長寿命核分裂生成物の処理方法

申请号 JP2016544629 申请日 2015-12-24 公开(公告)号 JPWO2017109899A1 公开(公告)日 2017-12-21
申请人 一般財団法人高度情報科学技術研究機構; 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構; 发明人 浩二 仁井田; 浩二 仁井田; 和文 辻本; 和文 辻本;
摘要 荷電粒子ビームを入射させるターゲットの構成を最適化することで、安定核種への変換処理を効率化させる長寿命核分裂生成物の処理方法を提供する。【解決手段】長寿命核分裂生成物の処理方法は、 放射性 廃棄物10からCs、Zr、Se、Sn及びPdのうち少なくとも二種類の元素(第1元素11及び第2元素12)を個別に分離抽出し(S21)、荷電粒子ビーム15が入射した場合の飛程データを取得し(S22)、長さサイズが飛程データの1.0倍から2.0倍の範囲にある第1バルク体21を第1元素11により作成し(S23〜S25)、第1バルク体の周囲に配置される第2バルク体を第2元素12により作成し(S26,S27)、核子当たりのエネルギー値が0.5〜1.5GeVの範囲内である荷電粒子ビームを照射させる(S28〜S30)。
权利要求

放射性廃棄物から、セシウム(Cs)、ジルコニウム(Zr)、セレン(Se)、スズ(Sn)及びパラジウム(Pd)のうち少なくとも二種類の元素(第1元素及び第2元素)を、個別に分離抽出するステップと、 前記第1元素で構成した仮想的なターゲットに、所定の性能値の荷電粒子ビームが、入射した場合の飛程データを取得するステップと、 前記荷電粒子ビームの入射軸に沿う方向の長さサイズが前記飛程データの1.0倍から2.0倍の範囲にある第1バルク体を、前記第1元素により作成するステップと、 前記入射軸が回転対称軸となるように前記第1バルク体の周囲に配置される第2バルク体を、前記第2元素により作成するステップと、 前記性能値のうち核子当たりのエネルギー値が0.5〜1.5GeVの範囲内である荷電粒子ビームを、前記第1バルク体及び前記第2バルク体を複合化させたターゲットに、前記入射軸に沿って照射させるステップと、を含むことを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。請求項1に記載の長寿命核分裂生成物の処理方法において、 前記第1元素及び前記第2元素のうち少なくとも一方は、前記分離抽出がなされた後にさらに中性子の数に基づく核種の偶奇濃縮がなされ、長寿命核分裂生成物の濃度が高められていることを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。請求項1又は請求項2に記載の長寿命核分裂生成物の処理方法において、 前記第1元素は、セシウム(Cs)であることを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の長寿命核分裂生成物の処理方法において、 前記第2元素は、パラジウム(Pd)であることを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の長寿命核分裂生成物の処理方法において、 前記荷電粒子ビームは、プロトンビームであることを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。放射性廃棄物から、セシウム(Cs)、ジルコニウム(Zr)、セレン(Se)、スズ(Sn)及びパラジウム(Pd)のうち少なくとも一種類の元素(第1元素)を、個別に分離抽出するステップと、 前記第1元素に対し、中性子の数に基づく核種の偶奇濃縮を実施し、長寿命核分裂生成物の濃度を高めるステップと、 前記第1元素で構成した仮想的なターゲットに、所定の性能値の荷電粒子ビームが、入射した場合の飛程データを取得するステップと、 前記荷電粒子ビームの入射軸に沿う方向の長さサイズが前記飛程データの1.0倍から2.0倍の範囲にある第1バルク体を、前記第1元素により作成するステップと、 前記性能値のうち核子当たりのエネルギー値が0.5〜1.5GeVの範囲内である荷電粒子ビームを、前記第1バルク体に、前記入射軸に沿って照射させるステップと、を含むことを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。請求項6に記載の長寿命核分裂生成物の処理方法において、 前記荷電粒子ビームを照射するステップの前に、 セシウム(Cs)、ジルコニウム(Zr)、セレン(Se)、スズ(Sn)及びパラジウム(Pd)のうち前記第1元素を除く少なくとも一種類の元素(第2元素)を、個別に分離抽出するステップと、 前記第2元素により作成した第2バルク体を前記第1バルク体の周囲に前記入射軸が回転対称軸となるように配置するステップと、を含むことを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。請求項7に記載の長寿命核分裂生成物の処理方法において、 前記第2元素を分離抽出したステップの後に、この第2元素に対しても前記偶奇濃縮を実施し、長寿命核分裂生成物の濃度を高めるステップを、含むことを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。

