【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ガス起動剤の昇華を利用して電源回路を遮断するガス式電源遮断装置に係り、特に、ワイヤーハーネスのショート時や車両衝突時等の異常発生時に電源回路を強制的に、かつ、確実に遮断できるコンパクトな電源遮断装置に関する。 【0002】 【従来の技術】図5は、従来の電源遮断装置が適用された電装システムの一例を示すシステム構成図である。 同図に示すように、この電装システム100は、車両のバッテリー101と車両各部に設けられた各負荷102〜 104とを、電線105を備えたワイヤーハーネス10 6により結線して電源回路を形成すると共に、この電源回路に電源遮断装置107を介挿している。 【0003】電源遮断装置107は、ワイヤーハーネス106のショート時や車両衝突時等の異常発生時にEC U108にて生成された回路遮断信号が入力されたときに、図6に基づいて以下説明するように、電源回路を遮断して、バッテリー101から各負荷102〜104への給電を停止させることができる。 【0004】図6は、図5の電源遮断装置107の一例を示すソレノイド式電源遮断装置107Aの構成図であり、同図(a)は上面図、同図(b)は側面図である。 【0005】このソレノイド式電源遮断装置107A は、図6(a)に示すように、ベース本体110上にシャフト111が配置されており、このシャフト111 は、ソレノイド式電源遮断装置107Aに回路遮断信号が入力される前の初期状態では、シャフト111を上方より押さえる構造のロック113により係止されているため、端子112aと端子112bをシャフト111により接続状態にして導通させている。 【0006】この状態では、電源回路の電流は、端子1 12a→シャフト111→端子112bの経路で流れ、 また、端子112a,112bは多点接触バネ構造であるため大電流を通電することができる。 【0007】また、回路遮断信号が入力されたときにソレノイド115を通電してプランジャ116を吸引し、 ロック113をシャフト111との係合状態から解除することにより、シャフト111がリリースバネ114から付勢された押圧力により前方へ押し出され、端子11 2aと端子112bとの間が遮断状態となるため、端子112a,112b間が電気的に開放され、バッテリー101から各負荷102〜104等への給電が停止されることになる。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図6の従来構造においては、同図(a)における矢印Aで示すシャフト111の軸方向に衝撃力が加わることに起因してソレノイド115のプランジャ116がレバー118 を引く誤作動を生じることがあり、この誤作動が生じるとロック113がシャフト111との係合状態から解除されてしまうという問題があった。 また、現在の技術水準ではソレノイド115を更に小型化することできず、 この種の電源遮断装置を更に小型化したいという要請に対処できないという問題があった。 【0009】本発明は上記の事情に鑑み、ワイヤーハーネスのショート時や車両衝突時等の異常発生時のみ、電源回路を強制的に、かつ、確実に遮断できるコンパクトな電源遮断装置を提供することを目的としている。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明は、請求項1では、車両のバッテリーと車両各部に設けられた各負荷とを結ぶ電源回路に介挿される一対の端子と、これらの各端子間をスライド移動により接離できるシャフトとを有し、前記各端子間を接続状態にする初期位置から前記各端子間を離脱状態にする遮断位置へと、前記シャフトをスライド移動させて前記電源回路を遮断する電源遮断装置において、前記各端子の配列方向に沿って前記シャフトをスライド移動させる押圧力を当該シャフトに付勢するリリースバネと、前記シャフトに係合させるロックと、このロックに前記シャフトのスライド移動を阻止させる押圧力を付勢するリセットバネと、前記ロックに連結されたピストンと、ガス起動剤の昇華を利用して前記リセットバネの押圧力を上回る逆向きの押圧力をピストンに付勢させるロック解除手段と、を具備し、回路遮断信号が入力されたときに、前記ロック解除手段により前記ピストンを作動させて前記シャフトから前記ロックを外し、前記シャフトを前記リリースバネによりスライド移動させることにより前記電源回路を遮断できるようにしたことを特徴としている。 