【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ドアハーネスを挿通したプロテクタをドアにスライド自在に設け、且つドアハーネスのコネクタを車両ボディ本体のドア嵌合内壁で相手コネクタと接続させてプロテクタの見栄えを向上させた車両用ドアハーネスの組付構造に関するものである。 【0002】 【従来の技術】図8は特開平8−33166号公報に記載された車両用ドアハーネスの組付構造を示すものである。 この構造は、ドアパネル51のヒンジ取付部側の前端面52にドア厚み方向の凹溝53を形成し、該凹溝5 3にワイヤハーネス54を配索すると共に該ワイヤハーネス54の上からゴム製のグロメット55の基板部56 をスライド嵌合させ、該ワイヤハーネスの先端方54a をグロメット55の蛇腹部57に挿通して、図示しない車両ボディ本体側に配索するものである。 【0003】しかしながら上記構造にあっては、グロメット55の孔58にワイヤハーネス54を挿通させる作業や、蛇腹部57の先端部を車両ボディ本体側に嵌合させる作業が大変面倒であった。 またグロメット55の基板部56上に位置するウェザストリップ59のシール性を確保しなければならないという問題もあった。 【0004】図9〜図10は特開昭58−113566 号公報に記載された車両用ドアハーネスの組付構造を示すものである。 この構造は、ドアパネル61と車両ボディ本体62とにそれぞれ貫通孔63,64を設け、ゴム製で筒状の弾性プロテクタ65に通したハーネス66を各貫通孔63,64に挿通し、該プロテクタ65の一方をクランプ67で車両ボディ本体62に固定し、該プロテクタ65の他方を非固定のままドアパネル61に沿って位置させたものである。 ドア側のプロテクタ65の内部には芯材68を入れて剛性を持たせてあり、図10の如くヒンジ69を中心にドア70を開いた際に、プロテクタ65が貫通孔63をスライドすると共に、中間部から「く」の字状に屈曲してドア70に追従する。 【0005】しかしながら、この構造にあっては、プロテクタ65を貫通孔63,64に挿通する作業が面倒であり、ドア側のプロテクタ65が屈曲しないために作業性が悪かった。 また、プロテクタを挿通させるためと、 プロテクタをうまく摺動させるために大きな貫通孔が必要であり、見栄えが悪かった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した点に鑑み、車両ボディ本体やドアパネルの各貫通孔やグロメットにワイヤハーネスを挿通させるという面倒な作業をなくし、且つグロメットを用いずともドアハーネスの防水性を確保するのは勿論のこと、プロテクタ組付部の見栄えを向上させ、しかもプロテクタのスムーズな摺動を行わせ得る車両用ドアハーネスの組付構造を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、車両ボディ本体側のワイヤハーネスのコネクタが回動自在に設けられ、ドア側のワイヤハーネスがプロテクタ内に挿通され、該車両ボディ本体側のコネクタに対するドア側のワイヤハーネスの接続コネクタが該プロテクタの一端方に配置され、該プロテクタの他端方がドア内にスライド自在に係合した車両用ドアハーネスの組付構造であって、該車両ボディ本体側のコネクタが車両ボディ本体のドア嵌合内壁に設けられ、且つドア側と車両ボディ本体側との各ウェザストリップの間に位置し、ドア閉時に各コネクタ及びプロテクタが室内側から完全に隠されることを特徴とする。 また、ドア内にスライドガイドが設けられ、ドア側のワイヤハーネスがプロテクタ内に挿通され、該プロテクタの一端方にドア側のワイヤハーネスの接続コネクタが配置され、該接続コネクタが車両ボディ側のコネクタに接続可能であり、該プロテクタの他端方が該スライドガイド7にスライド自在に係合した車両用ドアハーネスの組付構造であって、 該プロテクタが垂直方向の一対のスライドピンを有し、 前記スライドガイドが、該プロテクタを収容可能なガイド溝と、該ガイド溝に連通し、該スライドピンを係合可能な一対の水平方向のガイド孔とを有することを特徴とする。 