単量体混合物(i)は、以下の単量体(i1)、単量体(i2)、単量体(i3)及び多官能性単量体(i4)の混合物である。
    (i1)アクリル酸アルキルエステル:9.9質量%以上90質量%以下、
    (i2)メタクリル酸アルキルエステル:9.9質量%以上90質量%以下、
    (i3)重合性の二重結合を1個有する他の単量体:0質量%以上20質量%以下、
    (i4)重合性の二重結合を2個以上有する多官能性単量体:0.1質量%以上10質量%以下。
    但し、前記単量体混合物(i)から得られる重合体のガラス転移温度は、25℃以上100℃以下であることが好ましい。

    単量体混合物(g)は以下の単量体(g1)、単量体(g2)及び単量体(g3)の混合物である。
    (g1)アクリル酸アルキルエステル:0〜20質量%、
    (g2)メタクリル酸アルキルエステル:51〜100質量%、
    (g3)重合性の二重結合を1個有する他の単量体:0〜49質量%。

    [単量体混合物(c)]
    単量体(c1)中のアルキル基は、直鎖状であっても良く、分岐鎖状であっても良い。 また、このアルキル基の炭素数は、重合体(G)の耐熱性の観点から1〜8であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。 単量体(c1)の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等が挙げられる。 これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。 これらのうち、重合体(G)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点からアクリル酸n−ブチルが好ましい。

    任意成分として使用される単量体(c2)中のアルキル基は、直鎖状であっても良く、分岐鎖状であっても良い。 また、このアルキル基の炭素数は、重合体(G)の耐熱性の観点から4以下であることが好ましい。 単量体(c2)の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル等が挙げられる。 これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。 これらのうち、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点からメタクリル酸メチルが好ましい。

    任意成分として使用される単量体(c3)は、単量体(c1)及び単量体(c2)以外の重合性の二重結合を1個有する単量体である。 この単量体(c3)として、具体的には、例えば、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を挙げることができる。 これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。

    多官能性単量体(c4)としては、「重合反応性が等しい二重結合」を2個以上有する多官能性単量体(c4 )及び「重合反応性が異なる二重結合」を2個以上有する多官能性単量体(c4 )が挙げられる。

    前者の多官能性単量体(c4 )としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレートが好ましい。 又、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン等も使用可能である。 その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。 これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。 これらのうち、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から1,3−ブチレングリコールジメタクリレートが好ましい。

    後者の多官能性単量体(c4 )は、いわゆるグラフト交叉剤と呼ばれる単量体である。 その具体例としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸又はジカルボン酸のアリルエステル、メタリルエステル又はクロチルエステル等が挙げられる。 グラフト交叉剤としてこれらの化合物を用いた場合、通常、そのエステルの共役不飽和結合が、アリル基、メタリル基或いはクロチル基よりはるかに速く反応し化学結合を形成する。 特に、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点からアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はフマル酸のアリルエステルが好ましい。 これらのうち、メタクリル酸アリルエステルが優れた効果を奏し好ましい。 これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。

    単量体混合物(c)中には、上記の各単量体の他に連鎖移動剤を含有させることもできる。 なお、連鎖移動剤は、通常のラジカル重合に用いられるものの中から適宜選択することができる。 具体例としては、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素等が挙げられる。 連鎖移動剤の使用量は、特に限定されないが、単量体混合物(c)100質量部に対して、0〜5質量部であることが好ましい。

    単量体混合物(c)中の単量体(c1)の含有量は、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から50質量%以上であることが好ましく、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から99.9質量%以下であることが好ましい。 フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、55質量%以上であることがより好ましく、60%質量以上であることが特に好ましい。 又、その上限は、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、79.9質量%以下であることがより好ましく、69.9質量%以下であることが特に好ましい。

    単量体混合物(c)中の単量体(c2)の含有量は、0〜49.9質量%であることが好ましい。 単量体(c2)を49.9質量%以下含有することによって、フィルム(Y)の耐成形白化性を容易に向上させることができる。 また、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、単量体混合物(c)中の単量体(c2)の含有量は20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。 さらに、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から44.9質量%以下であることがより好ましく、39.9質量%以下であることが特に好ましい。

    単量体混合物(c)中の単量体(c3)の含有量は、0〜20%質量であることが好ましい。 単量体(c3)を20質量%以下含有することによって、ゴム含有重合体(G)と熱可塑性重合体(A2)との屈折率差を低減し、フィルム(Y)の透明性を容易に向上させることができる。 また、フィルム(Y)の透明性の観点から単量体混合物(c)中の単量体(c3)の含有量は0.1質量%以上であることがより好ましく、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から15質量%以下であることがより好ましい。

    単量体混合物(c)中の多官能性単量体(c4)の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましい。 多官能性単量体(c4)の含有量を10質量%以下とすることによって、フィルム(Y)の耐成形白化性を容易に向上させることができる。 また、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、0.1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。 又、フィルム(Y)に十分な柔軟性及び強靭さを付与する観点から、その上限は、6質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。

