車両用ドアハンドル部材及び車両用外装部材

申请号 JP2017004221 申请日 2017-01-13 公开(公告)号 JP2018112026A 公开(公告)日 2018-07-19
申请人 株式会社アルファ; 学校法人関東学院; 发明人 伊藤 孝; 長谷 一徳; 塚野 哲幸; 水島 賢治; 塚田 一男; 坂倉 弘晃; 本間 英夫; 渡邊 充広;
摘要 【課題】内部に静電容量センサが配される車両用ドアハンドル部材において、金属光沢を有する加飾が施されながらも、静電容量センサの誤作動を防止し得る車両用ドアハンドル部材を提供する。 【解決手段】樹脂製のドアハンドル基体32の表面上に、プライマー層34と、クラックを有する無電解めっき層36と、トップコート層38とを順次有し、無電解めっき層36が、1mm 2 当たり2〜1000個の隔離領域に分離するようにクラックが形成されている車両用ドアハンドル部材である。無電解めっき層36の隔離領域は、1mm 2 当たり2〜150個であることが好ましい。 【選択図】図4
权利要求

樹脂製のドアハンドル基体の表面上に、プライマー層と、クラックを有する無電解めっき層と、トップコート層とを順次有し、 前記無電解めっき層が、1mm2当たり2〜1000個の隔離領域に分離するようにクラックが形成されていることを特徴とする車両用ドアハンドル部材。前記無電解めっき層の隔離領域が、1mm2当たり2〜150個である請求項1に記載の車両用ドアハンドル部材。前記ドアハンドル基体の裏面側に静電容量センサを備える請求項1又は2に記載の車両用ドアハンドル部材。樹脂製の基体の表面上に、プライマー層と、クラックを有する無電解めっき層と、トップコート層とを順次有し、 前記無電解めっき層が、1mm2当たり2〜1000個の隔離された領域に分離するようにクラックが形成されていることを特徴とする車両用外装部材。

说明书全文

本発明は、車両用ドアハンドル部材及び車両用外装部材に関し、特に、静電容量センサを内蔵するのに適した車両用ドアハンドル部材及び車両用外装部材に関する。

近年、自動車などの車両のドアの外側に設けられたドア開閉用ドアハンドルには静電容量センサが内蔵され、当該静電容量センサにより人がドアハンドルに触れたことを検知してドアのロック又はアンロックを行うシステムが普及しつつある。

一方、車両用ドアハンドルは全体を金属で構成するのではなく、樹脂で構成された基体に対して蒸着やめっきなどの成膜技術により金属薄膜を形成して金属調に加飾するものが主流となっている。ところが、そのような車両用ドアハンドルに静電容量センサが内蔵された場合、特定の部位で静電容量センサを機能させることができず誤作動が生じることがあった。これは、金属調に加飾するために形成した金属薄膜が連続膜になっていて導電性を有することから、表面のどの場所に触れても静電容量センサが感応してしまうためである。

そこで、そのような問題を解決するため種々の提案がなされている。例えば、特許文献1においては、絶縁体からなるドアハンドル基体の一側面(車両に配備したときに外側となる面)に、無機薄膜層と、互いに分離された島状の金属粒子の集合体からなり、無機薄膜層の表面に被着された金属薄膜層(インジウムなど)とが設けられた構成のドアハンドルが提案されている。当該ドアハンドルにおいては、金属薄膜層が海島構造、すなわち不連続膜となっているため、内部に静電容量センサを配しても誤作動が生じないと考えられる。

特開2012−225041号公報

しかしながら、特許文献1に記載のドアハンドルにおいては、金属薄膜層は蒸着によって形成されることから、立体構造であるドアハンドルに形成される金属薄膜層の膜厚にバラツキが生じる。そして、金属薄膜層が厚く形成された部位においては、連続膜となってしまうことがあり、結果的に静電容量センサの誤作動の原因となる。また、インジウムは高価であるため、製造コストのアップにつながることとなる。

