3次元造形物の製造方法、3次元造形物の製造装置、3次元造形物及び造形材料

申请号 JP2016571790 申请日 2015-11-27 公开(公告)号 JPWO2016121217A1 公开(公告)日 2017-12-07
申请人 株式会社アールテック; 发明人 小杉 隆司; 隆司 小杉; 崇文 小杉; 崇文 小杉;
摘要 3次元造形物の製造装置(100)は、 石膏 粉末にウレタン樹脂粉末を混合させた造形材料(200)を用いて、粉体積層法により3次元造形物(300)を形成する3次元造形物形成装置(130)と、3次元造形物(300)に対してウレタン樹脂を含浸させるウレタン樹脂含浸装置(150)を備える。さらに、3次元造形物の製造装置(100)は、ウレタン樹脂含浸装置(150)によるウレタン樹脂の含浸が終了した後、3次元造形物(300)を 水 性媒体に浸漬する水性媒体浸漬装置(170)を備える。これにより、粉体積層法による3次元造形物の形成において、強度が高い3次元造形物を形成することができる。さらには、柔らかい3次元造形物を形成することもできる。
权利要求

石膏粉末にウレタン樹脂粉末を混合させた造形材料を用いて、粉体積層法により3次元造形物を形成する工程と、 前記3次元造形物に対してウレタン樹脂を含浸させる工程と を有することを特徴とする3次元造形物の製造方法。前記ウレタン樹脂を含浸させる工程が終了した後、前記3次元造形物を性媒体に浸漬する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の3次元造形物の製造方法。前記水性媒体には、防腐・防カビ剤が溶解されていることを特徴とする請求項2に記載の3次元造形物の製造方法。前記ウレタン樹脂を含浸させる工程が終了した後であって前記水性媒体に浸漬する工程の前に、前記3次元造形物の中空領域に当該3次元造形物よりも柔らかい軟質樹脂を形成する工程を更に有することを特徴とする請求項2または3に記載の3次元造形物の製造方法。前記軟質樹脂は、ウレタン樹脂を主材料として形成されていることを特徴とする請求項4に記載の3次元造形物の製造方法。前記軟質樹脂は、前記主材料に加えて、超音波撮影において前記中空領域に形成された当該軟質樹脂を映出させるための超音波散乱材料を含み形成されていることを特徴とする請求項5に記載の3次元造形物の製造方法。前記ウレタン樹脂粉末は、前記造形材料の総重量に対する重量比率が5%〜60%であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の3次元造形物の製造方法。石膏粉末にウレタン樹脂粉末を混合させた造形材料を用いて、粉体積層法により3次元造形物を形成する3次元造形物形成手段と、 前記3次元造形物に対してウレタン樹脂を含浸させるウレタン樹脂含浸手段と を有することを特徴とする3次元造形物の製造装置。前記ウレタン樹脂含浸手段による前記ウレタン樹脂の含浸が終了した後、前記3次元造形物を水性媒体に浸漬する水性媒体浸漬手段を更に有することを特徴とする請求項8に記載の3次元造形物の製造装置。前記水性媒体には、防腐・防カビ剤が溶解されていることを特徴とする請求項9に記載の3次元造形物の製造装置。前記ウレタン樹脂含浸手段による前記ウレタン樹脂の含浸が終了した後であって前記水性媒体浸漬手段による前記水性媒体に浸漬する前に、前記3次元造形物の中空領域に当該3次元造形物よりも柔らかい軟質樹脂を形成する軟質樹脂形成手段を更に有することを特徴とする請求項9または10に記載の3次元造形物の製造装置。前記軟質樹脂は、ウレタン樹脂を主材料として形成されていることを特徴とする請求項11に記載の3次元造形物の製造装置。前記軟質樹脂は、前記主材料に加えて、超音波撮影において前記中空領域に形成された当該軟質樹脂を映出させるための超音波散乱材料を含み形成されていることを特徴とする請求項12に記載の3次元造形物の製造装置。前記ウレタン樹脂粉末は、前記造形材料の総重量に対する重量比率が5%〜60%であることを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項に記載の3次元造形物の製造装置。粉体積層法により石膏とウレタン樹脂とを含み形成されていることを特徴とする3次元造形物。前記粉体積層法により石膏とウレタン樹脂とを含み形成されてなる3次元造形物の中空領域に当該3次元造形物よりも柔らかい軟質樹脂が形成されていることを特徴とする請求項15に記載の3次元造形物。前記軟質樹脂は、ウレタン樹脂を主材料として形成されていることを特徴とする請求項16に記載の3次元造形物。前記軟質樹脂は、前記主材料に加えて、超音波撮影において前記中空領域に形成された当該軟質樹脂を映出させるための超音波散乱材料を含み形成されていることを特徴とする請求項17に記載の3次元造形物。粉体積層法により3次元造形物を形成する際に用いる造形材料であって、 石膏粉末にウレタン樹脂粉末を混合させたことを特徴とする造形材料。前記ウレタン樹脂粉末は、当該造形材料の総重量に対する重量比率が5%〜60%であることを特徴とする請求項19に記載の造形材料。

说明书全文

本発明は、3Dプリンタによる造形法の一種である粉体積層法により形成された3次元造形物、その製造方法及びその製造装置、並びに、粉体積層法により3次元造形物を形成する際に用いる造形材料に関するものである。

3Dプリンタによる造形法の一種である粉体積層法は、平坦に配置された造形材料に対して接着剤の機能を有する造形液を吐出して固化することで3次元造形物の1つの層を形成し、この層を積層することによって3次元造形物を形成する手法である。