放射性廃棄物から、セシウム(Cs)、ジルコニウム(Zr)、セレン(Se)、スズ(Sn)及びパラジウム(Pd)のうち少なくとも二種類の元素(第1元素及び第2元素)を、同じ原子番号を有し質量数の異なる同位体元素の群として、個別に分離抽出するステップと、 前記第1元素で構成した仮想的なターゲットに、所定の性能値の荷電粒子ビームが、入射した場合の飛程データを取得するステップと、 前記荷電粒子ビームの入射軸に沿う方向の長さサイズが前記飛程データの1.0倍から2.0倍の範囲にある第1バルク体を、前記第1元素により作成するステップと、 前記入射軸が回転対称軸となるように前記第1バルク体の周囲に配置される第2バルク体を、前記第2元素により作成するステップと、 前記性能値のうち核子当たりのエネルギー値が0.5〜1.5GeVの範囲内である荷電粒子ビームを、前記第1バルク体及び前記第2バルク体を複合化させたターゲットに、前記入射軸に沿って照射させるステップと、を含むことを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。請求項1に記載の長寿命核分裂生成物の処理方法において、 前記第1元素及び前記第2元素のうち少なくとも一方は、前記分離抽出がなされた後にさらに中性子の数に基づく核種の偶奇濃縮がなされ、長寿命核分裂生成物の濃度が高められていることを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。請求項1又は請求項2に記載の長寿命核分裂生成物の処理方法において、 前記第1元素は、セシウム(Cs)であることを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の長寿命核分裂生成物の処理方法において、 前記第2元素は、パラジウム(Pd)であることを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の長寿命核分裂生成物の処理方法において、 前記荷電粒子ビームは、プロトンビームであることを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の長寿命核分裂生成物の処理方法において、 前記荷電粒子ビームは、ジュウテロンビームであることを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の長寿命核分裂生成物の処理方法において、 前記荷電粒子ビームは、炭素ビームであることを特徴とする長寿命核分裂生成物の処理方法。

说明书全文

本発明は、核燃料の燃焼に伴い生成した長寿命核分裂生成物の処理技術に関する。

原子発電所を保有する電力事業者は、大量の使用済核燃料を保管しており、これらの安全・有効な処理方法を確立することが喫緊の課題となっている。 そこで、使用済核燃料から、核分裂性のU−235やPuを抽出し、非核分裂性のU−238に3−5%程度混ぜて、新しい燃料を再生する核燃料サイクルが推進されている。

100万キロワット級の原子力発電所からは、毎年約20トンの使用済核燃料が発生する。3%濃縮ウラン燃料(U−235:3%,U−238:97%)の使用済核燃料には、U−235が1%、U−238が95%、Puが1%、その他生成物が3%含まれている。 そして、この生成物は、マイナーアクチノイド(MA)、白金族、短寿命核分裂生成物(SLFP:Short Lived Fission Products)、長寿命核分裂生成物(LLFP:Long Lived Fission Products)に分類される。

これら生成物は、中性子を吸収する性質が高く、その増加に伴い核分裂の連鎖反応の進行を妨げる原因となる核種が多く含まれる。また、これらの核種の多くは放射性核種である。 このため、これら生成物は、使用済核燃料の再処理に伴って不可避的に発生する高レベル廃液(HALW;Highly Active Liquid Waste)及びこの高レベル廃液を処分できる形態にしたガラス固化体に、多く含まれている。 この高レベル廃液(HALW)のガラス固化体の放射能は、非常に長期間(数万年以上)高いレベルで残るために、人間による管理が失われても問題のない処分方法が必要となっている。実際に、このガラス固化体は、既に保有されており、処分までの間に厳重な管理が行われている。

そこで、高レベル廃液(HALW)の処分、及び既に保有されているガラス固化体の管理に伴う負担軽減を目的として、含まれる核種を半減期や化学的性質に応じたグループに分離し、グループ毎にそれぞれの性質に応じた処分法を選択することが検討されている。 これにより、高レベル放射性廃棄物の放射能が高い状態が続く期間を短縮し、さらに保管スペースを節約することができる。

そして、高レベル廃液(HALW)及びガラス固化体から分離されたグループのうちLLFPを含むグループに対しては、核変換技術を適用し、短寿命放射性核種又は安定核種に核変換する技術が検討されている。 具体的には、LLFPに、ガンマ線を照射して中性子を放出させる光核反応(γ,n)や中性子を照射してガンマ線を放出させる中性子捕獲反応(n,γ)を適用し、より半減期の短い同位体に核変換する技術が開示されている(例えば、特許文献1,2)。

特開平5−119178号公報

特表2002−519678号公報

しかし、上述の光核反応(γ,n)や中性子捕獲反応(n,γ)では、反応断面積の核種依存性が大きいために、効率的な核変換を達成できるLLFPが限定的である。 そこで、高エネルギーの荷電粒子ビームを、LLFPに直接照射して、核変換させることが考えられる。

