Circuit breaker

申请号 JP26743095 申请日 1995-10-16 公开(公告)号 JPH09115409A 公开(公告)日 1997-05-02
申请人 Mitsubishi Electric Corp; 三菱電機株式会社; 发明人 KATSUBE SHUNICHI; UEMOTO TOSHIKAZU; YAMAZAKI SATORU; FUKUTANI KAZUNORI; YAMAGATA NOBUJI;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To prevent decrease of insulation performance, deformation and destruction of component members by forming a circuit breaking mechanism and a part to be subjected to arc of an arc suppressor, of a specified resin, or covering them with the resin.
SOLUTION: A circuit breaking mechanism is formed of a fixed contact element 5 with a fixed contact 4 and a movable contact element 2 with a movable contact 3 contacting the contact 4 and separating therefrom. An arc suppressor 7 composed of an arc extinguishing plate 7a cooling and extinguishing arc and an arc extinguishing side late 7b retaining the plate 7a is installed. In the case where arc is generated between the movable contact element 2 and the fixed contact 5 when a circuit is breaked, a part made of resin to be subjected to arc is composed of or covered with resin formed material containing silicone polymer. The side late 7b of the suppressor 7 is composed of 18 to 26wt.% of silicon polymer, 28 to 37wt.% of metal hydroxide and 41 to 50wt.% of reinforcing material. Accordingly decrease in insulation performance because of generation of arc can be suppressed, and deformation or destruction of component parts caused by arbupt increase of gas pressure in a case can be prevented.
COPYRIGHT: (C)1997,JPO
权利要求 【特許請求の範囲】
  • 【請求項1】 固定接触子の一端部に固定接点が接合して設けられ、可動接触子の一端部に可動接点が接合して設けられており、該固定接点と該可動接点とが電気的に開閉自在に接続しうるようにクロスバー、トグルリンク機構を介してハンドルで動作しうる機構部を有し、かつ消弧装置を有する回路遮断器であって、該固定接触子と該可動接触子との間に発生するアークにさらされる樹脂製の部分がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されているか、もしくはシリコーンペースト皮膜が設けられている回路遮断器。
  • 【請求項2】 前記消弧装置の消弧側板がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなる請求項1記載の回路遮断器。
  • 【請求項3】 前記消弧装置の消弧側板がシリコーンポリマー18〜26重量%、金属水酸化物28〜37重量%および強化材41〜50重量%からなる請求項1または2記載の回路遮断器。
  • 【請求項4】 前記金属水酸化物が水酸化アルミニウムである請求項3記載の回路遮断器。
  • 【請求項5】 前記強化材がガラスクロスである請求項3記載の回路遮断器。
  • 【請求項6】 一対の消弧側板により複数の消弧板が平行またはほぼ平行に保持され、回路遮断器内に設置したときに、それぞれの消弧板が前記可動接触子の動作を妨げないようにU字状の切込みを有する前記消弧装置の該U字状の切込み部に、さらに前記可動接触子の動作方向に平行またはほぼ平行に、シリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなる一対の板状体、シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆された一対の板状体、もしくはシリコーンペーストが塗布された一対の板状体が設けられている請求項1記載の回路遮断器。
  • 【請求項7】 前記固定接点とドクルリンク機構との間にアークのバリア板が設けられており、該アークのバリア板がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、該アークのバリア板がシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されているか、もしくは該アークのバリア板にシリコーンペーストが塗布されている請求項1記載の回路遮断器。
  • 【請求項8】 回路遮断器のカバー部とベース部とを嵌合させてなる筐体内部の固定接点、可動接点および消弧装置を含む消弧空間と、固定接触子に接続される外部電線との仕切り板であるエンドプレートがシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、該エンドプレートがシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されているか、もしくは該エンドプレートにシリコーンペーストが塗布されている請求項1記載の回路遮断器。
  • 【請求項9】 カバー部とベース部とを嵌合させてなる筐体の内表面にシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物からなる薄膜が設けられているか、もしくはシリコーンペーストが塗布されている請求項1記載の回路遮断器。
  • 【請求項10】 カバー部とベース部との嵌合面にシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物からなる薄膜が設けられているか、もしくはシリコーンペーストが塗布されている請求項1記載の回路遮断器。
  • 【請求項11】 クロスバーおよび/またはトリップバーの表面にシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物からなる薄膜が設けられているか、もしくはシリコーンペーストが塗布されている請求項1記載の回路遮断器。
  • 【請求項12】 前記ハンドルのノブに対する裏面にシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物からなる薄膜が設けられているか、もしくはシリコーンペーストが塗布されている請求項1記載の回路遮断器。
  • 【請求項13】 前記シリコーンポリマーおよびシリコーンペーストに含有されるつぎの式: 【化1】 (ここで、mは3〜10の整数である)で表わされるシリコーン低分子量環状体の含有量が、前記シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物もしくはシリコーンペーストの重量に対して重量基準で500ppm以下である請求項1ないし12のいずれかに記載の回路遮断器。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】

    【0001】

    【発明の属する技術分野】本発明は、回路遮断器に関する。 さらに詳しくは、本発明は、回路遮断後、絶縁性能が劣化しにくく、筐体および筐体内部部品が損傷されにくい回路遮断器に関する。

    【0002】

    【従来の技術】従来の回路遮断器の例として、図11および図12に示すような回路遮断器が、実開昭63−4
    4354号公報に記載されている。 図11および図12
    において、61は回路遮断器、62は可動接触子、63
    は可動接触子62の一方の端部に接合されて設けられている可動接点、64は可動接触子62の動作により可動接点63と電気的に接続しうる固定接点、65は固定接点64が接合されて設けられている固定接触子、66は固定接触子65の端子部であり、ここに外部からの電源が接続される。 また67は消弧装置であり、67aは可動接触子62の動作により可動接点63と固定接点64
    とが開離したときに発生するアークを冷却、消弧する磁性体の金属からなる消弧板であり、67bは消弧板67
    aを保持するための消弧側板である。 また、72はカバー部であり、73はベース部であり、嵌合面74で嵌合することにより、各部品を収納する筐体になる。 また、
    69はクロスバー79、トグルリンク機構68を介して、可動接触子62を手動で動作させるためのノブ69
    aの付いたハンドルであり、70は引き外し装置である。 また、66および71は端子部である。 75は端子部66と筐体内部の固定接点64、可動接点63および消弧装置67を含む消弧空間とを隔離するエンドプレートであり、アークによるホットガスを排出する排気孔7
    5aを備え、ベース部73に設けられたガイド溝73a
    に挿入して装着されている。 また、76はアークを端子66の方向へ走行させるアークランナーである。

    【0003】この回路遮断器の動作について図11および図12を用いて説明する。 この回路遮断器は、図11
    における、ハンドル69を操作すると、トグルリンク機構68およびクロスバー79を介して可動接触子62が回動し、可動接点63と固定接点64とが電気的に接続、開放できる機構になっている。 また、端子部66を電源に、端子部71を負荷に接続し、可動接点63と固定接点64とを接触させることにより、電が電源側から負荷側に供給される。 このとき、通電の信頼性を確保するために、可動接点63は固定接点64に適宜の接触圧力で押さえ付けられている。 ここで、負荷側に過電流が生じたばあい、引き外し装置70で検出し、トグルリンク機構68を動作させ、可動接触子62を回動させることにより、図12に示すように可動接点63と固定接点64とが開離し、この可動接点63と固定接点64との間に、図12に示すように、アーク80が発生する。
    従来より、回路遮断器において、このようなアークは、
    消弧装置67により、冷却、消弧させ、またアークランナー76により、端子66の方向に走行させている。

    【0004】しかし、短絡事故などが起こり、回路に過大な電流が流れると、可動接点63と固定接点64との間の接触面における電磁反発力が非常に強くなり、この電磁反発力が、可動接点63に加わっている接触圧力に打ち勝つために、可動接触子62は引き外し装置70の動作を待たずに回動し、可動接点63と固定接点64との開離が起こる。 アーク電圧は固定接点64から可動接点63までの開離距離が増大するにしたがって上昇し、
    また同時に、アーク80が消弧板67aの方向へ磁気力によって引き付けられ伸長するために、アーク電圧はさらに上昇する。 回路の遮断はアーク80を消弧し、アーク電流が零になったときに完了する。 このような遮断動作中において、可動接点63と固定接点64との間には、アーク80によって、短時間、すなわち数ミリ秒のうちに大量のエネルギーが発生し、そのためにカバー部72およびベース部73からなる筐体内の気体の温度および圧力はこの間に急激に上昇する。 この高温高圧の気体は排気孔75aから大気中へ放出されるが、筐体内表面にも吹き付けられる。

