【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は電気回路を接続するコネクタ装置に係わり、特に回転軸と固定側との間を接続するためのコネクタ装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来から回転軸に搭載された電気機器と固定側の電気機器とを電気的に接続する装置としていわゆるスリップリングが知られている。 即ち回転軸の円周に沿って設置されたリングを固定側に設置されたブラシが摺動して電気的接続を確保するものである。 【0003】しかしながらこのスリップリングは機械的に摺動するものであるため、摺動によって生じる金属粉による短絡、塵埃による接触不良をさけることはできない。 従って自動車のハンドル内に設置されるエアバッグ用起動指令の様に確実な接触が必要な箇所に適用するには信頼性の点で問題があった。 この問題点を解決するために、回転軸の周囲に電気導体を緩く卷回させ、この電気導体の一端を回転軸に固定し他の一端を固定側に固定して接続を維持する機構を一体に組み込んだコネクタ装置が提案されている(特開昭57−165982公報参照)。 【0004】図9は上記提案に係る緩く卷回させた電気導体によるコネクタ機構のみの概念図の水平断面図(イ)および垂直断面図(ロ)である。 即ち回転軸71 の外側に円筒形をなす固定側72が設置され回転軸71 と固定側との間に形成される空間に可撓性を有するケーブル73が回転軸71を緩く卷回して構成されている。 【0005】このケーブル73の一端は回転軸71に固定され、回転軸71と共に回転する部分に搭載された電気機器に接続するための第1の接続端子74に接続さている。 一方他の一端は固定側72に固定され、固定側に設置される電気機器に接続するための第2の接続端子7 5に接続されている。 【0006】回転軸71を反時計方向に回転すればケーブル73は回転軸71の周囲に巻き締まり、逆に時計方向に回転すればケーブル73は回転軸71の周囲に巻き緩んで回転軸71のある限度回転数以内での回転を可能としている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】このコネクタ機構のケーブル長は回転軸の直径と回転軸の限度回転数とから定まるので、回転軸直径が大きい場合には、ケーブル長が長くなることおよびケーブルを収納する固定側の体格が大きくなることは避けることはできない。 本発明はかかる問題点に鑑みなされたものであって、回転軸直径が大きい場合であっても体格が大きくなることおよびケーブル長が長くなることのないコネクタ装置を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】第1の発明に係るコネクタ装置は、巻き取り部材と、巻き取り部材を相対的に回転可能に支持する第1のケースと、中心にケーブル巻き取り芯を有する第2のケースと、 一端が巻き取り部材に 他端が該ケーブル巻き取り芯に固定されると共に巻き取 り部材及び巻き取り芯に巻回される可撓性ケーブルとを 具備し、巻き取り部材が可撓性ケーブルを巻き取る方向 に回転したときは可撓性ケーブルがケーブル巻き取り芯 回りに巻き締められ、巻き取り部材が可撓性ケーブルを 巻き戻す方向に回転したときは可撓性ケーブルがケーブ ル巻き取り芯回りにおいて巻き緩められるコネクタ装置 であって、可撓性ケーブルが該巻き取り部材に一方向に のみ巻回可能であり、巻き取り部材が可撓性ケーブルの 巻き取り方向及び巻き戻し方向のいずれの方向に回転し ても、巻き取り部材に対する該可撓性ケーブルの巻回方 向が、変化することなく一方向を維持する 。 【0009】第2の発明にかかるコネクタ装置は、第2 のケース中に設置されたケーブル巻取り芯の直径が、巻き取り部材の直径より小であることを特徴とする。 【0010】 【作用】第1の発明にあっては、回転軸が例えば反時計方向に回転するとケーブル巻取り芯まわりに緩く複数回巻回されたケーブルの一部が第2のケースから引き出され巻き取り部材に巻き取られるとともに、残りのケーブルが巻き締められる。 