    尚、重合体(C)の存在下に、単量体混合物(g)をグラフト重合させるためには、多官能性単量体(c4)として、少なくともグラフト交叉剤が含有されていることが好ましい。 単量体混合物(c)中のグラフト交叉剤の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましい。 グラフト交叉剤の含有量を0.1質量%以上とすることにより、フィルム(Y)の耐成形白化性が良好となり、フィルム(Y)は、その透明性等の光学的物性を低下させずに容易に成形することができる。 この含有量は、より好ましくは0.5質量%以上である。 又、グラフト交叉剤の含有量を10質量%以下とすることにより、フィルム(Y)に十分な柔軟性及び強靭さを付与することができる。 この含有量は、より好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。

    上述した単量体混合物(c)から得られる重合体(G)のTgは、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、25℃未満であることが好ましい。 さらに、10℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることが特に好ましい。 Tgが10℃以下であれば、重合体(G)と重合体(A2)とから得られるフィルム(Y)は優れた耐衝撃性を容易に発現することができる。 また、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、この重合体(G)のTgは−60℃以上であることが好ましく、−50℃以上であることがより好ましい。

    単量体混合物(c)の使用量は、単量体混合物(c)と単量体混合物(g)の合計量(100質量%)中、または、単量体混合物(c)、単量体混合物(g)及び単量体混合物(i)の合計量(100質量%)中、15〜50質量%であることが好ましい。 単量体混合物(c)の使用量を15質量%以上とすることにより、フィルム(Y)に耐成形白化性を容易に付与することができ、製膜性と、インサート成形及び/またはインモールド成形に必要な靭性とを、容易に両立させることができる。 又、単量体混合物(c)の使用量を50質量%以下とすることにより、車輌用部材の積層体として必要な表面硬度及び耐熱性を兼ね備えた積層フィルムが容易に得られる。 単量体混合物(c)の使用量は、より好ましくは25質量%以上、35質量%以下である。

    単量体混合物(c)を重合する際、単量体混合物(c)を重合容器内に一括で添加して重合しても良く、2段階以上に分けて添加して重合しても良い。 フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、2段階以上に分けて重合することが好ましい。 2段階以上に分けて重合する場合、各重合段階での単量体混合物(c)中の各単量体の構成比は、それぞれ同じであっても良く、異なっていても良い。 しかしながら、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、各重合段階での各単量体の構成比は異なっていることが好ましい。

    単量体混合物(c)を2段階以上に分けて重合する場合、フィルム(Y)の耐成形白化性、耐衝撃性、耐熱性及び表面硬度の観点から、1段階目に使用する単量体混合物(c )のみから得られる重合体のTgは、2段階目に使用する単量体混合物(c )のみから得られる重合体のTgよりも低いことが好ましい。 具体的には、1段階目に使用する単量体混合物(c )のみから得られる重合体のTgは、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、−30℃未満であることが好ましく、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、−60℃以上であることが好ましい。 また、2段階目に使用する単量体混合物(c )のみから得られる重合体のTgは、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、−15℃以上、10℃以下であることが好ましい。

    単量体混合物(c)を2段階で重合する場合、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、1段階目に使用する単量体混合物(c )の使用量は、1質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、2段階目に使用する単量体混合物(c )の使用量は、80質量%以上、99質量%以下であることが好ましい。

    尚、本発明においては、「微小な種粒子」の存在下に単量体混合物(c)の重合を行うこともできる。 この微小な種粒子は、例えば、メタクリル酸エステルを40質量%以上含む単量体混合物を重合させることによって製造することができる。 この場合、ゴム含有重合体(G)100質量%中における「微小な種粒子」の含有量は10質量%以下であることが好ましい。

    本発明においては、前記単量体混合物(c)を重合することによって重合体(C)が得られ、この重合体(C)に対して単量体混合物(g)をグラフト重合することによってゴム含有重合体(G)を得ることができる。 但し、必要に応じて、単量体混合物(c)を重合し、それに続いて単量体混合物(i)を重合することによって得られる重合体を重合体(C)として用い、この重合体(C)に対して単量体混合物(g)をグラフト重合することによってゴム含有重合体(G)を得ることもできる。

    [単量体混合物(i)]
    単量体混合物(i)を構成する単量体(i1)、単量体(i2)、単量体(i3)及び多官能性単量体(i4)としては、それぞれ、前述した単量体(c1)、単量体(c2)、単量体(c3)及び多官能性単量体(c4)と同様の単量体を使用することができる。 尚、単量体(i1)として使用される単量体と、単量体(c1)として使用される単量体は、同一の化合物であってもよく異なる化合物であってもよい。 このような関係は、単量体(i2)及び単量体(c2)として使用される化合物間、単量体(i3)及び単量体(c3)として使用される化合物間、並びに、多官能性単量体(i4)及び多官能性単量体(c4)として使用される化合物間、についても同様である。

    また、単量体混合物(i)中には前記連鎖移動剤を添加することができる。 連鎖移動剤の使用量は、特に限定されないが、単量体混合物(i)100質量部に対して、0〜5質量部であることが好ましい。

    単量体混合物(i)中の単量体(i1)の含有量は、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から9.9質量%以上であることが好ましく、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から90質量%以下であることが好ましい。 フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、この含有量は、19.9質量%以上であることがより好ましく、29.9質量%以上であることが特に好ましい。 また、この含有量の上限は、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。