ところで、既に現存するLLFPの量、並びに国内の原子力発電所がフル稼働した場合に今後新たに発生するLLFPの量を鑑みると、核変換処理の高速化が求められる。 この核変換処理を高速化する課題は、高エネルギーでかつ大電流の荷電粒子ビームを照射するように、加速器の性能向上を図ることで解決される。 しかし、そのような性能上限を無制限に追及していく高エネルギー加速器の開発は、コストや設備の規模を鑑みれば現実的でない。

本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、荷電粒子ビームを入射させるターゲットの構成を最適化することで、安定核種への変換処理を効率化させる長寿命核分裂生成物の処理方法を提供することを目的とする。

長寿命核分裂生成物の処理方法において、放射性廃棄物から、セシウム(Cs)、ジルコニウム(Zr)、セレン(Se)、スズ(Sn)及びパラジウム(Pd)のうち少なくとも二種類の元素(第1元素及び第2元素)を、個別に分離抽出するステップと、前記第1元素で構成した仮想的なターゲットに、所定の性能値の荷電粒子ビームが、入射した場合の飛程データを取得するステップと、前記荷電粒子ビームの入射軸に沿う方向の長さサイズが前記飛程データの1.0倍から2.0倍の範囲にある第1バルク体を、前記第1元素により作成するステップと、前記入射軸が回転対称軸となるように前記第1バルク体の周囲に配置される第2バルク体を、前記第2元素により作成するステップと、前記性能値のうち核子当たりのエネルギー値が0.5〜1.5GeVの範囲内である荷電粒子ビームを、前記第1バルク体及び前記第2バルク体を複合化させたターゲットに、前記入射軸に沿って照射させるステップと、を含むことを特徴とする。

本発明により、荷電粒子ビームを入射させるターゲットの構成を最適化することで、安定核種への変換処理を効率化させる長寿命核分裂生成物の処理方法が提供される。

本発明に係る放射性廃棄物の処理方法の実施形態を説明するフローチャート。

本実施形態において荷電粒子ビームが照射されるターゲットの構成図。

使用済核燃料に含まれる長寿命核分裂生成物(LLFP)のうち本実施形態が対象とするものの同位体組成を示すテーブル。

使用済核燃料の年間処理目標量を800トンとした場合、図3のLLFP核種及びその同位体元素の年間発生量、並びにそれらの密度を示すテーブル。

ターゲットの内部におけるLLFP核種(

135Cs,

107Pd,

93Zr,

79Se,

126Sn)の中性子フラックス分布を示すグラフ。

LLFP核種(

135Cs,

107Pd,

93Zr,

79Se,

126Sn)の(n,γ)反応及び(n,2n)反応の反応断面積を示すグラフ。

R2=15cmで固定、R1=0〜15cmの範囲で可変、とした寸法のCs+Pd複合ターゲットにおいて、ワンショット当たりの荷電粒子が消滅させるLLFPの粒子数を表すグラフ。

R2=15cmで固定、R1=0〜15cmの範囲で可変、とした寸法のZr+Pd複合ターゲットにおいて、ワンショット当たりの荷電粒子が消滅させるLLFPの粒子数を表すグラフ。

R2=15cmで固定、R1=0〜15cmの範囲で可変、とした寸法のSe+Pd複合ターゲットにおいて、ワンショット当たりの荷電粒子が消滅させるLLFPの粒子数を表すグラフ。

R2=15cmで固定、R1=0〜15cmの範囲で可変、とした寸法のCs+Zr複合ターゲットにおいて、ワンショット当たりの荷電粒子が消滅させるLLFPの粒子数を表すグラフ。

LLFP核種(

135Cs,

107Pd,

93Zr,

79Se)の各々により構成される仮想ターゲットについて、プロトンビームのエネルギーE(MeV)を横軸とし、1個のLLFP核種を変換させるのに必要な変換エネルギーE/h(MeV)を縦軸に表したグラフ。

135Cs核種により構成される仮想ターゲットについて、陽子(プロトン)、重陽子(ジュウテロン)、炭素による荷電粒子ビームの核子当たりのエネルギーを横軸とし、変換エネルギーを縦軸に表したグラフ。

107Pd核種により構成される仮想ターゲットについて、陽子(プロトン)、重陽子(ジュウテロン)、炭素による荷電粒子ビームの核子当たりのエネルギーを横軸とし、変換エネルギーを縦軸に表したグラフ。

93Zr核種により構成される仮想ターゲットについて、陽子(プロトン)、重陽子(ジュウテロン)、炭素による荷電粒子ビームの核子当たりのエネルギーを横軸とし、変換エネルギーを縦軸に表したグラフ。

79Se核種により構成される仮想ターゲットについて、陽子(プロトン)、重陽子(ジュウテロン)、炭素による荷電粒子ビームの核子当たりのエネルギーを横軸とし、変換エネルギーを縦軸に表したグラフ。

135Csを含む同位体元素の群を元素分離してターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示すグラフ。

135Csを含む同位体元素の群を偶奇濃縮してターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示すグラフ。

