Barrel roaster and barrel roasting method using the same

申请号 JP21788998 申请日 1998-07-31 公开(公告)号 JP4204667B2 公开(公告)日 2009-01-07
申请人 サントリー株式会社; 发明人 昌春 三鍋; 定彦 加藤; 隆一 松山; 敬久 藤井;
摘要
权利要求
  • 円筒状に構成されたヒーター及びヒーター背面に配置された反射板を有するヒーター部と、該ヒーター部を上下昇降させる昇降装置部と、ヒーター部のヒーターの温度を制御する温度制御装置部とを備えた樽焙煎機。
  • 前記ヒーター部が、ヒーター部の底部に円盤状のパンチング板を有することを特徴とする 請求項1に記載の樽焙煎機。
  • 前記ヒーターが、遠赤外線ヒーターであることを特徴とする 請求項1に記載の樽焙煎機。
  • 請求項1〜3のいずれかに記載の樽焙煎機を用いて樽の焙煎を行う方法であって、少なくとも片側の鏡板が填められていない樽を、鏡板を填める面を天地として樽胴部を立てて、鏡板が填められていない面を上にして、ヒーター部の真下に配置し、昇降装置部により樽内にヒーター部を挿入し、ヒーター部のヒーターの温度を温度制御装置部により制御し、樽内の焙煎を行い、焙煎終了後はヒーター部を昇降装置部により上昇させ、樽内よりはずす、樽の焙煎を行う方法。
  • 说明书全文

    【0001】
    【産業上の利用分野】
    本発明は、酒類の貯蔵・熟成に使用される木製樽の内面を均一に加熱する装置及びその使用方法に関するものである。
    【0002】
    【従来の技術】
    ウイスキー、ブランデー、ワインやシェリー等の酒類の貯蔵・熟成に用いられる新しい木製樽は、通常樽の内面を加熱処理した上で使用される。
    【0003】
    木製樽の内面加熱方法としては、大きく分けて2通りある。
    【0004】
    一つは、鏡板をはめ込む前の樽の胴部内面に直接炎を当てて内面を焼く方式(チャーリング、charring)であり、主にウイスキー用樽に適用される。 この内面焼きは通常数十秒から数分間を要して行われる。 この方式では、樽材表面は炭化状になるまで熱分解されるが、樽の物理的強度から数分間が限界となり、樽材内部まではほとんど熱分解されることはない。 この方式での樽内面の加熱処理の主目的は炭化層を形成させ、その炭化層による酒類の熟成の促進と生木臭の消失である。
    【0005】
    二つめは、樽の中に火の入ったコンロを置いて樽内面を焙煎する方式(トースティング、toasting)であり、主にブランデー用、ワイン用及びシェリー用の樽に用いられる。 この方式の主目的は、樽の内面を加熱することにより、樽材(木材)の成分であるリグニン、ヘミセルロース、セルロースなどが加熱により熱分解され、木材の生木臭が消えるとともに、酒類の熟成香味に寄与する成分である、バニリン、シクロテン、マルトール、アラビノース、グルコースなどを生成させるものである。 そして、この生成された成分が、樽内に貯蔵・熟成のために詰められた酒類に溶出して、酒類は甘く華やかな熟成香味を有するようになる。 これらの熟成香味成分の生成は、180〜220℃の温度範囲の加熱により得ることができる。 そして、この時樽材の表面は、目視ではチョコレート色を呈する。 しかし、樽内面の焙煎処理において、過度に加熱を行うと、加熱により樽材成分から生成された熟成香味成分が、更に熱分解されて消失してしまう。 また、過度の加熱により、樽内部に充満した木ガス等の揮発性ガスへの引火や発火、更には樽材が着火する場合もある。 これらの場合、着火により発生した木ガスやタール分が樽内面に付着して、焦げ臭が付与されてしまう。 これらの焦げ臭が樽に付着すると、結果として樽に貯蔵・熟成のために詰められた酒類にも焦げ臭が付与され、この焦げ臭は酒類にとって非常に好ましくない臭いや味のため、この酒類は著しく商品価値の下がったものとなってしまう。 更には、樽材の物理的破損まで引き起こす。 過度に加熱され、樽材が炭化した場合は、樽材の表面は、目視では黒い色を呈する。 従って、樽内面へ適切な焙煎を行い、熟成香味成分を生成させ、かつ酒類に溶出すると好ましくない焦げ臭等となる香味成分を生成させないことが必要である。
