光受信器及び光伝送システム

申请号 JP2012523486 申请日 2010-07-09 公开(公告)号 JPWO2012004890A1 公开(公告)日 2013-09-02
申请人 株式会社日立製作所; 发明人 信彦 菊池; 信彦 菊池;
摘要 光受信器300は、光多値 信号 215を受信し2台の光遅検波器223(遅延時間T=シンボル時間、位相差0度、90度に設定)で受信し、出 力 信号をAD変換後、リタイミング処理を行い、シンボル中心時刻で差動位相を検出する。受信器内では、これをシンボル毎に積算した後に、別途設けた光強度受信器から得られた振幅成分と合成して、光電界を再生する。その後、時間間隔Tの波長分散補償回路231で伝送路の波長分散を補償する。また、電気ないしは光ナイキストフィルタを挿入して帯域制限を行うことで、波長分散補償効果を高めることができる。
权利要求
  • 受信される光信号のシンボル時間と略一致した遅延量を有する結合型光遅延検波受信器と、AD変換器と、差動位相算出回路と、位相積算回路と、前記光信号の振幅成分を抽出する光振幅検出部と、光電界信号再生回路と、伝送路での伝送劣化を補償する伝送劣化等化器とを備え、かつ、予め定められたシンボル時間の2値以上の光変調信号である前記光信号を受信する光受信器であって、
    前記結合型光遅延検波受信器は、受信された光信号のシンボル時間と略一致した遅延量を有し、受信された該光信号を検波して出力し、
    前記AD変換器は、前記結合型光遅延検波器の出力信号をデジタル信号に変換し、
    前記差動位相算出回路は、該デジタル信号を入力して、直前のシンボル時間の前記光信号との差動位相を略シンボル時間ごとに算出し、
    前記位相積算回路は、算出された差動位相を入力して受信信号のシンボル時間毎に積算して位相情報を算出し、
    前記光振幅検出部は、受信された光信号の振幅成分を抽出し、
    前記光電界信号再生回路は、算出された位相情報と前記光振幅検出部で得られた光振幅情報とを組み合わせて光電界信号を再生し、
    前記伝送劣化等化器は、再生された光電界信号を入力して伝送劣化の等化を行う前記光受信器。
  • 前記伝送劣化等化器の等化時間間隔が、シンボル時間と略一致することを特徴とした請求項1に記載の光受信器。
  • 前記位相積算回路が位相積算を行うタイミングが、受信した光信号のシンボル中央時刻に略一致することを特徴とした請求項1に記載の光受信器。
  • リタイミング回路をさらに備え、
    前記AD変換器のサンプリング間隔を前記シンボル時間より小として波形のオーバーサンプリングを行い、
    前記AD変換器の出力信号を前記リタイミング回路に入力し、
    前記リタイミング回路は、入力された信号を、サンプリング時刻が受信された光信号のシンボルの中央時刻に略一致し、かつサンプリング間隔が前記シンボル時間に一致したデジタルサンプル列に変換して前記位相積算回路に出力することを特徴とした請求項3に記載の光受信器。
  • クロック抽出回路をさらに備え、
    前記クロック抽出回路は、前記結合型遅延検波器の出力信号の一部又は前記光振幅検出部の出力信号の一部を入力信号として、入力信号から周期が受信した光信号のシンボル時間と一致したクロック信号を抽出し、該クロック信号を前記AD変換器に出力し、
    前記AD変換器は、該クロック信号に従い前記結合型遅延検波器の出力信号をサンプリングし、サンプリングタイミングがシンボル中央時刻に略一致したサンプル列を得ることを特徴とした請求項3に記載の光受信器。
  • 前記位相積算回路から出力された位相情報、又は再生された光電界信号、又は前記伝送劣化等化器から出力された光電界信号を入力して、位相揺らぎの除去を行う位相揺らぎ除去回路をさらに備えた請求項1に記載の光受信器。
  • 遅延量が前記シンボル時間と一致した電気位相差動検波回路をさらに備え、
    前記電気位相差動検波回路は、伝送劣化等化後の光電界信号を入力し、入力された光電界信号全体又はその位相成分のみをデジタル数値演算で遅延検波又は差動検波した信号を出力することを特徴とした請求項1乃至6のいずれかに記載の光受信器。
  • 前記光電界振幅抽出部は、光強度受信器と第2のAD変換器と平方根演算回路とを備え、
    前記光強度受信器は、分岐された受信信号の一部を入力してその強度成分を電気信号に変換して出力し、
    前記第2のAD変換器は、該電気信号をデジタルサンプル列に変換して出力し、
    前記平方根演算回路は、該デジタルサンプリング列を入力して平方根演算を行って出力する構成であることを特徴とした請求項1に記載の光受信器。
  • 前記伝送劣化等化器が波形劣化を自動的に補正する適応等化回路であることを特徴とした請求項1に記載の光受信器。
  • 前記伝送劣化等化器が、前記伝送路の波長分散の逆伝達特性を持つデジタルフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の光受信器。
  • 前記伝送劣化等化器は、光電界信号の直流オフセット成分を補正するオフセット補正部を備え、
    前記オフセット補正部は、光電界信号に、予め定められた波長分散量に応じたオフセット信号を加算することを特徴とした請求項10に記載の光受信器。
  • シンボル時間Tsに対して帯域幅が1/(2Ts)以上かつ1/Ts以下の帯域狭窄ナイキストフィルタを備え、
    前記AD変換器の出力信号を帯域狭窄ナイキストフィルタに入力し、デジタル信号の帯域狭窄を行うことを特徴とした請求項1に記載の光受信器。
  • 前記光受信器は、線形劣化の補償後に帯域狭窄化された信号の波形歪みを補償する帯域補正フィルタを有することを特徴とした請求項12に記載の光受信器。
  • 情報信号で変調された光信号を生成する光送信器と、
    請求項1に記載の光受信器とを備え、
    前記光送信器から出力され光ファイバ伝送路を伝送後の光信号を前記光受信器で受信し情報信号に変換して出力する光伝送システム。
  • 前記光電界送信器は、シンボル時間Tsに対して帯域幅が1/(2Ts)以上かつ1/Ts以下の帯域狭窄ナイキストフィルタを有し、
    生成する光信号の帯域幅をあらかじめ電気領域で狭窄して出力することを特徴とした請求項14に記載の光伝送システム。
  • 前記光伝送システムは、シンボル時間Tsに対して帯域全幅が1/Ts以上かつ2/Ts以下の光帯域狭窄フィルタを備え、
    前記光送信器に又は前記光受信器に又は前記光ファイバ伝送路の途中に、前記光帯域狭窄フィルタを挿入して光信号の帯域狭窄を行うことを特徴とした請求項14に記載の光伝送システム。
  • 前記光送信器は位相予積算回路をさらに有し、
    該位相予積算回路は、伝送する光信号の位相を前記シンボル時間毎に積算することを特徴とした請求項14に記載の光伝送システム。
  • 前記光送信器は予等化回路をさらに有し、
    該予等化回路が、少なくとも波長分散を含む前記光ファイバ伝送路の線形劣化、又は前記光受信器による波形の劣化を、送信側で予め等化する機能を持つことを特徴とした請求項14に記載の光伝送システム。
  • 前記光受信器は、線形劣化の補償後に帯域狭窄化された信号の波形歪みを補償する帯域補正フィルタを有することを特徴とした請求項15又は16に記載の光伝送システム。
  • 说明书全文

    本発明は、光情報伝送技術に係り、更に詳しくは、光ファイバで伝送される多値光情報の受信に適した光受信器および光伝送システムに関する。

    近年、一本の光ファイバで伝送可能な情報量(伝送容量)は、多重化される波長数の増加や光信号の変調速度の高速化によって拡大し続けている。 光ファイバで伝送する情報量を更に大きくするためには、信号変調方式を工夫し、限られた周波数帯域に多数の光信号を詰め込むことによって、周波数帯域の利用効率を高くする必要がある。
    無線通信の世界では多値変調技術によって、周波数利用効率が10を越えるような高効率の伝送が可能となっている。 光ファイバ伝送においても多値変調は有望視され、従来から多くの検討がされてきた。 例えば、非特許文献1では、4値位相変調を行うQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)が報告され、非特許文献2では、4値の振幅変調と8値の位相変調とを組み合わせた32値の振幅・位相変調が報告されている。
    図1の(A)〜(D)は、光伝送に用いられる複素位相平面の説明と、公知の各種変調方式の信号点配置を示した図であり、複素位相平面(もしくは複素平面、位相面、IQ平面)に各種光多値信号の信号点(識別時刻における光電界の複素表示)がプロットされている。
    図1の(A)は、IQ平面上の信号点の説明図であり、各信号点は複素直交座標(IQ座標)もしくは、図に示す振幅r(n)と位相φ(n)で示す極座標で表示することができる。
    (B)は、4値位相変調(QPSK)の信号点配置の例であり、多値信号の伝送に用いる4個の理想信号点(シンボル)が複素平面上に表示されている。 これらの各理想信号点は振幅が一定であり、位相φ(n)が4つの0、π/2、π、−π/2の位置に配置されている。 これら4個のシンボルのうち一個を伝送することによって、1シンボルあたり2ビットの情報(00、01、11、10)が伝送できる。 なお、本信号を光遅延検波を用いて直接受信(非コヒーレント受信)する場合には、あらかじめ差動予符号化を行った差動4値位相変調(DQPSK)を採用するのが一般的であるが、両者の信号点配置は同一であるため、本明細書では特に両者を区別しないものとする。
    (C)は、無線で広く用いられている16値直交振幅変調(16QAM)を示す。 16QAMでは、理想信号点が格子状に配置され、1シンボルあたり4ビットの情報伝送が可能となる。 図示した例では、Q軸座標で上位2ビット(10xx、11xx、01xx、00xx)の値、I軸座標で下位2ビット(xx10、xx11、xx01、xx00)の値が表現されている。 この信号点配置は、信号点間の距離を大きくできるため、受信感度が高いことが知られており、光通信においてはコヒーレント光受信器を用いてこの種の直交振幅変調が実現可能であることが報告されている。 例えば、非特許文献3には64QAM信号の送受信の実験例が報告されている。 なお、コヒーレント光受信器とは、光信号の位相角の検出のため、受信器内部に配置された局発光源を用いる方式である。