以上の問題は、車両用のドアハンドルの部材のみならず、内部に静電容量センサが配される車両用外装部材であって、立体構造を有する部材であれば起こり得る問題である。

本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、内部に静電容量センサが配される車両用ドアハンドル部材又は車両用外装部材において、金属光沢を有する加飾が施されながらも、静電容量センサの誤作動を防止し得る車両用ドアハンドル部材又は車両用外装部材を提供することにある。

上記課題を解決する本発明は以下の通りである。 (1)樹脂製のドアハンドル基体の表面上に、プライマー層と、クラックを有する無電解めっき層と、トップコート層とを順次有し、 前記無電解めっき層が、1mm2当たり2〜1000個の隔離領域に分離するようにクラックが形成されていることを特徴とする車両用ドアハンドル部材である。

(2)無電解めっき層の隔離領域が、1mm2当たり2〜150個である前記(1)に記載の車両用ドアハンドル部材である。

(3)ドアハンドル基体の裏面側に静電容量センサを備える前記(1)又は(2)に記載の車両用ドアハンドル部材である。

(4)樹脂製の基体の表面上に、プライマー層と、クラックを有する無電解めっき層と、トップコート層とを順次有し、 前記無電解めっき層が、1mm2当たり2〜1000個の隔離された領域に分離するようにクラックが形成されていることを特徴とする車両用外装部材である。

本発明によれば、内部に静電容量センサが配される車両用ドアハンドル部材又は車両用外装部材において、金属光沢を有する加飾が施されながらも、静電容量センサの誤作動を防止し得る車両用ドアハンドル部材又は車両用外装部材を提供することができる。

本発明の一実施形態に係る車両用ドアハンドル部材を含む車両用ドアハンドルの斜視図である。

図1に示す車両用ドアハンドルの上面図である。

図2に示す車両用ドアハンドルのA−A線に沿った断面図である。

本発明の車両用ドアハンドル部材の層構成の一例を示す断面図である。

試験片の静電容量センサに対する反応試験の様子を示す模式図である。

図1とは別の実施形態に係る車両用ドアハンドルの斜視図である。

(A)自動車のバックドア側を示す後面図、(B)(A)のA−A線に沿った断面図である。

以下にまず、本発明の車両用ドアハンドル部材の実施形態について図面を参照して説明する。図1〜図3は、本発明を適用した車両用ドアハンドル部材12を含む車両用ドアハンドル10を示す。この車両用ドアハンドル10は、図1又は図3に示されるように概略アーチ形状をなす部分を有し、そのアーチ形状部分が、ドアの開閉に際して人が把持する把持部となっている。つまり、ドアの開閉時には車両用ドアハンドル部材12に人の手が接触することとなる。

図3に示すように、車両用ドアハンドル10は、概ね、車両用ドアハンドル部材12と裏蓋14とから構成されている。車両用ドアハンドル部材12と裏蓋14との間には、電極18aと、該電極18aと電気的に接続された、静電容量センサ等が内蔵された電子部品16とが配されている。電極18aは裏蓋14の内側面に接触している。また、電子部品16の外部には、その内部からの電極18bが延出しており、電極18bは車両用ドアハンドル部材12の内側面に接触している。そして、その接触領域の反対側、すなわち車両用ドアハンドル部材12を挟んで反対側の外側面が施錠用タッチ部20aをなし、裏蓋14を挟んで反対側のアーチ形状部分の内周面が解錠用タッチ部20bをなす。これらタッチ部20a、20bに人の手が接触したとき、静電容量の変化が電子部品16の内部の静電容量センサに検知される。

車両用ドアハンドル10を用いたドアの解錠システムは、例えば、電波の発受信をする機器(以下、「携帯機器」)と、車両内に設けられた当該携帯機器と通信を行うアンテナ装置、及び車両を制御する制御装置を有してなる。当該アンテナ装置は、電子部品16に内蔵してもよい。そして、車両のドアをロック、またはアンロックしようとする人が、上記携帯機器を携帯した状態で車両用ドアハンドル10の施錠用タッチ部20a又は解錠用タッチ部20bに手を接触させると、その接触を静電容量センサが検知し、その検知信号が車両内に設けられた制御装置に送られる。そして、その検知信号、及び携帯機器から発せられた電波の双方を車両内の制御装置が受信したときに、該制御装置がドアをロック(施錠用タッチ部20aにタッチされたとき)、またはアンロック(解錠用タッチ部20bにタッチされたとき)するよう制御される。

