【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、乗用車等の車両に搭載されるシートベルト巻取装置等において、回転体の回転方向を検出するために用いられるスイッチ、及びそれを用いたシートベルト巻取装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】自動車等に装備されるシートベルト巻取装置は、乗員が着席してシートベルトを引き出し、タングをバックル装置に締結した際に、その余分な引き出し分を吸収する機能を有している。 この機能を実現するために、従来のシートベルト巻取装置においては単一のリターンスプリングが使用されている。 シートベルトの装着の際には、人間がこのリターンスプリングの付勢力に抗してシートベルトを引き出し、タングをバックルに係合させてから手を離すと、リターンスプリングの力により、余分に引き出された部分が、人間の体にフィットするまでシートベルト巻取装置に引き込まれる。 【0003】以上説明したように、シートベルト巻取装置においては、 (1)余分に引き出されたシートベルトを、人間の体にフィットするまで確実に巻き取ること、また、人間が装着しない場合においては、引き出されたシートベルトを確実に収納部に収納するまで巻き取ること (2)正常装着した状態で乗員の胸部等に不必要な圧追感を与えないようにすること を同時に満足することが必要とされる。 しかしながら、 単一のリターンスプリングの付勢力を利用したシートベルト巻取装置においては、装着時における乗員の胸部への圧迫感を小さくするために付勢力の弱いスプリングを使用すると、ベルト巻取り時(収容時)の巻込み力が弱くなり、操作性、格納性が低下する。 反対に、巻取り時に充分な巻取り力を発揮するために付勢力の強いスプリングを使用すると、正常装着時における乗員の胸部への圧迫感が大きくなってしまうという問題があった。 【0004】また、従来のシートベルト巻取装置では、 単一のリターンスプリングが内蔵されているので、シートベルトの引き出し量が増すにつれてリターンスプリングが巻回されてその付勢力が増大し、シートベルトの引き出し量が増すにつれて、引き出し力も増大するという問題もあった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】このような問題点を解決する手段として、発明者らはリターンスプリングとモータを組み合わせてシートベルトの巻取を行う方式のシートベルト巻取装置を発明し、平成11年特許願第10 184号として特許出願した(以下「先願発明」という)。 この発明を含め、一般にモータを巻取りに使用したシートベルト巻取装置においては、人間がシートベルトを引き出すときにモーターの回転を止め、小さな力で引出しが可能なようにする必要がある。 これを実現する手段として、シートベルトが巻回されたスプールの軸の回転方向を検出し、これがシートベルト引出し方向に回転した場合にモータへの電力の供給を止める方式があり、前記先願発明においてもこうした手段を採用している。 【0006】先願発明に用いられている回転方向検出スイッチの概要を図5に示す。 ベースフレーム21にはスプール22が取り付けられており、スプール22にはシートベルトが巻回されて、スプール22が巻取方向に駆動されるとシートベルトが巻き取られる。 反対に、シートベルトが手動により引き出されると、スプール22は巻取方向と反対方向に回転する。 このスプール軸に直結されるスプール軸入力ギアにはリング状の溝23が設けられている。 【0007】回転方向検出スイッチは、スイッチプレート24とリミットスイッチ25から成り立っており、スイッチプレート24は、回動ピン26を軸として回動するようになっている。 スイッチプレート24の両端にはガイド24aが設けられ、スイッチプレートが所定範囲回動すると、ガイド24aがリング状溝23にぶつかることにより、その回動範囲(角度)が規制されている。 【0008】リング状溝23には、スイッチプレート2 4の円弧状縁辺24bが接触している。 円弧状縁辺24 bの縁辺に沿った内側には、円弧溝24cが形成されている。 このため、円弧状縁辺24bがリング状溝23に当接するとわずかに携み、押圧力が付与される。 これにより、スイッチプレート24は、リング状溝21の回転に伴い、滑ることなく回動できる。 