    【0005】前記実用新案公報に記載されている回路遮断器のばあい、前記ハンドルは、たとえばポリブチレンテレフタレート70重量%程度およびガラス繊維30重量%程度で構成されている。 また前記カバー部は、たとえば木粉30重量%程度、炭酸カルシウム15重量%程度およびフェノール樹脂55重量%程度で構成されている。 また、前記ベース部は、たとえばガラス繊維15重量%程度、炭酸カルシウム60重量%程度、ポリエステル25重量%程度で構成されている。

    【0006】このような材料から構成される回路遮断器によれば、たとえば短絡電流などの過大な電流のアークが発生したばあい、このアークによる大量のエネルギーが回路遮断器を構成する筐体や筐体内部部品に含まれる樹脂成分を分解する。 しかも、アークの発生と同時に回路遮断器内部の気体圧力が急激に上昇するため、これらの樹脂の分解により発生する遊離炭素は筐体内の細部に至るまで拡散し、付着し、堆積されるので、回路遮断器内部の絶縁抵抗値は大幅に低下し、充分に回路を遮断しえない状態になる。 さらに、回路遮断器を構成する部品の変形や破壊がおこるばあいもある。 前記絶縁抵抗値の低下および前記部品の変形や破壊は、回路遮断器の高遮断容量化や小型化および遮断回数の増加に従い、生じやすいものになる。

    【0007】また、特開平2−54609号公報に記載されている別の従来の回路遮断器によれば、消弧側板は、ガラス積層板の両面に酸化アルミニウムを充填したポリエステル層が設けられており、この消弧側板はたとえばポリエステル20〜25重量%程度、水酸化アルミニウム35〜40重量%程度およびガラス繊維40〜
    45重量%程度で構成されている。

    【0008】この回路遮断器によれば、回路遮断器内部の絶縁抵抗値の低下をある程度抑制することができるが、充分ではなく、また前記気体圧力の急激な上昇は避けられない。

    【0009】

    【発明が解決しようとする課題】本発明は前記の点に鑑みてなされたものである。 すなわち、本発明はアークの発生に起因する回路遮断器の絶縁性能の低下を充分に抑制しえ、またアークの発生による回路遮断器筐体内部の気体圧力の急上昇に起因する回路遮断器の筐体や筐体内の部品など構成部材の変形、破壊を充分に防止しうる安全性の高い回路遮断器をうることを目的とする。

    【0010】

    【課題を解決するための手段】本発明は、固定接触子の一端部に固定接点が接合して設けられ、可動接触子の一端部に可動接点が接合して設けられており、該固定接点と該可動接点とが電気的に開閉自在に接続しうるようにクロスバー、トグルリンク機構を介してハンドルで動作しうる機構部を有し、かつ消弧装置を有する回路遮断器であって、該固定接触子と該可動接触子との間に発生するアークにさらされる樹脂製の部分がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されているか、もしくはシリコーンペースト皮膜が設けられている回路遮断器に関する。

    【0011】また、本発明は、前記消弧装置の消弧側板がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなる回路遮断器に関する。

    【0012】前記消弧装置の消弧側板がシリコーンポリマー18〜26重量%、金属水酸化物28〜37重量%
    および強化材41〜50重量%からなることが好ましい。

    【0013】また、前記金属水酸化物が水酸化アルミニウムであることが好ましい。

    【0014】また、前記強化材がガラスクロスであることが好ましい。

    【0015】また、本発明は、一対の消弧側板により複数の消弧板が平行またはほぼ平行に保持され、回路遮断器内に設置したときに、それぞれの消弧板が前記可動接触子の動作を妨げないようにU字状の切込みを有する前記消弧装置の該U字状の切込み部に、さらに前記可動接触子の動作方向に平行またはほぼ平行に、シリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなる一対の板状体、シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆された一対の板状体、もしくはシリコーンペーストが塗布された一対の板状体が設けられている回路遮断器に関する。

    【0016】また、本発明は、前記固定接点とトグルリンク機構との間にアークのバリア板が設けられており、
    該アークのバリア板がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、該アークのバリア板がシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されているかもしくは該アークのバリア板にシリコーンペーストが塗布されている回路遮断器に関する。

    【0017】また、本発明は、回路遮断器のカバー部とベース部とを嵌合させてなる筐体内部の固定接点、可動接点および消弧装置を含む消弧空間と、固定接触子に接続される外部電線との仕切り板であるエンドプレートがシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、該エンドプレートのシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されているか、もしくは該エンドプレートにシリコーンペーストが塗布されている回路遮断器に関する。

    【0018】また、本発明は、カバー部とベース部とを嵌合させてなる筐体の内表面にシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物からなる薄膜が設けられているか、もしくはシリコーンペーストが塗布されている回路遮断器に関する。

    【0019】また、本発明は、カバー部とベース部との嵌合面にシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物からなる薄膜が設けられているか、もしくはシリコーンペーストが塗布されている回路遮断器に関する。

    【0020】また、本発明は、クロスバーおよび/またはトリップバーの表面にシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物からなる薄膜が設けられているか、もしくはシリコーンペーストが塗布されている回路遮断器に関する。

    【0021】また、本発明は、前記ハンドルのノブに対する裏面にシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物からなる薄膜が設けられているか、もしくはシリコーンペーストが塗布されている回路遮断器に関する。

    【0022】また、本発明は、前記シリコーンポリマーおよびシリコーンペーストに含有されるつぎの式:

    【0023】

    【化2】

    【0024】(ここで、mは3〜10の整数である)で表わされるシリコーン低分子量環状体の含有量が、前記シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物もしくはシリコーンペーストの重量に対して重量基準で5
    00ppm以下である回路遮断器に関する。

    【0025】

    【発明の実施の形態】本発明の回路遮断器は、固定接触子の一端部に固定接点が接合して設けられ、可動接触子の一端部に可動接点が接合して設けられており、該固定接点と該可動接点とが電気的に開閉自在に接続しうるようにクロスバー、トグルリンク機構を介してハンドルで動作しうる機構部を有し、かつ消弧装置を有する従来と同様の回路遮断器(図11参照)中のアークにさらされる樹脂製の部分がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されているか、もしくはシリコーンペースト皮膜が設けられていることを特徴とするものである。

    【0026】前記回路遮断器のアークにさらされる樹脂製の部分の少なくとも一部がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、この部分がシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されているか、もしくはこの部分にシリコーンペーストが塗布されていれば、アークにさらされたばあい、シリコーンポリマーまたはシリコーンオイル中の主鎖である

    【0027】

    【化3】

    【0028】の繰り返し鎖はガス化されることはなく、
    無機物シリカ(SiO 2 )となり絶縁体化する。

    【0029】したがって、アークガス量は絶対的に減少されるので、筐体内部の気体圧力の増加も低減されるため、筐体内部部品や筐体自体の変形、破壊を防止できる。 さらにアーク熱により分解されたシリコーンポリマーの表層およびシリコーンオイルを含有するシリコーンペーストの表層は、無機物シリカで覆われ、この部分の絶縁抵抗値の低下を抑制できる。

    【0030】前記のように、前記回路遮断器のアークにさらされる樹脂製の部分の少なくとも一部がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、この部分がシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されているか、もしくはこの部分にシリコーンペーストが塗布されていれば、本発明の効果を奏するが、より多くの部分、具体的には、消弧側板、バリア板、エンドプレート、筐体の内表面、カバー部とベース部との嵌合面、クロスバーの表面、トリップバーの表面などがシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、もしくはこの部分がシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されているか、
    もしくはこの部分にシリコーンペーストが塗布されていることが好ましい。

    【0031】従来の回路遮断器において、アークにさらされる樹脂製の部分としては、消弧側板、ハンドルのノブに対する裏面、トリップバー、クロスバー、エンドプレート、カバー部とベース部とを嵌合させてなる筐体の内表面およびバリア板などがあげられる。

    【0032】これらのすべての部分がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されているか、もしくはシリコーンペーストが塗布されていることがとくに好ましい。

    【0033】前記のシリコーンポリマーとしては、たとえばつぎの一般式:

    【0034】

    【化4】

    【0035】(ここで、R 1およびR 2は同じかまたは異なり、いずれもアルキル基、フェニル基、水酸基、ビニル基またはアルコキシ基などであり、これらがエポキシ変成またはポリエステル変成されていてもよく、R 3およびR 4はおなじかまたは異なり、いずれもメチル基、
    アルキル基、長鎖アルキル基、高級脂肪酸基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ポリオキシアルキレン基、フェニル基、水素原子、ヒドロキシ基、エポキシ基含有有機基、メルカプトアルキル基、フルオロアルキル基またはクロロフェニル基などである。 また、nはとくに制限されるものではない)で表わすことができる直鎖状ポリマー、またはつぎの一般式:

    【0036】

    【化5】

    【0037】(ここで、R 5は前記R 1と、R 6およびR 7
    は前記R 3と、pは前記nと、それぞれ同じである)で表わすことができる三次元ポリマーなどの1種もしくは2種以上があげられる。 これらのうち、式(I)および式(II)において、R 1 、R 2およびR 5がアルキル基、水酸基、ビニル基またはアルコキシ基であるものが、芳香族を含有しない点から好ましく、R 3 、R 4 、R
    6およびR 7がメチル基、アルキル基、長鎖アルキル基、
    高級脂肪酸基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ポリオキシアルキレン基、水素原子、ヒドロキシ基、エポキシ基含有有機基、メルカプトアルキル基またはフルオロアルキル基であるものが芳香族を含有しない点から好ましい。

    【0038】シリコーンポリマーまたはシリコーンオイルが芳香族基を含有するばあい、たとえば短絡遮断時のアークにより、該シリコーンポリマーまたはシリコーンオイルに含まれる芳香族基を有する官能基が分解して、
    π電子を有する炭(すみ)になり、分解物が導電体となることがある。

    【0039】本発明に用いうるシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物としては、前記シリコーンポリマー、
    水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物およびガラス繊維、無機鉱物、セラミック繊維などの強化材からなるものなどがあげられ、この樹脂成形物中の前記シリコーンポリマーの含有量が18〜26重量%であるものが、絶縁性能および加工性などの点から好ましい。

    【0040】また、前記のシリコーンペーストとしては、シリコーンオイルからなるものがあげられ、シリコーンオイルとしては、たとえばつぎの一般式:

    【0041】

    【化6】

    【0042】(ここで、R 8は前記R 1と、R 9は前記R 2
    と、R 10は前記R 3と、R 11は前記R 4と、それぞれ同じである。 また、qはとくに制限されるものではないが、
    通常100〜1000の整数である)

    【0043】

    【化7】

    【0044】(ここで、R 12は前記R 8と、R 13は前記R 10と、R 14は前記R 11と、rは前記qと、それぞれ同じである)で表わすことができる分岐状シリコーンポリマーがあげられる。 これらのうち式(III)および式(IV)においてR 8 、R 9およびR 12がアルキル基、水酸基、ビニル基またはアルコキシ基であるものが芳香族を含有しない点から好ましく、R 10 、R 11 、R 13およびR 14がメチル基、アルキル基、長鎖アルキル基、高級脂肪酸基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ポリオキシアルキレン基、水素原子、ヒドロキシ基、エポキシ基含有有機基、メルカプトアルキル基またはフルオロアルキル基であるものが芳香族を含有しない点から好ましい。

    【0045】本発明に用いうるシリコーンペーストとしては、前記シリコーンオイル、石鹸系増ちょう剤および固体潤滑剤からなるものなどがあげられ、このシリコーンペースト中の前記シリコーンオイルの含有量が60〜
    75重量%であるものが、シリコーンペーストの塗布作業上好ましい。

    【0046】これらシリコーンポリマーまたはシリコーンオイルがアーク熱により分解されても、シリコーンポリマーまたはシリコーンオイル中の主鎖である

    【0047】

    【化8】

    【0048】の繰り返し鎖はガス化されることはなく、
    無機物シリカ(SiO 2 )となり絶縁体化する。

    【0049】前記シリコーンポリマーを含有する樹脂成形物である部分、もしくはシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されている部分がアークにさらされるとアーク熱により該樹脂または樹脂成形物の表層のシリコーンポリマーが分解され、この樹脂または樹脂成形物の表層が前記無機物シリカで覆われるので、この樹脂または樹脂成形物の絶縁抵抗値が低下することを抑制できる。

    【0050】また、前記シリコーンペーストが塗布されている回路遮断器の樹脂製の部分がアークにさらされると、アーク熱により、該シリコーンペースト中のシリコーンオイルが分解され、この樹脂製の部分表面が前記無機物シリカで覆われるので、この樹脂製の部分およびシリコーンオイルを含有するシリコーンペーストの表層の絶縁抵抗値が低下することを抑制できる。

    【0051】また、シリコーンポリマーを含有せず、かつシリコーンペーストが塗布されていない樹脂成形物や樹脂製の部分がアークにさらされるばあいに比べて、これらシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物、もしくはシリコーンペーストが塗布されている樹脂製の部分がアークにさらされるばあいは、シリコーンポリマーまたシリコーンペーストの前記主鎖である繰り返し鎖がガス化しないためにアーク熱による分解ガス量が少ないので、発弧時に生じる前記筐体の内部の気体圧力の増加が低減され、筐体内部部品や筐体の変形、破損を防止することができる。

    【0052】回路遮断器において、アークにさらされる樹脂製の部分の一つとして、消弧装置の消弧側板があげられる。 前記消弧装置は、図2にその一例を示すように、消弧板7aと消弧側板7bから構成される。 前記消弧板は、通常、磁性体の金属からなり、前記可動接触子の動作を防げないように切り込み、たとえばU字状の切り込みを有する。 また前記消弧側板は、被アーク時のガス発生量低減および耐熱性向上の点などからシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなることが好ましい。 消弧側板がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなることにより前記のように消弧側板がアークにさらされたばあいでも、この消弧側板の絶縁抵抗値の低下を抑制でき、消弧板側の絶縁性の低下を防止できる。
    また消弧板間にアーク電圧がかかったとき、消弧板間が同電位になることを防止できる。 消弧板間が同電位になると、消弧板間のアーク電圧が維持できず、遮断不能になるばあいがある。

    【0053】また、前記消弧側板がシリコーンポリマー18〜26重量%、とくに21〜23重量%、金属水酸化物28〜37重量%、とくに31〜34重量%および強化材41〜50重量%、とくに41〜50重量%からなることが好ましい。 このような組成比からなる樹脂成形物は、強化材の含有量が前記の範囲内にあることにより、打ち抜き加工時にクラックが生じにくい。

    【0054】また、金属水酸化物の含有量が前記の範囲内にあることにより、この消弧側板がアークにさらされたときアーク熱により消弧側板を構成する金属水酸化物が分解されてH 2 O、O 2およびO(原子状酸素)が好適に発生する。 消弧装置や筐体がアークさらされることにより金属蒸気、金属液滴および遊離炭素が回路遮断器の筐体内に発生するが、消弧側板に含まれる金属水酸化物が分解して発生するH 2 O、O 2およびOが、この金属蒸気、金属液滴および遊離炭素を充分に酸化して、非導電性の金属酸化物、一酸化炭素および二酸化炭素にするので、アーク発生後の消弧側板および回路遮断器内表面の絶縁性が低下することを抑制できる。

    【0055】また、シリコーンポリマーの含有量が前記の範囲内にあることにより、該消弧側板がアークにさらされたばあい、該消弧側板の表面が無機物シリカで覆われ、絶縁体化できる。

    【0056】通電中の回路遮断器を電極開離して電極接点間にアークが発生するばあい、回路遮断器内部は通常、瞬間的に局所的に4000〜6000℃程度の温度になる。 この結果、電極、接点および回路遮断器内部の金属材料が加熱され、この金属材料から、前述のように金属蒸気や溶融金属液滴が発生して飛散する。 このとき、アークのみならず、これら金属蒸気や溶融金属液滴によって、回路遮断器筐体および回路遮断器の内部部材を構成する有機材料が分解され、遊離炭素が発生する。
    このような遊離炭素も前記金属酸化物の分解ガスが非導電性化する。 また、前記強化材がアーク発生時の消弧側板のクラック発生を防止する。

    【0057】前記消弧側板を構成するシリコーンポリマーの成分比が前記の範囲より低いばあい、シリコーンポリマーの強化材への含浸が不充分になり、えられた消弧側板に空孔が生じ、そのため湿気を取り込み絶縁性能が低下する傾向があり、一方前記の範囲より高いばあい、
    消弧側板の加工時に樹脂成形物の表層にクラックが生じやすくなる傾向がある。 また前記消弧側板を構成する金属水酸化物の成分比が前記の範囲より低いばあい、消弧側板の絶縁性が低下する傾向があり、一方前記の範囲より高いばあい、前記シリコーンポリマーと金属水酸化物との混合物の強化材への含浸が不充分になり、えられた消弧側板に空孔が生じ、そのため湿気を取り込み絶縁性能が低下する傾向がある。 また、前記消弧側板を構成する強化材の成分比が前記範囲より低いばあい、回路遮断時に消弧側板にクラックが生じるなど、強度面で問題となる傾向があり、一方前記の範囲より高いばあい、シリコーンポリマーおよび金属水酸化物が強化材に充分に含浸できず、えられた消弧側板に空孔が生じ、そのため湿気を取り込み絶縁性能が低下する傾向がある。

