本発明は、DC回路におけるアークを検出するための方法に関し、本方法ではDC回路における高周波信号が測定および分析される。 また本発明は、アークを検出するための装置と、そのような装置を備えるインバータとに関する。
高電流と共に高電圧が発生する回路、特にDC(直流)回路では、アークが形成される危険性がある。 アークは、たとえば、メンテナンス作業(電流が流れるラインの切断)中や、スクリューコネクタまたはプラグインコネクタにおける接触部分の劣化の際に発生する場合もあれば、はんだ不良の箇所または不十分に締められたスクリューコネクタの接続部分や、ライン絶縁の損傷の際に発生する場合もある。 生じたアークは、通常は、アークを介して流れる電流を大幅に減らすことによって消され得るだけである。 (以下では省略された形でPV設備と呼ばれる)光起電力設備では、アークは、高いDC電圧と支配的な高い直流電流とのために軽視されてはならない問題であり、またPV設備における火災の主な原因の1つである。 したがって、発生したアークを検出するための確実な方法は非常に興味のあることである。 この場合、発生したアークは、安全性の理由から確実に検出される必要がある。 一方、自動的なスイッチオフのシステムがアークの検出に関連しており、一部の国で求められているように、そのシステムにおいてPV設備の自動的な再起動が防止される場合には特に、検出されたアークにおける誤検出の可能性はできるだけ低く維持される必要がある。 アークは通常、高周波の範囲に及ぶ広帯域のAC(交流)信号を放出する。 回路におけるこのようなAC信号の検出に基づく、アークを検出するための方法および装置は広く行き渡っており、特許文献1などに記載されている。 このような方法に関する問題の1つは、高周波の干渉信号が誤ってアークに原因があると考えられ、そのためにアークを検出するための装置の誤った作動をもたらし得ることである。 可能性のある干渉信号のソースは、たとえば、高周波の無線トランスミッター、監視されているシステムのすぐ近くを通り過ぎる電車もしくは路面電車の集電装置に短い時間に発生するアーク、あるいは、電磁シールドもしくは干渉信号の抑圧が不十分な電気デバイスまたは電子デバイスなどである。 隣接する回路のアークも、考慮されるシステムに結合して、アークを検出するための装置を誤って作動させる恐れがある。 PV設備には、並列である複数のDC回路がしばしば設けられ、それぞれのDC回路にはPV部分発生器とインバータとが配置される。 この回路で発生したアークから生じたのでない、回路におけるすべての高周波信号または高周波信号成分は、以下ではまとめて「干渉信号」と呼ばれ、それらのソースは「干渉源」または「干渉装置(interferer)」と呼ばれる。 アークが検出される信頼性を高めるため、特許文献2は、異なる周波数で動作する2つの狭帯域バンドパスフィルタを有するアーク検出システムを開示している。 これらのバンドパスフィルタによって求められた異なる2つの周波数範囲における信号成分を有する高周波信号が観測された場合にのみ、アークが発生したと判定される。 しかし、典型的なアークの周波数スペクトルと同様の幅の周波数スペクトルを干渉信号が有する場合、この干渉信号は、アークから生じる高周波信号と区別されない恐れがある。 特許文献3は、AC回路におけるアークを検出するための装置および方法を開示しており、この場合には、高周波の信号成分に加えて、回路における電流の変化率が検出される。 この変化率が、たとえば突発的な電流の上昇または下降である、本来アークのトリガとなり得る回路のプロセスを示し、またアークを示す高周波信号が同時に観測される場合には、アークが実際に生じていると見なされる。 しかし、PV設備におけるDC回路などの、全体的に極めて高い電流が生じる回路では特に、アークを引き起こすプロセスは、電流全体の変化率によって必ずしも明らかに検出され得るとは限らない。
国際公開第95/25374号
米国特許第7,633,727号明細書
欧州特許出願公開第1772936号明細書
