【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は加速度センサに係り、特に車両の衝突時などに生じる大きな速度変化を検出するのに好適な加速度センサに関する。 【0002】 【従来の技術】この種の加速度センサとして、USP 4,82 7,091 号には、導電材料よりなる筒体と、該筒体の内部に筒体長手方向移動自在に装入された帯磁慣性体と、該帯磁慣性体の少なくとも該筒体長手方向の一端側の端面に設けられた導電体と、該筒体の長手方向の一端側に配置されており、帯磁慣性体の該導電体が接触することにより該導電体を介して導通される1対の電極と、該筒体の長手方向の他端側に配置されており、該帯磁慣性体と磁気的に吸引し合う磁性材料よりなる吸引体と、を備えたものが記載されている。 【0003】この加速度センサにおいては、帯磁慣性体は吸引体と吸引し合っており、加速度センサに加速度が全く又は殆ど加えられていないときには、帯磁慣性体は筒体内の他端側に静止している。 【0004】この加速度センサにある程度大きな加速度が加えられると、帯磁慣性体が吸引体との吸引力に抗しつつ移動する。 そして、帯磁慣性体が移動しつつあるときには、この筒体に誘導電流が流れ、帯磁慣性体に対し移動方向と反対方向に付勢する磁力が与えられ、帯磁慣性体にブレーキがかけられた状態となり、その移動速度が減少される。 【0005】加速度が所定値(閾値)よりも小さいときには、帯磁慣性体は筒体の先端までは到達せず、中途まで移動したところで停止し、次いで吸引体との吸引力により他端側まで引き戻される。 【0006】加速度が所定値(閾値)よりも大きいとき(即ち、例えば、この加速度センサが搭載されている車両が衝突したときなど)には、帯磁慣性体は筒体の一端側にまで到達する。 そして、帯磁慣性体の先端面の導電層が1対の電極の双方に接触して電極同士を導通する。 予め電極間に電圧をかけておくと、電極同士が短絡した時点で電極間に電流が流れる。 この電流により、車両が衝突したことが検出される。 【0007】ところで、この電極を挟んで帯磁慣性体と反対側にはストッパが配置されている。 上記の閾値よりも大きな加速度を受けた帯磁慣性体が該電極に当たり、 さらに該電極を押して前進した場合、遂には帯磁慣性体がこのストッパに当たる。 そして、該加速度によって帯磁慣性体が該ストッパに押し付けられた状態がしばらく継続し、この間、上記電極同士が帯磁慣性体を介して導通され続ける。 このようにある程度長い時間、電極間に通電が行なわれることにより、衝突検出回路において、 この通電に基いて電気的に衝突が検出される。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】従来の加速度センサにおいては、帯磁慣性体がストッパに当たったときにストッパに跳ね返されてしまい、電極同士の導通時間が短くなってしまうことがあった。 【0009】また、上記従来の加速度センサにおいては、帯磁慣性体がストッパに当たったときに、帯磁慣性体がストッパに対し接触、離反を繰り返し、電極同士の導通にチャタリングが生じることがあった。 即ち、帯磁慣性体がストッパに当たって少し跳ね返され、その後、 加速度を受けて帯磁慣性体が再びストッパに当たり、再度跳ね返され、さらに再び加速度を受けてストッパに当たるという帯磁慣性体の接触、離反が繰り返される。 そして、このような帯磁慣性体が進退方向へ繰り返し往復することにより、電極同士も頻繁に断続され、チャタリングが生じる。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明の加速度センサは、筒体と、該筒体の内部に筒体長手方向移動自在に装入された慣性体と、該慣性体の少なくとも該筒体長手方向の一端側の端面に設けられた導電体と、該筒体の長手方向の一端側に配置されており、慣性体の該導電体が接触することにより該導電体を介して導通される1対の電極と、該筒体の長手方向の他端側に配置されており、該慣性体と磁気的に吸引し合う吸引体と、該電極を挟んで前記慣性体と反対側に配置されており、前記慣性体が進行してきたときに該慣性体の先端面が当接されるストッパと、を備えた加速度センサにおいて、該ストッパは、 前記筒体の軸心線上からずれた位置に配置されていることを特徴とするものである。 【0011】 【作用】かかる本発明の加速度センサにおいては、大きな加速度を受けた慣性体が前進してストッパに当たった場合、ストッパが慣性体の先端面のうち、その中心からずれた位置に当たる。 そのため、慣性体の軸心線方向が筒体の軸心線に対し交叉する方向へ慣性体が傾くようになる。 そして、これにより慣性体が筒体の内周面に押し付けられる。 