【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、スイッチをディスプレイ上に設置することによって、前記ディスプレイに表示される画像を前記スイッチに伝送し、表示することができるディスプレイスイッチに関する。 【0002】 【従来の技術】本発明の発明者は、平成4年7月24日に、LCD(液晶ディスプレイ)及びELD(エレクトロルミネセントディスプレイ)等のディスプレイ(画面)上に押しボタンスイッチを設置して、前記ディスプレイ画面の情報(画像)を前記押しボタンスイッチに伝送、表示して使用することができるディスプレイ用プッシュスイッチを出願した(特願平4−239938 号)。 【0003】特願平4−239938号に示されるディスプレイ用プッシュスイッチは、ディスプレイの画面をスイッチの透明なボタンを通して視認できるように、押しボタンスイッチをディスプレイ(画面)上に設置したものである。 【0004】このディスプレイ用プッシュスイッチにおいて、ボタンを通して視える画像の視認性を高めようとする場合は、次のような構成を採っていた。 第1は、ディスプレイ画面と押しボタンの間に光ファイバイメージガイドを前記ディスプレイ画面(すなわち、画面上部の透明板)に接して設けるという構成であった。 【0005】第2は、ディスプレイ画面と押しボタンの間にレンズを設けるという構成であた。 【0006】第3は、ディスプレイ画面と押しボタンの間に光ファイバイメージガイド及びレンズの両方を設け、前記レンズは、ディスプレイ画面と光ファイバイメージガイドの間に設け、前記光ファイバイメージガイド(以後、イメージガイドと称する)は、前記押しボタンの直下に設けるという構成であった。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】通常、ディスプレイ画面(画素)の上部には、1枚または複数枚のガラスまたは樹脂製等の透明板、保護板、拡散板あるいは偏光板などの板状の部材が設けられている。 以後、これらの板状の部材を表面板という用語で統一して呼ぶことにする。 【0008】前記第1の構成のディスプレイ用プッシュスイッチは、次のような問題点を有していた。 イメージガイドは、端面に結像した像をもう一方の端面に伝送する素子であり、次のような特性がある。 【0009】ディスプレイの表示画面(画素)とイメージガイドの端面との間に距離が存在すると、ぼけた像がイメージガイドの端面に入射し、ぼけた像を他方の端面に伝送することになる。 しかも、ディスプレイの表示画面(画素)とイメージガイドの端面との間の距離が長くなればなるほど、端面から他方の端面に伝送された像の前記他方の端面での視野角が狭くなる。 【0010】従って、イメージガイドを設けた構成のディスプレイ用プッシュスイッチは、厳密に言えば、ピンボケした視野角の狭い画像しか、表示できないという欠点があった。 【0011】イメージガイドを設けた構成のディスプレイ用プッシュスイッチは、LCDやELDのように画面(画素)上部に設けられている表面板が薄く、前記画面(画素)から前記表面板の表面までの距離が短いディスプレイでは、実用に耐え得る像が得られることが多いので、それらのディスプレイ上には、設置することができる。 【0012】しかし、たとえディスプレイ画面(画素) 上部の表面板に密着させて、イメージガイドを設置したとしても、押しボタンスイッチを設置できるディスプレイの種類には、制限があった。 【0013】具体的には、CRT、PDP(プラズマディスプレイ)及びVFD(蛍光表示管)等の画面(画素)と表面板との間にある程度の間隔があるディスプレイには、全く使用することができなかった。 【0014】また、イメージガイドを設けた構成のディスプレイ用プッシュスイッチは、押しボタン(キートップ部)とイメージガイドとを所定の間隔、すなわちボタンストローク分の距離を、空けておく必要があるという欠点があった。 なぜなら、そうしないと、押しボタンを押し込んだときに押しボタンがイメージガイドの端面にぶつかってしまうからである。 【0015】つまり、イメージガイドを設けた構成のディスプレイ用プッシュスイッチは、画像情報を押しボタン(キートップ部)そのものにではなく、所定の距離だけ前記押しボタン下方のイメージガイドの端面に表示しているということになる。 