<車両用ドアハンドル部材> 次に、車両用ドアハンドル部材12について説明する。車両用ドアハンドル部材12は、図4に示すように、樹脂製のドアハンドル基体32の表面上に、プライマー層34と、クラックを有する無電解めっき層36と、トップコート層38とを順次有し、無電解めっき層36が、1mm2当たり2〜1000個の隔離された領域(以下、「隔離領域」とも呼ぶ。)に分離するようにクラックが形成されている。以下に、各構成要素について順次説明する。

[ドアハンドル基体] ドアハンドル基体は、所定の形状(例えば、図2に示す形状)に成形された樹脂からなる。当該樹脂としては、絶縁性を有する樹脂であればよく、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン(AES)、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル(ASA)、ナイロン6、ナイロン66、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアセタール(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、などを使用することができる。

[プライマー層] プライマー層は、ドアハンドル基体と無電解めっき層との間に位置する層であり、ドアハンドル基体の表面に無電解めっき層を形成する際に、触媒活性を有する金属粒子をドアハンドル基体に付着させる機能を果たす。そのような機能を果たすため、プライマー層は、非溶性ポリエステル樹脂を用いて形成された層であることが好ましい。このプライマー層により、無電解めっき層を形成する際に、ドアハンドル基体に対して触媒の付着を容易にすることができる。その結果、ドアハンドル基体の表面に金属光沢を有する金属被膜を形成することができる。

また、非水溶性ポリエステル樹脂を用いてプライマー層を形成するため、非水溶性であるが故にプライマー層がめっき液や触媒液に溶出することを防止し、プライマー層の剥離を防止することができる。さらに、めっき液や触媒液に対するプライマー層の溶出を防止することにより、めっき液や触媒液を長寿命化することができる。さらに、プライマー層を設けることにより、その表面に成膜された無電解めっき層の黒ずみ等を防止することができる。

プライマー層の形成に用いるポリエステル樹脂の数平均分子量は、2000〜30000であることが好ましい。数平均分子量が2000以上のポリエステル樹脂を用いてプライマー層を形成することにより、プライマー層を強い被膜とすることができる。また、数平均分子量が30000以下のポリエステル樹脂を用いてプライマー層を形成することにより、カールの発生を防止することができる。

プライマー層は、ポリエステル樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。具体的には、ポリビニルブチラール、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などを含ませることができる。これらのポリエステル樹脂以外の樹脂は、親水性及び疎水性のいずれでもよいが、プライマー層の溶出を防ぐという観点から非水溶性の樹脂であることが好ましい。これらのポリエステル樹脂以外の樹脂を用いて、プライマー層の表面の純水に対する接触を調整してもよい。但し、ポリエステル樹脂とともに、ポリエステル樹脂以外の樹脂を用いてプライマー層を形成する場合、上述したポリエステル樹脂は、プライマー層を構成する全樹脂成分の50質量%以上用いることが好ましく、80質量%以上用いることがより好ましく、90質量%以上用いることがさらに好ましい。

プライマー層の層厚は、ポリエステル樹脂を構成するモノマーの種類などにより異なるが、0.05μm〜2.0μmの範囲が好ましい。ドアハンドル基体の表面に当該範囲の層厚のプライマー層を設けることにより、ニッケル又はニッケル合金などの金属を隔離領域が生じるように析出させることができる。プライマー層の層厚が0.05μm未満となると、触媒の付着能が低下することがある。一方、プライマー層の厚みが2μmを超えると、金属光沢の低下や外観色のムラが発生しやすくなることがある。プライマー層の層厚は0.1μm〜1.0μmの範囲がより好ましい。プライマー層の厚みを0.1μm〜1.0μmの範囲とすることにより、触媒付着能に優れ、また、得られる無電解めっき層の金属光沢や外観色により優れる。