    (D)は、2値の振幅変調と8値位相変調を重畳した16値振幅位相変調(16APSK)方式であり、16個の信号点が振幅の異なる2つの同心円状に8つずつ配置されている。 このように、様々な信号点配置の多値信号の利用が検討されている。
    一方、光伝送容量を拡大するために、各波長(チャネル)の変調速度を10Gbit/秒〜40Gbit/秒程度に高速化する検討もなされている。 しかしながら、変調速度をこのように高速化すると、光ファイバの持つ波長分散や、自己位相変調効果などの非線形効果によって、伝送品質が大きく劣化する。 光伝送の場合、波長分散の影響で、光伝送距離が信号ビットレートの2乗分の1で急減する。 そのため、10Gbit/秒以上の光伝送においては、光信号受信端や光中継器に、伝送路で発生する波長分散を補償するための分散補償器が必要となる。 例えば、40Gbit/秒の光伝送では、波長分散に対する耐が、通常分散ファイバで僅か5km分程度しかないため、光信号受信端に配置された可変波長分散補償器によって、信号品質の劣化が最小となるように自動的に制御する適応補償技術が検討されている。
    しかしながら、可変波長分散補償器は、装置のサイズ、複雑さ、コスト、制御速度などの点で多くの解決すべき課題を残している。 近年では、光信号受信機の電気回路部に、フィードフォワード等化回路(FFE)または判定帰還等化回路(DFE)などの電気的な適応等化回路を配置した構成や、最尤推定回路(MLSE)で受信シンボルを推定する電気段補償技術が検討されている。 但し、従来技術による電気段での波長分散補償は、受信光波形のアイ開口を整形するだけの不完全なものなっている。 そのため、補償効果も、受信器の波長分散耐力を実効的に1.5〜2倍に拡大し、例えば、40Gbit/秒の通常の光ファイバ伝送で伝送距離を10kmまで延ばす程度の不十分なものであった。
    上述した課題を解決し得る技術の一つとして、例えば、非特許文献4で報告されたコヒーレント光電界受信システムがある(第一の技術例)。
    一方、以前に我々が提案した直接検波を用いた位相予積分型光多値信号伝送システムがある(第二の技術例)。 本方式は、コヒーレント検波を用いず、光多値送受信器小型かつ低コスト・低消費電力に実現するものであり、その詳細は特許文献1に記載されている。
    また第三の技術例である特許文献2おいては、我々自身が、遅延検波を用いて波長分散補償機能を持った光電界受信器の構成を提案している。

    国際公開2009/060920号公報

    国際公開2007/132503号公報

    R. A. Griffin, et. Al、" 10Gb/s Optical Differential Quadrature Phase Shift Key (DQPSK) Transmission using GaAs/AlGaAs Integration, "、OFC2002、paper PD−FD6、2002 N. Kikuchi、 K. Mandai、 K. Sekine and S. Sasaki、 " First experimental demonstration of single−polarization 50−Gbit/s 32−level (QASK and 8−DPSK) incoherent optical multilevel transmission, " in Proc. Optical Fiber Communication Conf. (OFC/NFOEC)、 Anaheim、 CA、 Mar. 2007、 PDP21. J. Hongou、 K. Kasai、 M. Yoshida and M. Nakazawa、" 1 Gsymbol/s, 64 QAM Coherent Optical Transmission over 150 km with a Spectral Efficiency of 3 Bit/s/Hz, "、in Proc. Optical Fiber Communication Conf. (OFC/NFOFEC)、Anaheim、CA、Mar. 2007、paper OMP3. M. G. Taylor、" Coherent detection method using DSP to demodulate signal and for subsequent equalization of propagation impairments, "、paper We4. P. 111、ECOC 2003、2003

    まず上述の第一〜第三の技術例についてそれぞれ概要を説明し、課題を説明する。
    図2は、第一の技術例である偏波ダイバーシティ型コヒーレント光電界受信器の構成図である。 偏波ダイバーシティ型コヒーレント光電界受信器は、光信号の二つの偏波の情報を同時に受信する。 光ファイバ伝送路で伝送された入力光信号1101は、偏波分離回路1102−1によって、平(S)偏波成分1105と垂直(P)偏波成分1106とに分離される。 分離されたS偏波成分1105及びP偏波成分1106は、それぞれコヒーレント光電界受信器1100−1及びコヒーレント光電界受信器1100−2に入力される。
    コヒーレント光電界受信器1100−1では、光位相の基準として、入力光信号1101と略同一の波長の局発レーザ光源1103が用いられる。 局発レーザ光源1103から出力された局発光1104−1は、偏波分離回路1102−2で二つの局発光1104−2と局発光1104−3とに分離される。 分離された局発光1104−2及び局発光1104−3は、それぞれコヒーレント光電界受信器1100−1及びコヒーレント光電界受信器1100−2に入力される。
    コヒーレント光電界受信器1100−1では、光位相ダイバーシティ回路1107が、入力された光多値信号のS偏波成分1105及び局発光1104−2を合成する。 光位相ダイバーシティ回路1107は、合成された局発光1104−2と光多値信号のS偏波成分1105との同相成分から取り出されるI(同相)成分出力光1108、及び、合成された局発光1104−2と光多値信号のS偏波成分1105との直交成分から取り出されるQ(直交)成分出力光1109を生成する。 生成されたI成分出力光1108及びQ成分出力光は、それぞれバランス型光受信器1110−1及び1110−2によって受信される。 受信されたI成分出力光1108及びQ成分出力光は、電気信号に変換される。 そして、変換された二つの電気信号は、それぞれA/D変換器1111−1及び1111−2で時間サンプリングされ、デジタル化された出力信号1112−1及び1112−2が生成される。
    以下の説明では、図1の(A)に示すように、受信した入力光信号1101の光電界はr(n)exp(jφ(n))と表記される。 ここで、局発光1104−2及び局発光1104−3の光電界を1と仮定する(本来は光周波数成分を含むが省略する)。 また、rは光電界の振幅であり、φは光電界の位相であり、nはサンプリング時刻である。 局発光1104は、実際にはランダムな位相雑音及び信号光とのわずかな差周波成分等を含むが、位相雑音及び差周波成分は、時間的に緩やかな位相回転であり、デジタル信号処理によって除去されるため無視する。 バランス型光検出器1110−1及びバランス型光検出器1110−2は、局発光1104−2を用いて入力された入力光信号1101をホモダイン検波し、それぞれ局発光を基準にした入力光信号1101の光電界の同相成分及び直交成分を出力する。
    従って、A/D変換器1111−1の出力信号1112−1は、I(n)=r(n)cos(φ(n))で表記され、A/D変換器1111−2の出力信号1112−2は、Q(n)=r(n)sin(φ(n))で表記される。 ただし、数式を簡略化するため、変換効率などの定数は全て「1」としている。 コヒーレント光電界受信器では、受信した入力光信号1101から、光電界r(n)exp(φ(n))によって表記される全ての情報(ここではI成分及びQ成分)を容易に得られるため、多値光信号受信が可能となる。
    デジタル演算回路1113は、複素電界演算回路であり、光信号が伝送中に受ける線形劣化(例えば、波長分散等)の逆関数を与えることによって、線形劣化等の影響をほぼ完全に打ち消すことが可能である。 また、必要に応じてクロック抽出及び再サンプリング等の処理を行い、処理後の光電界信号の同相成分1114−1及び光電界信号の直交成分1114−2が出力される。
    コヒーレント光電界受信器1100−1は、前述したように、受信した入力光信号1101の一つの偏波成分(例えば、S偏波成分)の電界情報を得ることができるが、光信号の偏波状態は光ファイバ伝送中に変動するため、P偏波成分も受信する必要がある。 そこで、コヒーレント光電界受信器1100−2は、入力光信号1101のP偏波成分を同様に受信し、受信したP偏波成分の電界情報を光電界信号1114−3及び光電界信号1114−4として出力する。 デジタル演算・シンボル判定回路1115は、デジタル演算回路1113から出力された各偏波のI成分及びQ成分に光信号の偏波状態の変換(例えば、直線偏波から円偏波への変換)を行って偏波状態の変動を解消する。 次に、デジタル演算・シンボル判定回路1115は、例えば、図1の(C)に示す信号点配置と比較することによって、どのシンボルが伝送されたかを高精度に判定する。 判定結果は、多値デジタル信号1116として出力される。

