被膜の製造方法

申请号 JP2018080351 申请日 2018-04-19 公开(公告)号 JP2018177802A 公开(公告)日 2018-11-15
申请人 花王株式会社; 发明人 甘利 奈緒美; 向井 健太; 岡田 智成; 浅見 信之;
摘要 【課題】静電スプレー法によって、皮膚との密着性及び透明性の良好な被膜の製造方法の提供。 【解決手段】成分(a)、成分(b)、及び成分(c)を含む組成物を、直接皮膚に静電スプレーすることを特徴とする皮膚上への被膜の製造方法。 (a)アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、 (b)被膜形成能を有する 水 不溶性ポリマー、 (c)成分(b)以外の粘着性ポリマー。 【選択図】なし
权利要求

成分(a)、成分(b)及び成分(c)を含む組成物を、直接皮膚に静電スプレーすることを特徴とする皮膚上への被膜の製造方法。 (a)アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、 (b)被膜形成能を有する不溶性ポリマー、 (c)成分(b)以外の粘着性ポリマー。(c)粘着性ポリマーが、非イオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーから選択される少なくとも1種である請求項1記載の被膜の製造方法。(c)粘着性ポリマーが、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン粘着剤から選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の被膜の製造方法。変性ポリオルガノシロキサンのオルガノポリシロキサンセグメント(A)と、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント(B)との質量比(A/B)が60/40以上である請求項3記載の被膜の製造方法。変性ポリオルガノシロキサンのオルガノポリシロキサンセグメント(A)と、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント(B)との質量比(A/B)が60/40以上である請求項4記載の被膜の製造方法。(c)粘着性ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸C1−C20アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸C1−C20アルキルエステルをベースモノマーとし、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニルから選ばれる副モノマーとするコポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリアクリル系粘着剤である請求項1〜3のいずれか1項記載の被膜の製造方法。(c)粘着性ポリマーが、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンゴム、ポリイソブチレン、イソプレンゴム及びシリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載の被膜の製造方法。(c)粘着性ポリマーの粘着が、0.1N/10mm以上100N/10mm以下である請求項1〜7のいずれか1項記載の被膜の製造方法。(c)粘着性ポリマーの噴霧用組成物中の含有量が、0.5質量%以上30質量%以下である請求項1〜8のいずれか1項記載の被膜の製造方法。噴霧用組成物中の成分(b)と成分(c)の含有量の質量比(b/c)が、0.02以上20以下である請求項1〜9のいずれか1項記載の被膜の製造方法。噴霧用組成物中の成分(a)と成分(b)の含有量の質量比(a/b)が、2以上150以下である請求項1〜10のいずれか1項記載の被膜の製造方法。噴霧用組成物が、さらに成分(d)水を0.2質量%以上25質量%以下含有する請求項1〜11のいずれか1項記載の被膜の製造方法。成分(c)と成分(d)の含有量の質量比(c/d)が1以上50以下である請求項12記載の被膜の製造方法。前記静電スプレーが、前記組成物を収容する容器と、前記組成物を吐出するノズルと、前記容器中に収容されている前記組成物を前記ノズルに供給する供給装置と、前記ノズルに電圧を印加する電源とを有する静電スプレー装置を用いて行なわれる請求項1〜13のいずれか1項記載の被膜の製造方法。さらに、静電スプレー工程の前又は後に、20℃で液体の油を含有する液剤を静電スプレー以外の方法で皮膚に塗布する工程を有する請求項1〜14のいずれか1項記載の被膜の製造方法。成分(a)が、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール及び水から選ばれる1種以上である請求項1〜15のいずれか1項記載の被膜の製造方法。成分(a)が、少なくともエタノールを含む揮発性物質である請求項1〜16のいずれか1項記載の被膜の製造方法。成分(a)が少なくともエタノールを含む揮発性物質であり、揮発性物質中のエタノールの含有量が50質量%以上100質量%である請求項1〜17のいずれか1項記載の被膜の製造方法。成分(a)の含有量が前記組成物中に30質量%以上98質量%以下である請求項1〜18のいずれか1項記載の被膜の製造方法。成分(b)が、完全鹸化又は部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、オキサゾリン変性シリコーン、水溶性ポリエステル及びツエインから選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜19のいずれか1項記載の被膜の製造方法。成分(b)が、ポリビニルブチラール樹脂及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜20のいずれか1項記載の被膜の製造方法。成分(b)の含有量が、噴霧用組成物中に2質量%以上50質量%以下である請求項1〜21のいずれか1項記載の被膜の製造方法。成分(a)と成分(b)の含有量の比率((a)/(b))が、0.5以上40以下である請求項1〜22のいずれか1項記載の被膜の製造方法。エタノール(a)と成分(b)の含有量の比率((a)/(b))が0.5以上40以下である請求項17〜23のいずれか1項記載の被膜の製造方法。前記組成物は、グリコールの含有量が10質量%以下である請求項1〜24のいずれか1項記載の被膜の製造方法。

说明书全文

本発明は、被膜の製造方法に関する。

化粧料、化粧料成分或いは外傷用医薬剤を皮膚に有効に活用するために、例えば特許文献1には、化粧料あるいは化粧料成分を保持させてなる化粧用シートが記載されている。また、例えば特許文献2及び3には、静電スプレーによって被膜を形成する方法が記載されている。

特開2008−179629号公報

特開2006−104211号公報

特表2000−516130号公報

特許文献1に記載の化粧用シートは、化粧料あるいは化粧料成分を保持しているので、化粧料等を皮膚に有効に活用させることができる。しかし、特許文献1に記載の化粧用シートは、予め作製されたシートに化粧料等を含有させるため、着用中に摩擦がかかるとシートの際から剥離し易い。また、予め作製されたシートの繊維中に、化粧料等に加え、アーモンド油、アボカド油、或いはオリーブ油等の不揮発性の油やポリオールを含有した状態で保管すると、シートの構成繊維の繊維形態が崩れシート形態が崩れ易く、保存安定性が悪くなってしまう。

特許文献2に記載の静電スプレーによる皮膚の処理方法は、粒子状粉末物質である粒子を静電気的適用によって皮膚を処理する方法である。よって、被膜が繊維の堆積物ではないため、一枚の膜の形態を維持し難く、使用中に部分的に粒子が脱落するなど耐久性が劣り、また、使用後に剥がし難い。

一方、特許文献3に記載の静電スプレーによる被覆を形成する方法は、形成される被膜が繊維の堆積物であるため、一枚膜として取り扱うことができ、使用後に剥がし易くなる。しかし、静電スプレーによって形成された被膜と基板との密着性が十分でなく、摩擦等の外力に起因して被膜が損傷したり剥離したりすることがある。

従って本発明は、静電スプレー法によって、皮膚等に形成された被膜が摩擦等の外力によっても損傷や剥離しにくい密着性の高い被膜の製造方法に関する。

そこで本発明者らは、静電スプレー法に使用する噴霧用組成物の組成について種々検討した結果、被膜形成能を有するポリマーとして不溶性ポリマーを使用し、これに粘着性ポリマーを併用すれば、皮膚に直接静電スプレーしたときの被膜の密着性、耐摩擦性が顕著に向上することを見出した。

すなわち、本発明は、成分(a)、成分(b)及び成分(c)を含む組成物を、直接皮膚に静電スプレーすることを特徴とする皮膚上への被膜の製造方法を提供するものである。 (a)アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、 (b)被膜形成能を有する水不溶性ポリマー、 (c)成分(b)以外の粘着性ポリマー、

本発明によれば、皮膚と静電スプレーによって形成された被膜との密着性が高くなり、被膜に摩擦がかけられても剥離しにくくなり、耐摩擦性を向上することができる。

図1は、本発明で好適に用いられる静電スプレー装置の構成を示す概略図である。

図2は、静電スプレー装置を用いて静電スプレー法を行う様子を示す模式図である。

以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の製造方法は、皮膚の表面に被膜を形成する被膜の製造方法である。本実施形態においては、所定の成分を含む組成物を、皮膚に直接施して被膜を形成する。被膜の形成方法として、本発明では静電スプレー法を採用している。静電スプレー法は、組成物に正又は負の高電圧を印加して該組成物を帯電させ、帯電した該組成物を皮膚に向けて噴霧する方法である。噴霧された組成物はクーロン反発力によって微細化を繰り返しながら空間に広がり、その過程で、又は皮膚に付着した後に、揮発性物質である溶媒が乾燥することで、皮膚の表面に被膜を形成する。

本発明において用いられる前記の組成物(以下、この組成物のことを「噴霧用組成物」とも言う。)は、静電スプレー法が行われる環境下において液体のものである。この組成物は、以下の成分(a)、成分(b)及び成分(c)を含んでいる。 (a)アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、 (b)被膜形成能を有する水不溶性ポリマー、 (c)成分(b)以外の粘着性ポリマー。 以下、各成分について説明する。