135Csを同位体抽出してターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示すグラフ。

107Pdを含む同位体元素の群を元素分離してターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示すグラフ。

107Pdを含む同位体元素の群を偶奇濃縮してターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示すグラフ。

107Pdを同位体抽出してターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示すグラフ。

93Zrを含む同位体元素の群を元素分離してターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示すグラフ。

93Zrを含む同位体元素の群を偶奇濃縮してターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示すグラフ。

93Zrを同位体抽出してターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示すグラフ。

79Seを含む同位体元素の群を元素分離してターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示すグラフ。

79Seを含む同位体元素の群を偶奇濃縮してターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示すグラフ。

79Seを同位体抽出してターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示すグラフ。

複合ターゲットと単独ターゲットとを、それぞれ元素分離、偶奇濃縮、同位体抽出により作製し、1.0GeVのプロトンをワンショット入射させた際のLLFP核種の消滅数を求めたテーブル。

以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。 図1のフローチャートに示すように(適宜、図2参照)、実施形態に係る長寿命核分裂生成物(以下、LLFPという)の処理方法は、放射性廃棄物10から、セシウム(Cs)、ジルコニウム(Zr)、セレン(Se)、スズ(Sn)及びパラジウム(Pd)のうち少なくとも二種類の元素(第1元素11及び第2元素12)を、個別に分離抽出するステップ(S21)と、第1元素11で構成した仮想的なターゲットに、所定の性能値13の荷電粒子ビーム15(図2)が、入射した場合の飛程データを取得するステップ(S22)と、荷電粒子ビーム15の入射軸16に沿う方向の長さサイズLが飛程データの1.0倍から2.0倍の範囲にある第1バルク体21を、第1元素11により作成するステップ(S23〜S25)と、入射軸16が回転対称軸となるように第1バルク体21の周囲に配置される第2バルク体22を、第2元素12により作成するステップ(S26,S27)と、性能値13のうち核子当たりのエネルギー値が0.5〜1.5GeVの範囲内である荷電粒子ビーム15を、第1バルク体21及び第2バルク体22を複合させたターゲット23に、入射軸16に沿って照射させるステップ(S28〜S30)と、を含む。

そして、ターゲット23に対する荷電粒子ビーム15の照射を継続し(S31 No)、設定した時間が経過したところで照射を停止する(S31 Yes)。 そして、照射済みのターゲット23を荷電粒子ビーム15の照射系の外に搬出するとともに(S32)新たなターゲット23に交換して照射系に配置する(S33,S29)。 以降は、上述のフローを繰り返す。

本実施形態で適用対象となる放射性廃棄物10は、核分裂生成物(FP:Fission Products)を含むものを想定している。この核分裂生成物(FP)とは、ウランU−235やプルトニウムPu−239等の核分裂性核種が核分裂して、二つ以上に分離した核種を指す。 ウランU−235の核分裂生成物(FP)の元素の種類は、ニッケル(原子番号28)からジスプロシウム(原子番号66)までの約40種類である。 そして、ウランU−235の核分裂生成物(FP)の質量数に対する収率分布は、72から160の範囲にわたり、質量数90及び140付近に極大値をもつダブルピーク形状をなしている。

このように核分裂生成物(FP)は、同位体を区別すると数百種類にわたり、さらにこれらは安定核種と放射性核種とに分類され、このうち放射性核種は原子核崩壊により、より安定な核種に変化する。 原子核崩壊の半減期の短い放射性核種(SLFP)は、短時間に多量の放射線を放つが、時間経過とともに放射能が急速に減衰するため、所定期間の保管により無害化することができる。

一方で、半減期の長いLLFPは、放射線量が少ないが減衰速度が遅いために、大量に所持している場合は、人間による管理が失われても問題のない処分方法が必要となっている。 このために、LLFPを、短寿命放射性核種(SLFP)又は安定核種に核変換することができれば、放射性廃棄物の管理負担を軽減することができる。

図3は、使用済核燃料に含まれるLLFPのうち本実施形態が対象とするものの同位体組成を示している。 核分裂生成物(FP)に含まれる主要なLLFP(カッコ内は半減期)としては、セレンSe−79(2.95×105年)、パラジウムPd−107(6.5×106年)、ジルコニウムZr−93(1.5×106年)、セシウムCs−135(2.3×106年)、ヨウ素I−129(1.57×107年)、テクネチウムTc−99(2.1×105年)、スズSn−126(2.3×105年)が挙げられる。

このうち、ヨウ素I−129、及びテクネチウムTc−99については、他の方法により効率的に短寿命化させる報告例があるため、本実施形態において検討から外しているが、本発明の対象にすることもできる。 なお、半減期が1010年以上の放射性核種は、準安定核種とみなし、長寿命核分裂生成物に含めていない。

