【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、パーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略称する。)、ワークステーションあるいはワードプロセッサ等の入力装置として使用されるキーボード、特にワイヤレスキーボードに関するものである。 【0002】 【従来の技術】キーボードは、文字、数字あるいは記号等を電子機器、特にパソコン等の情報処理機器(以下、 便宜上、パソコン本体という。 )に入力する装置として極めて一般的に使用されている。 【0003】このようなキーボードは、通常、ケーブルを介してパソコン本体と接続されるが、パソコン本体にはこのキーボードの他、マウス等のポインティングデバイスを筆頭として種々の周辺機器が接続され、その接続のためのケーブルが錯綜することも少なくなく、机上の作業の障害となることもしばしばである。 【0004】そこで最近は、パソコン本体に接続される周辺機器のワイヤレス(ケーブルレス)化が図られて来ているが、中でもキーボードはパソコン本体との接続がほとんどの場合に必須となるので、キーボードのワイヤレス化は特に有効である。 このワイヤレス化されたキーボードをワイヤレスキーボードというが、これは、キーボード出力信号の送信部(キーボードからパソコン本体への一方向通信の場合)とアンテナ線とが付加されている点で通常のキーボードとは異なる。 【0005】ここで、上記アンテナ線は、キーボード出力信号を送信部から空中に放射させるために必須であるが、従来、ワイヤレスキーボードにおいては図8に示すようにキーボード筐体内に配置されている。 【0006】すなわちアンテナ線22は、両端が送信部23の出力端に接続され、中間部がキーボード奥側のファンクションキー等(図示せず)が直線状に配列されている箇所近傍に、同配列に沿った方向、すなわちキーボード筐体21内の長手方向(図中左右方向)に、ループ状に引き回された状態で収納、配置されている。 なお、図8中、2点鎖線で示す領域24はキー配列領域を示す。 【0007】このようなアンテナ線22の配置構成は次の理由による。 キーボードは、マウス等のポインティングデバイス(図示せず)とは異なり、電力消費が大きく、 したがってそのワイヤレス化、換言すれば電池電源化に当たっては電力消費を極力小さくすることが要求される。 【0008】そこで、アンテナの低損失化が図られる。 アンテナから低損失で電波を放射するには、アンテナ長を例えば効率のよい共振する波長に設定したり、より短くしたい場合には短縮回路を挿入する等、アンテナマッチングを図ればよい。 実際には、図8に示すように、アンテナ線22を、キーボード筐体21内ではアンテナ長を最大にとれるキーボード筐体長手方向にループ状に引き回している。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述従来のワイヤレスキーボードでは、そのアンテナ線22の引回しに手間がかかった。 特に、アンテナ線22としてビニール等の絶縁被覆を施した導電線を用いる場合には、 被覆の捩れやくせ等がループ全体に生じ、その位置決めの邪魔をするため手間がかかった。 【0010】このことは、一旦適切な間隔wをとって位置決めしても、出荷するまでの間や出荷してからも、キーボード筐体21に衝撃を与える等でアンテナ線22のループが変形あるいは移動して間隔wが狭まったり、部分的になくなったりすることをも意味する。 そこで従来から、アンテナ線引回しの手間の省略と、上記間隔wの保持についての改善が要望されていた。 【0011】本発明は、上記のような要望に鑑みなされたもので、アンテナ線引回しの手間が省略されると共に線相互間隔の保持も容易で、コストの低減も図れるワイヤレスキーボードを提供することを目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、キーボード出力信号を送信部から空中に放射するため、又はこの放射をするため及び空中に放射されたキーボード入力信号を受信部で受信するためのアンテナ線を備え、かつ各キーの押圧操作によりオンするスイッチの一部を構成する導電性パターンが被着形成された絶縁性の電極シートがキーボード筐体内に配置固定されたワイヤレスキーボードにおいて、 前記アンテナ線は前記電極シート上に被着形成された導電性パターンからなることを特徴とする。 