したがって本発明の目的は、回路で実際に発生したアークに基づく高周波信号と干渉信号の確実な区別を可能とする、アークを検出するための方法を提供することである。 別の目的は、それに応じて干渉信号の影響を受けない、回路におけるアークを検出するための装置を提供することである。 本目的は、それぞれの独立クレームの特徴を有する方法および装置によって達成される。 有利な展開および改良は、従属クレームの主題である。
本発明による、DC回路におけるアークを検出するための方法は、以下のステップを含む。 DC回路を流れる電流のAC成分が測定および分析されて、AC成分における少なくとも1つのパラメータが求められ、DC回路を流れる電流におけるDC成分のレベルが変更される。 さらに、DC回路を流れる電流のレベルと、電流のAC成分における少なくとも1つのパラメータとの相関度が求められる。 求められた相関度に基づき、アークが検出されて信号で伝えられる。 アークについては、回路におけるアークによって放出された高い周波数のAC信号の特性と、このアークを通って流れる電流のレベルとの間に関係が存在する。 この関係は、高い周波数の信号を含む測定されたAC成分が、回路で発生したアークから実際に生じているかどうかを判定するために本発明に従って利用される。 このため、回路を流れる直流のレベルが変更され、測定された高い周波数の信号におけるパラメータが、回路を流れる直流のレベルと互いに関連している度合いが求められる。 アークは、このようにして求められた相関度に基づき、検出されたと考えられ、信号で伝えられる。 本方法は、干渉信号とアーク信号の確実な区別を可能にするが、これは、干渉信号、特に外部から回路に導入された干渉信号の特性が、考慮される回路を流れる直流のレベルによって大抵は影響されないためである。 本願の範囲においては、約10kHz(キロヘルツ)から約1MHz(メガヘルツ)までの範囲における周波数の信号が、関係のある高い周波数のAC信号であると考えられる。 本方法における好ましい一改良形態では、測定されたAC成分の信号強度がパラメータとして考慮される。 電流のレベルの増加に伴い信号強度が低下する場合に、求められた相関度が増加することが特に好ましい。 このようにして求められた相関度は、アークの発生を特に良く反映する。 本方法における好ましい別の改良形態では、電流のレベルは周期的な変調によって変更される。 相関は、変調の間に数回を通じての電流変化によって確実に検出され得る。 考慮される回路にインバータが配置されている場合、電流の変動または変調は、この場合にはインバータによって引き起こされることが好ましい。 この変動または変調は、電圧変換中のインバータにおける半導体パワースイッチのスイッチング動作によって引き起こされるか、または、MPPトラッキング方式を実行するインバータによって引き起こされることが特に好ましい。 このように、いずれにしてもインバータの動作中に生じる電流の変動が、本発明による方法を実行する際に利用され得る。 本方法における好ましい別の改良形態では、変調は、本方法を実行する装置の識別パラメータに依存している。 隣接する複数の回路が大型のシステムにおいて存在する場合、第1の回路で発生したアークが第2の回路におけるクロストークをもたらし、その結果、第2の回路にもAC信号が存在する場合がある。 ある状況のもとでは、AC信号が両方の回路で同時に検出される際にそれぞれの電流が同期して変調されるという問題があり、このことは、想定されるアークが両方の回路で特定されることにつながる。 述べられた改良形態では、装置は、それぞれの回路における変調プロセスを実行する。 それらの変調プロセスは、装置の識別パラメータに依存しており、そのため2つの装置に対して異なり、また変調周波数および/または変調シーケンスなどに関して異なる。 異なる変調プロセスであるため、相関は、実際にアークが燃焼している回路においてのみ見出される。 本方法における好ましい別の改良形態では、AC成分におけるパラメータがしきい値を超える場合に電流のレベルが変更される。 このように、回路にアークが表れているかどうかを判定するために電流のAC成分が最初に監視される。 さらなる方法ステップが実行されるのは、それ以降のみである。 この場合、しきい値は、AC成分におけるパラメータからローパスフィルタ処理を用いて求められることが好ましい。 アークは、ゆっくりと形成されるよりもむしろ通常は突発的に形成される。 しきい値は、ローパスフィルタ処理によって適応して求められる。 