    【0058】前記水酸化物としては、水酸化アルミニウム(Al(OH) 3 )、ホウ酸亜鉛(2ZnO・3B 2
    3・3.5H 2 O)、ドーソナイト(NaAl(OH) 2
    CO 3 )、水酸化カルシウム(Ca(OH) 2 )、カルシウムアルミネート(Ca 3 Al 12 (OH) 12 )、水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2 )、塩基性炭酸水素マグネシウム(Mg 4 (CO 33 (OH) 2・4H 2 O)などの粒子状、繊維状またはリン片状などの形状を有するものなどの1種または2種以上があげられ、これらのうち消弧側板製造時の打ち抜き加工時に微粉の発生が少なく、また消弧側板の加工後の洗浄が容易であり、回路遮断器に組み込まれたのちの振動による微粉の発生が少なく接点間導電不良が生じにくい点から水酸化アルミニウムが好ましい。 また、前記金属水酸化物の大きさはとくに制限されるものではない。

    【0059】前記強化材としては、ガラス繊維、無機鉱物およびセラミック繊維からなる群から選ばれた1種または2種以上のものがあげられる。 これら強化材は耐圧強度および消弧性能向上のために用いられる。

    【0060】前記強化材には、つぎの一般式:M 2
    (ここでMは周期律表1A族の金属(Li、Na、K、
    Rb、Cs、Fr)である)で表わされる化合物(たとえば、Na 2 O、Li 2 Oなど)の合計含有量が1重量%
    以下であることが好ましい。 この化合物を1重量%を超えて含有するばあいには、消弧性能が低下する。 また、
    この金属の化合物の合計含有量が0.6重量%以下、さらには0.15重量%以下であることが消弧性能向上の点から好ましい。

    【0061】前記ガラス繊維としては、長繊維、短繊維、グラスウール、ガラスマットまたはガラスクロスなどのガラスからなる繊維状物であればよく、前記の一般式:M 2 Oで表わされる化合物の合計含有量が前記範囲にあれば、とくに制限はされるものではない。 これらガラス繊維の素材としては、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラスまたはシリカガラスなどがあげられる。

    【0062】これらガラス繊維の直径が6〜13μm、
    アスペクト比が10以上であることが耐圧強度向上の点から好ましい。 また、これらガラス繊維はシランカップリング剤などの表面処理剤により処理されていることが耐圧強度をさらに向上させる点から好ましい。

    【0063】前記無機鉱物としては、炭酸カルシウム、
    クレー、タルク、マイカ、過酸化バリウム、酸化アルミニウム、ジルコン、コーディエライト、ムライト、ウォラスナイト、白雲母、炭酸マグネシウム、ドロマイト、
    硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、フッ化亜鉛またはフッ化マグネシウムなどがあげられ、これらはともに熱変形温度および寸法安定性を向上させるという点で好ましく用いられる。

    【0064】なお、前記の一般式:M 2 Oで表わされる化合物の合計含有量が前記の好適な範囲にあるという点からは、炭酸カルシウム、タルク、ウォラスナイト、過酸化バリウム、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、
    硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウム、
    硫酸バリウム、フッ化亜鉛またはフッ化マグネシウムなどが好ましい。

    【0065】前記セラミック繊維としては、ケイ酸アルミニウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカまたはアルミナウィスカなどのセラミックからなる繊維状物であればよく、前記一般式:M 2
    で表わされる化合物の合計含有量が前記の範囲にあれば、とくに限定はされるものではない。 これらセラミック繊維は消弧性能の向上および耐圧強度の点から好ましい。

    【0066】これらセラミック繊維の直径が1〜10μ
    m、アスペクト比が10以上であることが耐圧強度向上の点から好ましい。

    【0067】前記強化材としては、前記の1種または2
    種以上の材料が用いられる。 2種類以上が用いられるばあいには、前記ガラス繊維と前記無機鉱物、前記ガラス繊維と前記セラミック繊維、前記無機鉱物と前記セラミック繊維、前記ガラス繊維どうし、前記無機鉱物どうし、前記セラミック繊維どうし、前記ガラス繊維と前記無機鉱物と前記セラミック繊維との組合わせがあり、とくに制限されるものではない。

    【0068】また、前記強化材は、短絡などによる回路遮断時の耐圧強度の点、および接点不導通を引き起こす恐れのある微粉が打ち抜き加工時に発生しにくい点から、ガラスクロスであることが好ましい。 このガラスクロスとしては、たとえば平織、目抜平織、朱子織または綾織などの構造のものがあげられる。

    【0069】図3に、本発明の回路遮断器に用いうる別の好適な消弧装置を示す。 図3において、41は消弧装置、41aは消弧板、41bは消弧側板、42細隙板を示す。 消弧板41aおよび消弧側板41bは前記本発明の回路遮断器に用いうる消弧装置と同じ材料からなりえ、消弧板41aは可動接触子の回動を防げないように切込みを有し、この切込みの内側に前記可動接触子の回動方向に平行またはほぼ平行に1対の細隙板42が可動接触子の回動を防げないように設けられている。 この1
    対の細隙板42が設けられていることにより、接点が開離されたときに生じるアークが、消弧側板の方向に広がることを、この細隙板によって防止されるために接点間に発生したアークの断面積の拡大を抑制することができるので、アークが冷却でき、短絡電流を小さく絞り込む限流が起こる細隙板効果を奏する。

    【0070】また、この細隙板は前記消弧側板と同様の組成の材料からなることが同様の理由から好ましい。

    【0071】本発明の回路遮断器において、前述のようにバリア板が設けられることが好ましい。

    【0072】バリア板が設けられている本発明の好ましい回路遮断器の一実施態様を図1に示す。 図1において、1は回路遮断器、2は可動接触子、3は可動接触子2の一方の端部に接合されて設けられている可動接点、
    4は可動接触子2の動作により可動接点3と電気的に接続しうる固定接点、5は固定接点4が接合されて設けられている固定接触子、6は固定接触子5の端子部であり、ここに外部からの電源が接続される。 また7は消弧装置であり、7aは可動接触子2の動作により可動接点3と固定接点4とが開離されたときに発生するアークを冷却、消弧する磁性体の金属からなる消弧板であり、7
    bは消弧板7aを保持するための消弧側板である。 また、12はカバー部であり、13はベース部であり、嵌合面14で嵌合することにより、各部品を収納する筐体になる。 また、9はクロスバー19、トグルリンク機構8を介して、可動接触子2を手動で動作させるためのノブ9aの付いたハンドルであり、10は引き外し装置である。 また、11は、負荷側の端子部である。 15は端子部6と筐体内を隔離するエンドプレートであり(図4
    に、このエンドプレートの斜視図を示す)、アークによるホットガスを排出する排気孔15aを備え、ベース部13に設けられたガイド溝13aに挿入して装着されている。 また、16はアークを端子6の方向へ走行させるアークランナーである。

    【0073】また、本発明の一例であるこの回路遮断器には固定接点4とトグルリンク機構8との間にアークのバリアのためのバリア板17が設けられている。 また、
    消弧側板7b、バリア板17およびエンドプレート15
    はシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなり、
    カバー部12とベース部13とを嵌合させてなる筐体の内表面にはシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物からなる薄膜を形成しているばあい、もしくはシリコーンペーストが塗布されているばあいがあり、ハンドル9のノブ9aに対する裏面にはシリコーンポリマーを含有する樹脂からなる薄膜を形成しているばあい、
    またはシリコーンペーストが塗布されているばあいがある。

    【0074】このバリア板は回路遮断器の電極の開閉時に可動接点3と固定接点4との間に発生するアークにより、回路遮断器を構成する樹脂材料から発生する遊離炭素、および可動接点、固定接点ならびに回路遮断器を構成する金属材料から発生する金属蒸気や飛散する溶融金属液滴が回路遮断器筐体内で負荷側方向に広がることを防止する。 このことにより、アークが発生しても回路遮断器の筐体内におけるバリア板より負荷側の樹脂部分の絶縁性能が低下することを抑制でき、回路遮断器全体として、回路遮断時の好適な絶縁性が維持できる。

    【0075】前記バリア板は、アークにさらされるばあいがあるので、前記と同じシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆されているか、
    もしくはシリコーンペーストが塗布されていることが同様の理由から好ましい。 またバリア板の形状は、可動接触子の回動を妨たげない必要最小限の溝または穴を有する形状であることが好ましい。

    【0076】また、本発明の回路遮断器において、エンドプレート15が前記消弧側板と同様の組成の材料からなることが、同様の理由から好ましい。

    【0077】また、エンドプレート15の形状としては、図4に示すように排気孔15aを有することが好ましい。 エンドプレート15はベース部13のガイド溝1
    3aに挿入して装着され、前記筐体内部の固定接点4、
    可動接点3および消弧装置7を含む消弧空間と端子部6
    とを仕切っているが、この排気孔を有することでアークが発生しても筐体内の気体圧力が急激に上昇することを抑制する。 また、回路遮断時などに可動接点3と固定接点4との間に生じるアークは、消弧板7aの磁性力で端子部6の方向へ引き伸ばされ、エンドプレート15に接触することがある。 このとき、エンドプレート15が前記消弧側板と同様の組成の材料からなることにより、アークにさらされたばあいも、このエンドプレートの表面部が絶縁体化するので、複数回にわたる高電流遮断を行なったあとでも、カバー部12とベース部13との絶縁性能の低下を抑制することができる。 また、アーク電流がこのエンドプレートより端子部6側に流れることを防止できる。

