【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、小型推進艇の盗難防止装置に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に、図7に示すような小型推進艇1 は、水面を滑走しつつ急旋回や波を利用してのジャンプなどの種々の運転を行うために、艇体の揺れや傾斜の変動が激しいので運転者Mが落水することがしばしば生じる。 そこで、運転者Mが落水したときに艇体が遠くに走り去らないようにするために、エンジンを停止させる必要がある。 【0003】このために、運転者Mの手首にランヤードスイッチ2のロープ3の一端のバンド4を嵌め込むとともに、図8に示すように、このロープ3の他端のU字状ロックプレート5は、ハンドル7のグリップ部7aの近傍に設けられたボックス部7bに取付けられたストップスイッチ8に挟み込み、運転者Mが落水してロックプレート5がストップスイッチ8から抜け外れたときにストップスイッチ8がオンしてエンジンを停止させるようにしたものが提案されている。 なお、9はボックス部7b に取付けられたスタートスイッチである。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のような小型推進艇1には、自動車のような専用のキースイッチが無くて、ランヤードスイッチ2のロックプレート5 を挟み込んでストップスイッチ8をオフするとともにスタートスイッチ9をオンするだけでエンジンを起動させることができる。 【0005】このため、別の小型推進艇用のランヤードスイッチ2のロックプレート5をストップスイッチ8に挟み込んだり、あるいはロックプレート5に類似した板切れ等をストップスイッチ8に挟み込んだりしても、ストップスイッチ8をオフさせてスタートスイッチ9をオンするだけでエンジンを起動させることができるから、 小型推進艇の盗難対策上からは好ましいものではなかった。 【0006】本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、使い勝手を変えることなく盗難を確実に防止できる小型推進艇の盗難防止装置を提供することを目的とするものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の請求項1は、ランヤードスイッチのロックプレートをストップスイッチに挟み込み、このロックプレートがストップスイッチから抜け外れたときにストップスイッチがオンしてエンジンを停止させるようにした小型推進艇において、上記ロックプレートが合成樹脂で形成され、このロックプレートにIDコード内蔵のトランスポンダがインサートモールドされると共に、上記ストップスイッチあるいはストップスイッチ近傍に、ロックプレートのトランスポンダのIDコード信号の受信用アンテナコイルが取付けられる一方、エンジンのスタートスイッチのオンで、アンテナコイルで受信したIDコード信号からIDコードを読み込む読み込み回路と、この読み込まれたIDコードと予め登録されたIDコードとを照合する照合回路と、この照合されたIDコードが一致したときにはエンジンを起動させ、一致しないときにはエンジンを起動させないエンジン起動制御回路とを備えていることを特徴とする小型推進艇の盗難防止装置を提供するものである。 【0008】請求項1によれば、ランヤードスイッチのロックプレートをストップスイッチに挟み込んで、スタートスイッチのオンすると、ロックプレートにインサートモールドされたトランスポンダのIDコード信号がストップスイッチに取付けられた受信用アンテナコイルで受信される。 【0009】そして、読み込み回路により、アンテナコイルで受信したIDコード信号からIDコードが読み込まれ、この読み込まれたIDコードと予め登録されたI Dコードとが照合回路により照合されて、エンジン起動制御回路により、照合されたIDコードが一致したときにはエンジンを起動させるように制御するとともに、一致しないときにはエンジンを起動させないように制御する。 【0010】これらにより、照合回路に予め登録されたIDコードと一致するIDコード内蔵のトランスポンダがインサートモールドされたロックプレートをストップスイッチに挟み込まない限りエンジンを起動させることができないので、盗難を確実に防止できるようになる。 