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シンクロトロン用入射器システム、およびドリフトチューブ線形加速器の運転方法

申请号 JP2017501831 申请日 2015-07-10 公开(公告)号 JPWO2016135998A1 公开(公告)日 2017-06-29
申请人 三菱電機株式会社; 发明人 山本 和男; 和男 山本; 定博 川▲崎▼; 定博 川▲崎▼; 博光 井上; 博光 井上;
摘要 第一のイオンを 加速 する場合、隣り合うドリフトチューブ間隙において、第一のイオンが加速される加速半周期の差が第一の加速周期差となる高周波電 力 をドリフトチューブ線形加速器に供給し、第一のイオンよりも電荷質量比の小さな第二のイオンを加速する場合、隣り合うドリフトチューブ間隙において、第二のイオンが加速される加速半周期の差である第二の加速周期差が、第一の加速周期差よりも大きくなる高周波電力を、ドリフトチューブ線形加速器に供給するようにした。
权利要求
  • シンクロトロンに入射するイオンを出射するシンクロトロン用入射器システムであって、
    第一のイオンを発生する第一イオン源と、
    前記第一のイオンの電荷質量比q1/A1よりも小さい電荷質量比q2/A2の第二のイオンを発生する第二イオン源と、
    円筒共振器と、この円筒共振器の円筒軸方向に直線状に配列された複数のドリフトチューブを備え、これら複数のドリフトチューブにより形成される複数のドリフトチューブ間隙に発生する高周波電界が加速位相となる高周波の半周期である加速半周期の間にイオンを加速するドリフトチューブ線形加速器と、
    前記ドリフトチューブ線形加速器に高周波電力を供給する高周波発生器と、
    前記第一のイオンと前記第二のイオンのいずれかのイオンを、前記ドリフトチューブ線形加速器に入射させる低エネルギービーム輸送路と、を備え、
    前記高周波発生器は、前記低エネルギービーム輸送路が前記第一のイオンを入射させる場合、前記複数のドリフトチューブ間隙のうち一のドリフトチューブ間隙において前記第一のイオンが加速される加速半周期と、当該加速された第一のイオンが前記一のドリフトチューブ間隙の隣のドリフトチューブ間隙に到達して加速される加速半周期との差が第一の加速周期差となる高周波電力を前記ドリフトチューブ線形加速器に供給し、前記低エネルギービーム輸送路が前記第二のイオンを入射させる場合、前記一のドリフトチューブ間隙において前記第二のイオンが加速される加速半周期と、当該加速された第二のイオンが前記一のドリフトチューブ間隙の隣のドリフトチューブ間隙に到達して加速される加速半周期との差である第二の加速周� ��差が、前記第一の加速周期差よりも大きくなる高周波電力を、前記ドリフトチューブ線形加速器に供給することを特徴とするシンクロトロン用入射器システム。
  • 前記ドリフトチューブ線形加速器がAPF−IH型ドリフトチューブ線形加速器であって、前記第一の加速周期差は0.5周期であり、前記第二の加速周期差は(0.5+n)周期(nは正の整数)であることを特徴とする請求項1に記載のシンクロトロン用入射器システム。
  • 前記ドリフトチューブに磁場による収束機器を備えたことを特徴とする請求項2に記載のシンクロトロン用入射器システム。
  • 前記ドリフトチューブ線形加速器がアルバレ型ドリフトチューブ線形加速器であって、前記第一の加速周期差は1周期であり、前記第二の加速周期差は(1+n)周期(nは正の整数)であることを特徴とする請求項1に記載のシンクロトロン用入射器システム。
  • 前記ドリフトチューブに前記ドリフトチューブ間隙に突き出す電極を設け、前記ドリフトチューブ間隙に四重極電場を形成したことを特徴とする請求項1から4に記載のシンクロトロン用入射器システム。
  • 前記第一のイオンは陽子であり、前記第二のイオンは4価の炭素イオンであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシンクロトロン用入射器システム。
  • 円筒共振器と、この円筒共振器の円筒軸方向に直線状に配列された複数のドリフトチューブを備え、これら複数のドリフトチューブにより形成される複数のドリフトチューブ間隙に発生する高周波電界が加速位相となる高周波の半周期である加速半周期の間に、第一のイオン、または前記第一のイオンの電荷質量比q1/A1よりも小さい電荷質量比q2/A2の第二のイオンのいずれかのイオンを加速するドリフトチューブ線形加速器の運転方法において、
    前記第一のイオンを加速する場合に、前記複数のドリフトチューブ間隙のうち一のドリフトチューブ間隙において前記第一のイオンが加速される加速半周期と、当該加速された第一のイオンが前記一のドリフトチューブ間隙の隣のドリフトチューブ間隙に到達して加速される加速半周期との差が第一の加速周期差となる高周波電力を前記ドリフトチューブ線形加速器に供給し、
    前記第二のイオンを加速する場合に、前記一のドリフトチューブ間隙において前記第二のイオンが加速される加速半周期と、当該加速された第二のイオンが前記一のドリフトチューブ間隙の隣のドリフトチューブ間隙に到達して加速される加速半周期との差である第二の加速周期差が、前記第一の加速周期差よりも大きくなる高周波電力を、前記ドリフトチューブ線形加速器に供給して運転することを特徴とするドリフトチューブ線形加速器の運転方法。
  • 前記ドリフトチューブ線形加速器がAPF−IH型ドリフトチューブ線形加速器であって、前記第一の加速周期差が0.5周期であり、前記第二の加速周期差が(0.5+n)周期(nは正の整数)となるよう運転することを特徴とする請求項7に記載のドリフトチューブ線形加速器の運転方法。
  • 前記ドリフトチューブ線形加速器がアルバレ型ドリフトチューブ線形加速器であって、前記第一の加速周期差が1周期であり、前記第二の加速周期差が(1+n)周期(nは正の整数)となるよう運転することを特徴とする請求項7に記載のドリフトチューブ線形加速器の運転方法。
  • 前記第一のイオンは陽子であり、前記第二のイオンは4価の炭素イオンであることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載のドリフトチューブ線形加速器の運転方法。
  • 说明书全文