【0013】請求項2に記載の発明は、キーボード出力信号を送信部から空中に放射するため、又はこの放射をするため及び空中に放射されたキーボード入力信号を受信部で受信するためのアンテナ線を備え、かつ各キーの押圧操作によりオンするスイッチの一部を構成する導電性パターンが被着形成された絶縁性の電極シートがキーボード筐体内に配置固定されるワイヤレスキーボードにおいて、前記アンテナ線は前記電極シートに隣接配置された絶縁性シート上に被着形成された導電性パターンからなることを特徴とする。 【0014】請求項1に記載の発明では、アンテナ線は電極シート上に被着形成された導電性パターンからなる。 すなわち、アンテナ線はキーボード筐体内に配置固定される電極シート上に一体形成されるもので、アンテナ線の捩れ、くせ、変形あるいは移動は生じ得ず、アンテナ線引回しの手間は全くなくなる。 またこのことは、 アンテナ線のループ中間部における線相互間隔wを大きくとれることにもなる。 更にアンテナ線は、既存の電極シートに、スイッチの一部を構成する導電性パターンと同時に被着形成可能であり、コストは大幅に低減される。 【0015】請求項2に記載の発明では、アンテナ線は電極シートに隣接配置された絶縁性シート上に被着形成された導電性パターンからなる。 すなわち、アンテナ線は電極シートと同様にシート状の部材(絶縁性シート) 上に一体形成されるもので、請求項1に記載の発明と同様に、アンテナ線の捩れ、くせ、変形あるいは移動は生じ得ず、アンテナ線引回しの手間は全くなくなる。 またこのことは、アンテナ線のループ中間部における線相互間隔を大きくとれることにもなる。 更にアンテナ線は、 電極シートと同様にシート状の部材(絶縁性シート)上に形成されるので、部品の管理や組立てにおいて共通に取り扱え、コスト低減に役立つ。 【0016】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。 図1は本発明によるワイヤレスキーボードの一実施形態の概略を分解して示す平面図である。 図示するように、キーボード筐体11は底面側筐体部11aと上面側筐体部11bとで主構成をなし、その底面側筐体部11bの内方には支持板12が配置固定されている。 この支持板12は、キー配列領域13以上の大きさに形成され、キー配列構造体14を、その下方(底面側筐体部11a側)、対向位置にて支持する。 支持板12に導電性金属板を用いれば、合成樹脂成形品であるキーボード筐体11の補強、静電対策及び電磁シールドにも役立つ。 【0017】図中、矢印イ,ロは、底面側筐体部11a の内方上面にキー配列構造体14が載置固定され、その上方から上面側筐体部11bがそれらを被うようにして底面側筐体部11aに組み付けられることを表している。 【0018】上記キー配列構造体14は、文字、数字あるいは記号等に対応して所定位置に配置された複数のキー(キー群)及び各キーの押圧操作によりオンするスイッチ(スイッチ群)とを備えてなる。 【0019】キー配列構造体14は、ここではメンブレンスイッチを備えてなる。 メンブレンスイッチは、絶縁性フィルム(ポリエステルフィルム)上に接点及び配線パターン(導電性パターン)をスクリーン印刷等により被着形成した電極シートを用いてキー群を構成するもので、主に1層タイプ、2層タイプ及び3層タイプがある。 1層タイプは導電性ラバー付のキーを併用してスイッチを構成し、3層タイプはポリエステルフィルムからなるスペーサシートを挟んで上記電極シートを一対対向配置させてスイッチを構成するものである。 2層タイプは、いずれか一方の電極シートの、他方の電極シートとの対向面の適宜箇所に、3層タイプにおけるスペーサシートに相当する間隔保持層を印刷等により被着形成してスイッチを構成するものである。 【0020】図中、14aは、このようなメンブレンスイッチにおける電極シート、ここでは3層タイプのメンブレンスイッチにおける最下層の電極シートであり、導電性の接点パターンP1及び配線パターンP2がスクリーン印刷等により被着形成されている。 【0021】なお、この電極シート14aは、上述したようにキー配列構造体14の一部を構成するものであるが、説明の便宜上、底面側筐体部11a上に位置した状態で示している。 また、接点パターンP1及び配線パターンP2は、一部のみ図示しているに過ぎず、実際には電極シート14a上のキー配列領域13対応箇所のほぼ全域に亘って形成されている。 