    前述したコヒーレント光電界受信器を用いると、受信信号の全ての電界情報を得ることができ、複雑な多値信号の場合でも受信可能となる。 特にコヒーレント光電界受信器は、デジタル演算回路1113で、入力信号に光ファイバ伝送路の伝搬関数の逆関数を用いた補正処理を行い、波長分散等による線形劣化を、理論的には完全に補償できるという利点がある。 しかしながら、コヒーレント電界受信器は2つの偏波成分の受信のため2つの受信器が必要なったり、受信器の内部に余分のレーザ光源である局発光源が必要になり、送受信器のサイズやコスト、消費電力が大となるなどの課題がある。
    一方、図3は第二の技術例であり、以前に我々が提案した直接検波を用いた位相予積分型光多値信号伝送システムの構成図である。 本方式は、コヒーレント検波を用いず、光多値送受信器小型かつ低コスト・低消費電力に実現するものである。
    位相予積算型光電界送信器1200の内部では、レーザ光源1210から出力される無変調のレーザ光が光電界変調器1211に入力され、所要の電界変調を施した送信光多値信号1213が出力光ファイバ1212から出力されている。 伝送すべき二値デジタル情報信号1201は、多値符号化回路1202の内部で複素多値情報信号1203に変換される。 本信号は、2次元のIQ平面上で(i、q)と表現されるデジタル電気多値信号であり、時間間隔T(=シンボル時間)毎にその実部iと虚部qが出力される。 本例では、複素多値情報信号1203の一例として16QAM信号を用いるものとする。
    本信号は、位相予積算部1204入力され、内部でその位相成分のみを時間間隔Tでデジタル的に積算され、位相予積算複素多値情報信号1205に変換される。 ここで、入力される複素多値情報信号1203Ei(n)=(i(n)、q(n))を複素平面上で極座標に変換すると、例えばEi(n)=i(n)+jq(n)=r(n)exp(jφ(n))と記述できる(jは虚数単位)。 ここでnはデジタル信号のシンボル番号、r(n)はデジタル信号のシンボル振幅、φ(n)は位相角である。 このとき出力される位相予積算信号は、同じく極座標でEo(n)=i'(n)+jq'(n)=r(n)exp(jθ(n))=r(n)exp(jΣφ(n))と記述できる。 このときθ(n)は出力信号の位相角、Σφ(n)は過去の位相角φ(1). . . . φ(n)を時間Tごとに累積加算した値である。 その出力信号は再び直交座標系に変換された後に、位相予積算複素多値情報信号1205として出力される。 位相の予積算演算によって元の16QAM信号とは大きく異なる同心円上の信号点配置となる。
    本信号は、サンプリング速度変換回路1206に入力され、サンプリング速度が2サンプル/シンボル以上となるように補完される。 その後、位相予積算複素多値情報信号には予等化回路1207によって光伝送路1214などで生じる劣化の逆関数が印加され、その後、実部i”、虚部q”に分離されそれぞれDA変換器1208−1、1208−2で高速アナログ信号に変換される。 これら2本のアナログ信号は、ドライバ回路1209−1、1209−2によって増幅された後に、光電界変調器1211のI、Q2つの変調端子に入力される。 これによって予等化位相積算信号(i”(n)、q”(n))を、光電界の同相成分Iと直交成分Qに持つ送信光多値信号1213が生成できる。 なお、送信光多値信号213の光電界は(i”(n)+jq”(n))exp(jω(n))であり、ω(n)はレーザ光源210の光角周波数である。 すなわち送信光多値信号213は光周波数成分を取り除いた等化低域近似で(i”(n)、q”(n))と等しくなっている。
    送信光多値信号1213は、光ファイバ伝送路1214を伝送され、光ファイバの波長分散などで伝送劣化を受けるとともに光増幅器で増幅され、受信光多値信号1215として非コヒーレント光電界受信器1220に入力される。 これらの伝送劣化は、予等化回路1207であらかじめ印加した逆関数と相互に打ち消すため、受信信号の光電界は位相予積算複素多値情報信号1205と等しくなる。
    受信光多値信号1215は、非コヒーレント光電界受信器フロントエンドの内部の光分岐回路1222によって3つの光信号経路に分岐され、第一の光遅延検波器1223−1、第二の光遅延検波器1223−2、および光強度検出器1225に入力される。 第一の光遅延検波器1223−1は、2つの経路の一方の遅延時間Tdが受信する光多値情報信号のシンボル時間Tに略等しく、また、両経路の光位相差が0となるように設定されている。 また第二の光遅延検波器1223−2は、2つの経路の一方に遅延時間Td=Tを持ち、両経路の光位相差がπ/2となるように設定されている。 第一、第二の光遅延検波器1223−1、1223−2の2つの出力光はそれぞれバランス型光検出器1224−1、1224−2で電気信号に変換され、その後それぞれA/D変換器1226−1、1226−2でデジタル信号dI(n)、dQ(n)に変換される。 また、入力光の光強度を検出する光強度検出器1225の出力電気信号もA/D変換器1226−3でデジタル信号P(n)に変換される。
    その後、デジタル信号dI(n)、dQ(n)は、逆正接演算回路1227に入力される。 ここではdI(n)をX成分、dQ(n)をY成分とする二引数の逆タンジェント演算を行い、その位相角を算出する。 受信光多値信号1215の光電界をr(n)exp(jθ(n))と記述すると、光遅延検波の原理から、dI(n)∝r(n)r(n−1)cos(Δθ(n))、dQ(n)∝r(n)r(n−1)sin(Δθ(n))と書ける。 ここで、Δθ(n)は受信したn番目の光電界シンボルの、直前のシンボルからの位相差(θ(n)−θ(n−1))である。 dI(n)、dQ(n)はそれぞれΔθ(n)の正弦および余弦成分であるため、逆正接演算回路227では4象限の逆正接(逆Tangent)演算を行ってΔθ(n)を算出することができる。
    なお、本構成では前述のように送信側で位相予積算を行っているため、受信光電界信号の位相角θ(n)=Σφ(n)である。 よって逆正接回路1227の出力信号は、Δθ(n)=Σφ(n)−Σφ(n−1)=φ(n)となり、元の複素多値情報信号1203の位相成分φ(t)が抽出できる。
    一方、光強度検出器の出力信号Pは平方根回路1228に入力され、元の電界振幅r(n)=sqrt(P(n))を出力として得ることができる。 よって、得られた振幅成分r(n)と位相成分φ(n)を直交座標変換回路1229に入力すると、復調受信電界として直交座標表現の(i、q)=r(n)exp(jφ(n))が得られる。 これは元の複素多値情報信号1203と同一の信号点配置である。 そこで本信号をユークリッド距離を用いたシンボル判定回路1221に入力しシンボル判定を行うと、多値シンボル列1230が再生できる。

    図4は、第三の技術例の構成例である。 入力光多値信号1215は、光分岐回路1222で2つの光信号に分岐され、第1、第2の光信号は、それぞれ光遅延検波器1240−1(位相差0に設定)、1240−2(位相差π/2に設定)に入力される。 光遅延検波器1240−1、1240−2の出力は、光バランス型受信器1224(1224−1、1224−2)で電気信号x、yに変換され、A/D変換器1226(1226−1、1226−2)、遅延調整回路1242(1242−1、1242−2)を介して、電界演算部1244に供給されている。 図中では、光遅延検波器1240の遅延量はT/2(シンボル時間T)であり、本遅延干渉計は時刻tに受信した光信号と、時刻t−T/2前の光信号を干渉させて出力する。 本技術例は、第二の技術例の場合の半分の時間間隔T/2ごとに光電界を求めて、ナイキスト定理に基づき光電界情報を受信器内で再生、波長分散補償を行うことを意図するものである。
    以下、A/D変換器1241−1、1241−2のサンプリング間隔をT/2とすると、受信光の光電界はr(n)exp(φ(n))であるので、電気受信信号x1243−1、y1243−2はそれぞれr(n)r(n−1)cos(Δφ(n))、r(n)r(n−1)sin(Δφ(n))と書き表せる(量子効率などの定数は省略)。 なお、Δφ(n)=φ(n)−φ(n−1)である。 よって逆正接演算回路1227で信号x、yの逆正接(ArcTan)演算を行うことで差動位相Δφ(n)が演算できる。 これを遅延加算回路1116でサンプルごとに逐次累積加算することで、再生光電界1249−2として受信光電界の位相成分φ(n)が算出できる。
    一方、本例では受信光電界の振幅情報も電気受信信号x1243−1、y1243−2から算出している。 すなわち、両者を平方距離演算回路1245に入力し、両者の平方和の平方根を求めると、演算結果1248−1はr(n)r(n−1)となる。 直前の受信シンボルの電界r(n−1)が既にわかっているものと仮定すると、演算結果1248−1を直前の受信シンボルの電界r(n−1)で除することによってr(n)が算出できる。 すなわち演算結果1248−1を遅延除算回路1247に入力することで再生光信号1249−1として受信光電界の振幅部r(n)を求めることができる。
    これらを組み合わせると受信光電界を再生できるため、上記のプロセスで1シンボル時間中に少なくとも2点の光電界のサンプル点が得られナイキストサンプリング周波数を満たすことになり、光電界のすべての情報を取得できる。 このようにして、光ファイバ伝送によって劣化した電界波形をデジタル的に再生することができるため、この光電界情報を電界補償回路1250に入力して伝送路の逆伝達関数を演算すると、伝送路で生じた線形伝送劣化をすべて完全に補正することが可能になる。 この結果、波長分散補償などの機能が実現できる。

