【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この出願は、車両用のシフトポジションスイッチなどに好適なスイッチ装置に関する。 【0002】 【従来の技術】このようなスイッチ装置の一例として、 実公平6−12586号にに示されたインヒビタスイッチ(シフトポジションスイッチ)がある。 このスイッチは、略扇状の凹部を有するスイッチケースと、この凹部内へ回動自在に収容されかつ可動接点を有する可動部と、固定接点を有してかつ凹部を塞ぐようにスイッチケースへネジ止めされる略扇状の基板とを備え、可動部の一端に回動軸を一体に設け、この回動軸の一端を突出させてスイッチケースの軸支穴へ嵌合し、さらにこの軸支穴から外部へ突出させた部分に操作レバーを連結し、回動軸の他端には軸穴を形成してこの軸穴へ基板側から突出する支点突起を嵌合するとともに、基板の別の場所に位置決め突起を一体に設け、この位置決め突起をスイッチケースに設けた貫通穴へ嵌合することにより、スイッチケース、可動部及び基板の3部材を位置決めしている。 【0003】また、実開平6−5055号には、同様なスイッチに使用するためのターミナルベースが示されている。 このターミナルベースのは、略扇状をなす凹部を設け、この凹部内に固定接点を露出させたものである。 このターミナルベースの製法は、まず固定接点を有する端子板を一体にインサートして一次成形し、この上から二次成形により樹脂を被せることにより、一次成形時に形成された端子板固定用のピン穴を封止するものである。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】実公平6ー12586 号の場合は、可動部の回動軸をケース側へのみ突出することが必要であるため、レバーの取付がケース側に限定されてしまう。 しかし、取付場所に応じてケース側又は基板側のいずれをもレバーの取付側として随時変更できることが望まれるが、このようなことはできない。 【0005】実開平6−5055号によれば、一次成形体に重ねる二次成形部分は一次成形体の周囲全体を覆うのではなく、単に積層されているだけであるため、一次成形体が露出している。 このため、一次成形体と二次成形部分との熱収縮率の相違により、両部材間に間隙ができ、ここから一次成形体内部の端子板まで水が侵入する可能性があり、防水性を損なうおそれがある。 【0006】さらに、このようなスイッチにおいて、固定接点を表面に露出させたターミナルベースの一般的な成形は、予め固定接点を端子板の一部に打ち出して突出させ、この端子板を成形型内へ置き、固定接点が露出するように絶縁樹脂を注入してインサート成形する。 このとき、固定接点の表面が損傷したり、絶縁樹脂のかぶりによる成形不良が生じたり、接点面の高さが不均一になることにより、後から接点面を加工する工程が必要になることがあるので、このような手間のかからない成形方法も望まれる。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本願発明に係るスイッチ装置は、略扇状の凹部を有するスイッチケースと、この凹部内へ回動自在に収容された可動接点ホルダと、この可動接点ホルダの一面へ突出する可動接点と摺接する固定接点を有し、前記スイッチケースに対してその凹部を塞いで取付けられる固定接点ベースとを備えたスイッチ装置において、スイッチケースの凹部内における扇の要に相当する部分と、この部分に対応する固定接点ベースの部分にそれぞれシャフト穴を設け、これらのシャフト穴へ可動接点ホルダの一端部に設けられた軸部材の対応する端部を回動可能に嵌合するとともに、スイッチケースと固定接点ベースの各対応位置に位置決め穴を貫通形成したことを特徴とする。 【0008】さらに、請求項1のスイッチ装置に使用する固定接点ベースを成形する方法において、予め固定接点を有する端子板をインサートしたインナーベースを成形し、固定接点ベースの位置決め穴と対応する位置にこの位置決め穴よりも大きな窓穴を設けた後、このインナーベースを固定接点ベースの成形型内へ入れて絶縁樹脂を注入することにより、固定接点を残して肉厚内にインナーベースをインサートするとともに、インナーベースの窓穴内側を絶縁樹脂で覆って位置決め穴を形成することを特徴とする。 【0009】また、請求項1のスイッチ装置に使用する固定接点ベースを成形する方法において、固定接点ベース又はその中間成形物を成形するための成形割型の一方側内へ固定接点の端子板を入れ、他方の型を型締めしてこの型に設けた端子板固定部で端子板を固定し、成形空間内へ絶縁樹脂を注入するとともに、前記端子板固定部の先端に設けた突起部により、型締め圧により端子板の一部を突出変形させて固定接点を形成することを特徴とする。 【0010】 【発明の実施の形態】図面に基づいて、シフトポジションスイッチとして構成された一実施例を説明する。 図1 はシフトポジションスイッチの組立方を説明する分解図、図2は同スイッチの平面図、図3はその底面図、図4は図2の4−4線断面図、図5は図3から固定接点ベースを除いた状態の図、図6は固定接点ベースの平面図、図7はインナーベースの平面図、図8はインナーベースの成形を模式的に示す断面図である。 