真空用層間熱接合性グラファイトシート

申请号 JP2016562678 申请日 2015-12-03 公开(公告)号 JPWO2016088845A1 公开(公告)日 2017-09-14
申请人 株式会社カネカ; 发明人 村上 睦明; 睦明 村上; 正満 立花; 正満 立花; 篤 多々見; 篤 多々見;
摘要 高 真空 条件下においても層間熱接合材として熱伝導特性に優れており、かつ装置内部の汚染やアウトガスの心配のない材料を提供することを目的とする。本発明の高真空用層間熱接合性グラファイトシートは、厚さが9.6μm以下、50nm以上であり、25℃におけるa−b面方向の熱伝導率が1000W/mK以上である点に要旨を有する。本発明においては、 密度 が1.8g/cm3以上であることが好ましい。本発明の前記グラファイトシートは、高分子フィルムを2900℃以上の 温度 で熱処理して得られるものであることが好ましく、該高分子フィルムは、ポリアミド、ポリイミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール等から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
权利要求

厚さが9.6μm以下、50nm以上であり、25℃におけるa−b面方向の熱伝導率が1000W/mK以上であることを特徴とする高真空用層間熱接合性グラファイトシート。密度が1.8g/cm3以上である請求項1に記載の高真空用層間熱接合性グラファイトシート。前記グラファイトシートが高分子フィルムを2900℃以上の温度で熱処理して得られるものである請求項1又は2に記載の高真空用層間熱接合性グラファイトシート。前記高分子フィルムが、ポリアミド、ポリイミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマーおよびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種である請求項3に記載の高真空用層間熱接合性グラファイトシート。前記高分子フィルムが芳香族ポリイミドである請求項3に記載の高真空用層間熱接合性グラファイトシート。前記芳香族ポリイミドが、ピロメリット酸無物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のいずれか、または両方を原料に用いて得られるポリイミドである請求項5に記載の高真空用層間熱接合性グラファイトシート。前記芳香族ポリイミドが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンのいずれか、または両方を原料に用いて得られるポリイミドである請求項5又は6に記載の高真空用層間熱接合性グラファイトシート。請求項1〜7のいずれかに記載の高真空用層間熱接合性グラファイトシートから作製される高真空用グラファイト基板材料。請求項1〜7のいずれかに記載の高真空用層間熱接合性グラファイトシートから作製される高真空用ターゲット基板材料。中性子生成金属部材とプロトン吸収性金属基板とが積層されており、これら中性子生成金属部材とプロトン吸収性金属基板との間に請求項1〜7のいずれかに記載の高真空用層間熱接合性グラファイトシートが介挿されている中性子発生用積層型ターゲット材料。中性子生成金属部材とプロトン吸収性金属基板とヒートシンク部材とがこの順で積層されており、中性子生成金属部材とプロトン吸収性金属基板との間、及びプロトン吸収性金属基板とヒートシンク部材との間に請求項1〜7のいずれかに記載の高真空用層間熱接合性グラファイトシートが挿入されている中性子発生用ターゲットモジュール。前記中性子生成金属部材がベリリウムターゲットであり、プロトン吸収性金属基板がバナジウム、ニオブ、及びタンタルから選ばれる少なくとも1種の材料で形成されており、前記ヒートシンク部材がアルミニウム及びチタンから選ばれる少なくとも1種の材料で形成されている請求項11に記載の中性子発生用ターゲットモジュール。

说明书全文

本発明は、超高真空下でのアウトガスの恐れがない高真空用層間熱接合性グラファイトシートに関する。

脳腫瘍、肝臓、メラノーマなどで通常の外科手術では施しようのない深い部分の腫瘍を除去できることから中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)が注目されている(非特許文献1)。この治療で使用する中性子の発生方法として、原子炉を利用したものと加速器を利用したものがある。簡便かつ安全な中性子発生方法として、現在加速器を利用したものが注目されている。この装置では陽子を段階的に加速させて陽子ビームとしたのち、ターゲットと呼ばれる金属または黒鉛製の塊に衝突させる方法により中性子を作り出している(非特許文献2)。またこうした加速器型の中性子発生装置は、橋梁の鉄骨の健全性を非破壊検査する装置として利用することも期待されており、その他、自動車産業、航空機、宇宙産業での利用も期待されている(非特許文献3)。