図4は、使用済核燃料の年間処理目標量を800トンとした場合、図3のLLFP核種及びその同位体元素の年間発生量、並びにそれらの密度を示している。

図1(S21)の工程は、多数の核種が混在している放射性廃棄物10から、着目したLLFP核種を含む同位体元素の群を分離抽出する工程である。 つまり、注目するLLFP核種(135Cs,107Pd,93Zr,79Se,126Sn)と同じ原子番号(陽子数)Zを有し、質量数(陽子数+中性子数)Aの異なる元素の群(Cs,Pd,Zr,Se,Sn)がそれぞれ別々に抽出される。

このような同位体元素群である第1元素11及び第2元素12の分離抽出方法は、一般的な元素分離方法を適用することができる。そのような元素分離方法は、例えば、電解法、溶媒抽出法、イオン交換法、沈殿法、および乾式法もしくは、これらの組合せが挙げられる。また、放射性廃棄物としてガラス固化体が対象の場合、分離抽出の前工程でガラス固化体の溶解もしくは分解が必要であるが、一般的な溶解/分解法が適用でき、例えば、アルカリ融解法、溶融塩法(電解還元、化学還元)、高温融解法、ハロゲン化法、酸溶解法、アルカリ溶解法が挙げられる。ガラス固化体が溶解もしくは分解した後は、前記の一般的な元素分離方法を適用することができる。

さらに(S21)の工程では、放射性廃棄物10から抽出された後の第1元素11及び第2元素12のうち少なくとも一方に対し、さらに中性子の数に基づく核種の偶奇濃縮がなされ、LLFP核種の濃度を高める場合がある。 偶奇濃縮とは、同位体元素群における濃縮効果の偶奇性に基づいて、中性子数が奇数の同位体群及び中性子数が偶数の同位体群のいずれか一方に濃縮する処理を意味する。

原子スペクトル線の振動数が同位体によってわずかにずれ、奇数核と偶数核においてそれぞれ光の偏光に対する光学遷移の選択則が異なるという、アイソトープシフト現象が知られている。このアイソトープシフト現象は、左右円偏光レーザーによる電子励起過程における遷移選択則が、陽子数が偶数の場合、核スピン0である偶々核と偶奇核で異なるという性質に基づく。 偶奇濃縮の処理工程は、具体的には、偏光を制御したレーザーを照射して、奇数核種のみをイオン化させることが挙げられるが、特に限定はない。 この偶奇濃縮の処理工程を経ることにより、LLFP核種の濃度を高めることができ、ワンショット当たりの荷電粒子により消滅させるLLFP核種の粒子数を増加させることができる。

図1(S22)の工程は、第1元素11で構成した仮想的なターゲットに、所定の性能値13の荷電粒子ビーム15(図2)が、入射した場合の飛程データを演算する。 高エネルギーの荷電粒子ビーム15が第1元素11で構成されるターゲットに入射した場合を想定する。この同位体元素群の内部を通過する荷電粒子ビーム15は、電子と相互作用を起こしてエネルギーを消失し、このターゲットが十分に大きければ途中で停止する。

荷電粒子ビーム15が入射してから停止するまでの距離を飛程と呼ぶ。この飛程は、入射した荷電粒子の電荷量、質量及びエネルギーといったビーム性能値13、並びにターゲットの電子密度によって決定される。よって、共通の荷電粒子ビーム15を用いる場合、飛程は、ターゲットを構成する核種の電荷密度に応じて減少する関係を有している。

図1(S23)の工程は、演算により取得した飛程データを1.0倍から2.0倍の範囲で拡張した値を、ターゲット23(図3)の長さサイズLに設定する。 荷電粒子ビーム15がターゲット23に入射した一次粒子は、この飛程において、ターゲット23を構成する第1元素11を核反応により核変換させる。 このためターゲット23の長さサイズLが、1.0倍より小さいと、一次粒子がターゲット23を突き抜けて、ワンショット当たりの荷電粒子が消滅させるLLFP核種の数が減少してしまう。 そしてターゲット23の長さサイズLが、2.0倍よりも大きいと、一次粒子が未到達の領域が増えて、ターゲット23で全体平均した核種の変換率が低下してしまう。

この一次粒子による核変換により、ターゲット23に含まれるLLFPを消滅させると同時に、多くの新たな核種を生成する。 さらに、この一次粒子による核反応に伴って、陽子、中性子、軽粒子等といった二次粒子を生成する。この二次粒子のうち、高エネルギーの陽子及び中性子は、再びターゲットの内部を通過し、新たな核反応を誘起する。

