ガス絶縁電気機器

申请号 JP2014552976 申请日 2013-10-17 公开(公告)号 JP5859142B2 公开(公告)日 2016-02-10
申请人 三菱電機株式会社; 发明人 吉村 学; 宮本 尚使; 海永 壮一朗; 森 剛; 貞國 仁志;
摘要
权利要求

絶縁ガスが充填された金属容器と、 前記金属容器の内部に収容されて電圧が印加される導体と、 前記導体を前記金属容器に対して絶縁支持する絶縁支持部材と を備え、 前記導体は、誘電体膜によって外周を覆われ、さらに、作用を受ける電界が臨界値より高くなると低下する非線形な体積抵抗率を有して該誘電体膜上に形成された非線形抵抗膜によって外周を覆われている、ガス絶縁電気機器。前記非線形抵抗膜は前記誘電体膜より薄く、かつ、前記非線形抵抗膜の厚さの寸法が前記金属容器の内面から前記非線形抵抗膜の表面までの間隔の寸法より小さい、請求項1に記載のガス絶縁電気機器。前記非線形抵抗膜は、前記金属容器内の異物の有無を確認するための試験電圧印加時に作用を受ける試験時電界以下の電界において体積抵抗率が一定となり、前記試験時電界より高い電界において体積抵抗率が低下するように形成されている、請求項1または2に記載のガス絶縁電気機器。前記非線形抵抗膜は、膜を形成するためのバインダー樹脂と非線形抵抗材料とからなり、 前記バインダー樹脂の主成分は、前記誘電体膜の主成分と同じである、請求項1から3のいずれか1項に記載のガス絶縁電気機器。前記金属容器は、誘電体膜、および、作用を受ける電界が臨界値より高くなると低下する非線形な体積抵抗率を有して該誘電体膜上に形成された非線形抵抗膜によって内周を覆われている、請求項1から4のいずれか1項に記載のガス絶縁電気機器。前記導体は、平方向に配置された水平部と鉛直方向に配置された鉛直部とを含み、 前記誘電体膜および前記非線形抵抗膜は、前記導体の前記水平部のみに設けられている、請求項1から5のいずれか1項に記載のガス絶縁電気機器。

说明书全文

本発明は、ガス絶縁電気機器に関し、特に、高電圧が印加されるガス絶縁電気機器に関する。

ガス絶縁電気機器においては、円筒状の金属容器内に、金属容器と同軸上に円柱状の高電圧導体が配設されている。金属容器内は、絶縁ガスで充填されている。絶縁ガスとして、SF6ガス、乾燥空気、窒素ガス、炭酸ガス、CF4ガス,CHI3ガス、C2F6ガス、C3F8ガスなどを単体または混同して使用するのが主流となっている。

特に、SF6ガスは、空気の約3倍の絶縁耐を有するため、高電圧部と接地電極との間の距離を縮めて機器を小型化できる絶縁ガスとして用いられている。

ガス絶縁電気機器では、絶縁性能を高めるために、通常、絶縁ガスを加圧して使用している。絶縁ガスを密閉しつつ高電圧導体との絶縁距離を一定に確保するために、上記のような円筒状の金属容器内に円柱状の高電圧導体を同軸配置した構造を採用している。

絶縁ガスとしてSF6ガスを用いる場合、不均衡な電界下において絶縁性能の低下が起こることに留意する必要がある。たとえば、ガス絶縁電気機器が開閉器である場合、金属同士が摺動する摺動部、並びに、遮断器および断路器などの導体同士の接触部から、ミリメートルレベルの大きさの異物が発生することがある。

この異物が発生した場合、初期段階において、異物は金属容器の底部上に堆積する。次第に、異物は静電誘導などの作用により帯電し、ガス絶縁電気機器の運転中における金属容器と高電圧導体との間の電位勾配にしたがって、金属容器の底部からの浮上と底部への降下とを繰り返す往復運動を始める。

異物は、帯電量が少ない間は金属容器の底部近傍で往復運動しているが、帯電量が増加するにしたがって浮上高さが増加して、高電圧導体の近傍まで浮上または高電圧導体に接触するようになる。