【0011】また、ランヤードスイッチのロックプレートをストップスイッチに挟み込む操作は、小型推進艇では通常の操作であるので使い勝手は全く変わることがないと共に、合成樹脂で形成されたロックプレートにID コード内蔵のトランスポンダをインサートモールドすることにより、海水等の付着に起因してトランスポンダが故障するようなことがない。 【0012】本発明の請求項2は、ランヤードスイッチのロックプレートをストップスイッチに挟み込み、このロックプレートがストップスイッチから抜け外れたときにストップスイッチがオンしてエンジンを停止させるようにした小型推進艇において、上記ロックプレートが合成樹脂で形成され、このロックプレートにIDコード内蔵のトランスポンダがインサートモールドされると共に、上記ストップスイッチあるいはストップスイッチ近傍に、ロックプレートのトランスポンダのIDコード信号の受信用アンテナコイルが取付けられる一方、エンジンのスタートスイッチのオンでエンジンを起動させるエンジン起動制御回路と、アンテナコイルで受信したID コード信号からIDコードを読み込む読み込み回路と、 この読み込まれたIDコードと予め登録されたIDコードとを照合する照合回路と、この照合されたIDコードが一致したときにはエンジンの点火系のオンを継続させ、一致しないときにはエンジンの点火系をオフさせるエンジン停止制御回路とを備えていることを特徴とする小型推進艇の盗難防止装置を提供するものである。 【0013】請求項2によれば、ランヤードスイッチのロックプレートをストップスイッチに挟み込んで、スタートスイッチのオンするとエンジンを起動される。 【0014】その後、ロックプレートにインサートモールドされたトランスポンダのIDコード信号がストップスイッチに取付けられた受信用アンテナコイルで受信されて、読み込み回路により、アンテナコイルで受信したIDコード信号からIDコードが読み込まれ、この読み込まれたIDコードと予め登録されたIDコードとが照合回路により照合されて、エンジン停止制御回路により、照合されたIDコードが一致したときにはエンジンの点火系のオンが継続されるように制御するとともに、 一致しないときにはエンジンの点火系をオフさせるように制御する。 【0015】これらにより、照合回路に予め登録されたIDコードと一致するIDコード内蔵のトランスポンダがインサートモールドされたロックプレートをストップスイッチに挟み込まない限り、エンジンが一旦起動しても、その直後にエンジンが停止されるので、盗難を確実に防止できるようになる。 【0016】また、ランヤードスイッチのロックプレートをストップスイッチに挟み込む操作は、小型推進艇では通常の操作であるので使い勝手は全く変わることがないと共に、合成樹脂で形成されたロックプレートにID コード内蔵のトランスポンダをインサートモールドすることにより、海水等の付着に起因してトランスポンダが故障するようなことがない。 【0017】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。 なお、従来技術と同一構成・作用の箇所は同一番号を付して詳細な説明は省略する。 【0018】図1に示すように、上記ハンドル7のグリップ部7aの近傍に設けられたボックス部7bに取付けられたストップスイッチ8は、ボックス部7bの上面から上方へ突出して上動操作可能なつまみ部8aを有し、 このつまみ部8aはスプリング12により下動方向に付勢されている。 このつまみ部8aの下面には可動接点8 bが設けられている。 【0019】上記ボックス7b内には、つまみ部8aの可動接点8bに対向する固定接点8cが上面に設けられたスイッチ本体8dが固定されて、上記つまみ部8aがスプリング12の付勢力に抗して上動されたときに、可動接点8bが固定接点8cから離れてストップスイッチ8がオフされると共に、つまみ部8aがスプリング12 の付勢力で下動されたときに、可動接点8bが固定接点8cに接触してストップスイッチ8がオンされるようになる。 【0020】すなわち、図1(b)のように、ランヤードスイッチ2のロープ3のロックプレート15をつまみ部8aの下方に無理入れして挟み込むことにより、スプリング12の付勢力に抗してつまみ部8aが上動状態に保持されて、可動接点8bが固定接点8cから離れてストップスイッチ8がオフされるようになる。 また、運転者Mが落水する等してロックプレート5がストップスイッチ8から抜け外れることにより、つまみ部8aがスプリング12の付勢力で下動されて、可動接点8bが固定接点8cに接触してストップスイッチ8がオンされるようになる。 