【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、複数のキーが配列された電子機器に関し、特定キーの誤押下による誤動作を防止することができる電子機器に関する。 【0002】 【従来の技術】所望の文字や記号をテープ状の長尺印刷媒体に印刷することができるテープライタが知られている。 テープライタには、印刷内容などを表示する液晶表示部のほかに、装置の電源をオンオフするための電源キー、使用者が所望の文字などを入力するための文字入力キー、テープの送りキーおよび巻き取りキー、テープ印刷を開始するためのプリントキーなどの多数のキーが設けられている。 【0003】このようなテープライタを用いてテープ印刷を行う場合、操作者は、電源キーを押下して装置の電源をオンにした後、文字入力キーを押下して所望の文字などを入力し、液晶表示部に所望の文字列が表示されていることを確認してからプリントキーを押下し、それによりテープへの文字印刷が行われる。 そして、印刷済みのテープは、カッタで自動的に切断されるか、或いは、 操作者の切断動作によって切断される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上述したようなテープライタとして、比較的小型の筐体に収められたハンディ型のものがある。 かかるハンディ型のテープライタを用いると、使用者がこれを手軽に持ち運び、筐体を手で持ちながらキー操作を行って所望の文字が印刷されたテープを得ることができる。 【0005】しかしながら、このようなハンディ型のテープライタでは、操作者は片手で筐体を保持しつつもう一方の手でキーを押下するという動作を行うことが多く、筐体が比較的小型であることと相まって、所望のキーとは異なるキーを誤って押下してしまうことが多くなる。 例えば、誤ってプリントキーが押下されてしまった場合には、所望の文字入力が完了していない段階であるにもかかわらず、テープ印刷が開始されてしまい、テープが無駄に消費されることになる。 また、文字入力の途中で誤って電源キーが押下されてしまった場合には、入力した文字データが消えてしまうという不都合が生じる。 【0006】このような事態を防止するために、プリントキーや電源キーなどの特定キーの機械的構造を変更することにより、当該特定キーに他のキーよりも大きな力が加えられないとそのキーの接点がオンにならないようにして、キーの誤押下による誤動作を防止することが考えられる。 しかしながら、このような手段では、複数のキーのうち一部のキーの構造だけを変更する必要があるために構造が複雑になる、部品点数が増える、製造工程が複雑になる、製造コストが上昇するなどの様々な不利益が発生してしまう。 【0007】そこで、本発明の目的は、テープライタなどの複数のキーが配列された電子機器において、特定キーの機械的構造を変更することなく、当該特定キーが誤って押下された場合の誤動作を防止することが可能な電子機器を提供することである。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1の電子機器は、第1のキーおよび第2のキーを含む複数のキーが配列された電子機器において、前記第1のキーが押下されたことが検知されるのに必要な第1のキー最小押下時間が、前記第2のキーが押下されたことが検知されるのに必要な第2のキー最小押下時間よりも長時間となるように構成されている。 【0009】請求項1によると、第1のキー最小押下時間が第2のキー最小押下時間よりも長時間であるので、 第1のキーは第2のキーよりも長時間押下されないと押下が検出されない。 従って、誤って押下されると重大な不都合が生じるような機能を第1のキーに設定しておくことにより、キーの機械的な構造を変更することなく装置の重大な誤動作を防止することができる。 【0010】また、請求項2の電子機器は、マトリックス状に配置された、第1のキーおよび第2のキーを含む複数のキーと、前記複数のキーを所定のスキャン間隔で順次スキャンすることによりキーの押下を検知するキースキャン検知手段とを備えた電子機器において、前記キースキャン検知手段は、前記第1のキーが第1の所定スキャン回数以上連続して押下状態であることを条件に前記第1のキーが押下されたことを検知し、前記第2のキーが前記第1の所定スキャン回数よりも少ない第2の所定スキャン回数以上連続して押下状態であることを条件に前記第2のキーが押下されたことを検知するものである。 【0011】請求項2によると、第1の所定スキャン回数が第2の所定スキャン回数よりも多いので、第1のキーは第2のキーよりも長時間押下されないと押下が検出されない。 