【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば高密度光波長多重方式の光ネットワークに用いられる光通信機器に係り、詳細には、小型で多機能化した光通信機器に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、インターネット等の急速な普及に伴い、通信伝送方式は光ファイバーを用いた方式に移行しつつある。 また、さらなる伝送容量の高密度化を目的として、光多重変換を用いたWDM(Wevelength Divis ion Maultiplexing)伝送方式が採用されつつある。 W DM方式を採用するには、波長の異なる光信号を合成/ 分波、切換、減衰等する光制御通信モジュールが不可欠となる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】従来の光制御通信モジュールとしては、例えば特開平5−257068号公報、特開平5−281480号公報、特開平7−198 936号公報に開示された光波長可変フィルタがある。 しかし、これらの光波長可変フィルタに用いられるフィルタ本体は、1枚のフィルタに光透過性分布を持たせ、 フィルタ本体を光束に対してスライドさせて透過波長を切り替えるものであった。 従って、フィルタ本体の生産性が低く、コストがかかっていた。 また、透過波長を切り替える際、波長が大きく異なる場合はフィルタのスライド距離が長くなっていたため、応答性が悪くなっていた。 また、フィルタ本体はある程度の大きさを有するため、小型化しにくかった。 また、各光制御通信モジュールは機能が単独であったため、複数の機能を光通信機器に持たせる場合には、複数の光制御通信モジュールを用いる必要があった。 すなわち、光通信機器が大型化していた。 本発明の課題は、応答性がよく小型で多機能化した光通信機器と、この光通信機器の制御方法を提供することである。 【0004】 【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するため、本発明に係る光通信機器は、空間を介して光束を伝播する光学系と、前記空間内の光束を遮る位置に可動であり、該光束に対して直列方向に配置された複数の光学部品と、これら光学部品を別個に駆動する駆動手段と、 この駆動手段を制御する駆動制御手段とを備えることを特徴とし、光学部品を光束に対して直列に配置することで光通信機器を小型化できる。 【0005】ここで、光学部品としては、例えば誘電体多層膜からなる光フィルタ、レンズ、プリズム、反射板等である。 また、光学部品を2種類以上備えると、小型を維持したまま光通信機器を多機能化できる。 さらに、 波長透過特性が異なる2種類以上の光学部品を含む構成にすると、光束を遮る位置に配置される光学部品を切り替えることで所望の波長の光を透過させることができる。 また、波長吸収特性が異なる2種類以上の光学部品を含む構成にすると、光束を遮る位置に配置される光学部品を切り替えることで、所望の波長の光を吸収させることができる。 すなわち、これらの構成とすることで光通信機器に波長選択を目的とした光フィルタの機能を持たせることができる。 また、透過光量特性が異なる2種類以上の光学部品を含む構成にすると、光束を遮る位置に配置される光学部品を切り替えることで、透過光量を調節できる。 すなわち、光通信機器に透過光量を調節する機能を持たせることができる。 また、プリズムやミラー等の光路変換特性を持つ光学部品を他の光学部品(例えば上述した各光学部品)と共に含む構成にすると、光路変換特性を持つ光学部品の角度を変えることで、光路を所望の向きに変換できる。 すなわち、光通信機器に光路を変換する機能も持たせることができる。 また、光学部品として、少なくとも一種類の光学部品において、光学的特性が同じである光学部品をさらに一つ以上備えることで、光通信機器にバックアップ機能を持たせることができる。 【0006】また、駆動手段を複数備える場合、前後する光学部品と駆動手段とが干渉しないように光学部品間隔を広げる必要があるが、光束に対して前後する駆動手段を、同一の光学部品間に千鳥状に配置すると、光学部品の間隔を狭くできる。 すなわち、光通信機器をさらに小型化できる。 この場合、駆動手段を光学部品に対して組み付けた移動光学部材を、駆動手段が光束を挟んで同一の光学部品間に位置するように配置する構成とすると、組立時の生産性が向上する。 【0007】また、駆動手段としては、例えば圧電アクチュエータを用いる。 この場合、伸縮振動を生じる圧電体と、この圧電体に生じる伸縮振動により摩擦駆動する移動体とを備える構成とすると、小型で高トルクな駆動手段となるため、より光通信機器を小型化できる。 