これら加速器で中性子を発生させるためにはビームを大強度にする必要がある。この大強度ビームがターゲットに通過する際ターゲットが高熱になり、熱でターゲットが変形することがある。そのためターゲットの背後に冷却用のヒートシンクを設置し、その中に冷却を循環させることによりビームによる熱からターゲットを保護している。しかし、ビームは通常ターゲットの極一部を周期的に超加熱し、それを長時間繰り返すことになる。そのためターゲットのみならず冷却用のヒートシンクごとヒートショックにより破損する虞がある。通常ヒートシンクとして用いる金属は放射化やビームを阻害するため特定のものしか使用できない。例えばチタン(22W/mK)、バナジウム(31W/mK)、パラジウム(72W/mK)、ニオブ(54W/mK)、タンタル(58W/mK)などが使用可能であるが、これらは熱伝導率が低い。そのため、ターゲットからの熱がヒートシンク全体に行きわたらず、冷却効率が悪いという問題があった。

またターゲットの熱をヒートシンクに伝える際には、ターゲット−ヒートシンク間の表面形状に由来する熱抵抗が問題となる。この熱抵抗を軽減するため、層間熱接合材料(TIM;Thermal Interface Material)が重要な役割を果たす。しかし、加速器内は超真空状態(10-6〜10-7Pa)に保たれているため、一般的に用いる放熱グリースやフェイズチェンジシートではアウトガスによって装置内を汚染する。また金属、無機フィラーを含むTIMでは、フィラーがビームライン内部に飛散し汚染する虞がある。

特許第4299261号公報

特許第4684354号公報

財団法人医用原子技術研究振興財団「体にやさしい究極のがん治療 ホウ素中性子捕捉療法」、平成23年5月

YAMAGATA, Y. et al, The 27th World Conference of the International Nuclear Target Development Society State−of−the−art Technologies for Nuclear Target and Charge Stripper Japan, Tokyo, September, 2014

山形豊「理研における小型中性子源 RANS」(www.rri.kyoto−u.ac.jp/neutron/optics/workshop/.../20130118_06.pdf)

Y.Hishiyama,A.Yoshida,Y.Kaburagi 炭素 254,176(2012)

P. G. Klemens and D. F. Pedraza Carbon 32, 735(1994)

P.G.Klemens J.W.Bandgap, Materials, 7(4), 332(2000)

本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、層間熱接合材として熱伝導特性に優れており、高真空、高温条件下においてもアウトガスや装置内を汚染する心配のない材料を提供することにある。 本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、グラファイトシートであれば、超高真空下でもアウトガスの心配がなく、層間熱接合材料(TIM)として有望である事に気がついた。またグラファイトシートは、加速器型の中性子発生装置に使用した場合でも、放射化やビーム阻害の虞がなく、また高温、長時間の大強度ビームの照射条件に耐える事が可能であり、こうした用途で特に有望である事を見いだした。

ところでグラファイトシートの一つとして、天然グラファイトが知られており(特許文献1)、こうしたものをTIMとして使用することも考えられる。しかし、天然グラファイトシートの面方向の熱伝導率は200〜500W/mK程度であって、軽いという特徴はあるものの、粉状、燐片状の天然グラファイトを原料としているためにシート強度が弱く、破損した場合にグラファイト片が筐体内で飛び散る恐れがあった。

このような問題を解決するために、特殊な高分子フィルムを直接熱処理してグラファイト化する方法が開発されている(以下、高分子焼成法と記載する)。この方法で得られたグラファイトシート作製は従来の天然グラファイトシートの作製法に比べて簡略で、機械的特性にも優れており、さらには非常に優れた熱伝導性が得られるという特徴がある(特許文献2)。高分子焼成法によるグラファイトシートの面方向の熱伝導率は600〜1600W/mKと高く、さらに曲げや衝撃などにも強いため、現在、多くの携帯端末に採用されている。

しかし、上記のように超高真空条件で従来よりも高い熱伝導性を示すグラファイトシートが求められており、特に超高真空、高温条件で、かつ大強度の陽子ビームの照射においても耐えうる高真空用層間熱接合性グラファイトシートが切望されている。そこでさらに検討を進めた結果、高分子として芳香族高分子(特に芳香族ポリイミド)を用い、最終的に得られるグラファイトシートの厚みが9.6μm〜50nmの範囲となるようにし、グラファイトシートの密度が1.8g/cm3以上になるようにし、グラファイト化を2900℃以上の超高温で行う事によって、熱伝導率1000W/mK以上の高真空用層間熱接合性グラファイトシートを作製する事に成功し、本発明を成すに至った。本シートは容易に実用的な取り扱いが可能な大面積フィルムとしては最高レベルの高熱伝導性素材であり、超真空、高温下においてもアウトガスの心配もなく、化学安定性、耐熱性も非常に高い。したがって、その応用の範囲は非常に広いと考えられる。