従って、誤って押下されると重大な不都合が生じるような機能を第1のキーに設定しておくことにより、キーの機械的な構造を変更することなく装置の重大な誤動作を防止することができる。 【0012】また、請求項3の電子機器は、前記第1のキーがプリントキーであることを特徴とするものである。 請求項3によると、誤ってプリントキーが押下されて不必要にテープが消費されるのを防止することができる。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。 【0014】本実施の形態は、電子機器の一例としてのハンディ型テープライタに関するものである。 図1は、 本実施の形態のハンディ型テープライタの概略正面図である。 図2は、本実施の形態のハンディ型テープライタのブロック図である。 図3は、本実施の形態のハンディ型テープライタにおけるキースキャンおよびキー出力読み込みタイミングチャートである。 図4は、本実施の形態のハンディ型テープライタのキースキャン検知に関するフローチャートである。 【0015】図1に示すように、本実施の形態のハンディ型テープライタ1の筐体2表面には、多数のキー3が設けられている。 キー3の種類としては、ハンディ型テープライタ1の電源をオンオフするための電源キー3 1、26個のアルファベットキー、スペースキー、デリート(削除)キー36(図2参照)を含む多数の文字入力キー32、テープの送りキー33および巻き取りキー34、テープ印刷を開始するためのプリントキー35などがある。 また、送りキー33および巻き取りキー34 の上方には、文字入力キー32から入力された印刷内容や操作者へのメッセージなどを表示する液晶表示部(L CD)4が設けられている。 【0016】さらに、筐体2の上方側面には、印刷媒体である長尺のテープを所望位置でカットするためのカットボタン5が設けられている。 カットボタン5が押下されると、その押下力によってカッタ(図示せず)が作動してテープが切断される。 また、筐体2内には、巻回された長尺のテープが収納されており、プリントキー35 が押下されると、搬送ローラ(図示せず)によってテープが排出方向に送られつつサーマルヘッド6(図2参照)によりテープへの印刷が行われる。 【0017】次に、図2を参照して、本実施の形態のハンディ型テープライタ1の制御系について説明する。 図2に示すように、本実施の形態において多数のキー3はマトリックス状に配列されている。 つまり、キー3は、 4本の入力信号線ki 0〜ki 3と6本の出力信号線k o 0〜ko 5との交差部にそれぞれ配置されており、キー3が押下されることにより当該交差部の縦横の信号線が接続されることに基づいて、キー押下が検知される。 なお、図2にはキーマトリックスが4行6列の場合を示したが、実際にはn行m列(n、mは任意の自然数)のキーマトリックスを構成することが可能である。 【0018】多数のキー3は、キースキャン検知部8によって所定のスキャン間隔で順次スキャンされる。 キースキャン部8は、4本の入力信号線ki 0〜ki 3に位相のずれたパルス信号を供給するキー入力部8と、6本の出力信号線ko 0〜ko 5から信号を受け取って後述のように各キー3が押下されたことを検知するキー出力部12とを有している。 【0019】キースキャン検知部8は制御部9に接続されている。 制御部9には、キースキャン検知部8のキー出力部12から、キー押下検知信号が与えられる。 制御部9は、CPU、ROM、RAMなどを含んでおり、ドライバ11、12を介してそれぞれ液晶表示部4およびサーマルヘッド6と接続されている。 CPUは、キー出力部12からキー押下検知信号が与えられると、ROM に記憶されたプログラムやデータおよび必要であればR AMに記憶されたデータに基づいて所定の演算を行い、 その結果によりRAMにデータを書き込み、ドライバ1 1、12に命令を与える。 【0020】例えば、文字入力キー32のうちアルファベットキーの押下検知信号が制御部9に与えられると、 そのキーに対応した文字コードデータがRAMの入力バッファに記憶されるとともに、その内容およびROMに記憶されたフォントデータに基づいてCPUがドライバ11に表示命令を与え、ドライバ11の駆動信号により液晶表示部4に文字が表示される。 また、プリントキー35の押下検知信号が制御部9に与えられると、RAM の入力バッファに記憶されている文字データおよびそれに対応したROM内のフォントデータに基づいてCPU がドライバ12に印刷命令を与え、ドライバ12の駆動信号に応じてサーマルヘッド6が駆動されてテープへの文字印刷が行われる。 