    単量体混合物(i)中の単量体(i2)の含有量は、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、9.9質量%以上であることが好ましく、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、90質量%以下であることが好ましい。 フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、この含有量は、39.9質量%以上であることがより好ましく、49.9質量%以上であることが特に好ましい。 また、この含有量の上限は、フィルム(Y)の耐成形白化性及び耐衝撃性の観点から、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。

    単量体混合物(i)中の単量体(i3)の含有量は、0〜20質量%であることが好ましい。 この含有量が20質量%以下であることによって、ゴム含有重合体(G)と熱可塑性重合体(A2)との屈折率差を低減し、フィルム(Y)の透明性を容易に向上させることができる。 また、この含有量は、フィルム(Y)の透明性の観点から0.1質量%以上であることがより好ましく、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から15質量%以下であることがより好ましい。

    単量体混合物(i)中の多官能性単量体(i4)の含有量は、0〜10質量%であることが好ましい。 この含有量が10質量%以下であることによって、フィルム(Y)の耐成形白化性を容易に向上させることができる。 また、フィルム(Y)の耐成形白化性の観点から、この含有量は0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましい。 フィルム(Y)に十分な柔軟性及び強靭さを付与する観点から、この含有量は6質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。

    尚、単量体混合物(i)を重合することによって得られる重合体(C)の存在下に、単量体混合物(g)をグラフト重合させるためには、多官能性単量体(i4)として、少なくともグラフト交叉剤が含有されていることが好ましい。 単量体混合物(i)中のグラフト交叉剤の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましい。 グラフト交叉剤の含有量を0.1質量%以上とすることにより、フィルム(Y)の耐成形白化性が良好となり、フィルム(Y)は、透明性等の光学的物性を低下させずに容易に成形することができる。 この含有量は、より好ましくは0.5質量%以上である。 又、グラフト交叉剤の含有量を10質量%以下とすることにより、フィルム(Y)に十分な柔軟性及び強靭さを容易に付与することができる。 グラフト交叉剤の含有量は、より好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以下である。

    上述した単量体混合物(i)から得られる重合体のTgは、25℃以上100℃以下であることが好ましい。 Tgが25℃以上であれば、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性を、車輌用部材に必要なレベルに容易にすることができる。 この重合体のTgはより好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上である。 又、この重合体のTgが100℃以下であれば、耐成形白化性及び製膜性の良好なフィルム(Y)が容易に得られる。 この重合体のTgは、より好ましくは80℃以下であり、特に好ましくは70℃以下である。

    単量体混合物(i)を重合する際、単量体混合物(i)の使用量は、単量体混合物(c)、単量体混合物(g)及び単量体混合物(i)の合計量(100質量%)中、5質量%以上、35質量%以下であることが好ましい。 単量体混合物(i)の使用量がこの範囲内であれば、フィルム(Y)の耐成形白化性と、表面硬度及び耐熱性との機能を容易に発現させることができるとともに、製膜性と、インサート成形及び/またはインモールド成形に必要とされる靭性とを、フィルム(Y)に容易に付与することができる。 単量体混合物(i)の使用量は、より好ましくは7質量%以上、20質量%以下である。

    単量体混合物(i)を重合する際、単量体混合物(i)を重合容器内に一括で添加して重合することもでき、2段階以上に分けて添加して重合することもできる。 2段階以上に分けて重合する場合、各重合段階での各単量体の構成比は、それぞれ同じであっても良く、異なっていても良い。

    以上記載したように、ガラス転移温度が25℃未満の重合体が得られる前記単量体混合物(c)を重合させ、次いで、ガラス転移温度が25℃〜100℃の重合体が得られる前記単量体混合物(i)を重合させた場合、Tgが低い内層重合体とTgが高い外層重合体からなる2層構造の重合体粒子が生成される。 本発明においては、この2層構造の重合体粒子に対して、単量体混合物(g)をグラフト重合してゴム含有重合体(G)を得ることができる。

    [単量体混合物(g)]
    単量体混合物(g)は、アクリル酸アルキルエステル(g1)、メタクリル酸アルキルエステル(g2)、及び重合性の二重結合を1個有する他の単量体(g3)で構成される混合物である。 単量体(g1)、単量体(g2)及び単量体(g3)としては、それぞれ、単量体(c1)、単量体(c2)及び単量体(c3)と同様の単量体を使用することができる。 尚、単量体(g1)として使用される単量体と、単量体(c1)として使用される単量体は、同一の化合物であってもよく異なる化合物であってもよい。 このような関係は、単量体(g2)及び単量体(c2)として使用される化合物間、並びに、単量体(g3)及び単量体(c3)として使用される化合物間についても、同様である。

    また、単量体混合物(g)中には上述した連鎖移動剤を含有することができる。 フィルム(Y)の製膜性の観点から、連鎖移動剤の使用量は、単量体混合物(g)100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましい。 その下限値は、より好ましくは0.2質量部以上であり、特に好ましくは0.4質量部以上である。

    単量体混合物(g)中の単量体(g2)の含有量は、51〜100質量%であることが好ましい。 単量体(g2)を51質量%以上含有することにより、フィルム(Y)の耐熱性を容易に向上させることができる。 フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、単量体(g2)の含有量は80質量%以上であることがより好ましく、93質量%以上であることが特に好ましい。 また、この含有量の上限は、フィルム(Y)の耐熱分解性の観点から99質量%以下であることがより好ましい。