上記目的を達成し得た本発明の高真空用層間熱接合性グラファイトシートとは、厚さが9.6μm以下、50nm以上であり、25℃におけるa−b面方向の熱伝導率が1000W/mK以上である点に要旨を有する。本発明においては、密度が1.8g/cm3以上であることが好ましい。

本発明の前記グラファイトシートは、高分子フィルムを2900℃以上の温度で熱処理して得られるものであることが好ましい。該高分子フィルムは、ポリアミド、ポリイミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマーおよびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種であることが好ましい。

前記高分子フィルムは芳香族ポリイミドであることが好ましく、該芳香族ポリイミドは、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のいずれか、または両方を原料に用いて得られるポリイミドであることや、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンのいずれか、または両方を原料に用いて得られるポリイミドであることが好ましい。

本発明は、上記したいずれかの高真空用層間熱接合性グラファイトシートから作製される高真空用グラファイト基板材料や、高真空用ターゲット基板材料も包含する。

本発明は、中性子生成金属部材とプロトン吸収性金属基板とが積層されており、これら中性子生成金属部材とプロトン吸収性金属基板との間に上記したいずれかの高真空用熱接合性グラファイトシートが介挿されている中性子発生用積層型ターゲット材料も包含する。

更に、本発明は、中性子生成金属部材とプロトン吸収性金属基板とヒートシンク部材とがこの順で積層されており、中性子生成金属部材とプロトン吸収性金属基板との間、及びプロトン吸収性金属基板とヒートシンク部材との間に上記したいずれかの高真空用熱接合性グラファイトシートが挿入されている中性子発生用ターゲットモジュールも包含する。該ターゲットモジュールにおいて、前記中性子生成金属部材がベリリウムターゲットであり、プロトン吸収性金属基板がバナジウム、ニオブ、及びタンタルから選ばれる少なくとも1種の材料で形成されており、前記ヒートシンク部材がアルミニウム及びチタンから選ばれる少なくとも1種の材料で形成されていることが好ましい。

本発明のグラファイトシートによれば、高真空下でもアウトガスの虞がなく、かつ25℃におけるa−b面方向の熱伝導率が1000W/mK以上と極めて高いため、放熱特性に優れる。また、加速器型の中性子発生装置に使用した場合でも、放射化やビーム阻害の虞がなく、さらに高温、長時間の大強度ビームの照射条件に耐える事が可能である。

図1は本発明のターゲットモジュールの一例を示す概略斜視分解図である。

以下に本発明の詳細について述べるが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。 <グラファイトシート> 本発明は、熱伝導率が200〜500W/mK程度の天然グラファイトシートや、熱伝導率が600〜1600W/mK程度の従来の高分子焼成法によるグラファイトシートよりも高い熱伝導率(1000W/mK以上、好ましくは1800W/mK以上)のグラファイトシートを用いる点に第1の特徴がある。こういった高熱伝導率のグラファイトシートは、芳香族高分子(特に芳香族ポリイミド)から得られる高分子フィルムを加熱して炭化及びグラファイト化する方法で製造され、特に最終的に得られるグラファイトシートの厚みが9.6μm〜50nmの範囲となるようにし、グラファイトシートの密度が1.8g/cm3以上になるようにし、またグラファイト化を2900℃以上の超高温で行う事によって製造できる。

<高分子原料> 最初に本発明のグラファイトシートの製造に用いられる高分子フィルム原料について記述する。本発明のグラファイト作製に好ましく用いられる高分子原料は芳香族高分子であり、この芳香族高分子としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの高分子原料からなるフィルムは公知の製造方法で製造すればよい。特に好ましい高分子原料として芳香族ポリイミド、ポリパラフェニレンビニレン、ポリパラフェニレンオキサジアゾールを例示する事ができる。中でも以下に記載する酸二無水物(特に芳香族酸二無水物)とジアミン(特に芳香族ジアミン)からポリアミド酸を経て作製される芳香族ポリイミドは本発明のグラファイト作製のための高分子原料として特に好ましい。

前記芳香族ポリイミドの合成に用いられ得る酸二無水物としては、ピロメリット酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびそれらの類似物を含み、それらを単独または任意の割合の混合物で用いることができる。 特に非常に剛直な構造を有した高分子構造を持つほどポリイミドフィルムの配向性が高くなること、さらには入手性の観点から、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。

前記芳香族ポリイミドの合成に用いられ得るジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼンおよびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。 さらにポリイミドフィルムの配向性を高くすること、入手性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンを原料に用いて合成されることが特に好ましい。