【0009】図5は初期位置にあったスイッチプレート24(2点鎖線)が、スプール22のCW方向への回転(シートベルトの引き出しに対応)に伴い、CCW方向に回動した状態を示している。 この状態で、スイッチプレートの尾部に設けられた接点アーム24dがリミットスイッチ25の可動片を押してリミットスイッチ25をオンとさせる。 これにより、制御装置はシートベルトが引き出されたことを検知する。 【0010】以上説明した先願発明の回転方向検出スイッチにおいては、スイッチプレート24はある程度の弾性を有する樹脂のような材料で一体形成されている。 しかしながら、円弧状縁辺24bが弾性変形する量が小さいため、スプールの回転軸が偏心しているような場合には、十分な押し付け力が得られず、スイッチプレート2 4が回転しなかったり、逆に押し付け力が強すぎて、円弧状縁辺24bが破損したり磨耗することがあった。 また、同様の理由により、スイッチプレート24の製作許容誤差が小さくなり、かつ高い組み立て精度が要求されるという問題点があった。 さらには、リング状溝23を有するスプール軸入力ギアとスイッチプレート24を別々に組み立てなければならないので、組み立てが容易でないという問題点もあった。 【0011】本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、回転を検出する回転部材との相対位置精度がラフであっても確実に相対位置関係が検出できる回転方向検出スイッチを提供することを課題とし、さらには、組み立ての容易な回転方向検出スイッチを提供することをも課題とし、加えて、これらを使用したシートベルト巻取装置を提供することを課題とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための第1の手段は、軸の回転方向を検出するスイッチであって、回転体の外周に弾接するばね材と、当該ばね材を保持し、支点の回りに回動するスイッチプレートと、スイッチプレートの回動位置を検出するスイッチとを有してなり、前記スイッチプレートには、当該スイッチプレートの回動角を制限する部材が設けられていることを特徴とする回転方向検出スイッチ(請求項1)である。 【0013】本手段においては、スイッチプレートに保持されるばね部材が回転体の外周に弾接し、その際に発生する弾性力により回転体とばね部材の間に摩擦力が生じる。 よって、この摩擦力によりばね部材は回転体の回転に伴って移動し、それを保持するスイッチプレートが支点の周りに回動する。 スイッチプレートの回動は、リミットスイッチ、近接スイッチ等のスイッチにより検出され、それにより回転方向が検知できる。 なお、スイッチプレートには、その回動角を制限する部材が設けられているので、スイッチプレートの回動は所定範囲に抑えられる。 【0014】本手段においては、回転体に接する部材としてばね部材を使用しているので、その可能変形量が大きく、多少回転体の回転軸が偏心したり、回転体とスイッチプレートの総体取り付け位置が変化したりしても、 スイッチプレートを回動させるだけの力が得られなかったり、ばね部材やスイッチプレートが破損したりすることがない。 なお、スイッチプレートの回動角を制限する部材は、スイッチプレートと一体形成されていても差し支えない。 【0015】前記課題を解決するための第2の手段は、 前記第1の手段であって、前記回動角を制限する部材は、スイッチプレートの先端部両側に形成された突起部材であり、前記回転体に当接することによりスイッチプレートの回動を制限するものであって、当該突起部材の先端同士が連結部材で連結され、スイッチプレート先端部と突起部材と連結部材とで、前記回転体を囲む輪が形成されていることを特徴とするもの(請求項2)である。 【0016】本手段においては、スイッチプレートを組み込むとき、スイッチプレート先端部と突起部材と連結部材とで形成される輪の中に回転体を入れ、回転体とスイッチプレートをサブユニットとして組み込むことができる。 よって、回転方向検出スイッチの組み込みが容易になる。 なお、突起部材と連結部材は、スイッチプレートと一体形成されていてもよい。 【0017】前記課題を解決するための第3の手段は、 前記第1の手段又は第2の手段に係る回転方向検出スイッチを有してなることを特徴とするシートベルト巻取装置(請求項3)である。 