この結果、慣性体と筒体内周面との間に比較的大きな摩擦力が発生し、慣性体が移動しにくくなる。 即ち、ストッパが慣性体を跳ね返そうとしても慣性体は容易には後退せず、慣性体がストッパに当たった状態又は慣性体がストッパ近傍にとどまる時間が長くなり、電極同志の導通が長時間継続するようになる。 【0012】また、慣性体が繰り返し進退動することが阻止され、電極のチャタリングも防止される。 【0013】 【実施例】以下図面を参照して実施例について説明する。 第1図は本発明の実施例に係る加速度センサの筒体長手方向の断面図、第2図は第1図のII−II線に沿う断面図である。 【0014】第1図において、合成樹脂など非磁性材料よりなる筒状のボビン10の内部に銅合金製の筒体12 が保持されており、該筒体12の内部に帯磁慣性体(マグネットアッセンブリ)14が装入されている。 このマグネットアッセンブリ14は、円柱形状の永久磁石(マグネット)16と、該マグネット16を包む銅などの非磁性導電材料製の有底無蓋の円筒状のケース18と、該ケース18内にマグネット16を保持しておくための合成樹脂製パッキング20とを備えている。 【0015】このマグネットアッセンブリ14は前記筒体12の内部に筒体12の長手方向移動自在に挿入されている。 このマグネットアッセンブリ14の外径は筒体12の内径よりも若干小さくなっており、マグネットアッセンブリ14の外周面と筒体12の内周面との間には若干の隙間があいている。 【0016】ボビン10は、その一端が筒体12の内部に入り込む装入部22となっており、該装入部22の先端部分には開口24が設けられている。 この装入部22 の先端の側方向の位置においては、ボビン10に1対のフランジ26、28が突設されており、これらフランジ26、28に挟まれて鉄などの磁性材料よりなるリング状の吸引体(リターンワッシャ)30が設けられている。 【0017】ボビン10には、さらに別のフランジ32 が設けられており、前記フランジ28と該フランジ32 との間にコイル34が巻装されている。 ボビン10の他端側においてはさらに別のフランジ36が設けられており、このフランジ36にコンタクトホルダ38が取り付けられている。 【0018】このコンタクトホルダ38は、合成樹脂製のものであり、1対の電極40、42が埋設されている。 電極40、42の先端側はコンタクトホルダ38の中央部の空室44内に突出しており、かつ電極40、4 2の先端側は円弧状に湾曲し、その一部が筒体12の先端面とほぼ面一となるように位置されている。 【0019】このコンタクトホルダ38には、該空室4 4内を外部に連通させる開口46が設けられている。 また、空室44の内面のうちマグネットアッセンブリ14 の先端面と対面する面44aであって、かつ筒体12の軸心線上からずれた位置にストッパ48が突設されている。 【0020】本実施例では、第2図に示すように、電極40、42が空室44の直径方向に対峙し、かつ空室4 4の中心に向って延出している。 この電極40、42を挟んでマグネットアッセンブリ14と反対側にストッパ48が設けられている。 このストッパ48は、マグネットアッセンブリ14の先端面の端部に当たるように、空室44の隅部に配置されている。 【0021】このように構成された加速度センサにおいて、外力が加えられない状態においては、マグネットアッセンブリ14はリターンワッシャ30と吸引し合うことにより、該マグネットアッセンブリ14の後端が装入部22の先端面に当接する図示の後退限に位置している。 矢印A方向に外力が作用すると、マグネットアッセンブリ14はリターンワッシャ30との吸引力に抗しつつ矢印A方向に移動する。 この移動に伴って、銅合金製の筒体12には誘導電流が流れ、この誘導電流によって生ずる磁界がマグネットアッセンブリ14に対し移動方向と反対方向の磁力を与え、マグネットアッセンブリ1 4にブレーキがかけられる。 【0022】加速度センサに加えられる外力が小さい場合には、マグネットアッセンブリ14が筒体12の途中に到達した段階で停止し、やがてリターンワッシャ30 とマグネットアッセンブリ14との吸引力によりマグネットアッセンブリ14は第1図の後退限まで戻る。 【0023】車両衝突時等に発生する大きな外力が矢印A方向に加えられると、マグネットアッセンブリ14は筒体12の先端まで前進し、電極40、42に接触する。 そして、電極40、42を押してこれらを撓ませながらさらに前進し、やがてストッパ48に当接する。 【0024】マグネットアッセンブリ14が電極40、 42に当接すると、マグネットアッセンブリ14の導電材料製のケース18が電極40、42を短絡し、両電極40、42間に電流が流れる。 