前記酸二無水物とジアミンからのポリアミド酸の調製には公知の方法を用いることができ、通常、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種を有機溶媒中に溶解させ、得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。これらのポリアミド酸溶液は通常5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る事が出来る。 前記原料溶液中の酸二無水物とは実質的に等モル量にすることが好ましく、モル比は、例えば、1.5:1〜1:1.5、好ましくは1.2:1〜1:1.2、より好ましくは1.1:1〜1:1.1である。

<ポリイミドの合成、製膜> ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する熱キュア法、ポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤や、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類をイミド化促進剤として用い、イミド転化するケミカルキュア法があるが、そのいずれを用いても良い。得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折率が大きくなりやすく、フィルムの焼成中に張力をかけたとしても破損することなく、また、品質の良いグラファイトを得ることができるという点からケミカルキュア法が好ましい。またケミカルキュア法は、グラファイトフィルムの熱伝導率の向上の面でも優れている。

本発明で使用する高熱伝導性(1000W/mK以上の)グラファイトシートは厚さが9.6μm〜50nmの範囲であり、この様な範囲のグラファイトシートを得るためには原料高分子フィルムの厚さは18μm〜120nmの範囲である事が好ましい。これは、最終的に得られるグラファイトシートの厚さは、一般に出発高分子フィルムが1μm以上では厚さの60〜30%程度となり、1μm以下では50〜20%程度となる事が多い事によっている。従って、最終的に本発明の9.6μmから50nmの厚さのグラファイトシートを得るためには、出発高分子フィルムの厚さは30μm以下、100nm以上の範囲である事が好ましいという事になる。一方、長さ方向は100〜70%程度に縮小する事が多い。

前記高分子フィルムは、前記高分子原料又はその合成原料から公知の種々の手法によって製造できる。例えば、前記ポリイミドフィルムは、上記ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶剤溶液をエンドレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延し、乾燥・イミド化させることにより製造される。具体的にケミカルキュア法によるフィルムの製造法は以下のようになる。まず上記ポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒量のイミド化促進剤を加え支持板やPET等の有機フィルム、ドラム又はエンドレスベルト等の支持体上に流延又は塗布して膜状とし、有機溶媒を蒸発させることにより自己支持性を有する膜を得る。次いで、これを更に加熱して乾燥させつつイミド化させポリイミドフィルムを得る。加熱の際の温度は、150℃から550℃の範囲の温度が好ましい。さらに、ポリイミドの製造工程中に、収縮を防止するためにフィルムを固定したり、延伸したりする工程を含む事が好ましい。これは、分子構造およびその高次構造が制御されたフィルムを用いる事でグラファイトへの転化がより容易に進行する、という事によっている。すなわち、グラファイト化反応をスムーズに進行させるためには炭素前駆体中の炭素分子が再配列する必要があるが、配向性にすぐれたポリイミドではその再配列が最小で済むために、低温でもグラファイトへの転化が進み易いと推測される。

<炭素化・グラファイト化> 次に、ポリイミドに代表される高分子フィルムの炭素化・グラファイト化の手法について述べる。本発明では出発物質である高分子フィルムを不活性ガス中で予備加熱し、炭素化を行う。不活性ガスは、窒素、アルゴンあるいはアルゴンと窒素の混合ガスが好ましく用いられる。予備加熱は通常1000℃程度で行う。予備加熱温度までの昇温速度は特に限定されないが、例えば5〜15℃/分とできる。予備処理の段階では出発高分子フィルムの配向性が失われない様に、フィルムの破壊が起きない程度の面方向の圧力を加える事が有効である。