【0016】従って、押しボタン越しに押しボタンの少し下方に位置しているイメージガイドの端面に表示される画像を視ていることになるので、視認性にやや、難があった。 【0017】前記第2の構成のディスプレイ用プッシュスイッチは、次のような問題点を有していた。 一般に、 レンズの焦点距離を短くしようとすれば、レンズ球面の曲率半径を小さくしなければならない。 それは、レンズの口径を小さくすることだから、レンズの視野(写像する範囲)を狭く、写像された像の歪みも強くなることを意味する。 ディスプレイ用プッシュスイッチに設置するレンズは、焦点距離が短く、曲率半径が小さく、視野の狭いものしか使えなかったわけである。 【0018】前記第2の構成のディスプレイ用プッシュスイッチにおいては、ある程度の範囲の画像を視るためには、レンズの大きさ(曲率半径)を大きくしなければならず、ということは、レンズの焦点距離及び口径も大きくなることを意味し、ディスプレイ用プッシュスイッチの縦、横及び高さが大きくなるということである。 【0019】また、レンズを設けた構成のディスプレイ用プッシュスイッチは、視点の位置を動かすと、画像も動いてしまうという欠点もあった。 【0020】前記第3の構成のディスプレイ用プッシュスイッチには、次のような問題点があった。 ディスプレイ上に設置する押しボタンスイッチの大きさが、前記第1の構成のディスプレイ用プッシュスイッチよりも大きくなることはもちろん、前記第2の構成のディスプレイ用プッシュスイッチと比べても、さらに大きくなってしまうということである。 【0021】前記第3の構成のディスプレイ用プッシュスイッチは、イメージガイドの端面に結像させるディスプレイ画面の範囲を広くすればするほど、レンズの焦点距離を長く、レンズの大きさ(曲率半径)を大きく、ディスプレイの表面板から前記レンズまでの距離及び前記レンズから前記イメージガイドの一方の端面までの距離を長くする必要があるから、ディスプレイ用プッシュスイッチのサイズが非常に大きくなってしまうという欠点があった。 【0022】また、前記第3の構成のディスプレイ用プッシュスイッチは、イメージガイドの一方の端面に結像し、他方の端面に伝送され、表示される像は、ディスプレイ画面の像とは、上下が反転した倒立像になってしまうという欠点もあった。 【0023】本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ディスプレイ画面に表示された像の正立実像の映像をスイッチのキートップ部(ボタン)に表示することができ、かつ、ディスプレイ画面(画素)から離れた位置にスイッチを設置しても前記キートップに表示される画像がピンボケすることのない、従って種々のディスプレイに設置することができるディスプレイスイッチを提供することにある。 【0024】また、従来のレンズを設けた構成のディスプレイ用プッシュスイッチよりも小型のディスプレイスイッチを提供しようとするものである。 【0025】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明におけるディスプレイスイッチは、任意のディスプレイ(画面)上、すなわち、表面板の上部にスイッチを設置し、前記スイッチの内部の所定の位置に、屈折率分布型レンズ素子をその両端面がそれぞれ一つの平面を形成するように、多数、配列させたレンズ部材を設け、スイッチのキートップ部には、マット面を設けたものである。 【0026】前記レンズ部材を形成する各々の屈折率分布型レンズ素子の長さは、前記ディスプレイの画面に表示される画像を前記スイッチのキートップ部のマット面に正立の像として結像させる長さのものを使用する。 【0027】なお、屈折率分布型レンズ素子は、結像作用を持つ光ファイバで、その断面が中心対称の屈折率分布を持ち、その値が縁に近づくに従って連続的に減少するロッド型のレンズであり、通常セルフォックレンズと呼ばれている。 前記レンズ部材を以後、多数列セルフォックレンズと記述することにする。 【0028】 【作用】CRT、LCD、ELD、PDP及びVFD等のディスプレイ画面(画素)に表示された(物体)像から発した光線は、前記ディスプレイ画面上方の所定の位置に設置されているスイッチの多数列セルフォックレンズの端面に入射する。 