従来の粉体積層法による技術として、例えば下記の特許文献1には、造形材料の主材料として石膏粉末を用いる技術が記載されている。

特開2014−188888号公報

しかしながら、特許文献1に記載の技術では、造形材料の主材料として石膏粉末を用いるため、完成品である3次元造形物がとても脆い(強度が低い)物となる。即ち、従来の技術では、粉体積層法による3次元造形物の形成において、強度が高く、更には、柔らかく、超音波診断装置による画像撮影が可能な3次元造形物を形成することが困難であるという問題があった。

本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、粉体積層法による3次元造形物の形成において、強度が高く、更には、柔らかく、超音波診断装置による画像撮影が可能な3次元造形物を形成できるようにすることを目的とする。

本発明の3次元造形物の製造方法は、石膏粉末にウレタン樹脂粉末を混合させた造形材料を用いて、粉体積層法により3次元造形物を形成する工程と、前記3次元造形物に対してウレタン樹脂を含浸させる工程とを有する。 本発明の3次元造形物の製造方法における他の態様は、前記ウレタン樹脂を含浸させる工程が終了した後、前記3次元造形物を性媒体に浸漬する工程を更に有する。 また、本発明の3次元造形物の製造方法におけるその他の態様は、前記水性媒体には、防腐・防カビ剤が溶解されている。 また、本発明の3次元造形物の製造方法におけるその他の態様は、前記ウレタン樹脂を含浸させる工程が終了した後であって前記水性媒体に浸漬する工程の前に、前記3次元造形物の中空領域に当該3次元造形物よりも柔らかい軟質樹脂を形成する工程を更に有する。 また、本発明の3次元造形物の製造方法におけるその他の態様は、前記軟質樹脂は、ウレタン樹脂を主材料として形成されている。 また、本発明の3次元造形物の製造方法におけるその他の態様は、前記軟質樹脂は、前記主材料に加えて、超音波撮影において前記中空領域に形成された当該軟質樹脂を映出させるための超音波散乱材料を含み形成されている。 また、本発明の3次元造形物の製造方法におけるその他の態様は、前記ウレタン樹脂粉末は、前記造形材料の総重量に対する重量比率が5%〜60%である。 また、本発明は、上述した3次元造形物の製造方法を実行する3次元造形物の製造装置、上述した3次元造形物の製造方法により製造された3次元造形物、及び、上述した3次元造形物の製造方法で用いる造形材料を含む。

本発明によれば、粉体積層法による3次元造形物の形成において、強度が高い3次元造形物を形成することができる。さらに、本発明によれば、柔らかい3次元造形物を形成することもできる。加えて、本発明によれば、超音波診断装置による画像撮影が可能な3次元造形物を形成することもできる。例えば本発明の技術を医療分野に適用すれば、個々の患者の臓器をより実物に近い形で再現した3次元造形物を形成することができるため、例えばその3次元造形物を一般の手術トレーニングや超音波診断装置を利用した手術トレーニング等に用いることができ、医療の質の向上を図ることが可能となる。

図1は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形物の製造装置の概略構成の一例を示すブロック図である。

図2は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形物の製造装置により実行される3次元造形物の製造方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。

図3は、図1に示す3次元造形物形成装置の具体的な動作の一例を示す模式図である。

図4は、本発明の第1の実施形態を示し、図1に示す造形材料の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率(%)を変化させて製造した3次元造形物(水性媒体浸漬後)の引張強度試験の結果を示す特性図である。

図5は、本発明の第1の実施形態を示し、図1に示す造形材料の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率(%)を変化させて製造した3次元造形物(ウレタン樹脂含浸前)、3次元造形物(ウレタン樹脂含浸後)、及び、3次元造形物(水性媒体浸漬後)のゴム硬度試験の結果を示す特性図である。

図6は、本発明の第1の実施形態を示し、図1に示す造形材料の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率(%)を変化させて製造した3次元造形物の水中保管における形状保持の可否を示す図である。

図7は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形物の製造装置の概略構成の一例を示すブロック図である。

図8は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形物の製造装置により実行される3次元造形物の製造方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。

図9Aは、超音波撮影を行った3次元造形物を示す図である。

図9Bは、比較例を示し、中空領域を形成せずに(即ち軟質樹脂を形成せずに軟質樹脂の部分も全て粉末を混合させた造形材料で)製造した3次元造形物の外観図である。

図9Cは、比較例を示し、中空領域を形成せずに(即ち軟質樹脂を形成せずに軟質樹脂の部分も全て粉末を混合させた造形材料で)製造した図9Bの3次元造形物を超音波撮影した結果を示す図である。

図9Dは、本発明の第2の実施形態を示し、中空領域に軟質樹脂を形成した図9Aの3次元造形物を超音波撮影した結果を示す図である。

以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。

(第1の実施形態) まず、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形物の製造装置の概略構成について説明する。

図1は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形物の製造装置100の概略構成の一例を示すブロック図である。

本実施形態に係る3次元造形物の製造装置100は、図1に示すように、情報入装置110、情報処理・制御装置120、3次元造形物形成装置130、第1の熱処理装置140、ウレタン樹脂含浸装置150、第2の熱処理装置160、及び、水性媒体浸漬装置170を有して構成されている。

情報入力装置110は、各種のデータを含む各種の情報を情報処理・制御装置120に対して入力する装置である。この情報入力装置110は、例えば、パーソナルコンピュータにおけるキーボード及びマウスから構成されていても、また、コンピュータネットワークに接続するための通信インターフェイスであってもよい。

情報処理・制御装置120は、情報入力装置110から入力された各種の情報を処理し、また、3次元造形物の製造装置100における動作を統括的に制御する装置である。例えば、情報処理・制御装置120は、情報入力装置110から入力された各種の情報に基づいて、3次元造形物の製造装置100における各装置(130〜170)を制御する。