    単量体混合物(g)中の単量体(g1)の含有量は、0〜20質量%であることが好ましい。 単量体(g1)を20質量%以下含有することにより、フィルム(Y)の耐熱分解性を容易に向上させることができる。 フィルム(Y)の耐熱分解性の観点から、単量体(g1)の含有量は1質量%以上であることがより好ましい。 また、この含有量の上限は、フィルム(Y)の耐熱性の観点から、10質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが特に好ましい。

    単量体混合物(g)中の単量体(g3)の含有量は、0〜49質量%であることが好ましい。 単量体(g3)を49質量%以下含有することにより、ゴム含有重合体(G)と熱可塑性重合体(A2)との屈折率差を低減し、フィルム(Y)の透明性を容易に向上させることができる。 また単量体(g3)の含有量は、フィルム(Y)の透明性の観点から0.1質量%以上であることがより好ましく、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から15質量%以下であることがより好ましい。

    単量体混合物(g)の使用量は、単量体混合物(c)と単量体混合物(g)の合計量(100質量%)中、または、単量体混合物(c)、単量体混合物(g)及び単量体混合物(i)の合計量(100質量%)中、15〜80質量%であることが好ましい。 単量体混合物(g)の使用量が15質量%以上であれば、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性が容易に良好となる。 この使用量は、より好ましくは45質量%以上である。 この使用量が80質量%以下の場合、耐成形白化性を有するフィルム(Y)が容易に得られ、又、インサート成形及びインモールド成形に必要な靭性をフィルム(Y)に容易に付与することができる。 この使用量は、より好ましくは70質量%以下である。

    単量体混合物(g)を重合する際、単量体混合物(g)は、重合容器内に一括で添加して重合することもでき、2段階以上に分けて添加して重合することもできる。 2段階以上に分けて重合する場合、各重合段階での単量体混合物(g)中の各単量体の構成比は、それぞれ同じであっても良く、異なっていても良い。

    上述した各単量体混合物を重合することによって得られる重合体(G)のTgは、60℃以上であることが好ましい。 Tgが60℃以上であれば、車輌用部材に適した表面硬度及び耐熱性を有するフィルム(Y)が容易に得られる。 重合体(G)のTgは、より好ましくは80℃以上であり、特に好ましくは90℃以上である。 また、フィルム(Y)の成形性の観点から、重合体(G)のTgは150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。

    [重合体(G)の重合方法]
    ゴム含有重合体(G)の重合法は、特に限定されないが、乳化重合による逐次多段重合法が最も適している。 例えば、単量体混合物(c)を水、界面活性剤及び重合開始剤の存在下で乳化重合し、次いで単量体混合物(g)を供給して単量体混合物(g)の重合を行う方法が挙げられる。 また、単量体混合物(c)及び単量体混合物(i)の重合を乳化重合法で行った後に、単量体混合物(g)の重合を懸濁重合法で行う、乳化懸濁重合法を採用することもできる。

    ゴム含有重合体(G)を乳化重合により製造する場合は、単量体混合物(c)、水及び界面活性剤を予め混合して乳化液を調製し、次いでこの乳化液を反応器内に供給して重合した後、単量体混合物(i)及び単量体混合物(g)をそれぞれ順に反応器内に供給して重合する方法が好ましい。 尚、本発明において、単量体混合物(i)の供給は省略することができる。 また、その一方、乳化重合により製造された「微小な種粒子」の存在下に単量体混合物(c)の重合を行うこともできる。

    このような予め調製された乳化液を反応器内に供給し重合させることにより、ゴム含有重合体(G)を分散媒(例えば、アセトン)中に分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数が重合体(G)100gあたり0〜50個である重合体(G)を容易に得ることができる。 このようなゴム含有重合体(G)を原料に用いたフィルム(Y)は、フィルム中のフィッシュアイ数が少ないという特性を有する。 またこのフィルムは、印刷抜けが発生しやすい低い印圧で淡色の木目柄のグラビア印刷を施した場合でも、或いはメタリック調や漆黒調等のベタ刷りのグラビア印刷を施した場合でも、印刷抜けが少なく、高いレベルでの印刷性を有するため好ましい。

    乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系及びノニオン系の界面活性剤が使用でき、特にフィルム(Y)の耐温水白化性の観点からアニオン系界面活性剤が好ましい。
    アニオン系界面活性剤としては、ロジン石鹸;オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム系、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩等が挙げられる。

    これらのうち、フィルム(Y)の耐温水白化性の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩が好ましい。 界面活性剤の実例としては、三洋化成工業(株)製の商品名:NC−718、東邦化学工業(株)製の商品名:フォスファノールLS−529、フォスファノールRS−610NA,フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA、フォスファノールRS−660NA、並びに、花王(株)製の商品名:ラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406、ラテムルP−0407等が挙げられる。

    乳化液を調製する方法としては、(1)水中に単量体混合物を添加した後、界面活性剤を添加する方法、(2)水中に界面活性剤を添加した後、単量体混合物を添加する方法、或いは、(3)単量体混合物中に界面活性剤を添加した後、水を添加する方法のいずれでもよい。 このうち、フィルムのフィッシュアイ低減の観点から、前記方法(1)及び方法(2)が好ましい。

    乳化液を調製するための装置としては、ホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置、及び膜乳化装置等が挙げられる。