高電圧導体の近傍は、電界が最も高くなっている。そのため、異物が高電圧導体に接近すると、異物の近傍に電界が集中して電界分布が不均衡となり放電が発生する。この放電が発生した場合、異物を介して全路破壊となる地絡を引き起こすことがある。

異物による絶縁破壊を抑制できる構成を開示した先行文献として、特開2009−284651号公報(特許文献1)、および、特開平5−30626号公報(特許文献2)がある。

特許文献1に記載された密閉型絶縁装置においては、金属容器の内側表面に、金属容器の内側表面に作用する電界が臨界値以下のときには電気抵抗が高く、臨界値よりも高いときには電気抵抗が低くなるように形成された非線形抵抗膜が設けられている。

特許文献2に記載された複合絶縁方式母線においては、高電圧導体の外表面および金属容器の内表面に10mm以上の厚さのフッ素樹脂被覆が設けられている。

特開2009−284651号公報

特開平5−30626号公報

特許文献1に記載された密閉型絶縁装置においては、金属容器の底部近傍に位置する異物の挙動を抑制できるが、高圧導電体の近傍まで浮上した異物の挙動を抑制することはできない。そのため、異物による放電を抑制して絶縁信頼性をさらに向上する余地がある。

特許文献2に記載された複合絶縁方式母線においては、フッ素樹脂被覆として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、または、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)などの膜を10mm以上形成している。

PTFE膜を形成するには、粉体のPTFEを金属導体に焼き付ける方法がある。この方法で10mm以上の膜を形成するには、少なくとも数層から数十層の吹き付け塗装を行なう必要がある。それにより、膜中に異物が混入しないようにする管理および膜厚の管理などの膜品質の管理が難しくなり、また、製造時間が長くなる。

PFA膜またはFEP膜を形成するには、射出成型またはトランスファー成型などの方法がある。この方法の場合、金型が必要となり、製造プロセスが複雑になる。

本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、簡易に製造可能で異物による放電を抑制して絶縁信頼性を向上できるガス絶縁電気機器を提供することを目的とする。

本発明に基づくガス絶縁電気機器は、絶縁ガスが充填された金属容器と、金属容器の内部に収容されて電圧が印加される導体と、導体を金属容器に対して絶縁支持する絶縁支持部材とを備える。導体は、誘電体膜によって外周を覆われ、さらに、作用を受ける電界が臨界値より高くなると低下する非線形な体積抵抗率を有してこの誘電体膜上に形成された非線形抵抗膜によって外周を覆われている。

本発明によれば、異物による放電を抑制して絶縁信頼性を向上できるガス絶縁電気機器を簡易に製造できる。

本発明の実施形態1に係るガス絶縁電気機器の構成を示す断面図である。

ガス絶縁電気機器内の異物の挙動を示す断面図である。

導体に接近した状態の仮想異物の導体側の端部の周囲の電界分布を示すグラフである。

導体に接近した状態の仮想異物の金属容器側の先端の周囲の電界分布を示すグラフである。

導体に誘電体膜のみを形成したときの絶縁破壊電圧と、導体に誘電体膜および非線形抵抗膜とを形成したときの絶縁破壊電圧とを示すグラフである。

非線形抵抗膜の体積抵抗率が低下していない状態において、誘電体膜内に作用する電界、および、非線形抵抗膜の厚さの寸法と金属容器の内面から非線形抵抗膜の表面までの間隔の寸法との寸法比について、相関関係を検証した結果を示すグラフである。

異物が導体に接触した状態において、異物の導体側の先端の電界、および、誘電体膜の電気抵抗と非線形抵抗膜の電気抵抗との抵抗比について、相関関係を検証した結果を示すグラフである。

異物が導体に接触した状態において、異物の導体側の先端の電界、および、誘電体膜の厚さと非線形抵抗膜の厚さとの膜厚比について、相関関係を検証した結果を示すグラフである。

同実施形態に係る非線形抵抗膜の体積抵抗率と非線形抵抗膜に作用する電界との関係を示すグラフである。

本発明の実施形態2に係るガス絶縁電気機器の構成を示す断面図である。

非線形抵抗膜の膜厚と、非線形抵抗膜の体積抵抗率が低下する電界の臨界値との関係を示すグラフである。

本発明の実施形態3に係るガス絶縁電気機器であるガス絶縁開閉装置の構成を示す断面図である。

以下、本発明の実施形態1に係るガス絶縁電気機器について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。