より具体的には、回転型や直動型の圧電アクチュエータを用いる。 【0008】また、駆動手段が圧電アクチュエータの場合、以下の構成にできる。 まず、制御手段を、予備信号を駆動前に入力する構成としてもよい。 この場合は、圧電アクチュエータは予備信号によりウオーミングアップされて応答性がよくなっているため、光通信機器の応答性を向上させることができる。 また、制御手段を自励発振回路を備える構成とすると、より効率よく圧電アクチュエータを駆動できる。 【0009】また、光学部品を移動可能に支持する支持部材を備え、この支持部材に制御手段を設けると、スペースの有効利用となり光通信機器をより小型化できる。 【0010】また、上述した光通信機器において、複数の光学部品を同時に駆動させるように制御すると、光学部品の切換に必要な時間を短縮できる。 すなわち、光通信機器の応答性を向上させることができる。 【0011】 【発明の実施の形態】〔第1の実施の形態〕まず、構成の概略をブロック図を用いて説明する。 図1及び図2 (A)・(B)に示すように、光通信機器1は、光信号を入力する入力部10と、入力部10から入力した光信号を制御する複数の移動光学部材20と、各移動光学部材20を制御する駆動制御手段30と、光信号を出力する出力部40と、により概略構成される。 すなわち、光通信機器1は、入力部10から入力された光信号を移動光学部材20で制御した後、出力部40から出力する機器である。 ここで、移動光学部材20は、図2(B)に示すように、入力部10と出力部40との間の光束10 0に対して直列かつ互い違いに配置されている。 【0012】入力部10は、図2(B)に示すように、 光ファイバ10a及びレンズ10bを備える。 出力部4 0も、同様に光ファイバ40a及びレンズ40bを備える。 【0013】移動光学部材20は、光学部品21及び圧電アクチュエータ22とにより構成され、圧電アクチュエータ22で光学部品21を光信号を遮断する位置まで動かしたり、或いは遮断する位置から除いたりすることで光信号を制御する。 移動光学部材20は、図2(A) に示すように支持部材20a(図2(B)では不図示) の側面に取り付けられる。 ここで、図2(B)に示すように、移動光学部材20取付側の支持部材20a側面は、移動光学部材20が光束100に対してどちら側に位置するかで一義的に決まっており、光束100を挟んで反対となっている。 これにより、移動光学部材20を設置するために必要な間隔を狭くできる。 【0014】光学部品21は、特定の波長の光を透過する光フィルタ(図3(A)参照)、特定の波長の光を吸収する光フィルタ(図3(B)参照)、透過光量を調節する光フィルタ(図3(C)参照)などが考えられ、誘電体多層膜から成る。 【0015】圧電アクチュエータ22は、例えば回転型の圧電アクチュエータであり、図2及び図4に例示するように、固定台22aの上に固定された円板上の圧電素子22bと、圧電素子22b一体に設けられた振動体2 2cと、振動体22cの上に載置された移動体22d と、振動体22cと移動体22dとの接触圧を確保する加圧手段22eと、により概略構成される。 圧電素子2 2b上面に生ずる屈曲振動は振動体11cで増幅され、 振動体11c上の突起(不図示)から移動体22dへ駆動力として出力される。 また、移動体22dは一端に光学部品を固定保持する。 【0016】ここで、圧電アクチュエータ22の移動体22dは棒状の一体物であり、その中央付近を回転軸として回転する。 なお、本発明に係る移動体は、用途に応じて複数の部材で構成してもよい。 【0017】また、支持部材20a側面には移動体22 dの他端の回転円周上に、該他端を挟むように二つの突起20bが設けられている。 すなわち、移動体22d は、突起20bは二つの突起20bによって回動範囲が制限される。 突起20bの一方は、移動体22dの一端に設けられた光学部品21が、支持部材20a側端近傍の光束100を遮断する場所に位置するように設置され、突起20bの他方は、移動体22d及び光学部品2 1が光束100と干渉しない場所である待避位置に位置するように設置される。 また、この構造により、移動体22dの一次モーメントを低減できる。 【0018】すなわち、移動光学部材20は光学部品2 1を除いてすべて同一の構成でありるため生産性は高くなり、また、光束を遮る場合の駆動回転方向はすべて同一であるため、駆動制御手段30による制御方式も簡単になる。 【0019】駆動制御手段30は、図1に示すように、 例えば駆動回路31及び制御手段32で構成される。 【0020】このうち、駆動回路31は図5に例示する周知の自励発振回路であり、圧電素子22bの圧電振動によって生じる両面間の周期的電圧変動を増幅して圧電素子22b自身の駆動信号として用いる。 