3次元造形物形成装置130は、情報処理・制御装置120の制御に従って、石膏粉末にウレタン樹脂粉末を混合させた造形材料200を用いて、粉体積層法により3次元造形物300−1を形成する装置である。なお、本実施形態においては、造形材料200には、石膏粉末にウレタン樹脂粉末に加えて更に防腐・防カビ剤が混合されている。

ここで、造形材料200について詳しく説明する。 本実施形態における造形材料200は、上述したように、石膏粉末にウレタン樹脂粉末及び防腐・防カビ剤が混合されている。具体的に、本実施形態では、造形材料200に含まれる防腐・防カビ剤として、銀含有非晶質ガラス粉末を用いる。

以下に、造形材料200に含まれる各粉末の重量比率について記載する。 造形材料200に含まれるウレタン樹脂粉末は、造形材料200の総重量に対する重量比率が5%〜60%の範囲であることが好適である。これは、造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が5%未満になると、石膏が支配的になって完成品である3次元造形物300が強度不足で脆くなるという不具合が生じ、また、造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が60%を超えると、完成品である3次元造形物300を保管(水性媒体中の保管)する際にその3次元造形物300の形状が保てず崩れてしまうという不具合が生じるためである。さらに、完成品である3次元造形物300の強度を高くするという観点からは、造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が20%〜40%の範囲であることが最適である。また、造形材料200に含まれる防腐・防カビ剤は、造形材料200の総重量に対する重量比率が0.1%〜5%の範囲であることが好適である。これは、造形材料200の総重量に対する防腐・防カビ剤の重量比率が0.1%未満になると、完成品である3次元造形物300の防腐・防カビ機能が不十分になるという不具合が生じるためである。また、造形材料200に含まれる石膏粉末は、造形材料200の総重量に対する重量比率が35%〜94.9%の範囲であることが好適である。

第1の熱処理装置140は、情報処理・制御装置120の制御に従って、3次元造形物形成装置130で形成された3次元造形物300−1を所定の温度で熱処理(第1の熱処理)する装置である。本実施形態においては、第1の熱処理装置140は、3次元造形物300−1に対して、最初に、温度50℃程度で30分〜1時間の熱処理を行い、次いで、温度80℃程度で30分〜1時間の熱処理を行う。本例では、この第1の熱処理装置140による第1の熱処理により、3次元造形物300−1の全体の水分をとばして石膏粒子間を固着させる。

ウレタン樹脂含浸装置150は、情報処理・制御装置120の制御に従って、第1の熱処理装置140で熱処理された3次元造形物300−2に対してウレタン樹脂を含浸させる装置である。ここで、ウレタン樹脂含浸装置150による含浸方法としては、例えば、刷毛を用いてウレタン樹脂を含浸させる形態や、ウレタン樹脂をスプレーで吹き付けて含浸させる形態、或いは、ウレタン樹脂で満たされた容器に3次元造形物300−2を浸漬して含浸させる形態等を採ることが可能である。また、本実施形態においては、ウレタン樹脂含浸装置150で用いるウレタン樹脂としては、液状のウレタン樹脂で硬化可能であれば特に限定されないが、1液湿気硬化型ウレタン樹脂を用いることにより作業の簡素化を図ることができ好ましい。また、本実施形態においては、ウレタン樹脂含浸装置150で用いるウレタン樹脂の材料として、ポリオールとポリイソシアネートの混合物を酢酸ブチルや酢酸エチルなどで希釈したウレタン樹脂を用いる。

第2の熱処理装置160は、情報処理・制御装置120の制御に従って、ウレタン樹脂含浸装置150でウレタン樹脂含浸処理がなされた3次元造形物300−3を所定の温度で熱処理(第2の熱処理)する装置である。本実施形態においては、第2の熱処理装置160は、3次元造形物300−3に対して、最初に、温度15℃以上の温度で12時間〜24時間の熱処理を行い、次いで、温度80℃程度で2時間程度の熱処理を行う。本例では、この第2の熱処理装置160による第2の熱処理により、ウレタン樹脂含浸装置150で含浸させたウレタン樹脂を硬化させる。

水性媒体浸漬装置170は、情報処理・制御装置120の制御に従って、第2の熱処理装置160で熱処理された3次元造形物300−4を水性媒体に浸漬する装置である。ここで、水性媒体とは、3次元造形物300の強度と柔らかさを損なうことがなければ特に限定されないが、水、生理食塩水、緩衝液、グリセリンやエチレングリコール等の水性有機溶媒、または、これらの混合物等を挙げることができ、それらに水溶性の物質を溶解させることもできる。また、1つの態様として、上述した水性媒体に防腐・防カビ剤を添加することができる。防腐・防カビ剤は、3次元造形物300−4及び水性媒体の防腐・防カビ機能を有し、3次元造形物300の強度と柔らかさに影響を及ぼすことがない、水溶性の防腐・防カビ剤であれば特に限定されないが、取扱いや手術トレーニング等を行うことを考慮すれば、刺激性の低いものが好ましく、過酸化水素、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステルまたはその塩等を挙げることができ、それぞれ防腐・防カビ機能を発揮する適切な濃度で使用できる。本実施形態においては、水性媒体浸漬装置170は、例えば、3次元造形物300−4を、温度80℃〜95℃の水性媒体に1時間程度浸漬させることが好適である。そして、例えば手術トレーニング等を行う際には、3次元造形物の製造装置100は、水性媒体浸漬装置170から3次元造形物300−5を取り出す処理を行う。

なお、図1に示す例では、第1の熱処理装置140と第2の熱処理装置160との2つの熱処理装置を設ける態様を示しているが、本実施形態においては、この態様に限定されるものではなく、例えば1つの熱処理装置を設けて、この1つの熱処理装置において第1の熱処理装置140による第1の熱処理と第2の熱処理装置160による第2の熱処理の両方を行う態様も、本実施形態に適用可能である。また、3次元造形物300を長時間かけて自然乾燥させる場合等には、第1の熱処理装置140及び第2の熱処理装置160のうちのいずれか一方或いは両方を設けない態様も、本実施形態に適用可能である。

