【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、可動接点を支持する可動盤と、可動接点が摺接する固定接点を支持する基盤とを備える摺動スイッチ装置に関するもので、特に自動車の自動変速機のオイル等に浸かった状態で使用することが可能な摺動スイッチ装置に適したものである。 【0002】 【従来の技術】従来の上記自動変速機のオイル等の液体中に浸かった状態で使用する摺動スイッチ装置としては、実開平4−65622号公報に示されたものが公知である。 これは、Oリングを用いて密閉したケース内に固定接点と可動接点を収納し、ベローズによって移動自在に支持したロッドの一方を前記可動接点に、他方をマニュアルバルブにそれぞれ接続することにより、マニュアルバルブの作動位置に対応して固定接点に可動接点が接触する構成となっている。 【0003】しかしながら、上記構造では、可動接点に対する固定接点の接触面を上側に向けた姿勢で設けていたため、固定接点の表面に異物が乗りやすく、オイルに混じった金属粉等の導電性の異物が固定接点の表面に付着した場合、絶縁不良等のトラブルを招来する可能性があった。 特に、自動変速機のようにエンジンの作動に伴ってオイルの温度が大きく上下するものでは、上記密閉空間内部の空気が膨張及び収縮したり、また前記ロッドやベローズの作動に伴い外部との圧力差が発生することによって密閉空間内にオイルを吸い込む現象が生じて、 オイルと一緒に導電性の異物を吸い込む可能性が高かった。 従って、従来の構造では固定接点等を外部から隔離した密閉空間内に収納する必要があるが、ケースが高価になるとか複雑になるため、ケースを完全密閉することは合理的な解決手段とはいえなかった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】そこで本出願人は、自動変速機内部のオイル等のように導電性の異物が混じった汚れた液体中につけて使用しても、導電性の異物が固定接点の表面に付着しにくく、そのため絶縁不良等のトラブルが発生しにくい液中スイッチ装置を、先に提案している。 しかしながら、上記提案構造で絶縁不良等のトラブルは解消されたものの、可動盤の摺動の円滑さにはまだ不十分な点があった。 【0005】本発明は上記欠点に鑑みなされたもので、 可動盤の円滑な摺動が可能な摺動スイッチ装置を提供することを目的とするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、可動接点と、可動接点を支持する可動盤と、可動接点が摺接する固定接点と、固定接点を支持する基盤とを備える摺動スイッチ装置において、基盤側に可動盤の摺動方向に延びるガイドレールを設けると共に、可動盤を駆動する操作部材に前記ガイドレールに嵌合する摺動部を設けたことを特徴としている。 【0007】又、請求項2記載の発明は、可動盤にピンを突設すると共に、操作部材には前記ピンが嵌合し可動盤の摺動方向に直交する方向に長い長孔を設けたことを特徴としている。 【0008】更に、請求項3記載の発明は、摺動部を、 ガイドレールに摺接するチャンネル状に形成したことを特徴としている。 【0009】請求項4記載の発明は、摺動部を、操作部材に対する外部からの入力位置近傍に配設したことを特徴としている。 【0010】請求項5記載の発明は、摺動部を有するスライド部材を操作部材とは別体に形成し、操作部材に、 スライド部材を固定する加締め片を一体に形成したことを特徴としている。 【0011】 【発明の実施の形態】以下本発明の第1実施形態を図に基づいて説明する。 図1乃至9において、1は基盤で、 自動変速機の高温のオイルに浸けて使用した場合に耐えるだけの耐熱性及び耐油性を有した合成樹脂によって成形したものであり、図4、5に示す如く下面12に5列の固定接点11を設けている。 固定接点11は42Ni −Feの鉄ニッケル合金からなり、後述する可動接点2 が摺接する部分であり、各固定接点11に沿って第1壁14及び複数条の第2壁15を設けている。 この第1壁14及び第2壁15は、各固定接点11間の絶縁性能を高める機能と、後述する可動盤3の突起31を案内する機構の両方を兼ね備えた構造である。 【0012】基盤1は側縁に前記固定接点11と平行に延びるガイドレール19を基盤1のほぼ全長に渡って形成している。 