    本発明の第一の目的は、受信器内部の信号処理によって波長分散などの伝送路の線形劣化の補償が可能で、かつ構造が簡素で任意の光多値信号が利用可能な実用的な光受信器を提供することにある。
    第一の技術例である、図2で説明したコヒーレント光電界受信器は、例えば任意の光多値信号の利用が可能であり、かつ前述のように受信器内部の信号処理で伝送劣化の補償が可能かもしれないが、受信器内部に局発光源を必要とし、偏波依存性を持つためダイバーシティ構成などを採用する必要があり、受信器のサイズやコストが上昇してしまう。
    また、第二の技術例である図3で説明した位相予積分型光多値光受信器では、コヒーレント受信を行わないため構造が簡素で、また位相予積分処理を用いることで任意の光多値信号の利用を可能としている。 しかしながら、一般に遅延検波を用いた光多値受信器では、光電界の絶対位相を知ることができず、受信器内部で直接光電界情報を得ることができないため、波長分散補償などの伝送路の線形劣化の補償を実現することが困難である。
    一方、第三の技術例である図4には、光遅延検波を用いて光電界の全情報を算出し、多値伝送にも適用可能な光電界受信器の例が示されている。 しかしながら、本方式にも以下の課題がある。
    第一に受信信号の振幅が略ゼロとなった場合(ゼロとなった点でサンプリングされた場合)に、光信号の位相情報の連続性が失われるという課題がある。 すなわち、雑音の影響や波形の変化などにより一回でも振幅r(n)がゼロになると、その前後の光遅延検波器の出力がゼロとなってしまい、以降のすべての光電界の位相が不定になってしまう。 従って非コヒーレント電界再生方式には、「受信した光電界の振幅が略ゼロの場合、光電界の再生が困難になる」という課題もある。 特に、第三の技術例においては波長分散の補償を実現するために、遅延検波器の遅延量をシンボル時間の1/2とし、1シンボル中に2回の光電界測定を行う必要があるため、第二の技術例の場合に比べてゼロヒットが生じやすいという課題があった。 すなわち、多値変調された光信号は、とくに状態の遷移するシンボル境界で電界がゼロ付近を通過する可能性があるため、1シンボルに2回のサンプリングを行うとゼロヒットが生じやすくなってしまう。 これを回避するため、波形の肩の部分で光電界をサンプリングする手法が記述されているが、サンプリングタイミングをずらす処理を必要とする上、波形のひずみが大きい場合などは波形の肩であってもゼロヒットが起こる可能性が残る。
    第二に位相誤差の累積の課題がある。 第三の技術例においては、受信器内で検出した位相差Δφを積算しつづけるため、誤差や雑音が混入すると、積算された位相φの誤差も累積してしまう。 本例では波長分散の補償のために一シンボルに二回の位相積算を行うため、誤差が累積しやすく正確な光電界の検出が困難となるという課題があった。
    そこで本発明の第二の目的は、第三の技術例における上記の2つの課題を解決し、遅延検波方式においても、よりゼロヒットの影響を避けて安定に、また簡易に波長分散補償の補償を可能とすることである。

    上記の課題は、シンボル時間Tsと略一致した遅延量Tを持つ結合型光遅延検波受信器によって受信信号の差動位相をデジタル的に検出し、これを1シンボル毎に積算し光振幅情報と合成して光電界信号を再生した後に伝送劣化等化器に入力して伝送劣化の等化を行うことで解決することができる。
    本発明ではシンボルごとに光電界を算出するため、伝送劣化等化器の等化時間間隔は、シンボル時間Tsと略一致させるのが最も効果的である。
    また位相積算を行うタイミングが、受信した光信号のシンボル中央時刻に略一致するように、具体的にはリタイミング回路を用いて受信信号のリタイミングとサンプリング速度変換処理を行い、サンプリング時刻が受信シンボルの中央時刻に略一致するようにし、かつサンプリング時間が前記のシンボル時間Tsに一致したデジタルサンプル列に変換してから波長分散補償を行うことで、より大きな補償効果を得ることができる。 もしくは、クロック抽出回路を備え、AD変換器のサンプリングタイミングをシンボル中央時刻に略一致させてもよい。
    また、光電界受信器内に位相揺らぎ除去回路を備え、光電界信号を前記の位相揺らぎ除去回路に入力して、位相揺らぎを除去してもよい。 もしくは、遅延量が前記シンボル時間と一致した電気位相差動検波回路を備え入力された光電界信号全体ないしはその位相成分のみにデジタル数値演算で遅延検波ないしは差動検波を施しても構わない。
    光電界振幅の抽出は、光強度受信器とAD変換器と平方根演算回路を用い、受信信号列に平方根演算を行って算出すればよい。
    上記の波形劣化等化回路は、波形劣化を自動的に補正する適応等化回路としたり、波長分散の逆伝達特性を持つデジタルフィルタとして実現することができる。 特に、バランス型受信器の利用の際に出力信号の直流オフセットが失われてしまう場合には、補償量に応じてオフセット信号を加算補正するのが望ましい。
    さらに補償精度を向上するためには、受信器のAD変換器後に帯域幅が1/(2Ts)以上かつ1/Ts以下の帯域狭窄ナイキストフィルタを挿入する構成が考えられる。
    また特に光電界送信器と光ファイバ伝送路と光電界受信器を備えた光伝送システムにおいては、上記光電界送信器中に帯域幅が1/(2Ts)以上かつ1/Ts以下の帯域狭窄ナイキストフィルタを備え、生成する光電界信号の帯域幅をあらかじめ電気領域で狭窄して出力する構成がさらに理想的である。 このようなデジタルないしはアナログ電気フィルタは、等化的に帯域全幅が1/Ts以上かつ2/Ts以下の光帯域狭窄フィルタで置き換えて、光送信器ないしは光受信器ないしは光伝送路の途中に挿入して帯域狭窄を行ってもよい。
    また、伝送システムにおいては、光電界送信器は位相予積算回路を含み、あらかじめ伝送すべき光信号の位相を前記のシンボル時間毎に積算することで遅延検波受信が可能となり実用性が向上する。 また光電界送信器内部で波長分散の予等化を行うことで、実用的な長距離伝送が可能となる。

    本発明の第1の解決手段によると、
    受信される光信号のシンボル時間と略一致した遅延量を有する結合型光遅延検波受信器と、AD変換器と、差動位相算出回路と、位相積算回路と、前記光信号の振幅成分を抽出する光振幅検出部と、光電界信号再生回路と、伝送路での伝送劣化を補償する伝送劣化等化器とを備え、かつ、予め定められたシンボル時間の2値以上の光変調信号である前記光信号を受信する光受信器であって、
    前記結合型光遅延検波受信器は、受信された光信号のシンボル時間と略一致した遅延量を有し、受信された該光信号を検波して出力し、
    前記AD変換器は、前記結合型光遅延検波器の出力信号をデジタル信号に変換し、
    前記差動位相算出回路は、該デジタル信号を入力して、直前のシンボル時間の前記光信号との差動位相を略シンボル時間ごとに算出し、
    前記位相積算回路は、算出された差動位相を入力して受信信号のシンボル時間毎に積算して位相情報を算出し、
    前記光振幅検出部は、受信された光信号の振幅成分を抽出し、
    前記光電界信号再生回路は、算出された位相情報と前記光振幅検出部で得られた光振幅情報とを組み合わせて光電界信号を再生し、
    前記伝送劣化等化器は、再生された光電界信号を入力して伝送劣化の等化を行う前記光受信器が提供される。

    本発明の第2の解決手段によると、
    情報信号で変調された光信号を生成する光送信器と、
    上述の光受信器とを備え、
    前記光送信器から出力され光ファイバ伝送路を伝送後の光信号を前記光受信器で受信し情報信号に変換して出力する光伝送システムが提供される。

    本発明によると、受信器内部の信号処理によって波長分散などの伝送路の線形劣化の補償が可能で、かつ構造が簡素で任意の光多値信号が利用可能な実用的な光受信器を提供することができる。 また、本発明によると、第三の技術例における上記の2つの課題を解決し、遅延検波方式においても、よりゼロヒットの影響を避けて安定に、また簡易に波長分散の補償が可能である。

    光伝送に適用可能な変調方式と信号点配置の説明図であり、振幅と位相の定義(A)、4値位相変調(QPSK)(B)、16値直交振幅変調(16QAM)(C)、16値振幅位相変調(16APSK)(D)の例。

    従来のコヒーレント光電界受信器の1例を示す構成図。

    従来の直接検波を用いた光多値伝送システムの1例を示す構成図。

    従来の直接検波を用いた光電界受信器の1例を示す構成図。

    本発明による光電界受信器の第1実施例を示す構成図。

    第1実施例における受信電気信号(A)と再生電界信号(B)のサンプリングタイミングの説明図。

    従来の直接検波を用いた光多値受信器における、10Gシンボル/秒8QAM信号のファイバ伝送前(波長分散0ps/nm)の信号点配置(A)と、SMF60km伝送後(波長分散680ps/nm)の信号点配置(B)と、SMF120km伝送後(波長分散1360ps/nm)の信号点配置(C)の計算例。

    本発明の光電界受信器における、10Gシンボル/秒8QAM信号のSMF60km伝送後+分散補償有りの信号点配置(A)と、SMF60km伝送後+分散補償+オフセット補償時の信号点配置(B)と、SMF60km伝送後+帯域狭窄化+分散補償時の信号点配置(C)の例。

    本発明における電界補償回路の例(FIRフィルタ)(A)と、電界補償回路の例(ルックアップテーブル)(B)。

    本発明における受信光電界のスペクトル(A)と、1サンプル/シンボルの差動光電界のスペクトル(B)と、1サンプル/シンボルの再生光電界のスペクトル(C)と、帯域拡大後の再生光電界スペクトル(D)の説明図。