    【0006】
    焙煎方式では、例えば、スペインのシェリー樽、フランスのブランデー樽等では、樽の曲面部分である側板の曲げ加工として、樽材のうち側板を朝顔型に組み立て、開いた方を上にして、開いた部分にワイヤーをかけ、ウィンチで少しずつ絞って、最終的に樽の形状にする加工作業の際に、木材を可塑化するために、樽の中に火の入ったコンロを置いて樽内面を焙煎する方式が採られている。 樽内面が焙煎される時には、樽は両鏡板ともまだ填められていない状態で、鏡板が填められる面を天地として樽胴部を立てて、コンロの上に置き、この状態で樽の上部となる鏡板を填める部分に蓋をして、コンロの火をエアーで調節して、樽内面を焙煎するものである。 また、コンロの熱源には製樽時の廃材や炭が一般的に用いられている。 この時、熱源が炭の場合は炭からの輻射もあるものの、コンロの火による直接加熱はほとんどなく、樽上部を蓋でふさがれているため樽がほぼ密閉状態となっており、コンロの火による熱風が樽内で上昇して、天頂部の蓋の部分で熱風の対流を生じ、その熱風により樽内面が加熱されるものである。 最近では、樽材の曲げ加工のための焙煎処理の後、再度、樽内に詰められる酒類への作用を目的とした焙煎が行われる事も多い。 この樽内面を焙煎する方式は間接加熱のため、直接炎を当てて内面を焼く方式(チャーリング、charring)に比べ、時間を要するが、樽材の曲げ加工のための焙煎処理では約15分程度、再度の焙煎には20〜40分を要する。 ブランデー、ワイン、シェリー等の樽に詰められる酒類の種類や得ようとする酒類の目標品質によって、その焙煎時間は異なる。
    【0007】
    樽材の加熱の度合が異なると、その樽で貯蔵・熟成された酒類の香味が大きく異なることになり、樽内面の加熱処理はその樽で貯蔵・熟成される酒類の香味に多大な影響を与えるものである。 例えば、樽内面の加熱処理により生成されるリグニン分解物の量の多少により、樽に詰められた酒類へのリグニン分解物の溶出量の差異による香味の変化が生じ、また樽内面の加熱処理の度合いにより、樽に詰められる酒類に、樽内面加熱処理由来の甘いバニラ様木香や熟成香味の強度を変化させて付与することができる。
    【0008】
    ウイスキー(バーボンウイスキーを除く)、ブランデーやワイン等の酒類の貯蔵・熟成では、通常、樽は数回使用されるが、一度或いは複数回貯蔵・熟成に用いられた樽(以降、古樽という)は、貯蔵・熟成に用いる酒類の用途に応じて、そのまま使用される場合と、再び樽の内面を加熱してから使用される場合とがある。 再度、樽内面を加熱する目的は、樽内面の炭化層の化学的反応能である熟成力の低下した古樽を加熱により再び活性化することと、樽材内部に木材の熱分解により熟成香味成分を再び生成させることにある。 そして、この樽で酒類を貯蔵・熟成することにより、酒類に熟成香味成分を溶出させ、甘く華やかな熟成香味を有する酒類を得ることにある。
    【0009】
    樽内面の再加熱方法にも、新樽製造時と同様、樽の内面に直接炎を当てて内面を焼く方式(チャーリング)と焙煎方式(トースティング)とがあり、樽の用途や樽に詰められる酒類の目標とする品質に応じて二つの方式を使い分けている。 しかしながら、古樽を焙煎する場合、以前に詰められていた酒類が樽内面の樽材に染み込んでおり、加熱による樽材中のアルコールの発火やそれによる樽材の着火を起こしやすいため、アルコールの発火や樽材の着火等を起こさないように、かつ樽内面に必要な熟成香味成分を生成させるように、加熱の温度をコントロールをすることが難しく、また、着火等により物理的に樽が破損、樽内面に過度の加熱で酒類には適さない焦げ臭などが付着することも多かった。
    【0010】
    これまで日本における古樽の焙煎は、フランスのブランデー新樽の製造と同様に、樽の中に火の入ったコンロを置いて、樽内面を焙煎する方式(トースティング,toasting)で行われていた。 この焙煎する方式では、古樽より片側の鏡板を取り外して行うことになる。
    【0011】
    【発明が解決しようとする課題】