しきい値は、一方では、干渉信号の変化にゆっくりと追従することができるため干渉信号が誤って検出されることがなく、他方では、突発的に生じるアークによって超えられる。 本方法における好ましい別の改良形態では、アークが検出された後の次のさらなるステップが含まれる。 電流におけるDC成分のレベルがゼロまたはほぼゼロまで減らされ、電流におけるAC成分のさらなる測定が行われる。 次に、上記のさらなる測定においてAC信号が依然として存在するかどうかが判定される。 AC信号が存在する場合にはパラレルアーク(parallel arc)の存在が信号で伝えられる。 AC信号がもはや存在しないか、または極めて低いレベルまで低下した場合にはシリーズアーク(series arc)が発生したことが信号で伝えられる。 このように本方法は、可能性のある2つの種類のアーク、すなわち、一方ではPV発生器と電気的に直列に発生するシリーズアークと、PV発生器、またはPV発生器の一部と並列に発生するパラレルアークとを区別するために用いることもできる。 本発明による、DC回路におけるアークを検出するための装置は、回路を流れる電流におけるDC成分のレベルを変更するための手段と、電流における測定されたAC成分を分析し、AC成分における少なくとも1つのパラメータを求めるための評価ユニットとを備える。 さらに、回路を流れる上記電流成分のレベルと、AC成分における少なくとも1つのパラメータとの相関度を求めるための相関ユニットと、アークの存在が、求められた相関度に基づいて信号で伝えられるシグナル出力部とが設けられる。 本装置に関係する利点は、本方法における利点と一致している。 以下では、4つの図を使い、例示的実施形態によって本発明をさらに詳しく説明する。
アークを検出するための装置を有するPV設備の概略図を示す。 異なる電流におけるアークの信号スペクトルを含むグラフを示す。 時間に基づく、回路で測定された信号の概略的なグラフを示す。 回路におけるアークを検出するための方法における例示的実施形態のフローチャートを示す。
図1は、アークを検出するための装置10を有するPV設備1の基本構成を概略的に示す。 PV設備1は光起電力(PV)発生器2を有しており、このPV発生器2からは直流ライン3、4がインバータ5のDC入力段につながり、インバータ5はエネルギー供給網6に接続されている。 PV発生器2は、図1では、単一の光起電力セル用の回路記号によって例として示されている。 図示されているPV設備の一実装形態では、PV発生器2は、多数の光起電力セルを含む単一の光起電力(PV)モジュールでもよい。 同様にPV発生器2は、いわゆるストリングである、複数のPVモジュールを備える直列回路でもよい。 PVモジュールを備える並列回路、または、直列回路と並列回路の組み合わせも可能である。 エネルギー供給網6は、公共の供給システムでもよく、または私設のシステム(単独動作、またはアイランドオペレーション)でもよい。 インバータ5は、たとえば、エネルギー供給網6に三相供給するための3つのAC出力部を有して設計されている。 単相設計などの、図示されている三相設計以外のインバータ5、および/または、エネルギー供給網6の設計も可能であることは言うまでもない。 また図1では、本願の範囲において不可欠である、PV設備1の一部だけが示されている。 たとえば、切断用素子もしくはスイッチング素子、フィルタ、モニタ用デバイス、または変圧器である、インバータ5のDC側またはAC側に配置されたさらなる素子は、説明を明瞭にするために示されていない。 図1では、PV発生器2、直流ライン3、4、および、PV設備におけるインバータ5のDC入力段によって形成された回路において発生し得る2つのアークが例として示されている。 第1のアークは、ここでは例として直流ライン3である、直流ライン3、4の一方の内側における遮断部分においてPV発生器2と直列に電気的に発生するシリーズアーク7である。 第2のアークは、PV発生器2に対して並列に発生するパラレルアーク8である。 パラレルアークは、基本的には、異なる電位が行き渡っている、回路における2点の間に発生し得る。 したがってパラレルアークは、PV発生器2の一部、すなわち、たとえば単一のPVモジュールに対しても並列に発生し得る。
