【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、操作具の操作量に応じた電気信号を出力する操作装置に関するものである。 【0002】 【従来技術及び発明が解決しようとする課題】一般に、 この種操作装置は、操作具の操作量を直接出力する機械式のものと、操作具の操作量を電気信号に変換して出力する電気式のものとに分類されるが、近来では、マイクロコンピュータ等の普及に伴つて電気式のものが増加する傾向にある。 しかるに、従来の電気式操作装置は、操作具を変位自在に支持すると共に、その操作量をポテンショメータ等の変位センサで電気信号に変換すべく構成されていたため、操作具(支持部)や変位センサに可動部分が存在して構造が複雑になる許りでなく、耐振性や耐久性に劣る欠点を有し、しかも、操作具の支持部は、 てこの原理で増力された操作力を受けることになるため、強度を確保するために大型化を回避することができず、この結果、操作装置全体の大型化を招来しているのが実状であつた。 【0003】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの欠点を一掃することができる操作装置を提供することを目的として創案されたものであつて、 操作具と、該操作具の操作量に応じた電気信号を出力する信号出力手段とを備えてなる操作装置において、前記操作具は、歪み変形自在な固定部材で構成される一方、 信号出力手段は、操作具の歪み量を電気信号に変換する歪みセンサを備えていることを特徴とするものである。 そして本発明は、この構成によつて、可動部分を無くして構造の簡略化およびコストダウンを可能にすると共に、耐振性や耐久性を大幅に向上させ、さらには、操作装置を著しく小型化することができるようにしたものである。 【0004】 【実施例】次に、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。 図面において、1は建設機械等に設けられる操作レバーであつて、該操作レバー1は四角柱形状に形成され、その上端部には球形状のグリップ1aが一体的に設けられる一方、下端部には平板状のベース板1bが一体的に設けられているが、前記ベース板1bは、所定の取付箇所に一体的に固定取付けされるようになつている。 即ち、操作レバー1は、歪み変形自在(弾性変形自在)な部材で形成されており、このため、グリップ1a を押し引き操作した場合には、前後方向(±Y方向)および左右方向(±X方向)に歪み変形するようになつている。 【0005】A〜Dは歪みゲージであつて、該歪みゲージA〜Dは、樹脂等の絶縁材からなるベース材2に、金属抵抗線、金属抵抗箔等(極めて細い金属線もしくは極めて薄い金属箔を所定方向を向いて折り返し状に形成したもの)からなる抵抗体3を一体的に固定し、さらに該抵抗体3の両端からそれぞれリード線4を引出して形成されるものであるが、このものは、前記操作レバー1の各側面中央位置に、それぞれ抵抗体3がレバー方向を向く姿勢で一体的に接着されている。 つまり、操作レバー1が±X方向に歪み変形した場合には、背中合わせ状に±X方向を向く歪みゲージA、Bの抵抗体3が背反方向に伸縮して抵抗値(抵抗体3の伸びに伴つて増加し、縮みに伴つて減少する)を背反的に増減させる一方、操作レバー1が±Y方向に歪み変形した場合には、背中合わせ状に±Y方向を向く歪みゲージC、Dの抵抗体3が背反方向に伸縮して抵抗値を背反的に増減させるようになつている。 また、操作レバー1が±X方向に歪み変形した場合の歪みゲージC、D、もしくは操作レバー1が± Y方向に歪み変形した場合の歪みゲージA、Bは、図3 に示す如く変形することになるが、このとき、ゲージ両側部が同時に背反方向に伸縮するため、抵抗体3全体としては伸縮が相殺されて抵抗値を殆ど変化させないようになつている。 尚、歪みゲージA〜D(抵抗体3)は、 応力と歪みが比例する弾性限界領域内でのみ使用されるようになつている。 【0006】さらに、5は信号出力回路であつて、該信号出力回路5は、前記歪みゲージA、Bの抵抗体3、可変抵抗VR 1および固定抵抗R 1を環状に接続して構成される第一ブリッジ回路6と、歪みゲージC、Dの抵抗体3、可変抵抗VR 2および固定抵抗R 2を環状に接続して構成される第二ブリッジ回路7と、第一ブリッジ回路6 の一方の対角点E + 、E - (A−B間、VR 1 −R 1間)および第二ブリッジ回路7の一方の対角点E + 、E - (C− D間、VR 2 −R 2間)に電圧を印加する直流電源Eと、 第一ブリッジ回路6の他方の対角点E 1 、E 2 (A−R 1 間、B−VR 1間)から出力される電圧信号E IN (X) を増幅する第一増幅器8と、第二ブリッジ回路7の他方の対角点E 1 、E 2 (R 2 −C間、D−VR 2間)から出力される電圧信号E IN (Y)を増幅する第二増幅器9とを備えている。 【0007】次に、前記信号出力回路5の作用を説明するが、両ブリッジ回路6、7の作用は略同一であるため、第一ブリッジ回路6についてのみ説明する。 