【0018】本手段においては、これらの回転方向検出スイッチを使用しているので、確実にスプールの回転方向を検出でき、作動の確実なシートベルト巻取装置とすることができる。 また、前記第2の手段を使用した場合は、組み立てを容易に行うことができる。 【0019】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の例を図を用いて説明する。 図1は、本発明の実施の形態の1 例であるシートベルト巻取装置の分解斜視図である。 図1において、1はリテーナー、2はモーター、3はモーターギア、4はLギア、5はSギア、6は保持部材、7 はローラー、8はコネクトギア、9はブッシュギア、9 aは摺動部、9bはスプライン部、10はリターンスプリング、11はスプリングカバー、12は回転方向検出部、12aはスイッチプレート、12bはスイッチスプリング、13はリミットスイッチ、14はカバーである。 【0020】リテーナー1に取り付けられたモーター2 の駆動力は、モーターギア3からLギア4に伝達される。 そして、Sギア5、保持部材6、ローラー7で構成されるクラッチ機構を介してSギア5に伝達され、Sギア5からコネクトギア8を介してブッシュギア9に伝達される。 ブッシュギア9の回転軸にはリターンスプリング10が結合されており、ブッシュギア9の回転を、シートベルトの巻取方向に付勢している。 なお、実際のシートベルト巻取装置においては、ブッシュギア9のスプライン部9bに、シートベルトを巻き付けるスプールが結合されているが、図1においてはこの部分の図示を省略している。 なお、Lギア4、Sギア5、保持部材6はリテーナー1に設けられた回転軸に同軸状に保持され、 コネクトギア8はリテーナ1に設けられた別の回転軸に保持されている。 ブッシュギア9はカバー14に設けられた回転軸に保持されている。 【0021】ブッシュギア9には摺動部9aが設けられ、その外周部に回転方向検出部12のスイッチスプリング12bが弾接している。 そして、ブッシュギア9の回転方向に応じて、スイッチプレート12aが時計回り又は半時計周りに回動する。 ブッシュギア9がシートベルトが引き出される方向に回転したとき、スイッチプレート12aのストライカー部がリミットスイッチ13の可動片を押して、リミットスイッチ13をオンとする。 このリミットスイッチ13、スイッチプレート12a も、リテーナー1に保持されている。 モーター2は1方向回転のモーターであり、シートベルトを巻き取る方向、すなわち、リターンスプリング10の付勢方向と同一方向に駆動されるようになっている。 【0022】Lギア4中に組み込まれているSギア5、 ホールドブロック6、ローラー7は、クラッチ機構を構成するようになっており、ブッシュギア9が外力によりシートベルト引出し方向に回転したときは、Lギア4とSギア5の機械的な動力伝達を切り、シートベルトの引き出しの際に、モーター2が負荷とならないようになっている。 また、モーター2が回転していないときも、同様にLギア4とSギア5の機械的な動力伝達を切り、モーター2がリターンスプリング10の巻取力の負荷とならないようになっている。 これに対し、モーター2が駆動されるときは、このクラッチ機構によりLギア4からSギア5へ駆動力が伝達され、最終的にはブッシュギア9を介してシートベルトの巻取がモーター2の駆動力とリターンスプリングの付勢力の両方により行われる。 このクラッチ機構の詳細なメカニズムについては、本発明と関係が無いので説明を省略する。 【0023】本実施の形態は、回転方向検出部12とリミットスイッチ13からなる回転方向検出スイッチを有することに特徴がある。 この回転方向検出スイッチは、 ブッシュギア9が、シートベルトが引き出される方向に回転したときにリミットスイッチ13をオンとして、その出力によりモーター2の駆動を停止するために使用される。 【0024】図2に、回転方向検出部12の詳細図を、 図3にその斜視図を示す。 図2において、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A'断面図である。 これらの図を含め、以下の図において、発明の実施の形態で述べた前出の図において示された構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付して説明を省略する。 図2において、 12cは押さえ部、12dはストライカー、12eは回動軸穴、12fは回動角制限部(突起部材)である。 