【0022】上記底面側筐体部11aの内方の、テンキー等が配列されるテンキー配列領域13aの図中上部側(キーボード奥側)には、各キーの押圧に対応したキーボード出力信号を生成するコントローラ部15及び生成されたキーボード出力信号が入力される送信部16が取付固定されている。 【0023】また、底面側筐体部11aの適宜箇所には、上記コントローラ15及び送信部16に直流電源を供給する電池(図示せず)の格納部17が、底面側筐体部裏面側から電池を着脱可能に形成されている。 【0024】上記送信部16には、キーボード出力信号(高周波信号)を空中に放射するためのアンテナ線18 が導電線、例えばシールド線19,19を介して接続されている。 アンテナ線18は、図示例ではループアンテナであって、キーボード長手方向に沿って配置されている。 アンテナ線18と送信部16との接続は、着脱自在のコネクタ(図示せず)を用いて行ってもよく、また、 アンテナ線18側の雄端子部を、送信部16側の雌端子部内に押圧挿入することで、雄端子部が雌端子部内に圧接保持される接続構造(図示せず)を有するものを用いてもよい。 【0025】ここでアンテナ線18は、上記電極シート14a上に被着形成された導電性パターンからなる。 この導電性パターンを、以下、アンテナ線パターンP3と記すと、アンテナ線パターンP3は、上記電極シート1 4a上に、上記導電性の接点パターンP1及び配線パターンP2の形成と同時に形成される。 これらのパターンP1〜P3は、スクリーン印刷等によって電極シート1 4a上に被着形成される。 【0026】このように本発明では、アンテナ線18はキーボード筐体11内に配置固定される電極シート14 a上に被着形成された導電性パターンからなる。 つまりアンテナ線18は、キーボード筐体11内に配置固定される電極シート14a上に一体に固定されている。 【0027】これによれば、アンテナ線18の捩れ、くせ、変形あるいは移動は生じ得ず、アンテナ線引回しの手間は全くなくなる。 またこのことは、アンテナ線18 のループ中間部における線相互間隔wを大きくとることにも役立つ。 すなわち、アンテナ線18がキーボード筐体11内に配置固定される電極シート14aに一体形成されていれば、アンテナ線18は自由に動くことが全くなくなり、変形や撓みが生じないからである。 【0028】更に、上述したような理由で間隔wを大きくとれることは、一旦適切な間隔wをとって位置決めした後、出荷するまでの間や出荷してから、キーボード筐体11に衝撃が与えられた場合の、アンテナ線18のループ変形あるいは移動による間隔wの狭まり等が生じ得なくなることをも意味する。 【0029】なお上述実施形態では、アンテナ線パターンP3を3層タイプのメンブレンスイッチの最下層の電極シート14aに形成した場合について述べたが、これのみに限定されることはない。 例えば、3層タイプのメンブレンスイッチの最上層や、1層タイプのメンブレンスイッチの電極シートに形成してもよい。 また、メンブレンスイッチ以外の電極シート、例えばFPC(フレキシブルプリント配線板)に本発明を適用してもよい。 いずれにしても、各キーの押圧操作によりオンするスイッチの一部を構成する導電性パターンが被着形成される絶縁性の電極シートであれば、そのいずれにアンテナ線パターンP3を被着しても、上述実施形態と同様の効果を発揮できる。 更に、3層タイプのメンブレンスイッチの最上層及び最下層の両電極シートに各々アンテナ線パターンP3を形成し、それらを並列接続して送信部16に接続するようにしてもよい。 この場合は、アンテナ利得を増大させることができる。 【0030】また、アンテナ線パターンP3を図示例とは反対側、すなわちキーボード手前側(図1中、下側) の電極シート14a部分に形成してもよい(図2参照)。 このようなアンテナ線パターンP3の配置によれば、アームレスト(図示せず)を設けたキーボードのアームレスト構成部分の有効利用が図れる。 特に最近では、電極シート14aの図中上側に各種ファンクションキーが増設される傾向にあり、アンテナ線パターンP3 の被着スペースをとることが困難になってきつつあるが、このような場合に、アームレスト構成部分は、アンテナ線パターンP3の被着スペースの確保に有効である。 アンテナ線パターンP3の内方側に接点パターンP 1や配線パターンP2が存在する構成であってもよい(図3参照)。 更に、アンテナ線パターンP3はキーボード長手方向のみに形成されるものではない。 例えば、 電極シート14aの外周を囲むようにアンテナ線パターンP3を形成してもよい(図4参照)。 