Beam accelerator

申请号 JP2002302684 申请日 2002-10-17 公开(公告)号 JP3961925B2 公开(公告)日 2007-08-22
申请人 三菱電機株式会社; 发明人 裕子 来島; 貴久 永山; 禎浩 石; 信行 頭本;
摘要
权利要求
  • 荷電粒子ビームが通過する環状通路が内部に形成された環状中空容器と、
    前記環状中空容器の円周方向に沿って複数個設けられ前記荷電粒子ビームを偏向させて該荷電粒子ビームを前記環状通路内の周回軌道上に誘導する固定磁場発生手段と、
    前記環状中空容器の所定の位置に設けられ前記荷電粒子ビームの加速電場を誘起する加速ギャップと、
    前記環状中空容器を取り囲むように設けられ内部の磁束を変化させて電磁誘導により前記加速ギャップを介して前記加速電場を発生する加速コアとを備え、
    前記加速コアに印可する励磁周波数の1周期以内に荷電粒子の入射から出射までを完了するビーム加速装置であって、
    前記加速コアは、厚さが50μm以下で飽和磁束密度が1T以上の軟磁性合金のリボン状薄板材が多層巻きされて作製されていることを特徴とするビーム加速装置。
  • 荷電粒子ビームが通過する環状通路が内部に形成された環状中空容器と、
    前記環状中空容器の円周方向に沿って複数個設けられ前記荷電粒子ビームを偏向させて該荷電粒子ビームを前記環状通路内の周回軌道上に誘導する磁場発生手段と、
    前記環状中空容器の所定の位置に設けられ前記荷電粒子ビームの加速電場を誘起する加速ギャップと、
    前記環状中空容器を取り囲むように設けられ内部の磁束を変化させて電磁誘導により前記加速ギャップを介して前記加速電場を発生する加速コアとを備え、
    前記加速コアに印可する励磁周波数の1周期以内に荷電粒子の入射から出射までを完了するビーム加速装置であって、
    前記加速コアは、前記環状中空容器の内側側面によって径方向内側に囲まれる部分の内部加速コアと、該内部加速コアとともに環を成す断面コ字型の外部加速コアとを有し、前記内部加速コアは該外部加速コアよりも飽和磁束密度の高い軟磁性合金で作製されていることを特徴とするビーム加速装置。
  • 前記外部加速コア及び前記内部加速コアは、該外部加速コアの飽和磁束密度と該内部加速コアの飽和磁束密度との比が、該内部加速コアの断面積と該内部加速コア及び該外部加速コアの接合面積との比と等しいことを特徴とする請求項2に記載のビーム加速装置。
  • 前記加速コアの励磁周波数が1kHz以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のビーム加速装置。
  • 前記固定磁場発生手段或いは前記磁場発生手段は、前記環状通路内に内径側から外径側に徐々に大きくなる固定磁場を生成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のビーム加速装置。
  • 前記固定磁場発生手段或いは前記磁場発生手段は、前記環状通路を挟んで対向して配置され、該環状通路の内径側から外径側に向かって徐々に間隔を狭める一対の磁極片を有する電磁石であることを特徴とする請求項5に記載のビーム加速装置。
  • 说明书全文

    【0001】
    【発明の属する技術分野】
    この発明は、癌治療、もしくは殺菌用等に用いられる高エネルギーX線、もしくは高エネルギー荷電粒子線を発生させるビーム加速装置に関し、特に荷電粒子ビームを偏向させる手段として固定磁場を用いるFFAG型であって円形磁気誘導(ベータトロン)加速方式のビーム加速装置に関するものである。
    【0002】
    【従来の技術】
    ビーム加速装置とは、例えば電子等の荷電粒子を加速するものである。 そして、この加速された荷電粒子を銅やタングステン等のX線変換ターゲットに照射してX線を生成し、このX線を患部に照射することでがん治療や殺菌等を行う。 そして、本発明に係るビーム加速装置は、荷電粒子ビームを偏向させる手段として固定磁場を用いるFFAG(Fixed Field Alternating Gradient)型のビーム加速装置であり、小型、高出という特徴を持つ。 電子加速のためのFFAG型ビーム加速装置は米国のMURA(Midwestern Universities Research Association)での試作例しかない(例えば、非特許文献1参照)。