【0025】スイッチプレート12aには、スイッチスプリング12bが嵌め込まれ、a部とb部の間に挟まると共に、押さえ部12cによって押さえられて、自己の弾性力によりスイッチプレート12aに保持されて外れないようになっている。 スイッチスプリング12bは、 前述のようにブッシュギア9の摺動部9aに弾接し、摺動部9aとのフリクションにより摺動部9aの回転をスイッチプレート12aに伝達する。 【0026】これによりスイッチプレート12aは回動軸穴12eに嵌め込まれた回動軸を中心にして回動し、 それにより、ストライカー12dがリミットスイッチ1 3の可動片を押す。 スイッチプレート12aの先端部は回動角制限部12fとなっており、スイッチプレート1 2aが所定角回動すると、回動角制限部12fがブッシュギア9の摺動部9aと接触し、そこでスイッチプレート12aの回動が停止する。 その後は、スイッチスプリング12bと摺動部9aが摺動するが、そのフリクションはあまり大きくないので、スイッチスプリング12b や摺動部9aが磨耗することがない。 【0027】本実施の形態においては、前述の従来技術におけるスイッチプレートと異なり、摺動部9aと接触する部材としてスイッチスプリング12bを使用しているので、スイッチスプリング12bが弾性変形できる量が大きい。 そのため、スプールの回転軸が偏心しているような場合であっても、十分な押し付け力が得られ、且つ、押し付け力が強すぎることがないので、スイッチプレートが回転しなかったり、部品が磨耗することがないまた、スイッチプレートの製作許容誤差が大きくなり、 組み立て精度は粗くてよい。 【0028】図4に回転方向検出部12の他の例の詳細図を示す。 この実施の形態においては、2つの回動角制限部12fの先端が結合部材12gで結合され、スイッチプレート先端部12hと、回転角制限部12fと、結合部材12gで輪が形成されている。 このスイッチプレートの作動は、図2に示したものと同じである。 【0029】この実施の形態においては、前記輪の中に、ブッシュギア9の摺動部9aが嵌まり込むようになっている。 よって、図1に示すシートベルト巻取装置を組み立てるとき、ブッシュギア9の摺動部9aに、この輪部を用いて回転方向検出部12を引っ掛けてサブユニットとし、ブッシュギア9を組み込むときにスイッチプレート12aも同時に組み込まれるようにして、その後、スイッチプレート12aの回動軸穴12eに回動軸を差し込むようにすれば、簡単に組み付けを行うことができる。 【0030】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のうち請求項1に係る発明においては、回転体に接する部材としてばね部材を使用しているので、その可能変形量が大きく、多少回転体の回転軸が偏心したり、回転体とスイッチプレートの総体取り付け位置が変化したりしても、スイッチプレートを回動させるだけの力が得られなかったり、ばね部材やスイッチプレートが破損したりすることがない。 また、組み付け精度も粗くてよい。 【0031】請求項2に係る発明においては、これに加え、回転体とスイッチプレートをサブユニットとして組み込むことができる。 請求項3に係る発明においては、 確実にスプールの回転方向を検出でき、作動の確実なシートベルト巻取装置とすることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施の形態の1例であるシートベルト巻取装置の分解斜視図である。 【図2】本発明の実施の形態の1例である回転方向検出スイッチの回転方向検出部の詳細図である。 【図3】図2に示す回転方向検出部の斜視図である。 【図4】回転方向検出部の別の例を示す詳細図である。 【図5】先願発明に用いられている回転方向検出スイッチの概要を示す図である。 【符号の説明】 1…リテーナー、2…モーター、3…モーターギア、4 …Lギア、5…Sギア、6…保持部材、7…ローラー、 8…コネクトギア、9…ブッシュギア、9a…摺動部、 9b…スプライン部、10…リターンスプリング、11 …スプリングカバー、12…回転方向検出部、12a… スイッチプレート、12b…スイッチスプリング、12 c…押さえ部、12d…ストライカー、12e…回動軸穴、12f…回動角制限部(突起部材)、12g…結合部材、13…リミットスイッチ、14…カバー |