【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、テニスボールに関するものであり、さらに詳しくは本発明は、改善されたコアを有する無加圧(pressureless)テニスボールに関するものである。 【0002】 【従来の技術および課題】 従来のテニスボールは、中空のゴムのコアおよびフェルトカバーを有している。 ほとんどの新しいテニスボールのコアは、高い反撥弾性を与えるために加圧されている。 従来の新品の加圧テニスボールは、約10〜15psi(0.7〜1.05kg/cm 2 )のゲージ圧の内部圧力を有する。 【0003】 コアの内部圧力と大気圧とが異なる圧力のために、コア中の加圧ガスはゆっくりとコアから漏れていく。 結果として新品のテニスボールは、ボールの内部圧力を維持するために、気密の加圧カン内にパッケージしなければならない。 しかしながら、ひとたびカンが開けられると、コア内の加圧ガスはコアから漏れ始める。 内部圧力が減少すると、ボールの反撥弾性または反撥係数が減少し、最終的にボールはプレーに適さなくなってしまう。 【0004】 大気圧に対して僅かに高い、あるいはほとんど同じ内部圧力を有する無加圧テニスボールは、入手可能である。 無加圧テニスボールは、加圧された気密容器にパッケージする必要がなく、このようなボールの反撥弾性は、内部圧力の漏れを原因とする減少が見られない。 【0005】 米国ローンテニス協会のテニスボールの規定は、次のようになっている: “ボールは、コンクリートの基台に対して100インチ(254cm)の高さから落下させたとき、53インチ(135cm)超58インチ(147cm)未満でバウンドしなければならない” “ボールは、18lb(8.165kg)の荷重で、前方変形が0.220インチ(0.56cm)超0.290インチ(0.74cm)未満、且つ戻り変形が0.350インチ(0.89cm)超0.425インチ(1.08cm)未満でなければならない。この二つの変形の値は、ボールの3軸に沿って行われた3つの値の平均であり、そのうちの二つの値は、各場合において0.030インチ(0.08cm)を超えて異なっていてはならない” 【0006】 加圧テニスボールの内部圧力は、ボールのレジリエンスおよび反撥弾性を増加させる。 通常、無加圧テニスボールのコアは、内部圧力の欠如を補うために、加圧テニスボールのコアよりも反撥弾性および剛性が高くなるように設計されている。 しかしながら、テニスボールのコアの剛性を高めようとする従来の試みは、コアのレジリエンスおよび反撥弾性を減少させるものであり、テニスボールの性能に悪影響を及ぼしていた。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明は、無加圧テニスボールのための改善されたコアを提供するものである。 コアは、レジリエンスおよび反撥弾性をほとんど減少させず、あるいは全く減少せず、幾つかの場合においては増加させながら、改善された剛性を提供するコンパウンドから形成される。 コアは、エチレンと一種以上のアルケン類とのコポリマーから形成されるプラストマーおよびゴムから実質上なる。 【0008】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の一実施態様を図面を参照しながら説明する。 図1は、本発明に従って形成されたテニスボールの一部切欠き図である。 図2は、テニスボールのコアの分解斜視図である。 図3は、結合したコアを示す図である。 【0009】 テニスボール10は、弾性のエラストマーのコア11およびフェルトカバー12を有する。 このカバーは、二つのダンベル形のピース13のフェルトから形成され、これらは接着剤14によりコアに結合している。 この二つのフェルトのピースは、接着性の継ぎ目15により分離されている。 コアは、一対の半球形の半殻16から形成され、これらは互いに結合し、中空の球体を形成している。 【0010】 従来のテニスボールのコアは、主な原料としてゴムを含むコンパウンドから成形されている。 なお、本明細書中の用語“ゴム”とは、エラストマー特性を示すように加硫または硬化され得る任意の天然または合成ポリマーを意味する。 用語“ゴム”は、天然ゴム、ポリイソプレン、ブチルゴム、ポリブタジエン等、あるいはこれらの混合物を包含する。 従来のゴムのコアは、フィラー、分散剤、促進剤、硫黄のような加硫剤等の別の原料も含んでいる。 【0011】 本発明のコアは、プラストマーをさらに含むという点で従来のコアとは異なる。 プラストマーは、エチレンと、炭素数4〜10個を有する一種以上のアルケン類とのコポリマーとして定義される。 このプラストマーは、エチレン70〜90.5重量%、およびアルケン9.5〜30重量%を含有するのが好ましい。 