但し、 E、E 1 、E 2の単位は「V」、A、B、R 1 、VR 1の単位は「Ω」とする。 さて、始めに、操作レバー1の中立状態で可変抵抗VR 1を調整して第一ブリッジ回路6の平衡を取り、出力E INの電圧を「0」にする。 このとき、第一ブリッジ回路6の出力点E 1 、E 2における電位は、 E 1 =E・R 1 /(A+R 1 ) E 2 =E・VR 1 /(B+VR 1 ) となるが、第一ブリッジ回路6は平衡状態であるため、 E 1 =E 2である。 【0008】そして、操作レバー1を+X方向に操作した場合、歪みゲージAの抵抗値は操作レバー1の歪み量(操作量)に応じて減少する一方、歪みゲージBの抵抗値は操作レバー1の歪み量に応じて増加する。 ここで、 歪みゲージA、Bの抵抗値変化をそれぞれA 1 、B 1とすると、第一ブリッジ回路6の出力点E 1 、E 2における電位は、 E 1 =E・R 1 /{(A−A 1 )+R 1 } E 2 =E・VR 1 /{(B+B 1 )+VR 1 } となる。 つまり、出力点E 1の電位が増加する一方、出力点E 2の電位が減少して第一ブリッジ回路6における平衡が崩れ、第一増幅器8の入力E INには+極性の電圧信号が入力される。 ここで、第一増幅器8の増幅率をα とすると、第一増幅器8の出力E OUTは、 E OUT =(E 1 −E 2 )×α となる。 【0009】逆に、操作レバー1を−X方向に操作した場合は、歪みゲージAの抵抗値が増加する一方、歪みゲージBの抵抗値が減少するため、第一ブリッジ回路6の出力点E 1 、E 2における電位は、 E 1 =E・R 1 /{(A+A 1 )+R 1 } E 2 =E・VR 1 /{(B−B 1 )+VR 1 } となる。 つまり、出力点E 1の電位が減少する一方、出力点E 2の電位が増加して第一増幅器8の入力E INには−極性の電圧信号が入力され、該入力信号が増幅されて第一増幅器8から出力されることになる。 従つて、信号出力回路5においては、図6に示す如く、操作レバー1 の操作方向に応じて極性が変化し、かつ操作量(操作力)に応じて電圧が変化する電気信号を出力することになる。 【0010】叙述の如く構成された本発明の実施例において、操作レバー1を任意の方向(斜め方向を含む)に操作すると、操作レバー1は操作力に応じて歪み変形する。 そして、その歪み量は、操作レバー1の各側面に接着される歪みゲージA〜Dの抵抗値変化に変換された後、信号出力回路5において電圧信号に変換されて出力されることになる。 【0011】この様に、本発明にあつては、操作レバー1の操作量に応じた電気信号を出力することになるが、 操作レバー1は、歪み変形自在な固定部材に構成されており、しかも、操作レバー1の操作量は、一体的に接着される歪みゲージA〜Dによつて検出されることになる。 従つて、変位自在に支持した操作レバーの操作量をポテンショメータで検出する従来のものの如く、可動部分の存在によつて構造が複雑化したり、耐振性や耐久性に劣るという欠点を悉く解消できることになる許りか、 強度確保のための大型化を回避して操作レバー装置の小型化にも貢献することができる。 【0012】しかも、操作レバー1の操作量を極めて小さくすることができるため、オペレータの操作負担が著しく軽減され、この結果、操作レバー1の操作性を大幅に向上させることができる。 【0013】さらに、歪みゲージA〜Dは、レバー側面の同一位置(側面中央位置)に接着されているため、仮りに、温度変化に伴つて歪みゲージA〜Dの抵抗値が変化したとしても、その変化率は略同一であり、従つて、 ブリッジ回路6、7の各出力点E1、E2における変化率を略同一にして電圧変化を解消することができ、この結果、温度補償機能を具備したものとできる。 【0014】尚、本発明は、前記実施例に限定されないものであることは勿論であつて、例えば操作レバー以外の操作具(操作ペダル等)でも実施できることは言うまでもない。 【0015】 【作用効果】以上要するに、本発明は叙述の如く構成されたものであるから、操作具の操作量に応じた電気信号を出力するものでありながら、操作具を歪み変形自在な固定部材に構成すると共に、操作具の操作量を歪みセンサで電気信号に変換すべく構成されるため、可動部分を無くすことができる。 従つて、構造を著しく簡略化して大幅なコストダウンを可能にする許りでなく、優れた耐振性および耐久性を具備した信頼性の高いものとでき、 しかも、可動部分における補強を不要にして操作装置の著しい小型化を計ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】操作レバーの斜視図である。 【図2】(A)は歪みゲージの斜視図、(B)は側面図である。 【図3】作用を示す操作レバーの要部拡大図である。 【図4】歪みゲージの検出範囲を示すグラフ図である。 【図5】信号出力回路を示す回路図である。 【図6】信号出力回路のX方向成分の出力を示すグラフ図である。 【符号の説明】 1 操作レバー 5 信号出力回路 A〜D 歪みゲージ |