成分(a)の揮発性物質は、液体の状態において揮発性を有する物質である。噴霧用組成物において成分(a)は、電界内に置かれた該噴霧用組成物を十分に帯電させた後、ノズル先端から皮膚に向かって吐出され、成分(a)が蒸発していくと、噴霧用組成物の電荷密度が過剰となり、クーロン反発によって更に微細化しながら成分(a)が更に蒸発していき、最終的に乾いた被膜を形成させる目的で配合される。この目的のために、揮発性物質はその蒸気圧が20℃において0.01kPa以上、106.66kPa以下であることが好ましく、0.13kPa以上、66.66kPa以下であることがより好ましく、0.67kPa以上、40.00kPa以下であることが更に好ましく、1.33kPa以上、40.00kPa以下であることがより一層好ましい。

成分(a)の揮発性物質のうち、アルコールとしては例えば一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。一価の鎖式脂肪族アルコールとしてはC1−C6アルコール、一価の環式アルコールとしてはC4−C6環式アルコール、一価の芳香族アルコールとしてはベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等がそれぞれ挙げられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、n−プロパノール、n−ペンタノールなどが挙げられる。これらのアルコールは、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。

成分(a)の揮発性物質のうち、ケトンとしてはジC1−C4アルキルケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらのケトンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

成分(a)の揮発性物質は、より好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール、及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノール及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、更に好ましくはエタノールを含むものである。

噴霧用組成物における成分(a)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが一層好ましい。また98質量%以下であることが好ましく、96質量%以下であることが更に好ましく、94質量%以下であることが一層好ましい。噴霧用組成物における成分(a)の含有量は、50質量%以上98質量%以下であることが好ましく、55質量%以上96質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以上94質量%以下であることが一層好ましい。この割合で噴霧用組成物中に成分(a)を含有させることで、静電スプレー法を行うときに噴霧用組成物を十分に揮発させることができる。 又、エタノールは成分(a)の揮発性物質の全量に対して、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが一層好ましい。また100質量%以下であることが好ましい。エタノールは成分(a)の揮発性物質の全量に対して、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、65質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが一層好ましい。

成分(b)である被膜形成能を有する水不溶性ポリマーは、一般に、成分(a)の揮発性物質に溶解することが可能な物質である。ここで、溶解するとは20℃において分散状態にあり、その分散状態が目視で均一な状態、好ましくは目視で透明又は半透明な状態であることをいう。

被膜形成能を有する水不溶性ポリマーとしては、成分(a)の揮発性物質の性質に応じて適切なものが用いられる。本明細書において「水溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1gを秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が水に溶解する性質を有するものをいう。一方、本明細書において「水不溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1g秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が溶解しない性質、すなわち溶解量が0.5g未満の性質を有するものをいう。

水不溶性である被膜形成能を有するポリマーとしては、例えば被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール(けん化度98mol%以上)、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール(けん化度60mol%以上98mol%以下)、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水不溶性ポリマーのうち、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール(けん化度98mol%以上)、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール(けん化度60mol%以上98mol%以下)、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリ乳酸、ツエイン等を用いることが好ましい。さらに、ポリビニルブチラール樹脂及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種又は2種以上の水不溶性ポリマーが好ましい。

噴霧用組成物における成分(b)の含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、2質量%以上であることが一層好ましく、5質量%以上であることが殊更に好ましい。また45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることが更に好ましく、30質量%以下であることが一層好ましく、25質量%以下であることが殊更に好ましい。噴霧用組成物における成分(b)の含有量は、0.5質量%以上45質量%以下であることが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることが更に好ましく、2質量%以上30質量%以下であることが一層好ましく、5質量%以上25質量%以下が殊更に好ましい。この割合で噴霧用組成物中に成分(b)を含有させることで、目的とする被膜を効率的に形成することができる。

噴霧用組成物中の成分(a)と成分(b)の含有量の比率((a)/(b))は、静電スプレー法を行うときに成分(a)を十分に揮発させることができ、目的とする被膜を形成させることができる観点から、0.5以上40以下が好ましく、1以上30以下がより好ましく、2以上25以下がさらに好ましい。 また、噴霧用組成物中のエタノール(a)と成分(b)の含有量の比率((a)/(b))は、静電スプレー法を行うときにエタノール(a)を十分に揮発させることができ、目的とする被膜を形成させることができる観点から、0.5以上40以下が好ましく、1以上30以下がより好ましく、2以上25以下がさらに好ましい。

(c)成分(b)以外の粘着性ポリマーは、静電スプレーにより皮膚上に形成された被膜の密着性の向上、耐摩擦性の向上に寄与する。粘着性ポリマーとしては、一般に粘着剤として使用されるものを用いることができる。例えば、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。また(c)粘着性ポリマーとしては、非イオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーから選択される少なくとも1種を使用することができる。

ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム;ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエン(SB)ゴム、スチレン・イソプレン(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレン、これらの変性体等の合成ゴム;等をベースポリマーとするゴム系粘着剤が挙げられる。 これらのゴム系粘着剤のうち、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンゴム、ポリイソブチレン、イソプレンゴム及びシリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。

アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステルが挙げられる。 これらのベースポリマーとともに用いられる副モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル等が挙げられる。

シリコーン系粘着剤として、例えば、オルガノポリシロキサンを含むシリコーンゴムまたはシリコーンレジン等をベースポリマーとするシリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。シリコーン系粘着剤を構成するベースポリマーとして、上記シリコーンゴムまたはシリコーンレジンを、架橋して得られたベースポリマーを用いてもよい。シリコーンゴムとしては、例えば、ジメチルシロキサンを構成単位として含むオルガノポリシロキサン等が挙げられる。オルガノポリシロキサンには、必要に応じて、官能基(例えば、ビニル基)が導入されていてもよい。シリコーンレジンとしては、例えば、R3SiO1/2構成単位、SiO2構成単位、RSiO3/2構成単位およびR2SiO構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を含むオルガノポリシロキサンが挙げられる。シリコーン系粘着剤は架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、例えば、シロキサン系架橋剤、過酸化物系架橋剤等が挙げられる。過酸化物系架橋剤としては、任意の適切な架橋剤が用いられ得る。過酸化物系架橋剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイト等が挙げられる。シロキサン系架橋剤としては、例えば、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン等が挙げられる。

オルガノポリシロキサンとしては、以下に示すポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性オルガノポリシロキサン(以下、単に「変性オルガノポリシロキサン」とも称する)を用いることができる。

変性オルガノポリシロキサンは、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(1);

〔式中、R1は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、nは2又は3を示す。〕 で表される繰り返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなる変性オルガノポリシロキサンであって、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(A)と、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント(B)との質量比(A/B)が40/60以上98/2以下であり、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が30,000以上100,000以下である、変性オルガノポリシロキサンである。

変性オルガノポリシロキサンのオルガノポリシロキサンセグメント(A)と、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント(B)との質量比(A/B)は、被膜の耐摩擦性を向上する観点から、40/60以上が好ましく、55/45以上がより好ましく、65/35以上が更に好ましい。また、被膜を繊維状に形成させる観点から、98/2以下が好ましく、90/10以下がより好ましく、82/18以下が更に好ましい。

変性オルガノポリシロキサンにおいて、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントは、オルガノポリシロキサンセグメントを構成する任意のケイ素原子に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して少なくとも2つ結合することが可能であるが、両末端を除く1以上のケイ素原子に上記アルキレン基を介して結合していることが好ましく、両末端を除く2以上のケイ素原子に上記アルキレン基を介して結合していることがより好ましい。

オルガノポリシロキサンセグメントとポリ(N−アシルアルキレンイミン)との結合において介在するヘテロ原子を含むアルキレン基としては、窒素原子、酸素原子及び/又はイオウ原子を1〜3個含む炭素数2〜20のアルキレン基が挙げられる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。

ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントを構成するN−アシルアルキレンイミン単位は前記一般式(1)で表されるものであるが、一般式(1)において、R1の炭素数1〜22のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基等が例示される。

アラルキル基としては、例えば、炭素数7〜15のアラルキル基が例示され、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基等が例示される。

アリール基としては、例えば、炭素数6〜14のアリール基が例示され、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基等が例示される。

変性オルガノポリシロキサンにおけるオルガノポリシロキサンセグメント(A)と、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント(B)との質量比(A/B)は、40/60以上が好ましく、55/45以上がより好ましく、65/35以上が更に好ましく、また、98/2以下が好ましく、90/10以下がより好ましく、82/18以下が更に好ましい。

なお、本明細書において、質量比(A/B)は、オルガノポリシロキサンを重クロロホルム中に5質量%溶解させ、核磁気共鳴(1H−NMR)分析により、オルガノポリシロ キサンセグメント中のアルキル基又はフェニル基と、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント中のメチレン基の積分比より求めた値をいう。

また、変性オルガノポリシロキサンにおいて、隣接するポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWg)は、好ましくは1,300以上、より好ましくは1,500以上、更に好ましくは1,800以上であり、好ましくは32,000以下、より好ましくは10,000以下、更に好ましくは5,000以下である。