    本発明による光電界受信器の第2実施例を示す構成図。

    本発明の第2実施例における分散補償テーブルの構成例。

    本発明による光電界受信器の第3実施例を示す構成図。

    本発明による光伝送システムの第4実施例を示す構成図。

    本発明による光伝送システムの第5実施例を示す構成図。

    帯域狭窄フィルタを有する光受信器の構成例。

    以下、本発明の幾つかの実施例を図面を参照して説明する。
    なお、各図の構成において、上述の第一〜第三の技術例における構成と対応するものについては、各符号の下3桁が共通する。 なお、例えばサンプリング間隔が異なる、回路規模が異なるなど必ずしも同一とは限らない。

    図5は、本発明の第1実施例の構成図であり、光電界受信器(光受信器)300の構成を示す。
    受信光多値信号215は、光分岐器222によって3つの光信号経路に分岐され、第一の光遅延検波器223−1、第二の光遅延検波器223−2、および光強度受信器225に入力される。 受信光多値信号215は、予め定められたシンボル時間の2値以上の光変調信号であり、光送信器により送信され、光ファイバ伝送路を介して受信される。 第一の光遅延検波器223−1は、内部の2つの光経路の遅延時間差Tが受信する光多値情報信号のシンボル時間Tsに略等しく、また両経路の光位相差が0となるように設定されている。 また第二の光遅延検波器223−2は、内部の2つの光経路の遅延時間差TがTsに略等しく、また両経路の光位相差がπ/2となるように設定されている。 第一、第二の光遅延検波器223−1、223−2の出力光はそれぞれバランス型光受信器224−1、224−2で電気信号に変換され、その後それぞれAD変換器226−1、226−2で高速デジタル信号dI(n)、dQ(n)に変換される。 本例では、AD変換器のサンプリング速度はシンボル速度の2倍(=2/Ts)に設定されている。 また光強度受信器135の出力電気信号もAD変換器226−3でデジタル信号P(n)に変換される。 その後、デジタル信号dI(n)、dQ(n)、P(n)はリタイミング・ダウンサンプリング回路301−1、301−2、301−3に入力されて、タイミング抽出と同時にシンボル中央時刻のサンプルだけを取り出すようにダウンサンプリングされる。
    図6には第1の実施例における受信電気信号(A)と再生電界信号(B)のサンプリングタイミングの様子を示す。 (A)は、AD変換器226−1、226−2、226−3がサンプリングするdI、dQ、P信号とそのサンプリング点(白丸)の位置関係である。 点線はシンボル境界であり、3個のAD変換器はそれぞれ各シンボル中に2回ずつ互いに同じタイミング(白丸の時刻)で入力波形をAD変換してデジタルデータとして出力するが、そのタイミングは必ずしもシンボル境界とは同期していない。 本例では、サンプリング周波数はちょうどシンボル速度の2倍となるように図示しているが、これも多少のずれがあっても構わない。 原則としてA/D変換器のサンプリング速度は、入力信号の周波数帯域の2倍以上であればナイキスト定理を満たし任意の時刻でのリタイミング処理が可能となる。 この条件さえ満たせばシンボル速度の2倍(2/Ts)を多少下回っても構わない。
    リタイミング・ダウンサンプリング回路301−1、301−2、301−3には上記のデジタル信号が入力され、それぞれ内部で波形の遷移タイミングの抽出を行い、サンプリングタイミングがちょうど各シンボルの中央時刻となるようにサンプリング速度を減じて出力する。 このようなデジタルクロック抽出回路は、デジタル無線信号処理などで広く用いられており、同一の機能を持てばどのようなアルゴリズムを用いても構わない。 このような処理は例えば、まず入力デジタル信号の一部を分離し、その絶対値を取った後に高速フーリエ変換(FFT)を行って周波数領域に変換し、シンボル速度と同じクロック成分を抽出、各周波数成分の位相をクロック成分の位相ずれ分だけずらした後に逆フーリエ変換を行って、奇数(ないしは偶数)のシンボル中央時刻のサンプリング点(黒丸)のみを抽出する処理によって実現できる。 またクロック抽出処理は必ずしも、リタイミング・ダウンサンプリング回路301−1、301−2、301−3ごとに独立に行う必要は無く、3つの信号の経路の長さが同一に設定されている場合などには、一つの回路で抽出した共通のクロック位相に基づいて位相シフト・ダウンサンプリング処理を行っても構わない。

    ついで、図5ではリタイミングされたdI成分・dQ成分を逆正接演算回路227に入力して差動位相Δφ(n)を算出する。 なお、前述のリタイミング・ダウンサンプリング処理を行うことによって、入力されるサンプル時刻は多値信号のシンボル中央に合致するようになるため、前述の第三の技術例に比べてはるかにゼロヒットが生じにくくなっている。 差動位相Δφ(n)はその後位相積算回路302に入力され、シンボルごとに一回ずつ(時間間隔Ts)で積算され、絶対位相φ(n)が計算される。
    一方、リタイミング・ダウンサンプリング回路301−3から出力された強度成分は、平方根回路228に入力され、振幅成分に変換される。 なお、光雑音の混入やDCレベルの変動がある場合には必要に応じて直流オフセット成分の補正を行った後に、平方演算を行っても構わない。
    上記のようにして得られた絶対位相成分φ(n)と振幅成分r(n)(図6(B))は直交座標変換回路229に入力されて、極座標から直交座標に変換されて光電界が再生される。 再生された光電界は、サンプリング間隔Ts(シンボル速度と同一)で、受信信号と同じ位相成分φ(n)と振幅成分r(n)を持つデジタル信号となる。 本例では、再生電界信号は、補償間隔Tの電界補償回路231を用いて、伝送路の波長分散の逆関数を印加して線形劣化を補償し、その後、電気位相差動検波回路232によって多値信号を再び位相成分のみを差動検波した後に、多値判定処理を行い、デジタル情報信号230を得る。
    なお、上記のように、本実施例ではコヒーレント光受信器と同様な伝送路の線形劣化の補償が可能とはなるが、補償時点で光電界のサンプリング速度がシンボル速度Tsと同一に低下しているため、補償性能は限定的である。 具体的には、光電界信号の周波数帯域のうち、±1/(2T)以内の成分が補償可能となる。
    上記のような限定的な補償能力であっても、多値信号の光ファイバ伝送においては十分な劣化の補償効果を得ることが可能である。 図7(A)及び(B)は、10Gシンボル/秒、8QAM信号を従来の直接検波を用いた光多値受信器で受信した際の、ファイバ伝送前の信号点配置(A)とSMF60km伝送後の信号点配置(B)である。 なお、図7(C)については後述する。 本例は、図3に示す第二の技術例を用いて、8値の多値変調信号である8QAM変調を位相予積分技術を用いて変復調する例であり、光雑音の影響は無いものとして数値シミュレーションを用いて再生光電界の様子を算出している。 第二の技術例の手法では、伝送路の線形劣化のひとつである波長分散が無い場合(A)のように8つの信号点を持つ8QAM信号が完全に再生できるものの、通常分散ファイバ(SMF)を60km伝送して680ps/nmの波長分散を印加した(B)の例では、信号点分布が大きく広がり、元の信号点配置である(A)とは大きく異なった配置に変化してしまう。 この結果、信号点の弁別が困難になるとともに雑音の影響に弱くなり、大きな伝送劣化が生じてしまう。