次に、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形物の製造装置100により実行される3次元造形物の製造方法の処理手順について説明する。

図2は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形物の製造装置100により実行される3次元造形物の製造方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。以下に、この図2に示すフローチャートの処理を、図1を参照しながら説明する。

まず、図2のステップS1において、図1の情報入力装置110は、情報処理・制御装置120に対して、3次元造形データを入力する処理を行う。そして、情報処理・制御装置120は、例えば、情報入力装置110から入力された3次元造形データを情報処理して積層数Nのスライスデータとする。また、情報処理・制御装置120は、積層数Nの設定を行う。その後、情報処理・制御装置120は、3次元造形物形成装置130に対して、3次元造形データの各層のスライスデータに係る情報と3次元造形データの積層数Nに係る情報等を送信する。そして、情報処理・制御装置120から3次元造形データの各層のスライスデータに係る情報と3次元造形データの積層数Nに係る情報等を受信した3次元造形物形成装置130は、図2において破線枠で囲んだ以下のステップS2〜ステップS6の処理を行う。

図2のステップS2において、図1の3次元造形物形成装置130は、形成対象の層を示す積層番号nに1を設定する。

続いて、図2のステップS3において、図1の3次元造形物形成装置130は、情報処理・制御装置120の制御に従って、造形領域部に、n層目の造形材料200の供給を行う。

続いて、図2のステップS4において、図1の3次元造形物形成装置130は、情報処理・制御装置120の制御に従って、3次元造形データのn層目のスライスデータに基づいて、n層目の造形材料200の所定位置に、接着剤の機能を有する造形液を塗布する。

続いて、図2のステップS5において、図1の3次元造形物形成装置130は、現在設定されている積層番号nが、ステップS1で設定された積層数Nより小さいか否かを判断する。

ステップS5の判断の結果、現在設定されている積層番号nが、ステップS1で設定された積層数Nより小さい場合には(S5/YES)、全ての層のスライスデータにおける処理は未だ完了していないと判断し、図2のステップS6に進む。

図2のステップS6に進むと、図1の3次元造形物形成装置130は、形成対象の層を示す積層番号nに1を加算して、形成対象の層を示す積層番号nを変更する。その後、ステップS3に戻り、変更した積層番号nに基づく処理を行う。即ち、図2に示すフローチャートの処理では、ステップS3〜ステップS6の処理は、ステップS1で設定された積層数Nの数だけ繰り返し行われることになる。

また、ステップS5の判断の結果、現在設定されている積層番号nが、ステップS1で設定された積層数Nより小さくない場合には(S5/NO)、全ての層のスライスデータにおける処理が完了したと判断し、図2のステップS7に進む。

ここで、図2のステップS7の説明を行う前に、上述したステップS2〜ステップS6における3次元造形物形成装置130の具体的な動作について説明する。

図3は、図1に示す3次元造形物形成装置130の具体的な動作の一例を示す模式図である。具体的に、図3は、粉体積層法により3次元造形物300−1を形成する際の3次元造形物形成装置130の具体的な動作の一例を示すものである。

3次元造形物形成装置130は、図3のプロセスP1に示すように、ローラー131、プリンタヘッド132、造形材料貯蔵部133、ピストン134、造形領域部135、ピストン136、及び、造形材料排出部137を有して構成されている。

ローラー131は、造形領域部135に1層ごとの造形材料200を供給するための動作を行うものである。

プリンタヘッド132は、3次元造形データの各層のスライスデータに基づいて、造形領域部135に供給された当該各層の造形材料200の所定位置に、接着剤の機能を有する造形液を塗布する。ここで、図3に示す例では、プリンタヘッド132は、ローラー131と一体となって動作するものとする。

造形材料貯蔵部133は、粉体積層法により3次元造形物300−1を形成する際に用いる造形材料200を貯蔵するものである。

ピストン134は、造形材料貯蔵部133に貯蔵されている造形材料200を造形領域部135に供給する際に動作するものである。

造形領域部135は、3次元造形物300−1を形成する領域部である。

ピストン136は、3次元造形物300−1を形成する際に動作するものである。

造形材料排出部137は、造形領域部135に供給された造形材料200のうち、余分な造形材料200を排出するためのものである。

まず、図3のプロセスP1では、ローラー131とプリンタヘッド132は、造形材料貯蔵部133の左側に位置している。そして、図3のプロセスP1において、ローラー131は、回転を行いながら、プリンタヘッド132とともに紙面右側に移動する。

そうすると、図3のプロセスP2に示すように、造形材料貯蔵部133に貯蔵されている所定量の造形材料200が造形領域部135に供給される。

そして、ローラー131がプリンタヘッド132とともに造形領域部135を通過すると、図3のプロセスP3に示すように、造形領域部135に供給された造形材料200が引き伸ばされて平坦となり、造形領域部135に1層目の造形材料200が敷かれる。さらに、図3のプロセスP3に示すように、ローラー131で造形材料200を引き伸ばした際に生じた余分な造形材料200は、造形材料排出部137に排出される。図3のプロセスP3では、ローラー131とプリンタヘッド132が造形材料排出部137の右側に移動した様子を示している。

この図3のプロセスP1〜図3のプロセスP3に示す工程は、図2のステップS3に相当する。

次いで、図3のプロセスP4に示すように、プリンタヘッド132がローラー131とともに紙面左側に移動して造形領域部135に到着すると、プリンタヘッド132は、3次元造形データの1層目のスライスデータに基づいて、1層目の造形材料200の所定位置に、接着剤の機能を有する造形液201を塗布する。この際、プリンタヘッド132から塗布する造形液201には、各種の色を付けることができるため、例えば患者の臓器に係る3次元造形物300−1を形成する場合にはより実物に近い形で3次元造形物を形成することができ、更に患部(病変部)等を把握することも可能となる。