本明細書において、「隣接するポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメント」とは、下記式(2)に示すように、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントのオルガノポリシロキサンセグメントに対する結合点(結合点A)から、これに隣接するポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントの結合点(結合点B)までの2点間において破線で囲まれた部分であって、1つのR2SiO単位と、1つのR6と、y+1個のR22SiO単位とから構成されるセグメントをいう。また、「ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント」とは、上記R6に結合する−Z−R7をいう。

上記一般式(2)中、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜22のアルキル基又はフェニル基を示し、R6はヘテロ原子を含むアルキレン基を示し、R7は重合開始剤の残基を示し、−Z−R7はポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントを示し、yは正の数を示す。

MWgは、上記一般式(2)において破線で囲まれた部分の分子量であるが、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント1モル当たりのオルガノポリシロキサンセグメントの質量(g/mol)と解することができ、原料化合物であるオルガノポリシロキサンの官能基がポリ(N−アシルアルキレンイミン)で100%置換されると、変性オルガノポリシロキサンの官能基当量(g/mol)と一致する。

また、原料化合物であるオルガノポリシロキサンの官能基当量(g/mol)が分かっている場合には、MWgは、その官能基がポリ(N−アシルアルキレンイミン)で100%置換されなかった場合であっても、以下の式で算出することができる。

MWg=[オルガノポリシロキサンの官能基当量(g/mol)]÷[置換率(%)/100(%)]

また、オルガノポリシロキサンの官能基当量が分からない場合、MWgは、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの含有率(Csi)とポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)を用いて、下記式により求めることができる。

ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)は、N−アシルアルキレンイミン単位の分子量と重合度とから算出する方法又は後述するゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)測定法により測定することが可能であるが、本発明においてはGPC測定法により測定される数平均分子量をいうものとする。変性オルガノポリシロキサンのMWoxは、耐摩擦性に優れる観点から、好ましくは500以上、より好ましくは600以上、更に好ましくは700以上であり、また好ましくは5,500以下、より好ましくは3,500以下、更に好ましくは3,000以下である。

主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWsi)は、耐摩擦性に優れる観点から、7,000以上であって、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上であり、また、120,000以下であって、好ましくは80,000以下、より好ましくは60,000以下である。主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントは、原料化合物であるオルガノポリシロキサンと共通の骨格を有するため、MWsiは、原料化合物であるオルガノポリシロキサンの重量平均分子量と略同一である。なお、原料化合物であるオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、下記測定条件によるGPCで測定し、ポリスチレン換算したものである。

カラム :Super HZ4000+Super HZ2000(東ソー株式会社製) 溶離液 :1mMトリエチルアミン/THF 流量 :0.35mL/min カラム温度:40℃ 検出器 :UV サンプル :50μL

変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量(MWt)は、好ましくは10,000以上、更に好ましくは12,000以上、更に好ましくは24,000以上であり、また、好ましくは2000,000以下、より好ましくは150,000以下、更に好ましくは120,000以下、更に好ましくは92,000以下、更に好ましくは80,000以下である。これにより、十分な皮膜強度を有し、耐摩擦性に優れた被膜となる。本明細書において、MWtは、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量と、前述の質量比(A/B)とから求めることができる。

変性オルガノポリシロキサンは、例えば特開2009−024114号公報や国際公開第2011/062210号パンフレットで開示されている方法のような公知の製造方法により、製造することができる。

ウレタン系粘着剤としては、ポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン樹脂からなるものが挙げられる。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。

非イオン性ポリマーとしては特に限定されず、化粧料の分野に通常用いられる、非イオン性ポリマーであればいずれも使用することができる。前記液剤は、1種又は2種以上の非イオン性ポリマーを含むことができ、この非イオン性ポリマーと組み合わせて、1種以上のアニオン性、カチオン性及び/又は両性ポリマーを更に含むことができる。

非イオン性ポリマーの例としては、(メタ)アクリル系水溶性ノニオン重合体、(メタ)アクリル系非水溶性ノニオン重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、低鹸化ポリビニルアルコール(けん化度60mol%以下)、中性多糖及びその誘導体(そのエーテルやエステル等)が挙げられる。中性糖類及びその誘導体としては、中性ガム類(グアーガム、ヒドロキシプロピルグアー等)、セルロースエーテル(ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、その疎水化誘導体(HM−EHEC等))、デンプン及びその誘導体(デキストリン等)などが挙げられる。

以下に、前記(メタ)アクリル系水溶性ノニオン重合体、(メタ)アクリル系非水溶性ノニオン重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、低鹸化ポリビニルアルコール(けん化度60mol%以下)等の非イオン性ポリマーを構成可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物例を挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。 ノニオン性の単量体の例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−((メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸無水物;マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸ジエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系化合物;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N−ポリアルキレンオキシ(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリルアミドと炭素数2〜4のアルキレンオキシドとから誘導されるモノマー;N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルモルフォリン、アクリルアミド等の親水性ノニオン性モノマー;などが挙げられる。

これらのうち、(メタ)アクリル系非水溶性ノニオン重合体、ポリビニルピロリドン、低鹸化ポリビニルアルコール(けん化度60mol%以下)から選ばれる1種または2種以上が好ましい。市販品としては、例えば、MAS683(コスメディ製薬社製)、ポリビニルピロリドンK−90(BASF社製)やJMR−150L(日本酢ビポバール社製)を挙げることができる。

なお、本明細書において「(メタ)アクリル」の表記は「アクリル又はメタクリル」を意味する。

アニオン性ポリマーとしては特に限定されず、化粧料の分野に通常用いられるアニオン性ポリマーであればいずれも使用することができる。前記液剤は、1種又は2種以上のアニオン性ポリマーを含むことができ、このアニオン性ポリマーと組み合わせて、1種以上の非イオン性、カチオン性及び/又は両性ポリマーを更に含むことができる。

アニオン性ポリマーの例としては、例えば、アニオン性多糖及びその誘導体(アルギン酸塩、ペクチン、ヒアルロン酸塩等)、アニオン性ガム(キサンタンガム、デヒドロキサンタンガム、ヒドロキシプロピルキサンタンガム、アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム等)、アニオン性セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、(メタ)アクリル系水溶性アニオン重合体、アクリルアミド系水溶性アニオン重合体などが挙げられる。

以下に、前記(メタ)アクリル系水溶性アニオン重合体等のアニオン性ポリマーを構成可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物例を挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。アニオン性の単量体の例として、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸化合物;不飽和多塩基酸無水物(例えば無水コハク酸、無水フタル酸等)と、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)との部分エステル化合物;スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基を有する化合物;アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート等のリン酸基を有する化合物;等が挙げられる。これらのアニオン性不飽和単量体は、酸のままもしくは部分中和または完全中和して使用することができ、または酸のまま共重合に供してから部分中和または完全中和することもできる。中和に使用する塩基性化合物としては例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アンモニア水、モノ−、ジ−、トリ−エタノールアミン、トリメチルアミン等のアミン化合物がある。

これらのうち、アクリル系非水溶性アニオン重合体が特に好ましい。市販品としては、例えば、MASCOS10(コスメディ製薬社製)、HiPAS10(コスメディ製薬社製)を挙げることができる。

また、これら非イオン性ポリマーやアニオン性ポリマーを含む乳化増粘剤を用いることもできる。例えば、ポリアクリルアミド/(C13,C14)イソパラフィン/ラウレス−7(Seppic社製、Sepigel305)等が挙げられる。

カチオン性ポリマーとしては特に限定されず、化粧料の分野に通常用いられるカチオン性増粘性ポリマーであればいずれも使用することができる。前記液剤は1種又は2種以上のカチオン性ポリマーを含むことができ、このカチオン性ポリマーと組み合わせて、一種以上の非イオン性、アニオン性及び/又は両性ポリマーを更に含むことができる。

カチオン性ポリマーは、第四級アンモニウム基等のカチオン性基、又はカチオン性基にイオン化することができる第一級、第二級又は第三級アミノ基等の基を有するポリマーである。カチオン性ポリマーは、典型的には、アミン基若しくはアンモニウム基を高分子鎖の側鎖に含むポリマー又は構成単位としてジアリル四級アンモニウム塩を含むポリマーである。

好ましいカチオン性ポリマーとしては、例えば、カチオン化セルロース、カチオン性スターチ、カチオン性グアーガム、第四級アンモニウム側鎖を有するビニル系又は(メタ)アクリル系ポリマー又はコポリマー、四級化ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート/アミノアクリレートコポリマー、アミン置換ポリ(メタ)アクリレートクロスポリマー、(メタ)アクリル系水溶性カチオン重合体、アクリルアミド系水溶性カチオン重合体などが挙げられる。

以下に、前記(メタ)アクリル系水溶性カチオン重合体等のカチオン性ポリマーを構成可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物例を挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。カチオン性単量体の例として、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、p−ジメチルアミノメチルスチレン、p−ジメチルアミノエチルスチレン、p−ジエチルアミノメチルスチレン、p−ジエチルアミノエチルスチレン等を、カチオン化剤(例えば、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル類、ジメチル硫酸等のジアルキル硫酸類、N−(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド等の第3級アミン鉱酸塩のエピクロルヒドリン付加物、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等の無機塩、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸等)でカチオン化したカチオン性単量体が挙げられる。

