【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はカラー陰極線管において電源のオン(ON)オフ(OFF)時に陰極線管の内部放電によってパネルフェース面に画面が形成されないことを防止するようにしたカラー陰極線管用の内粧塗料に関する。 【0002】 【従来の技術】従来のカラー陰極線管は、図1に示すように内側面に蛍光膜が形成されたパネル1と内側面に伝導性を有する黒鉛が塗布されたファンネル2とが約45 0℃の炉で融着グラスで互いに封合されて一体化される。 ファンネル2の首部7には電子ビーム9を発生させる電子銃3が装着されている。 パネル1の内側には色選別電極のシャドーマスク4がフレーム5によって支持されていて、ファンネル2の外周面には電子ビーム9を左右に偏向させる偏向ヨーク8が装着されている。 【0003】図面中未説明符号5′はコンタクトスプリングを表わす。 このように構成されたカラー陰極線管は電子銃に影像信号を入力すると電子銃のカソードから熱電子が放出されて、放出された電子は電子銃の各電極で印加された電圧によってパネル1側に加速及び集束過程を経て進む。 【0004】この時電子ビーム9は首部7に装着された偏向ヨーク8の磁界によって進む経路が調整されて調整された電子ビーム9はフレーム5に結合されたシャドーマスク4のスロットを通過して、色選別が行われ、選別された電子ビーム9がパネル内面の各蛍光膜に衝突して発光して影像信号を再現する。 そして地磁気の影響で電子ビームが偏向するのを防止するためにフレーム5の後方にはインナシールド6が付着されている。 【0005】図2のようにパネル1とファンネル2とが融着されて形成された陰鏡線管20は、電気的にコンデンサの役割をするようにファンネル2の内部と外部に電気的導電性を有する内部導電膜21と外部導電膜22を形成している。 キャビティ23を通して高電圧を陰極線管に印加して陰極線画面が形成される。 この導電膜形成は、従来は、黒鉛,接着剤(water glass ),分散剤の混合物を使用していたが、最近では電気的抵抗増加のため金属酸化物を追加している。 そして、導電性被膜の形成方法としては、ブラシやスポンジで塗布する方法,噴射による塗布方法,沈積法,フローコーティング法が知られていた。 ファンネル内面に塗布する方法としては一度だけの作業によって導電性被膜の塗布が簡単にできるフローコーティング法が利用され、ファンネル外面に塗布する方法としては筆やスポンジで塗布する方法が一般的に利用されている。 【0006】導電性被膜液の黒鉛は、導電性物質として働き、キャビティを通して印加された電流が導電性被膜に沿って電子銃部分にまでよく流れるようにする役を果たしている。 接着剤は、けい酸カリウム(potassium si licate)やけい酸ナトリウム(sodium silicate )が使用され、黒鉛及び金属酸化物をファンネルグラス面によく付着するようにする。 分散剤は、黒鉛と金属酸化物が純水が包含されている水グラス内によく分散されるようにする役割をする。 金属酸化物は、不導体として働き、 電気的抵抗値を高くする役割を果たすもので、酸化鉄(Fe 3 O 3 )や酸化チタン(TiO 2 ) を使用している。 金属酸化物を使用しない導電性被膜の場合、陰極線管の電子銃部分に異物質が存在すると電気的スパークが発生し、その際、約600〜1000Aの高い電流が発生して電子銃が接触された部分の導電性被膜と陰極線管の電気回路部品を損傷する問題が発生する。 【0007】従って、黒鉛,接着剤,分散剤が混合された既存の導電性被膜に不導体の酸化鉄,酸化チタンを添加して使用している。 過電流を減らすために混合された酸化鉄と酸化チタンは比重が黒鉛より高いので導電性被膜液を放置したり、導電性被膜液をファンネルに塗布して放置したりする時、酸化鉄と酸化チタンは下降して黒鉛層は上昇して、層分離が生じることがある。 