ガイドレール19は基盤1側面から断面T 字状に延びる部材で、上下の互いに平行な一対の第1及び第2ガイド面191,192と、この第1及び第2ガイド面191,192にそれぞれ直交する第3、4、5 の3つのガイド面193,194,195を有している。 また、基盤1はコネクタ16を一体形成しており、 前記固定接点11と電気的に接続した端子17をコネクタ16の内部に突出させている。 更に、基盤1は周縁の数箇所に加締め部18を設けている。 加締め部18は、 後述する枠体7の加締め片74を加締める部分である。 また、基盤1には、固定接点11が設けられていない上面に、操作部材4の位置決めピン131が係合する2つの位置決め穴13,13が形成してある。 【0013】次に可動接点2は、前記固定接点11に摺接するステンレスの板材からなり、前記固定接点11の列数に対応した数の、即ち5組の接触片21を図1に示す如くコ字状の枠部22の対向片から交互に延設しており、更に接触片21の各組を各々一対の細片で構成することにより所望の弾性を確保している。 可動接点2は、 ワッシャ23とリベット24を用いて枠部22を可動盤3に装着している。 【0014】可動盤3は、基盤1同様耐熱性及び耐油性を有した合成樹脂によって成形したものであり、可動接点2取付面端縁に前記固定接点11の表面を払拭する突起31を有すると共に、突起31と反対側の面には基盤1の第1壁14中心線が一致する位置で且つ可動盤3長手方向中央位置にピン5を圧入している。 この様な位置にピン5を設けることにより、ピン5から可動盤3に伝えられる操作力により可動盤3にモーメントが発生しないようにしている。 【0015】操作部材4は、図6、7に示すように、金属板をプレス加工した断面略L字状の部材で、可動盤3 に圧入したピン5が嵌合する長孔42を水平片41に有すると共に、垂直片43には後述のスライド部材6の保持部44及び自動変速機のマニュアルバルブ9に連結する連結部47を有している。 長孔42は、可動盤3の摺動方向にはピン5と同じ幅を有し、直交する方向にはピン5より長く形成してある。 又、保持部44には、一側より延びる切欠き45が形成され、この切欠き45開口縁にはスライド部材6保持用の加締め片46を、断面が小さい接触部49を介して形成してある。 一方連結部4 7は、可動盤3の移動方向に対して略直角方向に延びる2本の爪48を略水平に曲折成形している。 【0016】スライド部材6は、図8、9に示すように、基盤1同様の耐熱性及び耐油性を有した合成樹脂によって成形したものであり、前記基盤1のガイドレール19に嵌合するチャンネル状の摺動部61と頭部62との間に操作部材4の切欠き45に嵌合する溝部63を有している。 また、チャンネル状の摺動部61は、各内面に前記第1乃至第5ガイド部191〜195にそれぞれ摺接する円弧状の突部64,64,64,・・・を各2 個ずつ有している。 この突部64は、ガイドレール19 に対する接触面積を小さくして摺動抵抗を小さくすると共に、スライド部材6成形時のガイドレール19との接触位置精度を出し易くするためである。 また、第1ガイド面191に対向する突部64が上下2つに分割されているのは、第1ガイド面191の上下方向中央位置に成形型の分割線が生じるので、それを避けるためである。 【0017】次に、枠体7は、金属板をプレス加工した部材であり、下部71に前記ピン5が嵌合摺動すると共に液体が自由に出入りするのに充分な大きさの開放孔7 2と、側部に加締め片74を備えている。 そして、この枠体7と基盤1とでなす空間内に可動盤3を収納している。 尚、開放孔72の長さ寸法は前記ピン5の移動範囲より若干大きい寸法である。 更に開放孔72の両側縁は、枠体7内部に侵入したオイルが流れるのに適した下向きの傾斜面73となっている。 【0018】又、ブラケット8は、金属板をクランク状にプレス加工した部材であり、枠体7に溶接する基部8 1と、基部81から枠体下部71に離れて延びる取付片82と、取付片82に自動変速機のケースに取り付ける取付孔83を有している。 【0019】尚、131は位置決めピンであり、この位置決めピン131は、E字状をした部材で、可動盤3の移動位置とマニュアルバルブ9の移動位置とを一致させるために使用する部材で、基盤1の上面に形成した2つの位置決め穴13と操作部材4の爪48に係合させることにより位置決めする。 