カチオン化セルロースの具体例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドをヒドロキシエチルセルロースに付加することにより得られる第四級アンモニウム塩のポリマー(ポリクオタニウム−10)、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリドコポリマー(ポリクオタニウム−4)、並びにヒドロキシエチルセルロースをトリメチルアンモニウム置換エポキシド及びラウリルジメチルアンモニウム置換エポキシドと反応させることにより得られる第四級アンモニウム塩のポリマー(ポリクオタニウム−67)が挙げられる。

第四級アンモニウム側鎖を有するビニル系又は(メタ)アクリル系ポリマー又はコポリマーの例としては、ポリ(2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド)(ポリクオタニウム−37)を挙げることができる。

四級化ポリビニルピロリドンの具体例としては、ビニルピロリドン(VP)及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルのコポリマーと硫酸ジエチルとから合成される第四級アンモニウム塩(ポリクオタニウム−11)が挙げられる。

(メタ)アクリレート/アミノアクリレートコポリマーの例としては、(アクリレーツ/アミノアクリレーツ/C10−30アルキルPEG−20イタコン酸)コポリマーを挙げることができる。

アミン置換ポリ(メタ)アクリレートクロスポリマーの例としては、ポリアクリレート−1 クロスポリマー、ポリクオタニウム−52を挙げることができる。

これらの中で、アクリルアミド系水溶性カチオン重合体が特に好ましい。市販品としては、例えば、t−ブチルアクリルアミド/エチルアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体(RP77S、花王製)を挙げることができる。

両性ポリマーは、カチオン性基及びアニオン性基の両方を含むポリマーである。構造的な観点からいえば、両性ポリマーは、上述のカチオン性ポリマーのいずれかにアニオン性基又はコモノマーを更に導入することによって誘導することができる。

両性ポリマーとしては、化粧料の分野に通常用いられる両性ポリマーであればいずれも使用することができる。前記液剤は1種又は2種以上の両性ポリマーを含むことができ、この両性ポリマーと組み合わせて非イオン性、アニオン性及び/又はカチオン性ポリマーを更に含むことができる。

両性ポリマーの例としては、カルボキシル変性又はスルホン酸変性カチオン性多糖(カルボキシメチルキトサン等)、ホスホベタイン基やスルホベタイン基を側鎖に有する(メタ)アクリレート系ポリマーや、(メタ)アクリル系両イオン性重合体などがあげられる。

以下に、前記(メタ)アクリル系両イオン性重合体等の両性ポリマーを構成可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物例を挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。両イオン性単量体の具体例としては、前述のカチオン性単量体前駆体の具体例に、ハロ酢酸ナトリウムもしくはカリウム等の変性化剤を作用させることによって得られる化合物が挙げられる。また、分極性単量体の具体例としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピオン酸ビニル、p−ジメチルアミノメチルスチレン、p−ジメチルアミノエチルスチレン、p−ジエチルアミノメチルスチレン、p−ジエチルアミノエチルスチレン等のアミンオキサイド化物;等が挙げられる。

他の例としては、カチオン性ビニル系又は(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル酸とのコポリマー(ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸コポリマー(ポリクオタニウム−22)等)が挙げられる。

粘着性ポリマーは被膜の耐摩擦性が向上する観点から適宜選択される。粘着性ポリマーの粘着力は、以下の方法で測定される成分(a)を溶媒とした30質量%濃度でのポリマーの粘着力が0.1N/10mm以上であることが好ましく、0.2N/10mm以上であることがより好ましく、0.5N/10mm以上であることがさらに好ましく、1.0N/10mm以上であることが殊更に好ましい。また、被膜の安定した繊維形成性の観点から、ポリマーの粘着力は、100N/10mm以下であることが好ましく、50N/10mm以下であることがより好ましく、40N/10mm以下であることがさらに好ましい。具体的な範囲としては、0.2N/10mm以上100N/10mm以下が好ましく、0.5N/10mm以上50N/10mm以下がより好ましく、1.0N/10mm以上40N/10mm以下がさらに好ましい。

<ポリマーの粘着力の評価方法> 室温(20℃)において成分(c)のポリマーを成分(a)に30質量%濃度で溶解し、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人製、テトロンG2、厚み25μm)にバーコーターでウェット膜厚約41μmとなるように塗布する。常温常湿環境下で10分間乾燥したら、150mm×150mmに切り出した同PETフィルムを該塗布面に0.01kgf/cm2の圧力で3分間押し付ける。該フィルムを10mm幅の短冊状に切り出し、端面を約20mm剥離し、その剥離したフィルムの両端をつまみ、180°剥離試験機(IPT200−5N、株式会社イマダ製)にて、180°方向に引っ張ることで付着力を測定した。引張速度は500mm/分であり、最大荷重点をポリマーの粘着力(N/10mm)とした。なお表1に記載された実施例、比較例のポリマーの粘着力は全て成分(a)としてエタノール(和光純薬工業(株)社製:商品名エタノール(99.5))を用いて評価した。

(c)成分である成分(b)以外の粘着性ポリマーの噴霧用組成物中の含有量は、被膜の密着性を向上させる観点、被膜の耐摩擦性を向上させる観点、及び被膜の感触の観点から、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましい。また、同様の観点から30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上25質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。

噴霧用組成物中の成分(b)と成分(c)の含有量の質量比(b/c)は、成分(b)のポリマー同士の粘着性を高めて被膜の皮膚等への密着性、被膜の耐摩擦性を向上する観点から、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは1以上であり、さらに好ましくは2以上であり、殊更に好ましくは3以上であり、同様の観点から好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下であり、殊更に好ましくは5以下である。

噴霧用組成物は、成分(c)の分散性、及び静電噴霧する場合の荷電のしやすさと繊維形成性とのバランスの観点、成分(b)との併用による被膜の密着性の向上の観点から、さらに成分(d)水を含むことが好ましい。噴霧用組成物中の成分(d)の含有量は、上記の観点から、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.35質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.4質量%以上である。噴霧用組成物中の成分(c)の含有量は、繊維形成性の観点から、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは19質量%以下であり、さらに好ましくは18質量%以下であり、よりさらに好ましくは10質量%以下である。

噴霧用組成物における成分(c)と成分(d)の含有量の質量比(c/d)は、被膜の密着性と耐摩擦性のさらなる向上の観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは50以下であり、より好ましくは40以下であり、さらに好ましくは30以下である。

噴霧用組成物中には、上述した成分(a)、成分(b)及び成分(c)のみが含まれていてもよく、あるいは成分(a)、成分(b)及び成分(c)に加えて他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば(d)水、成分(b)の被膜形成能を有するポリマーの可塑剤、着色顔料、体質顔料、染料、界面活性剤、香料、忌避剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、各種ビタミン等が挙げられる。噴霧用組成物中に他の成分が含まれる場合、当該他の成分の含有量は、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。

更に、噴霧用組成物中にグリコールを含有することができる。グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。静電スプレー法を行うときに成分(a)を十分に揮発させることができ、粉体の二次凝集を抑制する観点から、噴霧用組成物中に10質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が好ましく、実質含まないことが好ましい。

噴霧用組成物中には、着色顔料、体質顔料等の粉体を含有してもよいが、20℃で粒径が0.1μm以上の粉体の含有量は、均一な被膜の形成性、被膜の耐久性や密着性の観点から、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、不可避的に混入する場合を除き含有していないことが好ましい。

本発明においては、前記噴霧用組成物を、直接皮膚に静電スプレーすることを特徴とする。

静電スプレー法を行う場合、噴霧用組成物として、その粘度が、25℃において、好ましくは1mPa・s以上、更に好ましくは10mPa・s以上、一層好ましくは50mPa・s以上であるものを用いる。また粘度が、25℃において、好ましくは5000mPa・s以下、更に好ましくは2000mPa・s以下、一層好ましくは1500mPa・s以下であるものを用いる。噴霧用組成物の粘度は、25℃において、好ましくは1mPa・s以上5000mPa・s以下であり、更に好ましくは10mPa・s以上2000mPa・s以下であり、一層好ましくは50mPa・s以上1500mPa・s以下である。この範囲の粘度を有する噴霧用組成物を用いることで、静電スプレー法によって多孔性被膜、特に繊維の堆積物からなる多孔性被膜を首尾よく形成することができる。多孔性被膜の形成は、被膜の密着性、耐摩擦性、被膜の透明性、被膜感の抑制、皮膚の蒸れ防止等の観点から有利なものである。噴霧用組成物の粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定される。E型粘度計としては例えば東京計器株式会社製のE型粘度計を用いることができる。その場合のローターとしては、ローターNo.43を用いることができる。回転数は粘度に応じた適切な回転数が選択され、1300mPa・S以上の粘度は5rpm、250mPa・S以上1300mPa・S未満の粘度は10rpm、25mPa・S以上250mPa・S未満の粘度は50rpm、25mPa・S未満の粘度は100rpmとする。

