【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、複数のスイッチ素子を配列したキーボードに関する。 【0002】近年、情報機器の発展に伴い、電気回路を開閉して人間の意思を情報機器に伝えるキーボードの重要性が高まっている。 特に、最近では、OA機器の普及に伴い、キーボード等を操作する機会が絶対的に増加してきたことから、操作性の良いキーボードへの要求が一層強くなってきている。 【0003】 【従来の技術】従来、キーボードは複数個のスイッチ素子によって構成され、スイッチ素子はスイッチ要素、キートップ部、電子回路で構成されるのが一般的である。 【0004】スイッチ要素は、接点等の手段により電気回路を開閉し、入力されたことを判別する。 キートップ部は、操作者の指の押し下げ力を伝達してスイッチ要素を伝導する。 また、電子回路は、入力された文字、記号等を認識し、予め定められた符号に変換してCPU(中央演算処理装置)に伝達するものである。 【0005】スイッチ要素としては、リードスイッチ、 メカニカルスイッチ、メンブレンスイッチ、導電ゴムスイッチ等があり、それぞれ目的に応じて使用されるもので、メンブレンスイッチが現在最も広く用いられている。 【0006】そこで、図10に、従来におけるメンブレンスイッチの構成図を示す。 図10(A)において、メンブレンスイッチ10は、上部シート11,スペーサ1 2,下部シート13により構成される。 上部シート11 及び下部シート13は、ポリエステル等のフィルム14 a,14bにAg(銀),C(炭素)等のインクで回路パターン15a,15b及び接点16a,16bが印刷されている。 また、スペーサ12には、接点位置に開口部12aが形成される。 【0007】そして、図10(B)に示すように、上部シート11と下部シート13とがスペーサ12を介在させて固着される。 この場合、スペーサ12の開口部12 a内で接点16a,16bが対向する。 【0008】この場合、図10(C)に示すように、上部シート11を押し下げることにより、上部シート11 の接点16aを下部シート13の接点16bとが接触して導通するものである。 【0009】また、図11に、従来におけるキートップ部の構成図を示す。 図11において、キートップ20 は、鉄板等で作られたサポートパネル21上に配置されたメンブレンスイッチ10の上面に配置されたハウジング22と、該ハウジング22内に挿入されるスライダ2 3と、該スライダ23を駆動するキートップ24と、ハウジング22の外側及び内側に配置され、前記キートップ24を定常位置に復帰させるための2本のスプリング25,26とで構成される。 【0010】この場合、スプリングを2本使うことにより、前記キートップ24が完全に下がりきる前にスイッチを入れる機能を持たせることができ、クリック感等、 好適なタッチ感覚を得ることができる。 このスライダ2 3の摺動する距離がストローク長であり、好適な操作感を得るためには3〜4mmが望ましいとされている。 【0011】すなわち、キートップ24が押し下げられると、スプリング26はメンブレンスイッチ10を押し、キートップ24が完全に下がりきる前の適当な位置で前記接点16a,16bを閉じる。 【0012】なお、電気回路については説明を省略する。 【0013】次に、図12に、従来のキーボード配列の一例の構成図を示す。 一般に、キーボードの“カナ”キー配列にはJIS,新JIS,親指シフト等様々な方式が開発されており、それぞれに特徴がある。 なお、“英字”キー配列については方式によらず英文タイプライタの配列に準拠した、いわゆるQWERTY配列が用いられている。 図12には本発明の構成を最も有効に適用できる例として親指シフトキーボード30の配列を示す。 同図(A)には平面図を、同図(B)には手前側から見た側面図を示している。 【0014】他の配列と同様に親指シフトキーボード3 0においても、中心線31を境に左側の4段5列の文字、数字キー及び下段の機能キーを左手の指が担当する左手エリア32であり、右側の4段5列の文字、数字キー及び空白キーを含む下段の機能キーを右手の指が担当する右手エリア33である。 【0015】ここで、図13に、図12の操作状態の図を示す。 図13はキーボード30のホームポジションに左右の手の指先を位置させたものである。 一般に、キーボード30の左手エリア32,右手エリア33にあるキーは、操作の習熟に伴って、キートップの表示を見ないで操作できるようになることから、ブラインドタッチエリアと呼ばれる。 ブラインドタッチ操作を行う際には上から3段目の(をうA),(ゅけF),(おとJ), (っん+;)の各キーにそれぞれ左手34の小指、人差指、右手35の人差指、小指を置き、この位置(ホームポジション)を基準にしてキー操作を行う。 【0016】なお、ホームポジションのキーの上面には他のキーと区別するための突起が設けられているのが普通である。 【0017】キーボード30のキートップの押下操作は各指の指先を使って行われる。 