前記多数列セルフォックレンズに入射した光線は、多数列セルフォックレンズの内部を蛇行しながら他方の端面から出射する。 【0029】多数列セルフォックレンズは、レンズ内を進行する光線の蛇行周期長の3/4の長さのときに、所定の位置にある物体像を所定の位置に正立の等倍実像として結像させる性質を持っているレンズである。 【0030】従って、前記ディスプレイ画面(画素)の像は、所定の位置に正立実像として写像されるので、その位置にキートップ部を設け、キートップ部にマット面、すなわち艶消し(粗)面を設けておけば、キートップ部(ボタン)にディスプレイ画面に表示された画像の正立像が表示される。 ディスプレイスイッチの利用者は、キートップ部に写っている画像を視ながらスイッチをONまたはOFFすることができる。 【0031】 【実施例】図面を参照して、実施例を説明する。 図1 は、本発明に係わるディスプレイスイッチの略縦断面図であり、スイッチとして、例えば押しボタンスイッチ3 を1個設置した様子を示している。 スイッチの種類及び数は、当業者が任意に設計すればよい。 【0032】ディスプレイ8には、例えばCRT、LC D、ELD、PDP及びVFD等を使用することができるが、その他の電子式のディスプレイを使用してもよい。 画素面1は、画像が表示される平面または曲面(C RTの場合は曲面となる)であり、画素面1の上方には、表面板2が設けられている。 表面板2の上部には、 押しボタンスイッチ3を設置している。 押しボタンスイッチ3は、表面板2の表面に接触させて設けてもよいし、接触させずに設けてもよい。 【0033】押しボタンスイッチ3内部には、多数列セルフォックレンズ4を設ける。 多数列セルフォックレンズ4を設ける位置は、画素面1に表示された画像(物体像)が多数列セルフォックレンズ4によって、写像されるべき面に正立実像として得られるような位置に設ける。 【0034】キートップ部5は、キーットプ部内面6またはキートップ部表面7のどちらかの面をマット面としておく。 キートップ部5を設ける位置は、前記マット面にディスプレイ8の画素面1に表示される像が、正立実像として写し出されるような位置に設定しておく。 【0035】多数列セルフォックレンズ4の視野(写像する範囲)は、屈折率分布型レンズ素子を縦及び横方向に配列すれば、配列した分だけ広くなるので、通常の凸レンズでいうところの焦点距離が短い屈折率分布型レンズ素子を多数、配列した多数列セルフォックレンズでも、任意に視野、すなわち写像するべきディスプレイ8 の画素面1の画像の範囲を任意に設計できる。 【0036】つまり、屈折率分布型レンズ素子の長さを(長く)変更することなしに、かつ、焦点距離も変更せずに、視野を広くできるので、多数列セルフォックレンズのサイズをコンパクトなサイズに押さえることができ、スイッチのサイズも小さくすることができる訳である。 【0037】なお、図1のディスプレイスイッチは、接点開閉機構は、図示していないが、接点開閉機構は、マイクロスイッチ、リードスイッチまたはその他のスイッチ機構を使用して、当業者が任意に設計すればよい。 【0038】 【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載される効果を奏する。 スイッチのキートップ部5(ボタン)に、ディスプレイ8の画素面1に表示される画像の正立実像の映像を表示することができ、かつ、多数列セルフォックレンズ4は、ディスプレイ8の画素面1に非接触で、物体像(ディスプレイ8の画素面1に表示される像)を所定の位置へ写像し、 正立の像として結像させるので、ディスプレイの画素面1から離れた位置にスイッチを設置してもキートップ部5に表示される画像がピンボケすることのない、視野角の広い、種々のディスプレイに設置することが可能なディスプレイスイッチを提供することができる。 【0039】また、従来のレンズを設けた構成のディスプレイ用プッシュスイッチやレンズ及びイメージガイドの両方を設けた構成のディスプレイ用プッシュスイッチよりも小型のディスプレイスイッチを提供することが可能である。 【図面の簡単な説明】 【図1】ディスプレイスイッチの略縦断面図 【符号の説明】 1 画素面 2 表面板 3 押しボタンスイッチ 4 多数列セルフォックレンズ 5 キートップ部 6 キートップ部内面 7 キートップ部表面 8 ディスプレイ |