【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】ここに記載された発明は一般にデジタル信号の伝送に関するものである。 メモリを有するチャンネルに向けてのデジタル信号の伝送に適用するために多大な注意を払いつつ本発明は開発されてきた。 これらのデジタル信号は、格子ダイアグラムで表わすことができる符号化変調により符号化され、さらにシンボル間干渉の影響を受けているものである。 以下では、そのような変調の例として、TCM変調(Trellis-C oded Modulation)が広範囲に考慮される。 しかしながら、そのような変調がしばしば格子符号化変調と称されるとしても、頭字語「TCM」は本発明を適用する変調の特定のタイプのみを適切に示していることは周知のことである。 【0002】 【従来の技術】当該技術分野において熟達した者(以下、当業者という。)ならよく知っているように、上記分野は数年にわたり非常に強力な研究と革新的な活動の主題となってきた。 従って、関連する文献は非常に広く豊富である。 例えば、TCM変調についての一般的な概説としては、E.ビグリエリ(Biglieri)、D.ディブサラ(D ivsalar)、PJマクレーン(McLane)、及びMKサイモン (Simon) による著書「格子符号化変調のイントロダクションおよび応用(Introduction to Trellis-Coded Modul ation with Applications)」、マクミラン(Macmillan) 、ニューヨーク、1991年を参照するのが有効であろう。 メモリ付チャンネルでのシンボル間干渉(inter-s ymbol interference:ISI) の効果を比較するために、一般的には線形な決定フィードバック平均化技術を用いることが知られている。 しかしながら、この種の平均化技術がTCM変調と共に用いられるときには大きな問題が生じる。 線形平均化により得られたシンボル間干渉の低減の代価は、(いわゆるヴィテルビ(Viterbi)復号器からなる)受信器でのノイズシーケンスが歪められ、このことが最適条件での性能を損ねることである。 実際、等価器により生じるノイズ相関は、特に大きな減衰歪みのあるチャンネルの場合には、符号化の効果を大きく減じ得る。 【0003】ノイズ相関が隣接サンプルに制限されているときは、遅延が制限されるという代償を払うけれども、それはインターリービング技術により除去できる。 チャンネルに大きな振幅歪みが存在するときには、理想的な決定フィードバック等価器(即ち、完全なフィードバックを行うもの)は、復号器の出力に応じて線形等価器より十分大きな信号対ノイズ比を与えることができる。 一方、決定フィードバックはヴィテルビアルゴリズムにより導かれた大きな復号化遅延により不利な立場となる。 これらの問題を解消するために、少なくとも原理的にはヴィテルビ復号器からなる最適復号器を用いることが可能であろう。 このヴィテルビ復号器は、復号器とチャンネルの両方のメモリを考慮する格子ダイアグラムを基にして動作するものである。 しかしながら、そのような格子の状態数は実際には非常に多く、計算機の負荷やスピードの観点から解決を困難なものとする。 従って、別の技術が研究されてきており、それらは性能を大きく損なうことなく適度な複雑さを得るために、そのような解決策の次に最適な方法を用いるものである。 【0004】さらに、最近別の解決策がチャンネル平均化に対して提案されてきている。 これらの解決策は、ブラインド識別として定義できる技術に基づいている。 特に、E.ビグリエリ(Biglieri)、G.カエル(C a i re) 、G. ダリア(D'Aria)による論文「地上マイクロ波無線リンクのブラインド識別(Blind identification of terrestri al microwave radio links) 」、IEEE Globecom '93 、 ヒューストン、テキサス、1993年11月−12月には、選択的フェーディングの影響を受けたデジタル無線リンクの平均化に上述の技術を適用することが議論されている。 この論文は2つの平均化方式、即ちカスケード等価器およびデータにより運ばれた情報を用いる(データ援用処理)干渉打ち消し装置を比較している。 そのような解決策により、補償後にはチャンネルはメモリ無しチャンネルとでき、その結果、ヴィテルビ等価器から見た距離(ユークリッド距離)は打ち消し装置が正常に動作すれば最適な状態に近いものとなる。 上記の他には、 この戦略は、TCM方式を復号化するヴィテルビ復号器に対する距離を計算する前に、受信信号に影響を与える干渉を打ち消すことに基づいている。 