    【0003】
    従来のFFAG型のビーム加速装置の出力電流制限条件について説明する。 電子ビーム電流を大きくすると十分加速されていない領域(低エネルギーの領域)で電子ビームが発散してしまうため、効率の良い加速が難しい。 この発散を抑制するには、加速電圧を上げて早い時点で加速を行い、発散する前に高エネルギービームにすればよい。 すなわち、磁束の時間変化に比例する加速電圧を上げればよい。 これを行うには、加速コアに印可する励磁周波数を上げる必要がある。
    【0004】
    【非特許文献1】
    エフ・ティー・コール(FTCole),外4名,“ザ レビュー オブ サイエンティフィック インストロメンツ(THE REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS) ボリュウーム28(Vo1.28) ナンバー6(Num.6)”,(米国),アメリカ物理学会(American Institute of Physics),1957年,p. 403−420
    【0005】
    【発明が解決しようとする課題】
    しかし、FFAG型で且つベータトロン加速方式のビーム加速装置において、加速コアに印可する励磁周波数は、従来数100Hz程度に制限されていた。 これは、加速コアに用いる材料によるものである。 従来加速コアに用いられていた例えば膜厚100μm程度の珪素鋼板は、高い飽和磁束密度を持つが、コア損失が大きく発熱が大きい。 そのため、高い励磁周波数(1kHz以上)での運転が困難であった。
    【0006】
    加速コアの内部磁束の変化量は、材料によって定まる飽和磁束密度とコアの断面積の積によって決まる。 飽和磁束密度の高いコア材料を用いれば、コア断面積を小さくすることができ、材料を少なくできるとともに装置を小型にすることができる。 しかしながら、飽和磁束密度の高い材料は、一般にコア損失が大きく発熱が大きい。 その結果、コア断面積が大きくなり装置が大型になるといった問題があった。
    【0007】
    すなわち、このようなFFAG型で且つベータトロン加速方式のビーム加速装置において、加速コアに印可する励磁周波数を1kHz以上とした場合には、温度上昇の点から高損失な高飽和磁束密度材料を使うことができず、加速コアが大きくなるという問題があった。 あるいは逆に、小型化を重視して高飽和磁束密度材料(膜厚100μm以上の珪素鋼板等)を使用した場合には、加速コアに印可する励磁周波数を1kHz未満として運転しなければならず、十分な出力が得られないという問題があった。
    【0008】
    この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、加速コアの発熱を抑制し加速コアに印可する励磁周波数を高周波数とすることで加速電圧を増大させることができる高性能なビーム加速装置を得ることを目的とする。 また、小型で且つコスト削減を図ることができるビーム加速装置を得ることを目的とする。
    【0009】
    【課題を解決するための手段】
    この発明に係るビーム加速装置は、荷電粒子ビームが通過する環状通路が内部に形成された環状中空容器と、環状中空容器の円周方向に沿って複数個設けられ荷電粒子ビームを偏向させて荷電粒子ビームを環状通路内の周回軌道上に誘導する固定磁場発生手段と、環状中空容器の所定の位置に設けられ荷電粒子ビームの加速電場を誘起する加速ギャップと、環状中空容器を取り囲むように設けられ内部の磁束を変化させて電磁誘導により加速ギャップを介して加速電場を発生する加速コアとを備え、加速コアに印可する励磁周波数の1周期以内に荷電粒子の入射から出射までを完了するビーム加速装置であって、加速コアは、厚さが50μm以下で飽和磁束密度が1T以上の軟磁性合金のリボン状薄板材が多層巻きされて作製されている。
    【0010】
    【発明の実施の形態】
    実施の形態1.