【0020】次に上記第1実施形態の組付けにあたっては、まず、固定接点11を有する基盤1に、可動接点2 をリベット24止めすると共にピン5を圧入した可動盤3を、突起31が第1壁14及び第2壁15間に位置するように載置する。 次に基盤1を枠体7で覆い、加締め片74を基盤1の加締め部18を嵌合し、折り曲げることにより一体化する。 続いて基盤1のガイドレール19 にスライド部材6の摺動部61をガイドレール19端部より挿入する。 一方、ピン5に操作部材4の長孔42を嵌合させ、更にスライド部材6を摺動させて切欠き45 に溝部63を嵌合させて加締め片46を折り曲げ、スライド部材6を操作部材4に固定する。 そして最後にブラケット8の基部81を枠体7に溶接して摺動スイッチが完成する。 この摺動スイッチを自動変速機に組み付けるには、事前に位置決めピン131を基盤1の位置決め穴13と操作部材4の爪48間に嵌合させておき、この状態の摺動スイッチを自動変速機の内部でマニュアルバルブ9とディテントレバー10に連結し、スイッチの位置決めを行いつつ取付孔83を介してブラケット8を固定して、その位置決めピン131を取り外す。 【0021】次に上記第1実施形態の作動を説明する。 第1実施形態の摺動スイッチ装置は、図2に示す如く基盤1を上側とした姿勢で自動変速機ケースに装着すると共に、操作部材4の連結部47にはマニュアルバルブ9 とディテントレバー10を連結している。 そのため、運転者が図外のシフトレバーを操作することによって、ディテントレバー10が作動すると、それに連動してマニュアルバルブ9と操作部材4が対応したシフト位置に移動し、また可動接点2も操作部材4と一体に移動して固定接点11に対する接触位置が切り換わる。 これにより、摺動スイッチ装置はシフト位置に対応したスイッチ作動をする。 【0022】この時、摺動スイッチ装置は、前記した様に図2に示す姿勢で自動変速機ケースに装着しているため、基盤1の固定接点11は下側を向いている。 そのため、固定接点11に付着した異物は重力によって落下し、固定接点11から剥がれ落ちる。 又、仮に固定接点11に付着した異物が剥がれ落ちにくい場合であっても、第1壁14及び第2壁15が各固定接点11間の絶縁性を確保しているのみならず、可動盤3の突起31が固定接点11の表面を払拭するので付着した異物が固定接点11から強制的に剥離される。 こうして摺動スイッチ装置は、導電性の異物が混じった汚れた自動変速機内部のオイルに浸けて使用しても、固定接点11間の絶縁不良が発生しない。 【0023】そして、運転者が図外のシフトレバーを操作し、ディテントレバー10、マニュアルバルブ9と共に操作部材4が対応したシフト位置に移動する場合、操作部材4は、スライド部材6により上下左右、及び回転方向を拘束された状態でガイドレール19上を摺動する。 そして、このスライド部材6の動きを長孔42に嵌合したピン5を介して可動盤3に伝える。 この時、操作部材4はスライド部材6によりガイドレール19に、また可動盤3は突起31により基盤1の第1壁14にそれぞれ独立してガイドされ、操作部材4と可動盤3とは、 その摺動方向についてのみタイトに、摺動方向と直交する方向についてはルーズな関係を保っているため、両者の摺動時にこじりが発生することがない。 【0024】次にこの発明の第2実施形態を図10及び図11を用いて説明する。 この第2実施形態の摺動スイッチ装置は、前記した第1実施形態の摺動スイッチ装置と大体同じ構成であり、ここでは第1実施形態の摺動スイッチ装置と相違した構成であるガイドレール120、 操作部材140と、スライド部材160について説明する。 【0025】まず、ガイドレール120を、基盤1一側縁から上方に延びるフランジとして形成し、このガイドレール120には、長手方向に延びる長孔121を形成している。 一方操作部材140の垂直片143には、2 個の貫通孔145を有する保持部144を前記ガイドレール120へ摺接するように延設する。 160は、前記保持部144の貫通孔145及びガイドレール120の長孔121に挿入されるスライド部材としての段付きリベットで、先端161はリテーナプレート150を介して加締められ、大径部162が摺動部を構成する。 この第2実施形態においてもガイドレール120は、長孔1 21の上下面122,123及びフランジの両側面12 4,125が、それぞれ4つのガイド面を形成し、操作部材140の上下左右及び回転方向の拘束を行う。 