噴霧用組成物は静電スプレー法によって、ヒトの皮膚の目的の部位に直接噴霧される。ここで皮膚には、爪も含まれる。静電スプレー法は、静電スプレー装置を用い、皮膚に噴霧用組成物を静電スプレーする工程を含む。静電スプレー装置は、基本的に、前記組成物を収容する容器と、前記組成物を吐出するノズルと、前記容器中に収容されている前記組成物を前記ノズルに供給する供給装置と、前記ノズルに電圧を印加する電源とを有する。

図1には、本発明で好適に用いられる静電スプレー装置の構成を表す概略図が示されている。同図に示す静電スプレー装置10は、低電圧電源11を備えている。低電圧電源11は、数Vから十数Vの電圧を発生させ得るものである。静電スプレー装置10の可搬性を高める目的で、低電圧電源11は1個又は2個以上の電池からなることが好ましい。また、低電圧電源11として電池を用いることで、必要に応じ取り替えを容易に行えるという利点もある。電池に代えて、ACアダプタ等を低電圧電源11として用いることもできる。

静電スプレー装置10は、高電圧電源12も備えている。高電圧電源12は、低電圧電源11と接続されており、低電圧電源11で発生した電圧を高電圧に昇圧する電気回路(図示せず)を備えている。昇圧電気回路は一般にトランス、キャパシタ及び半導体素子等から構成されている。

静電スプレー装置10は、補助的電気回路13を更に備えている。補助的電気回路13は、上述した低電圧電源11と高電圧電源12との間に介在し、低電圧電源11の電圧を調整して高電圧電源12を安定的に動作させる機能を有する。更に補助的電気回路13は、後述するマイクロギヤポンプ14に備えられているモータの回転数を制御する機能を有する。モータの回転数を制御することで、後述する噴霧用組成物の容器15からマイクロギヤポンプ14への噴霧用組成物の供給量が制御される。補助的電気回路13と低電圧電源11との間にはスイッチSWが取り付けられており、スイッチSWの入り切りによって、静電スプレー装置10を運転/停止できるようになっている。

静電スプレー装置10は、ノズル16を更に備えている。ノズル16は、金属を初めとする各種の導電体や、プラスチック、ゴム、セラミックなどの非導電体からなり、その先端から噴霧用組成物の吐出が可能な形状をしている。ノズル16内には噴霧用組成物が流通する微小空間が、該ノズル16の長手方向に沿って形成されている。この微小空間の横断面の大きさは、直径で表して100μm以上1000μm以下であることが好ましい。 ノズル16は、管路17を介してマイクロギヤポンプ14と連通している。管路17は導電体でもよく、あるいは非導電体でもよい。また、ノズル16は、高電圧電源12と電気的に接続されている。これによって、ノズル16に高電圧を印加することが可能になっている。この場合、ノズル16に人体が直接触れた場合に過大な電流が流れることを防止するために、ノズル16と高電圧電源12とは、電流制限抵抗19を介して電気的に接続されている。

管路17を介してノズル16と連通しているマイクロギヤポンプ14は、容器15中に収容されている噴霧用組成物をノズル16に供給する供給装置として機能する。マイクロギヤポンプ14は、低電圧電源11から電源の供給を受けて動作する。また、マイクロギヤポンプ14は、補助的電気回路13による制御を受けて所定量の噴霧用組成物をノズル16に供給するように構成されている。

マイクロギヤポンプ14には、フレキシブル管路18を介して容器15が接続されている。容器15中には噴霧用組成物が収容されている。容器15は、カートリッジ式の交換可能な形態をしていることが好ましい。

以上の構成を有する静電スプレー装置10は、例えば図2に示すように使用することができる。図2には、片手で把持できる寸法を有するハンディタイプの静電スプレー装置10が示されている。同図に示す静電スプレー装置10は、図1に示す構成図の部材のすべてが円筒形の筐体20内に収容されている。筐体20の長手方向の一端10aには、ノズル(図示せず)が配置されている。ノズルは、その組成物の吹き出し方向を、筐体20の縦方向と一致させて、肌側に向かい凸状になるように該筐体20に配置されている。ノズル先端が筐体20の縦方向においてに肌に向かい凸状になるように配置されていることによって、筐体に噴霧用組成物が付着しにくくなり、安定的に被膜を形成することができる。

静電スプレー装置10を動作させるときには、使用者、すなわち静電スプレーによって皮膚上の目的の部位上に被膜を形成する者が該装置10を手で把持し、ノズル(図示せず)が配置されている該装置10の一端10aを、静電スプレーを行う適用部位に向ける。図2では、使用者の前腕部内側に静電スプレー装置10の一端10aを向けている状態が示されている。この状態下に、装置10のスイッチをオンにして静電スプレー法を行う。装置10に電源が入ることで、ノズルと皮膚との間には電界が生じる。図2に示す実施形態では、ノズルに正の高電圧が印加され、皮膚が負極となる。ノズルと皮膚との間に電界が生じると、ノズル先端部の噴霧用組成物は、静電誘導によって分極して先端部分がコーン状になり、コーン先端から帯電した噴霧用組成物の液滴が電界に沿って、皮膚に向かって空中に吐出される。空間に吐出され且つ帯電した噴霧用組成物から溶媒である成分(a)が蒸発していくと、噴霧用組成物表面の電荷密度が過剰となり、クーロン反発力によって微細化を繰り返しながら空間に広がり、皮膚に到達する。この場合、噴霧用組成物の粘度を適切に調整することで、噴霧された該組成物を液滴の状態で適用部位に到達させることができる。あるいは、空間に吐出されている間に、溶媒である揮発性物質を液滴から揮発させ、溶質である被膜形成能を有するポリマーを固化させつつ、電位差によって伸長変形させながら繊維を形成し、その繊維を適用部位に堆積させることもできる。例えば、噴霧用組成物の粘度を高めると、該組成物を繊維の形態で適用部位に堆積させやすい。これによって、繊維の堆積物からなる多孔性被膜が適用部位の表面に形成される。紫外線防御剤を含む繊維の堆積物からなる多孔性被膜は、ノズルと皮膚との間の距離や、ノズルに印加する電圧を調整することでも形成することが可能である。

静電スプレー法を行っている間は、ノズルと皮膚との間に高い電位差が生じている。しかし、インピーダンスが非常に大きいので、人体を流れる電流は極めて微小である。例えば通常の生活下において生じる静電気によって人体に流れる電流よりも、静電スプレー法を行っている間に人体に流れる電流の方が数桁小さいことを、本発明者は確認している。

静電スプレー法によって紫外線防御剤を含む繊維の堆積物を形成する場合、該繊維の太さは、円相当直径で表した場合、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることが更に好ましい。また3000nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることが更に好ましい。繊維の太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって、繊維を10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(繊維の塊、繊維の交差部分、液滴)を除き、繊維を任意に10本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き、繊維径を直接読み取ることで測定することができる。

静電スプレー法によって形成された繊維の堆積物である被膜は、構成する繊維の表面側に、成分(c)が存在する担持被膜を有している。繊維の表面側とは、表面あるいは、表面の一部、繊維間を意味する。噴霧用組成物における成分(c)の含有量が、水不溶性ポリマーと成分(c)との親和性にも依存するが、概ね0.5質量%以上であれば、構成する繊維の表面あるいは繊維間に成分(c)が存在することにより繊維同士が粘着性ポリマーによって柔軟に連結が強化されることにより、外部からの摩擦に対して被膜が破れたり、剥がれたりすることを防止することができる。なお、これらの密着性や耐摩擦性に加えて、透明性は、後述する液剤塗布によりさらに増強される。

汗や皮脂などを含む皮膚の場合、繊維中に成分(c)が複合されることで、繊維が膨潤し可塑化しやすくなる。例えば、同じ組成物を、水分や油分を含まない金属表面と、水分や油分を含む肌表面、例えば手のひらに対して5秒間静電スプレーして薄膜を作製した場合、繊維径の変化を経時観察すると、肌表面に静電スプレーされた繊維は、金属表面に静電スプレーされた繊維よりも、膨潤により経時で大径化する。このように、静電スプレーにより形成された、繊維を含む被膜が、皮膚中の油分や水分で可塑化して一層柔らかくなることで、繊維そのものの皮膚のキメへの追従性が向上し、また繊維から成分(c)がブリードアウトして、繊維表面や繊維と繊維の間に存在することで、繊維を含む被膜が半透明または透明化し、見た目の自然さが付与される。被膜形成対象物が汗や皮脂などを含む皮膚の場合、膨潤による繊維径は以下の(1)式を満たす。 (皮膚に対して紡糸し、30秒後の繊維径)>(金属板に対して紡糸し、30秒後の繊維径)・・・(1)

噴霧用組成物である成分(a)、成分(b)、成分(c)の含有量は以下のようにして測定する。揮発性物質である成分(a)は形成された被膜に存在せず、又は存在しても揮発するため、形成された被膜には成分(b)、成分(c)のみが含有される状態で測定し、その含有量は以下のようにして測定する。