この図3のプロセスP4に示す工程は、図2のステップS4に相当する。そして、図3のプロセスP1〜図3のプロセスP4に示す工程により、3次元造形データの1層目のスライスデータに基づく造形が終了する。

プリンタヘッド132による造形液201の塗布が終了すると、図3のプロセスP5に示すように、プリンタヘッド132とローラー131は、造形材料貯蔵部133の左側の位置に移動する。次いで、2層目の造形に備えて、ピストン134が所定量上昇して造形材料貯蔵部133に貯蔵されている造形材料200を押し上げ、また、ピストン136が所定量下降して造形領域部135に2層目の造形材料200を敷くスペースを作る。その後、図3のプロセスP1に示す工程に移行し、2層目以降の造形が行われる。

図2に示すように積層数Nのスライスデータが存在する場合には、図3のプロセスP1〜図3のプロセスP5の工程が、積層数Nの数だけ繰り返し行われることになる。

ここで、再び、図2の説明に戻る。 全ての層のスライスデータにおける処理が完了すると、図2のステップS7に進む。 図2のステップS7に進むと、図1の第1の熱処理装置140は、情報処理・制御装置120の制御に従って、3次元造形物形成装置130で形成された3次元造形物300−1を所定の温度で熱処理(第1の熱処理)を行う。本実施形態においては、第1の熱処理装置140は、3次元造形物300−1に対して、最初に、温度50℃程度で30分〜1時間の熱処理を行い、次いで、温度80℃程度で30分〜1時間の熱処理を行う。

続いて、図2のステップS8において、図1のウレタン樹脂含浸装置150は、情報処理・制御装置120の制御に従って、ステップS7で第1の熱処理がされた3次元造形物300−2に対してウレタン樹脂を含浸させる処理を行う。ここで、ウレタン樹脂含浸装置150による含浸方法としては、例えば、刷毛を用いてウレタン樹脂を含浸させる形態や、ウレタン樹脂をスプレーで吹き付けて含浸させる形態、或いは、ウレタン樹脂で満たされた容器に3次元造形物300−2を浸漬して含浸させる形態等を採ることが可能である。また、本実施形態においては、ウレタン樹脂含浸装置150で用いるウレタン樹脂としては、液状のウレタン樹脂で硬化可能であれば特に限定されないが、1液湿気硬化型ウレタン樹脂を用いることにより作業の簡素化を図ることができ好ましい。また、本実施形態においては、ウレタン樹脂含浸装置150で用いるウレタン樹脂の材料として、ポリオールとポリイソシアネートの混合物を酢酸ブチルや酢酸エチルなどで希釈したウレタン樹脂を用いる。

続いて、図2のステップS9において、図1の第2の熱処理装置160は、情報処理・制御装置120の制御に従って、ステップS8でウレタン樹脂含浸処理がなされた3次元造形物300−3を所定の温度で熱処理(第2の熱処理)を行う。本実施形態においては、第2の熱処理装置160は、3次元造形物300−3に対して、最初に、温度15℃以上の温度で12時間〜24時間の熱処理を行い、次いで、温度80℃程度で2時間程度の熱処理を行う。

続いて、図2のステップS10において、図1の水性媒体浸漬装置170は、情報処理・制御装置120の制御に従って、ステップS9で第2の熱処理がされた3次元造形物300−4を水性媒体に浸漬する処理を行う。そして、例えば手術トレーニング等を行う際には、3次元造形物の製造装置100は、水性媒体浸漬装置170から3次元造形物300−5を取り出す処理を行う。

なお、3次元造形物300を長時間かけて自然乾燥させる場合等には、必要に応じて、図2のステップS7における第1の熱処理及び図2のステップS9における第2の熱処理のうちのいずれか一方或いは両方を省略する態様も、本実施形態に適用可能である。

図2のステップS10の処理が終了すると、図2に示すフローチャートの処理が終了する。図2に示すフローチャートの処理により、粉体積層法により石膏とウレタン樹脂とを含み(更には防腐・防カビ剤を含み)形成されて成る3次元造形物300が製造される。

次に、本発明者が行った試験の結果について説明する。

図4は、本発明の第1の実施形態を示し、図1に示す造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率(%)を変化させて製造した3次元造形物300−5(水性媒体浸漬後)の引張強度試験の結果を示す特性図である。具体的に、図4は、図1の水性媒体浸漬装置170において、1週間〜2週間、水性媒体に浸漬させた各3次元造形物300−5(後述する図5の3次元造形物300−5(水性媒体浸漬後))の引張強度試験の結果を示す特性図である。また、図4では、各3次元造形物300−5が破断するまでの引張強度試験の結果を示している。即ち、図4に示す各グラフの終端(右上端)は、その荷重で各試験片が破断したことを示している。また、図4は、各試験片の標線間距離を50mmとして引張強度試験を行った結果である。また、図4は、島津製作所社製の「AutoGraph AG−IS 50kN」の引張強度試験装置を用いて得られた結果である。

図4に示す引張強度試験の結果から、造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が10%,20%,30%及び40%の3次元造形物300−5は、造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が0%(即ち造形材料200としてウレタン樹脂粉末を混合させない)の3次元造形物よりも、引張強度が高くなることが分かった。上述したように、本実施形態では、造形材料200に含まれるウレタン樹脂粉末は、造形材料200の総重量に対する重量比率が5%〜60%の範囲であることが好適であるとしている。この点、図4には、造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が5%の場合の引張強度試験の結果が示されていないが、本発明者は、造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が5%の3次元造形物300−5は、造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が0%(即ち造形材料200としてウレタン樹脂粉末を混合させない)の3次元造形物よりも、引張強度が高くなるという知見を得ている。