    乳化液は、単量体中に水滴が分散したW/O型、水中に単量体の液滴が分散したO/W型のいずれでもよい。 しかしながら、フィルムのフィッシュアイ低減の観点から、水中に単量体の液滴が分散したO/W型であって、液滴の直径が100μm以下である乳化液が好ましい。

    単量体混合物(c)、単量体混合物(i)及び単量体混合物(g)を重合する際に使用される重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、及び酸化剤と還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。 これらのうち、ラジカル発生効率の観点から、レドックス系開始剤が好ましく、特に、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ロンガリット及びヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。 重合開始剤の使用量は、重合条件等に応じて適宜決めることができる。 又、重合開始剤は、水相と単量体相のいずれか一方又は両方に添加することができる。

    ゴム含有重合体(G)の重合方法としては、重合安定性の観点から特に以下の方法が好ましい。 まず、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ロンガリット及び水を反応器内に仕込んで水溶液を調製し、この水溶液を重合温度にまで昇温する。 一方、単量体混合物(c)、過酸化物等の重合開始剤、水及び界面活性剤を混合して乳化液を調製する。 次いでこの乳化液を前記昇温後の反応器内に供給して、単量体を重合する。 次いで、単量体混合物(i)を過酸化物等の重合開始剤とともに反応器内に供給して重合する。 次に、単量体混合物(g)を過酸化物等の重合開始剤等とともに反応器内に供給して重合する。 尚、本発明において、単量体混合物(i)の供給及び重合は必須ではなく、省略可能である。

    重合温度は、重合開始剤の種類あるいはその量によって異なるが、重合安定性の観点から、通常、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、又、120℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。

    上記の方法で得られたゴム含有重合体(G)を含むラテックスは、濾過装置を用いて処理することが好ましい。 この濾過処理によって、重合の過程で発生するスケール、原料中の不純物、及び重合の過程で外部から混入する夾雑物等をラテックスから除去できる。

    ゴム含有重合体(G)は、上記の方法で製造したラテックスからゴム含有重合体(G)を回収することによって得ることができる。 ラテックスからゴム含有重合体(G)を回収する方法としては、塩析、酸析凝固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の方法が挙げられる。 これらの方法によれば、ゴム含有重合体(G)は、粉状で回収される。

    〔熱可塑性重合体(A2)〕
    本発明においてアクリル系樹脂組成物(Y)の一部を構成することができる熱可塑性重合体(A2)は、メタクリル酸アルキルエステル単位を50質量%以上含有する重合体である。 重合体(A2)中の、メタクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、フィルム(Y)の表面硬度および耐熱性の観点から、50〜100質量%であることがより好ましく、80質量%以上、99.9質量%以下であることが特に好ましい。

    重合体(A2)を構成する「メタクリル酸アルキルエステル単位」の原料となる単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル等が挙げられる。 メタクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は、分岐鎖状でも直鎖状でも良く、そのアルキル基の炭素数はフィルム(Y)の耐熱性の観点から4以下であることが好ましい。 また、これらのうちフィルム(Y)の耐熱性の観点からメタクリル酸メチルがより好ましい。 これらは単独で、または二種以上を混合して使用できる。

    また、重合体(A2)は、任意成分として「アクリル酸アルキルエステル単位」0〜50質量%と、これらの2つの単量体単位以外の「他の単量体単位」0〜50質量%とを含むことができる。

    重合体(A2)中における「アクリル酸アルキルエステル単位」の含有量は、フィルム(Y)に製膜性と、インサート成形及び/またはインモールド成形可能な靭性とを付与する観点から、0〜50質量%であることが好ましい。 この含有量は、より好ましくは0.1質量%以上、20質量%以下である。

    前記「アクリル酸アルキルエステル単位」の原料となる単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル等が使用できる。 アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は、分岐鎖状でも直鎖状でも良く、そのアルキル基の炭素数は、フィルム(Y)耐熱性の観点から4以下であることが好ましい。 また、これらのうちフィルム(Y)の耐熱性の観点から、アクリル酸メチルがより好ましい。 これらは単独で、または二種以上を混合して使用できる。

    重合体(A2)中における前記「他の単量体単位」の含有量は、フィルム(Y)の成形性の観点から、0〜50質量%であることが好ましい。 この含有量は、より好ましくは0質量%以上、20質量%以下である。

    前記「他の単量体単位」の原料となる「他の単量体」としては、公知の単量体を必要に応じて使用できる。 例えば、スチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。 これらは単独で、または二種以上を混合して使用できる。

    なお、重合体(A2)中の各単量体単位の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析により特定することができる。

    さらに、重合体(A2)の還元粘度は、フィルム(Y)のインサート成形性、インモールド成形性、および製膜性の観点から、0.15L/g以下であることが好ましく、0.1L/g以下であることがより好ましい。 また、重合体(A2)の還元粘度は、フィルム(Y)の製膜性の観点から、0.01L/g以上であることが好ましく、0.03L/g以上であることがより好ましい。 尚、「還元粘度」は、0.1gの重合体をクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定される粘度である。

    以上より、重合体(A2)は、アルキル基の炭素数が1以上4以下のメタクリル酸アルキルエステル50〜100質量%と、アクリル酸アルキルエステル0〜50質量%と、前記「他の単量体」0〜50質量%とを、重合または共重合して得られる、還元粘度が0.15L/g以下の重合体または共重合体であることが好ましい。

