【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動車のバッテリー等に連なる動力電線を導通状態と非導通状態とに切り換えるために用いられるブレーカ装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、この種のブレーカ装置として、特開平9−223439号公報に記載されたものが知られている。 このブレーカ装置は、図7に示すように、ブレーカ本体1に2本の円柱状の固定電極2,2を起立して備え、これら両固定電極2,2に、可動電極4に備えた一対の円筒状の脚部5,5を嵌合させて、電線Cを導通状態と非導通状態とに切り換える構成となっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記したブレーカ装置は、固定電極2,2を別々に2本起立した構造であるため、小型化の要請に応えるのが困難であった。 そこで、本願出願人が開発中のブレーカ装置では、図8に示すように、一対の固定電極6,6を、ブレーカ本体から起立した合成樹脂製の突壁7の表裏に配置することで一箇所に集めて小型化を図り、この突壁7に門形の可動電極8を冠着させて、その可動電極8に備えた一対の脚片8A,8Aを各固定電極6,6に接触させることで、両固定電極6,6の間を非導通状態から導通状態に切り換える構成とした。 【0004】ところが、固定電極6を単に突壁7の表裏両面に設けただけの構成では、上方の開口部から作業者の手指や異物が進入したときに固定電極6の先端に触れてしまうおそれがある。 これを防ぐためには、同図に示すように、突壁7の上端に保護突部9Aを一体に設け、 これによって固定電極6の上方を覆う構成が考えられる。 しかしながら、そうすると今度は、可動電極8の挿入時にその脚片8Aの先端が保護突部9Aを強く擦ることになるから、保護突部9Aの表面が脚片8Aによって削り取られ、削り取られた樹脂粉が固定電極6と脚片8 Aとの間に挟み込まれて電気的接触が不安定になるという問題を生ずる。 【0005】本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小型化が可能であると共に、固定電極への不用意な接触を防止でき、かつ、固定電極と可動電極との間の電気的接触の不安定化を防止できるブレーカ装置の提供を目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】請求項1に係るブレーカ装置は、絶縁性の突壁を挟んで配置された一対の固定電極と、前記突壁の先端側から被せることで前記固定電極間を短絡させる可動電極を備えてなるブレーカ装置において、前記突壁の先端部には前記固定電極の先端面を突壁の先端側から覆う絶縁性の保護突部が設けられ、この突壁の先端部または可動電極には可動電極の挿入方向に関して固定電極から外れる位置において可動電極を押し広げる突条を設けたところに特徴を有する。 請求項2のブレーカ装置は、前記突条を突壁の先端部に保護突部よりも固定電極の板面からより離れる方向に突出するように形成したところに特徴を有し、請求項3のブレーカ装置は、突壁の先端部に保護突部よりも固定電極の板面からより離れる方向に突出するように形成したところに特徴を有する。 そして、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のブレーカ装置において、突条を固定電極の幅方向の両側に位置して設けたところに特徴を有する。 【0007】 【発明の作用及び効果】<請求項1の発明>請求項1の構成では、一対の固定電極を突壁を挟んで一箇所に集めたから、固定電極周りがコンパクトになって、ブレーカ装置の小型化が図られる。 また、突壁の先端部には、固定電極の先端面を覆う絶縁性の保護突部があるから、固定電極の上方から作業者の手指や異物が進入しても、それらが固定電極に触れることを極力防止することができる。 しかも、前記突壁または可動電極には、可動電極を押し広げる突条を形成しているから、可動電極が被せられるときにこの突条によって可動電極が保護突部から離れるように弾性変形させられる。 