    【0078】図5に本発明の回路遮断器に用いうるベース部の斜視図を、図6にこのベース部の内部を明瞭にするために一部切り欠いたベース部の斜視図を示す。 図5
    および図6において、ベース部13は、たとえば、ガラス繊維(直径9.5〜15μm程度、長さ1/4〜1インチ程度のものが好ましい)15重量%程度、炭酸カルシウム60重量%程度、および不飽和ポリエステル25
    重量%程度からなるものがあげられ、ベース部13の内表面13bには、前記と同様のシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物である薄膜が、たとえばスプレーコーティング法などにより、シリコーンが噴霧されることにより設けられるか、もしくは前記と同様のシリコーンペーストが塗布されていることが好ましい。 このようにして、シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物である薄膜、もしくはシリコーンペースト塗膜が内表面13bに設けられていることにより、回路遮断器の回路遮断時などに生じるアークにベース部13
    がさらされたばあいでも、前記のように、シリコーンコーティング中のシリコーンポリマーおよび/またはシリコーンオイルが分解して無機物シリカとなり、内表面1
    3bが絶縁体化する。 このことにより、回路遮断器の絶縁性能の低下を抑制できる。 また、アークによる樹脂成分などの分解によるガス発生量が低減するため、前記筐体内部のガス圧が急激に上昇することを防止でき、筐体や筐体内部部品などが変形や破壊することがない。

    【0079】前記のシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物である薄膜、もしくはシリコーンペースト塗膜は、前記カバー部の内表面にも同様の理由から同様にして設けられることが好ましい。

    【0080】また、ベース部13と前記カバー部との嵌合面14に、シリコーンペーストが前記と同様の方法などにより塗布されるか、またはシリコーンポリマーを含有する樹脂からなる薄膜が設けられることが好ましい。
    このことにより、この嵌合面が回路遮断器の回路遮断時などに生じるアークにさらされたばあいでも回路遮断器のカバー部とベース部との絶縁性の低下を抑制できる。
    また、前記と同様にしてアーク発生時に前記筐体内部のガス圧が急激に上昇することも防止できる。

    【0081】なお、図1は回路遮断器の一実施態様の概略断面図であり、回路遮断器の1相を断面にして示してあるが、実際は、図5にそのベース部の斜視図を示すように3相の構造になっており、可動接触子、可動接点、
    固定接触子、固定接点、消弧装置などは各相にそれぞれ配置、すなわち合計3組配置されているものが一般的である。 回路遮断器としては、そのほか1相、2相、4相のものもある。

    【0082】図7は、前記各相の可動接触子を連結しているクロスバー19を示す。 このクロスバー19は前記トグルリンク機構を介してハンドルに連動するように構成されている。

    【0083】クロスバー19は、通常、ガラス繊維50
    重量%程度、フェノール樹脂35重量%程度、およびそのほか添加剤15重量%程度のガラス繊維強化フェノール樹脂からなり、その表層部にはシリコーンペーストが前記と同様の方法や浸漬塗布などの方法で塗布されているか、または前記と同様のシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物である薄膜が設けられていることが好ましい。 このことにより、回路遮断器の回路遮断時に生じるアークに、このクロスバーがさらされたばあいでもクロスバーの絶縁性の低下が、前記と同様に、抑制できる。 また、アーク発生時に、前記筐体内部のガス圧が急激に上昇することも、前記と同様に防止できる。

    【0084】図8は、本発明の回路遮断器に用いるハンドル9を示す斜視図である。 図9において、9aはハンドルのノブを示す。 このハンドル9のノブ9aに対する裏面9bにシリコーンペーストが前記クロスバーと同様の方法などにより塗布されているか、または前記と同様のシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物である薄膜が設けられていることが好ましい。 このことにより、回路遮断器の回路遮断時に生じるアークにハンドルのノブに対する裏面9bがさらされたばあいでも、
    この裏面9bの絶縁性の低下が抑制できる。 また、アーク発生時に、前記筐体内部のガス圧が急激に上昇することも、前記と同様に防止できる。

    【0085】図9には本発明の別の回路遮断器の一例の概略部分断面図を示す。 この回路遮断器には、固定接触子5のアークが端子部方向に走行する過程で、アークが暴露する部分にシリコーンポリマーを含有する樹脂シート40が貼り付けられており、このことにより、発弧時の、回路遮断器の筐体内、とくに消弧板、消弧側板、固定接点および可動接点などからなる消弧空間の絶縁性を維持し、前記筐体内の気体圧力の上昇を抑制し、筐体自体や筐体内部部品などの変形や破壊を防止するという効果を奏する。

    【0086】また、本発明における前記シリコーンポリマー、またはシリコーンペースト中にシリコーン低分子量環状体が多量に含まれているばあい、これらシリコーン低分子量環状体が揮発し、数ミリアンペアの微少電流が流れるマイクロスイッチの接点間で発生するアークにより、このシリコーン低分子量環状体が分解し無機物シリカとなり、マイクロスイッチの接点不導通を生じるばあいがある。

    【0087】なお、前記マイクロスイッチは、通常遮断器に取り付けられる付属装置の中に設けられており、この付属装置はトリップを検出する機能および/またはO
    N/OFF(開閉)状態を検出する機能を有する。 また、この付属装置は、通常筐体内に設けられる。 前記マイクロスイッチには、前記検出機能を果たすために通常数ミリアンペアから数アンペア程度の微少電流が流れる。

    【0088】また、前記シリコーンポリマーおよび前記シリコーンペースト中の、一般式:

    【0089】

    【化9】

    【0090】(ここで、mは3〜10の整数である)で表わされるシリコーン低分子量環状体の含有量が、前記シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物もしくはシリコーンペーストの重量に対して重量基準で5
    00ppm以下であることにより、シリコーン低分子量環状体の揮発量が極めて少くなり、この揮発分が接点間に侵入し接点導通不良をおこすことを防止できる。

    【0091】

    【実施例】

    [実験例1]回路遮断器のアークにさらされる部分にシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で被覆した回路遮断器の評価を行なった。

    【0092】回路遮断器において、固定接触子と消弧装置との間には隙間があり、この隙間のためにベース部表面がアーク発生時アークにさらされる。 そこで、この隙間をシリコーンポリマーを含有する樹脂シートで被覆し、この回路遮断器を評価した。

    【0093】前記の隙間を前記樹脂シートで被覆する前の回路遮断器として、三菱電機株式会社製配線用遮断器(100AF)を用いた。 なお、前記回路遮断器の可動接触2は銅合金、可動接点3は銀合金、固定接点4は銀合金、固定接触子5は銅、端子部6は銅、消弧板7aは鋼板、トグルリンク機構8は鋼板、ハンドル9はガラス繊維強化ポリブチレンテレフタレート、引き外し装置1
    0は鋼合金、鋼板など、端子部11は銅、カバー部12
    は木粉フェノール、ベース部13は木粉フェノール、エンドプレート16はガラスポリエステル、バリア板18
    は紙ファイバー、トリップバー19はガラス繊維強化ポリブチレンテレフタレート、クロスバー20はガラス強化フェノールからなる。 この回路遮断器の前記の隙間を被覆するために20×30×1mmのシリコーンポリマーを含有する樹脂シートを作製した。

    【0094】このシリコーンポリマーを含有する樹脂シートを図9に示すような状態に、前記隙間を充分に被覆できるようにして設けた。

    【0095】このようにして作製されたシリコーンポリマーを含有する樹脂シートが設けられた回路遮断器は、
    定格遮断電流が、25kA、AC460V、3相、に対して、推定短絡電流30kAの回路で短絡遮断を2回行ない、そののち、回路遮断後の電源側端子と負荷側端子間の中央極の絶縁抵抗値をJIS C1302記載の絶縁抵抗計を用いて測定(以下、メグ測定という)する方法により評価した。 その結果、筐体および内部部品に変形や亀裂などがなく、回路遮断後の電源側端子と負荷側端子間の中央極の絶縁抵抗値も5〜15MΩであり良好な結果であった。 なお、回路遮断試験後の絶縁抵抗値は通常0.5MΩ以上必要である(JIS−C8370参照)。

    【0096】[比較例1]シリコーンポリマーを含有する樹脂シートを設けなかったほかは実験例1と同じ回路遮断器を用い、同じ方法でこの回路遮断器を評価した。
    その結果、筐体や内部部品に微小な亀裂が発生し、回路遮断後の電源側端子と負荷側端子間の中央極の絶縁抵抗値が0.2〜0.4MΩであった。 また、トリップバー両端間の絶縁抵抗値は、0.05〜0.10MΩであった。