    樽内面を焙煎する方式(トースティング,toasting)で樽内面の加熱を行った場合、以下のような問題点がある。
    【0012】
    一番目には、樽内面の加熱は、樽内の熱風の対流による熱伝導が主であるため、焙煎時に樽上部となる蓋に近い部分と下部になる部分にかかる温度差が大きくなり、樽上部ばかり加熱されて、樽下部が加熱され難い。 従って、樽上部に適切な加熱を行うように、コンロの火を調節すると、樽下部では加熱が不十分となり、熟成香味成分の生成等が不十分となる。 また、樽下部に適切な加熱を行うようにコンロの火を調節すると、樽上部は過度の加熱を受けてしまう。 また、コンロの火に吹き込むエアーの向きによって、樽内部の円周方向の温度差も大きい。 従って、樽内面を均一に加熱することは非常に難しく、焙煎のためのコンロの火の温度、熱源である廃材や炭の量、エアーの供給量のコントロール等は熟練を要するものであった。 なお、樽内の加熱が均一に行われない場合、樽内に詰められた酒類の長期間の貯蔵・熟成後に目標とした品質の酒類が得られない、あるいは樽毎の焙煎度合いの差異が大きくなり、これらの樽での貯蔵・熟成された酒類の品質に差異ができてしまう。 また、適切な加熱部分が樽内全面に施されていないと目標とした品質の酒類を得るのに必要以上に貯蔵・熟成期間を要するという問題点がある。 また、この場合貯蔵期間が長くなると、樽内に詰められた酒類の欠減が多くなり、コストアップにもつながる。
    【0013】
    二番目に、焙煎時の樽の天頂部が蓋でふさがれており、そのために、樽内部に熱風だけではなく、樽材より発生した木ガス等の可燃性ガスが充満し、これらの可燃性ガスが発火、それにより樽材が着火する。 特に古樽の焙煎の場合は、以前に詰められていた酒類が樽内面の樽材に染み込んでおり、加熱による樽材中のアルコールの発火や樽材の着火を引き起こしやすい。 特に、アルコール度数の高い酒類が詰められていた樽の場合は、その可燃性ガスの濃度が高くなるので、加熱による樽材中のアルコールの発火や樽材の着火を非常に引き起こしやすくする。 樽材の着火は作業者に対して非常に危険である上に、着火した場合、せっかく焙煎によって樽材成分から生成された熟成香味成分が、過度に加熱を受けて、更に熱分解されて消失してしまう。 また、樽材から発生し樽内部に充満した木ガスやタール分が樽内面に付着して、焦げ臭が付与されてしまう。 これらの焦げ臭が樽に付着すると、結果として樽に貯蔵・熟成のために詰められた酒類にも好ましくない焦げ臭が付与されることになり、この酒類は著しく商品価値が下がってしまう。
    【0014】
    更に、従来の樽内部の加熱作業のほとんどが手作業であり、焙煎方式では特に一樽毎に廃材や炭などの熱源を供給する必要があり連続的に作業を行えず、手間も時間も要するものであった。 また、いずれの樽内部の加熱作業も熟練者の技巧を要する作業であり、しかも、熟練者でも焙煎方式ではコンロ2台を使用して、10丁/人・日と生産効率が非常に悪く、多大な時間と労力を要する作業であった。
    【0015】
    従って、本発明の目的は、酒類の貯蔵・熟成に使用される木製樽の内面を均一に、着火させることなく焙煎して、焦げ臭を付与することなく、木材の熱分解により樽材内部に熟成香味成分を生成させ、結果として、この焙煎した樽で酒類を貯蔵・熟成することにより、酒類には好ましくない香味を付与せず、甘く華やかな熟成香味を有する酒類を得られるようにした、樽内面の焙煎機及びその使用方法を提供することである。 また、従来は熟練者の技巧を要する方法であり、手作業による方法であったのに対して、焙煎方法のうち、制御がむずかしいかった温度の制御が自動化でき、熟練者の技巧を要せずに工業的に作業が行え、その上で、常に品質が均一な焙煎が行え、また非常に効率的に焙煎が行える方法及びそのための焙煎機を提供することにある。
    【0016】
    【課題を解決するための手段】
    本発明者らは、木材の加熱方法に関して鋭意研究した結果、従来の対流による熱伝達を主とする焙煎方式から、放射加熱を主とする焙煎方式に替える方式を見出し、その方法を具体化した本発明の焙煎機は、円筒状に構成されたヒーター及びヒーター背面に配置された反射板からなるヒーター部と、該ヒーター部を上下昇降させる昇降装置部と、ヒーター部のヒーターの温度を制御する温度制御装置部とを備えている。