<噴霧用組成物の成分(a)、成分(b)、成分(c)の含有量の測定法> 溶液状態にて液体クロマトグラフ(HPLC)による分離同定や、赤外分光光度計(IR)にて同定する方法がある。液体クロマトグラフでは、分子量の大きい成分から溶出するため、分子量の予測や、成分の溶出位置によって組成を同定することもできる。IR分析では個々の吸収体より官能基を帰属し同定することも可能であり、一般的には市販添加剤の標準チャートと成分のIRチャートを比較することで同定することが可能である。

<形成された被膜における成分(b)、成分(c)の含有量の測定法> 被膜を溶解可能な溶媒の探索を行い、溶媒に被膜を溶解後、液体クロマトグラフ(HPLC)による分離同定や、赤外分光光度計(IR)にて同定する。

被膜を形成する前記繊維は、製造の原理上は無限長の連続繊維となるが、少なくとも繊維の太さの100倍以上の長さを有することが好ましい。本明細書においては、繊維の太さの100倍以上の長さを有する繊維のことを「連続繊維」と定義する。そして、静電スプレー法によって製造される被膜は、連続繊維の堆積物からなる多孔性の不連続被膜であることが好ましい。このような形態の被膜は、集合体として1枚のシートとして扱えるだけでなく、非常に柔らかい特徴を持っており、それに剪断力が加わってもばらばらになりにくく、身体の動きへの追従性に優れるという利点がある。また、被膜の完全除去が容易であるという利点もある。これに対して、細孔を有さない連続被膜は剥離が容易でなく、また汗の放散性が低いので、皮膚に蒸れが生じる虞がある。また、粒子の集合体からなる多孔性の不連続被膜は、被膜を完全に除去するために、被膜全体に摩擦をかける等の動作が必要となるなど、皮膚へのダメージなく完全除去することは困難である。

静電スプレー装置10を用いた静電スプレー工程において、静電スプレーされ繊維状となった噴霧用組成物は、成分(a)が蒸発しながら、成分(b)、成分(c)及びが帯電した状態で皮膚に直接到達する。先に述べたとおり皮膚も帯電しているので、繊維は静電力によって一枚の膜の形態で皮膚に密着する。皮膚の表面には肌理等の微細な凹凸が形成されているので、その凹凸によるアンカー効果と相まって繊維は一枚の膜の形態で皮膚の表面に一層密着する。このようにして静電スプレーが完了したら、静電スプレー装置10の電源を切る。これによってノズルと皮膚との間の電界が消失し、皮膚の表面は電荷が固定化される。その結果、一枚の膜の形態の被膜の密着性が一層発現し、着用中に被膜の際からの剥離がし難く、使用中の耐久性が向上する。また、被膜を構成する繊維が成分(c)を含有しているので、皮膚に別途液体を塗布しなくても、皮膚に被膜を十分に密着させることができる。この理由としては、成分(c)が繊維中(繊維の表面や繊維の間)に存在することで、繊維自体が柔らかくなり、あるいは繊維同士の粘着性や皮膚等への対象物への密着性により微細な凹凸面への追従性が高まることや、成分(c)が繊維表面に存在することで繊維と皮膚との間を架橋するためと考えられる。

ノズルと皮膚との間の距離は、ノズルに印加する電圧にも依存するが、50mm以上、150mm以下であることが、被膜を首尾よく形成するうえで好ましい。ノズルと皮膚との間の距離は、一般的に用いられる非接触式センサ等で測定することができる。

静電スプレー法によって形成された被膜が多孔性のものであるか否かを問わず、被膜の坪量は、0.1g/m2以上であることが好ましく、1g/m2以上であることが更に好ましい。また50g/m2以下であることが好ましく、40g/m2以下であることが更に好ましい。例えば被膜の坪量は、0.1g/m2以上50g/m2以下であることが好ましく、1g/m2以上40g/m2以下であることが更に好ましい。被膜の坪量をこのように設定することで、被膜の密着性、耐摩擦性を向上し、液剤の付与による透明性を向上させることができる。

なお、皮膚に組成物を直接に静電スプレーして被膜を形成する静電スプレー工程とは、皮膚に静電スプレーして、被膜を形成する工程を意味する。組成物を皮膚以外の場所に静電スプレーして繊維からなるシートを作製し、そのシートを皮膚に塗布や貼付して被膜を形成する工程は、前記静電スプレー工程とは異なる。

本発明においては、上述した静電スプレーによって皮膚上に被膜を形成する静電スプレー工程の前又は後に、20℃で液体の油を含有する液剤を静電スプレー以外の方法で皮膚に塗布する工程を行ってもよい。液剤塗布工程を行うことで、静電スプレー工程で形成される被膜が、適用部位になじみやすくなり、該被膜が皮膚に高密着化することが可能となり、透明化することもできる。例えば、被膜の端部と皮膚との間に段差が生じにくくなり、それによって被膜と皮膚との密着性が向上する。その結果、被膜の剥離や破れ等が生じにくくなる。より好ましい態様である、被膜が繊維の堆積物からなる多孔性被膜である場合、高い空隙率であるにもかかわらず皮膚との密着性が高く、また大きな毛管力が発生しやすい。更に、繊維が微細である場合には多孔性被膜を高比表面積化することが容易となる。

特に、静電スプレー工程において繊維の堆積物からなる多孔性被膜を形成した後に、液剤塗布工程を行うことにより、該多孔性被膜を形成する繊維間、及び/又は繊維表面に該液剤が存在する被膜が形成される。これによって、被膜の密着性が向上し、目視における被膜の透明性が維持又は向上する。特に被膜が無色透明あるいは有色透明である場合には、より被膜を視認しにくくなることによって、自然な皮膚のように見せることができる。また、被膜が有色透明である場合には、被膜に透明感が出るため、皮膚の一部のように見せることができる。

20℃において液体の油としては、例えば流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;トリグリセリン脂肪エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、モノアルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油などが挙げられる。これらのうち、塗布時の滑らかさなどの使用感の点から、炭化水素油、エステル油、シリコーン油等のが好ましく、炭化水素油、エステル油がより好ましい。また、これらから選ばれる液体油を1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、2種以上のトリグリセリン脂肪酸エステル等を含むホホバ油、オリーブ油等の植物油、液状ラリン等の動物油を用いることもできる。

前記炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン等が挙げられ、使用感の観点から流動パラフィン、スクワランが好ましい。また、静電噴霧された被膜を皮膚に密着させる観点から、炭化水素油の30℃における粘度は、好ましくは10mPa・s以上であり、より好ましくは30mPa・s以上である。かかる観点から、30℃において粘度が10mPa・s未満である、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテンの液剤中の合計の含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、より更に好ましくは0.5質量%以下であり、含有しなくてもよい。 同様に、静電噴霧された被膜を皮膚に密着させる観点から、エステル油及びシリコーン油の30℃における粘度は、好ましくは10mPa・s以上であり、より好ましくは30mPa・s以上である。 ここでの粘度は、30℃においてBM型粘度計(トキメック社製、測定条件:ローターNo.1、60rpm、1分間)により測定される。 なお、同様の観点から、セチル−1,3−ジメチルブチルエーテル、ジカプリルエーテル、ジラウリルエーテル、ジイソステアリルエーテル等のエーテル油の液剤中の合計の含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。

また、前記液体油として、20℃において液体の油も好ましく用いることができ、その例としてはエステル油、エステル油を含む植物油(トリグリセライド)、分岐脂肪酸あるいは不飽和脂肪酸の高級アルコール、防腐剤、シリコーン油等が挙げられる。これらの液体油は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

前記エステル油としては、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸と、直鎖又は分岐鎖のアルコール又は多価アルコールからなるエステルが挙げられる。具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、ナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が挙げられる。

これらの中では、静電噴霧された被膜を皮膚に密着させる観点及び皮膚に塗布した際の感覚に優れる点から、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、セテアリルイソノナノエート、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。

トリグリセライドとしては、脂肪酸トリグリセライドが好ましく、例えばオリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油などに含まれる。

高級アルコールとしては、炭素数12〜20の液状の高級アルコールが挙げられ、具体的にはイソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。

防腐剤としてはフェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、エチルヘキサンジオール等が挙げられる。

シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。 25℃におけるシリコーン油の動粘度は、静電噴霧された被膜を皮膚に密着させる観点から、3mm2/sが好ましく、4mm2/sがより好ましく、5mm2/s以上が更に好ましく、30mm2/s以下が好ましく、20mm2/s以下がより好ましく、10mm2/s以下が更に好ましい。 これらの中でもでは、静電噴霧された被膜を皮膚に密着させる観点から、ジメチルポリシロキサンを含むことが好ましい。

前記液剤中の液体油の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは5質量%以上である。また、好ましくは100質量%以下である。液剤中における液体油の含有量は、好ましくは0.1質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上100質量%以下である。