これにより、予定された閾値よりも大きな加速度変化が生じたことが検知され、 車両衝突が検知される。 【0025】ところで、マグネットアッセンブリ14が前進してストッパ48に当たった場合、ストッパ48は偏心配置されているから、ストッパ48はマグネットアッセンブリ14の先端面のうち、その中心からずれた位置に当たる。 そのため、マグネットアッセンブリ14の軸心線方向が筒体12の軸心線に対し交叉する方向へマグネットアッセンブリ14が傾くようになる。 そして、 これによりマグネットアッセンブリ14が筒体12の内周面に押し付けられる。 この結果、マグネットアッセンブリ14と筒体12内周面との間に比較的大きな摩擦力が発生し、マグネットアッセンブリ14が移動しにくくなる。 即ち、ストッパ48がマグネットアッセンブリ1 4を跳ね返そうとしても、マグネットアッセンブリ14 は容易には後退せず、マグネットアッセンブリ14がストッパ48に当たった状態又はマグネットアッセンブリ14がストッパ48の近傍にあまり動かないでとどまる時間が長くなり、電極40、42同士の導通が長時間継続するようになる。 【0026】また、マグネットアッセンブリ14が繰り返し進退動することが阻止され、電極40、42のチャタリングも防止される。 【0027】なお、前記コイル34はこの加速度センサの作動チェックを行なうためのものである。 即ち、このコイル34に通電すると、マグネットアッセンブリ14 を矢印A方向に付勢する磁界が該コイル34から発生し、マグネットアッセンブリ14は筒体12の先端まで前進し、電極40、42を短絡する。 このようにコイル34に通電を行なってマグネットアッセンブリ14を強制的に移動させることにより、マグネットアッセンブリ14が正常に進退し得るか否か、そして、電極40、4 2が短絡され得るか否かをチェックすることができる。 【0028】次に、実験例について説明する。 【0029】(本発明例)第1、2図に示した加速度センサにおいて、主な諸元を次の通りに設定した。 【0030】筒体12の内径 7.0mm 筒体12の外径 8.7mm 筒体12の長さ 19.2mm マグネットアッセンブリ14の直径 6.7mm マグネットアッセンブリ14の長さ 12.0mm ストッパ48の突出長さ 3.0mm 円柱状のストッパ48の直径 1.6mm マグネットアッセンブリ14が電極40、42に当接するまでのストローク 5. 5mm マグネットアッセンブリ14が電極40、42に当接してからストッパ48に当接するまでのストローク 4.0mm この加速度センサにおいて、表1のNo. 1、2に示す最大加速度(ピークG)を加えてマグネットアッセンブリ14をストッパ48に当てたときの電極40、42の導通時間を測定した。 その結果を表1に併せて示す。 【0031】なお、第3図は、この本発明及び次に述べる比較例における最大加速度が200Gのときの電極出力の電圧波形図及び衝突検出回路の出力波形図である。 【0032】(比較例)上記本発明において、ストッパ48を筒体12の軸心線の延長上に位置させ、且つ開口46の位置をずらした他は同様にして測定を行なった。 その結果を表1及び第3図に示す表1より、本発明例によると、電極40、42の導通時間が比較例のものに比べ著しく長くなることが分る。 【0033】また、第3図より、比較例においては激しいチャタリングがあるのに対し、本発明例においてはチャタリングが全くないことが分る。 【0034】 【表1】 【0035】なお、上記実施例では、慣性体14は帯磁しているが、本発明では帯磁していない慣性体を用いても良い。 この場合には、リターンワッシャ30として帯磁したものを用いる。 また、この場合、筒体12は非導電性の材料にて構成されても良い。 【0036】 【発明の効果】以上の通り、本発明の加速度センサは、 慣性体が当たるストッパの位置を筒体の軸心線上からずらしたので、慣性体がストッパに対し当たった状態又は慣性体がストッパ近傍にあまり動かないでとどまる時間が長くなり、電極同士の導通状態が長時間継続し、しかもこの間のチャタリングも防止される。 【0037】また、この結果、車両衝突の検出精度が著しく高くなる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施例に係る加速度センサの断面図である。 【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。 【図3】実験結果を示すグラフである。 【符号の説明】 10 ボビン 12 筒体 14 マグネットアッセンブリ(帯磁慣性体) 16 マグネット 30 リターンワッシャ(吸引体) 34 コイル 40,42 電極 48 ストッパ |