(実施形態1) 図1は、本発明の実施形態1に係るガス絶縁電気機器の構成を示す断面図である。図1に示すように、本発明の実施形態1に係るガス絶縁電気機器10は、絶縁ガス1が充填された金属容器2と、金属容器2の内部に収容されて電圧が印加される導体3と、導体3を金属容器2に対して絶縁支持する絶縁支持部材4とを備える。

本実施形態においては、ガス絶縁電気機器10は、図1中の左側に位置する遮断器と、図1中の右側に位置する断路器との間に挟まれるように接続されている。

金属容器2は、円筒状の外形を有し、接地されて接地電位に固定されている。金属容器2は、軸方向の両端に継ぎ手部を有している。金属容器2の遮断器側の継ぎ手部は、絶縁支持部材4を互いの間に挟んで、遮断器の金属容器の継ぎ手部と接続されている。金属容器2の断路器側の継ぎ手部は、他の絶縁支持部材4を互いの間に挟んで、断路器の金属容器の継ぎ手部と接続されている。

導体3は、金属容器2と同軸配置されている。具体的には、導体3は、金属容器2の中心軸上に延在するように略円柱状に設けられている。導体3は、絶縁支持部材4によって位置決めされている。

導体3は、軸方向の両端に連結部を有している。導体3の連結部は、図示しない電界緩和シールドで覆われている。導体3の遮断器側の連結部は、遮断器の導体11の連結部と連結されている。導体3の断路器側の連結部は、断路器の導体12の連結部と連結されている。

絶縁支持部材4は、導体3の延在方向の一方側に凸面および他方側に凹面を有する。また、絶縁支持部材4は、径方向の端部に平坦部を有している。さらに、絶縁支持部材4は、中心部に開口を有している。

絶縁支持部材4の平坦部は、金属容器2の継ぎ手部と、遮断器の金属容器の継ぎ手部または断路器の金属容器の継ぎ手部との間に挟持されている。これにより、絶縁支持部材4は、金属容器2に対して固定されている。絶縁支持部材4は、固体絶縁物から形成されている。

絶縁支持部材4の開口は、導体3の連結部と嵌合している。これにより、絶縁支持部材4は、導体3を支持している。絶縁支持部材4の開口は、導体3によって密閉されている。金属容器2と絶縁支持部材4と導体3とによって囲まれた空間内に、絶縁ガス1が封入されている。

以下、導体3について詳細に説明する。 図1に示すように、導体3は、誘電体膜5、および、作用を受ける電界が臨界値より高くなると低下する非線形な電気抵抗を有して誘電体膜5上に形成された非線形抵抗膜6によって外周を覆われている。非線形抵抗膜6は、誘電体膜5より薄い。

本実施形態においては、導体3において両端の連結部同士に挟まれた部分のみに、誘電体膜5および非線形抵抗膜6を形成している。なお、上記のとおり、導体3の連結部は、電界緩和シールドで覆われている。

電界緩和シールドは、金属製の基材と、この基材の表面に設けられた絶縁部とを含む。絶縁部としては、たとえば、絶縁紙、または、エポキシ系樹脂もしくはフッ素系樹脂などの絶縁塗料などの絶縁物から構成されている。

本実施形態においては、誘電体膜5は、エポキシ系樹脂からなるが、誘電体膜5の材料はこれに限られず、たとえば、フッ素系樹脂、セラミック系樹脂またはゴムなどでもよい。誘電体膜5の膜厚は、数十μm以上数百μm以下程度でよいが、数mm程度でもよい。

誘電体膜5の形成方法としては、エポキシ系樹脂を、粉体塗装法、液状浸漬法または金型を用いた注形法などにより膜形成する方法がある。誘電体膜5をフッ素系樹脂で形成する場合は、粉体焼き付け加工、射出成型またはトランスファー成型などにより膜形成する。誘電体膜5をゴムで形成する場合は、熱収縮チューブを被せる方法、液体塗装法、または、射出成型法などにより膜形成する。

誘電体膜5を形成することにより、導体3の耐電圧性能を向上できる。この具体的メカニズムは、以下のとおりである。被覆されていない導体3の表面には、高低差が数μmから数十μm程度の微細な凹凸が存在する。この微細な凹凸の近傍においては、電界が強調される。