受信シンボルについての予備決定を行うこと、及び打ち消し装置にその決定を送ることにより打ち消しが行われる。 この打ち消し装置では、受信信号から抽出されるべきシンボル間干渉サンプルのコピーが発生される。 この打ち消しの概念は元々は非線形チャンネルに対して持ち出されたものである。 しかしながら、上記研究は例えばTCM方式により符号化された信号の存在を考慮しない。 【0005】もう一つの方法としては、例えばR.ラヘリ (Raheli)、A.ポリドロス(Polydoros) 、CKゾウ(Tzou) による論文「完全生残処理の原理:近似的かつ適応的ML SEへの一般的なアプローチ(The principle of per-surv ivor processing: a generalapproach to approximate and adaptive MLSE) 」、Globecom '91のプロシーディング、第1120−1124頁、フェニックス、アリゾナ、1991年12月2日〜5日に記載のように「完全生残処理(per-survivor processing) 」として定義され得る方法がある。 この解決策が基づいているアイデアとは、ヴィテルビ復号器の構造において、ここでは隣接シンボルから始まる干渉により表される未知パラメータのデータ援用評価を具体化することである。 実質的に、それは最適シーケンス評価で要求される状態数を減じる方法である。 ヴィテルビアルゴリズムでは各ステップに対応して、前の入力の有限数μにより仮定され得る全ての値を状態が記述する。 【0006】最適な検出においてμはチャンネルメモリ長にTCM符号器メモリ長を加えたものに等しいけれども、μをちょうどTCM符号器メモリ長まで減じることは可能である。 こんな風に各状態はチャンネルの実際の状態についての情報は与えない。 チャンネル評価は各状態に導く経路(「生残」)から抽出される。 距離はチャンネル状態についての情報を与える格子状態を用いて計算される。 実質的に、この解決策は決定フィードバック平均化に類似している。 即ち、チャンネル評価は受信信号のシンボル間干渉の終わりを評価するのに用いられる。 上述の打ち消し戦略に関する差は、打ち消し解決策では予備決定にはシンボル間決定を除去することが要求されるが、完全生残戦略は決定の代わりに生残経路の分枝に接続されたシンボルを用いている点において本質的に存在している。 一方、後者の戦略では、受信信号内のシンボル間干渉の終わりを除去することのみ可能であるが、プリカーソルを扱うことはできない。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】 (本発明の目的と概要)従って本発明は、シンボル間干渉の影響を受けた信号、特に例えば上記欠点を克服できるTCM方式による符号化変調を受けた信号を受信するための方法を提供することを目的とする。 この目的は、 請求項1乃至5で特定的に述べた特徴を有する方法を用いて本発明によって達成される。 本発明は、請求項6乃至10で請求された関連する受信器に対しても言及するものである。 【0008】(本発明の理論的基礎)総合すると、本発明による解決策は上記最後の二つのアプローチを発展させたものであり、受信時にカスケード又は一般に集積化された方法でシンボル間干渉の現象を比較することを狙った動作、およびヴィテルビ復号器とそれに関連するアルゴリズム(一般に、VAという。)を実現することにより行われる実際の復号化動作を行うアイデアに基づいている。 このアルゴリズムと関連する復号化構造は、それらに費やされた広い分野のお陰でもあるのだが、当業者には広く知られている。 単に示唆を与えるためには、 次の参考文献を挙げることができる。 D.フォーニイ(For ney)、「ヴィテルビアルゴリズム(The Viterbi Algorit hm) 」、IEEEのプロシーディング、第61巻、第3号、 第268−278頁、1973年3月、およびJ.ヴィテルビ(Viterbi) 、JKオムラ(Omura) 、「デジタル通信と符号化の原理(Princiles of Digital Communication and Coding) 」、McGraw-Hill 、ニューヨーク、197 9年。 従って、以下の記載には、当業者が本発明を実現できるのに要求される範囲を除いて、ヴィテルビ復号器の動作基準のいかなる特定の説明をも含まない。 【0009】本発明による解決策は実質的にソフト出力ヴィテルビアルゴリズム(Soft Output Viterbi Algorit hm) 、即ちSOVAを用い、それにより、各復号化シンボルが信頼度情報に付随する。 