アークを検出するための装置10は、回路を流れる電流I、特に、回路を流れる電流の高周波成分を求めるための電流センサ11を備える。 以下では、電流IのDC成分はI DCと示され、高い周波数のAC成分はI ACと示される。 この場合、電流センサ11は、ここではたとえば直流ライン4である、直流ライン3、4の一方と相互に作用する結合コイル(ピックアップコイル)の形態におけるものである。 電流センサ11の一実装形態では、たとえばロゴスキーコイル、または、コイルが回路に巻かれているDC絶縁用トランスを用いることが可能である。 同様に、ホールセンサ、または、低インピーダンスの分流器を直流ライン3、4の一方において用いることも可能である。 電流センサ11によってタップオフされた信号は、信号増幅用素子および信号フィルタリング用素子を備え得る評価ユニット12に供給される。 評価ユニット12は、出力部において、AC成分I ACの特性(パラメータ)を表す信号を供給する。 このような特性は、アークがスペクトルエネルギーを特徴として有する、高周波信号における1つまたは複数の所定の周波数範囲、特に、既に前で述べられた約10kHzから約1MHzまでの範囲において検出されることが好ましい信号強度などでもよい。 また装置10は、電流プリセットライン14を介してインバータ5に接続された変調発生器13を備える。 変調発生器13は、電流プリセットライン14を用い、インバータ5を介して、DC回路に流れる電流Iに影響を及ぼすことができる。 この電流は、通常、PV発生器2が最大電力の動作点で動作するように、MPPトラッキングとも呼ばれるいわゆるMPP(最大電力点)トラッキング方式において、インバータ5によって変更される。 変調発生器13は、電流プリセットライン14を介し、本来最適な動作点において設定される電流と異なるように電流Iを変更することができる。 この場合、電流の減少および/または増加は、変動と考えることができる。 変調発生器13は、たとえば正弦波もしくは方形波の変動、パルスコード方式もしくはバイナリコード方式による変動、または、ウェーブレットの形態である変動などの、あらゆる所望のパターンにおける周期的または非周期的な電流変動を作り出すことができる。 評価ユニット12および変調発生器13は、相関ユニット15に接続されている。 評価ユニット12は、回路において測定された高周波信号における信号強度などの、電流IのAC成分I ACにおける考慮されたパラメータを相関ユニット15に送り、変調発生器13は、電流IのDC成分I DCにおける電流変動を表す信号を送る。 相関ユニット15は、供給された2つの信号の相関度を求める。 この相関度は、信号の変化が互いと時間的に関係がある度合いを反映する。 相関度を求めるためには、たとえばフーリエ変換どうしの関係、特に、一実装形態では高速フーリエ変換(FFT)どうしの関係を用いる数学的な相関関数が適している。 特に、電流Iがウェーブレットの形態で変化する場合、相関度は、電流の変動とパラメータの時間プロフィールとから、相互相関により代替的に求められてもよい。 相関度を表す可能な方法の1つは、−1から+1までの値の範囲に相関をマッピングすることであり、この場合には、+1の値は最大である正の相関を示し、−1の値は最大である負の相関を示し、さらに0の値は相関がないことを示す。 ある信号における増加が他の信号における増加に関係する場合の相関は、正の相関と理解され得る。 負の相関は、ある信号における増加が他の信号における減少に関係づけられる場合の相関である。 このようにして定められた相関度の絶対値が大きい場合には相関度が高い。 相関ユニット15は、相関度に応じて、アークを示す信号をシグナル出力部16において出力する。 図1に示されている例示的実施形態では、上記の信号はシグナルデバイス20に供給され、シグナルデバイス20は、アークを消すためにPVシステムのマニュアルスイッチオフを開始するためなどに用いられ得る。 あるいは、アークを消すために電流を自動的に遮断するように、シグナル出力部16において出力される信号が、インバータ5、または、回路に配置された切断用素子に供給されるようになされてもよい。 図示されているように、装置10は別ユニットの形態でもよい。 