    【0017】
    ヒーターは、温度制御装置によりその温度を自動制御できるヒーターであればいずれのものでもよい。 なお、樽材は一定の厚さがあるので、樽材の内部深くまで加熱するには、加熱速度が早く、輻射加熱であり被熱物の内部加熱性がある遠赤外線ヒーターを使用することも薦められる。 一般に遠赤外線放射体は、遠赤外線のみを選択して放射するものではなく、多少とも中間赤外線ないし近赤外線にわたって放射しているのが普通であり、本発明においても、遠赤外線ヒーターとは、遠赤外線を放射しているヒーターであれば良く、遠赤外線とあわせて中間赤外線ないし近赤外線にわたって放射しているヒーターも含む。
    【0018】
    また、ヒーター部の底部には、円盤状のパンチング板を設けることにより、円筒状のヒーター部の中空部分からの樽内部への空気流入を制限し、これにより樽内部の上部と下部の温度差がほとんどなくなる。
    【0019】
    【発明の実施の態様】
    以下、図面を参照して本発明の樽焙煎機の一つの実施態様について説明する。 この実施態様による樽焙煎機1は3つの基本構造、すなわち、ヒーター部2と、該ヒーター部2を上下昇降される昇降装置部3と、ヒーター部のヒーターの温度を制御する温度制御装置部を備える。
    【0020】
    図1は、本実施態様の樽焙煎機1の全体を示す図であり、図2はヒーター部の拡大図である。 図1及び図2において示されるように、ヒーター部2は、本体21と、その本体21に公知の方法で固定された円筒形のステンレス製の反射板22を備えている。 反射板22の外周にはU字型の電気ヒーター23が、複数個円周方向に隔てて(本実施態様では9個を約10cm間隔で)配置され、反射板22と共に本体21に固定されている。 電気ヒーターを円周方向に等間隔に配置する方法としては、例えば、反射板22の外周に対の環状板を配置し、その環状板により電気ヒーターを位置決めすればよい。 電気ヒーター23は遠赤外線ヒーターで、その形状は直線型等いずれのものでもかまわないが、本例では、電気ヒーター23の配線を上部に(例えば本体21の上部に)集約させるためにU字型ヒーターを使用している。 電気ヒーター23の数は任意であるが、電気ヒーター23と樽4の最大胴径部分(通常中央部)41の内面との距離が8cmから15cmの範囲にあると、樽材内部の温度上昇が早く、また、過度の加熱が起こらず着火の可能性が低いので、好ましい。 本例では、この距離は10cmとなるように設計されている。 なお、電気ヒーター23は、樽への着火という緊急の事態にも耐えられるように耐火性を有するものを用いることが、安全性を高めるために好ましい。
    【0021】
    ヒーター部2には、電気ヒーターのU字型の内部の空間の上部、中部、下部の3箇所に熱電対24(24a〜24c)が設置されており、中部に設置された熱電対24bが温度制御用に、上部及び下部に設置された熱電対24a、24cが過熱警報用となっている。 これらの熱電対はいずれも焙煎工程自体には必要ないが、本例では、着火の危険性が高い上部及び下部には安全対策として設置し、また中部は温度制御のために設置した。
    【0022】
    また、円筒状のヒーター部2の底部には、円盤状のパンチング板25が配置されて公知の方法で反射板22に取り付けられており、円筒状のヒーター部2の中空部分からの樽内部への空気の流入を制限している。 これにより樽内部の上部と下部の温度差がほとんどなくなる。 更に、電気ヒーター23の上部23aには、所定の長さLの加熱部を有しない部分(非加熱部)が形成され、ヒーター部2の上部末端で加熱された気流により樽が密封されにくいようになっている。 更に詳しく言えば、ヒーター部2を樽4内に挿入したときに、本体21と電気ヒーター23との境に配置されたディスク26によって樽の上部が塞がれないようにし、それによって、焙煎により樽材から発火の可能性のあるアルコールや木ガス等の揮発性ガスが樽外に流出しやすいようになっている。 この加熱部を有しない部分は、電気ヒーターの末端の非加熱部を利用しても良いし、或いは電気ヒーター23のヘッド21への取り付け位置を下げることにより設けることができる。 また、樽は容量により、その規格が規定されているが、個々の樽により微妙に側板の高さが異なるため、このように電気ヒーター23の上部に一定の長さの非加熱部を持たせることにより、どのような樽にも電気ヒーター23が適切な位置に挿入できるようになっている。 本例では、非加熱部の長さLは、電気ヒーター23の上部の約21cmの長さの区域である。