表面の微細な凹凸を考慮しないマクロな破壊電界を評価すると、破壊電界が電極の面積増加に伴って低下する現象、いわゆる電極の面積効果といわれる現象がある。この現象は、導体3の耐電圧性能に大きな影響を与える。特に、導体3の表面の微細な凹凸が露出している場合、電界が強調されて面積効果の影響が顕著になる。

導体3に誘電体膜5を形成することにより、導体3の表面の微細な凹凸を埋めることができるため、微細な凹凸による電界強調を緩和することができる。その結果、面積効果の影響を低減して、導体3の耐電圧性能を向上することができる。

本実施形態においては、非線形抵抗膜6は、非線形抵抗材料であるZnOを含むが、非線形抵抗材料はこれに限られず、たとえば、SiC、MgO、ZnSe、CdTe、AlGa、InP、GaAs、InSb、GaP、GaN、AlP、InN、InAs、NaCl、AgBr、または、CuClなどでもよい。

非線形抵抗膜6の形成方法としては、膜を形成するためのバインダー樹脂に非線形抵抗材料を混合し、その混合物を塗布して常温下または加熱下において硬化させることにより膜形成する方法がある。上記混合物の塗布方法としては、ローラー塗り、スプレーガンを用いた吹き付け塗装、焼き付け塗装または浸漬塗装などがある。

バインダー樹脂としては、エポキシ系樹脂などを用いることができる。本実施形態においては、非線形抵抗膜6のバインダー樹脂の主成分は、誘電体膜5の主成分と同じである。ただし、非線形抵抗膜6のバインダー樹脂の主成分は、エポキシ系樹脂に限られず、フェノール樹脂などでもよい。

非線形抵抗膜6の特性は、体積抵抗率が電界に対して非線形的に変化することである。具体的には、非線形抵抗膜6が作用を受ける電界が臨界値以下のときは、非線形抵抗膜6の体積抵抗率が高く維持される。非線形抵抗膜6が作用を受ける電界が臨界値より高いときは、非線形抵抗膜6の体積抵抗率が低下する。

詳細は後述するが、本実施形態においては、非線形抵抗膜6は、金属容器2内の異物の有無を確認するための試験電圧印加時に作用を受ける試験時電界以下の電界において体積抵抗率が一定となり、試験時電界より高い電界において体積抵抗率が低下するように形成されている。すなわち、試験時電界を上記臨界値に設定している。

非線形抵抗膜6の体積抵抗率を変更するには、粉末状にした非線形抵抗材料の粒径、および、非線形抵抗材料とバインダー樹脂との配合比の少なくとも一方を変更すればよい。

ここで、ガス絶縁電気機器10内に異物が存在した場合に起こりうる現象について説明する。

図2は、ガス絶縁電気機器内の異物の挙動を示す断面図である。上記のように、導体3は連結部において、遮断器の導体11または断路器の導体12と連結されている。この連結部分では、金属部材同士が接触するため、金属部材から剥離した金属片からなる異物が発生することがある。

図2に示すように、導体3に電圧が印加されていないときは、異物7は重力によって金属容器2の底部上に堆積している。導体3に電圧が印加されると、静電誘導などにより金属容器2から異物7に電荷が供給される。

電荷が供給されて帯電した異物7は、周囲の電界によるクーロン力を受けて、浮上と下降とを繰り返す上下運動を行なうようになる。異物7の帯電量が大きい場合、異物7が、導体3の近傍まで浮上、または、導体3に接触することがある。異物7が導体3に接近すると、異物7の導体3側の先端に電界が集中する。

仮に、導体3が被覆されていない場合、異物7の導体3側の先端に集中した電界が絶縁ガス1の電離電界を超えると、導体3と異物7との間で部分放電が発生する。この部分放電が発生すると、異物7の金属容器2側の先端にも電界が集中するようになる。異物7の金属容器2側の先端に集中した電界が絶縁ガス1の電離電界を超えると、金属容器2と異物7との間で放電が起こり、地絡にいたることもある。