    図1は本発明の実施の形態1のビーム加速装置の上面図である。 図2は図1のI−I線に沿う矢視断面図である。 図3は図2の断面図の偏向電磁石の部分を拡大して示す拡大図である。 図4は図3の偏向電磁石の磁極片に巻回された巻線の様子を示す斜視図である。 図5は図1のビーム加速装置の加速コアがリボン状薄板材が多層巻きされて作製されている様子を説明する斜視図である。
    【0011】
    本実施の形態のビーム加速装置は、FFAG型で且つベータトロン加速方式のビーム加速装置である。 図1及び図2において、ビーム加速装置は、環状を成す環状真空容器1を有している。 環状真空容器1は、ステンレス或いは鉄でなる薄板が接合されて作製され、円形環状をなし内部に断面楔型の密閉空間が形成され、この密閉空間は真空に保持され荷電粒子ビームが通過する環状通路1aとされている。 すなわち、環状真空容器1は、荷電粒子ビームが通過する環状通路1aが内部に形成された環状中空容器を構成している。 環状通路1aの断面の形状は、径方向において内径側から径方向外側に向かって幅(高さ)が徐々に小さくなる概略楔型を成している。
    【0012】
    環状真空容器1には、環状真空容器1の円周方向に沿って6個の偏向電磁石2が所定の間隔を空けて等間隔に配設されている。 6個の偏向電磁石2は、断面楔型の環状真空容器1を所々で取り囲むようにして設けられている。 偏向電磁石2は、環状真空容器1の上下2主面に各々対向する2つの磁極片2a、2bを有している。 2つの磁極片2a、2bは、環状真空容器1を挟んで上下に対向して配置され、環状通路1aの内径側から外径側に向かって徐々に間隔を狭めるように設けられている。 2つの磁極片2a、2bは中央部でさらに互いに間隔を狭めるように断面形状が中央部で凸の湾曲形状とされている。
    【0013】
    2つの磁極片2a、2bには、図3及び図4に示すように、それぞれコイル2c、2dが巻回されている。 2つのコイル2c、2dは、同じ巻回方向で巻かれている。 そして、偏向電磁石2は、電源13からコイル2c、2dに電力を供給されて図3に太線矢印で示すような磁力を発生する。 一対の磁極片2a、2bの間隔が広がると磁束密度が粗となり磁力が弱くなる。 逆に間隔が狭まると磁束密度が密となり磁力が強くなる。 つまり、磁場発生手段である偏向電磁石2の作り出す磁場は、半径方向に内径側から外径側に徐々に小から大となる固定の強さの固定磁場である。 そのため、偏向電磁石2は固定磁場発生手段でもある。 この固定磁場は、荷電粒子の回転に同期させて磁場を内側から外側に移動される変動磁場と逆の関係にあるものである。 偏向電磁石2は、この磁場によって荷電粒子ビームの移動方向を所定の曲率半径で偏向させる。 そして、偏向電磁石2は、荷電粒子ビームを環状通路1a内の所定の周回軌道上に誘導する。
    【0014】
    図1に戻り、環状真空容器1の円周方向の一箇所に環状真空容器1を囲繞するように加速ギャップ3が設けられている。 加速ギャップ3が設けられた部分の環状真空容器1は、加速電場を発生する為に円周方向に直な面で分断され、分断箇所は所定の隙間を持って離されている。 そして、加速ギャップ3は、セラミック等で作成された短尺円筒状の部材を有し、この円筒部材で該隙間を覆うようにして分断された部分の環状真空容器1を密閉して連結している。 そして加速ギャップ3は、このセラミック円筒部材の内側の空間に荷電粒子ビームの加速電場を誘起する。
    【0015】
    また、環状真空容器1の円周方向の二箇所で該環状真空容器1を取り囲むようにして一対の加速コア4が設けられている。 一対の加速コア4は環状真空容器1の中心に対して対象に配置されている。 本実施の形態の加速コア4は、図5に示すように、厚さが50μmで飽和磁束密度が1T以上の軟磁性合金でなるリボン状材料4aが多層巻きされて作製されている。 2つの加速コア4には、それぞれ加速コア駆動電源12から駆動電流を供給するコイル5が1回巻かれている。
    【0016】
    図6は加速コアに係わる電気回路を説明する電気系統図である。 各々の加速コア4には、加速コア駆動電源12から非常に強い交流の電流を供給されるコイル5が一巻き巻かれている。 2つの加速コア4は環状真空容器1を介して加速ギャップ3と電気的に接続されている。 加速コア4はコイル5を介して加速コア駆動電源12から非常に強い交流の電力を供給され内部の磁束を変化させる。 この磁束の変化は、電磁誘導の法則にしたがって加速ギャップ3に加速電場を発生させる。