スペースキー、シフト右、シフト左等の操作を担当する親指についても例外ではなく、指先の側面を使って押下操作が行われる。 このため、各キートップの高さも指先での操作に都合が良いように考慮されている。 【0018】即ち、前後の段方向については、スロープ型、ステップ型、スカルプチャ型等によってキートップ上面の包絡線の形状は異なるものの、先方の段のキートップが少しずつ高くなっており、一方、各段における左右の列方向については前記キートップの高さは一定となっている。 【0019】なお、特定のキートップの高さを他のキートップより高く構成した例として特開昭62−2212 9号がある。 この例では両手首を休めた状態で打鍵することを目的としており、高さが高い特定のキートップは手首を休めるための手置き用台座の内側の両親指側に配置され、かつ筺体の他のキーの配設位置より一段高い位置に配設されたもので、親指の指先で操作される。 【0020】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した親指シフトキーボード30は日本語を効率的に入力するワードプロセッサ用途に開発されたものであり、各種キーボードの中では最も速い日本語入力ができると言われている。 しかしながら、親指シフトキーボードはワープロだけでなく、コンピュータ等にも広く用いられるようになってきたため、用途によっては操作性の面で能率化を図る必要がある。 【0021】一例を挙げると、プログラムを書く際には一般にエディタを使用するが、このエディタ上では(C TRL)キー等の機能キーと英字キーとの打鍵を組み合わせることによって、カーソルキー、削除キー等の前記ブラインドタッチエリアに含まれない特定の機能キーの動作を代用することが広く行われている。 【0022】例えば、(CTRL)キーを押しながら英字キーを操作すると、(CTRL)+E=↑,(CTR L)+S=←,(CTRL)+X=↓,(CTRL)+ D=→といった具合にカーソルキーの機能を代用する。 このほかにも(CTRL)+Gで削除、(CTRL)+ Cでスクロール等の代替機能が割当てられている。 従って、エディタを使用する際には如何に前記(CTRL) キー等の機能キーを使いこなすかが、能率的にプログラムを書く上で重要となってくる。 【0023】ここで、図14及び図15に、図12の操作状態の図を示す。 前記親指シフトキーボード30においては、左下隅に(CTRL)キーが配置されているため、例えば(CTRL)+Dのカーソル右(→)を操作するに際しては、図14に示すように2本の指で操作するか、あるいは図15に示すように小指で前記(CTR L)キーを押しながらDのキーを押すといった不自然な操作を余儀無くされ、操作性に問題がある。 【0024】そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、操作性の向上を図るキーボードを提供することを目的とする。 【0025】 【課題を解決するための手段】上記課題は、導通手段により電気回路を開閉し、入力されたことを判別するスイッチ要素と、押下力により該スイッチ要素を駆動するキートップ部とを有するスイッチ素子のキーを所定役割を持たせて複数個配列されたキーボードにおいて、前記キーの操作基準となる配列のホームポジションの下方に配置されている所定の機能キーの前記キートップ部の高さを、小指付け根又はその近傍の掌部によって押下操作可能に、隣接する該キーの該キートップ部の高さより少くともストローク長高く形成し、適宜オーバーハング部を形成することにより解決される。 また、適宜、前記機能キーを第1のキートップ部上に第2のキートップ部を装着させる。 【0026】 【作用】上述のように、所定の機能キーのキートップ部の高さが隣接するキーのキートップ部の高さより、ストローク長分より高く形成している。 このため、隣接キーを同時に押下することなく、小指付け根またはその近傍の掌部によって押下することが可能となり、ホームポジションに両手を置いたままの状態で前記機能キーと文字キーとの組合わせ打鍵による代替機能の操作を行うことが可能となる。 【0027】また、隣接キーの一部にはみ出したオーバーハング部により、前記機能キーの操作が一層容易となる。 【0028】さらに、第1のキートップ部上に第2のキートップ部を装着することにより、通常のキーボードを本発明によるキーボードに容易に改造することが可能となる。 【0029】すなわち、本発明によればエディタ使用時等、ワープロ以外の用途においてもホームポジションからの指の移動が少なく、快適な操作性を持つキーボードを実現することが可能となる。 【0030】 【実施例】図1に、本発明の第1の実施例の構成図を示す。 なお、図10〜図15と同一の構成部分には同一の符号を付す。 【0031】図1は、キーボード30の全体側面図を示したもので、全体平面図は図3に示され、キーは図10 と同様であり、キー配列は図12で説明した親指シフトのキーボードと同様である。 