図5のグラフは、ターゲットの内部におけるLLFP核種(135Cs,107Pd,93Zr,79Se,126Sn)の中性子フラックス分布を示している。図6のグラフは、LLFP核種(135Cs,107Pd,93Zr,79Se,126Sn)における(n,γ)反応及び(n,2n)反応の反応断面積を示している。 図5におけるそれぞれの核種の中性子フラックス分布のピークが、0.2〜2.0MeVの範囲に存在することを鑑みると、図6からこれら核種の核変換の反応チャンネルは、(n,γ)反応(Capture)であることが分かる。さらに、この(n,γ)反応における反応断面積(Cross Section)の値は、核種の間で大きく相違している。 荷電粒子ビーム15がターゲット23に入射して生成した二次粒子のうち中性子が、新たに誘起する核反応は、Pd>Se>Cs>Zr>Snの順番で、高頻度になる。

このように、ターゲットに荷電粒子ビーム15が入射した場合、ターゲットの内部において複雑な核反応を誘起ことが知られている。 このような、複雑な核反応を解析する数値シミュレーションコード14としてPHITS(Particle and Heavy Ion Transport code System)を用いる。

PHITSとは、高度情報科学技術研究機構(RIST)、日本原子力研究開発機構(JAEA)、高エネルギー加速器研究機構(KEK)が中心となって開発した粒子・原子核の輸送をシミュレーションするコードである。 このPHITSは、核子、中間子、光子、電子、原子核等のほぼ全ての粒子の物質中の輸送を扱うことができ、それら粒子が巨視的な体系の中で引き起こす逐次的な核反応、また、荷電粒子の電離過程等を解析することができる。 なお、本発明の核反応を解析するのに採用する数値シミュレーションコード14は、特にPHITSに限定されるものではない。

ここで、図1(S26)の工程において、ターゲット23の外径又は第2バルク体22の外径である第2半径R2は、荷電粒子ビーム15の照射する設備(図示略)の大きさで決定される。 そして、図1(S24)の工程において、第1バルク体21の外径又は第2バルク体22の内径である第1半径R1は、ワンショット当たりの荷電粒子により、ターゲット23に含まれるLLFPが、可能な限り多く消滅する観点から設定される。

また同様の観点から、第1バルク体21を構成する第1元素11と第2バルク体22を構成する第2元素12との組み合わせも設定される。 具体的に、この組み合わせは、入射した荷電粒子の飛程の長さ、及び(n,γ)反応における反応断面積値の大きさ等を勘案して決定される。

図7から図10は、R2=15cmで固定、R1=0〜15cmの範囲で可変、とした寸法のターゲット23において、ワンショット当たりの荷電粒子(1GeVのプロトン)が消滅させるLLFPの粒子数を表している。 なお、図7から図10のターゲット23の長さサイズLは、第1バルク体21に採用された核種の飛程に対応させて、それぞれL=300cm,80cm,110cm、330cmに設定している。また、偶奇濃縮の処理を行って作成したターゲット23による結果を示している。

そして、図7から図9は、(n,γ)反応断面積値が一番大きいPdを第2バルク体22とし、第1バルク体21としてそれぞれCs,Zr,Seを採用したターゲット23の結果である。 そして、図7及び図10は、入射した荷電粒子の飛程が一番長い(密度の一番小さい)Csを、第1バルク体21とし、第2バルク体22としてそれぞれPd,Zrを採用したターゲット23の結果である。 なお、Snについては、本検討の基礎となる図6に示した反応断面積がZrに近似しており、ZrをSnに置き換えた結果は同等の傾向を示すので、Snを個別に含む検討結果の開示を以降において省略する。

ここで、R1=15cmのときのLLFP核種の消滅数は、第1元素11のみで単独構成されたターゲット23による結果に対応する。 また、R1=0cmのときのLLFP核種の消滅数は、第2元素12のみで単独構成されたターゲット23による結果に対応する。

図7から図9のグラフにおいて、R1=0cmのときよりも消滅数が大きくなるR1の範囲は、ターゲット23が一種類の核種で単独構成されるよりも、複数の核種で複合化して構成されることの効果が顕著に表れる範囲といえる。 また図7から図10のグラフにおいて、R1=0cmのときのLLFPの粒子の消滅数と及びR1=15cmのときの消滅数との加算平均値にラインがひかれている。 この加算平均値よりも消滅数が大きくなるR1の範囲も、ターゲット23が一種類の核種で単独構成されるよりも、複数の核種で複合化して構成されることの効果が表れる範囲といえる。

つまり、荷電粒子ビーム15がターゲット23に入射すると、この入射方向に沿って一次粒子が内部通過する過程で、全方位に二次粒子が放出される。 一次粒子に比べて核変換に対する二次粒子の寄与度が低いLLFP核種においては、発生した二次粒子は、有効利用されることなくターゲットの外部に排出されてしまう。 そこで、そのようなLLFP核種を含む第1バルク体21を中心に据えて、その周囲に核変換に対する二次粒子の寄与度が高いLLFP核種を含む第2バルク体22を配置する。このようにターゲット23を複合化することにより、二次粒子を有効利用し、ワンショット当たりの荷電粒子が消滅させるLLFP核種の数を増やすことができる。