そこで、本実施形態のガス絶縁電気機器10においては、導体3に誘電体膜5および非線形抵抗膜6を被覆している。

以下、異物7の一例として、両端部が半球状である略円柱状の外形を有する仮想異物について検証した結果について説明する。図3は、導体に接近した状態の仮想異物の導体側の端部の周囲の電界分布を示すグラフである。図3においては、縦軸に、仮想異物の導体3側の端部に作用する電界、横軸に、仮想異物の縦断面にて仮想異物の導体3側の端部の周方向における仮想異物の導体3側の先端からの距離を示している。また、図3においては、非線形抵抗膜6を形成した場合のデータを実線で、非線形抵抗膜6を形成せずに誘電体膜5のみを形成した場合のデータを点線で示している。

図3に示すように、非線形抵抗膜6を形成することにより、仮想異物の導体3側の先端に集中する電界を緩和することができる。具体的には、仮想異物が導体3に接近して仮想異物の導体3側の先端に電界が集中すると、非線形抵抗膜6が作用を受ける電界が臨界値より高くなり、非線形抵抗膜6の体積抵抗率が低下する。その結果、仮想異物の導体3側の先端に集中した電界を緩和することができ、導体3と仮想異物との間で部分放電が発生することを抑制できる。

図4は、導体に接近した状態の仮想異物の金属容器側の先端の周囲の電界分布を示すグラフである。図4においては、縦軸に、仮想異物の金属容器側の端部に作用する電界、横軸に、仮想異物の縦断面にて仮想異物の金属容器側の端部の周方向における仮想異物の金属容器側の先端からの距離を示している。また、図4においては、非線形抵抗膜6を形成した場合のデータを実線で、非線形抵抗膜6を形成せずに誘電体膜5のみを形成した場合のデータを点線で示している。

図3,4に示すように、非線形抵抗膜6を形成せずに誘電体膜5のみを形成した場合において、導体3に接近した状態の仮想異物の金属容器2側の先端近傍の電界は、仮想異物の導体3側の先端近傍の電界より低く、上記臨界値より低い。そのため、図4に示すように、非線形抵抗膜6を形成した場合と、非線形抵抗膜6を形成していない場合との両方において、導体3に接近した状態の仮想異物の金属容器2側の先端の周囲の電界分布に大きな差はない。

本実施形態においては、非線形抵抗膜6の内側に誘電体膜5を形成している。よって、非線形抵抗膜6の体積抵抗率が低下した状態において、異物7が非線形抵抗膜6と接触しても、異物7と導体3との間に誘電体膜5が位置するため、異物7の電位が導体3の電位と同一になることを防止できる。その結果、異物7の金属容器2側の先端に電界が集中することを阻害して、金属容器2と異物7との間で放電が起こって地絡にいたることを防止できる。

図5は、導体に誘電体膜のみを形成したときの絶縁破壊電圧と、導体に誘電体膜および非線形抵抗膜とを形成したときの絶縁破壊電圧とを示すグラフである。図5に示すように、導体3上に誘電体膜5を形成し、かつ、誘電体膜5上に非線形抵抗膜6を形成した場合、導体3上に誘電体膜5のみを形成した場合に比較して、ガス絶縁電気機器10の絶縁破壊電圧を高くすることができる。

さらに、誘電体膜5を絶縁耐力の大きな材料で構成した場合には、地絡に至る絶縁破壊電圧を増加させることができるため、仮に雷サージなどの過電圧が進入した場合においても全路破壊が起こることを抑制することができる。

本実施形態においては、上記のように、非線形抵抗膜6を、誘電体膜5より薄くしている。非線形抵抗膜6は、半導電性の非線形抵抗材料を含有するため、誘電体膜5より誘電率が高い。そのため、導体3に電圧が印加されると、非線形抵抗膜6より誘電体膜5に電界が集中する。この現象は、非線形抵抗膜6が厚くなるほど顕著になる。

また、本実施形態においては、非線形抵抗膜6の厚さの寸法が金属容器2の内面から非線形抵抗膜6の表面までの間隔の寸法より小さくなるように、非線形抵抗膜6を形成している。