    【0023】
    昇降装置部3は、図1に示すように、自動樽焙煎機1の直立した支柱11に公知の方法で上下方向のみに移動可能に取り付けられた可動体31と、その可動体31からほぼ平に伸びる取り付けアーム32とを備えている。 上記ヒーター部2は、その本体21の上部が取り付けアーム32の先端部に、下向きにして取り付けられている。 支柱11の上部に回動自在に設けられた一対の滑車12にはワイヤ又はロープ33が掛けられ、そのワイヤ又はロープ33の一端33aは可動体31に固定され、他端33bにはバランスウエイト34が固定されている。 バランスウエイト34の重さは、ヒーター部2及び可動体31の自重とバランスウエイト34の重量差でヒーター部が下降できるように、決定されている。 昇降装置部3は、更に、支柱11と平行に配置された流体シリンダーとしてのエアシリンダー35を備え、そのエアシリンダー35のピストンロッド35aの先端にはワイヤ又はロープ36の一端36aが取り付けられている。 このワイヤ又はロープ36は支柱11に回動自在に取り付けられた他の滑車13に掛けられ、他端36bが可動体31に固定されている。 このため、エアシリンダー35にエアを供給して作動させることにより、すなわちピストンロッド35aを下方に移動させることにより、ヒーター部2及び可動体31を上昇させることが可能である。 エアーの供給は支柱に隣接して設けられた制御パネルに取り付けられた昇降用レバー37で切り替えるようになっている。
    【0024】
    樽の側板の高さ(樽の軸方向長さ)の変化に応じてヒーター部1の上下の位置を微妙に調整できるように、エアシリンダー35を上下させる調整機構38がエアシリンダーの下端に設けられている。 この調整機構38はエアシリンダーの下端に隣接して枢動支点38bを中心に枢動可能に設けられていて一端がエアシリンダーの下端に接続されたレバー38aと、レバー38aの他端に連結された上下動用ハンドル38cとを備え、ハンドル38cを回すことにより、レバー38aを駆動支点38bの周りで回動させ、それによってエアシリンダー35の下端を上下動させるようになっている。
    【0025】
    温度制御装置部(図示せず)は、積算電力計、電流計、電圧計と温度モニタが配置されている。 温度制御はヒーター中部の熱電対で測定される温度と設定温度との差によって通電量を変えて制御するようになっている。
    【0026】
    更に、焙煎開始前及び焙煎終了時にはヒーター部2を上昇させるが、その時電気ヒーター23は赤熱した状態であり、触れる或いは近づくと火傷の危険性があるため、作業者の安全を確保するためにヒーター部の上昇停止位置にはステンレス製の防護カバー51が配置され、支持板52によって固定されている。 防護カバー51の形状は円筒形で、天板を有するが、底板はヒーター部の出入りのために設けられていない。 また、本例では作業者の確認がしやすいように、防護カバー51はパンチングされている。 防護カバー51の材質はいずれのものでもよいが、ヒーター自体の温度が700℃以上となるため、耐高熱性及び耐酸化性の機能を有する材質を選ぶ必要がある。 なお、防護カバー51の大きさは、電気ヒーター23が完全に覆える大きさがあればよい。 本例では、防護カバー51の支柱11側には、取り付けアーム32の昇降運動の妨げにならないように、取り付けアームが入り得る幅の上下方向に伸びるスリット(図示せず)が形成されている。
    【0027】