図1(S25)(S27)(S28)の工程は、ターゲット23を作製する工程である。 このターゲット23における第1バルク体21及び第2バルク体22の組み合わせ、並びに第1半径R1は、図4に示されるCs,Pd,Zr,Se,Snの在庫比率、及び図7〜図10に例示されるLLFP核種の消滅数を考慮しつつ、決定される。 なお、本実施形態において、第1バルク体21の周囲に配置される第2バルク体22は、中空円筒形状のものが例示されている。しかし、第2バルク体22の形態に特に限定はなく、複数に分離したものを第1バルク体の周囲に配置する場合も含まれる。 (S21)〜(S28)の工程は、放射性廃棄物10の在庫が無くなるまで、続けられる。

図1(S29)〜(S31)の工程は、作製したターゲット23に荷電粒子ビーム15を照射する工程である。以下において、適用する荷電粒子ビーム15の仕様について考察する。 荷電粒子ビーム15を照射して仮想ターゲットに含まれるLLFP核種を核変換する場合、次式(1)〜(4)の関係が導かれる。 ΔN(t)/Δt=−Φ・σ・N(t) (1) N(t)=N0exp(−Φ・σ・t) (2) T1/2=ln(2)/(Φ・σ) (3) h=φ・σ・ρ・V (4) ρ:仮想ターゲットの粒子密度 V:仮想ターゲットの体積 σ:核変換の有効断面積 N0(=ρ・V):時刻t=0において仮想ターゲットに含まれるLLFP核種の数 N(t):時刻tにおいて仮想ターゲットに含まれるLLFP核種の数 T1/2:N0から1/2N0に減少するまでかかる時間(半減期) h:ワンショット当たりの荷電粒子が変換させるLLFP核種の数 φ:ワンショット当たりの荷電粒子から発生し核反応に寄与する一次粒子や二次粒子(中性子)の量 Φ(=φ×ビーム電流値):ビームの入射により発生し核反応に寄与する一次粒子や二次粒子(中性子)のフラックス(単位時間当たりの流量)

図11のグラフは、荷電粒子ビーム15をプロトンビームとし、横軸にこのプロトンビームのエネルギーE(MeV)をとり、縦軸に1個のLLFP核種を変換させるのに必要な変換エネルギーE/h(MeV)をとり、同位体抽出された135Cs,107Pd,93Zr,79SeのLLFP核種の各々により仮想ターゲットを構成した場合について表したものである。 図11のグラフは、縦軸が小さい値を示す横軸のエネルギー範囲の荷電粒子ビームが適用されることにより、LLFP核種が少ないエネルギーで効率的に変換されることを表している。

なお仮想ターゲットの形状は、次のように設定している。長さサイズは、構成核種の飛程の1.1倍に設定している。円形断面の半径サイズは、200mAの荷電粒子ビーム15を照射して、数式(3)の半減期が3年となるように、設定されている。 なお、このように形状設定した仮想ターゲットにおいて、その質量が300kgを超えて現実性が乏しいものについては、グラフ中、白抜のマークで示している。

図12〜図15のグラフは、仮想ターゲットを構成するLLFP核種を135Cs,107Pd,93Zr,79Seとし、荷電粒子ビーム15を陽子(プロトン)、重陽子(ジュウテロン)、炭素とし、荷電粒子ビーム15の核子当たりのエネルギーに対する変換エネルギーをLLFP核種ごとに表したものである。 なお、仮想ターゲットの長さサイズに関して、荷電粒子ビーム15が陽子と重陽子の場合は図11と同じ(飛程の1.1倍)であるが、炭素の場合は、二次中性子の効果を考慮して、Pdは飛程の2.0倍とし、その他のCs,Zr,Seは飛程の1.5倍に設定している。

図11〜図15のグラフより、陽子、重陽子、炭素のいずれにおいても荷電粒子ビーム15の核子当たりのエネルギー値13が0.5〜1.5GeVの範囲、好ましくは0.5〜1.0GeVの範囲であることが、変換エネルギーが小さくLLFP核種の変換が高効率となる結果が得られている。 さらに、荷電粒子ビーム15としてプロトンビームを採用することが、ターゲットのサイズを小さくすることができるといった結果が得られている。

図1(S29)〜(S31)の工程において、荷電粒子ビーム15を設定時間だけ照射することにより、ターゲット23に含まれるLLFP核種が、所定の割合で消滅する。 そして、ビーム照射の終了したターゲット23は次の工程に搬送され(S32)、交換された新たなターゲット23に対し、ビーム照射が再開される(S33)。 なお、(S29)〜(S33)の工程は、作製したターゲット23の在庫が無くなるまで、続けられる。

以上において実施形態に係る長寿命核分裂生成物の処理方法の一連の流れを説明した。 次に、図1(S21)において、LLFP核種を含む元素分離のみを実施した場合、さらに偶奇濃縮を実施した場合、さらにLLFP核種のみを抽出する同位体抽出をした場合に分けて、ビーム照射によるLLFP核種の消滅効果について解析する。