好適には、プラストマーは、次の物理的特性を有するのがよい: 【0012】 比重: 0.86〜0.91 メルトインデックス: 0.5〜30 ショアーD硬度: 20〜50 曲げ弾性率: 1000〜10,000psi(70.3〜703kg/cm 2 ) 【0013】 好適な材料は、エチレン−ブテンおよびエチレン−ヘキセンコポリマーを含み、これらはExxon社から商品名“Exact”として入手可能である。 またエチレン−オクテンコポリマーも有用であり、これはDow Chemical社から商品名“Engage”として入手可能である。 “Exact”プラストマーは、米国特許第4,978,717号明細書に記載されていると考えられ、ここに参照として引用する。 【0014】 本発明のコアを製造するためのコンパウンドは、ゴム100重量部と、ゴム100重量部に対してプラストマー10〜50重量部を含むのがよい。 フィラーや加硫剤としての硫黄のような他の従来の原料もまた利用可能である。 【0015】 【実施例】 次に本発明を実施例によりさらに説明する。 4つのコアコンパウンドを表1に示す。 これらコアコンパウンドは、J1、J2、P3およびP4として示されている。 J1およびJ2コンパウンドは、プラストマーを含まない比較コンパウンドである。 J1およびJ2コンパウンドは、ほぼ同じであるが、J2はHS−870樹脂、炭酸マグネシウムおよびシリカを僅かに増加させており、J1よりも僅かに硬いものである。 【0016】 表は、ゴム100重量部に対する重量部として各原料を示している。 各コンパウンドから成形された無加圧コアのサイズ、重量、変形および反撥弾性を、表1の下部に示す。 【0017】 変形は、テニスボールの硬さまたは剛性の測定であり、スティーヴンデフレクトメーター(Steven's Deflectometer)と呼ばれる当業界で標準的に使用されている試験装置を用いて測定した。 テニスボールを前記のスティーブン装置の二つの平らな平行プレート間におき、3ポンドの圧縮荷重を予め施す。 ここで装置をゼロ較正し、さらに18ポンドの圧縮荷重を適用する。 この18ポンドの圧縮荷重によるテニスボールの撓みの量を、ボールの変形として記録する。 その値が低いほど、ボールの剛性は高くなる。 この測定は、3つの直交する軸に対して行われ、平均値を計算した。 【0018】 反撥弾性は、ボールのバウンド特性の測定である。 ボールを100インチ(254cm)の高さ(ボールの底部までの高さ)から、硬質の花崗岩上に落とす。 ボールの最大のバウンド高(ボールの底部までの距離)を、ボールのバウンド高として記録する。 実験は3回行い、平均値を計算し、最終値とする。 【0019】 Exact4033プラストマー以外の表1の原料は、従来からテニスボールのコアに用いられているものである。 コアのコンパウンドは、バンバリーミキサーを用いる従来の方法によりブレンドし、半殻を成形し、これらを互いに結合させ無加圧中空コアを形成した。 表1に配合によれば、Exact4033プラストマーは、コアの硬さの増加(変形の減少)に有効であり、同時にバウンド高の増加に有効であった。 【0020】 【表1】
【0021】 P3およびP4コンパウンドから製造されたコアを、従来のフェルト織物のカバーで覆い、無加圧テニスボールを形成し、対照のコア(J2)から形成されたテニスボールと比較した。 得られた結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
このテニスボールは、“ボール圧力:平均”で示されるように、大気圧を僅かに超える内部圧力を有していた。
表1(コアのデータ)および表2(完成したボールのデータ)から分かるように、Exact4033プラストマーを用いて製造されたコアおよび完成ボールは、Exact4033を含まないJ2対照コンパウンドよりも顕著に増加したバウンド高および剛性を有していた。
【0024】
表3は、P3コンパウンドの1〜3回のバンバリー練りにより製造された無加圧コアを有するテニスボールと、J2対照コンパウンドから製造されたコアを有するボールのデータを示すものである。 P3コアを有するボールは、顕著に増加したバウンド高および硬さを有していた。
【0025】
【表3】
【0026】
上記では本発明の特定の一実施態様を詳細に説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、当業者ならば多数の詳細部分の変更が可能であることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って形成されたテニスボールの一部切欠き図である。
【図2】テニスボールのコアの分解斜視図である。
【図3】結合したコアを示す図である。
【符号の説明】
10 テニスボール11 コア12 フェルトカバー13 ダンベル形のピース14 接着剤15 接着性の継ぎ目16 半球形の半殻
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