[無電解めっき層] 無電解めっき層は、クラックを有する層であって、1mm2当たり2〜1000個の隔離領域に分離するようにクラックが形成されている。このように、本実施形態に係る無電解めっき層は、クラックにより単位面積当たり特定個数の隔離領域に分離されることで連続層とはならないため、静電容量センサから離れた場所に手を触れた場合でも感応することはない。従って、内部に静電容量センサが配された場合でも誤作動が生じ難くなる。

また、後述するように、無電解めっき層は、文字通り無電解めっき法により形成される層であるため、平坦な構造のみならず、立体的な構造に対して形成される場合であっても層厚が均一となる。従って、ドアハンドル部材のどの場所においても層厚が均一の無電解めっき層が形成される。ひいては、ドアハンドル部材の形状によらず、全体として隔離領域に分離された状態、すなわち不連続層が形成される。

無電解めっき層を構成する金属としては、無電解めっきが可能な金属であればよく、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、銅、銅合金、銀、銀合金、錫、錫合金、金、金合金などが挙げられる。

ここで、1mm2当たりの隔離領域の数は、光学顕微鏡(例えば、倍率100倍)による観察により計数して得られる数値である。

上記の通り、本実施形態の無電解めっき層においては、1mm2当たりの隔離領域の数は2〜1000としているが、金属光沢に優れたものとするには、2〜250個とすることが好ましく、2〜150個とすることがより好ましい。

無電解めっき層の層厚は、十分な金属光沢を得ること観点から0.01〜0.2μmとすることが好ましく、0.05〜0.1μmとすることがより好ましい。

なお、無電解めっき層の上記のようなクラックを形成する方法については後述する。

[トップコート層] トップコート層は、表面の保護を目的として、無電解めっき層の上方の最表層に形成される。トップコート層としては、アクリルウレタン系、アクリル系、ウレタン系、メラミン系、アクリルメラミン系のクリア塗装などが挙げられ、中でも、耐環境性の観点から、アクリルウレタン系クリア塗装が好ましい。

トップコート層の層厚は、その下方に位置する層を十分に保護する観点から、20〜40μmとすることが好ましく、25〜35μmとすることがより好ましい。

トップコート層は、スプレー塗装、ディッピング方式、などにより形成することができる。具体的には、所望の層厚となるようにスプレー塗装などにより塗装し、熱乾燥によって硬化させることにより形成することができる。

<車両用ドアハンドル部材の作製> 以上の車両用ドアハンドル部材の作製方法について以下に説明する。

[ドアハンドル基体の作製] 所定の樹脂を用い、所望の車両用ドアハンドルの形状に成形する。成形方法については、特に限定はなく、公知の成形方法を適用することができる。

[プライマー層の形成] プライマー層は、既述の非水溶性ポリエステル樹脂、及び必要に応じて他の樹脂、他の任意成分を適当な溶媒に溶解させて得た塗布液を、ドアハンドル基体の表面上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布法としては、ディップコート、バーコート、スプレーコートなど、公知の塗布法を適用することができる。あるいは、ドアハンドル基体の形状によっては、ドアハンドル基体を構成する樹脂材料と、プライマー層を構成する非水溶性ポリエステル樹脂等とを共押し出しして成形することなどによりプライマー層を形成することもできる。

[無電解めっき層の形成] ドアハンドル基体の表面に設けられたプライマー層上に、無電解めっき法によりニッケル又はニッケル合金などの金属を析出させて、金属光沢を有する無電解めっき層を形成することができる。その後、加熱により無電解めっき層に内部応を生じさせ、クラックを発生させる。 ここで、無電解めっきを施す工程では、以下の(1)キャタライザ工程と、(2)アクセラレータ工程と、(3)アクチベータ工程と、(4)無電解めっき工程と、(5)クラック発生工程とを設けることが好ましい。以下、各工程について説明する。

(1)キャタライザ工程 キャタライザ工程は、プライマー層を設けたドアハンドル基体を上述したパラジウム及びスズのコロイド触媒(キャタライザ)に浸すことにより、プライマー層の表面に触媒としてのパラジウム金属を付着する工程である。このとき、少量のスズが2価又は4価のスズ塩としてプライマー層の表面に付着する。