    【0097】[実験例2]つぎに、シリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなる消弧側板についての評価を行なった。

    【0098】表1に示すシリコーンポリマー、金属水酸化物である水酸化アルミニウムおよび強化材である平織のガラスクロスを用い、つぎの方法により消弧装置側板を作製した。 この消弧側板作製時の加工性を表1に示す。

    【0099】シリコーンポリマーと水酸化アルミニウムとの混合液に厚さ約0.4mmの前記ガラスクロスを浸漬し、約80℃の乾燥炉で予備加熱を行なう。 つぎに1
    70〜180℃の温度、約100kg/cm 2の圧力で2〜3時間硬化させる。 えられた樹脂成形物を規定の大きさにカッティングし、消弧板6aを保持する穴を打ち抜く。 この消弧側板に消弧板7aを取り付け、図2に示すような消弧装置をえる。

    【0100】この消弧装置を用い、前記シリコーンポリマーを含有する樹脂シートを用いないほかは実験例1と同じ回路遮断器に設置して、2回の短絡遮断試験を行ない、そののち、メグ測定を行った。 結果を表1に示す。

    【0101】

    【表1】

    【0102】シリコーンポリマーが18重量%未満のばあい、ガラスクロス内部への含浸が不充分であり、えられた消弧側板に空孔を生じ、その結果として、湿気を取り込み、絶縁性能が低下する。 シリコーンポリマーが2
    6重量%を超えるばあい、上記加工時に樹脂成形物の表面にクラックを生じるため、好ましくない。

    【0103】水酸化アルミニウムが28重量%未満のばあい、遮断後の電源側と負荷側とのメグ測定にて、0.
    5MΩ未満となり、絶縁性の低下をもたらす。 水酸化アルミニウムが37重量%を超えるばあい、シリコーンポリマーと水酸化アルミニウムとの混合液のガラスクロス内部への含浸が不充分であり、えられた消弧側板に空孔を生じ、その結果として、湿気を取り込み、絶縁性能が低下する。 加えて、上記加工時に樹脂成形物の表面にクラックが生じるため、好ましくない。

    【0104】ガラスクロスが41重量%未満のばあい、
    遮断時に消弧側板がクラックを生じ、強度面で問題がある。 ガラスクロスが50重量%を超えるばあい、ガラスクロス内部への含浸が不充分であり、えられた消弧側板に空孔を生じ、その結果として、湿気を取り込み、絶縁性能が低下する。

    【0105】また、水酸化アルミニウムのほかの金属水酸化物、前記のガラスクロスのほかの強化材を用いても前記と同様の結果がえられた。 従って、シリコーンポリマーが18〜26重量%、金属水酸化物が28〜37重量%、強化材が41〜50重量%である樹脂成形物は、
    加工性が良好であり、この樹脂成形物を消弧側板として用いた消弧装置を配置した回路遮断器は、絶縁後の絶縁性能が良好であることがわかる。

    【0106】[実験例3]つぎに、別のシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなる消弧側板についての加工性の評価を行なった。

    【0107】表2に示す配合にしたほかは実験例2と同様にして消弧側板を作製し、同様の方法で消弧装置を作製した。 この消弧装置を用いたほかは実験例2と同じ方法で回路遮断器を作製した。 なお、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを用い、強化材およびガラスクロスとしては実験例2と同じものを用いた。

    【0108】この消弧側板作製時の加工性を表2に示す。

    【0109】

    【表2】

    【0110】実験例3−(1)〜(6)の組成は、いずれもシリコーンポリマー20〜29重量%、強化材としてガラスクロス43〜45重量%であるが、金属水酸化物として、実験例3−(1)〜(3)は水酸化アルミニウム23〜37重量%、実験例3−(4)〜(6)は水酸化マグネシウム28〜37重量%である。 実験例3−
    (4)〜(6)の組成では、加熱硬化してえられた樹脂成形物のカッティング時、消弧板を保持する穴の打ち抜き時に多量の微粉末が発生した。 実験例3−(1)〜
    (3)の組成では、微粉末の発生量は少量であった。 実験例3−(4)〜(6)のばあいと比較して、次工程の微粉末洗浄工程時間が短縮可能であった。

    【0111】また、ガラスクロスのほかの強化材を用いても前記と同様な結果がえられた。

    【0112】以上のように、シリコーンポリマー18〜
    26重量%、水酸化アルミニウム28〜37重量%、強化材41〜50重量%である樹脂成形物からなる消弧側板は、樹脂成形物製造時および、打ち抜き加工時の微粉末発生を防止でき、微粉末の洗浄が容易である。 さらには、当該消弧側板を配置した回路遮断器も振動による粉の発生量が少なく、接点不導通が防止できる。

    【0113】[実験例4]つぎに、さらに別のシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなる消弧側板についての加工性の評価を行なった。

    【0114】表3に示す配合にしたほかは実験例2と同様にして消弧板を作製し、同様の方法で消弧装置を作製した。 この消弧装置を用いたほかは実験例2と同じ方法で回路遮断器を作製した。 なお、金属水酸化物としては、水酸化カルシウムを用いた。 また、強化材としては、約50mmの長さに切断してあるガラス繊維を平面上に無定方向に散布し、接着剤を加えてマット状にしたガラスマットまたは実験例2と同じガラスクロスを用いた。

    【0115】この回路遮断器を用いて実験例2と同じ方法にて回路遮断試験を行なった後の回路遮断器の状態を目視で観察した。 結果を表3に示す。

    【0116】

    【表3】

    【0117】実験例4−(1)〜(6)の組成は、いずれもシリコーンポリマー22〜24重量%、金属酸化物として水酸化カルシウム28〜35重量%であるが、強化材として、実験例4−(1)〜(3)はガラスクロス41〜50重量%、実験例4−(4)〜(6)はガラスマット41〜50重量%である。 実験例4−(4)〜
    (6)の組成でえられた樹脂成形物からなる消弧側板を用いた消弧装置を回路遮断器に配置し、短絡遮断を実施したところ、消弧側板に亀裂が発生した。 実験例4−
    (1)〜(3)のばあいは、亀裂の発生は良好であった。

    【0118】また、水酸化カルシウムのほかの金属水酸化物を用いても前記と同様な結果がえられた。

    【0119】以上のように、シリコーンポリマー18〜
    26重量%、金属酸化物28〜37重量%、ガラスクロス41〜50重量%である樹脂成形物のカッティング時、消弧側板を保持する穴の打ち抜き時での亀裂発生を防止でき、短絡遮断後の消弧側板の破損を防止できる。

    【0120】[実験例5]つぎに、シリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなるエンドプレートについての評価を行なった。

    【0121】エンドプレートを、シリコーンポリマー2
    2重量%、金属水酸化物として水酸化アルミニウム33
    重量%および強化材として平織りのガラスクロス45重量%により構成したほかは比較例1と同じ方法により回路遮断器を作製し、実験例1と同じ方法により回路遮断実験を行なった。 その結果、筐体および筐体内部部品に変形や亀裂が生じておらず、メグ測定による回路遮断後の電源側端子と負荷側端子間の中央極の絶縁抵抗値が2
    〜5MΩであり、良好な結果であった。

    【0122】[実験例6]つぎに、シリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなるバリア板についての評価を行なった。

    【0123】シリコーンポリマー22重量%、金属水酸化物として水酸化アルミニウム33重量%および強化材として平織りのガラスクロス45重量%により構成したバリア板を固定接点とトグルリンク機構との間に設けたほかは比較例1と同じ方法により、回路遮断器を作製し、実験例1と同じ方法により回路遮断実験を行なった。 その結果、筐体および筐体内部部品に変形や亀裂が生じておらず、メグ測定による回路遮断後の電源側端子と負荷側端子間の中央極の絶縁抵抗値が8〜12MΩであり、良好な結果であった。

    【0124】[実験例7]つぎに、別の消弧装置についての評価を行なった。

    【0125】図3に示すような消弧板41aの切込みの内側に細隙板42を設けた消弧装置を作製した。 なお、
    この消弧装置は、鋼板からなる消弧板41a、ポリエステル20重量%、水酸化アルミニウム35重量%およびガラスマット45重量%からなる消弧側板41b、およびシリコーンポリマー22重量%、金属水酸化物として水酸化アルミニウム33重量%および強化材としてガラスクロス45重量%からなる細隙板42により作製した。

    【0126】この消弧装置を用いたほかは、比較例1と同じ方法により、回路遮断器を作製し、実施例1と同じ方法で回路遮断実験を行なった。 その結果、筐体および筐体内部部品に変形や亀裂が生じておらず、メグ測定による回路遮断後の電源側端子と負荷側端子間の中央極の絶縁抵抗値が14〜20MΩであり、良好な結果であった。