    熱可塑性重合体(A2)は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。 しかしながら、2種以上の重合体(A2)を併用することで、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性を容易に高めることができる。 したがって、フィルム(Y)の耐熱性の観点から、重合体(A2)のガラス転移温度は80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。

    なお、重合体(A2)の質量平均分子量は、フィルム(Y)の機械的特性の観点から3万以上であることが好ましく、フィルム(Y)の成形性の観点から20万以下であることが好ましい。

    重合体(A2)の製造方法は特に限定されず、通常の懸濁重合、乳化重合及び塊状重合等の方法で重合することができる。

    〔配合剤〕
    上述したように、フィルム(Y)は、各種の配合剤を含むことができるが、この中でも、紫外線吸収剤、及び、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、酸化防止剤等のラジカル捕捉剤を含有することが好ましい。 かかる紫外線吸収剤としては、フィルムの耐候性を向上させる目的で公知の紫外線吸収剤を使用することができ、特に限定されない。 しかし、耐ブリードアウト性の観点から分子量が300以上の紫外線吸収剤が好ましく、分子量が400以上の紫外線吸収剤がより好ましい。 特に分子量400以上のベンゾトリアゾール系または分子量400以上のトリアジン系のものが好ましく使用できる。 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、BASFジャパン(株)の商品名:チヌビン234、(株)ADEKA製の商品名:アデカスタブLA−31等が挙げられる。 トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、BASFジャパン(株)の商品名:チヌビン1577等が挙げられる。 紫外線吸収剤の添加量は、耐ブリードアウト性の観点から、(Y)層中の樹脂成分100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。

    また、(Y)層の耐候性をより向上させるためには、ヒンダードアミン系光安定剤や酸化防止剤を、紫外線吸収剤と併用することが好ましい。 このヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、(株)ADEKA製の商品名:アデカスタブ LA−57、アデカスタブ LA−62、アデカスタブ LA−67、アデカスタブ LA−63、アデカスタブ LA−68;三共ライフテック(株)製の商品名:サノールLS−770、サノールLS−765、サノールLS−292、サノールLS−2626、サノールLS−1114、サノールLS−744などが挙げられる。 ヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、耐ブリードアウト性の観点から、(Y)層中の樹脂成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜5質量部であることがより好ましい。 酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系の酸化防止剤を用いることができる。 酸化防止剤の添加量は、耐ブリードアウト性の観点から、(Y)層中の樹脂成分100質量部に対して0.05〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。

    <積層フィルムの製造方法>
    本発明の積層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、製造工程を少なくすることができるという観点から、ポリマーブレンド(X)とアクリル系樹脂組成物(Y)とを同時に溶融押出しながら積層する共押出法が好ましい。 複数の溶融樹脂層を積層する具体的な方法としては、(1)フィードブロック法などのダイ通過前に溶融樹脂層を積層する方法、(2)マルチマニホールド法などのダイ内で溶融樹脂層を積層する方法、及び(3)マルチスロット法などのダイ通過後に溶融樹脂層を積層する方法、等が挙げられる。 尚、ポリマーブレンド(X)とアクリル系樹脂組成物(Y)とを同時に溶融押出しながら積層する場合、(X)層の表面の艶消し性の観点から(Y)層を冷却ロールに接するように溶融押出することが好ましい。

    具体的には、例えば以下の工程を含む製造方法により、本発明の積層フィルムを製造することができる。 2台の溶融押出機を用意し、それらのシリンダー温度及びダイ温度を200℃以上250℃以下に設定する。 一方の押出機内にてポリマーブレンド(X)を溶融可塑化する。 それと同時に、他方の押出機内にてアクリル系樹脂組成物(Y)を溶融可塑化する。 両押出機の先端のダイから押し出された溶融樹脂を、50℃以上100℃以下に設定された冷却ロール上に共押出しする。

    前記配合剤の添加方法は特に限定されない。 配合剤は、例えば、ポリマーブレンド(X)またはアクリル系樹脂組成物(Y)と共に前記押出機中に直接供給することができる。 また、ポリマーブレンド(X)またはアクリル系樹脂組成物(Y)中に予め配合剤を添加して混練機中において混練混合することができる。 混練機としては、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー、ロール混練機等が挙げられる。

    <積層成形品>
    本発明の積層フィルムを、各種樹脂成形品、木工製品および金属成形品等の基材の表面に積層することによって、ポリマーブレンド(X)の層を表面に有する積層体(積層成形品)を製造することができる。 具体的には、積層フィルムを第1の金型内で真空成形または圧空成形して予備成形体を製造し、その後、第2の金型内で基材となる樹脂を射出成形して該予備成形体と該基材とを一体化することによって積層成形品を製造することができる。 なお、ポリマーブレンド(X)の層を表面に有する積層成形品を製造する場合は、成形品の表面に(X)層が配置されるように射出成形が行われる。

    基材は、目的とする積層成形品(上述した樹脂成形品、木工製品や金属成形品等)に応じて適宜選択することができ、例えば樹脂成形品を形成する場合、基材として樹脂層(例えば熱可塑性樹脂層)を用いることができる。 この熱可塑性樹脂としては、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体)、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。