アンテナ線パターンP3を、電極シート14aの接点パターンP1や配線パターンP2が形成された面とは反対側の面に形成してもよい。 【0031】また、電極シート14aとは別体の絶縁性シート、例えばメンブレンシート上にアンテナ線パターンP3を形成してもよい。 図5〜図7はその例を示す図で、いずれも電極シート14aとは別個独立の絶縁性シート51上にアンテナ線パターンP3が形成されている。 図6及び図7は、更にアンテナ線パターンP3が、 符号P3a,P3bを付して示すように2分割された例を示す。 図5〜図7に示す例においても、電極シート1 4aに形成された場合と同様に、アンテナ線パターンP 3には捩れ、変形あるいは移動は生じ得ないので、アンテナ線引回しの手間は全くなくなる。 またアンテナ線パターンP3は、電極シート14aと同様にシート状の部材(絶縁性シート51)上に形成されているので、部品の管理や組立てにおいて共通に取り扱え、コスト低減に役立つ。 図1〜図7に示す各例において、アンテナ線パターンP3上に絶縁性インクを用いたスクリーン印刷を施したり、絶縁性シートを被着する等によって絶縁層を形成してもよい。 これによれば、アンテナ線パターンP 3がキーボード筐体11(図1参照)内の他の導電体に接触することを防止できる。 【0032】更に上述実施形態では、キーボード側からパソコン本体側への信号の送信(一方向通信)のみについて説明したが、本発明はこれのみに限定されることはなく、キーボード及びパソコン本体の双方側において信号の送受信(双方向通信)を行うようにしてもよい。 この場合には、上記送信部16に代えて送受信部(図示せず)が設けられる。 アンテナ線18は上述した実施形態で述べたものが送受信に共用される。 いずれにしても、 パソコン本体側(パソコン本体のキーボード端子)には、上記送信部又は送受信部と通信する上で対をなす受信部又は受送信部が接続される。 なお上掲図において、 同一符号は同一又は相当部分を示す。 【0033】 【発明の効果】請求項1に記載に発明によれば、アンテナ線はキーボード筐体内に配置固定される電極シート上に被着形成された導電性パターンからなり、電極シート上に一体に固定されるので、アンテナ線の捩れ、変形あるいは移動等は生じ得ず、アンテナ線引回しの手間は全くなくなり、また、アンテナ線のループ中間部における線相互間隔wを大きくとることができるという効果がある。 またアンテナ線は、既存の電極シートに、スイッチの一部を構成する導電性パターンと同時に被着形成可能であり、コストの低減も図れる。 【0034】また請求項2に記載の発明によれば、アンテナ線は電極シートに隣接配置された絶縁性シート上に被着形成された導電性パターンからり、電極シートと同様にシート状の部材(絶縁性シート)上に一体形成されるので、請求項1に記載の発明と同様にアンテナ線引回しの手間は全くなくなる。 また、アンテナ線のループ中間部における線相互間隔wを大きくとることができる等の効果がある。 更にアンテナ線は、電極シートと同様にシート状の部材(絶縁性シート)上に形成されるので、 部品の管理や組立てにおいて共通に取り扱え、コスト低減に役立つという利点もある。 【図面の簡単な説明】 【図1】請求項1の発明によるワイヤレスキーボードの一実施形態の概略を分解して示す平面図である。 【図2】同上ワイヤレスキーボードの他の実施形態(その1)の概略を示す平面図である。 【図3】同上ワイヤレスキーボードの他の実施形態(その2)の概略を示す平面図である。 【図4】同上ワイヤレスキーボードの他の実施形態(その3)の概略を示す平面図である。 【図5】請求項2の発明によるワイヤレスキーボードの一実施形態の概略を示す平面図である。 【図6】同上ワイヤレスキーボードの他の実施形態(その1)の概略を示す平面図である。 【図7】同上ワイヤレスキーボードの他の実施形態(その2)の概略を示す平面図である。 【図8】従来のワイヤレスキーボードの要部を示す平面図である。 【符号の説明】 11 キーボード筐体14 キー配列構造体14a 電極シート16 送信部18 アンテナ線P1 接点パターン(導電性パターン) P2 配線パターン(導電性パターン) P3 アンテナ線パターン(導電性パターン) ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮崎 直幸 神奈川県藤沢市片瀬1丁目1番1号 ミネ ベア株式会社藤沢製作所内Fターム(参考) 5B020 DD51 KK14 |