このように黒鉛層が上昇した状態で塗布されて乾燥されると、電気的導電性がよくなって抵抗値が低くなって、金属酸化物を添加しない場合と同様な問題が発生する。 下降された金属酸化物は再分散するのに長い時間がかかって金属酸化物の分散性もわるくなって導電性被膜が均一にならないという問題も発生する。 【0008】さらに、従来の塗布方法中筆やスポンジで塗布する方法は、工程が複雑で導電膜が均一でないという問題があり、噴射塗布方法は黒鉛スラリーの分散状態によって膜にまだらが発生するおいう問題がある。 さらに、沈積法やフローコーティングの場合、塗布膜を形成してはならない部分に塗布膜が形成されて、形成された膜を除去する工程が必要となり、ファンネル内面の塗料がファンネル内面の上部分から下部分まで流れるのでファンネル上部分とヨーク部の塗布厚さが異なってファンネル内面に不均一な電気抵抗が形成される。 【0009】特にファンネル内面に形成された塗布膜の上部分中ファンネル内面の導電性塗布膜と接触しているコンタクトスプリング接触部位で電気抵抗が5kΩ以上高い場合、陰極線管のオン,オフ時にスプリングと導電膜の電位差のため放電が発生してスプリング接触部位の導電膜が破壊されて除去され、このため陰極線管のキャビティを通して加わった高電圧がファンネル内面に均一に流れなくてその結果画面が形成されない製品不良も発生する。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点を解決するためのもので、導電性被膜液をファンネル内面に塗布する場合、ファンネルの首部の電気抵抗があまり低くならず、コンタクトスプリングが接触する部位の電気抵抗を低くし、陰極線管の内部放電を防止するようにすることを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための主だ】上記目的を達成する本発明は、黒鉛と、Fe 2+イオンが含有されていない粒子径が20μm以下の形態を有する酸化鉄と、Fe 2+イオンが5wt%以上含有されていて、平均粒子径が1000 Å以下の酸化鉄とを使用して製造された導電液を接着剤及び分散剤と混合してファンネル内面にフローコーティングで塗布することを特徴とする。 【0012】 【発明の実施の形態】本発明の導電性膜を製造するための塗料構成物は次の通りである。 (1) 導電材: 黒鉛粉末:1〜30wt%添加,粒子径0.1〜20μ mの黒鉛粉末。 酸化鉄1:5〜30wt%添加,粒子径が0.1〜20 μmであって鉄分中Fe 2+イオンがない酸化鉄。 酸化鉄2:0.5−30wt%添加,鉄分中Fe 2+イオンが5wt%以上、粒子径が1000Å以下の酸化鉄。 (2) 接着剤:5〜30wt%添加,けい酸カリウム,けい酸ナトリウムで構成されている接着剤。 (3) 分散剤1:0.5〜3wt%添加,ポリメチレンビスナフタレンナトリウムスルホネート(polymethylene bisnaphthalene sodium sulfonate) (4) 分散剤2:0.5〜3wt%添加,濃縮ナフタレンスルホン酸のナトリウム塩(Sodium salt of condenced naphthalene sulfonic acid) (5) 純水:60〜80wt%添加。 【0013】本実施形態の被膜液塗料の各成分の役割は次の通りである。 黒鉛は導電性物質で電子銃から蛍光体まで電流が流れるようにする。 酸化鉄との混合比によって抵抗値が変わるので必要によって混合して使用して陰極線管用としては1〜30wt%程度添加して混合する。 1wt%以内で添加すると導電性が低下して電気抵抗が大きくなって導電性を発揮しなくなり、30wt% 以上添加すると過電流が流れて電子銃部分に異物が存在すると電気的スパークが発生する。 