    また、樽4が焙煎のためにヒーター部2と昇降装置部3との間に配置されていない場合に、電気ヒーター23の熱が昇降装置部3に伝達しないよう、ヒーター部1と昇降装置部2の間にステンレス製の防護反射板(図示せず)が設置されている。 この防護反射板はヒーター部2と一体となっており、ヒーター部2と共に上下に昇降する。 この防護反射板も、防護カバー51と同様に耐高熱性及び耐酸化性の機能を有する材質であり、大きさは、電気ヒーター23の輻射熱が昇降装置部に伝わるのを防止できる大きさのものでよい。
    【0028】
    本発明の樽焙煎機を使用する方法は、エアシリンダー35を動作させてヒーター部2を上昇させ、温度制御装置部で、電気ヒーター所定の温度となるように設定し、電気ヒーター23に通電して所定温度まで温度を上昇させる。 また、焙煎を行う樽4(少なくとも片側の鏡板が填められていない樽)は、鏡板42が填められる面を天地として樽胴部を立てて、鏡板42が填められていない面を上にして、ヒーター部2の真下に配置する。 そして、電気ヒーター23が所定温度に達したら、ヒーター部2を下降させ、ヒーター部が樽4の円周方向に対して中央に来るように挿入し、所定時間後、静置する。 焙煎が完了したら、ヒーター部2を上昇させ、樽内からはずす。 焙煎が完了した樽4は、樽焙煎機より排出するものである。 焙煎を行う樽は、ヒーター部を挿入するために、少なくとも片側の鏡板が填めらえていなければ良く、両側の鏡板とも填められていなくてもよい。
    【0029】
    なお、上記実施態様の説明では流体シリンダーとして圧縮エアーを駆動源としたエアシリンダーを使用した場合について説明したが、液圧を駆動源とて動作する液圧シリンダーを使用してもよい。 液圧シリンダーの場合にはシリンダー内から排出される液体の速度を制御しやすいので、ピストンロッド、したがってヒーター部の降下速度を容易に制御できる。
    【0030】
    【実施例】
    (実施例1)図1及び図2に示す本実施態様の樽焙煎機を用いて、複数の230リットルの古樽の焙煎を行った。 焙煎方法は以下の通りである。
    1. ヒーター部昇降用レバー37を切り換え、ヒーター部2を上昇させる。
    2. 温度制御装置部でヒーターの温度を、中部の熱電対の測定温度が 270℃ になるように設定し、電気ヒーター23への通電を開始する。
    3. 片面鏡板を外した230リットル古樽を、樽焙煎機にセットする。
    4. ヒーター部昇降用レバー37を切り換え、ヒーター部2を下降させて樽内に挿入する。
    5. 必要であれば、樽のサイズに応じて、エアシリンダー上下動用ハンドル38cを回して、ヒーター部2の高さを微調整する。
    6.30分間焙煎する。
    7. 焙煎後、ヒーター部昇降用レバー37を切り替え、ヒーター部2を上昇させる。
    8. 樽焙煎機から樽を取り出し、次の古樽をセットし、以降4〜8の操作を繰り返す。
    【0031】
    (実施例2)
    実施例1の樽焙煎機で、ヒーターの温度を、中部の熱電対の測定温度が 230℃ となるように設定し、230リットル古樽を30分間焙煎した。 焙煎に用いた樽にはあらかじめ樽内部の上部、中部及び下部の3点に熱電対を設置し、樽の焙煎時の、樽内部のそれぞれの部分の実際の温度を測定した。 なお、熱電対はいずれも樽内部表面から深さ2mmの部分に設置し、樽焙煎機の温度制御は、ヒーターの中部で行った。 その結果を図3に示す。 なお、樽内面の焙煎後の状態を目視で観察するために、樽内部の表面を加熱されていない木材が現れるまで均一に削った古樽を用いて同様に焙煎を行った。 そして焙煎後の樽内部を目視で観察したところ、樽内部のいずれにおいても、全面に亙って均一な薄いチョコレート色を呈していた。
    【0032】
    (実施例3)
    実施例1の樽焙煎機で、ヒーターの温度を、 中部の熱電対の測定温度が 250℃ となるように設定し、230リットル古樽を30分間焙煎した。 焙煎に用いた樽にはあらかじめ樽内部の上部、中部及び下部の3点に熱電対を設置し、樽の焙煎時の、樽内部のそれぞれの部分の実際の温度を測定した。 なお、熱電対はいずれも樽内部表面から深さ2mmの部分に設置し、樽焙煎機の温度制御は、ヒーターの中部で行った。 その結果を図4に示す。 更に、同様にしてもっとも円周が広い樽の中部の位置で、円周方向に位置が異なる等間隔の3点においても温度を測定した。 その結果を図5に示す。 なお、樽内面の焙煎後の状態を目視で観察するために、樽内部の表面を加熱されていない木材が現れるまで均一に削った古樽を用いて同様に焙煎を行った。 そして、焙煎後の樽内部を目視で観察したところ、樽内部のいずれにおいても、全面に亙って均一なチョコレート色を呈していた。