巻き取り部材が逆方向に回転するとケーブルは第1のケース内周面に巻き広がりを拘束され巻き取り部材から第2のケースに送り込まれるとともに巻取り芯に巻き締められていたケーブルは巻き緩められる。 【0011】第2の発明にあっては、第2のケース中に設置された巻取り芯の直径が巻き取り部材の直径より小であるため第2のケースを小型化できるとともにケーブル長を小とできる。 【0012】 【実施例】図1は本発明にかかるコネクタ装置の実施例を示す断面図であって、エアバッグの組み込まれたステアリングを示す。 回転軸105は固定された筐体120 内に収められている。 回転軸105にはステアリング1 30が取り付けられ、ステアリング130が操作されると巻き取り部材110は回転する。 【0013】固定された筐体120とステアリング13 0との間には本発明に係るコネクタ装置140が設置される。 コネクタ装置140から回転軸と一体で回転する巻き取り部材110上に引き出されたケーブル141 は、第1の接続端子143を介し、ステアリング130 内に収納されたインフレータ131に接続されている。 【0014】コネクタ装置140から固定された筐体1 20に引き出されたケーブル142は第2の接続端子1 44を介し衝突検出装置(図示せず)に接続されている。 ステアリング130内にはインフレータ131の他にエアバッグ132がパッド133の下に格納されている。 衝突検出装置で衝突が検出されると衝突信号がケーブル142、コネクタ装置140およびケーブル141 を介してインフレータ131に供給される。 【0015】するとインフレータ131からガスが発生し、パッド133を突き破ってエアバッグ132が膨らみ、運転者を保護する。 図2は本発明に係るコネクタ装置の第1の実施例の構成図であって、水平断面図(イ) と垂直断面図(ロ)とを示す。 即ちコネクタ装置140 は円筒形状の巻き取り部材110の周囲に空間46を隔てて設けられ内周面が平滑である第1のケース41と、 同じく内周面が平滑である第2のケース42と、第1の固定ケース41のケーブル引出し口と第2の固定ケース42のケーブル引出し口とを接続するケーブル通路43 と、から構成される。 【0016】第2のケース42には空洞47があり、その空洞47の中心にはケーブル巻き取り芯44が設置されている。 このコネクタ装置140の内部にはケーブル45が以下のように収納されている。 (1)巻き取り部材110の外周の一箇所にケーブル4 5の一端が固定される。 (2)ケーブル45は巻き取り部材110と第1のケース41との間に設けられた空間46を一周してケーブル通路43を介して第2のケース42に導かれる。 (3)第2のケース42に導かれたケーブル45はケーブル巻き取り芯44の回りを緩く反時計まわりに複数回卷回して、他の一端がケーブル巻き取り芯44に固定される。 (4)巻き取り部材110上のケーブル固定点からはケーブル45と電気的に接続されたケーブル141が引き出される。 (5)ケーブル巻き取り芯44の固定点からはケーブル45と電気的に接続されたケーブル142が引出される。 (6)ケーブル45は巻き取り部材110又はケーブル巻き取り芯44から、直接外に引き出されてもよい。 (7)ケーブル巻き取り芯44は、第2のケース42と嵌合または一体で形成されている。 (8)巻き取り部材110の外周面と第1のケース41 の内周面との半径方向の距離は、巻き取り部材110に巻きつけたケーブルを、巻き戻し時において巻き広がったりせず確実に第2のケース42側に送り出されるよう比較的小さいのに対し、巻き取り芯44の外周面と第2 のケース42の内周面との半径方向の距離は巻き取り芯44に複数巻きつけたケーブルが巻き緩み、巻き締りできるよう比較的大きくしている。 【0017】この構成によれば、ステアリング130が反時計方向に回転された場合は、ケーブル45は第2のケース42からケーブル通路43を介して引き出され巻き取り部材110の周囲に卷回する。 逆にステアリング130が時計方向に回転された場合は、ケーブル45は巻き取り部材110から巻き緩められて、ケーブル通路43を介して第2のケース42に回収される。 【0018】なおケーブル45自体をケーブル巻き取り芯44の周囲を複数回渦巻き状に卷回するように復帰する弾性体としてもよく、この場合は第2のケースへの回収はより容易となる。 