    これに対し、図8(A)は本実施例の光電界受信器における、SMF60km伝送後+分散補償有りの信号点配置である。 本例は図5に示す本実施例の構成を用いて、補償間隔Tの電界補償回路231において逆の符号を持つ−680ps/nmの波長分散を印加することによって、デジタル信号処理による波長分散補償を行っている。 この結果、受信信号は図7(B)から大きく改善し、8つの信号点がきれいに分離されていることがわかる。 なお、それでも図7(A)に比べると各信号点の分布が増大しているが、これは前述のように補償周波数帯域が±1/(2T)以内に限定されていることによって補償の不完全性が生じたものと考えられる。
    なお本例のように受信器内で位相積算回路302を用いて光電界の再生を行う場合、積算の初期位相が不定であったり、各光検出器の誤差や熱雑音などが累積されて余分な位相誤差を生じる場合がある。 これに対し本例で、電界補償回路231で補償を行う伝送路の波長分散の逆伝達関数は、電界信号の初期位相は無依存である、波長分散の補償量が比較的小さい場合隣接あるいは近くのシンボルからの影響しか受けないため誤差の累積が小さく、特に問題なく補償が可能である。
    このような初期位相の不定性や位相揺らぎの増加は、後続の値信号の検波をも困難とするが、本例では電気位相差動検波・判定回路232によって、多値信号の位相成分のみを直前のシンボルを基準に差動検波した後に多値判定処理を行うことでその影響を回避している。 すなわち、位相積算回路302で位相成分のみシンボルごとに積算されているため、電界補償の後に、再び位相成分のみ差分演算を行うことで元の多値信号を回復するものである。 なお、多値信号の復調法は本手法に限るものではなく、後述のように位相揺らぎを除去してから多値判定を行ってもよいし、振幅成分を含めて遅延検波を行ってMLSE(最尤系列推定)を行うなど、これまでに提案された様々な位相揺らぎの大きな信号の検出法を用いても構わない。
    本例の補償間隔Tの電界補償回路231では、波長分散の補償のみを示したが原則として線形な伝送劣化であれば等化可能であり、例えば光変調器・復調器の符号間干渉、伝送路の偏波モード分散、光フィルタや電気フィルタによる帯域劣化などが補正可能である。 これらの一部は、位相の不定性があると補償が困難となるが、後述の位相揺らぎの除去の処理などを併用することで補償が実現可能となる。
    上述の第三の技術例では、電界補償回路1250は補償間隔T/2で動作しており、回路規模は、補償間隔Tで動作する本実施の形態のほうが小さくなる。
    図9は、本実施例における電界補償回路231の構成例であり、FIRフィルタ(A)とルックアップテーブル(B)の各実現例を示している。 図9(A)において電界補償回路231に入力される、入力複素電界信号列311は1シンボルに1つずつサンプリング点を持つ複素デジタル信号である。 その内部では、1サンプルの遅延時間を持つ遅延回路313と複素タップ乗算回路314と複素加算回路315がはしご型フィルタを構成されており、各サンプル時刻ごとに遅延された各サンプルにタップ重みwiを乗じて加算した出力複素電界信号列312が逐次計算され、外部に出力される。 各複素タップの重みは補償量や補償する物理量に応じて外部であらかじめ計算(ないしはテーブルに蓄積)された値であり、補償データ設定信号316によって任意に設定可能である。
    また図9(B)の構成においては、1サンプルずつ逐次遅延された入力複素電界信号列311が電界補償用ルックアップテーブル317に入力され、出力信号は複素加算回路315で1サンプルずつ時間をずらして加算されながら出力信号が合成される。 本構成においては部分的に非線形効果の補償も可能である。 ルックアップテーブル317は、例えば、入力される複素電界信号列をキーとして分散補償後の電界波形が記述される。 また図5において、直前に配置された直交座標変換回路229を省いても構わない。 その場合、電界補償用ルックアップテーブル317は極座標の電界信号φ(n)とr(n)が入力され、ルックアップテーブルにはこれをキーとして分散補償後の電界波形が記述すればよい。 なお、図5の例のように本回路の直後で再び差動位相検波を行う場合には、電界補償用ルックアップテーブル317に極座標の電界波形を記述しても構わないし、また差動検波後の波形を記述しても構わない。 このように前後の座標変換や差動検波などの演算処理をまとめてルックアップテーブル317の機能に含めることによって、大幅に回路規模を削減することが可能となる。

    図10(A)及び(B)は、本実施例における受信光電界のスペクトル(A)と1サンプル/シンボルの差動光電界のスペクトル(B)を示している。 なお、(C)及び(D)は後述する。 シンボル間隔Tの受信光多値電界は、一般には図10(A)のように、最大±Fs=±1/Tまで広がった周波数スペクトルを持つが、そのエネルギーの大部分は±1/(2T)の範囲に集中している。 このため、信号のサンプリング速度を1サンプリング/シンボルに低減し、本例のように補償間隔Tの電界補償回路231を用いても、概ね線形劣化の補償効果を得ることが可能である。 しかしながら、このようなサンプリング速度の低減を行うと、±1/(2T)の範囲をはみ出した信号エネルギーは(B)の斜線部のように等化的に折り返されてサンプリングされる(エイリアジングが生じる)ため、どうしても補正が不完全になってしまう。 これが図8(A)の劣化の原因と考えられる。
    なお上記の実施例における光フロントエンドとしては、2つの光遅延検波型受信器223−1、223−2と1台の光強度受信器135を示しているが、光信号の差動位相と強度(ないしは振幅)を求めることができればその構成はこれに限るものではない。 例えば第三の技術例に示すように、光強度受信器を省略し、振幅成分を2台の光遅延検波型受信器の出力信号から推定する構成としても構わない。 また、光遅延検波器を互いに120度ずつ位相の異なる3つの光遅延検波受信器を用いる3相構成などの多相構成とし、出力された多相信号から座標変換によって直交成分dI、dQを算出する構成としても構わない。 また、dI、dQ軸の方向も便宜的なものであり、互いに直交な軸であれば±45度回転方向にずらしても構わない。 ただしこのような場合には、位相積算時に位相回転が0度となるのはdI軸の方向であるため、積算量の補正演算を行う必要がある。
    本実施例によると、光遅延検波器を用いているため、入力光の偏波状態に無依存であり、従来のコヒーレント検波方式と異なり、局部発振光源を必要としていないため、受信器の構成が簡単になる。 また、従来の非コヒーレント型の多値光受信器では遅延量Ts/2(Tsはシンボル時間)の光遅延検波器と光位相積算器を利用していたため、電界強度がゼロになるゼロヒットを生じやすかったが、提案構成であれば遅延量と位相積算間隔をともにシンボル時間Tsと等しくできるためゼロヒットの確率を大幅に減らし、実用性を向上できる。
    同時に波形補正などの信号処理に要する回路もシンボル長と同じ最低限の回路規模や動作速度で済む。 特に、波長分散補償に要する回路規模は従来の1/4に削減される。
    特にデジタル信号処理を用いたリタイミング・ダウンサンプリング回路によってシンボル中央時刻のデータを抽出することによって、シンボル中心時刻のデータを抽出し、シンボル中心時刻のデータのみに限って差動位相の算出や積算などの演算を行うことによって電界波形の再生精度を高め、ゼロヒットの確率を下げることができるため、位相積算や電界補償の効果をより向上することができる。

    図11は本発明の第2の実施例を示す構成図であり、特にクロック抽出とオフセット補正を行った例である。 以下、上述の実施例と同じ構成は同じ符号を付し、説明を省略する。 クロック抽出回路326は、第1の実施例におけるリタイミング・ダウンサンプリング回路301の代替技術であり、本例では受信電気信号dIの一部を分岐してその入力としている。 クロック抽出回路326はその内部で整流・シンボルタイミングに同期したクロック信号(繰り返し正弦波)を抽出して出力し、これを分岐して各AD変換器226−1〜3のサンプリングクロック327として利用する。 これによって、AD変換器226−1〜3は常に入力多値信号のシンボル中央時刻でA/D変換を行って、シンボル速度と同じ間隔(Ts)のデジタル信号を出力することができる。 この結果、A/D変換器226−1〜3のデータ速度を1/2に低減して回路の高速性や規模の観点からの実現性を高めるとともに、デジタルリタイミング・ダウンサンプリング回路301を省略することが可能となる。
    また本例では、内部に直流ブロック回路を備えて、高周波特性を高めた直流除去型バランス型受信器320−1、320−2を光多値信号の検出に用いた例である。 市販されている多くの高周波バランス型受信器は、本例のように内部にDCブロックを持つ直流除去型構成であり、このような部品の利用は図7(A)に示すような、劣化の無いバランスの取れた信号の受信の際にはまったく問題が無い。 しかしながら、伝送路の波長分散によって劣化された信号は、例えば図7(B)のように非対称(本例では上下に非対称、すなわち垂直軸であるdQ方向に非対称)となる可能性がある。 このように受信光電界の二次元配置に非対称性が生じると、直後の逆正接回路による差動位相の測定に誤差が生じて、波長分散補償の精度が劣化してしまう。 図11はこのような誤差の発生を防ぐオフセット補正技術を用いた例である。
    分散補償量設定回路321には、波長分散量設定信号325が入力されており、補償間隔Tの電界補償回路231が所望の波長分散特性を持つように波長分散補償データ324を生成し、電界補償回路231内部のFIRフィルタのタップ量やルックアップテーブルの内容を更新する役割を持つ。 本例の分散補償量設定回路321は、さらに内部で波長分散の補償量に応じたdI成分のオフセット補正信号322とdQ成分のオフセット補正信号323を生成し、これを加算器390−1、390−2によりAD変換後のdI、dQ信号にデジタル加算することによって、失われた直流オフセット成分を補正する。
    図12は、分散補償量設定回路321の構成例である。 波長分散量設定信号325は内部で2つに分岐され、一方はタップ重み算出回路330に入力されて指定された量の波長分散を生成するタップ係数を生成し、これを補償データ設定信号324として出力している。 このようなタップ係数の算出は、既知の光ファイバの波長分散特性のインパルス応答を計算するものであり、CPUなどを用いた数学計算などで簡単に実現できる。 本部分の構成はオフセット補償を用いない場合でも、同一である。