    また、本発明の積層フィルムは、各種基材に意匠性を付与するために、必要に応じて適当な印刷法により印刷を施して使用することができる。 本発明の積層フィルムと各種基材との間に印刷層を設けることが、印刷層の保護や高級感の付与の点から好ましい。 また、基材の色調を生かす用途には、本発明の積層フィルムをそのまま使用することができる。 特に、このように基材の色調を生かす用途には、本発明の積層フィルムは、ポリ塩化ビニルフィルムやポリエステルフイルムに比べ、透明性、深み感や高級感の点で優れている。

    本発明の積層フィルムは、特に、車輌用部材用の積層成形品、及び建材用の積層成形品に適している。 これらの積層成形品具体例としては、以下のものが挙げられる。 インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用部材;ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用部材;AV機器、OA機器、家具製品等のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等;携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等;家具用外装材;壁面、天井、床等の建築用内装材;マーキングフィルム、高輝度反射材被覆用フィルム;サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材;窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材;各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材;電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用部材;瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器、包装材料;景品、小物等の雑貨等。

    以下実施例および比較例により本発明をさらに説明する。 実施例に先立ち、ゴム含有重合体(G)、アクリル系樹脂組成物(Y)、フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂とのポリマーブレンド(X)の各製造例、並びに、各種評価方法を説明する。

    <製造例1〜7>
    [製造例1] ゴム含有重合体(G−1)
    攪拌機を備えた容器内に脱イオン水10.8質量部を仕込んだ後、MMA(メタクリル酸メチル)0.3質量部、n−BA(アクリル酸n−ブチル)4.5質量部、1,3−BD(1,3−ブチレングリコールジメタクリレート)0.2質量部、及びAMA(アリルメタクリレート)0.05質量部からなる単量体混合物(c−1)と、CHP(クメンヒドロパーオキサイド)0.025質量部とを投入し、室温下にて攪拌混合した。 ついで、攪拌しながら、乳化剤(東邦化学工業(株)製、商品名「フォスファノールRS610NA」)1.3質量部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して乳化液を調製した。

    つぎに、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2質量部を投入し、75℃に昇温した。 さらに、脱イオン水5質量部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20質量部、硫酸第一鉄0.0001質量部及びEDTA(エチレンジアミン四酢酸)0.0003質量部を加えて調製した混合物を、重合容器内に一度に投入した。 ついで、窒素雰囲気下で攪拌しながら、前記乳化液を8分間にわたって重合容器内に滴下した後、15分間反応を継続させ、単量体混合物(c)の第1段目の重合を完結した。

    続いて、MMA:9.6質量部、n−BA:14.4質量部、1,3−BD:1.0質量部及びAMA:0.25質量部からなる単量体混合物(c−2)を、CHP:0.016質量部と共に、90分間にわたって重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、単量体混合物(c)の二段目の重合を完結させ、重合体を得た。

    続いて、MMA:6質量部、MA(アクリル酸メチル):4質量部及びAMA:0.075質量部からなる単量体混合物(i―1)を、CHP:0.0125質量部と共に、45分間にわたって重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合体(C−1)を得た。

    続いて、MMA:57質量部、MA:3質量部、n−OM(n−オクチルメルカプタン)0.264質量部及びt−BH(ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド):0.075質量部からなる単量体混合物(g−1)を140分間にわたって重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させて単量体混合物(g−1)をグラフト重合させて、ゴム含有重合体(G−1)のラテックスを得た。

    得られたゴム含有重合体(G−1)のラテックスを、濾材としてSUS製のメッシュ(平均目開き:62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した。 次いで、酢酸カルシウム3.5質量部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収した。 回収された含水物を乾燥して、粉体状のゴム含有重合体(G−1)を得た。 ゴム含有重合体(G−1)のゴム含有率は70質量%であった。

    [製造例2] アクリル系樹脂組成物(Y−1)
    上記ゴム含有重合体(G−1)75質量部、熱可塑性重合体(A2)としてMMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、質量平均分子量Mw:10万、Tg:105℃)25質量部、紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製、商品名「チヌビン234」)1.4質量部、光安定剤((株)ADEKA製、商品名「アデカスタブLA−57」)0.3質量部、フェノール系酸化防止剤(BASFジャパン(株)製、商品名「イルガノックス1076」)0.1質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。 得られた混合物を200〜240℃に加熱したベント式2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名:TEM−35B)に供給し、混練してアクリル系樹脂組成物(Y−1)のペレットを得た。 アクリル系樹脂組成物(Y−1)のゴム含有率は55質量%であった。

    [製造例3] ポリマーブレンド(X−1)
    フッ化ビニリデン系樹脂(F)としてアルケマ(株)製、商品名「Kynar720」(異種結合の比率10.5%)75質量部、アクリル系樹脂(A1)としてMMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、質量平均分子量Mw:10万、Tg:105℃)25質量部、酸化防止剤として(株)ADEKA製、商品名「アデカスタブAO−60」0.1質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。 得られた混合物を180〜220℃に加熱したベント式2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名:TEM−35B)に供給し、混練してポリマーブレンド(X−1)を含むペレットを得た。

    [製造例4] ポリマーブレンド(X−2)
    アクリル系樹脂(A1)としてMMA/MA共重合体(MMA/MA=90/10(質量比),質量平均分子量Mw:10万、Tg:93℃)を用いたこと以外は製造例3と同様にしてポリマーブレンド(X−2)を含むペレットを得た。

