【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は変動包絡線変調を有する無線周波数信号を発生する装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】たとえば移動無線システムに使用する無線装置において、いわゆる「カルテジアン」(Cart esian)増幅器が使われてきた。 カルテジアン増幅器では、ベースバンド信号がIとQの直交成分に分解されて、変調目的のためにそれらが別々に処理され、無線周波数増幅器に加える直前に再結合された。 これらの増幅器には二つの制限がある、すなわちこれらはベースバンド付近の比較的狭い帯域(たとえば25kHz以下) しか扱うことができないし、フィードバックループの作用とベクトル変調器の使用とに起因するノイズフロアを除去することが不可能である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、カルテジアン増幅器よりも広い、たとえば数百キロヘルツ程度の、伝送帯域を有する変動包絡線無線周波数出力信号を生成することができて、かつノイズ指数を低くすることが可能な装置を提供することである。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明によれば、 a)ベースバンド信号用の入力と、 b)ベースバンド信号から、実質的に一定の包絡線振幅を有し、放送用レベルに無線周波数増幅するのに適する変調無線周波数信号を発生する手段と、 c)必要な変動包絡線を有するために、増幅された無線周波数変調信号を包絡線変調して出力する手段と、を含む変動包絡線無線周波数信号発生装置であって、発生手段b)は(1)その出力として実質的に一定の包絡線振幅を有する該変調無線周波数信号を出力する周波数制御可能な発振器を含む周波数オフセット位相ロックループと、(2)その出力が手段c)の出力から導かれた一定包絡線振幅信号とベースバンド信号から導かれた一定包絡線信号との位相差を表す信号である位相比較器とを含む、変動包絡線無線周波数信号発生装置が得られる。 【0005】 【発明の実施の形態】次に本発明について、図面を参照して非限定例により説明する。 図1に示した装置はベースバンド信号を用いて放送用のRF(無線周波数)信号を変調して、RF信号を放送に適するレベルに増幅するためのものである。 RF信号の変調において、送信しようとするディジタルデータが符号化される。 しかし、本発明はディジタルデータ信号と共に使用することに限定されるものではなく、音声およびその他のオーディオ信号、並びに他の種類の信号すべてと共に使用することができることを強調しておく。 図示した装置は数百キロヘルツのオーダまでの任意の帯域を有するベースバンド信号と共に使用して、変動する包絡線を有するたとえば4 00MHzの周波数の変調RF信号を出力することを意図したものである。 本発明の周波数は限定されず、たとえば108−138MHz、390−420MHz、 1.8GHz、3.5GHz、5GHzなどなど、ほとんどどんな無線周波数でもよいであろう。 【0006】以下の説明で理解されるように、この回路はオフセット位相ロックループ(OPLL)変調器のように動作する。 通常、OPLL変調器は変調された信号の振幅を制御する手段を持たないので、変動振幅変調方式と一緒に使うことはできない。 【0007】図1の回路の説明に入る前に、説明のために、ベースバンドでディジタル符号化された信号は、分解器(図示せず)によってIとQの直交成分に分解されていると仮定する。 しかし本発明はこの形式に限定されるものではない。 すなわち第1に、ベースバンド信号は最初から直交形式で発生させることができる(したがって、直交形式に分解する必要がない)。 第2に、ベースバンド信号は直交形式である必要が全くない(ただし、 帯域、帯域外ノイズなどなどに関する規制およびまたは他の要求を満たすために、他の追加の信号処理を必要とすることになろう)。 本発明はI/Q形式のベースバンド信号を使うことに限定されないことに注意されたい。 すなわち図2a,bにはI/Q形式を使わない変形例を示してある。 【0008】所望の名目上の送信周波数FTがたとえば400MHzであるとすると、この装置は局部発振器に2個の関連する周波数F1とF2を供給することを要求する。 たとえば、F1は90MHzであると好都合であるが、するとF2はOPLLのフィードバックループの装備次第で410MHzまたは310MHzのいずれかであることが要求される。 【0009】ベースバンド信号のIとQの直交成分はそれぞれの入力1aと1bに加えられる。 そこでは、それらはミキサ2aと2bに送られ、ミキサは周波数F1の基準信号の+45度と−45度の移相成分とそれらとを混合する。 これらの移相成分はこの基準信号が加えられている分相器3の出力対により供給される。 +45度と−45度の替わりに0と90度を使ってもよく、適当な90度の位相差があれば任意の他の組み合わせでもよいであろう。 【0010】ベースバンド信号とF1の和と差で成分を含むミキサ2aと2bの出力は加算器4により加算されて、多段リミッタ5の入力に加えられる。 このリミッタは実質的に一定の包絡線振幅を有する出力信号を生成し、それがOPLLの一部を構成する位相比較器6に加えられる。 また、リミッタ5はリミッタの入力に加えられる信号の包絡線を表す信号を出力5Aに供給する。 【0011】位相比較器6はその2個の入力に加えられた信号の差に振幅が比例する出力を生じる。 入力のうちの一方は上述のリミッタ5の出力である。 位相比較器6 の他方の入力は、本装置の出力段の近くに10と書かれたフィードバック経路を通ってフィードバックされる信号を受信する。 【0012】位相比較器6の出力は低域フィルタ7の入力に加えられる。 