【0011】これらの図において、シフトポジションスイッチは略扇状のスイッチケース10、これと重ね合わされる略扇状の固定接点ベース20、その裏面に露出する固定接点30、スイッチケース10と固定接点ベース20の両方に支持された本願発明における軸部材の一例であるシャフトホルダ40、その一端側が固着された可動接点ホルダ50、その表面に設けられた可動接点60 を備えている。 【0012】スイッチケース10と固定接点ベース20 との周囲は、適当間隔でネジ70により相互に結合されている(図2)。 【0013】図5に明らかなように、スイッチケース1 0には、可動接点ホルダ50を収容するための一段深くなった略扇形の凹部11が形成され、その扇の要に相当する部分にシャフト穴12を有する段部13が形成されている。 【0014】凹部11の周囲にはパッキン溝14が形成され、ここにパッキン71が収容されるとともに、パッキン溝14より外側の縁部には適当間隔で雌ネジ穴15 が設けられている。 【0015】さらに、シャフト穴12を挟んだ略対称位置に外方へ突出する車体側取付部16、17が設けられ、それぞれには取付用の長穴16a、17aが設けられるとともに、車体側取付部16の凹部11近傍に位置決め穴18が設けられている。 【0016】位置決め穴18は、長穴形状をなし、その長さ方向はシャフト穴12の半径方向と一致している。 【0017】段部13のシャフト穴12には外方側(組立時に外観となる側、以下同じ)からオイルシール19 が嵌合されている(図1)。 【0018】固定接点ベース20は図3、4及び6に明らかなように、スイッチケース10の凹部11内へ嵌合する略扇状の合成絶縁樹脂からなる部材であり、肉厚内にインナーベース21がインサートされている。 【0019】固定接点ベース20の扇の要に相当する部分にはシャフト穴22が形成され、ここにも外方からオイルシール23が嵌合されている。 【0020】固定接点ベース20の外周部にはカプラ2 4が一体に形成され、さらに取付ボス25が外方へ突出形成され、それぞれにネジの通し穴26が形成されている。 【0021】カプラ24の近傍部に長穴状の位置決め穴27が形成され、スイッチケース10の位置決め穴18 と対応する位置に同一形状で形成されている。 【0022】インナーベース21は、図7に接点側表面を示すように、端子板である複数のバスパー端子31を予め複数列、複数段に配列した状態でインナー用絶縁樹脂36にインサート成形したものであり、さらにこのインナーベース21を用いてインサート成形することにり、カプラ24等が一体になった固定接点ベース20を形成できる。 【0023】バスパー端子31の一部は打ち出し形状に突出して、インナーベース21及び最終的には固定接点ベース20の接点側面へ露出する固定接点30をなす。 【0024】各バスパー端子31の一端部は外方のカプラ相当部へ突出する接続端子32をなし、かつ適当ヶ所に打ち抜き穴33が形成され、連続してはならない部分を切断している。 【0025】特に、打ち抜き穴33のうち、位置決め穴27に相当する部分は窓穴34をなし、位置決め穴27 よりも大きめな穴が形成されている。 なお、バスパー端子31の上にも成形時における固定用の凹部35がインナーベース21の表裏の各適当ケ所に形成されている(図6、7)。 【0026】図8は、インナーベース21の成形方法を模式的に示す図であり、まず、インナー用絶縁樹脂36 を注入する前のAにおいては、下型73の成形キャビテイ74内にバスパー端子31を入れる。 【0027】このとき、バスパー端子31にはまだ固定接点30としての突起は形成されておらず、フラットな形状になっている。 但し、下型73のバスパー端子31 を置く部分には凹部75が形成されている。 【0028】一方、上型76には、バスパー端子31に対する固定突部77が形成され、その先端には突起78 が形成され、凹部75に対応している。 【0029】そこで、上型76を閉じると、Bに示すように、固定突部77がバスパー端子31を型面に固定するとともに、その一部を突起78が凹部75へ押し出すことにより、固定接点30が形成される。 【0030】この状態で成形キャビテイ74内へインナー用絶縁樹脂36を注入すれば、固定接点30が形成されたバスパー端子31を一体にしたインナーベース21 が得られ、脱型後打ち抜き穴33及び窓穴34等を形成するための後加工をする。 【0031】このようにして得られたインナーベース2 1は、固定接点ベース20用の成形型へ移され、固定接点ベース用絶縁樹脂28により、固定接点30のみ残してその周囲全体を覆うようにインサート成形され、固定接点ベース20が形成される。 【0032】これにより、図6の拡大部において模式的に示した断面構造から明らかなように、窓穴34は位置決め穴27よりも大きめに形成されているので、その内側まで固定接点ベース用絶縁樹脂28が回り込み、窓穴34の形成によって露出したバスパー端子31も完全に覆われて絶縁される。 