駆動回路31 は、例えばIC化され、小型化を目的として、支持部材20aの側面、好ましくは移動光学部材20取付側の側面に取り付けられる。 【0021】ここで、駆動回路31中の反転増幅器31 aおよび増幅器31bは制御手段32によって制御される。 これにより、圧電アクチュエータ22は制御手段3 2により制御されることになる。 【0022】また、制御手段32は、圧電アクチュエータ22を制御することで各光学部品21を回転移動させるが、この際、切換時間短縮のため、新たな光学部品2 1を光束100を遮断する位置に配置すると同時に、光束100を遮断する位置に配置されていた光学部品21 を待避位置まで戻す。 【0023】また、制御手段32は、圧電アクチュエータ22を本駆動して光学部品21を回転移動する前に、 圧電アクチュエータ22に対し予備信号を入力する。 予備信号が入力されることにより、圧電アクチュエータ2 2はウオーミングアップされた状態となり、本駆動のための駆動信号を入力した時の応答性が向上する。 ここで、予備信号としては、本駆動の方向とは反対方向の駆動信号や、移動体22dが移動しない程度の微弱な駆動信号がある。 前者の場合は、駆動力は移動体22dを突起20bに押しつけることになり、移動体22dを移動させない。 【0024】上述した構成の光通信機器1によれば、各移動光学部材20を適宜制御することで、光束100を遮断する位置に配置される光学部品21を適宜選択できる。 従って、光通信機器1の光フィルタ機能を切り替えられる。 すなわち、光通信機器1は、波長透過特性の異なる複数種類の光フィルタを光学部品21として用いることで、出力部40の出力光の波長を応答性よく切り替えられる光通信機器となる。 また、光通信機器1は、波長吸収特性の異なる複数種類の光フィルタを光学部品2 1として用いることで、出力部40からの出力光から取り除く光の波長を応答性よく切り替えられる光通信機器となる。 また、光通信機器1は、光吸収率の異なる複数種類の光フィルタを光学部品21として用いることで、 応答性よく出力部40からの出力光の強度を変更できる光通信機器となる。 また、光通信機器1は、同一の光フィルタを複数備えることで、バックアップ機能を備えた光通信機器となる。 【0025】また、可変型フィルタを用いる必要はないため、生産性は向上して低コスト化する。 また、圧電アクチュエータ22に通電して動作させなくても光束10 0の制御状態を維持できる。 従って、光通信機器1の消費エネルギーを削減できる。 【0026】〔第2の実施の形態〕本発明の第2の実施の形態における光通信機器1は、概略は第1の実施の形態における光通信機器1と同様の構成であるが、移動光学部材20に突起20bを設けずにエンコーダ23を設け、制御手段32に、エンコーダ23からの検出結果を基に圧電アクチュエータ22を制御する機能を持たせた構成である。 【0027】エンコーダ23は、移動体22dと共に回転するスリット23aと、スリット23aの回転量を検出する周知の光式の回転量検出器23bとにより構成される。 回転量検出器23bの検出結果は、制御手段32 に送信される。 【0028】本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得るほか、任意の角度に移動体22dを制御できる。 また、突起20bと移動体22dの接触に伴う不具合が生じる可能性もなくなる。 【0029】〔第3の実施の形態〕本発明の第3の実施の形態である光通信機器2は、概略は光通信機器1と同様の構成であるが、図7(A)・(B)に示すように、 光束100を折り曲げる反射板あるいはプリズムを少なくとも1つの光学部品21(図7(B)中では最後の2 つ)として採用し、光学部品21で折り曲げられた光束100に対する出力部40を付加した構成である。 【0030】光通信機器2によれば、光束100を折り曲げる光学部品21の位置を、光束100を遮る位置としたりそこから外したりすることで、光束100を出光する出力部40を切り替えられる。 すなわち、光通信機器2は、小型を維持したまま光切換器としての機能も備えた複合型の機器となる。 【0031】〔第4の実施の形態〕本発明の第4の実施の形態である光通信機器3は、概略は光通信機器1と同様の構成であるが、図8(A)・(B)に示すように、 光束100を遮断するシャッタを少なくとも1つの光学部品21(図8(B)中では最後の1つ)として採用した構成である。 【0032】光通信機器3によれば、シャッタである光学部品21の位置を、光束100を遮る位置としたりそこから外したりすることで、光束100を出光したり遮断したりできる。 