図6は、非線形抵抗膜の体積抵抗率が低下していない状態において、誘電体膜内に作用する電界、および、非線形抵抗膜の厚さの寸法と金属容器の内面から非線形抵抗膜の表面までの間隔の寸法との寸法比について、相関関係を検証した結果を示すグラフである。図8においては、縦軸に誘電体膜5内に作用する電界、横軸に上記寸法比を示している。なお、誘電体膜5に作用する電界は、上記寸法比が0.01のときに誘電体膜5内に作用する電界で規格化している。

図6に示すように、上記寸法比が1より大きい場合、誘電体膜5内に作用する電界が急激に高くなる。そのため、上記寸法比を1以下にすることにより、誘電体膜5内に作用する電界を減少させることができる。すなわち、非線形抵抗膜6の厚さの寸法が金属容器2の内面から非線形抵抗膜6の表面までの間隔の寸法より小さくすることにより、誘電体膜5内に作用する電界を減少させることができる。特に、上記寸法比が0.1以下の範囲では、電界緩和の効果を安定して高く得ることができる。そのため、非線形抵抗膜6の厚さの寸法は、金属容器2の内面から非線形抵抗膜6の表面までの間隔の寸法に対して、1/10以下であることがより好ましい。

誘電体膜5に電界が集中すると、誘電体膜5に電気的ストレスが負荷されて誘電体膜5が劣化することがある。仮に、誘電体膜5が劣化した場合、異物7が導体3に間接的に接触した際に、異物7の電位が導体3の電位近傍まで高くなり、金属容器2と異物7との間で放電が起こりやすくなる。

また、誘電体膜5に電界が集中すると、非線形抵抗膜6の外表面側の電界が強くなる。非線形抵抗膜6に作用する電界が臨界値より高くなると、非線形抵抗膜6の体積抵抗率が低下する。この状態において、誘電体膜5が劣化している場合、金属容器2と異物7との間で放電がさらに起こりやすくなる。

よって、本実施形態においては、非線形抵抗膜6を、誘電体膜5より薄くすることにより、誘電体膜5内の電界を緩和している。その結果、非線形抵抗膜6の外表面側の電界を弱めて、金属容器2と異物7との間での放電の発生を抑制することができ、延いてはガス絶縁電気機器10の絶縁信頼性を向上することができる。

図7は、異物が導体に接触した状態において、異物の導体側の先端の電界、および、誘電体膜の電気抵抗と非線形抵抗膜の電気抵抗との抵抗比について、相関関係を検証した結果を示すグラフである。図7においては、縦軸に異物の導体側の先端の電界、横軸に上記抵抗比を示している。なお、異物の導体側の先端の電界は、上記抵抗比が103のときの電界で規格化している。図7に示すように、上記抵抗比が107より大きくなると、異物7の導体5側の先端の電界の緩和効果が大きくなる。

図8は、異物が導体に接触した状態において、異物の導体側の先端の電界、および、誘電体膜の厚さと非線形抵抗膜の厚さとの膜厚比について、相関関係を検証した結果を示すグラフである。図8においては、縦軸に異物の導体側の先端の電界、横軸に上記膜厚比を示している。なお、異物の導体側の先端の電界は、上記膜厚比が1のときの電界で規格化している。上記膜厚比が1のとき、上記抵抗比は108である。

図8に示すように、上記膜厚比が大きくなるに従って、異物7の導体5側の先端の電界が緩和される。すなわち、非線形抵抗膜6が、誘電体膜5に対して薄いほど、異物7の導体5側の先端の電界が緩和される。

本実施形態においては、上記のように、非線形抵抗膜6は、金属容器2内の異物7の有無を確認するための試験電圧印加時に作用を受ける試験時電界以下の電界において体積抵抗率が一定となり、試験時電界より高い電界において体積抵抗率が低下するように形成されている。

図9は、本実施形態に係る非線形抵抗膜の体積抵抗率と非線形抵抗膜に作用する電界との関係を示すグラフである。図9においては、縦軸に非線形抵抗膜の体積抵抗率を、横軸に非線形抵抗膜に作用する電界を示している。

図9に示すように、非線形抵抗膜6の体積抵抗率は、商用周波の電圧による型式試験時に非線形抵抗膜6に作用する試験時電界Et以下では一定となる。そのため、型式試験時の電圧より低い、雷インパルス侵入時、開閉インパルス発生時、または、通常運転時の電圧で非線形抵抗膜6に作用する電界においては、非線形抵抗膜6の体積抵抗率は高い値で一定である。非線形抵抗膜6の体積抵抗率は、試験時電界Etより高い電界においては、電界の増加に伴って体積抵抗率が低下した後、電界の増加に関わらず低い値で一定となる。