【0011】請求項1によれば、電源回路に介挿される一対の端子間を接続状態にする初期位置にて、リリースバネによりスライド移動させる押圧力が付勢されたシャフトを、リセットバネによりシャフトのスライド移動を阻止させる押圧力が付勢されたロックに係合させており、また、ロック解除手段として、ガス起動剤の昇華を利用してリセットバネの押圧力を上回る逆向きの押圧力をピストンに付勢し、このピストンにロック作動版を介して、一体連結されたロックを解除する構成を適用してガス式電源遮断装置を構築しているので、ガス起動剤の昇華以外の衝撃等の要因でロックが解除されてシャフトがスライド移動してしまう事態を回避させることができる。 【0012】また、ロック解除手段として、ソレノイドを適用していないため、この種の電源遮断装置を更に小型化したいという要請に対処でき、また製造コストの削減を図るうえで好適なものとなる。 【0013】請求項2では、請求項1に記載のガス式電源遮断装置において、前記ロックは、前記リセットバネにより付勢される押圧力で元の係合位置に復帰させて前記シャフトをリセットさせることを特徴としている。 【0014】請求項2の発明によれば、シャフトの作動後、直ちにシャフトを初期位置にリセットできるので、 再び電源回路をクローズ状態にすることを容易に行える。 【0015】 【発明の実施の形態】図1は、本発明に係るガス式電源遮断装置が適用された電装システムの一実施形態を示すシステム構成図である。 【0016】同図に示すように、この電装システム1 は、車両のバッテリー2と車両各部に設けられたスターター3,オルタネータ4,イグニッションスイッチ(I GN. SW)5,その他負荷6等の各負荷とを、電線7 を用いて構成したワイヤーハーネス8により結線して電源回路を形成すると共に、この電源回路に本発明に係るガス式電源遮断装置9を介挿している。 なお、10はG センサ、11はエアバックECUであり、これらはガス式電源遮断装置9を作動させるために用いる。 また、1 2はハザード、13は電話(PHONE)、14はドアロック(D/L)であり、これらはガス式電源遮断装置9により電源回路を遮断しないシステム構成物品例である。 【0017】この電装システムでは、図2の遮断フローに示すように、車両が先行車両等の物体に衝突し、Gセンサ10から衝突信号がエアーバックECU11へと出力されると(ステップST1)、エアーバックECU1 1にて回路遮断信号が生成され、この生成された回路遮断信号がガス式電源遮断装置9へと出力される(ステップST2)。 【0018】これにより、ガス式電源遮断装置9は、図3及び図4に基づいて以下説明するように、電源回路を遮断して、バッテリー2からスターター3,オルタネータ4,イグニッションスイッチ(IGN.SW)5等の各負荷への給電を停止させることができる(ステップS T3)。 【0019】図3は、本発明に係るガス式電源遮断装置9の一実施形態の構成を示す要部側断面図である。 図4 は、図3に示す電源遮断装置9の構成図であり、同図(a)はロック解除前の初期状態を示す斜視図、同図(b)はロック解除後を示す要部斜視図である。 【0020】このガス式電源遮断装置9は、車両のバッテリーと車両各部に設けられた各負荷とを結ぶ電源回路に介挿される一対の端子15a,15bを有している。 また、ベース本体上にシャフト16が配置されており、 このシャフト16が作動する前である初期状態(図示の状態)にあっては、各端子15a,15bの配列方向に沿ってシャフト16をスライド移動させるための押圧力がリリースバネ17により付勢され、シャフト16の先端部がロック18に係合してシャフト16のスライド移動が阻止されている。 この状態では、各端子15a,1 5b間がシャフト16により接続状態にされている。 【0021】このため、電源回路の電流は、端子15a →シャフト16→端子15bのように流れ、また、各端子15a,15bは多点接触バネ構造のため大電流を通電することができる。 【0022】また、シャフト16の移動を阻止するロック18としては、シャフト16のスライド移動を阻止させる押圧力をリセットバネ19により付勢されてロック状態が得られるようにしている。 このため、ロック18 をシャフト16との係合状態から解除すると、シャフト16がリリースバネ17から付勢された押圧力により前方(矢印A1方向)へ押し出され、各端子15a,15 b間が遮断状態になる。 