    本発明は、一つのシンクロトロン加速器システムにおいて、異なる種類のイオンを加速できるシステムとするために、異なる種類のイオンをシンクロトロンに入射させるシンクロトロン用入射器システムに関するものである。

    シンクロトロンで荷電粒子を加速し、シンクロトロンから出射された高エネルギーの荷電粒子の束である粒子線を、例えばがんの治療に利用することが行われている。 治療用の粒子線において、治療対象によって粒子線の種類を選択するのが好ましい場合がある。 よって、一つのシンクロトロン加速器システムから異なる種類の粒子線を出射できるようにすることが望まれている。 シンクロトロンは、入射された荷電粒子、すなわちイオンを加速するものであり、異なる種類の粒子線を出射できるようにするためには、異なる種類のイオンをシンクロトロンに入射させるシンクロトロン用入射器システムが必要となる。

    特許文献1には、全種イオンを任意のエネルギーレベルまで同一のシンクロトロンで加速できる技術が開示されている。 このシンクロトロンにイオンを入射させるための入射器システムについては、前段加速器によって一定のエネルギーレベルまで加速されたイオンビームを入射させるとの記載がある。

    また、特許文献2には、陽子ビームと炭素ビームを併用利用するためには、それぞれのビームを発生するイオン源が必要との記載があるが、シンクロトロンにイオンを入射させるための前段加速器についての詳しい記載は無い。

    また、特許文献3には、APF−IH型ドリフトチューブ線形加速器において、大電流の陽子などの粒子ビームを加速できる構成が開示されている。

    特開2006−310013号公報

    特開2009−217938号公報

    国際公開WO2012/008255号

    例えば、陽子と炭素イオンのように、異なる種類のイオンをシンクロトロンで加速できるまで予備加速するためのシンクロトロン用入射器システムでは、例えば特許文献1に記載されているように、異なる種類のイオンを同一エネルギーまで加速していた。 このように、従来は、両種同一の予備加速エネルギー、同一の加速器、の条件に拘束されていた。 このような従来の入射器システムは、それぞれの種類のイオンに対して最適な予備加速エネルギーではない入射器システムであったため、効率が悪く大型であった。 電荷質量比(電荷/質量)が大きいイオン(例えば陽子:電荷/質量=1/1)は、空間電荷効果が大きいため、シンクロトロンへの入射エネルギーは、電荷質量比が小さいイオン(例えば4価炭素イオン:電荷/質量=4/12)に比べ高くしたい。 電荷質量比が小さいイオンを加速するためには、電荷質量比が大きいイオンを加速するときより高い加速電圧が必要となり加速器が大型になるため、シンクロトロンへの入射エネルギーは、電荷質量比が大きいイオンに比べ低くしたい。 従来は、上記ニーズを解決できず、電荷質量比が大きいイオン、小さいイオンに係わらず、シンクロトロンへの入射エネルギーは同一に固定されており、大型であった。

    この発明は、以上のような従来のシンクロトロン用入射器システムの問題点を解消するためになされたもので、異なる種類のイオンを加速できる、小型のシンクロトロン用入射器システムを得ることを目的とする。

    本発明のシンクロトロン用入射器システムは、第一のイオンを発生する第一イオン源と、第一のイオンの電荷質量比q1/A1よりも小さい電荷質量比q2/A2の第二のイオンを発生する第二イオン源と、円筒共振器と、この円筒共振器の円筒軸方向に直線状に配列された複数のドリフトチューブを備え、これら複数のドリフトチューブにより形成される複数のドリフトチューブ間隙に発生する高周波電界が加速位相となる高周波の半周期である加速半周期の間にイオンを加速するドリフトチューブ線形加速器と、ドリフトチューブ線形加速器に高周波電を供給する高周波発生器と、第一のイオンと前記第二のイオンのいずれかのイオンを、ドリフトチューブ線形加速器に入射させる低エネルギービーム輸送路と、を備え、高周波発生器� ��、低エネルギービーム輸送路が第一のイオンを入射させる場合、複数のドリフトチューブ間隙のうち一のドリフトチューブ間隙において前記第一のイオンが加速される加速半周期と、当該加速された第一のイオンが前記一のドリフトチューブ間隙の隣のドリフトチューブ間隙に到達して加速される加速半周期との差が第一の加速周期差となる高周波電力をドリフトチューブ線形加速器に供給し、低エネルギービーム輸送路が第二のイオンを入射させる場合、前記一のドリフトチューブ間隙において前記第二のイオンが加速される加速半周期と、当該加速された第二のイオンが前記一のドリフトチューブ間隙の隣のドリフトチューブ間隙に到達して加速される加速半周期との差である第二の加速周期差が、第一の加速周期差よりも大きくなる� �周波電力を、ドリフトチューブ線形加速器に供給するようにしたものである。