この信頼度情報により最適解決策に関して適度な損失を有する2つのヴィテルビ復号器をカスケード接続することが可能となる。 SOV Aとして知られている解決策は、例えばJHハーゲナエー(Hagenauer)とP.ホエアー(Hoeher)による論文「ソフト決定出力を有するヴィテルビアルゴリズムとその応用 (A Viterbi algorithm with soft-decision outputs an d its applications) 」、IEEE Globecom '89 、ダラス、テキサス、第47.1.1頁−第47.1.7頁、 1989年11月に示されているように当業界では既に広く知られている。 Y. リー(Li)、B.バセチック(Vucet ic) 、及びY.サト(Sato)による論文「シンボル間干渉を有するチャンネルに対する最適ソフト出力検出(Optimum soft-output detection for channels with inter-sym bol interference) 」、IEEE情報理論ワークショップ、 スソノ、日本、1993年6月には、各受信信号に対して、伝送に用いられる方式のシンボルと同数の成分を含む一つのベクトルが発生される復号化アルゴリズムについて記載されている。 各成分は夫々のシンボルに関連した信頼度、即ちそのようなシンボルが放出される確率を示している。 このアルゴリズムは最大後天的確率(Maxim um A-posteriori Probability; MAP) を達成することを目的とする。 特に、このベクトルはベクトル自体の成分値を距離として用いる付加的ヴィテルビアルゴリズムを与えるのに用いられる。 このことは明らかにむしろ複雑な解決策であり、伝送シンボルの方式の重要性が増すにしたがい、その複雑さのレベルがますます大きくなる。 【0010】 【課題を解決するための手段】これに対して、本発明による解決策では、異なる方法でのチャンネルのインパルス応答を知る機会が利用される。 チャンネルメモリのみに基づいて格子が構築され、ヴィテルビ復号器の動作基準に従って用いられ、各受信シンボルに対して伝送シンボルの決定およびその決定の信頼度の測度を夫々含む1 対の成分を放出する。 これらのパラメータはそれから、 例えばTCM方式を復号化するよう課せられたもう一つのヴィテルビ復号器に送られる。 要するに、第1のヴィテルビ復号器の機能は第2ヴィテルビ復号器に向かうその出力において、シンボル間干渉が存在しない通信チャンネルの出力に存在するであろう信号に理想的に対応する信号セットを存在せしめることである。 第2ヴィテルビ復号器としては、この種の利用可能な如何なる復号器でも実質的な変調及び/又は調整を必要とせずに用いることができるので、この事実は明らかに利点である。 【0011】 【発明の実施の形態】本発明はここでは、添付の図面に関して単に非制限的な例として記載されている。 図1において、Lは例えば地上マイクロ波無線リンクとすることができるデジタル通信システムを示す。 概略的な関係で示しているのだが(これらの要素は本発明を理解し実行するという目的にとっては本質的ではないので、ここではより詳細な説明は当業者には必要ない。)、リンクLは送信器Txから構成されているものとして考えることができ、この送信器Txは例えばTCM方式による符号化変調を受けたデジタル信号を受信器Rに向けてチャンネルFに送る。 伝送は如何なる物理キャリアー(チャンネル)Fでも可能である。 マイクロ波無線リンクは単に一つの例として考えるべきである。 このことは、元の符号化信号はもちろんのこと、キャリアーF上に送られる信号(例えば無線信号)発生の特定形態に関しても同様であり、また伝送されるデジタル信号はもちろんのこと、そのような符号化信号の発生に関連する基準に関しても同様である。 このような形態の全てが現在の技術を表し、当業者にはよく知られたものである。 【0012】参考として後に明らかにされる性能評価に関しても、伝送が次の特性を有するTCM方式に従って行われることが仮定されている。 (ア)方式:128QAM (イ)符号器:8状態4D−TCM、及び (ウ)1シンボル当りのビット数:6.5 好ましくは、チャンネル上を伝送される信号シーケンスを発生するために、符号化シンボルは例えば32x32 のトランスコーディングマトリックスを用いてインターリービングされる。 この信号シーケンスはシンボル間干渉(ISI) の影響を受けるものと仮定される。 