【0032】図1において、キーボード30におけるキー配列の打鍵の操作基準となるホームポジション(図1 3参照)の下方であって、例えば左隅に配置される機能キーである「CTRL」(コントロール)キー41aのキートップ部の高さを、隣接する他の機能キーで「SH IFT」(シフト)キー(図12参照)や「ALT」 (アルト)キー42のキートップ部の高さよりストローク長高く形成したものである。 【0033】ここで、図2及び図3に、図1の操作状態を説明するための図を示す。 図2に示すように、左手3 4の小指付け根又はその近傍の掌部で押下しながら、指先で他のキーを操作するものである。 この場合、「CT RL」キー41aのキートップ部の高さが上記「SHI FT」キーや「ALT」キー42より高く形成されていることから、押下すべき「CTRL」キー41aを容易に特定することができる。 また、高さがストローク長より高いことから、大まかに操作しても隣接キーを誤って動作させる虞れを防止することができる。 【0034】例えば、プログラムを作成するにあたっては、より能率良くキーインするため、ブラインドタッチによるキーボード操作が必要であり、各指ができるだけホームポジション近傍にある状態で各操作を行うことができる。 特に、エディタ上では「CTRL」キー41a 等の機能キーを他のキーと組み合わせて特定の機能を発揮させることが多く、該機能キーの使用頻度が高いことから、ホームポジションから各指を離さず、該機能キーを操作でき、快適で素早い操作を行うことができる。 【0035】そこで、図3に示すように、「CTRL」 キー41aと「D」キーを操作する場合、左手34はホームポジション近傍に置いたまま、小指付け根又はその近傍の掌部で「CTRL」キー41a押下し、「D」キーをブラインドタッチ本来の指使いである中指で操作できるものである。 【0036】また、図4に、第1の実施例の他の実施例を示す。 図4(A)は全体平面図であり、図4(B)は全体側面図である。 【0037】図4は、キーボード30の左隅の「CTR L」キー41aと、右隅の「CTRL」キー41bのキートップ部の高さを、図1のように高くしたものである。 近年、空白キーを分割して新しい機能キーを付加することが行われており、付加した機能キーに「CTR L」キー41bを割り当てた場合のものである。 この場合、右手小指付け根又はその近傍の掌部を使用して前述と同様の操作を行う。 【0038】なお、上述の第1の実施例では、「CTR L」キー41aのキートップの高さを高くする場合を示しているが、これに限ることはなく、「ALT」キー4 2等のホームポジションで、小指付け根又はその近傍の掌部で操作できる位置に配置されるキーであれば適用することができる。 このことは、以下の第2及び第3の実施例においても同様である。 【0039】次に、図5に、本発明の第2の実施例の構成図を示す。 図5(A)は全体平面図の一部であり、図5(B)は全体側面図の一部である。 【0040】図5(A),(B)において、キーボード30の左隅に配置される「CTRL」キー51に、高く形成したキートップ部にオーバーハング部51aを形成する。 オーバーハング部51aは、隣接する「ALT」 キー42の領域の一部を被うようにはみ出した状態で形成される。 【0041】また、この「CTRL」キー51のキートップ部上面の高さは、「ALT」キー42のキートップ部の高さに比べて、(ストローク長+オーバーハング部の厚さ)分だけ高く形成され、押下されたときに非接触状態となる。 【0042】そこで、図6に、図5の操作状態を説明するための図を示す。 図6に示すように、「CTRL」キー51のキートップ部の面積が拡大されることから、左手34の小指付け根またはその近傍の掌部による操作がより容易となり、また、押下に際しても、「ALT」キー42を誤って動作させるおそれはない。 なお、隣接する「ALT」キー42は通常のブラインドタッチ操作では使用しないため、その一部が隠されていても全く問題はない。 【0043】次に、図7に、第2の実施例の他の実施例の構成図を示す。 図7(A)は全体平面図の一部であり、図7(B)は「CTRL」キーの側面図を示している。 【0044】図7(A),(B)において、キーボード30の左隅に配置させる「CTRL」キー52に、高く形成したキートップ部にオーバーハング部52aを形成する。 オーバーハング部52aは、隣接する「ALT」 キー42と、隣接するキーの存在しない領域にはみ出す形状に形成される(図7(A))。 また、「CTRL」 キー52のキートップ部の上面は隣接キーの存在しない領域方向にスロープ状に形成される(図7(B))。 【0045】このように、隣接方向のみならず、手前側をもオーバーハング状となり、キートップ部の面積をより拡大することにより、さらに操作性を向上させることができる。 この場合、図7(B)に示すように、オーバーハング部52aの手前側が徐々に低くなるようスロープをつけることにより、ホームポジションにおける小指付け根及びその近傍の掌部の形状に類似させ、操作性をより向上させることができる。 【0046】次に、図8に、本発明の第3の実施例の構成図を示す。 