    また、円筒共振器と、この円筒共振器の円筒軸方向に直線状に配列された複数のドリフトチューブを備え、これら複数のドリフトチューブにより形成される複数のドリフトチューブ間隙に発生する高周波電界が加速位相となる高周波の半周期である加速半周期の間に、第一のイオン、または第一のイオンの電荷質量比q1/A1よりも小さい電荷質量比q2/A2の第二のイオンのいずれかのイオンを加速するドリフトチューブ線形加速器の運転方法において、第一のイオンを加速する場合に、複数のドリフトチューブ間隙のうち一のドリフトチューブ間隙において前記第一のイオンが加速される加速半周期と、当該加速された第一のイオンが前記一のドリフトチューブ間隙の隣のドリフトチューブ間隙に到達して加速される加速半周期との� ��である第一の加速周期差を生じる高周波電力を前記ドリフトチューブ線形加速器に供給し、第二のイオンを加速する場合に、前記一のドリフトチューブ間隙において前記第二のイオンが加速される加速半周期と、当該加速された第二のイオンが前記一のドリフトチューブ間隙の隣のドリフトチューブ間隙に到達して加速される加速半周期との差である第二の加速周期差が第一の加速周期差より大きい周期差を生じる高周波電力をドリフトチューブ線形加速器に供給して運転するようにしたものである。

    この発明によれば、異なる種類のイオンを、異なるエネルギーで出射するようにしたため、小型で、異なる種類のイオンを出射できるシンクロトロン用入射器システムを提供できる。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムの構成を示すブロック図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ加速器の概略構成を示す側面断面図である。

    イオン粒子がドリフトチューブ間隙で加速されながら進む様子を示す模式図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器における第一のイオンの加速動作を説明する線図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器における第二のイオンの加速動作を説明する線図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムの別のドリフトチューブ線形加速器における第一のイオンの加速動作を説明する線図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムの別のドリフトチューブ線形加速器における第二のイオンの加速動作を説明する線図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器のドリフトチューブの概略構成の一例を示す断面図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ加速器の要部の概略構成の一例を示す側面断面図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ加速器の要部の概略構成の一例を示す斜視図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ加速器の図9の構成の一例による動作を説明する図である。

    本発明の実施の形態2によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ加速器の概略構成を示す側面断面図である。

    本発明の実施の形態2によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器における第一のイオンの加速動作を説明する線図である。

    本発明の実施の形態2によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器における第二のイオンの加速動作を説明する線図である。

    シンクロトロン用入射器システムでは、重いイオンを加速する方が軽いイオンを加速するよりも大きな電力を必要とするため、例えば異なるイオンとして陽子と炭素イオンを加速できるようにしようとする場合、まず重いイオンである炭素イオンに必要なエネルギーまで加速する加速器を設計する。 軽い陽子に関しては、炭素イオンに必要なエネルギーまで加速する加速器において、電力を減少させれば炭素イオンと同一のエネルギーまでは加速することができるという考えの下に、従来は、炭素イオンと陽子を同一のエネルギーまで加速して出射させる入射器システムを実現していた。 しかしながら、シンクロトロンへの入射エネルギーは、陽子のように電荷質量比が大きいイオンでは、炭素イオンのように電荷質量比が小さいイオンに比べ高くするのが好ましい。 従来は、重い炭素イオンの設計を第一に考えていたため、同一の入射器システムで、炭素イオンと陽子を異なるエネルギーで出射させる入射器システムを実現させるという発想は無かった。

    これに対して、本発明では、電荷質量比が小さいイオンに最適化された入射器システムを電荷質量比が大きいイオンの加速にも用いるという考えを捨てて、電荷質量比が大きいイオンをシンクロトロンにとって適した入射エネルギーまで加速する入射器システムを電荷質量比が小さいイオンの加速に用いるという、従来と逆の発想に基づいて、異なるイオンをそれぞれ異なるエネルギーまで加速する入射器システムを実現した。 この発想により、電荷質量比が小さいイオンと電荷質量比が大きいイオンにおいて、シンクロトロンへの入射エネルギーとしてそれぞれ適したエネルギーを出射できる入射器システムを、小型で実現することができた。 以下、実施の形態により本発明を説明する。

    実施の形態1.
    図1は本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムの概略構成を示すブロック図である。 このシンクロトロン用入射器システム10は、2種類のイオンを切替えてシンクロトロン100に入射可能にするシステムである。 シンクロトロン用入射器システム10は、第一のイオンを発生する第一イオン源1と、第一のイオンよりも電荷質量比が小さい第二のイオンを発生する第二イオン源2とを備えている。 以下、第一のイオンとして陽子を、第二のイオンとして4価炭素イオンを例にして説明する。 ただし、本発明は第二のイオンの電荷質量比(q2/A2)が第一のイオンの電荷質量比(q1/A1)よりも小さい組み合わせのものであれば種々のイオンの組み合わせに適用できる。 例えば第一のイオンが陽子(電荷質量比=1)で第二のイオンが1価ヘリウムイオン(電荷質量比=1/4)の組み合わせや、第一のイオンがヘリウムイオンで第二のイオンが炭素イオンの組み合わせなどにも適用できる。

    陽子は電荷qが1価であり、質量Aを1とすれば、陽子の電荷質量比q/Aは1/1、炭素イオンは4価、陽子1とした質量が12であるから炭素イオンの電荷質量比は4/12である。 このように、陽子よりも炭素イオンの方が、電荷質量比が小さい。 第一イオン源1から発生された陽子は、第一低エネルギービーム輸送路41を通って、また、第二イオン源2から発生された炭素イオンは、第二低エネルギービーム輸送路42を通って、合成器43に入射される。 合成器43により第一低エネルギービーム輸送路41と第二低エネルギービーム輸送路42とは、一つのビームライン44に合流して陽子と炭素イオンを切替えて、いずれかのイオンがドリフトチューブ線形加速器5に入射されるように構成されている。 第一イオン源1から陽子が出射してドリフトチューブ線形加速器5に入射されるまでの輸送路、および第二イオン源2から炭素イオンが出射してドリフトチューブ線形加速器5に入射されるまでの輸送路をまとめて低エネルギービーム輸送路4と称する。