本工程で用いるコロイド触媒は、例えば、スズの水和物と、パラジウムの水和物とを水に溶解させ、界面活性剤を加えて激しく撹拌しながら還元剤を添加する方法等、従来公知の方法により調製することができる。また、キャタライザとして一般に市販されているものを用いることもできる。さらに、スズ水溶液に浸漬後、パラジウム水溶液に浸漬してもよい。

キャタライザ工程においては、プライマー層に触媒を付着させる際に、前処理として酸/アルカリ洗浄等の脱脂処理を行うことが好ましい。

また、一般的には、プライマー層に触媒を付着させる際に、前処理としてコンディショニングやプレディップという工程を行うことが好ましい。

(2)アクセレータ工程 アクセレータ工程では、濃度が0.1〜10質量%程度の硫酸、濃度が0.1〜10質量%程度の塩酸、0.1g/l〜400g/l程度の硫酸水素ナトリウム溶液からなる促進剤(アクセラレータ)に上述のドアハンドル基体を浸漬することにより、プライマー層の表面に付着している錫を酸化させて、Pdを還元し、無電解めっき反応を促進化する工程である。当該工程についても、上述のプライマー層の特性から当該工程を短時間で行うことができる。

(3)アクチベータ工程 アクチベータ工程は、必須の工程ではないが、0.1g/l程度〜1g/l程度の塩化パラジウム溶液に、上述のドアハンドル基体を浸漬することにより、めっき初期析出をより均一的に反応させるために行ってもよい。

以上のように、(1)キャタライザ工程後に、(2)アクセレータ工程と、(3)アクチベータ工程とを行うことにより、ニッケル又はニッケル合金を析出させるための触媒金属核をプライマー層に強固に吸着させることができる。

(4)無電解めっき工程 次に、無電解めっき法により、プライマー層の表面に金属を析出させ金属被膜を形成する。当該工程では、金属被膜を構成する金属として、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、銀、銀合金、錫、錫合金、金及び金合金から選択された少なくとも一種を用いることが好ましい。ここで、例えば、ニッケルを析出させる場合、Ni−P浴、Ni−B浴、Ni−Cu−P浴等の従来公知のニッケルめっき浴を構成するニッケルめっき液に上述のドアハンドル基体を浸漬することにより、プライマー層に付着したパラジウム金属を触媒として、プライマー層の表面にニッケルを析出させる。このときに用いるニッケルめっき浴の種類に応じて、Ni−P、Ni−B、Ni−Cu−P等のニッケル合金が析出する。

(5)クラック発生工程 以上のようにして形成した無電解めっき層に内部応力を生じさせ、クラックを発生させる。内部応力を生じさせる手段としては、加熱又は冷却などが挙げられる。加熱により内部応力が生じるのは、ドアハンドル基体を構成する樹脂と、プライマー層の構成材料と、無電解めっきそれぞれの膨張率に差があるからである。ただし、本実施形態においては、ドアハンドル基体は樹脂からなるため、当該樹脂に悪影響を与えない程度の温度で加熱することが好ましい。すなわち、加熱温度としては、樹脂のガラス移転温度の±50℃の範囲で、かつ樹脂に悪影響を与えない程度の温度で実施することが好ましい。

以上のようにして、プライマー層の表面上に無電解めっき法により形成した無電解めっき層により、ドアハンドル基体の表面を不連続に覆うことができる。

一方、以上の構成は、車両用ドアハンドル部材12の表面上に、プライマー層34と、無電解めっき層36と、トップコート層38とを順次形成したが、これらの層は車両用ドアハンドル部材12と分離する装飾カバーに形成してもよい。すなわち、図6に示す車両用ドアハンドル10Aにおいては、車両用ドアハンドル部材12の表面の一部は、別部材としての装飾カバー40から構成されるが、上記各層は、装飾カバー40の表面に形成してもよい。それ以外の構成は、図1〜図3の構成と同様である。なお、装飾カバー40には、タッチ部20aを有し、タッチ部20aは電極18bと接続されるように構成されている。