    【0127】[実験例8]ベース部とカバー部との嵌合面にシリコーンペーストを塗布した回路遮断器についての評価を行なった。

    【0128】ベース部とカバー部との嵌合面に、シリコーンオイル69重量%を含むシリコーンペーストを塗布したほかは比較例1と同じ方法で回路遮断器を作製し、
    メグ測定を異極端子間で測定するほかは、実験例1と同じ方法により回路遮断実験を行なった。 その結果、筐体および筐体内部部品に変形や亀裂が生じておらず、メグ測定による回路遮断後の異極端子間の絶縁抵抗値が2〜
    5MΩであり、良好な結果であった。

    【0129】[実験例9]ハンドルのノブに対する裏面にシリコーンペーストを塗布した回路遮断器についての評価を行なった。

    【0130】ハンドルのノブに対する裏面に実験例8と同じシリコーンペーストを塗布したほかは比較例1と同じ方法で回路遮断器を作製し、回路遮断器をON状態にして、ノブ以外の外部から接触可能なハンドル表面と電源側端子間とのメグ測定を行なうほかは、実験例1と同じ方法により回路遮断実験を行なった。 その結果、筐体および筐体内部部品に変形や亀裂が生じておらず、メグ測定による回路遮断後の電源側端子とノブ以外の外部から接触可能なハンドル表面との絶縁抵抗値が2〜10M
    Ωであり、良好な結果であった。

    【0131】[実験例10]クロスバーの表面にシリコーンペーストを塗布した回路遮断器についての評価を行なった。

    【0132】クロスバーの表面に実験例8と同じシリコーンペーストを塗布したほかは比較例1と同じ方法で回路遮断器を作製し、メグ測定を異極端子間で測定するほかは、実験例1と同じ方法により回路遮断実験を行なった。 その結果、筐体および筐体内部部品に変形や亀裂が生じておらず、メグ測定による回路遮断後の異極端子間の絶縁抵抗値が5〜8MΩであり、良好な結果であった。

    【0133】[実験例11]トリップバーの表面にシリコーンペーストを塗布した回路遮断器についての評価を行なった。

    【0134】トリップバーの表面に実験例8と同じシリコーンペーストを塗布したほかは比較例1と同じ方法で回路遮断器を作製し、メグ測定をトリップバー表面の両極間で測定するほかは、実験例1と同じ方法により回路遮断実験を行なった。 その結果、回路遮断後のトリップバー表面の両極間の絶縁抵抗値が0.8〜2.0MΩであり、良好な結果であった。

    【0135】[実施例12]筐体の内表面全体にシリコーンペーストを塗布した回路遮断器についての評価を行なった。

    【0136】回路遮断器の筐体の内表面全体に実施例8
    と同じシリコーンペーストを塗布したほかは、比較例1
    と同じ方法で回路遮断器を作製し、実験例1と同じ方法により回路遮断実験を行なった。 その結果、筐体および筐体内部部品に変形や亀裂が生じておらず、メグ測定による回路遮断後の電源側端子と負荷側端子間の中央極の絶縁抵抗値が10〜20MΩであり、良好な結果であった。

    【0137】[実験例13]シリコーンポリマーおよびシリコーンペースト中のシリコーン低分子量環状体の含有量についての評価を行なった。

    【0138】表4に記載の量のシリコーン低分子量環状体を含むシリコーンペーストを用いて、実験例1と同じ方法で回路遮断器を作製し、回路開閉を繰り返し、マイクロスイッチの可動接点と固定接点との抵抗値が無限大になる開閉回数をつぎの方法で測定した。

    【0139】図10はシリコーンポリマーまたはシリコーンペーストに含有されるシリコーン低分子量環状体がマイクロスイッチ開閉接点に与える影響を評価するための装置の略図である。 図10において、51は回路遮断器、52はマイクロスイッチを搭載した付属部品、53
    はシリコーンペースト、54はデシケータ、55は恒温槽、56は制御電源である。 回路遮断器51にマイクロスイッチを搭載した付属部品52を配置し、制御電源5
    6とつなぎ、デシケータ54の中に設置する。 シリコーンポリマーまたはシリコーンペースト53は、マイクロスイッチを搭載した付属部品52の近傍に設置する。 このデシケータ54を恒温槽55に入れ、温度を85℃に保つ。 マイクロスイッチは125V、100mAの通電を行ない、30分間に1回マイクロスイッチの接点が開離する制御が施されている。 この試験はマイクロスイッチの開閉を10000回まで実施する。 開閉10000
    回までに、マイクロスイッチが不導通になるばあいは、
    その開閉回数を記録する。

    【0140】なお、低分子量シリコーン量とは、つぎの式:

    【0141】

    【化10】

    【0142】(ここで、mは3〜10の整数である)で表わされるシリコーン低分子量環状体の合計含有量(シリコーンペーストの重量に対するシリコーン低分子量環状体の重量(ppm)で表わす)のことである。

    【0143】低分子量シリコーン環状体の合計含有量の定量化はつぎの方法で行なった。

    【0144】 分析装置 :島津製作所製ガラスクロマトグラフGC−16A カラム :OV−17 溶 媒 :油分分析用の四塩化炭素 キャリアガス:純度99.99%以上の窒素ガス 定 量 :デカメチルシクロペンタシロキサンにて面積換算 シリコーンポリマーからなる樹脂成形物は、1g分を約1mm程度に細かく刻み、油分分析用の四塩化炭素10
    ccで常温24時間放置し、低分子量シリコーンを抽出した。 シリコーンペースト中のシリコーンオイルは、シリコーンオイル液を油分測定用の四塩化炭素で10%に希釈後、試料とした。

    【0145】

    【表4】

    【0146】表4の結果から、低分子量シリコーン10
    00ppm以上では、4000回以下の開閉回数で接点不導通を発生した。 低分子量シリコーン500ppm以下では、10000回の開閉後も接点の状態は良好であった。 従って、本発明の回路遮断器に用いうるシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物、シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物の皮膜、もしくはシリコーンペーストに含有される前記シリコーン低分子量環状体の合計含有量が、500ppm以下のばあい、回路遮断器に備えられる付属装置中に設けられるマイクロスイッチ、および回路遮断器が設置されている配電盤内の他の装置に用いられるマイクロスイッチの接点不導通を防止する。

    【0147】以上、各実験例を説明したが、各実験例において説明したそれぞれの構成を組み合わせて回路遮断器を製造することは、その効果に重畳作用があることは明白である。

    【0148】

    【発明の効果】本発明の回路遮断器はアークにさらされる樹脂製の部分がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物で構成されているか、シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で構成されているか、もしくは該樹脂製の部分にシリコーンペーストが塗布されているので、これらシリコーンポリマーまたはシリコーンオイルがアーク熱により分解されても、シリコーンポリマーまたはシリコーンオイル中の主鎖である

    【0149】

    【化11】

    【0150】の繰り返し鎖はガス化されることはなく、
    無機物シリカ(SiO 2 )となり絶縁体化する。 そのため前記シリコーンポリマーを含有する樹脂成形物がアークにさらされるとアーク熱により該樹脂または樹脂成形物の表層のシリコーンポリマーが分解され、この樹脂成形物の表層が前記無機物シリカで覆われるので、この樹脂または樹脂成形物の絶縁抵抗値が低下することを抑制できる。 また、前記シリコーンペーストが塗布されている回路遮断器がアークにさらされると、アーク熱により、該シリコーンペーストのシリコーンオイルが分解され、この樹脂製の部分の表面が前記無機物シリカで覆われるので、この樹脂製の部分の絶縁抵抗値が低下することを抑制できる。 また、シリコーンポリマーを含有せず、かつシリコーンペーストが塗布されていない樹脂成形物や樹脂製の部分がアークにさらされるばあいに比べて、これらシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物やシリコーンペーストが塗布されている樹脂製の部分がアークにさらされるばあい、シリコーンポリマーまたはシリコーンペースト中の前記主鎖である繰り返し鎖はガス化されず、無機物シリカとなるためにアーク熱による分解ガス量が少ないので、発弧時の前記筐体の内部の気体圧力の増加が低減され、筐体内部部品や筐体の変形、破損を防止することができる。

    【0151】また前記回路遮断器の消弧側板がシリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなることにより前記のように消弧側板がアークにさらされたばあいでも、
    この消弧側板の絶縁抵抗値の低下を抑制でき、消弧板側の絶縁性の低下を防止できる。 また消弧板間が同電位になり、消弧板間のアーク電圧が維持できず、遮断不能になることを防止できる。