【0013】図2のブロック図は、(se内で知られる) 従来の符号器CEの構造を示し、この符号器CEは入力シンボル b i (i=0,1,...) のシーケンスからTCM符号化出力シンボル a i (i=0,1,...) のシーケンスを発生するのに用いることができる。 図中、Tbで表示されているブロックはシンボルの周期に等しい遅延を有する遅延ラインを示し、「+」で表示されているノードは加法ノードである。 当業者ならこれはタイプr=2/3の従来の符号器であると認識するであろう。 【0014】図3は、m−1個の出て行くシンボル b i のストリングをマッパー(mapper)Qに送られるべきm個の符号化シンボルのストリングに符号化するために、上述の符号器CEに類似の符号器が(図1の送信器Tx内の)全体でMとして示されているTCM変調器の中にどのように組み込むことができるのかを示す。 このマッパーQには、好ましくはインターリービングマトリックスIが続く。 上記説明の全ては広く知られた技術に対応しており、より詳細に記載する必要はないであろう。 図3 の右側を見ると分かるように、シンボル間干渉により影響を受けるチャンネルFは、l(エル)個の遅延素子T と係数h 0 ,h 1 ,..., h l有するトランスバーサルフィルターとして実質的にモデル化できる。 これらの遅延素子T はチャンネルメモリを表し、これらの係数は干渉シンボルが各有効シンボルと干渉する様式をノードΣで表される総和として示している。 和ノードΣの出力では、チャンネルの(ここでは、白色ガウシアン型と仮定されている)ノイズを表すnが信号にスーパーインポーズされる。 このように信号Yが得られ、これは受信器Rに到達する信号を表す。 【0015】受信器R(図1)と通信して受信したこの信号は、第1復調ステージDで復調され(これも広く知られた技術を用いており、ここでは説明を必要としないであろう。)、シンボル間干渉の影響を受ける方式に属するシンボルのシーケンスに戻される。 このシーケンスは例として示されているように2つの要素のカスケード接続によって実質的に構成される復号化グループに送られる。 これら2要素とは、(a)ソフト検出方式によって動作する、即ち、伝送シンボルについての決定だけでなく、それらの信頼度の測度も放出する第1ヴィテルビ復号器1(これについては、後にさらに記載する。)、 及び(b)(幾つかの従来のヴィテルビ復号器から構成でき、伝送用に用いられるシンボルを処理できる)第2 ヴィテルビ復号器2であって、前記信号がこの第2ヴィテルビ復号器2に送られ、TCM復号化操作を行い、これにより送信器Txに送られた初期信号を表すバイナリ出力信号が発生される、該第2ヴィテルビ復号器2である。 【0016】最も好ましい実施例としては、送信器Tx により送信される信号がインターリービングを受けるとき(図3のマトリックスI)、逆インターリービング装置3が2つのヴィテルビ復号器1、2の間に置かれ、送信器に組み込まれたマトリックスIに対して相補的な方法で(既知の基準に従って)動作する。 さらなる明確化として、当業者には明白ではあるが、図2、3(変調器Mに属する部分)、及び図4中の種々の機能的ブロックはディスクリートの処理ブロックともできるし、好ましくはグループとして組み込むか又は記載されたマニュピレーション操作を行うように特化してプログラミングされた処理装置に全体として組み込むこともできることに留意すべきである。 このことは、図1と4に示された2 つのヴィテルビ復号器1、2には特に当てはまる。 動作原理の規定(特に、図6とその関連説明を参照せよ。) はもちろんのこと、処理装置自体の特性およびリンクL 上を伝送されるTCM信号の性質に依存する、そのような処理装置をプログラミングする基準は、当業者が仕事を行うのに要求される通常の技術を適用することにより定めることができるものである。 従って、そのような基準の詳細な説明はここでは全く不必要なものである。 【0017】特に、当業者なら図4中に示されるダイアグラムにおいて、どのように2つのヴィテルビ復号器1、2が夫々の格子により共通の慣例に従って表されているかは容易に理解できる。 これらの格子は夫々、 i) チャンネルFの挙動、即ちシンボル間干渉(復号器1)、及び ii) 変調器Mにより伝送中に受けるTCM符号化方式(復号器2)を考慮している。 図2中で1と2で表示された2つのヴィテルビ復号器の動作と認識基準を容易に理解するために、ソフト出力アルゴリズム(SOVA)にしたがって機能するヴィテルビ復号器の動作が基づいている基準についての簡単な説明をここで行うのが有効となろう。 