また、図6の構成において、装飾カバー40を透明樹脂から形成してもよい。この場合、装飾カバー40の裏面に、プライマー層34と、無電解めっき層36と、トップコート層38とを順次形成することができる。

<車両用外装部材> 本実施形態の車両用外装部材は、例えば、サイドミラー、アンテナカバー、バックドアのフィニッシャー、窓枠メッキモールなど、車両に用いられる外装部材であって、その基体が樹脂からなるものが挙げられる。そして、既述の車両用ドアハンドルと同様に、樹脂製の基体の表面上に、プライマー層と、クラックを有する無電解めっき層と、トップコート層とを順次有し、無電解めっき層が、1mm2当たり2〜1000個の隔離された領域に分離するようにクラックが形成されている。以下、本実施形態の車両用外装部材としてフィニッシャーについて説明する。

図7(A)は自動車の後面図(バックドア側の面を示す図)であり、(B)は(A)のA−A線に沿ったフィニッシャー近傍の断面図である。図7に示す自動車60の後面にはバックドア62を備え、バックドア62の略中央部には、バックドア62を開閉操作するためのフィニッシャー64が設けられている。フィニッシャー64は、内部に静電容量センサ66を備え、既述の車両用ドアハンドル10を同様に、人が所定の形態機器を所持した状態で手を触れたとき、触れた位置に応じてバックドアのロック・アンロックがなされるように構成されている。このメカニズムは、既述の車両用ドアハンドル10と同様であるため説明を省略する。

フィニッシャー64の意匠面には、車両用ドアハンドル10と同様に、プライマー層と、無電解めっき層と、トップコート層とが順次形成されている。従って、フィニッシャー64の意匠面は無電解めっき層による金属光沢を有しつつも、当該無電解めっき層は連続層とはならないため、静電容量センサから離れた場所に手を触れた場合でも感応することはない。従って、内部に静電容量センサが配された場合でも誤作動が生じ難くなる。

以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

[実施例1〜16] (プライマー層の形成) PC/PETアロイ樹脂の試験片(75×100×3mm)を用意し、その試験片に非水溶性ポリエステル樹脂(高松油脂製(ペスレジンwac-15x、wac-17x)、互応化学(ぺレスコートZ-850、Z-730、RZ-570))を溶媒で希釈した塗布液をスプレー塗布し、その後、乾燥することにより、各実施例において表1に記載の層厚のプライマー層を形成した。

(無電解めっき層の形成) (a)キャタライザ工程 次に、プライマー層が形成された試験片を、パラジウム及びスズのコロイド触媒液(キャタライザー;ロームアンドハース社)に、45℃の条件下で、30秒間浸漬した。次いで、室温下にて水洗を4回行った。

(b)アクセレータ工程 次に、5%の塩酸に、キャタライザ工程を経た試験片を、各実施例において表1に記載の温度条件下で30秒浸漬した。次いで、室温下にて水洗を4回行った。

(c)アクチベータ工程 次に、0.3g/lの塩化パラジウムに、アクセレータ工程を経た試験片を、各実施例において表1に記載の温度条件下で30秒浸漬した。次いで、室温下にて水洗を4回行った。

(d)無電解めっき工程 そして、上述のキャタライザ工程、アクセレータ工程、アクチベータ工程を経て、プライマー層に触媒としてのパラジウム金属が吸着された試験片を、各実施例において表1に記載の温度、pHに調整したニッケルめっき浴(組成を以下に示す。)に各実施例において表1に記載の時間浸漬し、プライマー層の表面にニッケルが析出した無電解めっき層を得た。次いで、室温下にて水洗を4回行った。

〜めっき浴の組成〜 純水 グリシン :7.5g/L …錯化剤 クエン酸(無水) :19.2g/L …錯化剤 水酸化ナトリウム :20g/L …pH調整 硫酸アンモニウム :26.4g/L …緩衝剤 硫酸ニッケル(II)6水和物 :26.3g/L …金属塩 次亜リン酸ナトリウム(ホスフィン酸塩):21.2g/L …還元剤 ビスマス :1ppm(1ml)…安定剤 チオ硫酸ナトリウム :2ppm(2ml)…安定剤