上記のように、異物7が導体3に接近して異物7の導体3側の先端に電界が集中した場合、非線形抵抗膜6が作用を受ける電界が試験時電界Etより高くなり、非線形抵抗膜6の体積抵抗率が低下する。よって、非線形抵抗膜6を形成することにより、異物7の導体3側の先端に集中した電界を緩和することができ、導体3と異物7との間で部分放電が発生することを抑制できる。

また、異物7が導体3に接近していないときは、通常運転時または耐圧試験時において非線形抵抗膜6に作用する電界が試験時電界Et以下であるため、非線形抵抗膜6の体積抵抗率は高く維持される。このように、非線形抵抗膜6の外表面側の電界および誘電体膜5内の電界が強くなることを抑制することができる。その結果、導体3の絶縁破壊電圧を高くして、ガス絶縁電気機器10の絶縁信頼性を向上することができる。

本実施形態においては、上記のように、非線形抵抗膜6のバインダー樹脂の主成分は、誘電体膜5の主成分と同じである。このようにすることにより、誘電体膜5の線膨張係数と、非線形抵抗膜6の線膨張係数とが近くなるため、ガス絶縁電気機器10の運転中のヒートサイクルによって誘電体膜5と非線形抵抗膜6との界面で剥離が発生することを抑制できる。

本実施形態においては、厚くても数mm程度の誘電体膜5と、誘電体膜5より薄い非線形抵抗膜6とを形成すればよいため、10mm以上の膜を形成していた従来技術に比較して、成膜時間を短くして、ガス絶縁電気機器10の製造時間の短縮を図ることができる。また、膜中に異物が混入しないようにする管理および膜厚の管理などの膜品質の管理を簡易にすることができる。さらに、成膜に際して金型を用いずに、粉体塗装法または熱収縮チューブを被せる方法などを採用することができ、製造プロセスを簡易にすることができる。よって、本実施形態にかかるガス絶縁電気機器10は、簡易に製造可能で異物による放電を抑制して絶縁信頼性を向上できる。

以下、本発明の実施形態2に係るガス絶縁電気機器について図面を参照して説明する。なお、本実施形態に係るガス絶縁電気機器20においては、金属容器2の内周に誘電体膜8および非線形抵抗膜9が形成されている点のみ実施形態1に係るガス絶縁電気機器10と異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。

(実施形態2) 図10は、本発明の実施形態2に係るガス絶縁電気機器の構成を示す断面図である。図10に示すように、本発明の実施形態2に係るガス絶縁電気機器20においては、金属容器2は、誘電体膜8、および、作用を受ける電界が臨界値より高くなると低下する非線形な電気抵抗を有して誘電体膜8上に形成された非線形抵抗膜9によって内周を覆われている。

誘電体膜8は、実施形態1に係る誘電体膜5と同様に成膜されている。非線形抵抗膜9は、実施形態1に係る非線形抵抗膜6と同様に成膜されている。ただし、非線形抵抗膜9を、非線形抵抗膜6より薄くしている。その理由を以下に説明する。

図11は、非線形抵抗膜の膜厚と、非線形抵抗膜の体積抵抗率が低下する電界の臨界値との関係を示すグラフである。図11においては、縦軸に非線形抵抗膜の体積抵抗率が低下する電界の臨界値、横軸に非線形抵抗膜の膜厚を示している。

図11に示すように、非線形抵抗膜が厚くなるに従って、非線形抵抗膜の体積抵抗率が低下する電界の臨界値が大きくなっている。ガス絶縁電気機器20においては、導体3の周囲の電界よりも金属容器2の周囲の電界の方が低い。たとえば、導体3の周囲の電界は、金属容器2の周囲の電界の約3倍である。よって、非線形抵抗膜6に作用する電界よりも非線形抵抗膜9に作用する電界の方が低い。そのため、非線形抵抗膜9の厚さを非線形抵抗膜6の厚さと同一にした場合、非線形抵抗膜9に作用する電界が臨界値より低くなって、非線形抵抗膜9の体積抵抗率が低下しなくなる場合がある。よって、非線形抵抗膜9を非線形抵抗膜6より薄くして、非線形抵抗膜9に作用する電界より、非線形抵抗膜9の体積抵抗率が低下する電界の臨界値の方が低くなるようにしている。