    合成器43では、第二イオン源2からの炭素イオンを偏向してビームライン44に合流させるようにしている。 第二イオン源2から出射される炭素イオンは、4価以外の、価数の異なる炭素イオンを含んでいる。 加速器では4価の炭素イオンのみを加速する。 このため、合成器43の部分で第二イオン源2からの炭素イオンを偏向させることにより4価の炭素イオンのみをビームライン44に合流させる構成としている。

    図2は、この発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器5の概略構成を示す側面断面図である。 ドリフトチューブ線形加速器5は、円筒共振器6内に、複数のドリフトチューブT1、T2……が円筒共振器6の円筒軸方向に複数個配列されている。 図2では、簡単のためドリフトチューブが7個配列されているものを図示しているが、さらに多くのドリフトチューブが配列されることが多い。 円筒共振器6内は真空にされている。 各ドリフトチューブは、イオンが通過する加速軸20に沿って中央に貫通孔が設けられた円筒形をしており、ステム3により円筒共振器壁7に支持されている。 図2のドリフトチューブ線形加速器では、隣り合うドリフトチューブのステムは反対側に延びている。 このような構成のドリフトチューブ線形加速器は、IH(Interdigital-H)型ドリフトチューブ線形加速器と呼ばれている。 ドリフトチューブ線形加速器では、円筒共振器内に高周波発生器50から高周波電力を供給し、隣り合うドリフトチューブ間の間隙(以降ドリフトチューブ間隙と呼ぶ)G1、G2……に高周波電界を発生させ、この高周波電界によって加速軸20に沿って進むイオンを加速する。

    イオンは粒子ビームとなって加速されてゆく。 粒子ビームはイオン(荷電粒子)の集合体であるため、粒子間でお互いに発散力が働く(これを空間電荷効果と呼ぶ)。 そのため粒子ビームは進行方向に進むにつれ径方向・進行方向ともに広がり、とくに径方向の発散により真空ダクト壁に衝突し粒子ビームは損失する。 そのため、径方向の発散を抑えるビーム径方向収束機器が必要となる。 しかし、APF(Alternating-Phase Focusing)−IH型ドリフトチューブ線形加速器と呼ばれるドリフトチューブ線形加速器では、ドリフトチューブ間隙に発生する湾曲の電界分布と、粒子ビームがドリフトチューブ間隙を通過するタイミングを連成設計することでビーム収束力を得るため、ビーム径方向収束機器は必要ない。

    図3は、イオン粒子がドリフトチューブ間隙で加速されながら進む様子を示す模式図である。 図3の左から右方向に加速軸20に沿ってイオン粒子が進行する。 イオン粒子がi番目のドリフトチューブ間隙Giで加速され、ドリフトチューブTi内では加速されずに進行して、次のドリフトチューブ間隙Gi+1で加速される。 再びドリフトチューブTi+2内を加速されずに進行し、さらに次のドリフトチューブ間隙Gi+2で加速される。 このように、イオン粒子は、ドリフトチューブ間隙を通過する度に加速されてゆく。 図3では、模式的に、加速されるイオン粒子を二重丸で、加速されずに進行するイオン粒子を黒丸で示している。

    ここで、IH型ドリフトチューブ線形加速器でイオン粒子を加速する動作を、図4を用いて簡単に説明する。 図4は、あるドリフトチューブ間隙Gi、Gi+1、Gi+2と順にイオン粒子が通過して加速される様子を説明する線図である。 横軸は高周波電界の位相であり、位相が進むことは時間が進むことを示すため、横軸は時間でもある。 すなわち、時間が横軸右方向に進む。 各ドリフトチューブ間隙には、円筒共振器内に供給された高周波電力に対応した高周波電界が発生する。 高周波電界強度は図4に示すように正弦波曲線を描いて変化する。 図4では、ドリフトチューブ間隙Giに発生する高周波電界強度がピークとなる位相を0度として位相の値を記載している。 IH型ドリフトチューブ線形加速器では、図4のドリフトチューブ間隙GiとGi+1、あるいはGi+1とGi+2の高周波電界強度で示すように、隣り合うドリフトチューブ間隙では、発生する高周波電界は逆位相となるよう設計されている。 図4では、高周波電界の向きとしてイオンが加速される方向を正(上方)として示している。 高周波電界強度が正のときイオンを加速する能力があるので、ここでは、高周波電界強度が正となる半周期を加速半周期と呼ぶことにする。 ドリフトチューブ間隙Giの加速半周期PaiやGi+2の加速半周期Pai+2は−90度から+90度、270度から450度までといった、(360*N−90)度から(360*N+90)度までの半周期となる。 また、ドリフトチューブ間隙Gi+1の加速半周期Pai+1は、(360*N+90)度から(360*N+270)度までの半周期となる。 ここでNは0を含む整数である。

    2重丸はあるイオン粒子の位置を示し、位相が進む、すなわち時間が進むにしたがって、そのイオン粒子がどの位置に進んでゆくかを矢印で示している。 図4の最上部には、高周波位相に対応したイオン粒子の位置、すなわち位相に対応した時間にそのイオン粒子がどの位置に存在しているかを示している。 イオン粒子はドリフトチューブ間隙Giにおいてドリフトチューブ間隙Giに発生している高周波電界からエネルギーを受け取り加速される。 イオン粒子がドリフトチューブTiに入ると加速されずにそのままのエネルギーで進み、次のドリフトチューブ間隙Gi+1においてドリフトチューブ間隙Gi+1に発生している高周波電界からエネルギーを受け取りさらに加速される。 このようにしてイオン粒子が加速されながら進む様子を図4が示している。