そのスパークで約6 00〜1000Aの高い電流が発生して電子銃が接触した部分の導電性被膜と陰極線管の電気回路部品に損傷を与える問題が発生する。 【0014】酸化鉄は、一般的にFe 2 O 3の形態を有してFe 2+含量がほぼない赤色またはイエローブラウン色系統の酸化鉄が使用される。 この酸化鉄は陰極線管内部に流れる過電流を減らして陰極線管電気回路を保護するための抵抗体として使用される。 添加量は普通5〜30 wt%で好ましくは10〜20wt%程度である。 5w t%以下で添加すると電気的抵抗を高くする機能がなくなり30wt%以上添加すると電気抵抗が高くなるだけでなく、導電液を製造するとき黒鉛と酸化物とが均一に分散されなくなり、黒鉛と酸化物の比重差によって層分離が発生して所望の導電性塗料を製造し難しい。 【0015】本実施形態では既存の酸化鉄は、20μm 以上になると導電性被膜の表面性が悪くなるので20μ m以下であって分散性が良好な球状の酸化鉄を利用して、酸化鉄の役割を果たしながら通電機能を有するFe 2+が5wt%以上含有されていて粒子大きさの1000 Å以下の酸化鉄を添加する。 この第2の酸化鉄によってコンタクトスプリングの接触部位で電気抵抗が低下されて、従来のスパークが発生する問題を解決することができた。 【0016】研究結果、酸化鉄中にFe 2+含量が5wt %以上存在すると、即ち、Fe 2 O 3の酸化鉄を(Fe O)x(Fe 3 O 3 ) 1-xの構造(X≧0.1)にするとFe 2+によって導電性を有し、Fe 2+含量が増加することによって酸化鉄の色は黒色になって導電性がよくなる特性を有し、黒鉛との組合せ比によって所望の導電性被膜塗料を製造することができる。 【0017】Fe 2+含量が5wt%以下になると酸化鉄の導電性がほぼないので上記した所定の特性を得られない。 酸化鉄中Fe 2+含有量は化学分析方法で検出が可能である。 Fe 2+含有量が5wt%以上になると酸化鉄は磁性を有し、酸化鉄自体の保磁力が増加するので、地磁気によって電子ビームが歪曲される現像を防止するためのインナシールドの役割が低下し、また、酸化鉄の保磁力の影響で酸化鉄が存在するところに電子ビームが歪曲し易くなり、画質の低下をもたらす。 【0018】しかし、Fe 2+含量が5wt%以上なっても粒子径が1000Å以下になると磁性体は粒子が球状になって保磁力が1エルステッド以下になる。 したがって、一般的に使用される純鉄を利用したインナシールドの保磁力より小さくなるからインナシールドの機能を妨害しない。 すなわち、酸化鉄による画質の低下は発生せず、導電性のみを与えるので導電性被膜の電気抵抗を調節することができて、磁性分の比重も小さくなって、導電性被膜塗料中でよく分散されて黒鉛との層分離現像が発生しなくて塗布時均一な導電性被膜形成に有利である。 【0019】接着剤は黒鉛と酸化鉄をファンネルガラス面に強く接着する役割を担い、ガラスの成分と類似成分を有するけい酸塩が使用される。 一般的に使用されるけい酸塩はけい酸カリウムとけい酸ナトリウムを使用する。 このけい酸塩の添加量が5wt%未満になると接着力が弱くなって被膜剥離が発生してスパーク発生,シャドーマスクつまり等の問題が発生する。 またけい酸塩の量が30wt%以上に増加すると接着力はよくなるが、 けい酸塩でCO 2ガスが発生して、ファンネルをふっ酸で再洗浄して使用する時洗浄されないという問題点がある。 【0020】分散剤として使用されているポリメチレンビスナフタレンナトリウムスルホネートと濃縮ナフタレンスルホン酸のナトリウム塩は、黒鉛粒子の酸化鉄粒子を均一分散させて均一な外観及び抵抗値を形成させ、黒鉛と酸化鉄の沈澱を防止する機能を有する。 本発明の効果を立証するための実施例と比較例は次の通りである。 