    【0017】
    図1に戻り、環状真空容器1の所定の位置に、電子を発射する電子銃6が設けられている。 電子銃6には、発射された電子を環状真空容器1内に導く静電偏向器7が接続されている。 一方、電子ビームの出口8には、電子が加速されてなる高エネルギー電子ビーム9が衝突する位置にX線変換ターゲット10が配置されている。 高エネルギー電子ビーム9は、X線変換ターゲット10を通過することによりX線11となる。
    【0018】
    次にビーム加速装置の動作を示す。 電子銃6により生成された電子は、静電偏向器7により環状真空容器1の中の周回軌道に誘導される。 電子は偏向電磁石2により生成されたフィールド磁界により偏向され、周回軌道上に閉じこめられる。 この周回軌道には加速ギャップ3設けられており、加速コア4内の磁束が変化するとき、電磁誘導の法則により加速ギャップ3に加速電場が発生する。 この加速電場によって電子は周回を重ねる毎に加速され、高エネルギー電子ビーム9となる。 そして環状真空容器1から引き出される。 引き出された高エネルギー電子ビーム9は、X線変換ターゲット10に照射されX線11に変換される。
    【0019】
    次に加速ギャップ3が誘起する加速電場の印加方法について説明する。 本発明に係るビーム加速装置は、ベータトロン加速方式のものであり、加速ギャップ3にかかる交番電界の加速フェーズの間を周回電子が何度も通過することで、該電子は高エネルギーをえる。 そして、電子の入射から出射までは、交番電磁界の一周期以内で終了する。
    【0020】
    加速コア4内部の磁束の変化量はコア材料によって定まる。 飽和磁束密度の高いコア材料を用いれば、コア断面積を小さくでき、コア材料も少なくできるので、環状真空容器1の径を小さくすることができ、小型化、低コスト化を図ることができる。 本実施の形態においては、高周波で磁束密度が大きく、コア損失の小さい膜厚50μm以下の軟磁性材料を用いることで加速コア4の発熱を抑制する。 これにより、加速コア4に印可する励磁周波数を1kHz以上として運転することが可能となる。
    【0021】
    本実施の形態においては、加速コア4に用いる飽和磁束密度の高い材料として以下の(1)、(2)、(3)いずれかを用いる。 これらの材料を用いることで発熱を抑制することができる。
    【0022】
    (1)鉄系アモルファス一般式:FeaMbYc(式中、MはTi、V、Cr、Mn、Co、Ni、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Ga、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、希土類元素の群から選ばれた少なくとも1種の元素を、YはSi、B、P、Cの群から選ばれた少なくとも1種の元素を示し、65≦a≦85、0≦b≦15、5≦c≦35、各数字はat%)で実質的に表され、絶縁層を有するもの。
    【0023】
    (2)鉄系ナノクリスタル一般式:(Fe1−aMa)100−X−Y−Z−αCuXSiYBZM1α(原子%)(ただし、MはCo及び/又はNiであり、M1はNb、W、Ta、Zr、Hf、Ti及びMoからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、a、X、Y、Z及びαはそれぞれ0≦a≦0.5、0.1≦X≦3、0≦Y≦30、0≦Z≦25、5≦Y+Z≦30及び0.1≦α≦30を満たす。)により表される組成を有し、組織の少なくとも50%が1μm以下の平均粒径を有する微細な結晶粒と残部の非晶質、前記結晶粒又は非晶質のいずれかであり、絶縁層を有するFe基軟磁性合金、もしくは、
    【0024】
    一般式:(Fel−aMa)100−X−Y−Z−α−βCuXSiYBZM1αM2β(原子%)(ただし、MはCo及び/又はNiであり、M1はNb、W、Ta、Zr、Hf、Ti及びMoからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、M2はV、Cr、Mn、Al、白金属元素、S、c、Y、希土類元素、Au、Zn、Sn、Reからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、a、X、Y、Z、α及びβはそれぞれ0≦a≦0.5、0.1≦X≦3、0≦Y