    【0033】
    (実施例4)
    実施例1の樽焙煎機で、ヒーター温度を、 中部の熱電対の測定温度が 270℃ となるように設定し、230リットル古樽を30分間焙煎した。 焙煎に用いた樽にはあらかじめ樽内部の上部、中部及び下部の3点に熱電対を設置し、樽の焙煎時の、樽内部のそれぞれの部分の温度を測定した。 なお、熱電対はいずれも樽内部表面から深さ2mmの部分に設置し、樽焙煎機の温度制御は、ヒーターの中部で行った。 その結果を図6に示す。 なお、実施例2及び3と同様に樽内部の表面を削った古樽でも、同条件で焙煎を行い、焙煎後の樽内部を目視で観察したところ、樽内部のいずれにおいても、全面に亙って均一な濃いチョコレート色を呈していた。
    【0034】
    (実施例5)
    ヒーター部の底部に円盤状のパンチング板を有しない以外は、実施例1と同様の樽焙煎機で、ヒーター温度を、中部の熱電対の測定温度が 230℃ となるように設定し、230リットル古樽を30分間焙煎した。 焙煎に用いた樽にはあらかじめ樽内部の上部、中部及び下部の3点に熱電対を設置し、樽の焙煎時の、樽内部のそれぞれの部分の温度を測定した。 なお、熱電対はいずれも樽内部表面から深さ2mmの部分に設置し、樽焙煎機の温度制御は、ヒーターの中部で行った。 その結果を図7に示す。 樽中部及び下部は、樽上部に比して若干温度が低かった。 なお、実施例2及び3と同様に樽内部の表面を削った古樽でも同条件で焙煎を行い、焙煎後の樽内部を目視で観察したところ、樽内部の上部は全面に亙って均一なチョコレート色を呈していたが、樽中部では多少色が薄く、下部ではほとんど色がついておらず、均一な焙煎が行えていなかった。
    【0035】
    (実施例6)
    実施例5において、樽内部の中部から下部において焙煎が不十分であったので、ヒーター設定温度を上げて、焙煎を行った。 ヒーター部の底部に円盤状のパンチング板を有しない以外は、実施例1と同様の樽焙煎機で、ヒーター温度を、中部の熱電対の測定温度が 250℃ となるように設定し、230リットル古樽を30分間焙煎した。 焙煎に用いた樽にはあらかじめ樽内部の上部、中部及び下部の3点に熱電対を設置し、樽の焙煎時の、樽内部のそれぞれの部分の温度を測定した。 なお、熱電対はいずれも樽内部表面から深さ2mmの部分に設置し、樽焙煎機の温度制御は、ヒーターの中部の熱電対の測定温度に基づいて行った。 その結果を図8に示す。 樽上部及び中部は目的とする180〜220℃の温度範囲に達したが、樽下部は若干温度が低かった。 なお、実施例2及び3と同様に樽内部の表面を削った古樽でも同条件で焙煎を行い、焙煎後の樽内部を目視で観察したところ、樽内部の上部及び中部は全面に亙って均一なチョコレート色を呈していたが、樽下部では、少々色が薄かった。 しかし樽内部全体としては、約7割程度で、好ましい焙煎を得られた。 また、ヒーター部の付近における気流の流れをたばこの煙を用いて観察したところ、ヒーター部の天頂部よりヒーター部の中空部分に空気が流入していた。 この流入する空気のために、樽下部の温度が下がると推測される。
    【0036】
    (比較例)
    従来の焙煎方法である樽の中に火の入ったコンロを置いて樽内面を焙煎する方式で、480リットルの新樽を30分間焙煎した。 熱源には炭を用いた。 焙煎に用いた樽にはあらかじめ、樽内部の上部、中部及び下部の3点及び中部位置で円周方向では異なる位置の3点に熱電対を設置し、樽の焙煎時の温度を測定した。 なお、熱電対はいずれも樽内部表面から深さ2mmの部分に設置した。 その結果を図9に示す。
    【0037】
