【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、相関行列を用いた復号方式における相関行列学習方法および装置と記憶媒体に関し、特に誤り訂正符号であるブロック符号を相関行列を用いて復号する場合の相関行列学習方法および装置と記憶媒体に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、誤り訂正符号であるブロック符号の相関行列を用いた復号方式では、符号化前の元の符号語と符号化後の符号語との相関行列を用いて復号を行う。 この復号方式では相関行列を学習により求めるが、 その相関行列の学習方法では、符号化後の符号語と相関行列の演算を行い、その演算結果の各成分をあらかじめ設定された閾値「±TH」と比較し相関行列を更新する。 そして、符号化前の元の符号語の成分が「+1」であれば閾値として「+TH」を設定し、演算結果が「+ TH」より小さい場合にのみ、相関行列の各成分を「± ΔW」だけ更新する。 また、符号化前の元の符号語の成分が「0」であれば閾値として「−TH」を設定し、演算結果が「−TH」より大きい場合にのみ、相関行列の各成分を「±ΔW」だけ更新する。 そして、すべての符号語についてこの相関行列の学習を繰り返し行い、適当な回数で打ち切ることにより相関行列が求められる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】このような従来の相関行列学習方法では、相関行列の学習過程において学習を何回で終了させればよいか分からないため、適当な回数で打ち切っている。 そのため、すべての符号語を学習させるために必要以上の十分な学習回数が必要になり学習に時間を要する課題があった。 また、学習回数を十分確保しても、符号語によっては、ある回数以上において閾値「+TH」または「−TH」を境に演算結果が増減を繰り返すだけで、ある回数以上では相関行列の学習が実際には行われていないという課題があった。 さらに、相関行列の更新値「ΔW」は閾値「TH」より十分小さい値を設定するため、全ての符号語に対し相関行列の学習が収束するには非常に多くの学習回数を要するという課題があった。 また、閾値「+TH」または「−TH」を境に演算結果が増減を繰り返す符号語どうしは「±T H」のビットエラーに対するマージンが確保されていないことになるため、符号語により誤り率に差が生ずるという課題があった。 【0004】本発明はこのような問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、相関行列学習時の更新値を学習が進むにつれて段階的に変化させることにより学習を早く収束させ、且つ、全ての符号語に対し最適な相関行列を得ることの出来る相関行列学習方法および装置ならびに記憶媒体を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明に係る相関行列学習方法は、符号語から元符号語を求める復号方式における相関行列について最適な相関行列を学習により求めるための相関行列学習方法であって、前記符号語と前記相関行列との演算を行い演算結果を求め、前記演算結果と前記元符号語に基づき各成分毎に設定された閾値とをそれぞれ比較し、段階的に変化する更新値により、前記比較結果に基づいて前記相関行列を更新し、すべての符号語に対し前記更新した相関行列の学習を行い、すべての符号語に対し最適な相関行列を求めることを特徴とする。 【0006】本発明に係る相関行列学習装置は、符号語から元符号語を求める復号方式における相関行列について最適な相関行列を学習により求めるための相関行列学習装置であって、前記符号語と前記相関行列との演算を行う演算部と、前記演算部の演算結果と前記元符号語に基づき各成分毎に設定された閾値とをそれぞれ比較する比較部と、段階的に変化する更新値により、前記比較部の比較結果に基づいて前記相関行列を更新し、すべての符号語に対する前記更新値による前記相関行列の学習度を監視し、前記学習度の状態に応じて前記更新値の変化を制御する学習度監視部とを備えていることを特徴とする。 【0007】本発明に係る記憶媒体は、符号語と相関行列との演算を行い演算結果を求めるステップと、前記演算結果と元符号語に基づき各成分毎に設定された閾値とをそれぞれ比較するステップと、段階的に変化する更新値により、前記比較結果に基づいて前記相関行列を更新するステップと、すべての符号語に対し前記更新した相関行列の学習を行い、すべての符号語に対し最適な相関行列を求めるステップとを備えた相関行列学習プログラムをコンピュータ読取り可能に記録したことを特徴とする。 【0008】本発明の相関行列学習方法は、符号語と相関行列との演算結果と、元符号語に基づき各成分毎に設定された閾値とをそれぞれ比較し、段階的に変化する更新値により、前記比較結果に基づいて前記相関行列を更新し、すべての符号語に対し前記更新した相関行列の学習を行い、学習が進むにつれて相関行列学習時の前記相関行列の更新値を段階的に変化させ、前記相関行列の学習の収束を早め、全ての符号語に対する最適な相関行列を確立する。 