しかし、装置10をインバータ5に組み込むことが可能であることも好ましい。 以下では、図1に示されているPV設備などによって行われ得る、回路におけるアークを検出するための方法を、図2から図4を用いて説明する。 以下で用いられる参照符号は、たとえば図1に示されている例示的実施形態に関係している。 図2は、様々な電流強度の直流が流れるアークにおいて測定された信号スペクトルをグラフで示す。 グラフのY軸上には、任意のユニット(a.u.)における回路のAC電流I ACの信号強度|I AC |が、グラフのX軸上にプロットされた周波数に対して示されている。 両方の軸は対数目盛を有している。 このグラフでは、測定された電流信号における3つの信号スペクトル30、31、32(周波数スペクトル)が示されている。 信号スペクトル31は、アークを通って流れるわずかな直流の場合におけるアークのスペクトルを示す。 これに対して信号スペクトル32は、ほぼ5倍大きい電流が流れるアークのスペクトルである。 信号スペクトル30は、比較のため、燃焼アークのない、同じ回路におけるスペクトルを示すために用いられている。 比較的小さい電流を伴うアークの信号スペクトル31は、図示されている周波数範囲全体に実質的にわたり、比較的大きい直流を伴うアークの信号スペクトル32に比べて、比較的大きい信号強度を有していることがわかる。 しかし、これらの2つの信号スペクトル31、32では、図示されている周波数範囲全体において、信号強度が基準の信号スペクトル30より高く、また、短時間の干渉に基づくものであるか、または、インバータにおけるスイッチングプロセスの高調波をなすものである、信号スペクトル30〜32における個々のピークは反映されていない。 測定されたこれらの結果は、信号強度と、アークを通って流れる電流とが、互いに負の相関を有することを明らかに示している。 図3は、図2によって示された負の相関が、アークを検出するためにどのように利用され得るかを示す。 図3は、上側の部分において、たとえば図1におけるPV設備1のDC回路において測定された電流Iの時間依存性を示す。 測定された電流IのAC成分I ACは、図の下側の部分に同じスケールで示されている。 時刻t<t *では、顕著なAC成分をもたない、大きさI 0である一定の直流Iがまず最初に観測される。 時刻t=t *では、測定された電流信号の中にノイズ信号の形態であるかなりのAC成分I ACが生じる。 これらのAC成分について可能性のある要因は、アークの形成であり得る。 次に、時刻t 0で始まり、ほぼ正弦波のプロフィールを有し、また以下では変調とも呼ばれる、電流IにおけるDC成分I DCのレベルの周期的な低周波の変動が実行される。 このグラフでは、カーブの変わり目は、時刻t 1 、t 2 、t 3 、t 4でおおよそ示されている。 測定された電流のDC成分I DCは、低周波の変調の過程にわたり、時刻t 1とt 2の間、および時刻t 3とt 4の間において減少し、t 2とt 3の間の介在期間にI 0である元の値に再度達する。 特に、図の下側の部分において抽出された高い周波数のAC成分I ACの場合には、電流のDC成分が減少するt 1とt 2の期間、およびt 3とt 4の期間に高い周波数のAC成分I ACが大幅に増加し、t 2とt 3の期間、および時刻t>t 4の期間には、時刻t 0における本来の信号強度の値まで再度低下することがわかる。 このように、回路を流れるDC成分I DCと、その回路において観測される高い周波数のAC成分I ACとの間には高い負の相関が示されている。 したがって、観測された高い周波数のAC信号は、この回路で発生したアークに基づくものである可能性が高い。 図4は、回路におけるアークを検出するための方法の例示的実施形態におけるフローチャートを示す。 第1のステップS1では、回路は、その回路のDC成分I DCが変調されないようにして動作する。 このことは、たとえば図1の例示的実施形態における変調発生器13を作動させないことによって行われ得る。 第2のステップS2では、回路を流れる電流IのAC成分I ACが、たとえば所定の周波数帯における自身の信号強度|I AC |をAC成分I ACの特性として求めることによって測定および分析される。 