該スライドガイドがドアインナパネルの溝内に嵌め込んで設けられた構造も有効である。 【0008】 【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態の具体例を図面を用いて詳細に説明する。 図1は本発明に係る車両用ドアハーネスの組付構造の一実施例を示すものである。 【0009】この構造は、車両ボディ本体1のドア嵌合内壁(ピラーインナパネル部)2に、車両ボディ本体1 側のワイヤハーネス3のコネクタ4を回動自在に設け、 自動車ドア5のドアインナパネル6に水平方向のスライドガイド7を設け、ドア側ワイヤハーネス(ドアハーネス)8の外周に合成樹脂製の真直な剛性のプロテクタ9 を覆設し、該プロテクタ9の一端をドア側ワイヤハーネス8の接続コネクタ10(図2参照)に被着させ、車両ボディ本体側のコネクタ4にドア側の接続コネクタ10 を嵌合接続し、プロテクタ9の他端を前記スライドガイド7にスライド自在に係合させたものである。 【0010】車両ボディ本体1のドア嵌合内壁2において車両ボディ本体側のコネクタ4はドア側のウェザストリップ11と車両ボディ本体側のウェザストリップ12 との間に配設され、接続した両コネクタ4,10の防水はドア側のウェザストリップ11により行われる。 【0011】ドア側のウェザストリップ11はドア5のヒンジ取付側の前端面13のほぼ中央に配設され、車両ボディ本体側のウェザストリップ12はドア嵌合内壁2 の室内側端部に配設される。 両コネクタ4,10は嵌合した状態で両ウェザストリップ11,12の中間に位置する。 これにより従来の防水グロメットが不要となるのは勿論のこと、例えばコネクタ4,10が車両ボディ本体側のウェザストリップ12よりも室内側に配置された場合に較べて、プロテクタ9がドア寄り(外寄り)に位置し、特にドア開時において見栄えが格段に向上する。 【0012】コネクタ4,10をウェザストリップ12 よりも室内側に配置した場合でも、ドア閉時に通常インパネサイドによりコネクタ4,10が隠されるが、コネクタに対する逃げスペースがインパネサイドに必要である。 コネクタ4,10をウェザストリップ12よりも室内側に配置した構造は別件で提案済である。 ドア嵌合内壁2には通常ドアチェックアーム(図示せず)が貫通して設けられているが、本実施例におけるワイヤハーネス経路はドアチェックアームの近傍に設けられることになる。 ドアチェックアームはドアを二段階に開かせるための機構である。 なお、図1でドア側でなくプロテクタ9 側にスライドガイド7を設けることも可能である。 【0013】図2〜図3は、車両ボディ本体1へのコネクタ4の支持構造の一例を示すものである。 この構造は、コネクタ4のハウジング上下壁15に一対のピン1 6を突設し、車両ボディ本体1のドア嵌合内壁2に、コネクタ4よりも大きな枠壁17を設け、該枠壁17の上下に、ピン16を係合可能な一対の切欠孔18を設けて成るものである。 該ピン16が前記プロテクタ9の回動支点となり、ドア開閉時のプロテクタ9の揺動がスムーズに行われる。 コネクタの支持構造については別途詳細に提案する。 【0014】図4は前記プロテクタ9の構造を示すものである。 該プロテクタ9はプロテクタ本体20とカバー21とで二分割可能に構成されている。 該プロテクタ本体20は縦断面略コの字状(樋状)に形成され、前端方に、接続コネクタ10の後端部と係合する拡幅部(コネクタ嵌合部)22を有し、長手方向の溝23内にワイヤハーネス(電線)8を挿通可能である。 【0015】該プロテクタ本体20の後端部において両側壁(ドアに組み付けた状態で上下に位置する壁部)2 4に一対のスライドピン25が垂直方向に突設されている。 該スライドピン25は短円柱状に形成されており、 前記スライドガイド7のガイド孔26(図5参照)にスライド自在に係合する。 該スライドピン7はプロテクタ本体20と一体に合成樹脂で形成しても、あるいはプロテクタ本体20とは別体に金属材で構成してもよい。 