低域フィルタ7の周波数特性はその出力がベースバンド周波数に限定されるように選ばれる。 この出力は制御発振器8の周波数制御入力に加えられる。 制御発振器8は好ましくは名目上の送信周波数(たとえば400MHz)を中心とする周波数で動作するように構成された電圧制御発振器であって、一定の包絡線振幅を有し、低域フィルタ7の出力により表されるOP LLの位相誤差に依存する周波数値を有する出力を供給する。 【0013】発振器8のRF周波数変調信号はドライバ前置増幅器9を経由してRF電力増幅器11に送られる。 電力増幅器11はこの信号を放送するために空中に送るのに適するレベルに増幅する。 【0014】50オームの負荷14の付いた方向性結合器13がRF電力増幅器11の出力の一部を取得する。 OPLLの「ループ」を完成させるために、放送用RF 信号の振幅を小さくしただけのものであるこの信号はミキサ18の一方の入力に供給される。 ミキサ18の他方の入力は前述の局部発振器から供給される局部基準信号を受信する。 この信号の周波数(F2)はF1+FTまたはFT−F1であるが、いずれの場合もミキサ18の出力は周波数F1である。 その目的は位相比較器6の第2の入力に加える信号を導出して、位相制御ループを完成させることである。 ミキサ18から供給されるこの出力は多段リミッタ19に加えられる。 リミッタ19の特性は(振幅制限効果と周波数応答という点で)リミッタ5と整合させてある。 位相比較器の2個の入力に加えられた信号を正しく比較するのに必要な何らかの振幅調整がなされるのはもちろんである。 【0015】方向性結合器13から取得された信号はまたダイオード15により整流されて、差動増幅器16の一方の入力に加えられる。 差動増幅器16は積分器として働き、RF電力増幅器11の利得を(従って出力の振幅を)制御する。 差動増幅器16の他方の入力はリミッタ5の出力5Aから供給される前述の包絡線を表す信号を受信する。 【0016】このように、差動増幅器16の効果はリミッタ5の入力信号に存在していて、回路のOPLL部に送られる信号から除去されている変動振幅変調を元に戻す、すなわち「復元する」ことである。 【0017】OPLL構成を使うことの主な利点は、単純なベクトル変調器を使用する場合と比較して非常に低ノイズで、GMSKのような複素定振幅方式の伝送が可能になることである。 なぜならば、OPLLは制御ループの一部としてVCOに変調を加えるので、変調器により作られるノイズはVCOの位相ノイズしかないからである。 OPLLを使わない変調器は典型的にI/Qベクトル変調器を使う。 このような送信機では、VCOは位相ロックループの一部として送信機のノイズの一部にのみ寄与するであろうし、ベクトル変調器のミキサに由来する他の要素は、入力信号の信号対ノイズ比が不十分な場合にベースバンドからの増幅された熱ノイズとベクトル変調器の後段で使われるかもしれない周波数アップコンバータから生ずるノイズとに寄与するであろう。 典型的にこれらの寄与はVCOの寄与よりはいちじるしく大きい。 上述の実施例が従来のOPLLの低ノイズ特性を有することと、振幅の復元により変動包絡線変調方式の中でこのことを実現することが可能になることとが評価されよう。 【0018】上述の実施例の利点は以下の点を含む。 ・非常に低い広域ノイズ(VCOのノイズとほぼ同じ(たとえば150dBc/Hz−160dBc/Hz) ・送信機は変調包絡線と無関係に線形に動作する ・広域ノイズを減らすための外部フィルタが不要となる ・カルテジアンループの線形性対ノイズの妥協が不要となる。 【0019】当業者には請求の範囲に記載された範囲内で、例示した実施例から数多くの変形が明らかになるであろう。 特に、電力増幅器段で信号の包絡線を復元するのに閉ループ構成を使う必要はない。 むしろ、前述の実施例(図1)のように入力信号から導かれた包絡線を表す制御信号、または本装置に入力されてRF出力に要求される包絡線変調を表す信号(図2a,b参照)のいずれかに基づき、オープンループ制御により実現可能であろう。 また、PAの振幅制御は利得制御(バイアス回路経由または他の方法にて)、または電源電圧の振幅制御(通常のAM送信機のように)、または任意のその他の適当な方法を用いて実現することができる。 【0020】図2aに示した変形例では、I/Q直交信号の替わりに振幅情報信号rと位相情報信号θとして入力が与えられる。 図1の要素2aから5までが除かれて、替わりに振幅情報信号rが積分器16の一方の入力に加えられ、位相情報信号θが位相変調器21を経由して位相検出器6に加えられる。 図2bに示した変形例では、図2aと似ているが、閉ループの替わりに開ループの包絡線変調を使っている。 図1の要素16−18も除かれて、替わりに振幅情報信号rがS級変調器に加えられて、電力増幅器11の出力の包絡線を制御する。 S級変調は電力増幅器の電源電圧を変えることにより、たとえば可変デューティサイクルスイッチングにより、実現することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例のブロック回路図。 【図2a】図1の実施例の変形であって、図2aは第1 の変形のブロック回路図である。 【図2b】図1の実施例の変形であって、図2bは第2 の変形のブロック回路図である。 。 【符号の説明】 2 ミキサ 3 位相反転器 4 加算器 5 リミッタ 6 位相比較器 7 低域フィルタ 8 電圧制御発振器 9 ドライバ前置増幅器 10 フィードバック経路 11 電力増幅器 13 方向性結合器 16 差動増幅器 18 ミキサ 19 リミッタ 21 位相変調器 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 リック エイ、ヒラム イギリス国 ウィルトシャー、トラウブリ ッジ、ドブコート ミューズ、リディアー ド ウェイ 48 |