図8(A)において、キーボード30の左隅に配置される機能キーである「CTRL」キー41a を、第1のキートップ部61aと、該第1のキートップ部61a上に第2のキートップ部61bを被せるように装着したものである。 【0047】第1のキートップ部61aの上面の高さは隣接する「ALT」キー42と同一の高さであり、装着された第2のキートップ部61bの高さは、図1と同様に、隣接する「ALT」キー42の高さよりストローク長高く形成される。 【0048】この第2のキートップ部61bは、図8 (B)に示すように、底面に第1のキートップ部61a 上に装着させるための凹部62が形成される。 一般に、 キートップ部はテーパ状に形成されていることから、凹部62をほぼ同一形状に形成される。 【0049】また、装着は、第1のキートップ部61a 上に第2のキートップ部61bを押し込むことで固定させてもよく、また、凹部62の上面に接着剤63で固着させてもよい。 この場合、押し込む距離は、第1のキートップ部61aが押下されたときにスイッチング動作を妨げない範囲(ストローク長以上)にしておくことが必要である。 なお、接着剤63は、完全に固着させるエポキシ系等の接着剤でもよく、着脱可能な粘着部材であってもよい。 【0050】一方、接着剤63を使用せずに第2のキートップ部61bの固定を確実ならしめるためには、図8 (C)に示すように、第1のキートップ部61aの側面に第1の係止部(例えば凹部)64aを所定数形成し、 第2のキートップ部61bに第1の係止部64aに対応する第2の係止部(例えば突起)64bを形成して第1 及び第2の係止部64a,64bを着脱可能に嵌合固定させてもよい。 【0051】これにより、通常のキーボードを、図1に示すような本発明のキーボード30に容易に改造することができる。 【0052】次に、図9に、第3の実施例の他の実施例の構成図を示す。 図9(A)において、第2のキートップ部61bにオーバーハング部65を一体に形成したものである。 オーバーハング部65は、図8に示すように、隣接する「ALT」キー42の一部に、押下時非接触になるように形成される。 なお、図7に示すように、 当該オーバーハング部65を、隣接するキーの存在しない領域に延出させてもよい。 【0053】装着は、図8と同様に、押し込み、接着剤(エポキシ等、接着部材)及び第2の係止部64bにより適宜行われる。 【0054】このように、操作する面積を拡大して操作性の向上を図ることができるものである。 【0055】なお、図8及び図9における第2のキートップ部61bは、ABS(アクリル−ブタジエン−スチレン)樹脂等の硬質プラスチック、塩化ビニル等の軟質プラスチック、ゴム、シリコンゴム等の可撓性材料、あるいはアルミ等の金属材料により形成することができる。 ただ、エディタ等を使用したプログラム作成の場合には、機能キーの使用頻度が多く、また小指付け根またはその近傍の掌部でのキー操作は指先での操作に比べて押下圧力が強くなりがちであるため、キートップの表面には軟質プラスチック、ゴム等の緩衝部材を配置することが、手への負担を軽減する上で望ましい。 【0056】このことは、第1及び第2の実施例においても適用することができる。 【0057】 【発明の効果】以上のように本発明によれば、ホームポジションの下方に配置されている所定の機能キーのキートップ部の高さを、隣接するキーのキートップ部の高さよりストローク長高く形成することにより、エディタ使用時等、ワードプロセッサ以外の用途においても操作性の向上を図ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1の実施例の構成図である。 【図2】図1の操作状態を説明するための図である。 【図3】図1の操作状態を説明するための図である。 【図4】第1の実施例の他の実施例の構成図である。 【図5】本発明の第2の実施例の構成図である。 【図6】図5の操作状態を説明するための図である。 【図7】第2の実施例の他の実施例の構成図である。 【図8】本発明の第3の実施例の構成図である。 【図9】第3の実施例の他の実施例の構成図である。 【図10】従来におけるメンブレンスイッチの構成図である。 【図11】従来におけるキートップ部の構成図である。 【図12】従来のキーボード配列の一例の構成図である。 【図13】図12の操作状態の図である。 【図14】図12の操作状態の図である。 【図15】図12の操作状態の図である。 【符号の説明】 41a,41b,51,52 コントロールキー 42 アルトキー 51a,52a,65 オーバーハング部 61a 第1のキートップ部 61b 第2のキートップ部 62 凹部 63 接着剤 64a 第1の係止部 64b 第2の係止部 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−67069(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl. 6 ,DB名) G06F 3/02 |