    実施例及び比較例の結果からも、本発明の樽焙煎機では、ヒーターの温度を設定しただけにも関わらず、加熱を受けた樽内部の上部、中部及び下部及び円周方向において異なる位置においても温度差がほとんどなく、本焙煎機を用いて焙煎することにより、樽内面を均一に加熱し得ることが実証された。 またヒーター中部の設定温度を変化させることにより、樽の焙煎の目的に応じて、樽内部の加熱の程度を制御できることも実証された。 なお、ヒーター部の底部にパンチング板を有しない場合でも、ヒーターの設定温度を高くすることで、樽内部の加熱の目標とする温度範囲である180〜220℃の範囲での加熱が行え、樽内部の焙煎としては十分な加熱が行えた。
    【0038】
    【発明の効果】
    本発明は、酒類の貯蔵・熟成に使用される木製樽の内面を均一に、着火させることなく焙煎して、焦げ臭を付与することなく、木材の熱分解により樽材内部に熟成香味成分を生成させ、結果として、この焙煎された樽で酒類を貯蔵・熟成することにより、甘く華やかな熟成香味を有する酒類を得ることができる。 特に樽内部の、上部、中部及び下部においても、円周方向でも均一に焙煎することが可能となった。 更に、この樽焙煎機を用いれば、常に品質が一定な樽の焙煎を行うことができる。 従って、この樽焙煎機によって焙煎された樽を、酒類の貯蔵・熟成に用いれば、一定の品質の酒類が或いは、目的とした品質の酒類を得ることができる。 また、樽上部がふさがれていないために、着火の危険性や焦げ臭の付与の可能性が極めて少ない。 特に以前に詰められていた酒類が樽材に染み込んでいる古樽の焙煎の場合は、この効果はきわめて顕著である。 更に、熱源の温度制御が確実に自動で行われるため、現場での観察による微調整等が全く必要なく、生産効率が倍増し、また熟練者も要しない。 例えば本発明の樽焙煎機を2台用いた場合、その焙煎能力は24丁/日・人であり、非常に生産効率が高い。 また、本発明の樽焙煎機では、 ヒーター温度の設定値を変えることにより、樽内部の焙煎度合いを調整することができ、詰められる酒類の種類に応じて、樽の用途に応じて、希望する焙煎度合いの加熱を自動的に行うことが可能となった。
    【図面の簡単な説明】
    【図1】 本発明による樽焙煎機の一実施態様の全体を示す側面図である。
    【図2】 図1の樽焙煎機のヒーター部の拡大図である。
    【図3】 図1の樽焙煎機を使用した実験結果を示す図であって、ヒーター温度を、中部の熱電対の測定温度が 230℃ となるように設定した場合の樽の上下方向の複数の位置における温度と時間との関係を示す図である。
    【図4】 図1の樽焙煎機を使用した実験結果を示す図であって、ヒーター温度を、中部の熱電対の測定温度が 250℃ となるように設定した場合の樽の上下方向の複数の位置における温度と時間との関係を示す図である。
    【図5】 図1の樽焙煎機を使用した実験結果を示す図であって、ヒーター温度を 中部の熱電対の測定温度が 250℃ となるように設定した場合の樽の円周方向の複数における位置の温度と時間との関係を示す図である。
    【図6】 図1の樽焙煎機を使用した実験結果を示す図であって、ヒーター温度を、中部の熱電対の測定温度が 270℃ となるように設定した場合の樽の上下方向の複数の位置における温度と時間との関係を示す図である。
    【図7】 パンチング板を外した樽焙煎機を使用した実験結果を示す図であって、ヒーター温度を、中部の熱電対の測定温度が 230℃ となるように設定した場合の樽の上下方向の複数の位置における温度と時間との関係を示す図である。
    【図8】 パンチング板を外した樽焙煎機を使用した実験結果を示す図であって、ヒーター温度を、中部の熱電対の測定温度が 250℃ となるように設定した場合の樽の上下方向の複数の位置における温度と時間との関係を示す図である。
    【図9】 従来のコンロによる加熱方法による実験結果を示す図であって、樽の上下方向の複数の位置における温度と時間との関係を示す図である。
    【符号の説明】
    1 樽焙煎機2 ヒーター部 22 反射板 23 電気ヒーター 24 熱電対 25 パンチング板3 昇降装置部 31 可動体 32 取り付けアーム 34 バランスウエート 35 エアシリンダー 38 調節機構4 樽

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