    ≦30、0≦Z≦25、5≦Y+Z≦30、0.1≦α≦30及びβ≦10を満たす。 )により表される組成を有し、組織の少なくとも50%が1μm以下の平均粒径を有する微細な結晶粒と残部の非晶質、前記結晶粒又は非晶質のいずれかであり、絶縁層を有するFe基軟磁性合金、もしくは、
    【0025】
    一般式:(Fe1−aMa)100−X−Y−Z−α−γCuXSiYBZM1αXγ(原子%)(ただし、MはCo及び/又はNiであり、M1はNb、W、Ta、Zr、Hf、Ti及びMoからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、XはC、Ge、P、Ga、Sb、In、Be、Asからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、a、X、Y、Z、α及びγはそれぞれ0≦a≦0.5、0.1≦X≦3、0≦Y≦30、0≦Z≦25、5≦Y+Z≦30、0.1≦α≦30及びγ≦10を満たす。)により表される組成を有し、組織の少なくとも50%が1μm以下の平均粒径を有する微細な結晶粒と残部の非晶質、前記結晶粒又は非晶質のいずれかであり、絶縁層を有するFe基軟磁性合金もしくは、(Fe1−aMa)100−X−Y−Z−α−β−γCuXSiYBZM1αM2βXγ(原子%)(ただし、MはCo及び/又はNiであり、M1はNb、W、Ta、Zr、Hf、Ti及びMoからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、M2はV、Cr、Mn、Al、白金属元素、Sc、Y、希土類元素、Au、Zn、Sn、Reからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、XはC、Ge、P、Ga、Sb、In、Be、Asからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、a、X、Y、Z、α及びγはそれぞれ0≦a≦0.5、0.1≦X≦3、0≦Y≦30、0≦Z≦25、5≦Y+Z≦30、0.1≦α≦30、β≦10及びγ≦10を満たす。)により表される組成を有し、組織の少なくとも50%が1μm以下の平均粒径を有する微細な結晶粒と残部の非晶質、前記結晶粒又は非晶質のいずれかであり、絶縁層を有するFe基軟磁性合金。
    【0026】
    (3)絶縁層を有する珪素鋼板もしくは方向性珪素鋼板において、膜厚が50μm以下のもの。
    【0027】
    ここで、加速コア4に用いる材料の特性を説明する。
    まず、膜厚について:
    材料の膜厚が厚いほど渦電流損すなわちコア損失が増え、消費電力や発熱が増大し問題となる。 本実施の形態で用いた材料の特性図で図7に示す。 図7は加速コア4を1Tで励磁した場合について、縦軸に損失、横軸に膜厚をとり、周波数をパラメータと示したものである。
    【0028】
    図7の結果によれば、膜厚が厚くなるほど曲線の曲がり方が大きくなり、つまり周波数増加に対して損失が急速に増大することが解る。 加速電圧Vaccelは、加速コア4の励磁周波数fに比例するので、加速コア4の運転に関しては、電子の加速電圧を高くする目的で、なるべく高周波の励磁周波数にすることが必要となる。 そのため、周波数増に対して損失増のゆるやかな膜厚50μm以下の材料を用いることが望ましい。
    【0029】
    次に、加速コア4の励磁周波数について:
    図7に示すように、膜厚を50μm以下とした場合であっても、周波数が1kHzより小さい場合には、損失がほとんど増えない。 そのため、実施の形態で用いる軟磁性合金は、励磁周波数が1kHz以上の場合に特に有効となることが解る。
    【0030】
    次に、飽和磁束密度について:
    加速コア4の損失は、また使用磁束密度によって変化する。