上記の方法で炭素化されたフィルムを高温炉内にセットし、グラファイト化を行なう。炭素化フィルムのセットはCIP材やグラッシーカーボン基板に挟んで行う事が好ましい。グラファイト化は通常2600℃以上の高温で行われるが、この様な高温を作り出すには、通常グラファイトヒーターに直接電流を流し、そのジュ−ル熱を利用して加熱を行なう。グラファイト化は不活性ガス中で行なうが、不活性ガスとしてはアルゴンが最も適当であり、アルゴンに少量のヘリウムを加えても良い。処理温度は高ければ高いほど良質のグラファイトに転化出来る。熱分解と炭素化によりその面積は元のポリイミドフィルムより約10〜40%程度収縮し、グラファイト化の過程では逆に約10%程度拡大する事が多い。このような収縮、拡大によってグラファイトシート内には内部応力が発生しグラファイトシート内部にひずみが発生する。この様なひずみや内部応力は2900℃以上で処理することにより緩和されてグラファイトの層が規則正しく配列し、さらに熱伝導率が高くなる。本発明のグラファイトを得るためには2600℃では不足で、処理温度は2900℃以上が好ましく、3000℃以上の温度で処理する事はより好ましく、3100℃以上である事は最も好ましい。無論、この処理温度はグラファイト化過程における最高処理温度としても良く、得られたグラファイトシートをアニーリングの形で再熱処理しても良い。なお処理温度は、例えば、3700℃以下(特に3600℃以下、或いは3500℃以下)であっても、優れたグラファイトフィルムが得られる。前記予備加熱温度から当該熱処理温度までの昇温速度は、例えば15〜25℃/分とできる。当該処理温度での保持時間は、例えば、20分以上、好ましくは30分以上であり、1時間以上であってもよい。保持時間の上限は特に限定されないが、通常、5時間以下、特に3時間以下程度としてもよい。温度3000℃以上で熱処理してグラファイト化する場合、高温炉内の雰囲気は前記不活性ガスによって加圧されているのが好ましい。熱処理温度が高いとシート表面から炭素の昇華が始まり、グラファイトシート表面の穴、われの拡大と薄膜化などの劣化現象が生じるが、加圧することによってこの様な劣化現象を防止でき、優れたグラファイトシートを得ることができる。不活性ガスによる高温炉の雰囲気圧力(ゲージ圧)は、例えば、0.10MPa以上、好ましくは0.12MPa以上、さらに好ましくは0.14MPa以上である。この雰囲気圧力の上限は特に限定されないが、例えば、2MPa以下、特に1.8MPa以下程度であってもよい。熱処理後は、例えば30〜50℃/分の速度で降温すれば良い。

<グラファイトシートの特徴> 本発明で使用するグラファイトシートは薄いほど高熱伝導率に優れやすいという観点から9.6μm以下が好ましい。これは以下の様に考えられる。すなわち、高分子焼成法によるグラファイトシート製造において、グラファイト化反応は高分子炭素化シート最表面層でグラファイト構造が形成され、膜内部向かってグラファイト構造が成長すると考えられている。グラファイトシートの膜厚が厚くなると、グラファイト化時に炭化シート内部のグラファイト構造が乱れ、空洞や欠損ができやすくなる。反対にシートが薄くなればシート表面のグラファイト層構造が整った状態で内部までグラファイト化が進行し、結果としてシート全体に整ったグラファイト構造ができやすい。上記のようにグラファイト層構造が整っているため、高い熱伝導率を示すグラファイトシートになると考えられる。 一方、本発明の作製方法ではグラファイトシートの厚さが50nm以下になると高熱伝導性が発現し難くなる。その理由は必ずしも明確ではないが、本発明の方法で作製したグラファイトシートは50nm以下になると柔軟性には富むものの弾力性には欠けるものとなる。グラファイトシートの熱伝導はそのほとんどが格子振動(フォノン)によって起こることが知られている事から、フィルムの弾力性が減少する事が高熱伝導性発現の妨げになっていると推定している。50nm以下の厚さで弾力性に富むグラファイトシートを作製する事は難しい。以上述べた様に、本発明のグラファイトシートの厚さの範囲は9.6μm〜50nmであるが、好ましくは7.5μm〜50nmであり、より好ましくは6.5μm〜100nmであり、さらに好ましくは5.0μm〜100nmであり、最も好ましくは3.0μm〜200nmである。厚さが薄いものは、基板表面の凹凸に沿って張り付き、一旦張り付くとテープなどを使用しないと外せない。グラファイトシートの厚さが9.6μmより大きいと、グラファイト化時に炭化シート内部のグラファイト構造が乱れ、空洞や欠損ができやすくなることがあるので好ましくない。また、50nmより小さいと、柔軟性には富むものの弾力性には欠け、高熱伝導性発現の妨げになることがあるので好ましくない。

本発明によるグラファイトシートの密度は1.8g/cm3以上であることが好ましい。一般に高熱伝導性のグラファイトシートはシート中に欠損や空洞がない、非常に密な構造である。欠損や空洞がグラファイトシート中に入ると、密度が下がり熱伝導率も低下する傾向がある。このことから、グラファイトの密度は大きいことが好ましく1.8g/cm3以上、さらには2.0g/cm3以上であることがより好ましく、2.1g/cm3以上であることは最も好ましい。密度の上限は、2.26g/cm3以下であり、2.20g/cm3以下であってもよい。