なお、図2において、テープの搬送モータなどの図示を省略している。 【0021】次に、本実施の形態のテープライタ1のキー押下検知動作について説明する。 図3(a)に示すように、キー入力部11は、アクティブレベル(本実施の形態ではロウレベル)となる期間が重ならないように位相がずれた4つの電圧パルス信号を4本の入力信号線k i 0〜ki 3のそれぞれに連続的に供給する。 入力されるパルス信号の1周期(キースキャン周期)の長さは、 例えば10m秒程度である。 一方、キー出力部12は、 6本の出力信号線ko 0〜ko 5のそれぞれの電圧レベルを常に検出しており、これら6本の出力信号線ko 0 〜ko 5はキー3が押下されておらずキー接点がオフ(非押下状態)であるときには非アクティブレベル(本実施の形態ではハイレベル)に維持されている。 【0022】そして、キー3が押下されてキー接点がオン(押下状態)になると、当該キー接点を通過する入力信号線ki 0〜ki 3がロウレベルとなるのに同期して、当該キー接点を通過する出力信号線ko 0〜ko 5 もロウレベルとなる。 従って、キー入力部11から与えられる入力パルス信号のタイミングとキー出力部12で検出された出力パルス信号のタイミングとを比較することにより、どのキー接点がオンになっているかを知ることができる。 【0023】図3(b)は、本実施の形態に基づき、プリントキー35が押下された場合の押下検知について説明するための図である。 また、図3(c)は、プリントキー以外のキー(ここでは、デリートキー36を例に説明するが、プリントキー35以外のキーはすべてデリートキー36と同様に動作するように構成されていてよい。)が押下された場合の押下検知について説明するための図である。 本実施の形態において、プリントキー3 5は、入力信号線ki 3と出力信号線ko 5との交差点に設けられており、デリートキー36は入力信号線ki 3と出力信号線ko 1との交差点に設けられているものとする。 【0024】まず、プリントキー35の場合には、図3 (b)に示すように、キースキャン周期で10周期連続してキー接点がオンであるときに、キー出力部12においてプリントキー35が押下されたことが検知されるようになっている。 一方、デリートキー36は、図3 (c)に示すように、キースキャン周期で2周期連続してキー接点がオンであるときに、キー出力部12においてデリートキー36が押下されたことが検知されるようになっている。 なお、チャタリングによる誤検知を防止するために、いずれの場合にも、所定回数のオン検出の後に連続して所定回数のキー接点オフが検出されることを当該キーの押下検知条件とすることが好ましい。 【0025】つまり、本実施の形態のテープライタ1において、プリントキー35を押下したときにその押下が検知されるためには、最小T1時間(キースキャン周期の9〜10倍程度)の間はプリントキー35のキー接点がオンであることを必要とするようになっており、デリートキー36を押下したときにその押下が検知されるためには、最小T2時間(キースキャン周期の1〜2倍程度)の間はプリントキー35のキー接点がオンであることを必要とするようになっている。 【0026】このようなキー押下検知の概略的な動作について、さらに図4を参照して説明する。 まず、テープライタ1の電源がオンにされると、ステップS1において、パラメータNおよびMが0に初期化される。 ここで、パラメータNはプリントキー35以外のキーのキー接点オン回数を表しており、パラメータMはプリントキー35のキー接点オン回数を表している。 【0027】次に、ステップS2では、キー出力部12 において、入力信号線ki 0〜ki3のレベルと出力信号線ko 0〜ko 5のレベルとの比較に基づいて、キー入力があったかどうかつまりキー接点がオンになったかどうかが繰り返して(S2:NO)判断される。 そして、キー入力があった場合には(S2:YES)ステップS3に進み、そのキー入力がプリントキー35に対して行われたものであるかどうかが、入力信号線と出力信号線のレベル比較に基づいて判断される。 【0028】プリントキー35入力が行われて対応するキー接点がオンである場合には(S3:YES)、ステップS4に進む。 ステップS4では、パラメータMが1 0であるかどうかが判断される。 M=10でなければ(S4:NO)、ステップS5でパラメータMが1だけインクリメントされてからステップS2に戻る。 