また、上述したように、本実施形態では、造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が20%〜40%の範囲であることが最適であるとしている。この点、図4に示す引張強度試験の結果から、完成品である3次元造形物300の強度を高くするという観点からは妥当であると言える。

図5は、本発明の第1の実施形態を示し、図1に示す造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率(%)を変化させて製造した3次元造形物300−2(ウレタン樹脂含浸前)、3次元造形物300−3(ウレタン樹脂含浸後)、及び、3次元造形物300−5(水性媒体浸漬後)のゴム硬度試験の結果を示す特性図である。具体的に、図5の3次元造形物300−5(水性媒体浸漬後)は、図1の水性媒体浸漬装置170において、1週間〜2週間、水性媒体に浸漬させたものである。また、図5は、デュロメーター・タイプAのゴム硬度試験装置を用いて得られた結果である。

図5に示すゴム硬度試験の結果から、3次元造形物300−5(水性媒体浸漬後)は、水性媒体に浸漬させることにより、それぞれ、水性媒体に浸漬させる前の3次元造形物300−2(ウレタン樹脂含浸前)や3次元造形物300−3(ウレタン樹脂含浸後)よりも、著しく柔らかくなることが分かった。さらに、図5に示すゴム硬度試験の結果から、各3次元造形物300−5(水性媒体浸漬後)は、いずれも、造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が0%の3次元造形物300−2(ウレタン樹脂含浸前)よりも、柔らかくなることが分かった。また、図5に示すゴム硬度試験の結果から、造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が5%,20%及び30%の3次元造形物300−3(ウレタン樹脂含浸後)は、ウレタン樹脂を含浸させることにより、それぞれ、ウレタン樹脂を含浸させる前の3次元造形物300−2(ウレタン樹脂含浸前)よりも、若干ではあるが柔らかくなることが分かった。

図6は、本発明の第1の実施形態を示し、図1に示す造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率(%)を変化させて製造した3次元造形物300−5の水中保管における形状保持の可否を示す図である。図6では、水中保管において形状を保持できた3次元造形物300−5を「○」で示し、水中保管において形状を保持できなかった3次元造形物300−5を「×」で示している。

図6に示すように、図1に示す造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が60%までの3次元造形物300−5は、水性媒体中の保管の際にその3次元造形物300−5の形状を保持することができるのに対し、図1に示す造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率が80%の3次元造形物は、水性媒体中の保管の際にその3次元造形物の形状が保てず崩れてしまうという結果が得られた。上述したように、本実施形態では、造形材料200に含まれるウレタン樹脂粉末は、造形材料200の総重量に対する重量比率が5%〜60%の範囲であることが好適であるとしている。この点、造形材料200の総重量に対するウレタン樹脂粉末の重量比率の上限を60%とすることは、図6に示す結果から、水性媒体中に保管する際に完成品である3次元造形物300の形状を保持するという観点からは妥当であると言える。

本発明の第1の実施形態によれば、石膏粉末にウレタン樹脂粉末を混合させた造形材料を用いて粉体積層法により3次元造形物300を形成し、当該3次元造形物300に対してウレタン樹脂を含浸させるようにしたので、図4を用いて説明したように、石膏粉末にウレタン樹脂粉末を混合させない(0%)造形材料を用いて形成した3次元造形物よりも、強度が高い3次元造形物を形成することができる。また、図5を用いて説明したように、ウレタン樹脂を含浸させることにより、ウレタン樹脂を含浸させる前の3次元造形物300よりも、若干ではあるが柔らかくすることもできる。さらに、本発明の第1の実施形態によれば、ウレタン樹脂を含浸させた後、3次元造形物300を水性媒体に浸漬するようにしたので、図5を用いて説明したように、より柔らかい3次元造形物を形成することができる。例えば本実施形態の技術を医療分野に適用すれば、個々の患者の臓器をより実物に近い形で再現した3次元造形物を形成することができるため、例えばその3次元造形物を手術トレーニング等に用いることができ、医療の質の向上を図ることが可能となる。

(第2の実施形態) 次に、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形物の製造装置の概略構成について説明する。

図7は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形物の製造装置400の概略構成の一例を示すブロック図である。この図7において、図1に示す第1の実施形態に係る3次元造形物の製造装置100の概略構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。

本実施形態に係る3次元造形物の製造装置400は、図7に示すように、情報入力装置110、情報処理・制御装置120、3次元造形物形成装置130、第1の熱処理装置140、ウレタン樹脂含浸装置150、第2の熱処理装置160、軟質樹脂形成装置410、第3の熱処理装置420、及び、水性媒体浸漬装置430を有して構成されている。

図7において、情報入力装置110、情報処理・制御装置120、3次元造形物形成装置130、第1の熱処理装置140、ウレタン樹脂含浸装置150及び第2の熱処理装置160は、図1に示す第1の実施形態に係る3次元造形物の製造装置100における各構成と同様であるため、その説明は省略する。但し、情報処理・制御装置120は、情報入力装置110から入力された各種の情報に基づいて、3次元造形物の製造装置400における各装置(130〜160,410〜430)を制御する。