【0016】前記カバー21は板状に形成され、プロテクタ本体20の溝23の開口23a側に嵌合する。 ワイヤハーネス8は剛性のプロテクタ9により屈曲しないように真直に保持される。 【0017】図5はスライドガイド7の構造を示すものである。 該スライドガイド7は、縦断面略コの字状のガイド溝27を構成する上下の各水平壁28の中央に長手方向のガイド孔(長孔)26を形成し、ガイド孔26に連通するピン移動空間29を各水平壁28の外側に構成して成るものである。 【0018】ガイド溝27の内幅L 1はプロテクタ9の外幅L 2 (図4)よりもやや大きく、ガイド溝27の深さL 3はプロテクタ9の厚みL 4よりもやや深く設定されており、ガイド溝27内にプロテクタ9を収容可能である。 プロテクタ9はスライドガイド7の上下の水平壁28の内側面に沿って摺動可能である。 プロテクタ9のスライドピン25はガイド孔26内に挿入され、ピン移動空間29内に突出した状態で、ガイド孔26に沿ってスライド移動可能である。 スライドピン25はプロテクタ9を傾けることでガイド孔26に挿入され、あるいは別体のスライドピン25をガイド孔26に挿入してからプロテクタ本体20にねじ込み等で固定することも可能である。 【0019】上下のピン移動空間29の外側には断面略ハの字状に傾斜したテーパ外壁30が形成されている。 テーパ外壁30はガイド溝27の底壁31に続いている。 スライドガイド7の前後端には、ガイド溝27の開口27aを有する端壁32が形成され、端壁32が各水平壁28とテーパ壁30と底壁31とを繋いでいる。 【0020】該スライドガイド7は、図5ないし図1の如くドアインナパネル6に形成された断面略ハの字状の溝33に嵌め込まれて固定される。 そしてドア5の開閉に伴ってプロテクタ9がスライドガイド7内をスライド移動する。 スライドガイド7のガイド溝27がドアインナパネル6の表面よりも窪んでいるから、プロテクタ9 はドアインナパネル6から殆ど出っ張らずに位置する。 【0021】図6〜図7はドア開閉時のプロテクタ9の状態を示すものである。 図6のドア開状態においてプロテクタ9は車両ボディ本体1のドア嵌合内壁(ピラーインナパネル部)2から突出してドアインナパネル6に沿って延びている。 プロテクタ9の後端方のスライドピン25はスライドガイド7の前端方すなわちドア5の前端方に位置する。 【0022】車両ボディ本体1側のコネクタ4がドア嵌合内壁のほぼ中央に設けられているから、車両ボディ本体側のコネクタ4を車室寄りに設けた場合に較べて、プロテクタ9が短くて済むと同時に、プロテクタ9が車室側に出っ張らず、目立たず、見栄えが良い。 図6で11 はドア側のウェザストリップ、12は車両ボディ本体側のウェザストリップ、36はヒンジ支点、37はインストルメントパネルを示す。 【0023】ドア5の閉操作に伴ってプロテクタ9は車両ボディ本体側のコネクタ4のピン16を中心に回動し、図7の如くドア5の内部に完全に収納される。 プロテクタ9はスライドガイド7のガイド溝27内にほぼ収容され、室内側から全く見えない。 両コネクタ4,10 がドア嵌合内壁2の中央に位置しているから、閉じたドア5によってドア前端面13とドア嵌合内壁2との間でコネクタ4,10が完全に隠されてしまうのである。 従ってプロテクタ9の前半部9aも車室から隠された状態となる。 スライドピン25はスライドガイド7の後端方に位置している。 【0024】垂直方向の一対のスライドピン25が水平方向のガイド孔26(図5)に係合しているから、ドアの開閉に伴ってプロテクタが水平方向にスムーズに揺動且つスライドする。 またスライドガイド7内でのプロテクタ9の揺動もスムーズに行われる。 これは図6のドア開時と図7のドア閉時とでスライドガイド7に対するプロテクタ9の傾斜角度θ(図7)が異なることにより必要となる。 ドア閉時にプロテクタ9はスライドガイド7 内にほぼ完全に収容される。 【0025】ドア閉時にコネクタ4,10及びプロテクタ9が車室側(インストルメントパネル37側)に出っ張らないから、ドアトリム35にプロテクタ収納部を突出させて設ける必要がない。 