    通常、IH型ドリフトチューブ線形加速器では、加速半周期において電界強度がピークとなる少し前、図4のドリフトチューブ間隙Giでは電界強度のピークから例えば−30度前後の位相でイオン粒子が通過するように電界強度を調整する。 これにより、少し遅れて通過するイオン粒子がより加速されるため、イオンの集合体が形成されるようになる。 IH型ドリフトチューブ線形加速器では、次のドリフトチューブ間隙では、逆位相の高周波電界が発生しているため、ドリフトチューブ間隙Gi+1の加速半周期Pai+1は、ドリフトチューブ間隙Giの加速半周期Paiから半周期遅れた半周期となる。 すなわち、隣り合うドリフトチューブ間隙における加速半周期の差は半周期となっている。 この加速半周期の高周波電界強度がピークとなる少し前、すなわち位相が150度前後の位相でドリフトチューブ間隙Gi+1をイオンの集合体が通過するように設計されている。 このようにしてイオンの集合体がドリフトチューブ間隙を通過するごとに加速される。

    従来のIH型ドリフトチューブ線形加速器では、以上のような設計を行い、運転時には設計に従った加速動作となるような高周波電力を供給することにより、イオン粒子の集合体、すなわちイオンビームが加速され、設計されたエネルギーのイオンビームが出射され、シンクロトロン100に入射される。 本発明の実施の形態1では、電荷質量比が大きい第一のイオン(例えば陽子)は、従来と同様、図4で説明したのと同じ動作で加速する。 しかし、電荷質量比が小さい第二のイオン(例えば4価の炭素イオン)を加速する場合は、隣り合うドリフトチューブ間隙におけいて加速するための加速半周期の差が、第一のイオンの加速半周期の差よりも大きな差となるようにして加速する。 ここで、第一のイオンが加速される、隣り合うドリフトチューブ間隙の間の加速半周期の差を第一の加速周期差と呼び、第二のイオンが加速される加速半周期の差を第二の加速周期差と呼ぶことにする。 以上では、第一の加速周期差は半周期(0.5周期)である。

    図5は、本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器における、第二のイオンを4価の炭素イオンとした場合の加速の様子を示す図である。 第二のイオンの集合体は、ドリフトチューブ間隙Giにおいて位相―30度前後に通過して加速される。 ドリフトチューブ間隙Gi+1では、次の半周期ではなく、次の半周期よりもさらに1周期遅れて加速半周期となる半周期の間の位相510度前後において加速されるように高周波電界強度、すなわち円筒共振器に供給する高周波電力を調整する。 以上では第二の加速周期差が1.5周期となる。 このような加速では、第二のイオンの加速は、第一のイオンよりも速度が遅くなる。 すなわちドリフトチューブ線形加速器から出射される第二のイオンのエネルギーは第一のイオンのエネルギーよりも小さくなる。 第一のイオンの電荷q1、質量A1、第二のイオンの電荷q2、質量A2としたとき、第二のイオンのエネルギーを第一のイオンのエネルギーの(q2/A2)/(q1/A1)(電荷質量比の比例)倍とするのが好ましい。

    また、第一のイオンと第二のイオンの電荷質量比の差が大きい場合、第二の加速周期差はさらに大きくして2.5周期や3.5周期としてもよい。 このように、第二のイオンを加速する場合の第二の加速周期差が、第一のイオンを加速する場合の第一の加速周期差よりも大きくなるように動作させる。 好ましくは、第一の加速周期差を半周期(0.5周期)とし、第二の加速周期差を(0.5+n)周期(nは正の整数)とすればよい。 このように、電荷質量比が小さい第二のイオンにおいて、第一のイオンよりも出射させるエネルギーが低くなるように設計することで、第一のイオンを加速するときに供給する高周波電力と、第一のイオンよりも電荷質量比が小さい、すなわち重い第二のイオンを加速するときに供給する高周波電力との差が小さくて済み、大きな高周波発生器が必要なくなる。

    従来は、まず、加速するのに大きな高周波電力が必要な重い(質量が大きく電荷質量比が小さい)第二のイオン(例えば4価の炭素イオン)の加速動作の設計を行い、高周波電力を下げることにより、軽い(質量が小さく電荷質量比が大きい)第一のイオン(例えば陽子)を第二のイオンと同じエネルギーまで加速できる、という設計思想しかなかった。 すなわち、第一のイオンの加速も、第二のイオンの加速も、図4で説明した動作により加速する、という設計思想しかなかった。 このように、第一のイオンの加速では、第二のイオンの加速のときの高周波電力から電力を下げて、第二のイオンと同じエネルギーまで加速していた。 よって、第二のイオンを第一のイオンと同じエネルギーまで加速するための高周波電力を出力できる能力を有する高周波発生器が必要であった。 しかし、本発明では、軽い、電荷質量比が大きい第一のイオンを加速できる高周波発生器とほぼ同じ能力の高周波発生器を用いて、第二の加速周期差を第一の加速周期差よりも大きくすることで、出射されるイオンのエネルギーは低いが、重い、電荷質量比が小さい第二のイオンを加速できる、ということを見出し、2種類のイオンを加速できるドリフトチューブ線形加速器を実現することに成功した。