軟質樹脂形成装置410は、情報処理・制御装置120の制御に従って、3次元造形物300−4の中空領域に当該3次元造形物よりも柔らかい軟質樹脂を形成する装置である。

ここで、軟質樹脂形成装置410で用いる軟質樹脂500について説明する。 本実施形態における軟質樹脂500は、ポリオール化合物にポリイソシアネート化合物などを混合したウレタン樹脂を主材料として形成されている。具体的に、本実施形態における軟質樹脂500は、ポリオール化合物の主剤と、ポリイソシアネート化合物などの硬化剤等(例えば、ポリイソシアネート、ジイソノニールフタレート(DINP)及びヘキサメチレンジイソシアネートを含む硬化剤等)との2液混合のウレタン樹脂を主材料として含み形成されている。この際、上述した硬化剤等において、ポリイソシアネートは当該硬化剤等の総重量に対する重量比率が10%〜20%の範囲であることが好適であり、ジイソノニールフタレートは当該硬化剤等の総重量に対する重量比率が80%〜90%の範囲であることが好適であり、ヘキサメチレンジイソシアネートは当該硬化剤等の総重量に対する重量比率が0.15%以下であることが好適である。さらに、本実施形態においては、軟質樹脂500は、上述した主材料に加えて、超音波撮影において3次元造形物300の中空領域に形成された当該軟質樹脂を映出させるための超音波散乱材料を含み形成されているものとする。この際、本実施形態においては、超音波散乱材料として、ウレタン樹脂粉末を用いるものとするが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、例えば、カーボン粉末や石膏粉末を用いるようにしてもよい。さらに、本実施形態における軟質樹脂500に顔料を混ぜて、3次元造形物300に形成される軟質樹脂に各種の色を付けることができるようにしてもよい。

以下に、軟質樹脂500に含まれる超音波散乱材料の重量比率について記載する。軟質樹脂500に含まれる超音波散乱材料は、超音波撮影において3次元造形物300の中空領域に形成された当該軟質樹脂を映出させるという観点から、軟質樹脂500に含まれる2液混合のウレタン樹脂の総重量に対する重量比率が10%〜25%の範囲であることが好適である。これは、軟質樹脂500に含まれる2液混合のウレタン樹脂の総重量に対する超音波散乱材料の重量比率が、10%未満になる場合及び25%を超える場合には、超音波撮影において3次元造形物300の中空領域に形成された当該軟質樹脂を映出させることが困難になるという不具合が生じるためである。

第3の熱処理装置420は、情報処理・制御装置120の制御に従って、軟質樹脂形成装置410において軟質樹脂srが形成された3次元造形物300−6を所定の温度で熱処理(第3の熱処理)する装置である。本実施形態においては、第3の熱処理装置420は、3次元造形物300−6に対して、温度60℃程度で3時間程度の熱処理を行う。本例では、この第3の熱処理装置420による第3の熱処理により、3次元造形物300−6における軟質樹脂srを硬化させる。

水性媒体浸漬装置430は、情報処理・制御装置120の制御に従って、第3の熱処理装置420で熱処理された3次元造形物300−7を水性媒体に浸漬する装置である。ここで、水性媒体とは、3次元造形物300の強度と柔らかさを損なうことがなければ特に限定されないが、水、生理食塩水、緩衝液、グリセリンやエチレングリコール等の水性有機溶媒、または、これらの混合物等を挙げることができ、それらに水溶性の物質を溶解させることもできる。また、1つの態様として、上述した水性媒体に防腐・防カビ剤を添加することができる。防腐・防カビ剤は、3次元造形物300−7及び水性媒体の防腐・防カビ機能を有し、3次元造形物300の強度と柔らかさに影響を及ぼすことがない、水溶性の防腐・防カビ剤であれば特に限定されないが、取扱いや手術トレーニング等を行うことを考慮すれば、刺激性の低いものが好ましく、過酸化水素、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステルまたはその塩等を挙げることができ、それぞれ防腐・防カビ機能を発揮する適切な濃度で使用できる。本実施形態においては、水性媒体浸漬装置430は、例えば、3次元造形物300−7を、温度80℃〜95℃の水性媒体に1時間程度浸漬させることが好適である。そして、例えば手術トレーニング等を行う際には、3次元造形物の製造装置400は、水性媒体浸漬装置430から3次元造形物300−8を取り出す処理を行う。

なお、図7に示す例では、第1の熱処理装置140と第2の熱処理装置160と第3の熱処理装置420との3つの熱処理装置を設ける態様を示しているが、本実施形態においては、この態様に限定されるものではなく、例えば1つの熱処理装置を設けて、この1つの熱処理装置において第1の熱処理装置140による第1の熱処理と第2の熱処理装置160による第2の熱処理と第3の熱処理装置420による第3の熱処理とを行う態様も、本実施形態に適用可能である。また、3次元造形物300を長時間かけて自然乾燥させる場合等には、第1の熱処理装置140、第2の熱処理装置160及び第3の熱処理装置420のうちの少なくともいずれか1つ或いはその全てを設けない態様も、本実施形態に適用可能である。例えば、第3の熱処理装置420を設けずに、3次元造形物300−6における軟質樹脂srを長時間かけて反応させる場合等には、室温で24時間程度の反応を要する。

次に、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形物の製造装置400により実行される3次元造形物の製造方法の処理手順について説明する。

図8は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形物の製造装置400により実行される3次元造形物の製造方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。以下に、この図8に示すフローチャートの処理を、図7を参照しながら説明する。また、図8に示すフローチャートの処理において、図2に示す第1の実施形態におけるフローチャートの処理と同様の処理ステップについては同じステップ番号を付しており、その詳細な説明は省略する。

図8に示すフローチャートの処理においては、まず、図2に示す第1の実施形態におけるフローチャートのステップS1〜S9の処理を行う。これにより、図7に示す3次元造形物300−4が得られる。

続いて、図8のステップS21において、図7の軟質樹脂形成装置410は、情報処理・制御装置120の制御に従って、3次元造形物300−4の中空領域に当該3次元造形物よりも柔らかい軟質樹脂を形成する処理を行う。ここで、軟質樹脂形成装置410で用いる軟質樹脂500は、上述したように、ポリオール化合物の主剤とポリイソシアネート化合物などの硬化剤等との2液混合のウレタン樹脂を主材料として含むとともに、この主材料に加えて、超音波撮影において3次元造形物300の中空領域に形成された当該軟質樹脂を映出させるための超音波散乱材料を含み形成されているものとする。