    図8に本実施の形態の加速コアの磁束密度−起磁力曲線(BH曲線)を示す。 図8において、縦軸は磁束密度B[T]を示し、横軸は起磁力H[A/m]を示す。 図8の磁束密度−起磁力曲線において、加速コア4の損失は曲線で囲まれる面積に相当する。 従って、低い磁束密度で使用すれば曲線で囲まれる面積が小さくなり、加速コア4の損失を低減することができる。 しかし、加速電圧Vaccelは材料の使用磁束密度Bに比例するので、できるだけ高磁束で使用するほうが望ましい。 そして実際には図8に示すBH曲線の飽和磁束密度近くまで励磁するのでコア損失も最大となります。 この材料の場合Bmaxはほぼ1Tである。 このように、1T以上の高磁束密度で使用する場合は高損失となるので、飽和磁束密度が1T以上の軟磁性合金を用いる本実施の形態は特に有効となる。
    【0031】
    図9は種々の材料について、実用飽和磁束密度と損失を比較した関係図である。 損失については、励磁周波数2kHz、磁束密度1Tの場合を示しており、単位はW/kgである。 加速コアの小型化を考慮すると、実用飽和磁束密度の低いフェライトが最も不利で、他の材料はほぼ同等である。
    【0032】
    また、損失の点を考慮すると、鉄系ナノクリスタル、鉄系アモルファス、珪素鋼板(50μm)、珪素鋼板(100μm)の順で良いが、コスト面の点を考慮すると、鉄系ナノクリスタル、鉄系アモルファス、珪素鋼板(50μm)の順で良く、また珪素鋼板(50μm)と珪素鋼板(100μm)とはほぼ同等であることが解る。
    【0033】
    以上のように、本実施の形態のビーム加速装置においては、加速コア4は、厚さが50μm以下で飽和磁束密度が1T以上の軟磁性合金のリボン状薄板材4aが多層巻きされて作製されている。 そのため、コア損失を抑制できるとともに加速コアを小型にすることができる。 その結果、ビーム加速装置を小型とすることができ、また、コストの削減を図ることができる。
    【0034】
    また、加速コア4に印可する励磁周波数を1kHz以上とすることで、加速電圧を増大することができ、高性能なビーム加速装置とすることができる。
    【0035】
    さらにまた、磁場発生手段(固定磁場発生手段)としての偏向電磁石2は、環状通路1a内に内径側から外径側に徐々に大きくなる固定磁場を生成するので、荷電粒子の回転に同期させて磁場を内側から外側に変動させる必要が無く、しかも軌道を多数回周回する複数の荷電粒子を同時に加速できる。 また、偏向電磁石2に電力を供給する電源を、複雑で高価な高周波電源から簡単で安価な一般的な電源にすることができ、コストの削減を図ることができる。
    【0036】
    さらに、磁場発生手段(固定磁場発生手段)は、環状通路1aを挟んで対向して配置され、環状通路1aの内径側から外径側に向かって徐々に間隔を狭める一対の磁極片2a、2bを有する偏向電磁石2である。 そのため、環状通路1a内に内径側から外径側に徐々に大きくなる固定磁場を容易に生成することができる。
    【0037】
    実施の形態2.
    加速コアに関して、コア損失が大きい材料を用いても使用する体積が小さければ総発熱量を抑制できる。 このことから、本実施の形態は、ビーム加速装置の大きさに直接係わる環状真空容器が囲む部分の加速コアのみに飽和磁束密度の高い材料を用いるようにして発熱を抑制するものである。
    【0038】
    図10は本発明の実施の形態2のビーム加速装置を示す加速コアの断面図である。 図10において、本実施の形態の加速コア14は、環状真空容器1に囲まれた内部加速コア14aとその他の部分であるコ字型の外部加速コア14bとから構成されている。 外部加速コア14bは、厚さ50μm以下の軟磁性合金でなるリボン状材料が実施の形態1と同様に多層巻きされて四角環状の積層体とされた後、四角の1辺部が切り離されて作製される。 一方、内部加速コア14aは、外部加速コア14bに用いられる材料より飽和磁束密度が高く、厚さ5.0μm以上の軟磁性合金でなるリボン状材料が多数枚積層されて作製される。 そして、1個の内部加速コア14aと2個の外部加速コア14bとが接合されて、断面概略めがね状の環状真空容器1を2箇所で囲む一対の加速コア14とされている。
    【0039】
    尚、外部加速コア14bと内部加速コア14aの接合においては、接合部が約45°に形成され、接合面は所定の程度の鏡面仕上げによって磨かれ、両接合面は、例えば接着剤にて接合される。 上述にて接合面が磨かれる理由は、両接合面間に含浸する接着剤層を微少な厚さとすることであり、接着剤層が所定の厚さ以下であれば、加速コア14内に磁束が良好に発生する。
    【0040】