また、前記液剤には、さらにポリオールが含まれていてもよい。ポリオールを含む場合、該ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール等のアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類等が挙げられる。これらのうち、塗布時の滑らかさなどの使用感の点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリンが好ましく、更にプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリンがより好ましく、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールが一層好ましい。

液剤は、25℃において5000mPa・s程度以下の粘性を有することが、静電スプレー法によって形成された被膜と適用部位との密着性の向上の点から好ましい。液体の粘度の測定方法は、上述したとおりである。

液体油を含む液剤を皮膚に塗布するには、静電スプレー以外の種々の方法を用いることができる。例えば、滴下や振りかけ等の方法によって液剤を皮膚に施し、該液剤を塗り広げる工程を備えることにより、皮膚又は被膜になじませることが可能となり、該液剤の薄層を形成することができる。液剤を塗り広げる工程は、例えば使用者本人の指や、アプリケータ等の道具を用いた擦過などの方法を採用することができる。液剤を単に滴下したり振りかけたりしただけでもよいが、塗り広げる工程を備えることにより、皮膚又は被膜になじませることが可能となり、被膜の密着性を十分に向上させることができる。別法として、液剤を皮膚に噴霧して該液剤の薄層を形成することもできる。この場合には、別途の塗り広げは格別必要ないが、噴霧後に塗り広げの操作を行うことは妨げられない。なお、被膜の形成後に液剤を施す場合には、十分な液剤を皮膚に適用し、余分の液剤はシート材を液剤の施した範囲に接触させる工程により、余剰の液剤を除去することができる。

液剤を皮膚に塗布する量は、皮膚と被膜との密着性が向上するのに必要十分な量とすればよい。液剤中に液体油が含まれている場合には、皮膚と被膜との密着性を確実にする観点から、液剤を皮膚に施す量は、液体油の坪量が好ましくは0.1g/m2以上であり、より好ましくは0.2g/m2以上となるような量とし、好ましくは40g/m2以下であり、より好ましくは35g/m2以下となるような量とする。例えば、液剤を皮膚に施す量は、液体油の坪量が好ましくは0.1g/m2以上40g/m2以下、より好ましくは0.2g/m2以上35g/m2以下となるような量とする。 また、液剤を皮膚に、又は被膜に施す量は、皮膚と被膜の密着性を向上させる観点、透明性を向上させる観点から、好ましくは5g/m2以上であり、より好ましくは10g/m2以上であり、更に好ましくは15g/m2以上であり、好ましくは50g/m2以下であり、より好ましくは45g/m2以下である。

以上のとおりの本発明の被膜の製造方法は、人体の手術、治療又は診断方法を目的としない美容方法として有用なものである。

以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、自己の皮膚に被膜を形成させたい者が静電スプレー装置10を把持し、該装置10の導電性ノズルとその者の皮膚との間に電界を生じさせたが、両者間に電界が生じる限り、自己の皮膚に被膜を形成させたい者が静電スプレー装置10を把持する必要はない。

上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の被膜の製造方法を開示する。 <1>成分(a)、成分(b)及び成分(c)を含む組成物を、直接皮膚に静電スプレーすることを特徴とする皮膚上への被膜の製造方法。 (a)アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、 (b)被膜形成能を有する水不溶性ポリマー、 (c)成分(b)以外の粘着性ポリマー。

<2>さらに、静電スプレー工程の前又は後に、20℃で液体の油を含有する液剤を静電スプレー以外の手段で皮膚に塗布する工程を有する<1>記載の被膜の製造方法。 <3>(c)粘着性ポリマーが、非イオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーから選択される少なくとも1種である<1>又は<2>記載の被膜の製造方法。 <4>(c)粘着性ポリマーが、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン粘着剤から選択される少なくとも1種である<1>〜<3>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <5>(c)粘着性ポリマーが、変性ポリオルガノシロキサンである<1>〜<4>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <6>変性ポリオルガノシロキサンのオルガノポリシロキサンセグメント(A)と、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント(B)との質量比(A/B)が60/40以上である<5>記載の被膜の製造方法。 <7>(c)粘着性ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸C1−C20アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸C1−C20アルキルエステルをベースモノマーとし、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニルから選ばれる副モノマーとするコポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリアクリル系粘着剤である<1>〜<4>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <8>(c)粘着性ポリマーが、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンゴム、ポリイソブチレン、イソプレンゴム及びシリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種である<1>〜<4>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <9>(c)粘着性ポリマーの粘着力が、0.1N/10mm以上であることが好ましく、0.2N/10mm以上であることがより好ましく、0.5N/10mm以上であることがさらに好ましく、1.0N/10mm以上であることが殊更に好ましく、また、100N/10mm以下であることが好ましく、50N/10mm以下であることがより好ましく、40N/10mm以下であることがさらに好ましい<1>〜<8>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <10>粘着性ポリマーの噴霧用組成物中の含有量が、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましく、また、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい<1>〜<9>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <11>噴霧用組成物中の成分(b)と成分(c)の含有量の質量比(b/c)が、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上であり、さらに好ましくは2以上であり、殊更に好ましくは3以上であり、また、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下であり、殊更好ましくは5以下である<1>〜<10>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <12>噴霧用組成物中の成分(a)と成分(b)の含有量の質量比(a/b)が、好ましくは150以下であり、より好ましくは100以下であり、さらに好ましくは70以下であり、殊更好ましくは50以下であり、また、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは5以上である<1>〜<11>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <13>噴霧用組成物が、さらに成分(d)水を含むことが好ましく、噴霧用組成物中の成分(d)の含有量は、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.35質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.4質量%以上であり、また好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは19質量%以下であり、よりさらに好ましくは18質量%以下である<1>〜<12>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <14>噴霧用組成物における成分(c)と成分(d)の含有量の質量比(c/d)が、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは50以下であり、より好ましくは40以下であり、さらに好ましくは30以下である<13>記載の被膜の製造方法。 <15>前記静電スプレーが、前記組成物を収容する容器と、前記組成物を吐出するノズルと、前記容器中に収容されている前記組成物を前記ノズルに供給する供給装置と、前記ノズルに電圧を印加する電源とを有する静電スプレー装置を用いて行なわれる<1>〜<14>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <16>成分(a)の揮発性物質はその蒸気圧が20℃において0.01kPa以上、106.66kPa以下であることが好ましく、0.13kPa以上、66.66kPa以下であることがより好ましく、0.67kPa以上、40.00kPa以下であることが更に好ましく、1.33kPa以上、40.00kPa以下であることがより一層好ましい前記<1>〜<15>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <17>成分(a)の揮発性物質がアルコールであり、該アルコールとして一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、及び一価の芳香族アルコールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、該アルコールとして、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、プロパノール、及びペンタノールから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、前記<1>〜<16>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <18>成分(a)の揮発性物質が、エタノール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノール、及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種であり、更に好ましくはエタノールを含むものである前記<1>〜<17>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <19>水不溶性である被膜形成能を有するポリマーが、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール(けん化度98mol%以上)、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール(けん化度60mol%以上98mol%以下)、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上の水不溶性ポリマーであり、より好ましくは、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール(けん化度98mol%以上)、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール(けん化度60mol%以上98mol%以下)、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリ乳酸、ツエインから選ばれる1種又は2種以上の水不溶性ポリマーであり、さらに好ましくはポリビニルブチラール樹脂及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種又は2種以上である前記<1>〜<18>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <20>前記組成物における成分(a)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが一層好ましく、また98質量%以下であることが好ましく、96質量%以下であることが更に好ましく、94質量%以下であることが一層好ましく、前記組成物における成分(a)の含有量は、50質量%以上98質量%以下であることが好ましく、55質量%以上96質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以上94質量%以下であることが一層好ましい前記<1>〜<19>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <21>前記組成物における成分(b)の含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、14質量%以上であることが更に好ましく、2質量%以上であることが一層好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、また45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることが更に好ましく、30質量%以下であることが一層好ましく、25質量%以下であることが更に好ましく、前記組成物における成分(b)の含有量は、0.5質量%以上45質量%以下であることが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることが更に好ましく、2質量%以上30質量%以下であることが一層好ましく、5質量%以上25質量%以下であることが更に好ましい前記<1>〜<20>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。 <22>静電スプレー法を静電スプレー装置を用いて行い、 前記静電スプレー装置はノズルを備えており、 前記ノズルは、金属を初めとする各種の導電体、又はプラスチック、ゴム、セラミックなどの非導電体からなり、その先端から前記組成物の吐出が可能な形状をしている前記<1>ないし<21>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <23>静電スプレー法を静電スプレー装置を用いて行い、 前記静電スプレー装置はノズル及び筐体を備えており、 前記筐体の長手方向の一端に、前記ノズルが配置されており、 前記ノズルは、前記組成物の吹き出し方向を、前記筐体の縦方向と一致させて、肌側に向かい凸状になるように該筐体に配置されている前記<1>〜<22>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <24>噴霧された該組成物を、溶媒である揮発性物質を液滴から揮発させ、溶質である被膜形成能を有するポリマーを固化させつつ、電位差によって伸長変形させながら繊維を形成する前記<1>〜<23>のいずれかに記載の被膜の製造方法。