【0018】(SOVAの動作原理)SOVAとは本質的に、前に述べたように評価されたシンボルのシーケンスに加えて各シンボルに関する信頼度の指標をも発生するヴィテルビアルゴリズムの1方式である。 従って、この方式は従来のヴィテルビアルゴリズムを「ソフト」ユニットを用いて補う。 このソフトユニットにより、復号器が各シンボルの信頼度情報と共に最尤経路を認識できる。 特に、シーケンス(u) n 1 = (u 1 ,..., u n ) 作るために、 (a) j 1 = (a 1 ,..., a j ) として表される情報シーケンス(データ)を外部符号器を介して伝送する必要があると仮定する。 インターリービング装置はこのシーケンスをシーケンス(u') n 1に変換し、この変換されたシーケンスがノイズの影響を受けたメモリ付チャンネルに送られる。 観測された信号のノイズ無しの型は(x) n 1として示され、チャンネル出力で観測される信号は(y) n 1である。 ここで、 y k = x k +v kであり、(v) n 1は白色ガウシアンノイズのシーケンスである。 【0019】SOVA検出器は(ヴィテルビ復号器の動作を規定する既知の基準に従って)「ハード」決定のシーケンス 【外5】 およびそれらの信頼度のシーケンス(L')n 1を放出する。 逆インターリービングの後、これらの2つのシーケンスは夫々 【外6】 及び(L)n 1として表される。 それから、これらのシーケンスは、最終決定 【外7】 を発生する付加復号器に送られる。 インターリーバーが十分に長いと仮定すると、シンボル 【外8】 がメモリ無しディスクリートチャンネルの出力でエラー確率 【数1】 で受信するならば有するであろう同一の分布をシンボル 【外9】 が有することは十分に仮定できる。 簡単のため、シンボル+1と−1を有する正反対のバイナリ変調の場合をまず考えるのが有効であろう。 この場合には、第2ヴィテルビ復号器の最適距離は、 【数2】 であり、ここで、 x(m) k ∈{-1, +1} kはm番目の情報シーケンス中のk番目のシンボルである。 【0020】SOVAにより与えられる信頼度情報は、 【数3】 となる。 実際には、第1復号器(図1及び図4中の1) はシーケンス
【数4】 を与え、ここで、k の符号は「ハード」決定を与え、その大きさは信頼度情報を与える。 従って、復号器1の出力は伝送シンボルについての「ハード」決定および信頼度パラメータを含む。 バイナリの場合を簡単化するために再度言及するが、復号器1の出力は入力がフィルタリングされたものと考えることができる。 ここで、出力シンボルの大きさは前出の式(1)を基にして信頼度の関数として変えられる。 従って、信頼できないシンボルはゼロ(式1の Lkの小さい値)に近い出力値を有し、一方、信頼できるシンボルの大きさは増大される(これらのシンボルは L kの高い値を有する。)。 全く同様な原理が非バイナリの場合にも適用される。 即ち、復調器の出力での量が2より大きい数のステージを有する方式に属していると考えられるべきである場合である(例えば、図5に示されているようなQAM)。 【0021】受信シンボルを同位相および直角位相成分に分離した後、復号器1は2つの量L pおよび L q (p= 同位相、q=直角位相)を計算する。 これらの量 L pと L qは、x方向とy方向の両方に関して同一の復号器のハード出力の信頼度に関連する。 従って、図5の図を参照すると、ゼロに近い値 L p (L q ) は信頼できる実部(虚部)を示し、d/2 に近い値(受信点が決定領域の境界に近いときに得られるもの。)は完全に信頼できないシンボルを示す。 従って、復号器1はシンボルS を放出し、 このシンボルS は、同位相と直角位相部のベクトルとして示され、 【数5】 で与えられ、ここで、 upkと u qkはk番目のインターバルにおける復号器1の「ハード」決定を表し、 L pkと L
qkは夫々の信頼度パラメータを表す。 図5中の「*」 は復号器1により用いられるシンボルを示し、ラインは決定領域の境界を示す。