    また、外部加速コア14bと内部加速コア14aは、外部加速コア14bの飽和磁束密度Boと、内部加速コア14aの飽和磁束密度Biとの比が、内部加速コア14aの断面積Sdと、内部加速コア14aと外部加速コア14bの接合面積Ssの比と等しくなるように(Bo:Bi=Sd:Ss)されている。 このように接合することで、両者の飽和磁束密度のしきい値を同じとすることができ、内部加速コア14a及び外部加速コア14bを共に、飽和磁束密度に安全係数(通常0.7〜0.9)をかけた値で使用することができる。 尚、接合面積Ssの調整は、接合面の傾きを変化されることにより行うことができる。
    【0041】
    本実施の形態においては、内部加速コア14aの飽和磁束密度が高いため、必要な磁束を得るためのコア断面積を小さくすることができ、ビーム加速装置を小型・軽量化することができ、コストダウンを図ることができる。 一方、内部加速コア14aの体積は、加速コア全体の1/4〜1/5に過ぎないため、発熱の総量を抑制することができる。
    【0042】
    このような構成のビーム加速装置においては、加速コア14は、環状真空容器1の内側側面によって径方向内側に囲まれる部分の内部加速コア14aとこの内部加速コア14aとともに環を成す断面コ字型の外部加速コア14bを有し、内部加速コア14aは外部加速コア14bよりも飽和磁束密度の高い軟磁性合金で作製されている。 すなわち、加速コア14の環状真空容器1で囲まれた部分に飽和磁束密度の高い軟磁性合金を用い、その他の部分にコア損失の小さい軟磁性合金を用いることにより、加速コア14の全体での損失(発熱)を抑制することができ、電源負荷の低減、冷却構造の簡素化ができると同時に、コストを増加させることなく加速コアを小型にすることができる。
    尚、本実施の形態においては、偏向電磁石2のような固定磁場発生手段に限らず、その他の磁場発生手段、例えば変動磁場発生手段等においても同様な効果を得ることができる。
    【0043】
    【発明の効果】
    この発明に係るビーム加速装置は、荷電粒子ビームが通過する環状通路が内部に形成された環状中空容器と、環状中空容器の円周方向に沿って複数個設けられ荷電粒子ビームを偏向させて荷電粒子ビームを環状通路内の周回軌道上に誘導する固定磁場発生手段と、環状中空容器の所定の位置に設けられ荷電粒子ビームの加速電場を誘起する加速ギャップと、環状中空容器を取り囲むように設けられ内部の磁束を変化させて電磁誘導により加速ギャップを介して加速電場を発生する加速コアとを備え、加速コアに印可する励磁周波数の1周期以内に荷電粒子の入射から出射までを完了するビーム加速装置であって、加速コアは、厚さが50μm以下で飽和磁束密度が1T以上の軟磁性合金のリボン状薄板材が多層巻きされて作製されている。 そのため、コア損失を抑制できるとともに加速コアを小型にすることができる。 その結果、ビーム加速装置を小型とすることができ、また、コストの削減を図ることができる。
    【図面の簡単な説明】
    【図1】 本発明の実施の形態1のビーム加速装置の上面図である。
    【図2】 図1のI−I線に沿う矢視断面図である。
    【図3】 図2の断面図の偏向電磁石の部分を拡大して示す拡大図である。
    【図4】 図3の偏向電磁石の磁極片に巻回された巻線の様子を示す斜視図である。
    【図5】 実施の形態1のビーム加速装置の加速コアがリボン状薄板材が多層巻きされて作製されている様子を説明する斜視図である。
    【図6】 図5の加速コアに係わる電気回路を説明する電気系統図である。
    【図7】 実施の形態1の材料膜厚との特性図である。
    【図8】 実施の形態1の加速コアの磁束密度−起磁力曲線を示す関係図である。
    【図9】 種々の材料について実用飽和磁束密度と損失を比較した関係図である。
    【図10】 本発明の実施の形態2のビーム加速装置を示す加速コアの断面図である。
    【符号の説明】
    1 環状真空容器(環状中空容器)、1a 環状通路、2 偏向電磁石(磁場発生手段)、2a,2b 磁極片、3 加速ギャップ、4,14 加速コア、5コイル、6 電子銃、7 静電偏向器、8 出口、9 高エネルギー電子ビーム、10 X線変換ターゲット、11 X線、12 加速コア駆動電源、13 偏向電磁石駆動電源、14a 内部加速コア、14b 外部加速コア。

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