【0033】さらに、インナーベース21を成形するとき固定突部77によて形成された固定用の凹部35も固定接点ベース用絶縁樹脂28で埋められるため、ここに露出していたバスパー端子31も完全に覆われて絶縁される。 【0034】シャフトホルダ40は、一端をシャフト穴12へ嵌合し、他端をシャフト穴22へ嵌合することにより、スイッチケース10と固定接点ベース20により回動自在に支持されている。 【0035】シャフトホルダ40にはレバー72の軸部(図1)を通す軸穴41が形成され、その内周面には長さ方向に位置決めリブ42が形成されている。 【0036】可動接点ホルダ50は図1、4、5に明らかなように、シャフトホルダ40と一体化したアーム状部材であり、シャフトホルダ40を中心として凹部11 内を回動する。 【0037】可動接点ホルダ50のうち、固定接点30 と対面する側には、可動接点60が差し込まれ、固定接点30と所定の接圧で接触できるように突出方向へばね付勢されている。 【0038】次に、本実施形態の作用を説明する。 まず、このスイッチ装置を組立てるには、図1に示すように、スイッチケース10、シャフトホルダ40及び固定接点ベース20を治具80上で組立てる。 【0039】この場合、治具80の一端に突出形成されたシャフト用軸81に、スイッチケース10のシャフト穴12、シャフトホルダ40の軸穴41及び固定接点ベース20のシャフト穴22をはめる。 【0040】同時に、治具80の他端に突出形成された位置決め用軸82に、スイッチケース10及び固定接点ベース20の各位置決め穴18、27をはめる。 【0041】続いて、スイッチケース10の雌ネジ穴1 6と固定接点ベース20の通し穴26を一致させて、通し穴26側からネジ70を締結することにより、スイッチケース10、シャフトホルダ40及び固定接点ベース20の3部材が組立一体化される。 【0042】これにより、各軸81及び82間の距離D (図1)が一定であるから、組立時の寸法精度として最も重要である可動接点ホルダ50の回動方向において、 スイッチケース10と固定接点ベース20が正確に位置決めされる。 【0043】同時に、可動接点ホルダ50は、軸81により正確に芯出しされて位置決めでき、このとき回動半径方向における寸法誤差は、位置決め穴18及び27がそれぞれ可動接点ホルダ50の回動半径方向へ長い長穴をなすことにより吸収される。 【0044】そこで、これら3部材を相互に位置決めした状態で、ネジ70によって固定接点ベース20とスイッチケース10をネジ止めする。 【0045】その結果、シャフトホルダ40が両端をそれぞれ相対移動可能な別部材であるスイッチケース10 及び固定接点ベース20へ固定されているにもかかわらず、周方向のガタつきが防止されるので正確に芯出しできる。 【0046】そのうえ、シャフトホルダ40がスイッチケース10及び固定接点ベース20を貫通し、かつそれぞれの位置決め穴18及び27も貫通しているので、レバー72の取付をスイッチケース10側又は固定接点ベース20側のいづれもが可能であり、かつ、治具80に対する組み付けが、スイッチケース10又は固定接点ベース20のいづれ側からでも可能になる。 【0047】さらに、固定接点30の形成を、固定接点ベース20の成形時における型締め圧によって形成するので、バスパー端子41をプレス成形で形成していた従来方法と比べ、工数を省略できる。 【0048】しかも、固定接点30を突出させた端子板31を成形型76の一部である固定突部77で固定したまま、端子板31の周囲へインナー用絶縁樹脂36を注入してインサート成形するので、固定接点30の表面が損傷したり、インナー用絶縁樹脂36のかぶりによる成形不良が生じたり、接点面の高さが不均一になることにより、後から接点面を加工するような手間のかかる工程が不要になる。 【0049】また、固定接点ベース20は、その肉厚内へインナーベース21をインサート成形しているので、 両部材間に熱収縮率の相違があっても水が内部へ侵入するような間隙が形成されず、防水性能が向上する。 【0050】そのうえ、インナーベース21に位置決め穴27よりも大きな窓穴34を設け、この内側を固定接点ベース用絶縁樹脂28で覆って位置決め穴27を形成することにより、バスパー端子31の一部が位置決め穴27内へ露出しないので、この点でもさらに防水性能が向上する。 【図面の簡単な説明】 【図1】シフトポジションスイッチの組立を説明する分解断面図 【図2】シフトポジションスイッチのケース側平面図 【図3】同上の底面図 【図4】図2の4−4線断面図 【図5】図3から固定接点ベースを除いた状態の図 【図6】固定接点ベースの固定接点側を示す図 【図7】インナーベースの固定接点側を示す図 【図8】インナーベースの成形を説明する断面図 【符号の説明】 10:スイッチケース、18:位置決め穴、20:固定接点ベース、22:シャフト穴、27:位置決め穴、3 0:固定接点、34:窓穴、40:シャフトホルダ(軸部材)、50:可動接点ホルダ、60:可動接点、8 0:治具 |