【0022】これまで述べてきたことから、量 L pと L qの変化の範囲は容易に導かれる。 -d/2≦ L p ≦d/2 -d/2≦ L q ≦d/2 もちろん、ハード決定の正しさの度合いの良好な評価に達するように、信頼度値 L pと L qはある数のシンボルインターバル(切断長)で更新されなければならない。 たとえ前出の関係に対してSOVA復号器の出力が参照されるにしても、ハード決定と信頼度は実際には第2復号器の入力で考えられることに留意せよ。 【0023】更新手続きは、シンボル間干渉(ISI) の各状態に対して以下のステップを含む。 (1)最も新しく受信したシンボルの信頼度値L を計算するステップ (2)最良の距離を有する経路(生残経路)を見つけるステップ (3)考慮中の状態に導く他の経路(同時発生経路)に対して、及び決定インターバル内の各位置に対して、夫々のハード決定を比較し、次の2つの場合を識別するステップ (a)2つの経路についてのハード決定が一致すれば、 生残経路に属するシンボルの新しい信頼度は、 L' ps =min{L' ps , L' pc +Δ cs } L' qs =min{L' qs , L' qc +Δ cs } となり、ここで、 s=生残 c=同時発生 Δ cs = 生残しかつ同時発生経路の距離間の差 である。 (b)2つの経路についてのハード決定が一致しなければ、2つの決定が一致しない方向に属する信頼度の値は次の関係式 L' ps =min{L' ps , Δ cs } 又は L' qs = min{L' qs , Δ cs } に従って更新される。 このような更新は、ハード決定はもちろんのこと変位方向を決める符号だけでなく、信頼度の絶対値に属するものに対するモジュールにおいても考慮されるべきである。 【0024】次に、ハード決定とそれに関係する夫々の信頼度値を認識できる最良の経路が見つけられる。 即ち、 L p =sgn{L' p }{d/2-|L' p |/2d } L q =sgn{L' q }{d/2-|L' q |/2d } である。 図6A、6B、及び6Cに示されたフローチャートは、上記方法がアルゴリズムレベルにおいて復号器1で各受信シンボルに対してこのように実行されるかをより詳細に示している。 スタートステップ100から始まって、ステップ102では復号器1は新しい受信シンボルの同位相および直角位相部分を選択し、ステップ1 04ではシンボル間干渉に関する格子の各分枝の関連距離を計算する。 続くステップ106では、復号器1は格子の各経路に関連する距離を計算し、ステップ108で各状態に関して最小距離を有する生残経路を求める。 ステップ104から108までの一連のステップは、典型的なヴィテルビアルゴリズムに相当することが推測されよう。 ステップ110で生残経路を選択した後、復号器1はステップ112で検査中の状態の同時発生経路を選択し、ステップ114で量ind-simbの単位値を特に参照して前に定められた量Δ csを計算する。 この量ind-simb の単位値は、分析を終えるのに要するステップ数を考慮する。 【0025】次のステップ116は選択ステップであり、2つの経路についてのハード決定が一致しているか否かのチェックがなされる。 もし一致しているならば(比較の結果が肯定的)、復号器1は図6Bに示される一連のステップを行う。 もし否定的な結果ならば、復号器1は図6Cに示された一連のステップを行う。 まず図6Bの一連のステップ(ステップ116での比較が肯定的な結果の場合)を調べてみると、ステップ118で復号器は信頼度値 L pと L qをモジュールおよび符号において更新し、次に比較ステップ120で切断長が到達したか否かを調べる。 もし否定的な結果ならば、ステップ121で量ind-simbに1が加えられ、図6Aのステップ114と116の間のフローチャートの戻り地点1に戻る。 比較ステップ120が肯定的な結果ならば、復号器1は次の比較ステップ122に移り、検査されてない同時発生経路が存在するか否かをチェックする。 比較ステップ122が肯定的な結果ならば、復号器1はステップ124に移り、まだ検査されてない同時発生経路が選択され、図6Aに示されているフローチャートの一部であるステップ112と114の間の戻り地点2に戻る。 【0026】比較ステップ122が否定的な結果ならば(全ての同時発生経路が検査されている。)、復号器1 は選択ステップ126で未検査状態がまだ存在しているか否かを調べる。 肯定ならば、復号器1はステップ12 8に移り、まだ検査されてない状態を選択し、図6A中のフローチャートのステップ110と112の間の戻り地点3に戻る。 もしステップ126の検査が否定的な結果ならば、復号器1はさらなる検査ステップ130に移り、そこで伝送が終了したか否かを調べる。 否定的な結果ならば、次のステップ132で復号器は切断長に等しい数のシンボルが受信されたか否かをチェックする。 肯定的な結果ならば、復号器1は次のステップ134に移り、そこで復号器1自身がソフト出力上に復号器2に向けて(より正確には図4中の3で示された逆インターリービングマトリックスに向けて)最良の距離を有する経路に関して最後のシンボルに属するソフト出力に関する信号を放出する。 