    図6は、IH型ドリフトチューブ線形加速器に属する、APF(Alternating-Phase Focusing)−IH型ドリフトチューブ線形加速器の動作を説明する図である。 ドリフトチューブ間隙Giでは−60度前後の位相でイオンが通過し、次のドリフトチューブ間隙Gi+1では高周波電界強度がピークとなる位相+50度前後、すなわち230度前後の位相でイオンが通過するように、その次のドリフトチューブ間隙Gi+2ではドリフトチューブ間隙Giと同じく高周波電界強度がピークとなる位相−60度前後、すなわち300度前後の位相でイオンが通過するように、設計されている。 このようにすることで、高周波電界のみでビームの発散を抑制して、別途収束機器を設けることなく加速できる加速器とすることができる。 APF−IH型ドリフトチューブ線形加速器においても、図6に示すように、図4で説明したIH型ドリフトチューブ線形加速器と同様、隣り合うドリフトチューブ間隙において、半周期異なる加速半周期で加速するように動作させる。 本発明においては、このAPF−IH型ドリフトチューブ線形加速器において、第一のイオンは図6のような加速動作をするよう設計し、このように設計されたAPF−IH型ドリフトチューブ線形加速器を用いて、図7に示す加速動作により第一のイオンよりも電荷質量比が小さい第二のイオンを加速する。

    図7に示すように、第二のイオンの集合体は、ドリフトチューブ間隙Giにおいて位相―60度前後で通過して加速される。 ドリフトチューブ間隙Gi+1では、次の半周期ではなく、次の半周期よりもさらに1周期遅れて加速半周期となる半周期の間において、高周波電界強度がピークとなる位相+50度前後の位相、すなわち590度前後の位相においてイオンが通過するように高周波電界強度、すなわち円筒共振器に供給する高周波電力を調整する。 以上の動作によれば、図4と図5で説明した動作と同様、第二のイオンは、第一のイオンよりも速度が遅く、ドリフトチューブ線形加速器から出射するときのエネルギーが低い。 この動作においては、第一のイオンは高周波電界のみで発散を抑制できるが、第二のイオンは、高周波電界のみで発散を抑制できないこともある。 この場合、図8に示すようにドリフトチューブTに磁場を発生する収束機器8を内蔵することにより、第二のイオンの加速時に収束機器8を動作させて発散を抑制すればよい。

    また、図9から図11に示すように、ドリフトチューブ間隙に発生する電場を、収束性の電場とすることにより発散を抑制することもできる。 図9は、加速軸20に沿って並ぶドリフトチューブTのうちドリフトチューブTiからドリフトチューブTi+2までの部分の断面を示す模式図、図10はドリフトチューブTiとドリフトチューブTi+1の部分を示す斜視図、図11はドリフトチューブ間隙に形成される電場を、加速軸方向から見て示す模式図である。 図9および図10に示す構成では、各ドリフトチューブTに、間隙側に突き出すフィンガー状の電極Tfを設けた構成としている。 各電極Tfは、ドリフトチューブ間隙に形成される高周波電界が、図11に示す四重極電場となるように設けている。 例えば図9、図10に示すように、各ドリフトチューブ間隙において、ドリフトチューブ間隙を構成する一方のドリフトチューブから突き出す電極と、他方のドリフトチューブから突き出す電極とが、加速軸20の周りに互いに90度異なる位置となるよう、各ドリフトチューブに電極Tfを2つずつ設ければよい。 この構成により、ドリフトチューブ間隙に四重極電場が形成され、イオンは収束されながら加速されることになる。 この構成により、第一のイオンを加速する場合と、第二のイオンを加速する場合とのそれぞれにおいて、加速位相および形成される四重極電場を適切に設計することで、いずれのイオンを加速する場合も発散せず、損失を抑えて加速することができる。 また、図8で示した磁場による収束と上記の電場による収束を併用することもできる。

    このように、第一のイオンと第二のイオンで、出射するイオンのエネルギーが異なることを許容して設計することで、第一のイオンを加速するときに供給する高周波電力と、第一のイオンよりも電荷質量比が小さい、すなわち重い第二のイオンを加速するときに供給する高周波電力との差が小さくて済み、大きな高周波発生器が必要なくなる。

    以上、実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器、すなわちIH型ドリフトチューブ線形加速器における本発明の動作をまとめると、次のようになる。 第一のイオンを加速する場合に、複数のドリフトチューブ間隙のうち一のドリフトチューブ間隙において第一のイオンが加速される加速半周期と、当該加速された第一のイオンが当該一のドリフトチューブ間隙の隣のドリフトチューブ間隙に到達して加速される加速半周期との差が第一の加速周期差となる高周波電力をドリフトチューブ線形加速器に供給し、第一のイオンよりも電荷質量比が小さい第二のイオンを加速する場合、前記一のドリフトチューブ間隙において加速される加速半周期と、当該加速された第二のイオンが当該一のドリフトチューブ間隙の隣のドリフトチューブ間隙に到達して加速される加速半周期との差である第二の加速周期差が、第一の加速周期差よりも大きくなる高周波電力の高周波を、ドリフトチューブ線形加� ��器に供給することにより、第一のイオンを加速できる高周波発生器を用いて、出射されるイオンのエネルギーは第一のイオンよりも低いエネルギーとなるが、第二のイオンも加速することができるシンクロトロン用入射器システムを構成することができる。

    実施の形態2.
    実施の形態2では、図1に示すシンクロトロン用入射器システム10を構成するドリフトチューブ線形加速器5としてアルバレ型ドリフトチューブ線形加速器を用いた場合の動作を説明する。 アルバレ型ドリフトチューブ線形加速器を用いた場合も、第一のイオンの加速周期差よりも大きい加速周期差で第二のイオンを加速させるようにすることで、第一のイオンを加速できる高周波発生器を用いて、出射されるイオンのエネルギーは第一のイオンよりも低いエネルギーとなるが、第二のイオンも加速することができるシンクロトロン用入射器システムを構成することができる。