【0021】上記ロックプレート15は、図2に詳細に示すように、合成樹脂で形成されて、この合成樹脂で形成される際に、ロックプレート15にIDコード内蔵のトランスポンダ16がインサートモールドされている。 【0022】上記ストップスイッチ8には、上記ボックス7b内のつまみ部8aの近傍位置に、つまみ部8aに挟み込まれたロックプレート15のトランスポンダ16 のIDコード信号を受信するための受信用アンテナコイル17が取付けられている。 なお、受信用アンテナコイル17はストップスイッチ8の近傍に取付けても良い。 【0023】一方、第1実施形態の制御回路は、図3に示すように、エンジンのスタートスイッチ9のオンで、 アンテナコイル17で受信したIDコード信号からID コードを読み込む読み込み回路20と、この読み込まれたIDコードと予め登録されたIDコードとを照合する照合回路21と、この照合されたIDコードが一致したときにスタータスイッチをオンしてスタータを回転させてエンジンを起動させると共に、IDコードが一致しないときにスタータスイッチをオフに維持してスタータを回転させずにエンジンを起動させないエンジン起動制御回路22とを備えている。 かかる制御回路は、小型滑走艇のエンジンルーム内に設置されたCPUユニットに組み込まれている。 【0024】第1実施形態の制御回路による制御順序を図5のフローチャートを参照しながら説明する。 【0025】ステップS1で、ロックプレート15をストップスイッチ8に挟み込むと、ストップスイッチ8はオフとなる。 【0026】ついで、ステップS2で、スタートスイッチ9をオンすると、ステップS3で、読み込み回路20 により、アンテナコイル17で受信したIDコード信号からIDコードが読み込まれる。 【0027】続いて、ステップS4で、照合回路21により、読み込み回路20こで読み込まれたIDコードと予め登録されたIDコードとが照合される。 この照合回路21では、「読み込みIDが登録IDに一致する」か「読み込みIDが登録IDに一致しない(又は読み込みIDが無い)」かを判断する。 なお、「読み込みIDが無い」とは、ロックプレート15に類似した板切れ等をストップスイッチ8に挟み込んだりした場合や、ストップスイッチ8に何も挟み込んだりせずに、配線を直結することによりスタータスイッチをオンしてスタータを回転させるような場合も含まれる。 【0028】そして、「一致」と判断したときには、ステップS5で、エンジン起動制御回路22により、スタータスイッチをオンしてスタータを回転させると、ステップS6でエンジンが起動するようになる。 エンジンの起動後に、ステップS7で、スタータスイッチをオフしてスタータの回転を停止させる。 【0029】一方、ステップS4で「不一致」と判断したときには、ステップS8で、エンジン起動制御回路2 2により、スタータスイッチをオフに維持してスタータを回転させないので、ステップS9で、エンジンが起動しない。 【0030】これらにより、照合回路21に予め登録されたIDコードと一致するIDコード内蔵のトランスポンダ16がインサートモールドされたロックプレート1 5をストップスイッチ8に挟み込まない限りエンジンを起動させることができないので、盗難を確実に防止することができる。 【0031】また、ランヤードスイッチ2のロックプレート15をストップスイッチ8に挟み込む操作は、小型推進艇1では通常の操作であるので使い勝手は全く変わることがない。 さらに、合成樹脂で形成されたロックプレート15にIDコード内蔵のトランスポンダ16がインサートモールドすることにより、海水等の付着に起因してトランスポンダ16が故障するようなことがない。 【0032】第2実施形態の制御回路は、図4に示すように、エンジンのスタートスイッチ9のオンでエンジンを起動させるエンジン起動制御回路25と、アンテナコイル17で受信したIDコード信号からIDコードを読み込む読み込み回路20と、この読み込まれたIDコードと予め登録されたIDコードとを照合する照合回路2 1と、この照合されたIDコードが一致したときにエンジンの点火系のオンを継続させてエンジンを停止させないと共に、IDコードが一致しないときにエンジンの点火系をオフさせてエンジンを停止させるエンジン停止制御回路26とを備えている。 【0033】第2実施形態の制御回路による制御順序を図6のフローチャートを参照しながら説明する。 