続いて、図8のステップS22において、図7の第3の熱処理装置420は、情報処理・制御装置120の制御に従って、軟質樹脂形成装置410において軟質樹脂srが形成された3次元造形物300−6を所定の温度で熱処理(第3の熱処理)を行う。本実施形態においては、第3の熱処理装置420は、3次元造形物300−6に対して、温度60℃程度で3時間程度の熱処理を行う。

続いて、図8のステップS23において、図7の水性媒体浸漬装置430は、情報処理・制御装置120の制御に従って、第3の熱処理装置420で熱処理された3次元造形物300−7を水性媒体に浸漬する処理を行う。そして、例えば手術トレーニング等を行う際には、3次元造形物の製造装置400は、水性媒体浸漬装置430から3次元造形物300−8を取り出す処理を行う。

なお、3次元造形物300を長時間かけて自然乾燥させる場合等には、必要に応じて、図8のステップS7における第1の熱処理、図8のステップS9における第2の熱処理及び図8のステップS22における第3の熱処理のうちの少なくともいずれか1つ或いはその全てを省略する態様も、本実施形態に適用可能である。例えば、図8のステップS22における第3の熱処理を行わずに、3次元造形物300−6における軟質樹脂srを長時間かけて反応させる場合等には、室温で24時間程度の反応を要する。

図8のステップS23の処理が終了すると、図8に示すフローチャートの処理が終了する。図8に示すフローチャートの処理により、粉体積層法により石膏とウレタン樹脂とを含み(更には防腐・防カビ剤を含み)、且つ、軟質樹脂srが形成されて成る3次元造形物300が製造される。

次に、本発明者が行った超音波撮影の結果について説明する。具体的に、以下に説明する超音波撮影は、GEヘルスケア社製の「LogiQ−S8」の超音波診断装置を用いて、撮影時の周波数Fqを8MHz、フレームレートFRを36として行われたものである。

図9Aは、超音波撮影を行った3次元造形物300を示す図である。具体的に、図9Aには、超音波撮影を行った3次元造形物300を2つに分割した3次元造形物分割片300a及び300bが示されている。 また、図9Bは、比較例を示し、中空領域を形成せずに(即ち軟質樹脂を形成せずに軟質樹脂の部分も全て粉末を混合させた造形材料で)製造した3次元造形物300の外観図である。

図9Cは、比較例を示し、中空領域を形成せずに(即ち軟質樹脂を形成せずに軟質樹脂の部分も全て粉末を混合させた造形材料で)製造した図9Bの3次元造形物300を超音波撮影した結果を示す図である。

図9Cに示す結果から、3次元造形物300の内部は超音波撮影において映出できていないことが分かる。これは、図9Cに示す結果を得た3次元造形物300の内部は、中空領域を形成せずに(即ち軟質樹脂を形成せずに軟質樹脂の部分も全て粉末を混合させた造形材料で)製造されたため、超音波が3次元造形物300の表面近傍で吸収されてしまい、内部に伝播していかないために輪郭しか映出されていないためである。

図9Dは、本発明の第2の実施形態を示し、中空領域に軟質樹脂srを形成した図9Aの3次元造形物300を超音波撮影した結果を示す図である。

図9Dに示す結果から、3次元造形物300において軟質樹脂srを形成した領域は超音波撮影において映出できていることが分かる。これは、軟質樹脂500に、上述した超音波散乱材料を含ませている結果得られたものと考えられる。また、図9Cの超音波撮影結果をもたらした3次元造形物は粉末を混合させた造形材料のみで製造され、内部まで超音波が伝播していなかったのに対し、図9Dの超音波撮影結果をもたらした3次元造形物は内部に中空領域を設けたので、粉末を混合させた造形材料で製造された表面部分の厚みが薄く、超音波が中空領域に形成された軟質樹脂srに到達して伝播し、また軟質樹脂500に上述した超音波散乱材料を含ませている結果、適度に超音波が散乱されて得られたものと考えられる。なお、図9Dの中央付近の縦の黒い帯状の領域は、この黒い帯の上部に相当し粉末を混合させた造形材料で製造された中空領域の外殻部分と、その下側の中空領域に形成された軟質樹脂との間に、この超音波撮影の際に空気が入ってしまい軟質樹脂に超音波が伝播しなかったため、超音波散乱材料を含ませた軟質樹脂が映出できずに黒い帯状の領域となったものである。空気が入らなければ軟質樹脂に超音波が伝播して黒い帯状の領域の左右と同じように超音波が散乱した部分が白く映出されるため、この黒い帯状の領域は発明の効果の説明には影響しないものである。

本発明の第2の実施形態によれば、3次元造形物300の中空領域に当該3次元造形物よりも柔らかい軟質樹脂srを形成するようにしたので、第1の実施形態における効果に加えて、柔らかさの異なる部分を有する3次元造形物300を形成することができる。さらに、本発明の第2の実施形態によれば、軟質樹脂に、超音波撮影において3次元造形物300の中空領域に形成された当該軟質樹脂を映出させるための超音波散乱材料を含み形成するようにしたので、超音波診断装置による画像撮影が可能な3次元造形物300を形成することもできる。例えば本実施形態の技術を医療分野に適用すれば、例えば病変部分を軟質樹脂srで再現することにより、個々の患者の臓器をより実物に近い形で再現した3次元造形物を形成することができるため、例えばその3次元造形物を一般の手術トレーニングや超音波診断装置を利用した手術トレーニング等に用いることができ、医療の質の向上を図ることが可能となる。

なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。

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