本発明で使用する様な高分子フィルムを炭化・グラファイト化して得られるグラファイトシートは、メタンなどの有機ガスを加熱した基板上に供給し、そこから気相で成長させたパイロリティックグラファイト(熱分解グラファイト)をさらに高温で処理して作製される高配向性熱分解グラファイト(HOPG)と比べた時、前記パイロリティックグラファイトの痕跡が存在しないという特徴も有している。パイロリティックグラファイトは柱状構造を有しており、これを高温処理してHOPGを作製しても、この柱状の粒界構造が完全には消失する事はない。

本発明で使用するグラファイトの平均結晶粒径(ドメインサイズ)は、10μm以下であってもよく、7μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。高熱伝導率を達成するには、大きな結晶粒径にすることが有利であるが、本発明で使用する前記グラファイトシートは平均結晶粒径が10μm以下でも優れた熱伝導性を示す。これは、本発明で使用するグラファイトシートが、上述した様に、柱状粒界構造を有さない高品質グラファイトであるためと推察される。そもそも熱伝導率が結晶粒径に影響を受けるのは、熱伝導に寄与するフォノンが結晶粒界で散乱するためである。しかし、高品質グラファイトでは、フォノンの散乱が小さなサイズの結晶粒径には依存しなくなる。これは、高品質グラファイトではほとんどウムクラップ過程という散乱のみとなるためであると解釈されている(非特許文献4)。なお本発明で使用するグラファイトシートの平均結晶粒径は、例えば、2μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上である。また該平均結晶粒径(ドメインサイズ)は、グラファイトシートの厚みの例えば0.1倍以上、好ましくは1倍以上、さらに好ましくは2倍以上である。

本発明で使用するグラファイトシートは温度25℃におけるa−b面方向の熱伝導率が1000W/mK以上のものであるが、熱伝導率は、好ましくは1800W/mK以上、より好ましくは1960W/mK以上であり、更に好ましくは2000W/mK以上であり、特に好ましくは2050W/mK以上であり、最も好ましくは2100W/mK以上である。グラファイトa−b面方向の熱伝導率の理論的な限界値は1910W/mKであると報告されており(非特許文献5、6)、1960W/mK以上の熱伝導率は、こうした限界値を大きく超えており、従来、予想さえもされていなかった結果である。なお熱伝導率は、例えば、2400W/mK以下であってもよく、2300W/mK以下であってもよい。

<高真空用グラファイト基板材料> 前記グラファイトシートは、高真空(10-4Pa以下。例えば10-6〜10-7Pa程度またはそれ以下)で層間熱接合性材料(TIM)に使用することが推奨され、それ自身をグラファイト基板として使用できる他、他の基材と積層した基板としても使用できる。前記グラファイトシートは、すでに2900℃以上での黒鉛化を実施したものであるため黒鉛以外の不純物を含まず、高品質である。そのため高真空下でも、さらには局所的に加熱してもアウトガスが発生しない。なおグラファイトシートは、化学的にも安定であり、必要に応じて、高真空雰囲気以外の用途で使用してもよい。高真空雰囲気以外の雰囲気としては、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、水素などが上げられる。

<高真空用ターゲット基板材料> またTIM以外の本発明グラファイトシートの新規用途としては、その高純度かつ化学的に安定である特性を生かし、高真空かつ高反応性雰囲気で使用できる高真空用ターゲット基板材料が挙げられる。高真空用ターゲット基板材料とは、ターゲットとヒートシンクとをグラファイトシートで熱、加圧、レーザーなどを用いて接合した材料、または蒸着法、スパッタ法、電着法によりグラファイトシート上にターゲットを作製した積層材料のことをいい、このターゲットに種々のビームを照射することでターゲットとビームとの反応生成物を取り出すことが可能となる。こうした高真空・高反応性の用途にグラファイトシートは好適に使用できる。

前記ビームとしては、陽子、中性子、イオン(重原子、軽原子)などが使用できる。グラファイトシートは、これらビームやそのターゲットとの反応生成物に影響を与えず、ターゲットの放熱に貢献する。

前記ターゲットおよびその周辺材料(ヒートシンク材料、ケーシング材料など)としては特に限定しないが、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、カルシウム、金、銀、銅、アルミ、チタン、パラジウム、バナジウム、タンタル、ニオブ、ステンレス、真鍮、モリブデン、テクネチウムなどが挙げられ、またこれらいずれかひとつ以上を組み合わせたドープ体であってもよい。さらに上記の元素、またはこれらいずれかひとつ以上の元素を組み合わせでできた密閉容器が水素、ヘリウム、アルゴン、窒素などの気体で充たされていてもよい。