すなわち、光通信機器2は、小型を維持したまま光スイッチとしての機能も備えた複合型の機器となる。 【0033】〔第5の実施の形態〕本発明の第5の実施の形態である光通信機器4は、光通信機器1〜3と概略同じ構成であるが、図9(A)に示すように、移動光学部材20の代わりに移動光学部材50を用いている。 また、駆動回路31は光通信機器4の基板4a上に直接設けられている。 【0034】移動光学部材50は、図9(B)に示すように、光学部品21を、直動型の圧電アクチュエータ5 1であり、光束100に交わる方向に直線的に動かす移動させる構成である。 圧電アクチュエータ51は、直方体状の圧電素子及び振動体を備えており、前記した圧電素子上面に生ずる屈曲振動を前記振動体で増幅し、振動体上の突起51aから屈曲振動を駆動力として出力する。 【0035】ここで、光学部品21は基板4a上に立設された2つのストッパ部材4bで挟まれており、これらストップ部材4bの間で移動可能となっている。 一方のストッパ部材4bは、光学部品21が光束100を遮る位置まで移動してきたときに、光学部品21に当接するよう位置決めされており、他方のストッパ部材4bは、 光学部品21が光束100を遮る位置から外れたときに、光学部品21に当接するよう位置決めされている。 また、制御手段32による予備信号は、光通信機器1〜 3における微弱な駆動信号の他、光学部品21がストッパ部材4bに当接する方向に駆動させる信号となる。 また、光学部品21は図示しない加圧手段により前記した振動体に押しつけられている。 【0036】すなわち、光通信機器4において、圧電アクチュエータ51を駆動して光束100を遮るよう配置された光学部品21を切り替えることで、光通信機器1 〜3と同様の効果を得る。 【0037】なお、本発明は以上の各実施の形態に限定されるものではない。 特に光学部品21として適用可能な光学部品やその組合せ等に制限はなく、これらを適宜選択することで、所望の機能を有する小型の複合型(或いは単機能)の光通信機器を得られる。 また、各移動光学部材20を光束100に対して完全に直列に配置する必要はなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で直列方向に配置してあればよい。 また、各圧電アクチュエータの消費電力量及び駆動方向から各移動体の移動量すなわち光学部品の位置情報を得る構成としてもよい。 また、第2の実施の形態における光通信機器1において、突起2 0bを備える構成としてもよい。 この場合は、突起20 bによって移動体22dの位置決めが行われ、移動体2 2dの位置をエンコーダ23で認識する構成となる。 その他、具体的な各構成要素等についても適宜に変更可能であることは勿論である。 【0038】 【発明の効果】以上、本発明によれば、光学部品を光束に対して直列に配置することで光通信機器を小型化できる。 また、各光学部品の組合せを適宜変更することで、 小型で複合型の光通信機器や、バックアップ機能を有する光通信機器を得られる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1の実施の形態の光通信機器の構成を示すブロック図である。 【図2】(A)は図1の光通信機器の断面概略図であり、(B)は同上面概略図である。 【図3】図1の光学部品である光フィルタの機能を説明する図である。 【図4】図1の移動光学部材の構成を示すブロック図である。 【図5】図1の駆動回路の一例を示すブロック図である。 【図6】本発明の第2の実施の形態の光通信機器の要部図である。 【図7】本発明の第3の実施の形態の光通信機器の構成を示す図であり、(A)は断面概略図、(B)は上面概略図である。 【図8】本発明の第4の実施の形態の光通信機器の構成を示す図であり、(A)は断面概略図、(B)は上面概略図である。 【図9】本発明の第5の実施の形態の光通信機器の構成を示す図であり、(A)は要部正面図、(B)は上面図である。 【符号の説明】 1、2、3、4、5 光通信機器 10 入力部(光学系の一部) 21 光学部品 22 圧電アクチュエータ 30 駆動制御手段 40 出力部(光学系の一部) 51 圧電アクチュエータ フロントページの続き (72)発明者 飯野 朗弘 千葉県千葉市美浜区中瀬1丁目8番地 株 式会社エスアイアイ・アールディセンター 内 (72)発明者 鈴木 賢二 千葉県千葉市美浜区中瀬1丁目8番地 セ イコーインスツルメンツ株式会社内 (72)発明者 島田 友弘 千葉県千葉市美浜区中瀬1丁目8番地 セ イコーインスツルメンツ株式会社内 Fターム(参考) 2H041 AA04 AA21 AB02 AB07 AB10 AC08 AZ01 5K002 BA02 BA05 BA06 DA02 FA03 |