    もう一方の波長分散量設定信号325は、まず反転回路335で符号を反転し、波長分散模擬回路332内部で波長分散の伝達特性を生成するために用いられる。 本回路には、多値波形生成回路331において生成された比較的短周期(数10〜数1000シンボル程度)の波形が入力されており、入力波形に波長分散を印加した劣化波形を算出して出力する。 その後、本信号を遅延検波模擬回路333で遅延検波受信し、平均強度算出回路333において生成されるdI成分およびdQ信号の直流成分を算出し、これをdI成分のオフセット補正信号322、ならびにdQ成分のオフセット補正信号323として外部に出力する。 上記のオフセット補正信号の算出は、所定量の波長分散を印加した多値信号の直接検波受信の際に生じる直流オフセット量をシミュレーションによって算出するものであり、例えば簡易的なソフトウェア光伝送シミュレータによって実現することができる。 また、あらかじめ波長分散の値ごとにオフセット補正量を記憶しておき、これをメモリ内部に記憶して出力するような簡単な構成でも問題なく実現可能である。
    図8(B)は、本発明の波長分散補償における直流オフセット補正の効果を数値計算で模擬した、シミュレーション結果である。 オフセット補正を用いない図8(A)の場合に比べ、各信号点のばらつきがわずかではあるが減少しており、この結果、伝送誤り率を低減し、伝送品質をより高めることが可能となる。
    上記の実施例には、波長分散の補償の際に生じるdIないしはdQ成分のオフセット誤差を補償する実施例を示したが、あらかじめ直流誤差を生じる要因がわかっていれば他の劣化要因や、P成分のオフセット誤差を補償することも可能である。 このような誤差要因としては、P成分の直流除去による受信平均強度の喪失、前述の光SN比の劣化によるP成分の増加や、左右ないしは上下に非対称な信号点配置を利用する場合(例えば、6値位相変調など)など、さまざまな状況が考えられる。 どのような場合でも、あらかじめ直流オフセットの補正量をテーブルなどに記憶しておくか、計算によって求めるか、または受信信号の判定誤差や誤り率をフィードバックしてこれらが最小になるように適応的に補正するなどの手法によって、オフセット補正が実現可能である。
    また、上記のような直流オフセットの補正を光電界再生後に行っても良い。 その場合、図11において、元の光電界が再生された点、すなわち、位相積算回路302と直交座標変換回路229の後ろに直流オフセット加算回路を配置する。 そして、誤り率や再生された電界振幅の揺らぎが最小となるように直交座標のIQ各成分に直流オフセットを適応的に加算すればよい。 これによって、元の光電界の直流オフセットのずれ、例えば送信側の光電界変調器211の動作点のずれなどを補正することも可能となる。
    本実施例によると、クロック抽出回路を設けることによってシンボル中心時刻のデータを抽出し、シンボル中心時刻のデータのみに限って差動位相の算出や積算などの演算を行うことによって電界波形の再生精度を高め、ゼロヒットの確率を下げることができるため、位相積算や電界補償の効果をより向上することができる。
    また、分散補償時に失われたオフセット信号を補正することによって、波長分散補償の効果を高めることが可能となる。

    図13は本発明の第3の実施例を示す構成図であり、本図は対応する図5や図11から光受信器フロントエンド部とAD変換部を省略して表記しているが、これらの構成は、図5、図11と同様である。 本実施例は、特にデジタル信号処理で、フロントエンド部の応答特性の等化や、再生光電界信号の位相揺らぎ除去、再生光電界信号の適応等化や非遅延検波を実現する構成である。
    前述の構成で各AD変換器226−1〜3から得られた2サンプル/シンボルにデジタル化されたdI、dQ、Pの各信号は、本実施例ではまずフロントエンド等化回路340−1、340−2、340−3に入力され、主として光検出器やAD変換器などの帯域劣化に起因する波形歪みを除去される。 本等化回路は、あらかじめタップ係数を固定したFIRフィルタや適応等化FIRフィルタなどで実現可能である。 なお、このような等化回路は入力デジタル信号が2サンプル/シンボルの時にはナイキスト条件を満たし、もっとも効果的に波形劣化の補正が可能であるが、それを下回る場合でも波形劣化の補正効果が得られる。
    次に各信号はリタイミング・ダウンサンプリング回路301−1、301−2、301−3で、サンプリング点を波形の中央にずらすとともに1サンプル/シンボルにダウンサンプリングして出力する。 前記の実施例同様、これらの信号から差動位相Δφ(n)と振幅r(n)が算出され、位相成分を位相積算回路302で積算した後に、直交座標変換回路229で直交変換、補償間隔Tの電界補償回路231で波長分散などの線形劣化の補償が行われる。
    位相揺らぎ除去回路341は、積算された位相成分φ(n)の持つ位相揺らぎを打ち消して高感度化を図るものである。 位相成分φ(n)の位相揺らぎの原因としては、光源のそのものの発振位相の揺らぎ成分、伝送中に重畳された光雑音に起因する成分、光ファイバ伝送中に生じた非線形効果によって生じた成分、光遅延検波器の不完全性や受信器熱雑音やショット雑音に起因する成分、など様々なものがある。 これらの一部、特に時定数が短く支配的になりやすい光雑音に起因する成分は、平均化等による位相雑音の低減が可能であり、これによって検出精度や受信感度の向上が期待できる。 位相揺らぎ除去回路341の動作アルゴリズムとしては、コヒーレント光多値受信器や無線多値受信器の位相揺らぎの除去の処理がほぼそのまま適用可能である。 例えば、多値信号としてN値の位相多値信号を利用する場合、受信信号を複素N乗して位相変調成分を消去し得られた位相成分をNで除して位相揺らぎ成分を抽出し、平均化して除去する累乗法(ないしはビタビ・ビタビ法)が利用可能である。 振幅変調を含む多値信号の場合には、多値判定を行った際の位相ずれから位相変動を検出し平均化して除去する判定指向法なども適用可能である。
    その後、受信信号は適応等化回路342によって残留する線形誤差を除去される。 その後に多値判定回路221でデジタル情報信号230に変換される。 本例では、位相揺らぎ除去回路341によって再生光電界信号の位相が一定値に保たれるため、多値判定回路221では第一の技術例のコヒーレント光受信器のように電気遅延検波を用いずに多値判定処理が可能である。 この場合、第二の技術例のように位相予積分処理を用いる必要も無い。 しかしながら、位相揺らぎ除去回路341においても、原理的に初期位相が不定となる課題や、急激な位相変動が生じて位相がずれた場合に元の多値信号の向きを回復できないという課題が残る。 このような位相の不定性の課題は、第一の技術例のコヒーレント光受信器の場合も同様であり、例えば送信側で論理的に差動符号化を行い差動検出を行ったり、間歇的に多値信号の正位置を判別するマーカー信号を埋め込んで判定するなどの対策が共通して利用可能できる。 なお、ここで言う差動符号化・差動検出は単に多値信号を回転演算に不変とするための論理的な符号化処理である。 これに対し前述の位相予積分処理や電気位相差動検波・判定回路232で用いる差動検波処理はデジタル数値演算であり、両者は異なるものである。

    多値判定回路221から得られた誤差信号343は補正量算出回路344に入力され、適応等化回路342の最適化処理に用いられる。 ここで誤差信号343は例えば実際の信号と理想に信号のずれを示す。 このように適応等化回路342とその適応補正部(補正量算出回路344)には従来のデジタル通信で用いられる適応デジタルフィルタと同一の構成や補償アルゴリズムを適用することが可能である。 例えば、補正量算出回路344は最小二乗誤差(LMS)などのアルゴリズムを用いて、誤差信号からタップ係数の修正量を算出する。 必要に応じて判定帰還を用いたり、ブラインド等化などを用いても構わないし、誤差信号の最小化の代わりにアイ開口の最大化やクロック周波数成分の最小化などの最適化処理を行っても構わない。 このような適応等化回路で補正できる信号劣化は、偏波モード分散や波長分散、送受信器の符号間干渉や信号点の位置ずれなどである。
    また本例では適応等化器を判定回路直前に配置する例を示したが、配置位置を変更したり、また他の補償回路(フロントエンド等化回路340や、電界補償回路231、位相揺らぎ除去回路341)に適応等化を用いても構わない。
    なお本実施例では、位相積算後に位相平均化を行う構成を示したが、MSPE(多シンボル位相推定)などの差動信号用の位相雑音平均化処理を用いる場合には、位相積算の前に行うことが可能である。 また位相雑音除去・雑音等化・適応等化の処理もこの順に限るものではないが、位相揺らぎは非線形な歪みであるので、波長分散補償の前に実施した方が補償精度が向上する場合がある。
    本実施例によると、位相揺らぎ除去回路を備えることによって、光多値信号の感度を高めて伝送距離を伸ばす効果がある。 この結果、位相の不定性が緩和できるので受信側でも、適応等化などの手法により伝送劣化や送信側の変調器の符号間干渉を線形補正することが可能になるという効果もある。 遅延検波を行う場合であれば、位相の不定性や受信多値信号のサイクルスリップなどの位相ずれを気にせずに、多値伝送を簡便に実現できるという効果がある。
    また、適応等化を行えば、より精密に分散やPMDなどの線形劣化の補正が可能となる。

    図14は本発明の第4の実施例の構成図である。 本発明の光伝送システムの第一の構成を示している。 本例は、送信側で位相予積分、波長分散の予等化、信号帯域の狭窄化のデジタル演算を行い、受信側では、位相揺らぎ除去を行った後に電気差動位相検波を行う例である。
    本実施例の光電界送信器350では、まず入力されたデジタル情報信号201を多値符号化回路202に入力して光多値電界信号に変換し、これを位相予積算部204に入力して、位相部分のみをシンボル毎に積算する。 ついで、サンプリング速度変換回路206で2倍にアップサンプリングした後に、予等化回路207で伝送路の伝達特性(例えば波長分散)の逆関数を印加して、波形の予等化を行う。 本例ではさらに、ナイキスト帯域狭窄フィルタ351によってあらかじめ信号のスペクトル帯域がナイキスト帯域±1/(2Ts)に近づくように信号帯域の狭窄化を行った後に、DA変換器208−1、208−2と光電界変調器211を用いて光電界信号を生成する。
    上記のうち位相予積算と波長分散の予等化は本発明の第二の技術例に記載された伝送技術を用いることができ、直接検波多値伝送と組み合わせて用いることで複雑な多値信号の長距離光ファイバ伝送を簡易に実現できる効果がある。 本実施例は遅延検波受信器内部で、光ファイバ214の波長分散の影響を補償するものであるが、その補償量には上限がある。 例えば、10Gシンボル/秒の8値信号に印加する波長分散が増加すると、図7(B)のように光信号のばらつきが大きくなり、遂には図7(C)のように信号点配置が原点付近まで広がってしまう。 このように信号点が原点に近接すると、前述のゼロヒットが生じ光遅延検波を用いる差動位相の検出が正常に行えなくなる場合がある。
    したがって、この制限を越えた実用的な長距離光ファイバ伝送を実現するためには、送信側の波長分散の予等化で大きな波長分散を補償し、光ファイバ伝送後の残差を本実施例の受信側のデジタル分散補償によって補償する構成をとることができる。 すなわち、予等化だけを用いる場合には波長分散の補償誤差を検出して送信側の予等化量を変更するためフィードバック時間(距離)が長くなって系が不安定となったり構成が複雑となるが、本実施例を組み合わせて受信側のみである程度の波長分散補償を実現することで送信側へのフィードバック構成を避け実用性を向上することができる。