【0023】また、ロック18には、ロック作動板20 を介してピストン21が連結されており、このピストン21には、イグナイター22に収容されたガス起動剤2 3の昇華を利用してリセットバネ19の押圧力を上回る逆向きの押圧力を付勢させるようにしている。 この場合、回路遮断信号がイグナイター22に印加されると、 ガス起動剤23が昇華し、このガス起動剤23の昇華で発生したガスによりピストン21がリセットバネ19の押圧力を上回る逆向きの押圧力を受けて作動し、シャフト16からロック18が強制的に外される。 よって、ガス起動剤23の昇華以外の衝撃等の要因でロック18が解除されてシャフト16がスライド移動してしまう事態を回避させることができる。 【0024】また、ロック解除手段として、ソレノイドを適用していないため、この種の電源遮断装置を更に小型化したいという要請に対処でき、また製造コストの削減を図るうえで好適なものとなる。 【0025】また、ロック18は、リセットバネ19により付勢される押圧力で元の係合位置に復帰させてシャフト16をリセットできるので、シャフト16の作動後、直ちにシャフト16を初期位置にリセットし、再び電源回路をクローズ状態することを容易に行える。 【0026】このように、本発明に係るガス式電源遮断装置9は、回路遮断信号がイグナイター22に印加されると、ガス起動剤23が昇華し、このガス起動剤23の昇華で発生したガスによりピストン21がリセットバネ19の押圧力を上回る逆向きの押圧力を受けて作動し、 シャフト16からロック18が強制的に外される構成であるため、ワイヤーハーネスのショート時や車両衝突時等の異常発生時のみ、電源回路を強制的に、かつ、確実に遮断できる。 【0027】 【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明によれば、電源回路に介挿される一対の端子間を接続状態にする初期位置にて、リリースバネによりスライド移動させる押圧力が付勢されたシャフトを、リセットバネによりシャフトのスライド移動を阻止させる押圧力が付勢されたロックに係合させており、また、ロック解除手段として、ガス起動剤の昇華を利用してリセットバネの押圧力を上回る逆向きの押圧力をピストンに付勢し、このピストンに連結されたロックを解除する構成を適用してガス式電源遮断装置を構築しているので、ガス起動剤の昇華以外の衝撃等の要因でロックが解除されてシャフトがスライド移動してしまう事態を回避させることができる。 【0028】また、ロック解除手段として、ソレノイドを適用していないため、この種の電源遮断装置を更に小型化したいという要請に対処でき、また製造コストの削減を図るうえで好適なものとなる。 【0029】請求項2の発明によれば、シャフトの作動後、直ちにシャフトを初期位置にリセットできるので、 再び電源回路をクローズ状態にすることを容易に行える。 から明らかなように、本発明によれば、ワイヤーハーネスのショート時や車両衝突時等の異常発生時のみ、 電源回路を強制的に、かつ、確実に遮断できると共に、 コンパクトで取り扱い容易なガス式電源遮断装置を提供することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係るガス式電源遮断装置が適用された電装システムの一実施形態を示すシステム構成図である。 【図2】図1の電装システムの遮断フローを示すフローチャートである。 【図3】本発明に係るガス式電源遮断装置の一実施形態の構成を示す要部側断面図である。 【図4】図3に示したガス式電源遮断装置の一実施形態の構成を示す斜視図である。 【図5】従来の電源遮断装置が適用された電装システムの一例を示すシステム構成図である。 【図6】従来の電源遮断装置の一例を示す構成図である。 【符号の説明】 1 電装システム 2 バッテリー 3 スターター 4 オルタネータ 5 イグニッションスイッチ(IGN.SW) 6 その他負荷 7 電線 8 ワイヤーハーネス 9 ガス式電源遮断装置 10 Gセンサ 11 エアーバックECU 12 ハザード 13 電話 14 ドアロック 15a,15b 端子 16 シャフト 17 リリースバネ 18 ロック 19 リセットバネ 20 ロック作動板 21 ピストン 22 イグナイター 23 ガス起動剤 |