    [製造例5] ポリマーブレンド(X−3)
    フッ化ビニリデン系樹脂(F)として、(株)クレハ製、商品名「KFポリマーT♯850」(異種結合の比率8.5%)65質量部、アクリル系樹脂(A1)としてMMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、質量平均分子量Mw:10万、Tg:105℃)35質量部、酸化防止剤として(株)ADEKA製、商品名「アデカスタブAO−60」0.1質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。 得られた混合物を180〜220℃に加熱したベント式2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名:TEM−35B)に供給し、混練してポリマーブレンド(X−3)を含むペレットを得た。

    [製造例6] ポリマーブレンド(X−4)
    Kynar720を80質量部、MMA/MA共重合体を20質量部としたこと以外は製造例3と同様にしてポリマーブレンド(X−4)を含むペレットを得た。

    [製造例7] ポリマーブレンド(X−5)
    Kynar720を70質量部、MMA/MA共重合体を30質量部としたこと以外は製造例3と同様にしてポリマーブレンド(X−5)を含むペレットを得た。

    <評価方法>
    積層フィルムのヘイズ値及び鉛筆硬度、並びにフッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂とのポリマーブレンド(X)の結晶融解熱の測定方法は、前記の通りである。 尚、ヘイズ値については、加熱処理していない温度25℃における値を初期値として表示する。

    (1)積層フィルムの耐薬品性 乳酸濃度10質量%の水溶液を、積層フィルムの(X)層の上に約0.2mL滴下し、80℃で24時間放置した後、その積層フィルムの外観の変化を以下の基準により目視で評価する。
    +:外観の変化がない。
    −:外観の変化(膨潤または白濁)がある。

    (2)真空成形品の外観 熱プレス法によって、積層フィルムとABS樹脂シート(厚み0.4mm)を貼り合わせて積層成形品を得る。 この積層成形品を、真空圧空成形機にて180℃まで加熱した後、50℃及び80℃の金型で真空成形し、その外観を以下の基準で目視評価する。
    ++:80℃の金型で真空成形した後に白化した部分がない。
    +:80℃の金型で真空成形した後に白化した部分があるが、50℃の金型で真空成形した後には白化した部分がない。
    −:50℃の金型で真空成形した後に白化した部分がある。

    <実施例1〜3及び比較例1〜4>
    [実施例1]
    40mmφの単軸押出機1と30mmφの単軸押出機2の先端部にマルチマニホールドダイを設置した。 製造例2で得られたアクリル系樹脂組成物(Y−1)のペレットをシリンダー温度230〜240℃の単軸押出機1に供給して、溶融可塑化した。 また製造例3で得られたポリマーブレンド(X−1)を含むペレットをシリンダー温度200〜230℃の単軸押出機2に供給し、溶融可塑化した。 そして、これらの両溶融可塑物を250℃に加熱したマルチマニホールドダイに供給して、フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂のポリマーブレンド(X)層の厚さが7.5μm、アクリル系樹脂組成物(Y)の層の厚さが67.5μmの2層の積層フィルムを得た。 尚、その際、冷却ロールの温度を90℃とし、アクリル系樹脂組成物(Y)が冷却ロールに接するようにして積層フィルムを得た。

    ポリマーブレンド(X)の結晶融解熱、積層フィルムの耐薬品性、積層フィルムの加熱前後のヘイズ値、(X)層の鉛筆硬度、及び真空成形品の外観の評価結果を表1に示した。

    [比較例1]
    製造例3で得られたポリマーブレンド(X−1)を含むペレットの代わりに製造例6で得られたポリマーブレンド(X−4)を含むペレットを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。 評価結果を表1に示した。

    [比較例2]
    製造例3で得られたポリマーブレンド(X−1)を含むペレットの代わりに製造例7で得られたポリマーブレンド(X−5)を含むペレットを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。 評価結果を表1に示した。

    [比較例3]
    製造例3で得られたポリマーブレンド(X−1)を含むペレットの代わりに製造例4で得られたポリマーブレンド(X−2)を含むペレットを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。 評価結果を表1に示した。

    [実施例2]
    製造例3で得られたポリマーブレンド(X−1)を含むペレットの代わりに製造例5で得られたポリマーブレンド(X−3)を含むペレットを用い、フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂(A1)の使用量を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。 評価結果を表1に示した。

    [実施例3]
    フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂(A1)の使用量を表1に示すように変えたこと以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。 評価結果を表1に示した。

    [比較例4]
    フッ化ビニリデン系樹脂(F)とアクリル系樹脂(A1)の使用量を表1に示すように変えたこと以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。 評価結果を表1に示した。

    比較例1の積層フィルムは加熱及び放冷後のヘイズ値が高かったため、真空成形品の外観が不良であった。 比較例2及び比較例4の積層フィルムは、ポリマーブレンド(X)の結晶融解熱が低かったため、耐薬品性が不十分であった。 比較例3の積層フィルムは、ポリマーブレンド(X)を構成するアクリル系樹脂(A1)のガラス転移温度が95℃より低かったため、鉛筆硬度が不十分であった。

    本発明の積層フィルムは、特に、車輌用部材用の積層成形品、及び建材用の積層成形品に適している。

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