    なお本実施例の受信側の分散補償範囲は、例えばシンボルレート10Gシンボル/秒の30Gビット/秒の多値信号で±60km以上である(図7(B)に相当)。 変調速度100Gビット/秒を実現するために変調速度を33Gビット/秒としたとしても、補償範囲は光ファイバ長で±6km幅となる。 この値は、一般的な光ファイバ伝送路長の測定精度よりははるかに大きな値であり、本実施例で得られる受信側の波長分散補償量が十分に広いことがわかる。 なお、本技術を用いない場合の波長分散耐力は上記の値の1/2〜1/4程度であり、例えば±2km程度となる。 例えば数100〜数1000kmの長さの伝送路を±2km以下の精度で測定することは難しく、また伝送路の温度変化などによっても同程度の誤差が生じてしまう。 このため従来例では環境の変化に応じて送信側の予等化量をこまめに変更する必要があるため安定した伝送は実現困難となってしまう。
    また帯域狭窄化は、本実施例の補償間隔Tの電界補償回路231の補償効果を高めるためのものである。 本実施例の光遅延検波受信器では、1シンボルに一回しか位相の検出演算を行わないため、受信された多値信号の帯域が広い場合、前述の図10(B)のようにエイリアジングが発生して、波長分散の補償精度が低下してしまう。 ナイキスト帯域狭窄フィルタ351はこれを避けるため、あらかじめ信号帯域を削減し、また同時に符号間干渉が発生しないようにスペクトル整形を行うものである。 図10(C)は帯域狭窄フィルタ351を用いた場合の1サンプル/シンボルの再生光電界のスペクトルであり、信号エネルギーが周波数範囲±1/(2T)に閉じ込められることでエイリアジングが生じなくなる。 図8(C)は、理想的なナイキスト帯域狭窄フィルタ351として理想矩形フィルタを用いた場合の受信信号の計算例である。 図8(A)と比べると、帯域狭窄を行うことによって分散補償効果がほぼ理想的となることが確認できる。
    ナイキスト帯域狭窄フィルタ351としては、上記の矩形フィルタのほかにもコサインロールオフフィルタなどが利用可能であり、多少の符号間干渉を許容できる場合にはバタワースフィルタや楕円フィルタなどの電気ローパスフィルタが広く利用可能である。
    また本例ではナイキスト帯域狭窄フィルタ351を2サンプル/シンボルのデジタルフィルタで実現したが、さらに周波数遮断性能を向上する場合にはオーバーサンプリング率を高めフィルタも利用可能である。 また本フィルタは高速アナログ回路でも実現可能であり、この場合にはDA変換器208−1、208−2の出力部に遮断周波数略1/(2T)の電気ローパスフィルタを配置すればよい。
    図16に、帯域狭窄フィルタを有する光受信器の構成例を示す。 図14の例は送信側にナイキスト帯域狭窄フィルタ351を設けているが、光受信器300内に設けてもよく、例えば図16に示すようにAD変換器226の出力信号をナイキスト帯域狭窄フィルタ351に入力するようにしてもよい。
    本実施例によると、電気の帯域狭窄フィルタを挿入することによって、受信器内の1サンプル/シンボル処理におけるエイリアジングの発生を防ぎ分散補償効果を高めることが可能となる。

    図15は本発明の第5の実施例であり、本発明の光伝送システムの第二の構成例を示している。 本例は、送信側のデジタル信号処理速度を1サンプル/シンボルに低減することで、電子回路のサイズや消費電力を低減した例である。 同時にナイキスト帯域狭窄フィルタを光帯域狭窄フィルタ352で実現し、さらに受信器内部の電気位相差動検波・判定回路232の直前に帯域補正フィルタ353を配置している。
    これに伴い予等化回路207も1サンプル/シンボルの補正回路となるため、補償器の周波数帯域が不足してしまい出力光スペクトル信号の中央部しか波長分散の予等化効果が得られなくなる。 本例では、光帯域狭窄フィルタ352を用いてその中心スペクトルを切り出すことによって、前述の電気領域のナイキスト帯域狭窄フィルタ351と等価な帯域狭窄信号を得ることが可能となる。
    光帯域狭窄フィルタ352は線形フィルタであるため、配置場所の制約は無く、光変調器と光受信器の間であればどこに挿入しても構わない。 例えば、光送信器内部に又は光受信器内部に又は光ファイバ伝送路214の途中に、光帯域狭窄フィルタ352を挿入して光信号の帯域狭窄を行っても良い。 また、前述の実施例4のように送信側の電気ナイキスト帯域狭窄フィルタ351として実装することもできるし、また受信側の電気フィルタとして実装しても構わない。
    なお上記の帯域補正フィルタ353は光帯域狭窄フィルタ352の影響によって生じる符号間干渉を低減するものである。 本来理想的なナイキストフィルタであれば符号間干渉は発生しないが、光フィルタは電気フィルタに比べて製造精度が低いため、本例のように別途電気的な補正フィルタを設けて発生した符号間干渉を抑圧するのが有効である。 フィルタの性能を高めるためには必要に応じてオーバーサンプリングを行いより滑らかな時間波形を再生してもよい。 例えば2倍のサンプリングを行い、信号帯域を図10(D)のように滑らかに拡大すれば、元の波形の光スペクトル図10(A)と同じ光電気信号を再生することが可能である。
    なお送信側のサンプリング速度は1サンプル/シンボルに限るものではなく、1.3サンプル/シンボルなどの中間の速度の値としてかまわない。 このようにすると、信号帯域や波形を最適に保ちつつ、予等化回路の規模や、DA変換器の動作速度を大きく低減できるというメリットがある。
    本実施例によると、光の帯域狭窄フィルタを挿入することによって、受信器内の1サンプル/シンボル処理におけるエイリアジングの発生を防ぎ分散補償効果を高めることが可能となる。

    本発明は、例えば、光通信分野における2値変調信号や多値変調信号の長距離伝送と伝送劣化の補償に適用できる。

    101:入力光信号、102:偏波分離回路、103:局発レーザ光源104:局発光、105:光多値信号のS偏波成分106:光多値信号のP偏波成分、107:光位相ダイバーシティ回路108:I成分出力光、109:Q成分出力光、110:バランス型光検出器111:A/D変換器、112:A/D変換器の出力電気信号113:デジタル演算回路、114:光電界信号115:デジタル演算・判定回路、116:多値デジタル信号、
    200:位相予積算型光電界送信器、201:デジタル情報信号、
    202:多値符号化回路、203:複素多値情報信号、
    204:位相予積算部、205:位相予積算複素多値情報信号、
    206:サンプリング速度変換回路、207:予等化回路、
    208:DA変換器、209:ドライバ回路、210:レーザ光源、
    211:光電界変調器、212:出力光ファイバ、
    213:送信光多値信号、214:光ファイバ伝送路、
    215:受信光多値信号、220:非コヒーレント光電界受信器、
    221:多値判定回路、
    222:光分岐器、223:光遅延検波回路、224:バランス型光受信器、
    225:光強度受信器、226:AD変換器、227:逆正接演算回路、
    228:平方根回路、229:直交座標変換回路、
    230:デジタル情報信号、231:補償間隔Tの電界補償回路、
    232:電気位相差動検波・判定回路、
    240:遅延量T/2の光遅延検波器、241:サンプリングクロック、
    242:遅延調整回路、243:電気受信信号、244:電界演算部、
    245:平方距離演算回路、246:遅延加算回路、247:遅延除算回路、
    248:演算結果、249:再生光電界信号、
    250:補償間隔T/2の電界補償回路、251:補償量入力端子、
    300:本発明の非コヒーレント光電界受信器、
    301:リタイミング・ダウンサンプリング回路、
    302:位相積算回路、
    311:入力複素電界信号列、
    312:出力複素電界信号列、313:遅延回路、
    314:複素タップ乗算回路、315:複素加算回路、
    316:補償データ設定信号、
    317:電界補償用ルックアップテーブル、
    320:直流除去型バランス型光検出器、321:分散補償量設定回路、
    322:dI成分のオフセット補正信号、323:dQ成分のオフセット補正信号、
    324:波長分散補償データ、325:波長分散量設定信号、
    326:クロック抽出回路、327:サンプリングクロック、
    330:タップ重み算出回路、331:多値波形生成回路、
    332:波長分散模擬回路、333:遅延検波模擬回路、
    334:平均強度算出回路、335:反転回路、
    340:フロントエンド等化回路、341:位相揺らぎ除去回路、
    342:適応等化回路、343:誤差信号、
    344:補正量算出回路、345:補正信号、
    350:本発明の光電界送信器、351:ナイキスト帯域狭窄フィルタ、
    352:光帯域狭窄フィルタ、353:帯域補正フィルタ

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