尚、 第2実施形態の摺動スイッチ装置の作動は、前記した第1実施形態の摺動スイッチ装置と同じであり、作動説明を省略する。 【0026】次に、図12は、本発明の第3実施形態を示すもので、以下、第1、2実施形態の摺動スイッチ装置と相違した構成であるガイドレール220と、スライド部材260について説明する。 【0027】本第3実施形態では、ガイドレール220 を、基盤1から一体に延設している点は第1実施形態と同様であるが、第1実施形態では断面T字状に形成していたのに対し、断面L字状に形成した点が異なる。 従って、第1実施形態では、5つのガイド面191〜195 を有していたのに対し、本実施形態では第5のガイド面195がない4つのガイド面221〜224構成としている。 これに伴いスライド部材260の摺動部261も断面コ字状の上辺先端から下方に延びる形状となっており、上記第1実施形態の第5のガイド面195に対向する部位がない点が異なっている。 その他の構成は第1実施形態と同じであり、作動も、前記した第1実施形態の摺動スイッチ装置と同じであるので、作動説明を省略する。 【0028】尚、上記各実施形態では、ガイドレールを、基盤と一体に形成したが、枠体と一体形成しても良い。 又、スライド部材を操作部材とは別体で形成したが、操作部材と一体、即ち、樹脂で一体成形したり、操作部材を金属で形成した時にはガイドレールに嵌合する摺動部をロール成形したりしてもよい。 【0029】 【発明の効果】以上、請求項1記載の本発明では、可動接点と、可動接点を支持する可動盤と、可動接点が摺接する固定接点と、固定接点を支持する基盤とを備える摺動スイッチ装置において、基盤側に可動盤の摺動方向に延びるガイドレールを設けると共に、可動盤を駆動する操作部材に前記ガイドレールに嵌合摺動する摺動部を設けたことにより、操作部材がガイドレールに対し決められた姿勢で確実に支持され、操作部材及び可動盤の円滑な摺動が可能となる。 【0030】又、請求項2記載の発明では、可動盤にピンを突設すると共に、操作部材には前記ピンが嵌合し可動盤の摺動方向に直交する方向に長い長孔を設け、同方向へ自由度をもたせたことにより、可動盤と操作部材とを独立して摺動させることができるので、可動盤にこじり力が働くことがなく、摺動を一層円滑に行うことができる。 【0031】更に、請求項3記載の発明では、摺動部を、ガイドレールに摺接するチャンネル状に形成したことにより、摺動部の自由度を摺動方向のみとし、操作部材の姿勢の保持をより確実にすることができるので、可動盤の摺動が一層円滑になる。 【0032】請求項4記載の発明では、摺動部を、操作部材に対する外部からの入力位置近傍に配設したことにより、外力が作用した時の操作部材に働くモーメントが小さくなり、摺動時の円滑さが一層向上する。 【0033】そして、請求項5記載の発明では、摺動部を有するスライド部材を操作部材とは別体に形成し、操作部材に、スライド部材を固定する加締め片を一体に形成したことにより、スライド部材の固定が簡単にでき、 組み付け作業性が向上する。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1実施形態を示す摺動スイッチ装置の分解斜視図である。 【図2】図1に示す摺動スイッチ装置をマニュアルバルブ及びディテントレバーに連結した状態を示す斜視図である。 【図3】同実施形態の図2におけるA−A線に沿う断面図である。 【図4】同実施形態における基盤を示す側面図であり、 要部を断面で示している。 【図5】同実施形態における基盤を示す下面図である。 【図6】同実施形態における操作部材を示す正面図である。 【図7】同実施形態における操作部材を示す下面図である。 【図8】同実施形態におけるスライド部材を示す正面図である。 【図9】同実施形態のスライド部材を示す図8におけるB−B線に沿う断面図である。 【図10】本発明の第2実施形態を示す図3と同様の断面図である。 【図11】同第2実施形態を示す要部の斜視図である。 【図12】本発明の第3実施形態を示す図3と同様の断面図である。 【符号の説明】 1 基盤 2 可動接点 3 可動盤 4,140 操作部材 5 ピン 6,160,260 スライド部材 7 枠体 8 ブラケット 9 マニュアルバルブ 10 ディテントレバー 11 固定接点 19,120,220 ガイドレール 42 長孔 46 加締め片 61,162,261 摺動部 |