    図12は、この発明の実施の形態2によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器5、すなわちアルバレ型ドリフトチューブ線形加速器5の概略構成を示す側面断面図である。 アルバレ型ドリフトチューブ線形加速器5においても、円筒共振器6内に、複数のドリフトチューブT1、T2……が円筒共振器6の円筒軸方向に複数個配列されている。 図12では、簡単のためドリフトチューブが7個配列されているものを図示しているが、さらに多くのドリフトチューブが配列されることが多い。 円筒共振器6内は真空にされている。 各ドリフトチューブは、中央にイオンが通過する加速軸20に沿って貫通孔が設けられた円筒形をしており、ステム3により円筒共振器壁7に支持されている。 アルバレ型ドリフトチューブ線形加速器では、すべてのドリフトチューブのステムは同一方向に延びている。 円筒共振器内に図1に示した高周波発生器50から高周波電力を供給し、隣り合うドリフトチューブ間隙G1、G2……に高周波電界を発生させ、この高周波電界によってイオンを加速する。 アルバレ型ドリフトチューブ線形加速器では、通常、図8に示したのと同様、磁場による収束機器をドリフトチューブ内に内蔵させて径方向のビームの発散を抑える。 また、図9〜11で説明した、電場による収束を併用してもよい。

    アルバレ型ドリフトチューブ線形加速器でイオン粒子が加速される様子を、図13を用いて簡単に説明する。 図13は、あるドリフトチューブ間隙Gi、Gi+1、Gi+2と順にイオン粒子が通過して加速される様子を説明する線図である。 図13では、ドリフトチューブ間隙Giに発生する高周波電界強度がピークとなる位相を0度として位相を記載している。 アルバレ型ドリフトチューブ線形加速器では、IH型ドリフトチューブ線形加速器と異なり、図13のドリフトチューブ間隙GiとGi+1、あるいはGi+1とGi+2の高周波電界強度で示すように、隣り合うドリフトチューブ間隙で、発生する高周波電界は同位相となるよう設計されている。 図13では、高周波電界の向きとしてイオンが加速される方向を正(上方)として示している。 高周波電界強度が正のときイオンを加速する能力があるので、実施の形態1のIH型ドリフトチューブ線形加速器の場合と同様、高周波電界強度が正となる半周期を加速半周期と呼ぶことにする。 アルバレ型ドリフトチューブ線形加速器では、すべてのドリフトチューブ間隙で高周波位相が同位相となるため、(360*N−90)度から(360*N+90)度までの半周期が加速半周期となる。 ここでNは0を含む整数である。

    2重丸はあるイオン粒子の位置を示し、位相が進む、すなわち時間が進むにしたがって、そのイオン粒子がどの位置に進んでゆくかを矢印で示している。 図13の最上部には、高周波位相に対応したイオン粒子の位置、すなわち位相に対応した時間に、そのイオン粒子がどの位置に存在しているかを示している。 イオン粒子はドリフトチューブ間隙Giにおいてドリフトチューブ間隙Giに発生している高周波電界からエネルギーを受け取り加速される。 イオン粒子がドリフトチューブTiに入ると加速されずにそのままのエネルギーで進み、次のドリフトチューブ間隙Gi+1においてドリフトチューブ間隙Gi+1に発生している高周波電界からエネルギーを受け取りさらに加速される。 このようにしてイオン粒子が進む様子を図13が示している。

    通常、アルバレ型ドリフトチューブ線形加速器では、加速半周期において電界強度がピークとなる少し前、図13のドリフトチューブ間隙Giでは電界強度のピークから例えば−30度前後の位相でイオン粒子が通過するように電界強度を調整する。 これにより、少し遅れて通過するイオン粒子がより加速されるため、イオンの集合体が形成されるようになる。 アルバレ型ドリフトチューブ線形加速器では、次のドリフトチューブ間隙においても同位相の高周波電界が発生しているため、ドリフトチューブ間隙Gi+1の加速半周期Pai+1は、ドリフトチューブ間隙Giの加速半周期Paiから1周期遅れた半周期となる。 すなわち、隣り合うドリフトチューブ間隙における加速半周期の差は1周期となっている。 この加速半周期の高周波電界強度がピークとなる少し前、すなわち330度前後の位相でドリフトチューブ間隙Gi+1をイオンの集合体が通過するように設計されている。 このようにしてイオンの集合体がドリフトチューブ間隙を通過するごとに加速される。

    従来のアルバレ型ドリフトチューブ線形加速器では、以上のような設計を行い、運転時には設計に従った加速動作となるような高周波電力を供給することにより、イオン粒子の集合体、すなわちイオンビームが加速され、設計されたエネルギーのイオンビームが出射され、シンクロトロン100に入射される。 本発明の実施の形態2では、電荷質量比が大きい第一のイオン(例えば陽子)は、従来と同様、図13で説明したのと同じ動作で加速する。 しかし、電荷質量比が小さい第二のイオン(例えば4価の炭素イオン)は、隣り合うドリフトチューブ間隙の間の加速半周期の差が、第一のイオンの加速半周期の差よりも大きな差となる加速半周期で加速する。 実施の形態1と同様、第一のイオンが加速される加速半周期の差を第一の加速周期差と呼び、第二のイオンが加速される加速半周期の差を第二の加速周期差と呼ぶことにする。 以上では、第一の加速周期差は1周期である。