上記の構成により、金属容器2の底部上に堆積している異物7と金属容器2との間で部分放電が起きることを抑制できる。具体的には、異物7の金属容器2側の先端に電界が集中すると、非線形抵抗膜9が作用を受ける電界が臨界値より高くなり、非線形抵抗膜9の体積抵抗率が低下する。よって、異物7の金属容器2側の先端に集中した電界を緩和することができ、金属容器2と異物7との間で部分放電が発生することを抑制できる。

その結果、金属容器2から異物7に供給される電荷を低減することができる。上記のように、異物7の帯電量が大きい場合、異物7が、導体3の近傍まで浮上、または、導体3に接触することがある。金属容器2から異物7に供給される電荷を低減して異物7の帯電量を減少させることにより、異物7の浮上高さを減少させて異物7が導体3に接近することを抑制できる。このように本実施形態においては、導体3と異物7との間で部分放電が発生することに起因して発生する絶縁破壊を抑制して、ガス絶縁電気機器20の絶縁信頼性を向上することができる。

以下、本発明の実施形態3に係るガス絶縁電気機器について図面を参照して説明する。なお、本実施形態に係るガス絶縁電気機器においては、導体が平方向および鉛直方向に配置されている点のみ実施形態1に係るガス絶縁電気機器10と異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。

(実施形態3) 図12は、本発明の実施形態3に係るガス絶縁電気機器であるガス絶縁開閉装置の構成を示す断面図である。図12に示すように、本発明の実施形態3に係るガス絶縁電気機器であるガス絶縁開閉装置100は、遮断器110、断路器120,130、変流器140、計器用変圧器150、および、これらを繋ぐ母線(導体)を備えている。ガス絶縁開閉装置100は、その他にも、図示しない、避雷器、ブッシング、および、ケーブルヘッドなどを備えている。

本実施形態に係るガス絶縁開閉装置100は、省スペース化のために、構成要素を水平方向に配置するのみではなく、鉛直方向にも配置している。本実施形態においては、遮断器110および断路器130を鉛直方向に配置している。よって、これらの構成要素を互いに繋ぐ母線(導体)は、水平方向に配置された水平部160(水平配置の導体)と鉛直方向に配置された鉛直部170(垂直配置の導体)とを含んでいる。図12においては、導体の水平部160にハッチングを施している。

金属容器内の異物の挙動は、異物が有する電荷に作用するクーロン力と重力とのバランスによって決定される。鉛直方向に配置された遮断器110および断路器130並びに鉛直部170においては、重力の影響が大きく、金属容器と導体との間での異物の往復運動は認められない。すなわち、異物は金属容器の下部に堆積している。そのため、これらの鉛直方向に配置された構成要素においては、異物による絶縁破壊対策を施す必要性が少ない。

そこで、本実施形態に係るガス絶縁開閉装置100においては、導体の水平部160の外周のみに誘電体膜および非線形抵抗膜を設けている。なお、同様に、金属容器の水平部の内周のみに誘電体膜および非線形抵抗膜を設けてもよい。

このようにすることにより、金属容器内の異物による絶縁破壊を抑制して、ガス絶縁開閉装置100の絶縁信頼性を向上することができる。また、ガス絶縁開閉装置100の全ての導体に誘電体膜および非線形抵抗膜を形成した場合に比べて、ガス絶縁開閉装置100の製造プロセスを簡易にすることができる。よって、本実施形態にかかるガス絶縁開閉装置100は、簡易に製造可能で異物による放電を抑制して絶縁信頼性を向上できる。

なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。

1 絶縁ガス、2 金属容器、3,11,12 導体、4 絶縁支持部材、5 誘電体膜、6,9 非線形抵抗膜、7 異物、10,20 ガス絶縁電気機器、100 ガス絶縁開閉装置、110 遮断器、120,130 断路器、140 変流器、150 計器用変圧器、160 水平部、170 鉛直部。

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