(e)クラック発生工程 形成した無電解めっき層を、70〜80℃の温度下に10分間放置して乾燥させつつ、クラックを発生させた。この工程により、無電解めっき層において、単位面積当たり、各実施例において表1に記載の隔離領域が生じた。

(トップコート層の形成) 無電解めっき層を形成後、アクリルウレタン塗料をスプレー塗装し、その後乾燥させることで層厚20μmのトップコート層を形成した。

<評価> 1.隔離領域の個数 各実施例で得られた試験片の無電解めっき形成側の面の1mm2当たりの隔離領域の個数を、光学顕微鏡(倍率100倍)による観察により計数した。計数結果を表1に示す。

2.色調 各実施例で得られた試験片の無電解めっき形成側の面を、色差計(KONICA MINOLTA製: CM-700d、GM268plus)を用い、光沢値(ク゛ロス)、L値(明るさ)、a, b値(色味)を測定した。測定結果を表1に示す。

表1より、めっき時間が短く、めっき浴の温度が低い方が隔離領域の数が多くなる傾向にあることが分かる。また、隔離領域の数が多くなると光沢値が低下することが分かる。さらに、色味については、めっき時間が短く、pH、めっき浴温度が低い方がb値が低くなる傾向にあることが分かる。

[比較例1] プライマー層を形成しなかったことを除き、実施例2と同様にして試験片の表面に無電解めっき層を形成した。得られた無電解めっき層の表面を光学顕微鏡(100倍、500倍)で観察したところ、いずれの倍率でも隔離領域は観察されなかった。

[比較例2] PC/ABS樹脂の試験片に変更したこと以外は比較例1と同様にして試験片の表面に無電解めっき層を形成した。得られた無電解めっき層の表面を光学顕微鏡(100倍、500倍)で観察したところ、いずれの倍率でも隔離領域は観察されなかった。

(静電容量センサ反応試験) 次に、実施例2、6、10、14の試験片を用い、静電容量センサに対する反応試験を行った。具体的な試験方法は以下の通りである。

図5においては、各試験片の静電容量センサに対する反応試験の様子を模式的に示している。反応試験をするに際し、図5に示すように、静電容量の変化を感知する短冊状のセンサ電極50(74.5mm×10mm)を試験片52に貼付する。このセンサ電極50の一端には不図示の配線を介して制御基板54が接続されており、制御基板54は、センサ電極50の静電容量の変化情報をパソコンなどの情報出力装置に伝達する役割を果たす。反応試験は、試験片52の裏面側にセンサ電極50を貼付した状態で、図5に示す試験片52の表面側の測定領域A〜Eそれぞれに指を接触させてセンサ電極50が感知するか否かを確認することにより行った。なお、測定領域A〜Eそれぞれについて、センサ電極50から測定距離(センサ電極の一辺からの距離であり、センサ電極50から離れる方向をプラスとする)を、2mm〜−3mmまで変化させて試験を行った。また、各試験は10回ずつ行った。

[比較例3] 一方、比較用として、各実施例と同じPC/PETアロイ樹脂の試験片に対してインジウム蒸着により金属膜(膜厚:50nm)を形成した試験片についても同様に静電容量センサの反応試験を行った。

以上の静電容量センサ反応試験の結果を表2に示す。表2において、「X/10」の表記は、10回の試験中、静電容量センサがX回感応したことを示す。

表2より、各実施例は、比較例3と比べ遜色のない結果が得られた。そのため、各実施例においてインジウム蒸着と同程度の感応を示す静電容量センサ性能が得られたことが分かる。

10 車両用ドアハンドル 12 車両用ドアハンドル部材 14 裏蓋 16 電子部品 18a 18b 電極 20a 施錠用タッチ部 20b 解錠用タッチ部 32 ドアハンドル基体 34 プライマー層 36 無電解めっき層 38 トップコート層

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