図3はケーブル45の1例の断面図であって、平板形状をした2本の電導体45aを同じく平板形状の合成樹脂製の絶縁体45bで覆われている。 【0019】なお電導体は2本に制限されることはない。 また第1および第2ケースの内周面の形状は、円筒形状に限定されず、四角形などの多角形状でもよく、この場合、ケーブルとケース内周面との摺動面が減少し、 第2ケースへの回収は、より容易となる。 あるいは、図4の第2の実施例に示されるように第1および第2ケースの内周面に凸形状151,152を設けてもよく、これによってもケーブルとケース内周面との摺動面が減少され、第2ケースへのケーブルの回収は、より容易となる。 【0020】あるいは、図5の第3の実施例に示されるように第1および第2ケース内にケーブルを外寄りから巻き取り部材あるいは、ケーブル巻き取り芯に向かって押圧する板状の弾性体153,154を設けてもよく、 これによってもケーブルとケース内周面との摺動面が減少され、第2ケースへのケーブルの回収は、より容易となる。 【0021】また電導体45aも平板形状に限定されることはないが、コネクタ装置全体を小型化するうえでは平板形状とすることが有利である。 さらにケーブル巻取り芯44の直径を巻き取り部材110の直径より小とすることにより、第1および第2のケース41,42の大きさを小とするとともにケーブル長を短縮することが可能となる。 【0022】図6は第4の実施例の構成図であって、水平断面図(イ)と垂直断面図(ロ)とを示す。 即ちケーブル通路43を長くして第1のケース41と第2のケース42とを分離して設置することを可能としたものである。 このケーブル通路43は例えばゴムのような可撓性の材質で製造することが可能であるばかりでなく、ケーブル通路43自体を省略することも可能である。 【0023】即ち第2のケース42は回転軸の周囲の設置スペースに捕らわれずに第1のケース41と分離して設置場所を選定することが可能となる。 さらにケーブル通路43の長さは任意に定めることが可能であり第2のケース42の設置場所を第1のケース41の設置場所にとらわれずに自由に選択することが可能となる。 【0024】図7は、第5の実施例の構成図である。 第1の実施例と異なり、巻き取り部材110を車体と固定し、第1と第2のケース41,42をステアリングと一体で回転可能としたものである。 図8は、第6の実施例の構成図である。 即ち、1つの第1のケース41と複数の空間を隔てて、複数の第2のケース42,42′…が設けられている。 各第2のケース42,42′…の中心部にはそれぞれ巻き取り芯が設けてあり、複数本の可撓性ケーブルの一端は、巻き取り部材110に他端は各々の巻取り芯に固定され、各々の巻取り芯の周囲に緩く複数巻きつけている。 【0025】このような構成とすることで、ケースの高さを高くすることなく信号線の本数を増加することができる。 【0026】 【発明の効果】本発明によれば、コネクタ装置の大きさを小とすることが可能となるばかりでなくケーブル長も短くすることが可能となる。 さらにケーブルを巻き取るための第2の固定ケースを分離して設置することも可能であるため設置位置選択の自由度が大である。 【図面の簡単な説明】 【図1】図1は本発明にかかるコネクタ装置の実施例を示す断面図である。 【図2】図2は本発明に係るコネクタ装置の第1の実施例の構成図である。 【図3】図3はケーブルの1例の断面図である。 【図4】図4は第2の実施例の構成図である。 【図5】図5は第3の実施例の構成図である。 【図6】図6は第4の実施例の構成図である。 【図7】図7は第5の実施例の構成図である。 【図8】図8は第6の実施例の構成図である。 【図9】図9は従来のコネクタ装置の構成図である。 【符号の説明】 110…巻き取り部材 140…コネクタ装置 41…第1の固定ケース 42…第2の固定ケース 43…ケーブル通路 44…ケーブル巻取り芯 45…ケーブル ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl. 7 ,DB名) H01R 35/04 B60R 16/02 675 |