このとき、突壁に突条を形成した請求項2の構成の場合には、可動電極と突条との間の摩擦によって突条が削り取られることが考えられるが、その突条は可動電極の挿入方向に関して固定電極から外れる位置に形成されているから、樹脂の削り粉が発生したとしても、それが固定電極と可動電極との間に挟み込まれて電気的接触が不安定になることはない。 また、可動電極に突条を形成した請求項3の構成の場合には、可動電極の突条と突壁との摩擦によって突壁が削り取られることが考えられるが、その突条は可動電極の挿入方向に関して固定電極から外れる位置に形成されているから、やはり、樹脂の削り粉が発生したとしても、 それが固定電極と可動電極との間に挟み込まれて電気的接触が不安定になることはない。 【0008】<請求項4の発明>請求項4の構成では、 突条が固定電極の幅方向の両側に位置しているから、可動電極は保護突部から離れる方向に安定的に持ち上げられ、可動電極の挿入作業を円滑に行うことができるようになる。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図1 ないし図5に基づいて説明する。 本実施形態のブレーカ装置は、電気自動車の動力電線の途中に設けられて、この動力電線を導通状態と非導通状態とに切り換えるために用いられる。 このブレーカ装置に備えたハウジング1 0は、上ハウジング20と下ハウジング40とならなる。 上ハウジング20は図3に示すように、後述するヒューズ を上方から覆うヒューズカバー部21と、ブレーカ部30とをプラスチックによって一体に形成したものであり、ヒューズカバー部21とブレーカ部30とが横に並び、その外周を角を丸めた矩形板状のフランジ部22が取り囲む形態である。 そのフランジ部22の上面には、Oリング23(図1にのみ図示)を収容するOリング収容溝24が環状に形成されている。 ブレーカ部3 0の中央には基部31から一体に突壁32が起立しており、その周囲がガイド筒33により取り囲まれ、さらにその外周に嵌合筒34が同心状に一体成型されている。 【0010】ヒューズカバー部21内にはヒューズ25 が収容されている。 そのヒューズ25の両端にはL字型をなすリード片25Aが固定され、その一方には動力電線11の端部に設けた端子11Aがボルト・ナット26 によって固定され、他方はボルト・ナット27によって後述する固定電極35の1枚と共締めされている。 【0011】上記突壁32のうちハウジング10の長手方向(図1の左右方向)に向いた表裏面には、2枚の固定電極35が突壁32を挟むように配置されている。 この固定電極35は金属板をL字状に屈曲させた構造をなし、基端側にはボルト挿通孔35Aが形成されている。 この固定電極35のうちの図1の左側のものは、動力電線12の端部に設けた端子12Aとともにボルト・ナット28によって共締めされ、右側のものは前述したように前記ヒューズ25のリード片25Aとともに共締めされている。 【0012】そして、前記下ハウジング40は上ハウジング20の開放下面を覆う浅底容器状をなし、図2に示すように、上ハウジング20の下端に形成した複数本の係合爪20Aを下ハウジング40の側壁に形成した係合孔41に係合させることで、両ハウジング20,40が一体化されるようになっている。 【0013】一方、上記上ハウジング20のブレーカ部30にはプラグ50が着脱可能に装着される。 このプラグ50は、上面を閉じた二重筒状をなし、内筒51は上ハウジング20のガイド筒33の内側に嵌合可能であり、外筒52は上ハウジング20の嵌合筒34の内側に嵌合可能となっている。 そして、内筒51の内部には導電板をほぼU字状に曲げた可動電極60が下側を開放させた状態で収容されて抜け止めリング53によって抜け止め状態で保持されており、外筒52内には上ハウジング20のガイド筒33の外周面との間に密着して挟み込まれる環状の防水シール54が収容されている。 なお、 このプラグ50の最外周部には、係合アーム55が上部を自由端として一体成型されており、ここに突設した係合爪56が上ハウジング20の嵌合筒34に形成した係合孔34Aに係合することで、プラグ50がブレーカ部30への装着状態に固定される。 【0014】さて、前記ブレーカ部30に形成した突壁32の上端には、2枚の固定電極35の上方を覆うような一対の保護突部61が設けられている。 