このようにしてパラメータMが1キースキャン周期ごとに1づつ増加し、M=10となったときに(S4:YES)、 ステップS7に進んでプリントキー35が押下されたという検知信号が制御部9に出力される。 そして、ステップS8でパラメータMだけが0に初期化されてからステップS2に戻る。 【0029】一方、プリントキー35以外のキー入力が行われて対応するキー接点がオンである場合には(S 3:NO)、ステップS6に進む。 ステップS6では、 パラメータNが2であるかどうかが判断される。 N=2 でなければ(S6:NO)、ステップS9でパラメータNが1だけインクリメントされてからステップS2に戻る。 このようにしてパラメータNが1キースキャン周期ごとに1づつ増加し、N=2となったときに(S6:Y ES)、ステップS7に進んで当該キーが押下されたという検知信号が制御部9に出力される。 そして、ステップS8でパラメータNだけが0に初期化されてからステップS2に戻る。 また、パラメータNおよびMは、対応するキーが最後に押下されてから一定時間経過後にも初期化される。 これにより、時間的に隔てられた異なる機会のキー押下によってパラメータが累積加算されることがなくなる。 【0030】このように、本実施の形態のテープライタ1では、プリントキー35の押下検知に必要なプリントキー最小押下時間が、プリントキー35以外のキーの押下検知に必要な一般キー最小押下時間よりも長時間となっている。 そのため、プリントキー最小押下時間を適宜調節しておくことにより、誤押下によりわずかな時間だけプリントキー35が押下された場合にはその押下が検知されないようにすることができる。 従って、プリントキー35が誤押下された場合であっても、それが検知されてテープ印刷が実行される確率が大幅に低下する。 そのため、誤押下による無駄なテープ消費を最小限に抑えることができる。 【0031】しかも、プリントキー35の機械的な構造は全く変更する必要はなく、その他のキーと同一構造のままでよいので、部品点数が増えたり、装置構造が複雑になることがなく、製造も簡単で、低コストでの製造が可能となるという利点がある。 【0032】以上、本発明の好適な一実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。 例えば、プリントキー35と同じく電源キー31の最小押下時間を他のキーよりも長く設定してもよい。 これにより、入力途中の文字データが消えてしまうのを防止することができる。 【0033】また、本実施の形態のテープライタのようにカットボタン5の押下力によってカッタが駆動されるのではなく、テープ切断キーの押下によりカッタが電気駆動されてテープが切断されるテープライタの場合には、テープ切断キーの最小押下時間を他のキーよりも長く設定してもよい。 これにより、テープ切断キーの誤押下により間違ってテープが切断されるという事態を避けることができてテープの無駄な消費を防止することができる。 【0034】また、上述の実施の形態は、多数のキーがマトリックス状に配置されており、これらが順次スキャンされる装置に関するものであったが、本発明は必ずしもこのような装置に限られるものではなく、複数のキーを有する装置であればどのような装置にでも適用可能である。 また、上述の実施の形態ではテープライタについて説明したが、本発明はテープライタ以外に複数のキーを有する電子機器一般に適用することが可能である。 【0035】 【発明の効果】以上説明したように、請求項1、2によると、誤って押下されると重大な不都合が生じるような機能を第1のキーに設定しておくことにより、キーの機械的な構造を変更することなく装置の重大な誤動作を防止することができる。 また、請求項3によると、誤ってプリントキーが押下されて不必要にテープが消費されるのを防止することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施の形態のハンディ型テープライタの概略正面図である。 【図2】図1に示すハンディ型テープライタの制御系のブロック図である。 【図3】図1に示すハンディ型テープライタにおけるキースキャンおよびキー出力読み込みタイミングチャートである。 【図4】図1に示すハンディ型テープライタのキースキャン検知に関するフローチャートである。 【符号の説明】 1 テープライタ 2 筐体 3 キー 4 液晶表示部 5 カットボタン 6 サーマルヘッド 8 キースキャン検知部 11 キー入力部 12 キー出力部 35 プリントキー 36 デリートキー |