    【0152】また、前記消弧側板がシリコーンポリマー18〜26重量%、とくに21〜23重量%、金属水酸化物28〜37重量%、とくに31〜34重量%および強化材41〜50重量%、とくに44〜46重量%からなることにより、前記消弧側板の打ち抜き加工時にクラックが生じにくい。 また、前記消弧側板を含む消弧装置や筐体がアークにさらされたときアーク熱により消弧側板を構成する金属水酸化物が分解されてH 2 O、O 2およびO(原子状酸素)が発生する。 このH 2 O、O 2およびOが、このアークにより同時に発生する金属蒸気、金属液滴および遊離炭素を充分に酸化して、非導電性の金属酸化物、一酸化炭素および二酸化炭素にするので、アーク発生後の消弧側板および回路遮断器内表面の絶縁性が低下することを抑制できる。 また、通電中の回路遮断器の電極開離時には、電極接点間でアークが発生し、通常4000〜6000℃程度の温度になる。 この結果、電極、接点および回路遮断器内部構成金属材料が加熱され、この金属材料から金属蒸気や溶融金属液滴が発生して飛散する。 このとき、アークのみならず、これら金属蒸気や溶融金属液滴によって、回路遮断器筐体および回路遮断器内部構成有機材料が分解され、遊離炭素が発生する。 このような遊離炭素も前記金属酸化物の分離ガスが非導電性化する。 また、前記強化材がアーク発生時の消弧側板のクラック発生を防止する。

    【0153】前記金属水酸化物として、水酸化アルミニウムを用いることにより、消弧側板製造時の打ち抜き加工時に微粉の発生が少なく、また加工後の消弧側板の洗浄が容易であり、回路遮断器に組み込まれたのちの振動による微粉の発生が少ないので接点間導電不良が生じにくくなる。

    【0154】前記強化材としては、ガラス繊維、無機鉱物およびセラミック繊維からなる群から選ばれた1種または2種以上のものがあげられる。 これら強化材は耐圧強度および消弧性能向上のために用いられる。 この強化材として、ガラスクロスを用いることにより、短絡遮断時の耐圧強度の点、および接点不導通を引き起こす恐れにある微粉が打ち抜き加工時に発生しにくくなる。

    【0155】また、一対の消弧側板により複数の消弧板が平行またはほぼ平行に保持され、回路遮断器内に設置したときに、それぞれの消弧板が前記可動接触子の動作を妨げないようにU字状の切込みを有する前記消弧装置の該U字状の切込み部に、さらに前記可動接触子の動作方向に平行またはほぼ平行に、シリコーンポリマーを含有する樹脂成形物からなる一対の板状体、シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物で被覆された一対の板状体、もしくはシリコーンペーストが塗布された一対の板状体が設けられていることにより、さらに好適にアークを冷却でき、アーク電流を小さく絞り込む限流が起こる細隙板効果を奏する。

    【0156】本発明の回路遮断器において、バリア板が設けられることにより、回路遮断器の電極の開離時に可動接点と固定接点との間に発生するアークにより、回路遮断器を構成する樹脂材料から発生する遊離炭素、および可動接点、固定接点ならびに回路遮断器を構成する金属材料から発生する金属蒸気や飛散する溶融金属液滴が回路遮断器筐体内で負荷側方向に広がることを防止する。 このことにより、アークが発生しても回路遮断器筐体内におけるバリア板より負荷側の樹脂部分の絶縁性能の低下が抑制でき、回路遮断器全体として、回路遮断後の絶縁性は維持できる。 また、バリア板が前記消弧側板と同様の組成の材料からなることにより、バリア板がアークにさらされたばあいでも、前記と同様の理由から、
    回路遮断後のバリア板、消弧装置、筐体内表面の絶縁性を維持できる。

    【0157】また、本発明の回路遮断器において、エンドプレートが前記消弧側板と同様の組成の材料からなることにより、アークにさらされたばあいでもエンドプレートの表面は絶縁体化されるので、複数回にわたる高電流遮断を行なったあとでも、カバー部とベース部との絶縁性能の低下を抑制することができる。 また、アーク電流が端子部側に流れることを防止できる。

    【0158】また、本発明の回路遮断器におけるカバー部とベース部とを嵌合させてなる筐体の内表面にシリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物からなる薄膜が設けられているか、もしくはシリコーンペーストが塗布されていることにより、回路遮断器の回路遮断時に生じるアークにカバー部とベース部とを嵌合させてなる筐体がさらされたばあいでも、シリコーンペースト中のシリコーンオイルが分解して無機物シリカとなり、内表面が絶縁体化する。 このことにより、回路遮断器の絶縁性能の低下を抑制できる。 また、アークによる樹脂成分などの分解によるガス発生量が低減するため、前記筐体内部のガス圧が急激に上昇することを防止でき、筐体などの変形や破壊することがない。

    【0159】また、本発明の回路遮断器におけるベース部とカバー部との嵌合面に、シリコーンペーストが塗布されるかまたは、シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物からなる薄膜が設けられることにより、
    回路遮断器の回路遮断時に生じるアークに、この嵌合面がさらされたばあいでも回路遮断器のカバー部とベース部との絶縁性の低下を抑制できる。 また、前記と同様にしてアーク発生時に前記筐体内部のガス圧が急激に上昇することも防止できる。

    【0160】また、本発明の回路遮断器におけるクロスバーの表層部にはシリコーンペーストが塗布されていることにより、回路遮断器の回路遮断時に生じるアークに、このクロスバーがさらされたばあいでもクロスバーの絶縁性の低下を抑制できる。 また、アーク発生時に前記同様、前記筐体内部のガス圧が急激に上昇することも防止できる。 また、トリップバー表面の絶縁性の低下を防止できる。 このことは、たとえば引き外し装置を介しての、異極間の耐電圧試験(たとえば、短絡遮断後10
    00V、1分間印加する)で、絶縁破壊などを防止できることで判る。

    【0161】また、本発明の回路遮断器におけるハンドルのノブに対する裏面にシリコーンペーストが塗布されていることにより、回路遮断器の回路遮断時に生じるアークにハンドルのノブに対する裏面がさらされたばあいでも、この裏面の絶縁性の低下が抑制できる。 また、アーク発生時に前記と同様、前記筐体内部のガス圧が急激に上昇することも防止できる。

    【0162】また、前記シリコーンポリマーおよび前記シリコーンペースト中の、一般式:

    【0163】

    【化12】

    【0164】(ここで、mは3〜10の整数である)で表わされるシリコーン低分子量環状体の含有量が、前記シリコーンポリマーを含有する樹脂または樹脂成形物もしくはシリコーンペーストの重量に対して重量基準で5
    00ppm以下であることにより、シリコーンポリマーおよびシリコーンペーストの揮発量が少くなり、この揮発分がマイクロスイッチの接点間に侵入し接点導通不良をおこすことを防止できる。

    【図面の簡単な説明】

    【図1】 本発明の回路遮断器の一例を示す概略断面図である。

    【図2】 本発明の回路遮断器に用いうる消弧装置の一例を示す斜視図である。

    【図3】 本発明の回路遮断器に用いうる消弧装置の別の一例を示す斜視図である。

    【図4】 本発明の回路遮断器に用いうるエンドプレートの一例を示す斜視図である。

    【図5】 本発明の回路遮断器に用いうるベース部の一例を示す斜視図である。

    【図6】 本発明の回路遮断器に用いうるベース部の一例を一部切欠いて示した斜視図である。

    【図7】 本発明の回路遮断器に用いうるクロスバーを示す斜視図である。

    【図8】 本発明に用いうるハンドルを示す斜視図である。

    【図9】 本発明の回路遮断器の概略部分断面図である。

    【図10】 本発明に回路遮断器のマイクロスイッチの接点の導電性の評価装置の構成の説明図である。

    【図11】 従来の回路遮断器を示す概略側断面図であり電気的接続状態を示す。

    【図12】 従来の回路遮断器を示す概略部分側断面図であり、遮断状態を示す。

    【符号の説明】

    1 回路遮断器、2 可動接触子、3 可動接点、4
    固定接点、5 固定接触子、6 端子部、7 消弧装置、7a 消弧板、7b 消弧側板、8 トグルリンク機構、9 ハンドル、9a ノブ、9b 裏面、10
    引き外し装置、11 端子部、12 カバー部、13
    ベース部、13a ガイド溝、13b 内表面、14
    カバー部とベース部との嵌合面、15 エンドプレート、15a エンドプレートの排気孔、16 アークランナー、17 バリア板、19 クロスバー、30 アーク、40 シリコーンポリマーを含有する樹脂シート、41 消弧装置、41a 消弧板、41b 消弧側板、42 細隙板、51 回路遮断器、52 マイクロスイッチを搭載した附属部品、53 シリコーンペースト、54 デシケータ、55 恒温槽、56 制御電源、61 回路遮断器、62 可動接触子、63 可動接点、64 固定接点、65 固定接触子、66 端子部、67 消弧装置、67a 消弧板、67b 消弧側板、68 トグルリンク機構、69 ハンドル、69a
    ノブ、70 引き外し装置、71 端子部、72 カバー部、73 ベース部、73a ガイド溝、74カバー部とベース部との嵌合面、75 エンドプレート、7
    5a エンドプレートの排気孔、76 アークランナー、79 クロスバー、80 アーク。

    ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福谷 和則 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 山県 伸示 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内

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