【0009】本発明の相関行列学習装置は、符号語と相関行列との演算結果と、元符号語に基づき各成分毎に設定された閾値とをそれぞれ比較部で比較し、段階的に変化する更新値により、前記比較部の比較結果に基づいて前記相関行列を更新し、すべての符号語に対する前記更新値による前記相関行列の学習度を学習度監視部で監視し、前記学習度の状態に応じて前記更新値の変化を制御し、相関行列学習時の収束を早め、全ての符号語に対する最適な相関行列を確立する。 【0010】本発明の記憶媒体は、符号語と相関行列との演算を行い演算結果を求めるステップと、前記演算結果と元符号語に基づき各成分毎に設定された閾値とをそれぞれ比較するステップと、段階的に変化する更新値により、前記比較結果に基づいて前記相関行列を更新するステップと、すべての符号語に対し前記更新した相関行列の学習を行い、すべての符号語に対し最適な相関行列を求めるステップとを備えた相関行列学習プログラムをコンピュータへ読み取らせ実行させることで、符号語から元符号語を求める復号方式における相関行列について最適な相関行列を学習により求める際の相関行列学習時の収束を早め、全ての符号語に対する最適な相関行列の確立を可能にする。 【0011】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて詳細に説明する。 図1は、本発明の相関行列学習方法が適用される相関行列学習装置の構成を示すブロック図である。 この相関行列学習装置は、Mビットの元符号語Yを入力する元符号語入力部4と、符号化率(N,M)のブロック符号化されたNビットの符号語X を入力する符号語入力部11と、符号語入力部11に入力された符号語XとN行M列の相関行列12との積を計算しM列の演算結果yを出力する演算部1と、演算部1 からのM列の演算結果yと元符号語Yの各成分に基づきそれぞれ設定された閾値とをM個の比較回路6−1〜6 −mによりそれぞれ比較する比較部6と、比較部6の各比較回路6−1〜6−mの比較結果を監視し、前記比較結果に応じて段階的に変化する相関行列12の更新値「ΔW K 」を設定する学習度監視部3からなり、元符号語入力部4に入力されたMビットの元符号語Yは、符号化器5によりNビットの符号語Xに符号化され、符号語入力部11に入力される。 【0012】次に、本実施の形態の動作を図1乃至図4 を参照して詳細に説明する。 相関行列Wは、元符号語Y を所望信号として、符号語Xと相関行列Wとの演算結果yから予め定められた所定の学習則により決められる。 図2は、図1に示す相関行列Wの学習則を示す説明図、 図3は、相関行列Wの学習が収束するときの比較部6への演算結果yの入力値範囲|y m |≧THを示す説明図、図4はこの相関行列学習方法が適用される相関行列学習装置の動作を示すフローチャートである。 【0013】図4に示すフローチャートに従って説明すると、まず、元符号語入力部4にMビットの元符号語Y を入力し、符号化器5は、元符号語入力部4に入力した元符号語Yに対し符号化率(N,M)のブロック符号化を行い、符号化したNビットの符号語Xを符号語入力部11に入力し、演算部1は、符号語XとN行M列の相関行列Wとの積を計算して演算結果yを比較部6に出力する(ステップS1)。 【0014】比較部6は、元符号語入力部4に入力した元符号語Yの各ビット毎に閾値を設定し、演算部1からの演算結果yと前記閾値との比較を行う(ステップS 2)。 比較部6における閾値の設定は、図2に示すように元符号語Yの各ビットが“1”であれば閾値として“+TH”、“0”であれば“−TH”が設定される。 そして、元符号語Yのビットが“1”の場合、比較部6 へ入力される前記演算結果yが“+TH”以上であれば相関行列Wは更新されないが、“+TH”未満であれば相関行列Wは“±ΔW K ”だけ更新される。 また、元符号語Yのビットが“0”の場合、比較部6へ入力される前記演算結果yが“−TH”以下であれば相関行列Wは更新されないが、“−TH”より大きい値であれば相関行列Wは“±ΔW K ”だけ更新される(ステップS3, ステップS4)。 【0015】具体的には、元符号語YのビットY mが“1”の場合、比較回路6−mには閾値として“+T H”が設定され、比較回路6−mの入力y mが“+T H”以上であれば相関行列Wは更新されない。しかし、 y mが“+TH未満”であればW mを以下のように更新する。 W n,m = W n,m +Sgn(X n )・ΔW K W n-1,m =W n-1,m +Sgn(X n-1 )・ΔW K : W 1,m =W 1,m +Sgn(X 1 )・ΔW K一方、元符号語YのビットY mが“0”の場合、比較回路6−mには閾値として“−TH”が設定され、比較回路6−mの入力y mが“−TH”以下であれば相関行列Wは更新されない。 しかし、y mが“−TH”より大きい値であればW mを以下のように更新する。 W n,m = W n,m −Sgn(X n )・ΔW K W n-1,m =W n-1,m −Sgn(X n-1 )・ΔW K : W 1,n =W 1,n −Sgn(X 1 )・ΔW K但し、ブロック符号化された符号語Xの各成分[ X n X n-1 X n-2 ……X 2 X 1 ]は“1”,“0”の2値で表される場合、“0”を“−1”として計算する。 