この点で、復号器1は図6Aのフローチャートの戻り地点4にもどり、新しいシンボルを復号化する準備をする。 もしステップ132の検査が否定的な結果を生じるならば、ステップ134を通ることなくステップ132から直接ステップ102の上流に戻る。 ステップ130の検査が肯定的な結果ならば(伝送が終了している事実に対応する状況)、復号器1は次に進み(ステップ133)残りのシンボルを放出し、停止状態に移る(ステップ135)。 【0027】図6Cに示されたフローチャートの一部に関して、もしステップ116の検査が否定的な結果を生じるならば、復号器1はステップ136に移る。 ここで、さらなる検査が行われて同時発生シンボルが最小ユークリッド距離にあるか否かを調べる。 否定的な結果ならば、復号器は図6Bのフローチャートの上述のステップ118と120の間の戻り地点5に移る。 ステップ1 36の検査が肯定的な結果ならば、復号器1は次の検査ステップ138に移り、そこで最小ユークリッド距離で検出された同時発生シンボルに関する同位相座標が一致するか否かを調べる。 ステップ138の検査結果に依存して、復号器1はもし肯定的な結果ならばステップ14 0に移り、否定的な結果ならばステップ142に移る。 ステップ140と142の両方では、信頼度が更新され、異なるのはステップ140ではモジュールと同位相成分L' psの符号が前述の条件で更新されることである。 ステップ142では、直角位相成分が代わりに更新され、さらにモジュールおよび符号を操作する。 続く経路(ステップ140又はステップ142)には関係なく、 復号器1は次に図6B中の戻り地点5に移る。 【0028】図7は本発明による方法と装置の性能を2 つの異なる従来技術での解決策と比較して示している。 図7はビットエラーレート(BER) をy軸に取り、信号− ノイズ比(S/N比)(dB)をx軸に取ったものである。 特に、本発明による解決策に関する曲線は最も低い曲線であり、正方形の印で示されている。 最も上の曲線で丸印で示されているものは、本明細書の導入部で説明したE.ビグリエリ(Biglieri)、G.カエル(C a i re) 、G. ダリア(D'Aria)による論文に記載された型の打ち消し技術を示している。 中間の曲線でダイヤモンド印で示されたものは、本明細書の導入部で述べたR.ラヘリ(Rahel i)、A.ポリドロス(Polydoros) 、CKゾウ(Tzou)による論文に記載された型の全生残技術を用いて測定された性能を表す。 同様の条件で、即ち前述した方式(128Q AM)の同一のタイプに関して同一タイプのTCM変調を用いることにより、8状態4D-TCM符号器及び6.5 ビットシンボルとの比較が行われた。 もちろん、本発明の原理が与えられれば、それを実現するための詳細や形式は本発明の範囲を逸脱することなく、これまで記載し説明してきたことに対して広く変わり得る。 例えば前に例としてTCM変調を参照してきたが、本発明はBCM(ブロック符号化変調)、MLCM(マルチレベル符号化変調)のような格子ダイアグラムで表される符号化変調のいかなるタイプにも適用できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明による解決策が用いられているデジタル信号伝送用リンクが、概略的に示されている。 【図2】TCM符号化信号を発生するのに用いることができる従来の符号器の構造を示すブロック図である。 【図3】TCM変調器の動作および関連するチャンネルの挙動を説明するのに用いられるモデルを示す。 【図4】本発明による装置に用いられている復号器の2 つの基本的な要素の機能的構造を示すブロック図である。 【図5】本発明による装置において行われる復調動作をより詳細に示す。 【図6A】図4に示された要素のうちの一つの動作のフローチャートの一部を示す。 【図6B】図4に示された要素のうちの一つの動作のフローチャートの一部を示す。 【図6C】図4に示された要素のうちの一つの動作のフローチャートの一部を示す。 【図7】本発明に従って動作する伝送システムの性能を示す図である。 【符合の説明】 1 第1ヴィテルビ復号器 2 第2ヴィテルビ復号器 3 逆インターリービング装置 Tx 送信器 R 受信器 L デジタル通信システム(例えば、地上マイクロ波無線リンク) F チャンネル S シンボル D 第1復調ステージ CE 符号器 Tb 遅延ライン M TCM変調器 Q マッパー I インターリービングマトリックス T 遅延素子 h 0 . . . h l係数 n ノイズ Y 受信器Rに到達する信号 Σ 和ノード |