図16から図27のグラフは、135Cs,107Pd,93Zr,79Seについて、それぞれ元素分離、偶奇濃縮、同位体抽出によりターゲットを作製し、1.0GeVのプロトンビームを照射した場合の、ワンショット当たりの荷電粒子により変換及び生成する核種の数量分布を示している。 なお元素分離、及び偶奇濃縮における同位体組成のデータは、一般的な使用済核燃料における同位体組成のデータを用いている。

図16から図27のグラフにおいて、数量分布は、陽子入射反応(proton)、(n,γ)反応、(n,2n)反応、その他の中性子反応(neutron other)の4つの反応チャンネルに分類されている。 また、縦軸の0を基点として、ワンショット当たりの荷電粒子により変換した核種の数量分布を上側に表し、生成した核種の数量分布を下側に表している。 したがって、上側の変換数から下側の生成数を差し引いた値が、対応する核種の消滅数に相当する。

図16から図18のグラフよりCs−135は、使用済燃料組成で元素分離したときの消滅数が0.226と低く、偶奇濃縮をしたとしても0.229とほとんど変わらない。この理由は、使用済燃料組成においてほとんど偶数の同位体が含まれていないことによる。またCs−135は、同位体抽出を行っても消滅率が2.36止まりで、これは他のLLFP核種の中最も低い。その理由は、密度が最も低いことと、(n,γ)の断面積が小さいことによると考えられる。

図19から図21のグラフよりPd−107は、使用済燃料組成で元素分離したときの消滅数が0.916、偶奇濃縮をすると2.94と約3.2倍となり、偶奇濃縮の影響が大きい。さらに、Pd−107は、同位体抽出を行うと消滅率が8.52となり、これは他のLLFP核種の中最も高い。その理由は、密度が最も高いことと、(n,γ)の断面積が大きいことによると考えられる。

図22から図24のグラフよりZr−93は、使用済燃料組成で元素分離したときの消滅数が0.501、偶奇濃縮をすると1.87と約3.7倍となり、偶奇濃縮の影響が大きい。さらに、Zr−93は、同位体抽出を行うと消滅率が3.5となる。 図25から図27のグラフよりSe−79は、使用済燃料組成で元素分離したときの消滅数が0.072でこれは、生成数と変換数がほぼ同数であることを示している。そして、偶奇濃縮をすると2.74ととなり、偶奇濃縮が必須であることが分かる。さらに、Se−79は、同位体抽出を行うと消滅率が3.2となる。

図28は、複合ターゲット23と単独ターゲットとを、それぞれ元素分離、偶奇濃縮、同位体抽出により作製し、1.0GeVのプロトンをワンショット入射させた際のLLFP核種の消滅数を求めたテーブルである。 ここで複合ターゲット23は、図2に示す組み合わせでR1=5cm、R2=15cmに設定されている。また、単独ターゲットは、この複合ターゲット23を構成する第1バルク体21及び第2バルク体22と体積が同じになるように外径が設定されている。 図28における複合ターゲットの合計欄は、プロトンによるワンショット分のLLFP核種の消滅数が示されている。一方、単独ターゲットの合計欄は、二種類の単独ターゲットのそれぞれに入射させたプロトンによるツーショット分のLLFP核種の消滅数の加算平均が示されている。

図28によれば、単独ターゲットから複合ターゲットにしたことによるLLFP核種の消滅数は、元素分離において、Cs−Pdの組み合わせで2.8倍、Zr−Pdの組み合わせで1.6倍、Se−Pdの組み合わせで1.6倍、Cs−Zrの組み合わせで1.3倍、という効率化が図れる結果が得られた。 同様に、偶奇濃縮において、Cs−Pdの組み合わせで1.9倍、Zr−Pdの組み合わせで1.6倍、Se−Pdの組み合わせで1.7倍、Cs−Zrの組み合わせで1.3倍、という効率化が図れる結果が得られた。 同様に、同位体抽出において、Cs−Pdの組み合わせで1.8倍、Zr−Pdの組み合わせで1.5倍、Se−Pdの組み合わせで1.5倍、Cs−Zrの組み合わせで1.4倍、という効率化が図れる結果が得られた。

以上述べた少なくともひとつの実施形態の放射性廃棄物の処理方法によれば、LLFP核種を含む元素を少なくとも二種類以上抽出し、荷電粒子ビームを入射させるターゲットを二重円筒状に構成することにより安定核種への変換処理を効率化させることができる。

本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。

10…放射性廃棄物、11…第1元素、12…第2元素、13…ビーム性能値、14…数値シミュレーションコード、15…荷電粒子ビーム、16…入射軸、21…第1バルク体、22…第2バルク体、23…ターゲット、R1…第1半径R、R2…第2半径R、L…長さサイズ。

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