    図14は、本発明の実施の形態2によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器、すなわちアルバレ型ドリフトチューブ線形加速器における、第二のイオンを4価の炭素イオンとした場合の加速の様子を示す図である。 第二のイオンの集合体は、ドリフトチューブ間隙Giにおいて高周波電界強度がピークとなる少し前の位相で通過して加速される。 ドリフトチューブ間隙Gi+1では、次の1周期ではなく、次の1周期よりもさらに1周期遅れて加速半周期となる半周期の間の高周波電界強度がピークとなる少し前の位相において加速されるように高周波電界強度、すなわち円筒共振器に供給する高周波電力を調整する。 以上では第二の加速周期差が2周期となる。 このような加速では、第二のイオンの加速は、第一のイオンよりも速度が遅くなる。 すなわちドリフトチューブ線形加速器から出射される第二のイオンのエネルギーは第一のイオンのエネルギーよりも小さくなる。 第一のイオンの電荷q1、質量A1、第二のイオンの電荷q2、質量A2としたとき、第二のイオンのエネルギーを第一のイオンのエネルギーの(q2/A2)/(q1/A1)(電荷質量比分)倍とするのが好ましい。

    また、第一のイオンと第二のイオンの電荷質量比の差が大きい場合、第二の加速周期差はさらに大きくして3周期や4周期としてもよい。 このように、第二のイオンを加速する場合の第二の加速周期差が、第一のイオンを加速する場合の第一の加速周期差よりも大きくなるように動作させる。 好ましくは、第一の加速周期差を1周期とし、第二の加速周期差を(1+n)周期(nは正の整数)とすればよい。 このように、アルバレ型ドリフトチューブ線形加速器においても、IH型ドリフトチューブ線形加速器と同様、電荷質量比が小さい第二のイオンにおいて、第一のイオンよりも出射させるエネルギーが低くなるように設計することで、第一のイオンを加速するときに供給する高周波電力と、第一のイオンよりも電荷質量比が小さい、すなわち重い第二のイオンを加速するときに供給する高周波電力との差が小さくて済み、大きな高周波発生器が必要なくなる。

    以上、実施の形態2によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器、すなわちアルバレ型ドリフトチューブ線形加速器における本発明の動作をまとめると、実施の形態1で説明したIH型ドリフトチューブ線形加速器における動作と同様、次のようになる。 第一のイオンを加速する場合に、複数のドリフトチューブ間隙のうち一のドリフトチューブ間隙において第一のイオンが加速される加速半周期と、当該加速された第一のイオンが当該一のドリフトチューブ間隙の隣のドリフトチューブ間隙に到達して加速される加速半周期との差が第一の加速周期差となる高周波電力をドリフトチューブ線形加速器に供給し、第一のイオンよりも電荷質量比が小さい第二のイオンを加速する場合、前記一のドリフトチューブ間隙において加速される加速半周期と、当該加速された第二のイオンが当該一のドリフトチューブ間隙の隣のドリフトチューブ間隙に到達して加速される加速半周期との差である第二の加速周期差が、第一の加速周期差よりも大きくなる高周波電力の高周波を、ドリフトチューブ線形加� ��器に供給することにより、第一のイオンを加速できる高周波発生器を用いて、出射されるイオンのエネルギーは第一のイオンよりも低いエネルギーとなるが、第二のイオンも加速することができるシンクロトロン用入射器システムを構成することができる。

    なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。

    1 第一イオン源、2 第二イオン源、3 ステム、4 低エネルギービーム輸送路、5 ドリフトチューブ線形加速器、6 円筒共振器、8 収束機器、10 シンクロトロン用入射器システム、20 加速軸、43 合成器、50 高周波発生器、100 シンクロトロン、G1〜G7 ドリフトチューブ間隙、T、T1〜T7 ドリフトチューブ、Pai、Pai+1、Pai+2 加速半周期、Tf 電極

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムの構成を示すブロック図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ加速器の概略構成を示す側面断面図である。

    イオン粒子がドリフトチューブ間隙で加速されながら進む様子を示す模式図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器における第一のイオンの加速動作を説明する線図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器における第二のイオンの加速動作を説明する線図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムの別のドリフトチューブ線形加速器における第一のイオンの加速動作を説明する線図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムの別のドリフトチューブ線形加速器における第二のイオンの加速動作を説明する線図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器のドリフトチューブの概略構成の一例を示す断面図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ

    線形加速器の要部の概略構成の一例を示す側面断面図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ

    線形加速器の要部の概略構成の一例を示す斜視図である。

    本発明の実施の形態1によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ

    線形加速器の図9の構成の一例による動作を説明する図である。

    本発明の実施の形態2によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ

    線形加速器の概略構成を示す側面断面図である。

    本発明の実施の形態2によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器における第一のイオンの加速動作を説明する線図である。

    本発明の実施の形態2によるシンクロトロン用入射器システムのドリフトチューブ線形加速器における第二のイオンの加速動作を説明する線図である。

    図3は、イオン粒子がドリフトチューブ間隙で加速されながら進む様子を示す模式図である。 図3の左から右方向に加速軸20に沿ってイオン粒子が進行する。 イオン粒子がi番目のドリフトチューブ間隙Giで加速され、ドリフトチューブTi内では加速されずに進行して、次のドリフトチューブ間隙Gi+1で加速される。 再びドリフトチューブTi+ 内を加速されずに進行し、さらに次のドリフトチューブ間隙Gi+2で加速される。 このように、イオン粒子は、ドリフトチューブ間隙を通過する度に加速されてゆく。 図3では、模式的に、加速されるイオン粒子を二重丸で、加速されずに進行するイオン粒子を黒丸で示している。

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