<中性子発生用ターゲットモジュール> 前記グラファイトシートは、上述したグラファイト基板材料、ターゲット基板材料の他、ターゲット支持基板、加速器、中性子発生用装置、原子炉用センサー、ビームセンサーなどの材料としても使用できる。以下では、こうした応用の一例として、加速器型の中性子発生装置を例にとって説明する。

図1は、中性子発生装置の中心を構成する中性子発生用ターゲットモジュールの一例を示す概略斜視図である。この中性子発生用ターゲットモジュール70は、ターゲット固定用基板1と、中性子生成金属部材(ターゲット)10と、この中性子生成金属部材10の背面側に積層されかつ中性子生成金属部材10よりも一回り大きいプロトン吸収性金属基板30とからなる中性子発生用積層型ターゲット材料60がビーム照射対象となっており、この積層型ターゲット材料60の背面側には、該積層型ターゲット材料60を冷却するためのヒートシンク部材40が接続している。そしてこのヒートシンク部材40の裏側には、陽子を減速するためのモデレーター50が取り付けられている。中性子発生装置は、こうした中性子発生用ターゲットモジュール70の他に、加速陽子を発生するための加速器(図示せず)と、中性子飛行ユニット(図示せず)とを備えており、加速器からの陽子が、高真空下(10-4Pa以下)、前記中性子生成金属部材10に当たることで中性子が生成する。そして生成した陽子は、その背面に存在するプロトン吸収性金属基板30、ヒートシンク部材40及びモデレーター50を通過して中性子飛行ユニット(図示せず)に送られ、ホウ素中性子捕捉療法や非破壊検査などの種々の用途に使用される。

こうした中性子発生用ターゲットモジュール70において、中性子発生用積層型ターゲット材料60は、高エネルギーの陽子との反応によって高温になる。そのため該積層型ターゲット材料60を冷却するためにヒートシンク部材40が取り付けられており、図示例のものは水冷式になっている。具体的には、図示例のヒートシンク部材40は、冷却水をいれるための室(ジャケット)42と、このジャケット42に給・排水するための通水管41とを備えており、ジャケット42中の水が該積層型ターゲット材料60と接することで該積層型ターゲット材料60を冷却可能になっている。

しかし、前記ターゲットモジュール70では、陽子ビームは、中性子生成金属部材10の極一部を周期的に超加熱し、それを長時間繰り返すことになる。そのため、単に水冷しただけでは、前記積層型ターゲット材料60とヒートシンク部材40の両方がヒートショックにより破損する虞がある。そこで本発明のモジュールでは、グラファイトシートが層間熱接合材料(TIM)として使用される。図示例では、中性子生成金属部材(ターゲット)10とプロトン吸収性金属基板30との間、及びプロトン吸収性金属基板30とヒートシンク部材40との間に、グラファイトシート製層間熱接合材20、25がそれぞれ挿入されている。こうしたグラファイト製層間熱接合材20、25の少なくとも片方(好ましくは両方)を前記ターゲットモジュール70に挿入することで、前記積層型ターゲット材料60の放熱性を高めることが可能となり、その破損を防止できる。また、こうしたグラファイト製TIMは高耐熱性のため、高温条件下でそれ自身が破損することはない。

なお図示例では、中性子生成金属部材(ターゲット)10とプロトン吸収性金属基板30の間のグラファイト製層間熱接合材20は、中性子生成金属部材10と同等の円形状をしており、プロトン吸収性金属基板30とヒートシンク部材40との間のグラファイト製層間熱接合材25は、中空円盤型(ドーナツ型)形状をしているが、各部材間を熱的に接合可能な限り、層間熱接合材の平面形状は特に限定されず、陽子ビームや中性子ビームの軌跡と重なる様に存在していてもよい。グラファイトシートは、化学的に安定であり、陽子ビームや中性子ビームの軌跡と重なっても、これらビームに悪影響を及ぼす事はなく、またグラファイトシートが放射化することもない。

前記ターゲットモジュール70において、中性子生成金属部材10としてはベリリウムが使用できる。プロトン吸収性金属基板30としては、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの1種又は2種以上が使用できる。ヒートシンク部材40としては、アルミニウム、チタンなどの1種又は2種以上が使用できる。

本願は、2014年12月4日に出願された日本国特許出願第2014−246129号に基づく優先権の利益を主張するものである。2014年12月4日に出願された日本国特許出願第2014−246129号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。

以下実施例を示し、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明はこれら実施例によって限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。