ステップS3では、求められた信号強度が所定のしきい値|I * |と比較される。 I *は、信号強度のしきい値に相当する電流しきい値である。 この場合、しきい値|I * |は、あらかじめ永続的に定められていてもよく、または、適応方式において回路における現在の状態に適応してもよい。 適応方式の一例は、以降でさらに詳しく説明される。 信号強度が所定のしきい値を下まわる場合、本方法はステップS2に分岐して戻る。 しかし、ステップS3において信号強度がしきい値|I * |を上まわる信号が観測された場合、これはアークの発生の表れであると考えられ、本方法はステップS4に分岐する。 図3の例では、この分岐は時刻t=t *において行われる。 ステップS4では、たとえば図3の時刻t 0において見られるように、回路における電流Iのレベルの変調が開始される。 図1の例示的実施形態では、変調発生器13によって、対応するほぼ正弦波の変調が生み出され、この変調は、電流プリセットライン14およびインバータ5を介して回路において行われ得る。 続くステップS5では、回路における電流のAC成分I ACが再度測定および分析される。 この場合、測定は、複数の変調周期のうちのある周期にわたることが好ましい、測定値の測定シーケンスとして行われる。 次のステップS6では、I AC信号における信号強度が電流のDC成分I DCにおける変調信号と互いに関連しているかどうかが判定される。 互いに関連している場合、ステップS7において、たとえば対応する信号を図1のシグナル出力部16において出力することによってアークが信号で伝えられる。 代替の改良形態では、アークが信号で伝えられるだけでなく、ステップS7において、回路における電流を短時間もしくは永続的に減らすか、または電流を完全に遮断する(電流をゼロまで減らす)ことによってアークが消されるようになされてもよい。 このことにより、検出されたアークは、たとえばそのアークが図1で示されているシリーズアーク7である場合に消され得る。 さらなる改良形態では、回路におけるDC電流がゼロまたはほぼゼロまで減らされた後に電流のAC成分が再度測定される。 次に、このさらなる測定によってAC信号が依然として存在しているかどうかが判定される。 AC信号が依然として存在している場合、アークは消されておらず、観測された信号はパラレルアークに関連づけられ得る。 このようにして、パラレルアークの存在が信号で伝えられる。 逆に、AC信号がもはや存在しないか、または、干渉装置もしくはノイズ信号に原因があると考えられてもよい極めて低いレベルまでAC信号が低下した場合には、最初に判定されたアークがシリーズアークであったことが信号で伝えられる。 I AC信号の信号強度と電流の変調信号との相関がステップS6で判定されない場合、このことは、ステップS2およびS3で観測された信号が、回路で発生したアークから生じておらず、むしろ外部または内部の干渉源に起因する干渉信号であることの表れであると考えることができる。 この場合には、本方法はステップS1に分岐して戻り、ステップS1では、たとえば図1の変調発生器13を作動させないことによって、一定であるDC成分I DCが回路に設定される。 観測された信号がその場合に干渉源に原因があるという情報は、この状況に本方法を自己適応法によって適応させるために用いられてもよい。 このため、ステップ3における判定が基づくしきい値|I * |は、たとえば、測定された信号がアークの発生の表れであると考えられないように変更されてもよい。 また、観測される信号ができるだけ小さいスペクトル成分を有する周波数範囲を選択することなどによって、ステップS2で実行される信号分析が適応化されることも考えられる。 観測された信号がその場合に干渉源に原因があるという情報は、干渉信号の存在をシグナル出力部16を介して他のデバイスに知らせるために用いられてもよい。 この点において、他のデバイスは、隣接するインバータ、または、設備の監視手段もしくは設備のオペレータに信号を送るための通信デバイスなどである。 別の適応方式では、アークが通常はゆっくりと発生するのではなく、むしろ突発的に生じることが利用される。 この方式では、しきい値|I * |は、ステップS2で繰り返し行われる信号強度|I AC |の測定における移動平均値から連続的に求められる。 