<25>静電スプレー法を静電スプレー装置を用いて行い、 前記静電スプレー装置はノズルを備えており、 前記ノズルと皮膚との間の距離を、50mm以上、150mm以下にする前記<1>ないし<24>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <26>静電スプレー法によって形成された被膜の坪量は、0.1g/m2以上であることが好ましく、1g/m2以上であることが更に好ましく、30g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以下であることが更に好ましく、被膜の坪量は、0.1g/m2以上30g/m2以下であることが好ましく、1g/m2以上20g/m2以下であることが更に好ましい前記<1>〜<25>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <27>成分(a)が、少なくともエタノールを含む揮発性物質であり、成分(b)が、ポリビニルブチラール樹脂及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種又は2種以上である<1>〜<26>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <28>成分(a)が、少なくともエタノールを含む揮発性物質であり、さらに10質量%以下のグリコールを含む<1>〜<27>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <29>成分(a)が、少なくともエタノールを含む揮発性物質であり、揮発性物質中のエタノールの含有量が50質量%以上100質量%であり、10質量%以下のグリコールを含む<1>〜<28>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <30>成分(a)の含有量が前記組成物中に30質量%以上98質量%以下、成分(b)の含有量が、噴霧用組成物中に2質量%以上50質量%以下、成分(c)の含有量が、噴霧用組成物中に0.001質量%以上50質量%以下である<1>〜<29>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <31>成分(a)の含有量が前記組成物中に55質量%以上96質量%以下、成分(b)の含有量が、噴霧用組成物中に4質量%以上45質量%以下、成分(c)の含有量が、噴霧用組成物中に0.5質量%以上30質量%以下である<1>〜<29>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <32>成分(a)の含有量が前記組成物中に60質量%以上94質量%以下、成分(b)の含有量が、噴霧用組成物中に6質量%以上40質量%以下、成分(c)の含有量が、噴霧用組成物中に1質量%以上2.5質量%以下である<1>〜<29>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <33>成分(a)が、少なくともエタノールを含む揮発性物質であり、成分(b)が、ポリビニルブチラール樹脂及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種又は2種以上である<1>〜<32>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <34>成分(a)が、少なくともエタノールを含む揮発性物質であり、さらに10質量%以下のグリコールを含む<1>〜<33>のいずれかに記載の被膜の製造方法。 <35>成分(a)が、少なくともエタノールを含む揮発性物質であり、揮発性物質中のエタノールの含有量が50質量%以上100質量%であり、10質量%以下のグリコールを含む<1>〜<34>のいずれかに記載の被膜の製造方法。

以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。

〔実施例1〕 (1)噴霧用組成物の調製 噴霧用組成物の成分(a)としてエタノール(和光純薬工業(株)社製:商品名エタノール(99.5))を用いた。噴霧用組成物の成分(b)としてポリビニルブチラール(PVB、積水化学工業(株)社製:商品名S−LEC B BM−1)を用いた。噴霧用組成物の成分(c)として変性オルガノポリシロキサン1を用いた。変性オルガノポリシロキサン1は、オルガノポリシロキサンセグメント(A)と、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント(B)との質量比(A/B)が71/29であり、Mwg、Mwox、Mwsi、Mwtはそれぞれ2,500、1,000、50,000、70,000であった。噴霧用組成物における配合割合は、表1及び2に示すとおりである。なお、表1及び2に示すエタノールの量は、有効量であり水を含まない。

(2)静電スプレー工程 図1に示す構成を有し、図2に示す外観を有する静電スプレー装置10を用い、50mm×50mmに切り出した皮膚モデル(人工皮革、プロテインレザー PBZ13001BK、出光テクノファイン社製)に向けて静電スプレー法を60秒間行った。静電スプレー法の条件は以下に示すとおりとした。 ・印加電圧:30kV ・ノズルと皮膚との距離:130mm ・噴霧用組成物の吐出量:3mL/h ・環境:25℃、30%RH この静電スプレーによって、皮膚の表面に繊維の堆積物からなる一枚の膜の形態である被膜が形成された。

〔実施例2〜実施例9〕 噴霧用組成物における成分(a)、(b)、(c)を、以下の表1に示す条件とした以外は実施例1と同様にして、静電スプレー工程を行い、繊維の堆積物からなる被膜を得た。表1に記載した成分(c)は以下の通りである。 変性オルガノポリシロキサン2:オルガノポリシロキサンセグメント(A)と、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント(B)との質量比(A/B)が75/25であり、Mwg、Mwox、Mwsi、Mwtはそれぞれ2,500、800、50,000、67,000変性オルガノポリシロキサン3:オルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が88/12であり、Mwg、Mwox、Mwsi、Mwtはそれぞれ20000、2700、10,000、114,000 変性オルガノポリシロキサン4:オルガノポリシロキサンセグメント(A)と、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント(B)との質量比(A/B)が50/50であり、Mwg、Mwox、Mwsi、Mwtはそれぞれ2,500、2,500、30,000、60,000 K−90:ポリビニルピロリドン、BASF社製 RP77S:4元アクリルアミド系水溶性カチオンポリマー、花王製 JMR150L:ポリビニルアルコール、日本酢ビポバール株式会社 MAS683:アクリル系非水溶性ポリマー、コスメディ製薬株式会社

〔実施例10〜実施例12〕 噴霧用組成物における成分(c)を以下の表2に示す条件とした以外は実施例1と同様にして、静電スプレー工程を行い、繊維の堆積物からなる被膜を得た。表2に記載した成分(c)は以下の通りである。 MASCOS10:アクリル系非水溶性ポリマー、コスメディ製薬株式会社 MAS811:アクリル系非水溶性ポリマー、コスメディ製薬株式会社 HiPAS−PU:ウレタン系ポリマー、コスメディ製薬株式会社

〔比較例1〕 噴霧用組成物に成分(c)を含有しない以外は、実施例1と同様にして、静電スプレー工程を行い、繊維の堆積物からなる被膜を得た。

〔評価〕 実施例及び比較例で形成された被膜について、被膜の耐久性、耐摩擦性、繊維構造を、以下の基準で評価した。その結果を表1に示す。

<皮膚上での耐久性> 被膜の微小荷重での擦過試験により耐久性を評価した。皮膚モデルを固定し、被膜を上面から人差し指で約50gfの荷重をかけながら、2cmの距離を1方向に5回擦過した。その後の被膜と皮膚モデルの付着状態と人差し指への付着性から、以下の基準で耐久性を評価した。 A:膜の剥離、破れ、人差し指への付着が全くない B:被膜表面の破れはあるが、人差し指への付着はない C:被膜表面の破れがあり、人差し指への付着もある D:膜が破れ、完全に剥離する

<被膜の耐摩擦性> 被膜の大荷重での擦過試験により耐摩擦性を評価した。被膜を形成した皮膚モデルを質量2.7kgの重りに固定し、皮膚モデル上に形成した被膜がポリオレフィン樹脂製基板(JOINTEX B060J−S、ジョインテックスカンパニー社製)上に接触した状態で下にする。この時皮膚モデル全面に重りの荷重がかかっている状態とする。10cmの水平移動で擦過試験を行い、皮膚モデルからの剥離状態により、以下の基準で被膜の耐久性を評価した。 5:擦り試験10回で被膜の全面積の50%以上が剥離しない 4:擦り試験8−10回で被膜の全面積の50%以上が剥離する 3:擦り試験5−7回で被膜の全面積の50%以上が剥離する 2:擦り試験2−4回で被膜の全面積の50%以上が剥離する 1:擦り試験1回で被膜の全面積の50%以上が剥離する

<被膜の繊維構造> 走査型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製、JSM−6510)にて、被膜上面を加速電圧20kV、倍率5000倍にて観察し、以下の基準で被膜の繊維構造を評価した。 A:1視野中に繊維径2000nm以下の繊維状物が5本以上存在する B:1視野中に繊維径2000nm以下の繊維状物が5本以上存在しない

〔実施例13〜実施例19〕 噴霧用組成物における成分(a)、(b)、(c)を、以下の表2に示す条件とした以外は実施例1と同様にして、静電スプレー工程を行い、繊維の堆積物からなる被膜を得た。表2に記載した成分(c)は以下の通りである。 MAS683:アクリル系非水溶性ポリマー、コスメディ製薬株式会社 BaycusanC2000:ウレタン系非水溶性ポリマー、Covestro社製 HPC−M:ヒドロキシプロピルセルロース、日本曹達株式会社製 ヨドゾールGH41F:スチレン−アクリル酸系共重合体、アクゾノーベル株式会社

〔評価〕 実施例及び比較例で形成された被膜について、被膜の耐久性、耐摩擦性、繊維構造を、以下の基準で評価した。その結果を表3に示す。

10 静電スプレー装置 11 低電圧電源 12 高電圧電源 13 補助的電気回路 14 マイクロギヤポンプ 15 容器 16 ノズル 17 管路 18 フレキシブル管路 19 電流制限抵抗 20 筐体

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