従ってドアトリム35の形状がスリムになり、見栄えがよい(図1のドアトリム3 5参照)。 コネクタ4,10は図7の如くドア側のウェザストリップ11と車両ボディ本体側のウェザストリップ12との間に位置し、ドア側のウェザストリップ11 で確実に防水される。 【0026】また、図1においてドアインナパネル6の表面には防水シート39が張り付けられており、スライドガイド7及びプロテクタ9は防水シート39の上に配設されているから、プロテクタ9の防水も完全である。 【0027】図1でプロテクタ9の後端の開口から導出されたワイヤハーネス8はドアイナパネル6の上部に向けて斜め後方に配索され、ドアインナパネル6の上部でクリップ40により支持され、プロテクタ9のスライド動作に伴って揺動可能である。 これによりドア開時及び閉時のワイヤハーネス8の弛みが防止される。 ドアトリム35は、プロテクタ9に対する収納部がなくほぼ平面的に形成されている。 ドアトリム35にはスピーカ41 やスイッチ部42が一体的に設けられている。 【0028】なお、上記実施例においてはドアインナパネル6にスライドガイド7を固定したが、ドアインナパネル6ではなくドアトリム35の裏面側にスライドガイド(7)を固定してもよい。 その場合でもコネクタ4, 10の配設位置は車両ボディ本体1のドア嵌合内壁2である。 ドアトリム35にスライドガイド(7)を設けても、図6〜図7と同様にコネクタ4,10及びコネクタ寄りのプロテクタ前半部9aが車室側に出っ張らないから、ドアトリム35にプロテクタ収納部は不要である。 【0029】 【発明の効果】以上の如くに、本発明の請求項1によれば、プロテクタ側の接続コネクタが車両ボディ本体のドア嵌合内壁(ピラーインナパネル部)で車両ボディ本体側のコネクタと接続されるから、プロテクタが室内側に出っ張らず、且つドア閉時にドアで完全に隠されるから、見栄えが向上し、商品価値が高まる。 また、プロテクタが室内側に出っ張らないから、ドアトリムにプロテクタ収納部を突出形成する必要がなく、ドアトリムのコスト低減と見栄えの向上が図られる。 また、ドア閉時に両コネクタがドア側のウェザストリップと車両ボディ本体側のウェザストリップとの間に位置するから、防水性が確保され、それにより従来のグロメットが廃止され、 ワイヤハーネスの面倒な孔通し作業もなくなり、組付作業性が向上する。 【0030】また、請求項2,3によれば、垂直方向のスライドピンが水平方向のガイド溝に係合することで、 ドア開閉に伴うプロテクタの揺動とスライドとが同時にスムーズに行われる。 また、ドア閉時にプロテクタがスライドガイド内にほぼ収容され、且つスライドガイドがドアインナパネル内に嵌め込まれているから、プロテクタがドアトリム側に大きく出っ張ることがなく、見栄えの向上とドアトリムのスリム化が促進される。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係る車両用ドアハーネスの組付構造の一実施例を示す分解斜視図である。 【図2】車両ボディ本体側のコネクタの取付構造を示す分解斜視図である。 【図3】同じくコネクタの取付構造を示す縦断面図である。 【図4】プロテクタの構造を示す分解斜視図である。 【図5】スライドガイドの構造を示す斜視図である。 【図6】ドア開時のプロテクタの状態を示す平面図である。 【図7】ドア閉時のプロテクタの状態を示す平面図である。 【図8】一従来例を示す分解斜視図である。 【図9】他の従来例のドア閉状態を示す平面図である。 【図10】同じくドア開状態を示す平面図である。 【符号の説明】 1 車両ボディ本体 2 ドア嵌合内壁 3,8 ワイヤハーネス 4 コネクタ 6 ドアインナパネル 7 スライドガイド 9 プロテクタ 10 接続コネクタ 11,12 ウェザストリップ 25 スライドピン 26 ガイド孔 27 ガイド溝 33 溝 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl. 7 ,DB名) B60R 16/02 620 B60J 5/04 |