測定された信号強度におけるローパスフィルタ処理は、移動平均値を求めることに等しい。 たとえば、しきい値|I * |は、移動平均値の、たとえば3倍である倍数として設定されてもよい。 結果として生じるアークは、信号強度|I AC |における突発的な上昇に関係しており、その信号強度|I AC |は、その時に移動平均値を少なくとも一時的に大幅に超えて、しきい値|I * |を上まわる。 この場合、移動平均値は時定数を用いて求められ、この時定数は、信号強度|I AC |における突発的な上昇に追従しないように十分に大きく、また、周囲条件の変化による回路のインピーダンス変化などに基づく信号強度のゆっくりとした変化にしきい値を適応させるのに十分に小さい。 本方法における代替の改良形態では、電流IのDC成分が永続的に変調されるようになされ得る。 この場合、この変調は、具体的には上記で説明されたように変調発生器13などを用いて適用され得る。 しかし、変調としては、回路に固有に存在する周期的な電流変動にたよることも可能である。 そのような繰り返される好適な電流変動の要因は、DC−DCコンバータ、または、インバータ5のACブリッジにおけるパワー半導体スイッチのスイッチングサイクルなどでもよい。 この場合、これらのスイッチングサイクルは、DC−DCコンバータ、または、直流を交流に変換するためのインバータの内部で行われる変調方式に基づいている。 このプロセスで用いられる変調方式の例は、サインデルタ変調方式、または空間ベクトル変調方式である。 エネルギー供給網6において支配的であるシステム周波数と相互に関連している周期的な電流変動が、この意味で変調と考えられてもよい。 電流変動につながる上記のプロセスは、特徴的な高周波信号をアークが通常放出する周波数範囲と比べると、低周波の周波数範囲で行われる。 また、述べられた方法は、複数のDC回路がPVシステム内部の別々のインバータにそれぞれ割り当てられている場合にはとりわけ有利に用いることができる。 しかし、ある状況のもとでは、隣接するインバータが、それらに割り当てられたDC回路においてそれぞれの電流における変調を同時に開始し、次に高い周波数の信号が検出された後に上記の変調を同期して行うという問題があり、このことは、想定されるアークが両方の回路で特定されることにつながり得る。 この問題を防ぐため、DC回路ごとに時間的な変調プロフィールが個別に構成されるようになされてもよい。 これは、たとえば装置10どうしの間の通信によって行われもよく、または、設備監視手段などの上位制御ユニットによって行われてもよい。 その間には、開始時刻、または、変調周波数もしくは変調シーケンスが、上位制御ユニットによって個々に同意されるかまたはあらかじめ定められる。 シリアル番号などの、回路で用いられる装置10またはインバータ5における固有の識別パラメータを用いて個々の変調パターンを作り出すことも考えられる。 上記の例示的実施形態では、高い周波数の信号のレベルと、回路を流れる直流のレベルとを比較することによって、相関度がそれぞれの場合において求められた。 代替的または付加的には、特定のスペクトル範囲において観測されたパワー、または、特定のスペクトル範囲において観測された最大値、または、信号のスペクトルにおける共振に似た形における半値幅が、回路のAC電圧成分における考慮された特性またはパラメータとして、すなわち、相関を求めるための根拠として用いられてもよい。 それぞれのパラメータは、その他の点に関しては、絶対項(absolute term)において考慮されてもよく、または、測定された電流のレベル、もしくは回路によって伝送される電力の大きさなどの、その回路におけるさらなるパラメータに関連していてもよい。
1 PV設備 2 PV発生器 3、4 直流ライン(DCライン) 5 インバータ 6 エネルギー供給網 7 (シリーズ)アーク 8 (パラレル)アーク 10 アークを検出するための装置 11 電流センサ 12 評価ユニット 13 変調発生器 14 電流プリセットライン 15 相関ユニット 16 シグナル出力部 20 シグナルデバイス 30 (基準)信号スペクトル 31、32 アークが存在する場合の信号スペクトル |