【0034】ステップS11で、ロックプレート15をストップスイッチ8に挟み込むと、ストップスイッチ8 はオフとなる。 【0035】ついで、ステップS12で、スタートスイッチ9をオンすると、ステップS13で、エンジン起動制御回路25により、スタータスイッチをオンしてスタータを回転させると、ステップS14でエンジンが起動するようになる。 エンジンの起動後に、ステップS15 で、スタータスイッチをオフしてスタータの回転を停止させる。 【0036】その後、ステップS16で、読み込み回路20により、アンテナコイル17で受信したIDコード信号からIDコードが読み込まれる。 【0037】続いて、ステップS17で、照合回路21 により、読み込み回路20で読み込まれたIDコードと予め登録されたIDコードとが照合される。 この照合回路21では、「読み込みIDが登録IDに一致する」か「読み込みIDが登録IDに一致しない(又は読み込みIDが無い)」かを判断する。 【0038】そして、「一致」と判断したときには、ステップS18で、エンジン停止制御回路26により、エンジンの点火系のオンが継続されるように制御されるので、ステップS19で、エンジンが停止されないで継続運転される。 【0039】一方、ステップS17で「不一致」と判断したときには、ステップS20で、エンジン停止制御回路26により、エンジンの点火系がオフされるように制御されるので、ステップS21で、エンジンが停止される。 【0040】これらにより、照合回路21に予め登録されたIDコードと一致するIDコード内蔵のトランスポンダ16がインサートモールドされたロックプレート1 5をストップスイッチ8に挟み込まない限り、エンジンが一旦起動しても、その直後にエンジンが停止されるので、盗難を確実に防止できるようになる。 その他の作用効果は第1実施形態の制御回路と同様である。 【0041】 【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発明の請求項1は、照合回路に予め登録されたIDコードと一致するIDコード内蔵のトランスポンダがインサートモールドされたロックプレートをストップスイッチに挟み込まない限りエンジンを起動させることができないから、盗難を確実に防止できるようになる。 【0042】また、ランヤードスイッチのロックプレートをストップスイッチに挟み込む操作は、小型推進艇では通常の操作であるので使い勝手は全く変わることがないと共に、合成樹脂で形成されたロックプレートにID コード内蔵のトランスポンダをインサートモールドすることにより、海水等の付着に起因してトランスポンダが故障するようなことがない。 【0043】本発明の請求項2は、照合回路に予め登録されたIDコードと一致するIDコード内蔵のトランスポンダがインサートモールドされたロックプレートをストップスイッチに挟み込まない限り、エンジンが一旦起動しても、その直後にエンジンが停止されるから、盗難を確実に防止できるようになる。 【0044】また、ランヤードスイッチのロックプレートをストップスイッチに挟み込む操作は、小型推進艇では通常の操作であるので使い勝手は全く変わることがないと共に、合成樹脂で形成されたロックプレートにID コード内蔵のトランスポンダをインサートモールドすることにより、海水等の付着に起因してトランスポンダが故障するようなことがない。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明のロックプレートとストップスイッチとの関係を示し、(a)はロックプレートが抜け外れたときの側面図、(b)はロックプレートを挟み込んだときの側面図である。 【図2】 ロックプレートであり、(a)は平面図、 (b)は(a)のA−A線断面図である。 【図3】 第1実施形態の制御回路図である。 【図4】 第2実施形態の制御回路図である。 【図5】 第1実施形態の制御回路のフローチャートである。 【図6】 第2実施形態の制御回路のフローチャートである。 【図7】 小型推進艇の斜視図である。 【図8】 ハンドル部分の要部斜視図である。 【符号の説明】 1 小型推進艇 2 ランヤードスイッチ 8 ストップスイッチ 9 スタートスイッチ 15 ロックプレート 16 トランスポンダ 17 受信用アンテナコイル 20 読み込み回路 21 照合回路 22 エンジン起動制御回路 25 エンジン起動制御回路 26 エンジン停止制御回路 |