なお、Sgn(X n ) はX nの±の符号を表す。 【0016】学習度監視部3は比較部6に入力される演算結果yの値が全ての符号語について図3に示す|y m |≧THの条件を満たしているかどうか、また1回の学習の前後でM個の各成分すべてにおいて値が変化しているかどうかを監視しており、つまり全ての符号語に対し相関行列Wの更新値を「ΔW K 」として相関行列Wの学習を行なった後、その回の全ての符号語の学習時の演算結果の値yが図3に示す|y m |≧THの条件を満たしていれば相関行列Wの更新値「ΔW K 」での学習度は収束したと判断し(ステップS7)、復号時に用いられる相関行列Wが得られる(ステップS8)。 一方、全ての符号語について演算結果yの値が図3に示す条件を満たしていない場合、次にその回の学習時の演算結果の値〔y〕 t+1と前回の学習時の演算結果の値〔y〕 tとが変化しているか同じであるか、すなわち〔y〕 t =〔y〕 t+1の条件を監視し(ステップS9)、全ての符号語について演算結果yの値が前回の学習時の値に対し変化していない、すなわち〔y〕 t =〔y〕 t+1であれば、相関行列Wの更新値「ΔW K 」での学習度は飽和状態にあると判定し(ステップS10)、相関行列Wの更新値を「ΔW K 」から「ΔW K+1 」に更新し(ステップS1 1)、ステップS1へ戻り、前記更新した更新値ΔW K+1によりステップS1以下の処理を繰り返す。 また、 〔y〕 t ≠〔y〕 t+1であれば、ステップS1へ戻り再度「ΔW K 」にて全ての符号語について学習を繰り返す。 上記学習則により全ての符号語Xについて相関行列Wの学習を行えば、最小の学習回数で比較部6への入力値が図3に示す値を満たすのに最適な相関行列Wが得られる。 【0017】なお、図4に示したフローチャートに示す処理は、相関行列学習プログラムとしてフロッピィディスク、CD−ROM、光磁気ディスク、RAM、ROM などの記憶媒体に格納しておき、これら記憶媒体に対応するドライブ装置を介してコンピュータへ読み取らせロードし実行させることで、符号語から元符号語を求める復号方式において最適な相関行列を学習により求める際の相関行列学習時の収束を早め、全ての符号語に対する最適な相関行列の確立が可能になる。 【0018】以上説明したように、本実施の形態によれば、学習度監視部3により全ての符号語について演算結果yの値が図3に示す関係を満たしていない、且つ前記演算結果yの値が前回の学習時と比べて変化していない場合には、そのときの更新値による相関行列の学習度は飽和した状態にあるとして前記相関行列の更新値を段階的に可変する。 すなわち、初期学習時には相関行列Wの更新値を「ΔW 0 」として学習が進むに従い前記更新値を「ΔW 1 ,ΔW 2 ,ΔW 3 ……ΔW K ,ΔW K+1 … …」(TH)ΔW 0 >ΔW 1 >ΔW 2 >ΔW 3 >……Δ W K >ΔW K+1 ……>0)と零へ収束する方向へ可変させ、学習が進むに従って前記更新値を暫時小さくしていくことにより、相関行列「ΔWk」を学習が進むに従い段階的に可変させる。 また、全ての符号語について演算結果yの値が図3に示す関係を満たしていれば、そのときの更新値による相関行列の学習度は収束した状態にあるとして前記相関行列の更新を終了させる。 このため相関行列を用いたブロック符号の復号方式における相関行列について最小の学習回数で最適な相関行列Wが得られる相関行列学習方法および相関行列学習装置と記憶媒体を提供できる効果がある。 【0019】 【発明の効果】以上のように、本発明によれば、符号語と相関行列との演算結果と、元符号語に基づき各成分毎に設定された閾値とをそれぞれ比較した比較結果に基づいて、段階的に変化する更新値により前記相関行列を更新し、すべての符号語に対し前記更新した相関行列による学習を行い、前記相関行列の更新値を学習が進むにつれて段階的に変化させ、特に零に収束する方向へ段階的に変化させるようにしたので、前記相関行列の学習の収束を早めることが出来、全ての符号語に対し最適な相関行列を確立できる効果がある。 また、相関行列の学習度を監視し、前記学習度が飽和した状態になると、更新値を段階的に変化させ、前記変化させた更新値により前記相関行列を更新し、また、前記学習度が収束した状態になると前記相関行列の更新を終了するようにしたので、 必要以上の学習を行なう必要がなくなり、前記相関行列の学習の収束を早めることが出来、全ての符号語に対する最適な相関行列を確立できる効果がある。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施の一形態の相関行列学習方法が適用される相関行列学習装置の構成を示すブロック図である。 【図2】本発明の実施の一形態の相関行列学習方法における相関行列の学習則を示す説明図である。 【図3】本発明の実施の一形態の相関行列学習方法における相関行列の学習が収束するときの比較部への演算結果yの入力値範囲を示す説明図である。 【図4】本発明の実施の一形態の相関行列学習方法が適用される相関行列学習装置の動作を示すフローチャートである。 【符号の説明】 1……演算部、3……学習度監視部、6……比較部。 |