(物性評価方法) <膜厚> 原料である高分子フィルム、グラファイトシートの厚さは、プラス、マイナス5〜10%程度の誤差がある。そのため得られたフィルム、シートの10点平均の厚さを本発明における試料の厚さとした。 <密度> 作製したグラファイトの密度は、ヘリウムガス置換式密度計[AccuPyc II 1340島津製作所(株)]によりグラファイトシートの体積を測定し、質量を別途測定し、密度(g/cm3)=質量(g)/体積(cm3)の式から算出した。なお、この方法で厚さ200nm以下のグラファイトシートの密度測定は誤差が大きすぎて不可能であった。そのため、200nm以下の厚さのグラファイトシートの熱拡散率から熱伝導率を計算する場合には、その密度として2.1を仮定して計算した。 <熱伝導率> グラファイトシートの熱拡散率は、周期加熱法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)「LaserPit」装置)を用いて、25℃、真空下(10-2Pa程度)、10Hzの周波数を用いて測定した。これはレーザー加熱の点から一定距離だけ離れた点に熱電対を取り付け、その温度変化を測定する方法である。ここで熱伝導率(W/mK)は、熱拡散率(m2/s)と密度(kg/m3)と比熱(798kJ/(kg・K))を掛け合わせることによって算出した。ただし、この装置ではグラファイトシートの厚さが1μm以上の場合は熱拡散率の測定が可能であったが、グラファイトシートの厚さが1μm以下の場合では測定誤差が大きくなりすぎて正確な測定は不可能であった。

そこで第二の測定方法として、周期加熱放射測温法((株)BETHEL製サーモアナライザーTA3)を用いて測定をおこなった。これは周期加熱をレーザーで行い、温度測定を放射温度計で行う装置であり、測定時にグラファイトシートとは完全に非接触であるため、グラファイトシートの厚さ1μm以下の試料でも測定が可能である。両装置の測定値の信頼性を確認するために、幾つかの試料については両方の装置で測定を行い、それらの数値が一致する事を確認した。

BETHEL社の装置では周期加熱の周波数を最高800Hzまでの範囲で変化させる事ができる。すなわち、この装置の特徴は通常熱電対で接触的に行われる温度の測定が放射温度計により行われ、測定周波数を可変できる点である。原理的に周波数を変えても一定の熱拡散率が測定されるはずなので、本装置を用いた計測では周波数を変えてその測定を行った。1μm以下の厚さの試料の測定を行った場合は、10Hzや20Hzの測定においては測定値がばらつく事が多かったが、70Hzから800Hzの測定では、その測定値はほぼ一定になった。そこで、周波数に寄らず一定の値を示した数値(70Hz〜800Hzでの値)を用いて熱拡散率とした。

(製造例1〜18) ピロメリット酸無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で合成したポリアミド酸の18wt%のDMF溶液100gに無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を120℃で150秒間、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱した後、アルミ箔を除去し厚みの異なるポリイミドフィルム(高分子試料A)を作製した。また試料Aと同様にしてピロメリット酸無水物とp−フェニレンジアミンを原料に用いてポリイミドフィルム(高分子試料B)を作製し、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンを原料に用いてポリイミドフィルム(高分子試料C)を作製した。ポリイミドフィルムの厚みに関しては、キャストする速度などを調整することにより、18μmから100nmの範囲の厚さの異なる何種類かのフィルムを作製した。

厚み18μm〜100nmの範囲にある8種類のポリイミドフィルム(高分子試料A)、厚み9.2〜1.1μmの範囲にある3種類のポリイミドフィルム(高分子試料B)、及び厚み7.5〜1.0μmの範囲にある3種類のポリイミドフィルム(高分子試料C)を、電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化シートを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で2900℃、3000℃、3100℃又は3200℃の処理温度(最高温度)まで昇温した。この温度で30分間又は120分間(処理時間)保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイトシートを作製した。処理はアルゴン雰囲気で0.15MPaの加圧下でおこなった。

得られたグラファイトシートの厚み(μm)、密度(g/cm3)、熱伝導率(W/mK)の値を表1に示した。この表に示した厚さのフィルムではいずれの試料でも2900℃、30分間以上の熱処理によって1000W/mK以上、好ましくは1800W/mK以上の優れた熱伝導率を示す事が分かった。

1 ターゲット固定用基板 10 中性子生成金属部材 20、25 層間熱接合材 30 プロトン吸収性金属基板 40 ヒートシンク部材 60 中性子発生用積層型ターゲット材料 70 中性子発生用ターゲットモジュール

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