これは、上端部を突壁32の上端部に一体に連続させた片持ち梁状をなし、下方に行くほど突壁32から離れるような末広がりの傾斜状に形成されており、その下端が固定電極35 の上端に接触して固定電極35の上方を覆う形態となっている。 【0015】そして、各保護突部61は、図5に示すように、可動電極60の挿入方向に沿って中央部を陥没させてあり、したがって保護突部61の両側縁部には可動電極60の挿入方向に沿った突条62が突設された形態となっている。 この突条62は固定電極35から外れる位置、すなわち固定電極35に向かって幅方向の左右両側に外れる位置において固定電極35の板面から離れる方向に突出している。 【0016】本実施形態のブレーカ装置では、上ハウジング20および下ハウジング40が一体化した状態で例えば電気自動車に取り付けられる。 ブレーカ装置として回路を閉じた状態とするには、プラグ50をブレーカ部30に装着し、回路を開くにはプラグ50をブレーカ部30から引き抜く。 プラグ50を装着する際、まず可動電極60の開口端(下端)が上ハウジング20の保護突部61に当接し、それにより弾性的に押し広げられて保護突部61部分を通過する。 通過後は、弾発力によって可動電極60が閉じ方向に変形し、両固定電極35に接触することで両固定電極35間が電気的に短絡される。 【0017】上述した回路の閉成動作において、可動電極60は保護突部61のうちその幅方向の左右両側に位置する突条62に当接して押し広げられることになる。 したがって、可動電極60は保護突部61の全面に擦りあうことはなく、これを摩耗させることがない。 可動電極60は突条62を擦ってここを削り取ることもあり得るが、万一、削り粉が発生したとしても、突条62は可動電極60の挿入方向に関して固定電極35から外れる位置に形成されているから、樹脂の削り粉が固定電極3 5と可動電極60との間に挟み込まれて電気的接触が不安定になることはない。 【0018】もちろん、本実施形態の構成では、一対の固定電極35を突壁32を挟んで一箇所に集めたから、 固定電極35の周りがコンパクトになって、ブレーカ装置の小型化が図られる。 また、突壁32の先端部には、 固定電極35の先端面を覆う絶縁性の保護突部61があるから、固定電極35の上方から作業者の手指や異物が進入しても、それらが固定電極35に触れることを極力防止することができるという効果が得られる。 【0019】<他の実施形態>本発明は、実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。 (1)上記実施形態では突壁32に突条62を設けたが、これに限らず、図6に示すように、可動電極60側に突条65,65を設ける構成であってもよい。 この場合、可動電極60の横幅は固定電極35の横幅より広くしておき、その可動電極60の幅方向の両側縁部に突条65,65を形成することにより、突条65が可動電極60の挿入方向に関して固定電極35から外れる位置において形成することになる。 (2)前記各実施形態のブレーカ装置は、ヒューズ25 を収容して備えていたが、ヒューズを備えないものに本発明を適用してもよい。 (3)前記各実施形態では、突条62は、突条62の両側にそれぞれ2つずつ設けられていたが、例えば、1つの保護突部の横に、1つの突条を設けた構成であってもよく、2つの保護突部の中間に1本の突条を設けた構成であってもよい。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施形態に係るブレーカ装置の縦断面図 【図2】同じく別の方向からのブレーカ装置の縦断面図 【図3】同じく上ハウジングの一部破断した斜視図 【図4】同じく可動電極が固定電極に接触する直前の様子を示す部分拡大断面図 【図5】同じく固定電極と可動電極との関係を示す拡大横断面図 【図6】本発明の他の実施形態を示す斜視図 【図7】従来のブレーカ装置を示す斜視図 【図8】参考例のブレーカ装置を示す断面図 【符号の説明】 10…ハウジング 11,12…動力電線 25…ヒューズ 30…ブレーカ部 31…基部 32…突壁 35…固定電極 50…プラグ 60…可動電極 61…保護突部 62…突条 65…突条 |