【0021】 【実施例】導電性被膜の導電性を調節するために粒子径5〜10μmの黒鉛粉末を10wt%添加し、平均粒子径が10μmであって鉄分中Fe 2+イオンのない球状の酸化鉄を8wt%添加し、平均粒子径が500Åであって鉄分中Fe 2+イオンが25wt%の酸化鉄を全体塗料構成物の含有量に対して15wt%添加し、けい酸カリウム,けい酸ナトリウムで構成されている接着剤を全体塗料構成物の含有量に対して12wt%添加し、ポリメチレンビスナフタレンナトリウムスルホネート(Polyme thylene bisnaphthalene sodium sulfonate )からなる分散剤を2wt%添加して濃縮ナフタレンスルホン酸のナトリウム塩(sodium salt of condenced naphthalene sulfonic acid)を1wt%添加し、純水を全体塗料構成物の含有量に対して60wt%添加して塗料構成物を作ってフローコーティング法でファンネルに塗布して導電性被膜を製造した。 【0022】<比較例>導電性被膜の導電性を調節するために平均粒子径10μmの黒鉛粉末を全体塗料構成物の含有量に対して15wt%添加し、平均粒子径10μ mであって鉄分中Fe 2+イオンのない球状の酸化鉄を全体塗料構成物の含有量に対して15wt%添加し、けい酸カリウム,けい酸ナトリウムで構成されている接着剤を全体塗料構成物の含有量に対して12wt%添加してポリメチレンビスナフタレンナトリウムスルホネート(Polymethylene bisnaphthalene sodium sulfonate ) からなる分散剤を2wt%添加し、濃縮ナフタレンスルホン酸のナトリウム塩(sodium salt of condenced nap hthalene sulfonic acid)を1wt%添加して純水を全体塗料構成物の含有量に対して60wt%添加して塗料構成物を作ってフローコーティング法でファンネルに塗布して導電性被膜を製造した。 【0023】実施例と比較例を使用して製造されたファンネルの膜の厚さ別電気抵抗を測定してファンネル部位別電気抵抗を図3に示した電気抵抗測定方法で評価して、コンタクトスプリング接触部位で10000回連続オン・オフした時電気的スパークによって導電性被膜の剥離の有否を調査した。 【0024】本発明の実施例と比較例において本発明の効果の調査結果は次の通りである。 表1から、本発明の実施例は厚さが薄くても厚くても導電性が5KΩ未満で、コンタクトスプリングとの接触部位で一般的に放電が発生して導電膜が破壊し易い電気抵抗領域(5KΩ) に達しないことが分かる。 表2と図4,図5からコンタクトスプリング接触部位で実際に電気抵抗が低く、放電が発生せず、導電膜が破壊されないことが分かる。 【0025】 【0026】 【0027】 【発明の効果】本発明の実施例と比較例からも分かるように、本発明は、平均粒子径が1000Å以下であってFe 2+イオンが5wt%以上含有された酸化鉄と、Fe 2+イオンが含有されずに平均粒子径が20μm以下の球状の酸化鉄と、黒鉛を使用して製造された導電液をファンネル内面に塗布したので、ファンネルの首部電気抵抗があまり低くならずにコンタクトスプリングが接触する部位の電気抵抗を低くなることができ、その結果カラー陰極線管のオン,オフ時に陰極線管の内部で放電が発生しない。 【図面の簡単な説明】 【図1】 カラー陰極線管の概略図。 【図2】 カラー陰極線管に内部導電膜と外部導電膜が形成された状態図。 【図3】 ファンネル側からみた電気抵抗測定方向図(2端子法で測定)。 【図4】 ファンネル内面の縁から首部までの電気抵抗図。 【図5】 コンタクトスプリング接触部と首部との電気抵抗比較結果図。 【符号の説明】 1 パネル、2 ファンネル、3 電子銃、4 シャドーマスク |